(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1〜
図3を参照して、第1実施形態のクレーン1について説明する。
【0012】
クレーン1は、ブーム30(下記)を備える機械である。例えば、クレーン1は、建設機械であり、移動式クレーンであり、クローラクレーンであり、伸縮ブームクローラクレーンである。クレーン1は、下部本体10と、上部旋回体20と、ブーム30と、起伏装置35と、支持構造物40と、を備える。
【0013】
下部本体10は、上部旋回体20を支持する部分であり、地面Gに対して走行可能であり、クレーン1を走行させる下部走行体である。下部本体10は、クローラを備えるクローラ式であり、ホイール(車輪)を備えるホイール式でもよい。
【0014】
上部旋回体20は、下部本体10よりも上側Z1に配置され、下部本体10に旋回自在に取り付けられる。上部旋回体20は、旋回フレーム21と、運転室23と、ウエイト25と、を備える。旋回フレーム21は、下部本体10に旋回自在に取り付けられる構造物である。運転室23は、旋回フレーム21に取り付けられる。ウエイト25は、クレーン1の吊り上げ能力を上げるためのおもりであり、旋回フレーム21に取り付けられる。
【0015】
(方向について)
クレーン1に関する方向には、前後方向Xと、横方向Yと、上下方向Zと、がある。前後方向Xは、上部旋回体20の長手方向(旋回フレーム21の長手方向)である。前後方向Xにおいて、ウエイト25から運転室23に向かう側(向き)を前側X1とし、その逆側(逆向き)を後側X2とする。横方向Yは、前後方向Xに直交する水平方向である。上下方向Zにおいて、下部本体10から上部旋回体20に向かう側(向き)を上側Z1とし、その逆側(逆向き)を下側Z2とする。
【0016】
ブーム30は、上部旋回体20に起伏自在に取り付けられる。ブーム30は、ワイヤロープ(図示なし)を介して吊荷(図示なし)を吊り上げる部材である。ブーム30は、上部旋回体20よりも前側X1(いわば吊荷側)に延びる。ブーム30の長手方向(中心軸方向)において、上部旋回体20に取り付けられる側をブーム基端側B1とし、その逆側をブーム先端側B2とする。ブーム30は、ブーム30の中心軸方向に伸縮可能な伸縮ブームである。ブーム30は、複数の箱型構造物(内部が空洞の構造物)を備える。複数の箱型構造物は、入れ子構造(外側の箱型構造物に内側の箱型構造物が差し込まれた構造)を有する。ブーム30を構成する複数の箱型構造物には、ブーム基端側B1からブーム先端側B2の順に、基端ブーム31と、2段ブーム32と、3段ブーム33と、先端ブーム34と、がある。
【0017】
基端ブーム31は、ブーム30を構成する複数の箱型構造物のうち、最もブーム基端側B1の箱型構造物である。基端ブーム31は、基端ブーム本体部31aと、起伏装置用ブラケット31bと、第1構造物用ブラケット31cと、第2構造物用ブラケット31dと、を備える。
【0018】
基端ブーム本体部31aは、基端ブーム31の本体部分であり、箱型構造物である。起伏装置用ブラケット31bは、起伏装置35が取り付けられる部分である。起伏装置用ブラケット31bは、基端ブーム本体部31aの下側Z2の面(腹面)から下側Z2に突出する(第1構造物用ブラケット31cおよび第2構造物用ブラケット31dも同様)。
【0019】
第1構造物用ブラケット31cは、第1構造物50が取り付けられる部分である。第1構造物用ブラケット31cは、例えば、基端ブーム本体部31aの先端部の近傍に配置される。
【0020】
第2構造物用ブラケット31dは、第2構造物60が取り付けられる部分である。第2構造物用ブラケット31dは、起伏装置用ブラケット31bよりもブーム先端側B2に配置され、第1構造物用ブラケット31cよりもブーム基端側B1に配置される。第2構造物用ブラケット31dは、例えば、基端ブーム本体部31aの軸方向中央部に配置される。
【0021】
2段ブーム32(中間ブーム)は、基端ブーム31に差し込まれる。3段ブーム33(中間ブーム)は、2段ブーム32に差し込まれる。先端ブーム34は、吊荷を吊る部分であり、中間ブームに(3段ブーム33に)差し込まれる。なお、中間ブームの段数は、1段以下または3段以上でもよい。
【0022】
起伏装置35は、上部旋回体20に対してブーム30を起伏させる装置である。起伏装置35は、伸縮シリンダであり、油圧シリンダである。
【0023】
支持構造物40は、地面Gに対してブーム30を支持する構造物である。支持構造物40は、地面Gに接し、ブーム30を下側Z2から支持する。支持構造物40は、第1構造物50と、第2構造物60と、走行装置70と、を備える。
【0024】
第1構造物50は、
図2に示すように、ブーム30と走行装置70とにつながれる。第1構造物50は、棒状であり、上下方向Z、または、ほぼ上下方向Zに延びる。第1構造物50の上側Z1端部は、ブーム30に取り付けられ、基端ブーム31に取り付けられ、第1構造物用ブラケット31cに取り付けられる。第1構造物50の上側Z1端部は、固定ピンP31cにより、回転自在にブーム30に取り付けられる。ブーム30に対する第1構造物50の回転(固定ピンP31cでの回転)の中心軸の方向は、横方向Yである。第1構造物50は、伸縮可能である。第1構造物50は、第1構造物本体50aと、第1シリンダ57(第1長さ変更装置)と、を備える。
【0025】
第1構造物本体50aは、ブーム30と同様に、複数(例えば3本、3段)の箱型構造物(箱構造物(51〜53))を備え、入れ子構造を有する。第1構造物本体50aを構成する複数の箱型構造物には、箱構造物51と、箱構造物52と、箱構造物53と、がある。
【0026】
箱構造物51は、第1構造物本体50aを構成する複数の箱型構造物のうち、最も上側Z1に配置される箱型構造物である。箱構造物52は、箱構造物51の内側に差し込まれ、箱構造物51から下側Z2に突出する。箱構造物53は、箱構造物52の内側に差し込まれ、箱構造物52から下側Z2に突出する。
【0027】
第1シリンダ57(第1長さ変更装置)は、第1構造物50の(第1構造物本体50aの)長さを変える装置である。第1シリンダ57は、ブーム30に対する走行装置70の上下方向Zの位置(相対位置)を変えるように、第1構造物50の長さを変える。第1シリンダ57は、第1構造物50の上下方向Zの長さを変え、第1構造物50の長手方向の長さを変え、第1構造物50の中心軸方向の長さを変える。第1シリンダ57は、第1構造物本体50aのブーム30への接続部(固定ピンP31c)から、第1構造物本体50aの走行装置70への接続部(下記の固定ピンP71)までの長さを変える。第1シリンダ57は、第1構造物本体50aの内部に配置される。第1シリンダ57は、伸縮シリンダであり、油圧シリンダである(第2シリンダ67も同様)。第1シリンダ57の段数は、第1構造物本体50aの段数と同じであり、例えば3段である。第1シリンダ57の各段は、第1構造物本体50aの各段に固定される。具体的には例えば、第1シリンダ57の最も下側Z2の段のシリンダチューブは、固定ピンP53により、箱構造物53に固定される。第1シリンダ57の下側Z2から2段目のシリンダチューブは、固定ピンP52により箱構造物52に固定される。第1シリンダ57の最も上側Z1の段のシリンダロッドは、固定ピンP51により箱構造物51に固定される。
【0028】
第2構造物60は、ブーム30と第1構造物50とにつながれる。第2構造物60は、棒状であり、ほぼ水平方向に延び、ほぼ前後方向Xに延びる。第2構造物60は、例えば、前側X1部分ほど下側Z2に配置されるように傾斜する。第2構造物60の後側X2端部は、ブーム30に取り付けられ、基端ブーム31に取り付けられ、第2構造物用ブラケット31dに取り付けられる。第2構造物60の後側X2端部は、固定ピンP31dにより、回転自在にブーム30に取り付けられる。ブーム30に対する第2構造物60の回転(固定ピンP31dでの回転)の中心軸の方向は、横方向Yである。第2構造物60の前側X1端部は、第1構造物50に取り付けられ、固定ピンP31cと固定ピンP71(下記)との間で第1構造物50に取り付けられる。第2構造物60の前側X1端部は、箱構造物51に取り付けられ、箱構造物51の下側Z2端部の近傍に取り付けられる。第2構造物60の前側X1端部は、固定ピンP60により、回転自在に第1構造物50に取り付けられる。第1構造物50に対する第2構造物60の回転(固定ピンP60での回転)の中心軸の方向は、横方向Yである。第2構造物60は、伸縮可能である。第2構造物60は、第2構造物本体60aと、第2シリンダ67(第2長さ変更装置)と、を備える。
【0029】
第2構造物本体60aは、第1構造物本体50aと同様に、複数(例えば2本、2段)の箱型構造物(箱構造物(61〜63))を備え、入れ子構造を有する。第2構造物本体60aを構成する複数の箱型構造物には、箱構造物61と、箱構造物62と、がある。
【0030】
箱構造物61は、第2構造物本体60aを構成する複数の箱型構造物のうち、最も後側X2の箱型構造物である。箱構造物62は、箱構造物61の内側に差し込まれ、箱構造物61から前側X1に突出する。
【0031】
第2シリンダ67(第2長さ変更装置)は、第2構造物60の(第2構造物本体60aの)長さを変える装置である。第2シリンダ67は、ブーム30に対する第1構造物50の角度を変えるように第2構造物60の長さを変える。第2シリンダ67は、ブーム30の中心軸と第1構造物50の中心軸とがなす角度を変えるように第2構造物60の長さを変える。第2シリンダ67は、第2構造物60の前後方向Xの長さを変え、第2構造物60の長手方向の長さを変え、第2構造物60の中心軸方向の長さを変える。第2シリンダ67は、第2構造物本体60aのブーム30への接続部(固定ピンP31d)から、第2構造物本体60aの第1構造物50への接続部(固定ピンP60)までの長さを変える。第2シリンダ67は、第2構造物本体60aの内部に配置される。第2シリンダ67の段数は、第2構造物本体60aの段数と同じであり、例えば2段である。第2シリンダ67の各段は、第2構造物本体60aの各段に固定される。具体的には例えば、第2シリンダ67の前側X1の段のシリンダチューブは、固定ピンP62により箱構造物62に固定される。第2シリンダ67の後側X2の段のピストンロッドは、固定ピンP61により箱構造物61に固定される。
【0032】
走行装置70は、地面Gに接しながら地面Gを走行可能な装置である。走行装置70は、地面Gに直接接し、軌条(レール)上を走行するものではない。走行装置70は、第1構造物50に取り付けられ、第1構造物50の下側Z2端部に取り付けられ、箱構造物53の下側Z2端部に取り付けられる。走行装置70は、固定ピンP71により、回転自在に第1構造物50に取り付けられる。第1構造物50に対する走行装置70の回転(固定ピンP71での回転)の中心軸の方向は、横方向Yである。走行装置70は、フレーム71と、無限軌道73(走行部)と、を備える。
【0033】
フレーム71は、無限軌道73を支持する部分(構造物)である。フレーム71には、固定ピンP71が取り付けられる。
【0034】
無限軌道73(クローラ)は、
図3に示すように、地面Gに接する部分であり、走行装置70を走行させる部分である。走行装置70が固定ピンP71を中心に回転自在であるため、無限軌道73は、地面Gと平行に、地面Gに対して傾くことなく、地面Gに接する。
【0035】
(作動)
図1に示すクレーン1は、次のように作動する。
【0036】
(走行装置70の作動)
下部本体10に対して上部旋回体20が旋回するとき(上部旋回体20の旋回時)、走行装置70は、上部旋回体20の旋回に合わせて(追従して、連動して)、地面Gを走行する。このとき、走行装置70は、下部本体10に対する上部旋回体20の旋回中心を中心として走行し、下部本体10に対する上部旋回体20の旋回の角速度と同じ角速度で走行する。
【0037】
(第1構造物50の伸縮)
第1シリンダ57(
図2参照)が伸縮すると、第1構造物本体50aが伸縮する結果、第1構造物50が伸縮する。第1構造物50が伸縮すると、ブーム30に対する走行装置70の上下方向Zの位置が変わる。第1構造物50の伸縮は、例えば次のように制御される。
【0038】
凹凸を有する地面Gを走行装置70が走行すると、走行装置70が上下方向Zに移動する。このとき、地面Gの凹凸に走行装置70が追従するように、第1構造物50の伸縮が制御される。具体的には例えば、走行装置70が上下方向Zに移動することでブーム30が起伏しようとした場合、このブーム30の起伏が抑制されるように(例えば起伏しないように)、第1構造物50の伸縮が制御される。これにより、支持構造物40を備えないクレーン1で上部旋回体20を旋回させたときと同様に、上部旋回体20を旋回させることができる(地面Gの凹凸の影響を減らすことができる)。
【0039】
起伏装置35によりブーム30を起伏させるとき、ブーム30の起伏に追従するように、第1構造物50の伸縮が制御される。具体的には、ブーム30が下げられる(伏せられる)場合、ブーム30が適切に下がるように、第1構造物50が縮められる。ブーム30が起こされる場合、走行装置70が地面Gに接した状態を維持するように、第1構造物50が伸ばされる。
【0040】
(第2構造物60の伸縮)
第2シリンダ67を伸縮させると、第2構造物本体60aが伸縮する結果、第2構造物60が伸縮する。第2構造物60が伸縮すると、ブーム30に対する第1構造物50の角度が変わる。その結果、上部旋回体20に対する走行装置70の位置が変わる(走行装置70が位置決めされる)。第2構造物60の伸縮は、例えば次のように制御される。
【0041】
起伏装置35によりブーム30を起伏させるとき、ブーム30の起伏動作に追従するように、第2構造物60の伸縮が制御される。具体的には例えば、ブーム30が起伏したときに、地面Gに対する第1構造物50の角度の変化を抑制するように、第2構造物60の伸縮が制御される。さらに詳しくは、ブーム30が起伏したときに、ブーム30に対する第1構造物50の角度を変化させることで、地面Gに対する第1構造物50の角度が所定角度(例えば略垂直)に保たれるように、第2構造物60の伸縮が制御される。地面Gに対する第1構造物50の角度が略垂直である場合は、同角度が略垂直でない場合(傾いている場合)に比べ、第1構造物50は、ブーム30を適切に支持できる。
【0042】
(支持構造物40による吊り上げ能力の向上)
クレーン1では、支持構造物40がブーム30を下側Z2から支持する。よって、支持構造物40が設けられない場合に比べ、質量の大きい吊荷をブーム30により吊り上げることができる(吊り上げ能力が向上する)。さらに詳しくは、支持構造物40が設けられない場合に比べ、支持構造物40が設けられる場合、クレーン1の転倒支点が前側X1になる。クレーン1の転倒支点は、支持構造物40が設けられない場合は下部本体10の下側Z2端部かつ前側X1端部であり、支持構造物40が設けられる場合は支持構造物40の下側Z2端部かつ前側X1端部である。クレーン1の転倒支点が前側X1になるので、クレーン1が前側X1に転倒しようとする向きの転倒モーメントを小さくできる。よって、クレーン1の安定性が向上し、クレーン1の吊り上げ能力が向上する。
【0043】
(他の方式との比較)
なお、クレーン1の吊り上げ能力を向上させる手段(安定装置)には、リング支持型や、カウンタバランス型(カウンタウエイト台車を用いたもの)がある。
【0044】
リング支持型の安定装置(図示なし)は、下部本体10の周囲に設けられたリング状の軌条と、この軌条を走行する台車と、を備える。上部旋回体20、ブーム30、およびウエイト25のいずれかが、この台車に支持されることで、クレーン1の吊り上げ能力が上げられる。
しかし、リング支持型には次の問題がある。リング状の軌条は、下部本体10よりも一回り大きい軌条が、組立および分解される必要がある。そのため、軌条の、組立および分解の、工数、手間、および費用が増大するおそれがある。軌条の部品が多いことにより、また、軌条の質量が大きいことにより、輸送費が増大するおそれがある。軌条を走行する台車についても、上記の軌条と同様の問題がある。また、リング状の軌条を設置するために、大きな占有面積が必要になるおそれがある。軌条および台車の、組立、分解、および移動の、工数、手間、および費用がかかるため、クレーン1が移動式クレーンであっても、定置で使わざるを得ないおそれがある。
【0045】
カウンタバランス型の安定装置(図示なし)は、上部旋回体20よりも後側X2に設けられるカウンタウエイト台車を備える。カウンタウエイト台車は、地上を走行可能な台車と、この台車上に搭載されたカウンタウエイトと、を備える。このカウンタウエイト台車がおもりとして機能することで、クレーン1の吊り上げ能力が上げられる。
しかし、カウンタバランス型には次の問題がある。カウンタウエイト台車の質量が大きいことにより、また、カウンタウエイト台車の組立部品が多いことにより、輸送費が増大するおそれがある。カウンタウエイト台車は上部旋回体20よりも後側X2に配置されるので、クレーン1の後側X2端部での旋回半径が大きくなる結果、クレーン1の占有面積が増大するおそれがある。
【0046】
一方、本実施形態のクレーン1では、支持構造物40により吊り上げ能力を向上させることができる。よって、クレーン1の吊り上げ能力を向上させるために、リング状の軌条は不要であり、カウンタウエイト台車は不要である。そのため、リング支持型の上記の問題、および、カウンタバランス型の上記の問題を回避できる。クレーン1では、リング支持型やカウンタバランス型に比べ、小型軽量な構成でクレーン1の吊り上げ能力を向上させることできる。その結果、クレーン1の輸送費を削減できる。また、クレーン1による環境負荷を軽減でき、さらに詳しくは、クレーン1の組立分解時および輸送時の炭酸ガスの排出量を抑制できる。また、クレーン1を小型にできるので、クレーン1の設置スペースを狭くでき、クレーン1の狭所での作業性を改善することができる。
【0047】
(第1の発明の効果)
図1に示すクレーン1による効果は次の通りである。クレーン1は、下部本体10と、上部旋回体20と、ブーム30と、支持構造物40と、を備える。上部旋回体20は、下部本体10に旋回自在に取り付けられる。ブーム30は、上部旋回体20に起伏自在に取り付けられる。支持構造物40は、地面Gに対してブーム30を支持する。支持構造物40は、走行装置70と、第1構造物50と、第2構造物60と、を備える。走行装置70は、地面Gに接しながら地面Gを走行可能である。第1構造物50は、ブーム30と走行装置70とにつながれる。
[構成1]第2構造物60は、ブーム30と第1構造物50とにつながれる。
【0048】
クレーン1は、上記[構成1]を備える。よって、第2構造物60が上部旋回体20につながれる場合(「従来技術」とする)に比べ、第2構造物60を小型化できる。この効果の詳細は次の通りである。上部旋回体20から走行装置70までの前後方向Xの距離が大きいほど、クレーン1の転倒支点(走行装置70の下側Z2端部)が前側X1になり、クレーン1の吊り上げ能力が向上する。ここで、従来技術では、上部旋回体20から走行装置70までの前後方向Xの距離を大きくするほど第2構造物60を長く大きくする必要がある。一方、本実施形態のクレーン1は、上記[構成1]を備えるので、上部旋回体20から走行装置70までの前後方向Xの距離を大きくしても第2構造物60を長く大きくする必要がない。したがって、第2構造物60を短く小型化でき、その結果、支持構造物40を小型化できる。第2構造物60を短く小型化できる結果、第2構造物60の強度および剛性を確保でき、第2構造物60の質量を小さくでき、第2構造物60の分解の必要性を減らせる。
【0049】
クレーン1は、上記[構成1]を備える。よって、上部旋回体20の前方(スペースS)に第2構造物60が配置される必要がない。上部旋回体20の前方に第2構造物60が配置される必要がないので、上部旋回体20(具体的には運転室23)からの、上部旋回体20の前方の視界を確保できる。さらに、上部旋回体20の前方に第2構造物60が配置される必要がある場合に比べ、上部旋回体20の前方での作業(例えば地面G上での作業など)の作業性を向上させることができる。なお、上記「上部旋回体20の前方」(スペースS)は、第1構造物50および走行装置70と、上部旋回体20と、の間(前後方向Xの間)の空間である。
【0050】
第2構造物60を小型化できる結果、次の効果が得られる場合がある。クレーン1の組立および分解が行われる場合は、クレーン1の組立および分解それぞれの、工数、手間、および費用を抑制できる。第2構造物60の輸送が行われる場合は、この輸送の手間および費用を抑制できる。上記の組立および分解に用いられる機械(クレーン1とは別のクレーンなど)、ならびに、上記の輸送に用いられる機械(輸送車両など)による、炭酸ガスの排出量を抑制できる結果、環境負荷を抑制できる。
【0051】
(第2の発明の効果)
[構成2]クレーン1は、第1シリンダ57を備える。第1シリンダ57は、ブーム30に対する走行装置70の上下方向Zの位置を変えるように第1構造物50の長さを変える。
【0052】
クレーン1は、上記[構成2]を備える。よって、第1構造物50の長さを変えることで、ブーム30と走行装置70との上下方向Zの相対的配置を適切な配置にできる。その結果、具体的には例えば、地面Gの凹凸に追従するように走行装置70を走行させることなどができる(具体例の詳細は上記)。
【0053】
(第3の発明の効果)
[構成3]クレーン1は、第2シリンダ67を備える。第2シリンダ67は、ブーム30に対する第1構造物50の角度を変えるように第2構造物60の長さを変える。
【0054】
クレーン1は、上記[構成3]を備える。よって、第2構造物60の長さを変えることで、ブーム30に対する第1構造物50の角度を適切な角度にでき、その結果、ブーム30と走行装置70との相対的配置を適切な配置にできる。その結果、具体的には例えば、ブーム30の起伏動作に追従するように、走行装置70を移動させることなどができる(具体例の詳細は上記)。
【0055】
(第6の発明の効果)
[構成6]走行装置70は、
図3に示すように、地面Gに接する無限軌道73を備える。
【0056】
クレーン1は、上記[構成6]を備える。よって、走行装置70のうち地面Gに接する部分がタイヤ273(走行部)(
図4参照、下記)である場合に比べ、地面Gに接する面積を大きくでき、走行装置70が大きな荷重を支持できる。よって、支持構造物40は、ブーム30を適切に支持できる。
【0057】
(第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態のクレーン1(
図1参照)の走行装置270について、第1実施形態のクレーン1の走行装置70との相違点を説明する。なお、第2実施形態と第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した(共通点の説明を省略する点については他の実施形態の説明も同様)。
【0058】
走行装置270は、
図3に示す無限軌道73に代えて、
図4に示すタイヤ273を備える。タイヤ273は、例えば複数設けられ、1個のみ設けられてもよい。タイヤ273は、例えばゴム製である。
【0059】
(第5の発明の効果)
第2実施形態のクレーン1(
図1参照)による効果は次の通りである。
[構成5]
図4に示す走行装置270は、地面Gに接するタイヤ273を備える。
【0060】
クレーン1は、上記[構成5]を備える。よって、地面Gに接する部分が無限軌道73(
図3参照)の場合に比べ、地面Gを傷めにくい。
【0061】
(第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態のクレーン1(
図1参照)の走行装置370などについて、第1実施形態のクレーン1の走行装置70(
図2参照)などとの相違点を説明する。
図5に示すように、主な相違点は、走行装置370が位置決めシリンダ377(角度調整装置)を備える点である。他の相違点は、第1構造物50が第1構造物側取付部355を備える点と、走行装置370のフレーム71がフレーム側取付部371を備える点と、である。
【0062】
第1構造物側取付部355は、第1構造物50を構成し、位置決めシリンダ377が取り付けられる部分である。第1構造物側取付部355は、箱構造物53の下側Z2部分(例えば下側Z2端部)に固定され、箱構造物53から前後方向Xに突出し、箱構造物53から例えば前側X1に突出する。第1構造物側取付部355と箱構造物53とは、一体的に形成され(一体でなくてもよい)、L字状の構造物を構成する。
【0063】
走行装置370は、フレーム71と、位置決めシリンダ377と、を備える。フレーム71は、フレーム側取付部371を備える。フレーム側取付部371は、位置決めシリンダ377が取り付けられる部分である。
【0064】
位置決めシリンダ377(角度調整装置)は、第1構造物50に対する走行装置370の位置決めをする装置である。位置決めシリンダ377は、第1構造物50に対する走行装置370の角度(固定ピンP71を中心とする角度)を変え、かつ、この角度を規制(固定)する。位置決めシリンダ377は、伸縮シリンダであり、例えば油圧シリンダである。位置決めシリンダ377は、例えば、上下方向Zに延びるように配置される。位置決めシリンダ377は、第1構造物50とフレーム71とにつながれる。位置決めシリンダ377の一端部(具体的には上側Z1端部)は、固定ピンP355により、回転自在に第1構造物側取付部355に取り付けられる。位置決めシリンダ377の他端部(具体的には下側Z2端部)は、固定ピンP371により、回転自在にフレーム側取付部371に取り付けられる。固定ピンP355および固定ピンP371での上記の回転の中心軸の方向は、横方向Yである。位置決めシリンダ377は、例えば、無限軌道73よりも前側X1に配置され、無限軌道73よりも後側X2に配置されてもよい。
【0065】
(作動)
走行装置370などは次のように作動する。位置決めシリンダ377を伸縮させると、固定ピンP71を中心として、第1構造物50に対して走行装置370が回転する。
【0066】
地面Gに対する第1構造物50の角度が変わるとき(例えばブーム30の起伏時など)、地面Gに対する走行装置370の傾きの変化が抑制されるように、位置決めシリンダ377の伸縮が制御される。
【0067】
地面Gに傾斜がある場合(水平でない場合)、地面Gに無限軌道73が適切に接するように(無限軌道73の下側Z2端面と地面Gとが対向して接するように)、位置決めシリンダ377の伸縮が制御される。
【0068】
(第4の発明の効果)
第3実施形態のクレーン1(
図1参照)による効果は次の通りである。
[構成4]クレーン1は、
図5に示すように、第1構造物50に対する走行装置370の角度を変え、かつ、この角度を規制する、位置決めシリンダ377を備える。
【0069】
クレーン1(
図1参照)は、上記[構成4]を備える。よって、第1構造物50に対する走行装置370の角度を変え、この角度を規制することで、走行装置370が地面Gに適切に接するように調整できる。よって、支持構造物40は、ブーム30を適切に支持できる。
【0070】
(第4実施形態)
図6を参照して第4実施形態のクレーン1(
図1参照)の走行装置470について説明する。
【0071】
走行装置470は、フレーム71と、回転機構472と、無限軌道73と、を備える。フレーム71は、上部フレーム471aと、下部フレーム471bと、を備える。上部フレーム471aは、固定ピンP71により第1構造物50に取り付けられる。下部フレーム471bは、回転機構472を介して上部フレーム471aに取り付けられる。下部フレーム471bには、無限軌道73が取り付けられる。
【0072】
回転機構472は、第1構造物50に対して、上下方向Zの中心軸C回りに、走行装置470を回転自在とするための機構である。さらに詳しくは、回転機構472は、第1構造物50のうち少なくとも第2構造物60への接続部(固定ピンP60の位置)に対して、走行装置470の少なくとも無限軌道73を、中心軸C回りに回転自在とする。回転機構472は、上下方向Zの荷重を受けるスラスト軸受などであり、ピボット継手などでもよい。なお、回転機構472は、
図6では固定ピンP71よりも下側Z2に設けられるが、固定ピンP71よりも上側Z1に設けられてもよい(固定ピンP71が中心軸CC回りに回転してもよい)。例えば、回転機構472は、箱構造物53の下側Z2部分に設けられてもよい。
【0073】
無限軌道73(走行部)は、複数設けられ、例えば2つ設けられる。複数の無限軌道73が地面Gに接した状態で、無限軌道73が駆動されることにより、第1構造物50に対して中心軸C回りに複数の無限軌道73が回転する。さらに詳しくは、2つの(一対の)無限軌道73は、互いに平行に配置される。そして、2つの無限軌道73が、互いに反対方向に回転駆動することで、スピンターンをする(その場で旋回する)。その結果、複数の無限軌道73は、第1構造物50に対して中心軸C回りに回転し、地面Gに対して中心軸C回りに回転する。
【0074】
(第7の発明の効果)
第4実施形態のクレーン1(
図1参照)による効果は次の通りである。下部本体10は、地面Gを走行可能な下部走行体である。
[構成7]走行装置470は、第1構造物50に対して上下方向Zの中心軸C回りに回転自在である。
【0075】
上記[構成7]により、第1構造物50に対して走行装置470を中心軸C回りに回転させることで、走行装置470の(無限軌道73の)走行方向を変えることができる。よって、クレーン1を走行させるときや上部旋回体20を旋回させるときに、第1構造物50を縮ませ、走行装置470を地面Gから離す必要がない。さらに詳しくは、クレーン1を下部本体10により走行させるときに、クレーン1の走行方向と走行装置470の走行方向とを同じ向き(略同じ向きでもよい)にした場合、クレーン1を容易に走行させることができる。また、上部旋回体20を旋回させるときに、上部旋回体20の旋回方向と走行装置470の走行方向とを同じ向き(略同じ向きでもよい)にした場合、上部旋回体20を容易に旋回させることができる。
【0076】
(第8の発明の効果)
[構成8−1]走行装置470は、地面Gに接する複数の無限軌道73を備える。
[構成8−2]複数の無限軌道73は、地面Gに接した状態で駆動されることにより、第1構造物50に対して上下方向Zの中心軸C回りに回転する。
【0077】
上記[構成8−1]により、無限軌道73が1つのみ設けられる場合に比べ、無限軌道73の接地面積を大きくできるので、無限軌道73が大きな荷重を支持できる。また、無限軌道73が1つのみ設けられる場合に比べ、複数の無限軌道73が地面Gに対して安定するので、無限軌道73の走行安定性が向上する。
上記[構成8−2]により、第1構造物50に対して中心軸C回りに無限軌道73を回転させるための装置であって無限軌道73とは別の装置(回転専用の装置)を設ける必要がない。
【0078】
(変形例)
互いに異なる実施形態の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、
図5に示す位置決めシリンダ377を備える走行装置370は、無限軌道73に代えて(または加えて)、
図4に示すタイヤ273を備えてもよい。例えば、
図6に示す中心軸C回りに回転可能な複数の無限軌道73を、中心軸C回りに回転可能な複数のタイヤ273に代えてもよい。例えば、
図5に示す位置決めシリンダ377を備える走行装置370を、
図6に示すように中心軸C回りに回転可能としてもよい。
【0079】
上記の各実施形態の、機能や構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、
図2に示す第1構造物50の長さは固定でもよく、第1シリンダ57は設けられなくてもよい。例えば、第2構造物60の長さは固定でもよく、第2シリンダ67は設けられなくてもよい。
【0080】
上記の各実施形態の構成要素の数が変更されてもよい。例えば、第1構造物本体50aの箱構造物(51〜53)の数は、上記実施形態では3本であったが、2本以下でもよく、4本以上でもよい。第2構造物本体60aの箱構造物(61〜62)の数は、上記実施形態では2本であったが、1本でもよく、3本以上でもよい。
第1シリンダ57の段数は、上記実施形態では第1構造物本体50aの段数(3段)と同じであった。しかし、第1シリンダ57が複数本設けられる場合は、第1シリンダ57の段数が第1構造物本体50aの段数よりも少なくてもよい。
【0081】
図1に示すブーム30は、上記実施形態では長さが可変(伸縮可能)であったが、長さが固定されていてもよく、例えばラチスブームでもよい。起伏装置35は、上記実施形態では伸縮シリンダであったが、ブーム30に取り付けられた起伏ロープをウインチにより巻上および巻下するものでもよい。
【0082】
図6に示す走行装置470は、上記実施形態では無限軌道73の駆動により中心軸C回りに回転したが、回転専用の装置(例えば油圧モータなど)により回転してもよい。例えば、回転機構472よりも第1構造物50側(例えば上部フレーム471a)に油圧モータ駆動のピニオン(ギア)が設けられ、回転機構472よりも無限軌道73側(例えば下部フレーム471b)に上記ピニオンと噛み合うラックが設けられてもよい。また例えば、第1構造物50側にラックが設けられ、無限軌道73側にピニオンが設けられてもよい。また例えば、第1構造物50側および無限軌道73側のいずれか一方に設けられた油圧モータにより、第1構造物50側に対して無限軌道73側が直接回転させられてもよい。中心軸C回りの走行装置470の回転は、無限軌道73が地面Gに接した状態で行われなくてもよく、第1構造物50を縮めて無限軌道73を地面Gから離した状態で行われてもよい。無限軌道73を地面Gから離した状態で中心軸C回りに走行装置470を回転させる場合は、無限軌道73は1つのみ設けられてもよい。