(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得手段は、前記検体に関する情報として、前記検体のタンパク質濃度を特定する情報を取得するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の分析装置。
前記制御手段は、前記検体の種類が髄液である場合よりも尿である場合の方が、または、前記検体のタンパク質濃度が低い場合の方が、前記撮像手段による撮像の範囲が、前記試料の表面からより長い距離を含み、または、前記試料の表面からより短い距離を含まないように、前記撮像手段を制御するように構成されている、請求項9に記載の分析装置。
前記制御手段は、前記検体の種類が髄液である場合よりも尿である場合の方が、または、前記検体のタンパク質濃度が低い場合の方が、前記試料の量が多くなるように、前記撮像手段を制御するように構成されている、請求項13に記載の分析装置。
前記制御手段は、前記検体のタンパク質濃度Vについて、15mg/dL<V≦25mg/dLの場合の前記試料の量を、25mg/dL<V≦45mg/dLの場合の前記試料の量の1.3〜2.0倍に設定するように構成されている、請求項14に記載の分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しつつ、本開示に係る分析装置を含む分析システムの実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号が付され、それらの名称および機能は同じである。したがって、これらの説明は繰り返されない。
【0024】
[第1の実施の形態]
<1.分析システムの構成>
図1は、第1の実施の形態の分析システムの全体構成を示す図である。
図1に示されるように、分析システム1は、分析装置20と、情報処理装置40とを含む。分析装置20と情報処理装置40とは、通信可能である。分析装置20は、検体の分析結果を情報処理装置40へ出力する。情報処理装置40は、分析装置20から出力された分析結果を表示する。
【0025】
分析装置20は、種々の検体の分析に利用され得る。分析される検体は、一例として尿を含み、他の例として髄液(例えば、腰椎髄液)を含み、さらに他の例として後頭下液を含み、さらに他の例として脳室液を含む。
【0026】
分析装置20は、本体20Aと、搬送部20Bとを含む。本体20Aは、後述する制御部210、試料調製部222、撮像部223等を収容する。
【0027】
搬送部20Bは、検体を収容する容器(スピッツ)を搬送する。より具体的には、分析システム1において、各検体は、容器4に収容される。ラック7は、1本以上の容器4を収容する。搬送部20Bは、溝250を含む。搬送部20Bでは、1本以上の容器4が、ラック7に収容された状態で搬送される。
図1を参照して説明された容器4の搬送態様は、単なる一例である。分析装置20において、容器4は、ラック7に収容されることなく単独で搬送されてもよい。
【0028】
容器4の素材は、荷電イオンが生じにくいという観点から、プラスチック素材(ポリスチレン、ポリカーボン、ポリプロピレンなど)であることが好ましい。一般的に容器4の素材として利用されるガラスは、通常マイナスに帯電する。一方、PLL(ポリ−L−リジン)等でコートされた容器は、プラスに帯電する。このため、検体が白血球などのマイナスに帯電している細胞を含む場合、容器4の素材が検体(試料)内の要素(細胞等)の沈降速度に影響を及ぼし得る。ただし、容器4の素材が検体(試料)内の要素の沈降速度に影響を及ぼす場合であっても、キャリブレーションにより、当該影響を考慮した分析が実現され得る。
【0029】
本体20Aには、バーコードリーダ224が設けられている。各容器4には、各検体を識別するためのバーコードが付されている。分析装置20は、容器4のそれぞれのバーコードをバーコードリーダ224で読み取ることにより、検査対象の検体のそれぞれを識別する。
【0030】
<2.ハードウェア構成>
図2は、第1の実施の形態の分析システム1のハードウェア構成を説明するための図である。
図2には、分析装置20と情報処理装置40のハードウェア構成が示されている。まず、分析装置20のハードウェア構成を説明する。
【0031】
分析装置20は、制御部210と、通信部221と、試料調製部222と、撮像部223と、バーコードリーダ224と、搬送用駆動部225と、操作部226とを含む。制御部210は、CPU(Central Processing Unit)211と記憶部212とを有する。CPU211は、記憶部212に記憶されているコンピュータプログラムを実行すると共に、分析装置20の各部を制御する。記憶部212は、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置を含む。以下の説明において、記憶部212は、情報の記憶場所の一例として説明される。つまり、「記憶部212に記憶される」情報は、CPU211等の、本明細書において処理を実行するプロセッサがアクセス可能な記憶装置に格納されていれば、必ずしも記憶部212に記憶されている必要はない。
【0032】
通信部221は、制御部210からのデータを他の機器に送信し、他の機器からの情報を制御部210に入力する。通信部221は、たとえばネットワークインタフェースカードによって実現される。
【0033】
試料調製部222は、分析に必要な試料を調製する。試料は、たとえば、容器4内の検体と測定に必要な試薬とが混合攪拌されることによって、調製される。
【0034】
撮像部223は、試料調製部222によって調製された試料の画像を撮像する。撮像部223は、自動ピント合わせの機構を有する。これにより、試料調製部222で調製された試料は、撮像部223によって自動的に撮像される。撮像部223は、撮像された画像を、制御部210へ出力する。
【0035】
バーコードリーダ224は、容器4に付されたバーコードを読み、読み出した情報を制御部210へ出力する。
【0036】
CPU211は、撮像された画像を解析することによって、検体の分析結果を特定する。画像の解析の一例は、有形成分分析である。有形成分分析では、たとえば、CPU211は、検体の画像において予め記憶された有形成分の画像パターンが含まれるか否かを判断する。その後、CPU211は、検体の画像が有形成分の画像パターンを含むと判断すると、画像における当該有形成分の個数を計数し、当該個数を出力する。
【0037】
撮像部223は、1つの検体に対して、複数枚の画像を撮像し、制御部210へ出力してもよい。CPU211は、1つの検体に対する複数の画像のうち、予め定められた記憶部212に格納された画像パターン(たとえば、尿に関する特定の有形成分の画像パターン)を含む画像を、検体ごとに、当該有形成分に関連付けて、記憶部212に記憶してもよい。
【0038】
搬送用駆動部225は、搬送部20B(
図1参照)に設けられたモータ等を、ラック7(または、容器4)を搬送するために駆動する。制御部210は、搬送用駆動部225の動作を制御する。
【0039】
操作部226は、たとえば、本体20Aに設けられたハードウェアボタン等によって実現される。操作部226は、当該操作部226が操作されると、操作されたボタン等の種類に応じた信号をCPU210へ出力する。
【0040】
次に、情報処理装置40のハードウェア構成を説明する。情報処理装置40は、制御部410と、通信部420とを含む。制御部410は、たとえば汎用のコンピュータによって実現され、CPU411と、記憶部412と、キーボード413と、マウス414と、モニタ415とを有する。CPU411は、通信部420を介して、分析装置20等の外部の機器と通信する。通信部420は、たとえばネットワークインタフェースカードからなる。
【0041】
CPU411は、記憶部412に記憶されているコンピュータプログラムを実行し、キーボード413およびマウス414から情報の入力を受け付け、モニタ415に情報を出力する。CPU411は、分析装置20から入力されたデータを、モニタ415に表示することができる。
【0042】
<3.検体の分析の概要>
図3は、分析システム1における検体の分析の工程を説明するための図である。検体の分析は、主に
図3に示される5つの工程(工程(i)〜(v))を含む。
【0043】
工程(i)は、試料の調製である。より具体的には、検体ごとにプレパラート70が準備される。プレパラート70は、貯留部71と、凹部72と、カバーガラス73とを含む。カバーガラス73は、凹部72を覆う。工程(i)では、容器4(
図1参照)から検体(の一部)が抽出されて貯留部71へ注入され、さらに、貯留部71へ薬剤(例えば、染色液)が注入される。これにより、貯留部71において試料が調製される。
【0044】
薬剤の添加は省略され得る。つまり、工程(i)では、検体(の一部)の貯留部71への注入のみが実行され得る。
【0045】
工程(ii)は、貯留部71において調製された試料(検体+薬剤)の混合、および、加熱(加温)である。当該混合および加熱は、公知の技術によって実現されてもよい。加熱によって、試料は、分析に適した、予め設定された温度まで加熱される。混合および加熱の少なくとも一方は、不要な場合には省略され得る。
【0046】
工程(iii)は、貯留部71内の試料の、凹部72への導入である。より具体的には、貯留部71内の検体は、たとえば毛細管現象によって、凹部72へと導入される。試料の導入を促進するために、カバーガラス73に刺激が加えられてもよい。
【0047】
工程(iv)は、検体(試料)の撮像である。より具体的には、撮像部223は、凹部72へ導入された検体(試料)を、カバーガラス73の上方から撮像する。当該画像の撮像は、オートフォーカス機能により自動化されていてもよい。
【0048】
工程(v)は、工程(iv)で撮像された画像の解析である。解析の一例は、検体(試料)における所定の成分の含有量の特定を含む。
【0049】
分析システム1では、分析装置20が、工程(i)〜(iv)を実行する。工程(v)は、分析装置20によって実行されてもよいし、情報処理装置40によって実行されてもよい。
【0050】
図3の工程(i)〜(iii)は、分析装置20の試料調製部222(
図2)によって実行される。試料の画像の撮像(
図3の工程(iv))は、撮像部223によって実行される。撮像部223は、試料の画像を取得するためのカメラを含む。カメラは、たとえば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、3CCDイメージセンサ、または、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサである。撮像部223のカメラによって撮像される面積は、当該カメラの解像度および/またはレンズの倍率に依存する。たとえば、生物顕微鏡(オリンパス光学社製BX−50)に20倍の対物レンズを装着して、CCDカメラ(ソニー社製XC−003)で撮像する場合には被写体の撮像範囲が0.0432mm
2となる(横0.24mm、縦0.18mm)。
【0051】
<4.撮像条件と検体の特性の対応>
分析装置20は、検体の特性に応じて、試料の深さ方向における撮像対象の範囲を調整する。すなわち、試料において、撮像の対象となる要素(例えば、試料が尿検体から調製された場合には、尿中の有形成分)の沈降の態様は、検体の特性によって異なる。分析装置20は、検体の特性の変化によって当該検体中の要素の沈降の態様が変化しても、当該沈降の態様の変化に対応するように、撮像対象の範囲を調整する。これにより、分析装置20は、種々の特性の検体を分析できる。
図4は、互いに異なる態様で沈降する2種類の要素のそれぞれの、試料における沈降を説明するための図である。
【0052】
図4の例Aおよび例Bは、それぞれ、プレパラート70の凹部72に注入された試料において要素が沈降する様子を示す。例Aの試料SA内の要素は、たとえば、試料調製後5分間に、要素EAと記載された位置まで沈降する。矢印A1は、試料SA内の要素が沈降する向きを示す。一方、例Bの試料SB内の要素は、たとえば、試料調製後5分間に、実線で要素EB2と記載された位置まで沈降する。矢印B1,B2は、試料SB内の要素が沈降する向きを示す。
【0053】
図4の試料SAと試料SBのそれぞれを収容するプレパラート70のサイズは同一である。試料SAと試料SBの深さ方向のサイズは同一(たとえば、120μm)である。
【0054】
図4の例Bにおいて破線で示された要素EB1は、例Aの要素EAと同じ深さ方向の位置を示す。つまり、試料SA内の要素は、試料SB内の要素よりも、沈降が遅い。試料SAと試料SBの組合せの一例は、髄液を含む試料と尿を含む試料である。髄液の沈降速度は、尿の有形成分の沈降速度の、たとえば5分の1程度である。髄液の沈降が尿中の有形成分の沈降より遅い要因は、たとえば、髄液に多い白血球が貪食により浮遊することが考えられる。
【0055】
分析装置20は、試料において撮像対象となる要素が、撮像の対象とされる範囲まで沈降してきたタイミングで試料の画像を撮像するように、撮像の対象となる範囲を設定する。撮像対象の範囲の調整のために設定されるパラメータの具体例は、次の3つである。
【0056】
(1)撮像のタイミング
(2)撮像対象の深度
(3)試料の量
それぞれのパラメータは、概略的に、以下のように説明される。すなわち、「(1)撮像のタイミング」は、試料調製後、撮像が開始されるまでの時間を意味する。分析装置20は、試料の一定の深さを撮像対象とし、撮像対象の深さまで撮像対象の要素が沈降してくるタイミングで、試料の画像を撮像する。
【0057】
「(2)撮像対象の深度」は、試料の深さ方向における焦点位置を意味する。撮像部223は、カメラの焦点深度を変更することによって、撮像対象となる試料の深さを調整することができる。分析装置20は、試料の調製後一定のタイミングで、その時点で撮像対象の要素が存在することが想定される深さの画像を撮像する。
【0058】
「(3)試料の量」は、試料の深さを意味する。試料調製部222は、凹部72に注入する試料の量を調整することにより、試料の深さを調整することができる。撮像部223は、試料調製後一定のタイミングで、プレパラート70の上端から一定の距離に焦点を合わせて、試料の画像を撮像する。分析装置20は、上記タイミングにおいて、撮像対象の要素が、試料の深さ方向における焦点位置に位置するように、試料の深さを設定する。
【0059】
プレパラート70の上端部には、マーカ70Aが付されている。撮像部223は、マーカ70Aを基準として、試料の深さ方向の焦点位置を制御する。焦点位置は、コントロール粒子などを試料として用いた際の実績に基づいて設定されてもよい。
【0060】
図4では、試料の深さが深さDPで示されている。深さDPは、たとえば10〜1000μmであり、好ましくは80〜120μmである。設定されるパラメータとして「(3)試料の量」が採用されることによって試料の量が減らされたときの深さDPは、たとえば50μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。
【0061】
上記3つのパラメータの設定については、以下に、
図5〜
図13を参照して、詳細に説明される。
【0062】
<5.検体の特性に応じた撮像のタイミングの設定>
図5〜
図7を参照して、検体の特性に応じた撮像のタイミングの設定による撮像範囲の調整について説明する。
図5は、検体の特性に応じた2種類の撮像タイミングを説明するための図である。「撮像タイミング」とは、試料が調整されてから撮像が開始されるまでの時間である。
【0063】
図5の例(1)および例(2)において、両矢印SC1は、例(1)の試料SAおよび例(2)の試料SBのそれぞれにおける撮像範囲を模式的に示す。両矢印SC1の右側に付された4つの矢印は、両矢印SC1で示された撮像範囲における4つの撮像位置のそれぞれを示す。
【0064】
凹部72における試料SA,SBの深さの一例は、120μmである。両矢印SC1で示された撮像範囲の一例は、凹部72の底面から48μmの範囲である。両矢印SC1で示された範囲における撮像位置は、たとえば、凹部72の底面からの距離が互いに異なる4つの位置(底面から、48μm,38μm,28μm,18μm)である。撮像位置は、撮像範囲において等間隔に配列されていてもよいし、互いに異なる間隔で配列されていてもよい。間隔の一例は10μmであるが、これに限定されず、20μm等であってもよい。撮像位置は、凹部72の底面を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0065】
試料SAと試料SBにおける要素の沈降速度の差から、試料SB,SAの調製から一定時間経過後、試料SBにおいて要素EBが
図5に示された位置まで沈降する間に、試料SA内の要素は要素EA1で示された位置までしか沈降しない。つまり、試料調製から一定時間後、試料SBでは要素EBが両矢印SC1で示される範囲内まで到達していても、試料SAでは、要素は両矢印SC1で示される範囲まで到達していない。このような事態に備えて、分析装置20は、検体に含まれる要素の沈降が遅い場合、試料調製から撮像までの時間の長さを延ばす。これにより、例(1)の試料SAに対して、要素が要素EA2で示される位置まで沈降するのを待って、画像が撮像される。
【0066】
図6は、検体の特性と撮像のタイミングの関係の一例を示す図である。
図6に示されたテーブルは、検体の特性(検体の種類)ごとの、撮像のタイミング(試料調製から画像を撮像するまでの時間)を規定する。当該テーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。より具体的には、検体の種類が「髄液」である場合、撮像タイミングは「15分」に設定される。検体の種類が「尿」である場合、撮像タイミングは「5分」に設定される。
【0067】
図6に示されたように「髄液」の撮像タイミングに対する「尿」の撮像タイミングの時間の比(1/3)は、一例である。髄液の沈降速度は、尿中の有形成分の沈降速度の1/2〜1/5程度である。このことから、「髄液」の撮像タイミングに対する「尿」の撮像タイミングの時間の比は、1/2〜1/5の範囲内で設定されることが好ましい。
【0068】
図6のテーブルにおける「撮像実行レンジ」は、
図5において両矢印SC1で示された、試料SA,SBの深さ方向における撮像範囲を表わす。
図6の例では、試料SA,SBに対する撮像実行レンジは共通している。
【0069】
図6のテーブルにおける「試料の量」は、凹部72に注入される試料の量を表わす。
図6の例では、試料SA,SBの量は共通している。
【0070】
図7は、CPU210(
図2)が、試料の分析のために実行する処理の一例を示す図である。当該処理は、たとえば、CPU210が予め定められたプログラムを実行することによって実現される。
【0071】
図7を参照して、ステップS10で、CPU210は、検体の種類を特定する。検体の種類は、たとえば、操作部226の操作によって特定される。より具体的には、操作部226は、検体の種類のそれぞれに対応するボタンを含む。分析装置20を使用する検査員は、操作部226において、検体の種類に対応するボタンを操作する。CPU210は、操作されたボタンの種類に基づいて、検体の種類を特定する。
【0072】
他の例では、検体の種類は、外部の装置から入力される情報によって特定される。たとえば、検査員は、情報処理装置40に対して、検体(容器4)のバーコードに関連付けて、検体の種類を入力する。情報処理装置40は、分析装置20に対して、検体(容器4)のバーコードに関連付けて、検体の種類を送信する。CPU210は、検査対象の検体のバーコードを取得し、さらに、当該バーコードに関連付けられた検体の種類を取得することにより、検体の種類を特定する。
【0073】
次に、ステップS20で、CPU210は、
図6のテーブルにおいて、ステップS10で取得した検体の種類に対応した撮像タイミングを特定する。その後、制御はステップS30へ進む。
【0074】
ステップS30で、CPU210は、
図3を参照して説明されたように試料を調製する。調製される試料の量は、
図6のテーブルにおいて規定された量である。その後、制御はステップS40へ進む。ステップS10,S20の検体の種類と撮像タイミングの特定と、ステップS30の試料の調製とは、どちらが先に実行されても構わず、並行して行なわれてもよい。
【0075】
ステップS40で、CPU210は、ステップS30で調製された試料の画像を撮像する。ステップS40では、試料の調製からステップS20で特定された撮像タイミングだけ経過した時間の経過後に、画像が撮像される。撮像範囲は、
図6のテーブルにおいて「撮像実行レンジ」として規定される範囲である。その後、制御はステップS50へ進む。
【0076】
ステップS50で、CPU210は、ステップS40で撮像された画像を解析する。その後、制御はステップS60へ進む。
【0077】
ステップS60で、CPU210は、ステップS50における解析の結果を、情報処理装置40へ出力する。
【0078】
<6.検体の特性に応じた撮像対象の深度の設定>
図8〜
図10を参照して、検体の特性に応じた撮像対象の深度(撮像範囲)の設定について説明する。
図8は、検体の特性に応じた2種類の撮像対象の深度を説明するための図である。
図8の右方に示された例(2)は、
図5の例(2)と同様に、試料SBにおける要素EBの沈降を示す。
図8の左方に示された例(3)は、試料SAにおける要素EAの沈降を示す。
【0079】
試料SAにおける要素EAの沈降は、試料SBにおける要素EBの沈降より遅い。
図8において、例(2)および例(3)は、試料の調製から一定時間後の、試料SA,SBにおける要素EA,EBの位置を模式的に示す。例(2)と例(3)とを比較すると、要素EBの方が要素EAよりも下方まで沈降している。
【0080】
例(3)の両矢印SC3は、試料SAにおける撮像範囲を模式的に示す。両矢印SC3の右側に付された7つの矢印は、両矢印SC3で示された撮像範囲における7つの撮像位置のそれぞれを示す。両矢印SC3で示された撮像範囲の一例は、凹部72の底面から76μmの範囲である。両矢印SC3で示された範囲における撮像位置は、たとえば、凹部72の底面からの距離が互いに異なる7つの位置(底面から、76μm,66μm,56μm,46μm,36μm,26μm,16μm)である。撮像位置は、撮像範囲において等間隔に配列されていてもよいし、互いに異なる間隔で配列されていてもよい。間隔の一例は10μmであるが、これに限定されず、20μm等であってもよい。
【0081】
試料SAと試料SBにおける要素の沈降速度の差から、試料SA,SBの調製から一定時間経過後、試料SB内の要素は要素EB(例(2))で示された位置まで沈降する間に、試料SA内の要素は要素EA(例(3))で示された位置までしか沈降しない。例(3)の両矢印SC3は、例(2)の両矢印SC1よりも、試料のより浅い部分を含む。これにより、検体の特性の変化によって試料における要素の沈降の態様が変化しても、撮像時に要素が存在すると想定される部分が撮像範囲に含められ得る。
【0082】
図9は、検体の特性と撮像対象の深度との関係の一例を示す図である。
図9に示されたテーブルは、検体の特性(検体の種類)ごとの、撮像対象の深度(撮像範囲)を規定する。より具体的には、検体の種類が「髄液」である場合、撮像範囲は「44μm〜120μm」に設定される。検体の種類が「尿」である場合、撮像範囲は「72μm〜120μm」に設定される。
図9における撮像範囲は、試料の深さが120μmであるときの、試料の表面からの深さを表わす。つまり、
図9において、検体の種類が「髄液」である場合の撮像範囲は、例(3)の撮像範囲に対応する。検体の種類が「尿」である場合の撮像範囲は、例(2)の撮像範囲に対応する。当該テーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。
【0083】
図9のテーブルでは、「撮像タイミング」および「試料の量」は、検体の種類に拘わらず共通している。
図9の「髄液」および「尿」に対する撮像レンジは、髄液の沈降速度が尿中の有形成分の沈降速度の1/2〜1/5程度であることに基づく。つまり、撮像タイミングおよび検体の量が共通するときに、それぞれの試料においてそれぞれの速度で沈降する要素を撮像範囲内に含めるように、撮像範囲が設定される。
【0084】
図10は、CPU210(
図2)が、試料の分析のために実行する処理の他の例である。当該処理は、CPU210が予め定められたプログラムを実行することによって実現される。
図10の処理は、
図7の処理と比較して、ステップS20の制御の代わりに、ステップS22の制御を含む。
【0085】
ステップS22で、CPU210は、
図9のテーブルにおいて、ステップS10で取得した検体の種類に対応した撮像実行レンジを特定する。その後、制御はステップS30へ進む。
【0086】
ステップS30で、CPU210は、
図3を参照して説明されたように、試料を調製する。調製される試料の量は、
図9のテーブルにおいて規定された量である。その後、制御はステップS40へ進む。
【0087】
ステップS40で、CPU210は、ステップS30で調製された試料の画像を撮像する。なお、ステップS40では、試料の調製後、
図9のテーブルにおいて「撮像タイミング」として規定された時間の経過後に、ステップS22において特定された「撮像実行レンジ」の範囲の画像が、撮像される。その後、制御はステップS50へ進む。
【0088】
ステップS50で、CPU210は、ステップS40で撮像された画像を解析する。その後、制御はステップS60へ進む。
【0089】
ステップS60で、CPU210は、ステップS50における解析の結果を、情報処理装置40へ出力する。
【0090】
<7.検体の特性に応じた試料の量の設定>
図11〜
図13を参照して、検体の特性に応じた試料の量の設定について説明する。
図11は、検体の特性に応じた2種類の試料の量を説明するための図である。
図11の右方に示された例(2)は、
図5の例(2)と同様に、試料SBにおける要素EBの沈降を示す。
図11の左方には、例(4)が示されている。例(2)と例(4)の双方において、両矢印SC1は、撮像範囲を示す。
【0091】
図11では、例(2)と例(4)の双方は、試料の調製から一定時間経過後の要素の位置を模式的に示す。試料SAにおける要素EAの沈降は、試料SBにおける要素EBの沈降より遅い。
図11では、例(4)の試料SAの量が例(2)の試料SBの量よりも少ないため、当該一定時間経過後、例(2)および例(4)の双方において、要素が両矢印SC1で示された範囲に到達している。例(4)の試料SAの量の一例は、60μLである。例(2)の試料SBの量の一例は、120μLである。例(2)と例(4)では同じ形状のプレパラート70が利用され、プレパラート70では深さ方向において径が変化しない。このため、試料SAの量が試料SBの量の2分の1であれば、試料SAの深さは試料SBの深さの2分の1である(紙面の関係上、
図11における試料SAと試料SBの深さの比は、実際の深さの比とは異なる)。髄液の沈降速度は、尿中の有形成分の沈降速度の1/2〜1/5程度である。このことから、試料SA(髄液)の深さは、試料SB(尿など)の深さの1/2〜1/5の範囲内で設定されることが好ましい。
【0092】
図12は、検体の特性と試料の量との関係の一例を示す図である。
図12に示されたテーブルは、検体の特性(検体の種類)ごとの、試料の量を規定する。より具体的には、検体の種類が「髄液」である場合、試料の量は「60μL」に設定される。検体の種類が「尿」である場合、試料の量は「120μL」に設定される。当該テーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。
【0093】
図12のテーブルでは、「撮像タイミング」および「撮像実行レンジ」は、検体の種類に拘わらず共通している。
図12の「髄液」の試料の量は、「尿」の試料の量の1/2である。これは、髄液の沈降速度が尿中の有形成分の沈降速度の1/2〜1/5程度であることに基づく。つまり、撮像タイミングおよび撮像実行レンジが共通するときに、それぞれの試料においてそれぞれの速度で沈降する要素を撮像範囲内に含めるように、試料の量が設定される。
【0094】
図13は、CPU210(
図2)が、試料の分析のために実行する処理のさらに他の例である。当該処理は、CPU210が予め定められたプログラムを実行することによって実現される。
図13の処理は、
図7の処理と比較して、ステップS20の制御の代わりに、ステップS24の制御を含む。
【0095】
ステップS24で、CPU210は、
図12のテーブルにおいて、ステップS10で取得した検体の種類に対応した検体の量を特定する。その後、制御はステップS30へ進む。
【0096】
ステップS30で、CPU210は、
図3を参照して説明されたように、試料を調製する。調製される試料の量は、ステップS24で特定された量である。その後、制御はステップS40へ進む。
【0097】
ステップS40で、CPU210は、ステップS30で調製された試料の画像を撮像する。ステップS40では、試料の調製後、
図12のテーブルの「撮像タイミング」で特定される時間の経過後に、「撮像実行レンジ」で特定される範囲の画像が撮像される。
【0098】
ステップS50では、CPU210は、ステップS40で撮像された画像を解析する。その後、制御はステップS60へ進む。
【0099】
ステップS60では、CPU210は、ステップS50における解析の結果を、情報処理装置40へ出力する。
【0100】
[第2の実施の形態]
<1.分析システムのハードウェア構成>
第2の実施の形態の分析システムにおいて、分析装置20は、検体の特性として検体のタンパク質濃度を取得し、当該タンパク質濃度に応じて撮像対象の範囲を設定する。
図14は、第2の実施の形態の分析システム1のハードウェア構成を説明するための図である。
【0101】
図14の分析システム1の情報処理装置40の構成は、
図2の分析システム1と同様とすることができる。
図14の分析システム1の分析装置20は、
図2の分析システム1の分析装置20と比較して、タンパク質濃度検出部227をさらに含む。第2の実施の形態では、試料調製部222は、容器4(
図1)内の検体から、
図3を参照して説明されたような試料の調製に加えて、タンパク質濃度検出用の試料を調製し得る。タンパク質濃度検出部227は、試料調製部222によって調製された試料(検体)のタンパク質濃度を検出し、CPU210へ出力する。
【0102】
<2.検体の特性に応じた撮像のタイミングの設定>
図15〜
図18を参照して、検体の特性に応じた撮像タイミングの設定について説明する。
図15は、タンパク質濃度と撮像タイミングの関係を示す図である。
図15のテーブルでは、撮像タイミング(
図6等)の値が、タンパク質濃度の範囲に関連付けられている。より具体的には、検体(試料)のタンパク質濃度Vについて、「V≦15mg/dL」「15mg/dL<V≦25mg/dL」「25mg/dL<V≦45mg/dL」「V≦45mg/dL」」のそれぞれの範囲には、撮像タイミング「3分」「5分」「9分」「12分」のそれぞれが関連付けられている。
図15のテーブルでは、「撮像実行レンジ」(72〜120μm)および「試料の量」(120μL)は、タンパク質濃度Vの値に拘わらず、同じ値(範囲)が設定されている。当該テーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。
【0103】
図15のテーブルに示された撮像タイミングは、試料においてタンパク質濃度が変化したときの、試料の要素が一定時間において沈降する距離の変化に基づいて設定されている。
図16は、試料におけるタンパク質濃度の変化による、試料の要素の沈降距離の変化を説明するための図である。
【0104】
図16には、例(5)〜例(7)が示されている。例(5)〜例(7)のそれぞれは、試料調製から5分後の試料における要素の位置を示す。これらの例では、120μLの試料が深さ120μmで凹部72に収容されている。例(5)は、タンパク質濃度15mg/dLの試料についての位置を示す。例(6)は、タンパク質濃度25mg/dLの試料についての位置を示す。例(7)は、タンパク質濃度45mg/dLの試料についての位置を示す。
【0105】
例(5)では、線L5で示されるように、要素は試料表面から120μm(凹部72の底面)に位置する。例(6)では、線L6で示されるように、要素は試料表面から72μmに位置する。例(7)では、線L7で示されるように、要素は試料表面から40μmに位置する。
【0106】
図16の例(5)から例(7)の試料において要素が試料の表面から72μmの位置に到達するまでの時間は、
図17に示された式(1)〜(3)に従って算出される。
【0107】
すなわち、例(5)の場合(タンパク質濃度15mg/dL)、5分間で120μm沈降する要素が72μm沈降するのに要する時間は、約3分と算出される。例(6)の場合(タンパク質濃度25mg/dL)、要素が72μm沈降するのに要する時間は、5分である。例(7)の場合(タンパク質濃度45mg/dL)、5分間で40μm沈降する要素が72μm沈降するのに要する時間は、9分である。
【0108】
図15のテーブルでは、タンパク質濃度の範囲ごとの撮像タイミングは、各タンパク質濃度範囲の試料において要素が72μm沈降するのに要することが想定される時間に設定されている。これは、
図15のテーブルにおいて、撮像実行レンジが「72μm」を含むことに対応する。
【0109】
次に、試料の分析のための処理の内容を説明する。
図18は、CPU210(
図14)が、試料の分析のために実行する処理の一例を示す図である。
【0110】
図18の処理は、第1の実施の形態の
図7の処理と比較して、ステップS10の代わりにステップS12を含む。
【0111】
ステップS12で、CPU210は、検体のタンパク質濃度を取得する。その後、制御はステップS20へ進む。検体のタンパク質濃度は、タンパク質濃度検出部227によって検出されたものであってもよいし、操作部226に入力されたものであってもよいし、情報処理装置40等の他の装置から入力されたものであってもよい。
【0112】
図18の処理では、CPU210は、ステップS20で、
図15のテーブルにおいて、ステップS12で取得したタンパク質濃度に対応する撮像タイミングを、試料の画像の撮像における撮像タイミングとして設定する。
【0113】
第2の実施の形態では、タンパク質濃度15mg/dL程度の検体と、タンパク質濃度25mg/dL程度の検体と、タンパク質濃度45mg/dL程度の検体に対して、撮像タイミングを区別することができる。これにより、分析装置20は、腰椎髄液(タンパク質濃度15〜45mg/dL)と、後頭下液(タンパク質濃度15〜25mg/dL)と、脳室液(タンパク質濃度15mg/dL)を、互いに異なる条件下で分析することができる。
【0114】
図15に示された撮像タイミングの例は、一例である。検体のタンパク質濃度が低くなるほどより早い撮像タイミングが設定されるのであれば、
図15に示されたタンパク質濃度の範囲および撮像タイミングの値は適宜変更され得る。
【0115】
たとえば、タンパク質濃度Vについて、15mg/dL<V≦25mg/dLの場合の撮像タイミングの時間は、タンパク質濃度25mg/dL<V≦45mg/dLの場合の時間の1/3倍以上1/1倍未満程度に設定されることが好ましい。さらに好ましくは、15mg/dL<V≦25mg/dLの場合の撮像タイミングは3〜5分程度に、25mg/dL<V≦45mg/dLの場合の撮像タイミングは5〜9分程度に、それぞれ設定される。
【0116】
<3.検体の特性に応じた撮像対象の深度の設定>
図19〜
図20を参照して、検体の特性に応じた撮像対象の深度(撮像範囲)の設定について説明する。
図19は、タンパク質濃度と撮像実行レンジ(撮像範囲)の関係を示す図である。
図19のテーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。
【0117】
図19のテーブルでは、検体(試料)のタンパク質濃度Vについて、「V≦15mg/dL」「15mg/dL<V≦25mg/dL」「25mg/dL<V≦45mg/dL」「V≦45mg/dL」」のそれぞれの範囲に、撮像実行レンジ「100μmを超え120μm未満」「72μmを超え100μm未満」「40μmを超え72μm未満」「0μmを超え40μm未満」のそれぞれが関連付けられている。ここで示される距離は、試料表面からの距離を示す。
【0118】
図16に示されたように、試料調製から5分後のタンパク質濃度15mg/dLの試料では、要素は試料表面から120μm(凹部72の底面)に位置する。試料調製から5分後のタンパク質濃度25mg/dLの試料では、要素は試料表面から72μmに位置する。試料調製から5分後のタンパク質濃度45mg/dLの試料では、要素は試料表面から40μmに位置する。
図19中の各タンパク質濃度範囲に対応する撮像実行レンジは、試料調製から5分後の試料において、要素が位置することが想定される位置を含むように設定されている。
【0119】
次に、試料の分析のための処理の内容を説明する。
図20は、CPU210(
図14)が、試料の分析のために実行する処理の一例を示す図である。
【0120】
図20の処理は、第1の実施の形態の
図10の処理と比較して、ステップS10の代わりにステップS12を含む。
【0121】
ステップS12で、CPU210は、検体のタンパク質濃度を取得する。その後、制御はステップS22へ進む。
【0122】
図20の処理では、CPU210は、ステップS22で、
図19のテーブルにおいて、ステップS12で取得したタンパク質濃度に対応する撮像実行レンジを、試料の画像の撮像における撮像範囲として設定する。
【0123】
なお、
図19に示された撮像実行レンジの数値は一例である。検体のタンパク質濃度が高くなるほど、より浅い範囲の画像が撮影されるのであれば、タンパク質濃度範囲および撮像実行レンジの数値は、適宜変更され得る。
【0124】
<4.検体の特性に応じた試料の量の設定>
図21〜
図24を参照して、検体の特性に応じた試料の量の設定について説明する。
図21は、タンパク質濃度と試料の量の関係を示す図である。
図21のテーブルは、たとえば記憶部212に格納されている。
【0125】
図21のテーブルでは、検体(試料)のタンパク質濃度Vについて、「V≦15mg/dL」「15mg/dL<V≦25mg/dL」「25mg/dL<V≦45mg/dL」「V≦45mg/dL」」のそれぞれの範囲に、試料の量「168μL」「120μL」「88μL」「70μL」のそれぞれが関連付けられている。
図21のテーブルでは、他のテーブルと異なり、撮像実行レンジの値は凹部72の底面からの距離で示される。
【0126】
図21における試料の量は、試料調製から5分後の各タンパク質濃度の試料において、底面から48μmの位置まで到達するために設定される。タンパク質濃度に応じた試料の量の設定について、
図22および
図23を参照して説明する。
【0127】
図22は、タンパク質濃度15mg/dLの試料について説明する。
図22では、試料の量が調整される前の状態を示す例(5)と、試料の量が調整された後の状態を示す例(5X)とが示される。例(5X)では、試料の量が168μLのときの試料の表面が線LV12で示される。試料の量が120μLのときの試料の表面が線LV11で示される。
【0128】
タンパク質濃度15mg/dLの試料では、例(5)として示されるように、試料調製から5分経過後、要素は120μm(線L5)まで沈降する。例(5X)において示されるように試料表面が48μm上昇すれば、試料調製から5分経過後、要素は、試料の底面から48μm(線L5X)に位置すると想定される。このことから、タンパク質濃度15mg/dLの試料に対して設定される量は、式(4)に示されるように、168μLと算出される。
【0129】
タンパク質濃度15mg/dLの試料に対して
図22に示されるように試料の量が調整されることにより、試料調製から5分後に、試料の底面から48μmで画像が撮像される場合、当該試料内の要素がより鮮明に撮像される。
【0130】
図23は、タンパク質濃度45mg/dLの試料について説明する。
図23では、試料の量が調整される前の状態を示す例(7)と、試料の量が調整された後の状態を示す例(7X)とが示される。例(7X)では、試料の量が120μLのときの試料の表面が線LV21で示される。試料の量が88μLのときの試料の表面が線LV22で示される。
【0131】
タンパク質濃度45mg/dLの試料では、例(7)として示されるように、試料調製から5分経過後、要素は40μm(線L7)まで沈降する。例(7X)において示されるように試料表面を32μm下降させれば、試料調製から5分経過後、要素は、試料の底面から48μm(線L7X)に位置すると想定される。このことから、タンパク質濃度45mg/dLの試料に対して設定される量は、式(5)に示されるように、88μLと算出される。
【0132】
タンパク質濃度45mg/dLの試料に対して
図23に示されるように試料の量が調整されることにより、試料調製から5分後に、試料の底面から48μm(表面から72μm)で画像が撮像される場合、当該試料内の要素がより鮮明に撮像される。
【0133】
次に、試料の分析のための処理の内容を説明する。
図24は、CPU210(
図14)が、試料の分析のために実行する処理の一例を示す図である。
【0134】
図24の処理は、第1の実施の形態の
図13の処理と比較して、ステップS10の代わりにステップS12を含む。
【0135】
ステップS12で、CPU210は、検体のタンパク質濃度を取得する。その後、制御はステップS24へ進む。
【0136】
図24の処理では、CPU210は、ステップS24で、
図21のテーブルにおいて、ステップS12で取得したタンパク質濃度に対応する試料の量を特定する。
【0137】
その後、CPU210は、ステップS30で、試料を調製する。調製される試料の量は、ステップS24で特定された試料の量である。
【0138】
図21に示された数値は、一例である。検体のタンパク質濃度が高くなるほど試料の量が少なく設定されるのであれば、
図21に示されたタンパク質濃度の範囲および試料の量は変更され得る。
【0139】
たとえば、タンパク質濃度Vについて、15mg/dL<V≦25mg/dLのときの試料の量は、25mg/dL<V≦45mg/dLの場合の試料の量の、1.3〜2.0倍程度に設定されることが好ましい。
【0140】
さらに好ましくは、撮像部223が試料の底面からの距離が48μmから0μmまでの範囲の画像を試料調製から3〜5分後に撮像を開始する場合、タンパク質濃度Vについて、Vが15mg/dL以下の場合には試料の深さが168μmを超え、15mg/dL<V≦25mg/dLの場合には試料の深さが120μmを超え168μm以下に、25mg/dL<V≦45mg/dLの場合には試料の深さが88μmを超え120μm以下に、Vが45mg/dLを超える場合には試料の深さが48μmを超え88μm以下になるように、調整される。すなわち、さらに好ましくは、凹部72では、Vが15mg/dL以下の場合には試料の量は168μLを超え、15mg/dL<V≦25mg/dLの場合には試料の量が120μLを超え168μL以下に、25mg/dL<V≦45mg/dLの場合には試料の量が88μLを超え120μL以下に、Vが45mg/dLを超える場合には試料の量が48μLを超え88μL以下になるように、調整される。
【0141】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。