(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域は、前記第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と異なることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着シート。
前記第3の紫外線吸収剤は、前記第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域及び前記第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域の双方と重複する紫外線吸収波長領域を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の粘着シート。
第1の紫外線吸収剤又は前記第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と異なる紫外線吸収波長領域を有する第4の紫外線吸収剤を含む樹脂材料を厚さ19μm以上30μm以下のシート状に形成した樹脂フィルムからなるシート層の一方の面に、前記シート層とは異なる前記第1の紫外線吸収剤又は前記第4の紫外線吸収剤を含む樹脂材料を溶融押出しし硬化させることにより厚さ60μm以上85μm以下の樹脂層を形成して、前記シート層と前記樹脂層とが積層したフィルム層を形成するフィルム層形成工程と、
第1の紫外線吸収剤と異なる第2の紫外線吸収剤を添加して混練した接着剤を、前記シート層の他方の面に塗工して乾燥させることにより、粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
溶融したポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂の少なくとも一方を含む樹脂材料に、ベンゾトリアゾール系からなる第3の紫外線吸収剤を添加して混練し、前記樹脂層の前記シート層を形成した面と反対側の面に塗工して乾燥させることにより、表面保護層を形成する表面保護層形成工程と、
を備える粘着シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る粘着シート1を模式的に示す断面図であり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の粘着シート1は、フィルム層3と、フィルム層3の一方の面に形成された粘着剤層4と、フィルム層3の他方の面(粘着剤層4形成面と反対側の面)に形成された表面保護層2と、を備えている。
以下、
図1を参照して、粘着シート1の各層について詳細に説明する。
【0010】
<フィルム層>
フィルム層3は、耐候性を向上させるための第1の紫外線吸収剤を少なくとも含む樹脂材料により形成された、複数の層が積層された積層フィルムである。
フィルム層3は、透明であってもよく不透明であってもよい。また、フィルム層3は、着色されていても良く、未着色であってもよい。フィルム層3には、樹脂材料自体の光・熱・水などによる劣化を防止するために光安定剤が添加されていてもよい。
【0011】
図1に示すように、フィルム層3は、例えば、シート層3aと、樹脂層3cと、シート層3a及び樹脂層3cとの間に介在するアンカーコート層3bとを有している。すなわち、フィルム層3は、シート層3aと、シート層3aの表面に形成されたアンカーコート層3bと、アンカーコート層3bのシート層3a対向面とは異なる表面に形成された樹脂層3bとを有する3層構造を有している。
【0012】
樹脂層3c及びシート層3aを構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等や、これらの混合物、変性物、重合物等の熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、樹脂層3cは、例えば、シート層3aの表面に樹脂材料を溶融押出しし硬化させることにより形成される。また、シート層3aは、予め樹脂材料がシート状に形成された樹脂フィルムである。フィルム層3がシート層3aと樹脂層3cとを含む積層構造であることにより、樹脂層3cをシート層3aから剥離して単層構造とする工程が不要となる。このため、フィルム層3の製造が簡易であり、粘着層1の生産性が向上する。
【0013】
フィルム層3において、シート層3a及び樹脂層3cのうち表面保護層2と対向する層(
図1に記載の粘着シート1における樹脂層3c)は、第1の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。フィルム層3内の表面保護層2と対向する層(紫外線入射側の層)である樹脂層3cに第1の紫外線吸収剤が含まれることにより、アンカーコート層3b、シート層3cに入射する紫外線を抑制して、アンカーコート層3b、シート層3cの劣化を抑制する。
また、シート層3a及び樹脂層3cのうち表面保護層2と対向しない層(
図1に記載の粘着シート1におけるシート層3a)は、第1の紫外線吸収剤とは異なる第4の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。フィルム層3全体として、2種類以上の紫外線吸収剤を含むことにより、紫外線の吸収効果が向上し、フィルム層3の耐候性が向上する。
【0014】
なお、
図1では、シート層3aが粘着層4と対向し、樹脂層3cが表面保護層2と対向するようにフィルム層3が配置されているが、シート層3aが表面保護層2と対向し、樹脂層3cが粘着層4と対向するようにフィルム層3が配置されていてもよい。この場合、表面保護層2と対向する層はシート層aとなり、少なくともシート層aに第1の紫外線吸収剤が添加される。
また、樹脂層3cを形成する際に、樹脂層3cを構成する溶融樹脂がシート層3aに十分に密着する場合には、アンカーコート層3bが設けられていない2層構造であってもよい。
さらに、例えばフィルム層3において、表面保護層2と対向しない層に第1の紫外線吸収剤が含まれ、表面保護層2と対向する層に第1の紫外線吸収剤とは異なる紫外線吸収剤が含まれていてもよい。
【0015】
フィルム層3に添加される第1の紫外線吸収剤としては、粘着剤層4に添加される第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と異なる紫外線吸収波長領域を有する材料が挙げられる。フィルム層3に添加される第1の紫外線吸収剤は、粘着剤層4に添加される第2の紫外線吸収剤と異なる波長領域(粘着剤層4で吸収されにくい波長領域)の紫外線を吸収することができる。
第1の紫外線吸収剤は、第2の紫外線吸収剤よりも長波長側の紫外線を吸収する材料であることが好ましい。第1の紫外線吸収剤は、少なくとも波長350nm以上370nm以下の紫外線を吸収することが好ましい。
【0016】
このような第1の紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0017】
第1の紫外線吸収剤の添加部数は、フィルム層3の材料である樹脂材料に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下である。紫外線吸収効果を十分に発揮するとともに、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができるためである。
【0018】
フィルム層3に添加される第4の紫外線吸収剤としては、上述の第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と異なる紫外線吸収波長領域を有する材料等が挙げられる。例えば
図1に示す粘着シート1において、フィルム層3のシート層3aに添加される第4の紫外線吸収剤は、フィルム層3の樹脂層3cに添加される第1の紫外線吸収剤と異なる波長領域(フィルム層3の樹脂層3cで吸収されにくい波長領域)の紫外線を吸収することができる。
第4の紫外線吸収剤は、第1の紫外線吸収剤よりも短波長側の紫外線を吸収する材料であることが好ましい。第2の紫外線吸収剤は、少なくとも波長310nm以上350nm以下の紫外線を吸収することが好ましい。
【0019】
このような第4の紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−〔4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。
【0020】
第4の紫外線吸収剤の添加部数は、第4の紫外線吸収剤を添加する層の樹脂材料に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下である。紫外線吸収効果を十分に発揮するとともに、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができるためである。
【0021】
また、フィルム層3に添加される光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が用いられることが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ)−4−ピペリジニル]エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【0022】
フィルム層3は、所望の厚さに形成することが可能であるが、例えば厚さが80μm以上120μm以下であることが好ましい。粘着フィルム1が特に高い強度及び耐候性を備え、かつフィルム層3の製造時における生産性がより良好であるためである。
フィルム層3のシート層3aの厚さは19μm以上30μm以下であることが好ましい。樹脂層3c形成時に用いられるキャリアシートとして必要な強度が得られ、かつ十分な耐候性が得られるためである。
フィルム層3の樹脂層3cの厚さは60μm以上85μm以下であることが好ましい。フィルム層3を構成する基材層として十分な耐候性が得られるためである。
フィルム層3のアンカーコート層3bの厚さは1μm以上5μm以下であることが好ましい。シート層3a及び樹脂層3cの間の密着性を十分に高めつつフィルム層3の厚さが厚くなりすぎないためフィルム層3の生産性が向上する。
このようなフィルム層3は、光透過率が0.5%以下となる。したがって、フィルム層3の紫外線による劣化を抑制することができる。
【0023】
<粘着剤層>
粘着剤層4は、耐候性を向上させるための第2の紫外線吸収剤を含む接着剤により形成されている。また、粘着剤層4には、接着剤自体の光・熱・水などによる劣化を防止するために光安定剤が添加されていてもよい。接着剤としては、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤及びイソシアネート系接着剤等が挙げられるが、アクリル系接着剤が用いられることが好ましい。
【0024】
アクリル系接着剤としては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上と、それら(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の官能性モノマーとの共重合物等が挙げられる。
【0025】
ゴム系接着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とする接着剤等が挙げられる。
エポキシ系接着剤としては、脂肪鎖変性エポキシ樹脂、シクロペンタジエン変性エポキシ樹脂やナフタレン変性エポキシ樹脂等の炭化水素変性エポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
イソシアネート系接着剤としては、カプロラクタム系ブロックドイソシアネート、フェノール系ブロックドイソシアネート、トルエンジイソシアネート系等が挙げられる。
【0026】
以上のような接着剤は、非架橋型、架橋型のいずれのものも使用可能である。後者の場合、必要に応じ、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0027】
粘着剤層4に添加される第2の紫外線吸収剤としては、フィルム層3の少なくとも一つの層に添加される第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と異なる紫外線吸収波長領域を有する材料等が挙げられる。粘着剤層4に添加される第2の紫外線吸収剤は、フィルム層3に添加される第1の紫外線吸収剤と異なる波長領域(フィルム層3で吸収されにくい波長領域)の紫外線を吸収することができる。
第2の紫外線吸収剤は、第1の紫外線吸収剤よりも短波長側の紫外線を吸収する材料であることが好ましい。第2の紫外線吸収剤は、少なくとも波長310nm以上350nm以下の紫外線を吸収することが好ましい。
【0028】
このような第2の紫外線吸収剤として、例えば第4の紫外線吸収剤と同様のトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
第2の紫外線吸収剤の添加部数は、粘着剤層4の材料である接着剤に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下である。紫外線吸収効果を十分に発揮するとともに、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができるためである。
【0029】
また、粘着剤層4に添加される光安定剤としては、フィルム層3に添加される光安定剤と同様のヒンダードアミン系光安定剤が用いられることが好ましい。
【0030】
粘着剤層4は、所望の厚さに形成することが可能であるが、例えば厚さが20μm以上40μm以下であることが好ましい。粘着フィルム1がより高い強度及び耐候性を備え、かつ粘着剤層4の製造時における生産性がより良好であるためである。
このような粘着剤層4は、波長領域が310nm以上370nm以下の紫外線領域の光透過率が0.5%以下となる。したがって、フィルム層3の紫外線による劣化を抑制することができる。
【0031】
<表面保護層>
表面保護層2は、耐候性を向上させるための第3の紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂等の樹脂材料により形成されている。表面保護層2は、フィルム層3が視認できる程度に透明な層である。
また、表面保護層2には、光安定剤が添加されていてもよい。表面保護層2に用いられる熱可塑性樹脂としては、フィルム層3との密着性考慮して選定され、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等や、これらの混合物、変性物、重合物等が挙げられる。
【0032】
表面保護層2に添加される第3の紫外線吸収剤としては、フィルム層3の少なくとも一つの層に添加される第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域の少なくとも一部及びフィルム層3の他の層に添加される第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域の少なくとも一部の双方と重複する紫外線吸収波長領域を有する紫外線吸収剤等が挙げられる。
第3の紫外線吸収剤は、少なくとも波長340nm以上360nm以下の紫外線を吸収することが好ましく、波長310nm以上370nm以下の紫外線を吸収することがより好ましい。
【0033】
このような第3の紫外線吸収剤として、例えば第1の紫外線吸収剤と同様のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
第3の紫外線吸収剤の添加部数は、表面保護層3の材料である樹脂材料に対して0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下である。紫外線吸収効果を十分に発揮するとともに、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができるためである。
また、表面保護層2に添加される光安定剤としては、フィルム層3に添加される光安定剤と同様のヒンダードアミン系光安定剤が用いられることが好ましい。
【0034】
表面保護層2は、所望の厚さに形成することが可能であるが、例えば厚さが8μm以上15μm以下であることが好ましい。表面保護層2の厚さが上記範囲にある場合、粘着シート1の耐候性が十分に高くなり、かつ表面保護層2が厚すぎないために製造時において表面保護層2の乾燥性が低下してブロッキングが発生することを防止する。これにより、粘着シート製造時の生産スピードの低下や歩留まりの低下を抑制し、粘着シート1の生産性を向上させることができる。
【0035】
<効果>
以上のような本実施形態に係る粘着層は、以下の効果を有する。
(1)粘着シートのフィルム層を、樹脂層とシート層とを含む積層構造とすることにより、樹脂層をシート層から剥離して単層構造とする工程が不要となる。このため、フィルム層の製造が簡易であり、粘着層の生産性が向上する。
(2)フィルム層、粘着剤層及び表面保護層の各層に紫外線吸収剤を添加することで、各層において紫外線の吸収波長を異ならせることができ、いずれかの層で吸収されにくい波長領域の紫外線を他の層で吸収することができる。すなわち、各層が互いに紫外線の吸収波長を補うことができる。
(3)一つの層(例えば表面保護層)のみでなく、他の層(例えばフィルム層と粘着剤層)にも紫外線吸収剤が添加されることにより、紫外線吸収剤のブリードアウトの抑制にもつながる。
【0036】
(4)シート層及び樹脂層の間にアンカーコート層を備えることにより、樹脂層とシート層との間の密着性を向上させることができる。
(5)シート層及び樹脂層のうち、表面保護層と対向する層(紫外線入射側の層)が第1の紫外線吸収剤を含むことにより、アンカーコート層及びシート層に入射する紫外線を抑制して、アンカーコート層及びシート層の劣化を抑制する。
(6)表面保護層と対向しない層の少なくとも一つが第1の紫外線吸収剤とは異なる第4の紫外線吸収剤を含むことにより、フィルム層全体として、2種類以上の紫外線吸収剤を含み、紫外線の吸収効果が向上してフィルム層3の耐候性が向上する。
(7)フィルム層の厚さが80μm以上120μm以下であることにより、粘着フィルムが特に高い強度及び耐候性を備え、かつフィルム層の製造時における生産性が良好となる。
【0037】
(8)第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域と第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域とが異なることで、フィルム層と粘着剤層とが互いに紫外線の吸収波長を補うことができる。
(9)第3の紫外線吸収剤が、第1の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域及び第2の紫外線吸収剤の紫外線吸収波長領域の双方と重複する。これにより、粘着シートの紫外線の入射面となりやすい表面保護層において、広範囲の波長の紫外線を吸収し、フィルム層及び粘着剤層に入射される紫外線を低減することができる。これにより、フィルム層及び粘着剤層の劣化をより抑制し、粘着剤層が劣化して外壁や窓等の被接着体から剥がれたり、フィルム層及び粘着剤層の少なくとも一方の劣化によるフィルム層及び粘着剤層の剥離をより防止することができる。
(10)フィルムが熱可塑性樹脂を含むことにより、外壁や窓等が高温になった場合の粘着シートの劣化が抑制される。
【実施例】
【0038】
以下、本実施形態における粘着シートについて、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。なお、本実施形態は以下の実施例及び比較例によって制限されるものではない。<実施例1>
(フィルムの形成)
溶融したポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、プライムTPO F−3900(登録商標))に少なくとも波長350nm以上370nm以下の紫外線を吸収するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を添加し混
練した。続いて、上述の紫外線吸収剤及び光安定剤を混
練した溶融樹脂を、押し出し機を用いて厚さ80μmで厚さ30μmのキャリアフィルムを兼ねるポリプロピレンシート上に押し出し樹脂層を形成した。このとき、ポリプロピレンシート(以下、シート層と記載する)の樹脂層形成面には、アンカーコート層を形成し、アンカーコート層を介してシート層と樹脂層とが形成されるようにした。アンカーコート層は、ポリエステルポリオールを主剤としイソホロンジイソシアネートを硬化剤とする2液ウレタン樹脂系接着剤を、厚さ2μmになるよう塗布、乾燥して形成した。これにより、厚さ80μmの樹脂層と、厚さ2μmのアンカーコート層と、厚さ30μmのシート層とが積層された透明のフィルム(以下、透明フィルムと記載する)を形成した。
【0039】
(粘着層の形成)
2液架橋型のアクリル系接着剤(東洋インキ株式会社製、アリバイン BPS 6316)に、透明フィルムに添加したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と異なる、より短波長側の紫外線を吸収するトリアジン系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を添加し混
練した。続いて、上述の紫外線吸収剤及び光安定剤を混
練したアクリル系接着剤を、透明フィルムの他方の面(表面保護層形成面とは異なる面)に乾燥後の厚さが30μmとなるように塗工量を調整して塗工した。最後に、塗工したアクリル系接着剤を乾燥させて、厚さ30μmの粘着層を形成した。
【0040】
(表面保護層の形成)
溶融した熱硬化型の多官能アクリルウレタン樹脂(DICグラフィックス株式会社製)に、透明フィルムに添加したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と同等波長の紫外線及び粘着層に添加したトリアジン系紫外線吸収剤と同等波長の紫外線を吸収するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を添加し混
練した。続いて、上述の紫外線吸収剤及び光安定剤を混
練した多官能アクリルウレタン樹脂を、透明フィルムの一方の表面上に乾燥後の厚さが6μmとなるように塗工量を調整して塗工した。最後に、塗工した多官能アクリルウレタン樹脂を乾燥させて、厚さ6μmの表面保護層を形成した。
以上により、透明フィルムの一方の面に表面保護層が形成され、透明フィルムの他方の面に粘着層が形成された粘着シートを作製した。
【0041】
<比較例1>
溶融したポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、プライムTPO F−3900(登録商標))に実施例1と同様のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を添加し混
練した。続いて、上述の紫外線吸収剤及び光安定剤を混
練した溶融樹脂を、押し出し機を用いて厚さ80μmで厚さ30μmのキャリアフィルムを兼ねるポリプロピレンシート上に押し出し樹脂層を形成した。このとき、ポリプロピレンシートの樹脂層形成面には、アンカーコート層を形成しなかった。最後に、ポリプロピレンシートから樹脂層を剥がすことにより、厚さ80μmの樹脂層からなる透明のフィルム(以下、透明フィルムと記載する)を形成した。
これ以外は実施例1と同様にして、透明フィルムの両面に表面保護層及び粘着層がそれぞれ形成された粘着シートを作製した。
【0042】
[評価]
上述した実施例1及び比較例1の粘着シートについて、以下の評価を行った。
【0043】
(促進耐候性試験)
各実施例及び各比較例の粘着シートに対して、以下の条件で促進耐候性試験を行い、各粘着シートの表面のひび割れ・クラックの確認を行った。
【0044】
(条件)
試験機:メタルウェザー試験機(ダイプラ・ウィンテス株式会社製 ダイプラ・メタルウェザー KU−R5DC1−A)
条件:照度65mW/cm
2、Light(53℃、50%RH)20時間の後、Dew(30℃、95%RH)4時間
散水条件:Dewの前後に30s
以上の処理を1サイクルとして、実施例及び比較例の各粘着シートに対して促進耐候性試験を144時間実施した。
試験後、粘着シート表面のひび割れ・クラックの確認を行った。
【0045】
促進耐候性試験では、粘着シート表面のひび割れ・クラックについて、表面のひび割れ・クラックが全く発生しなかった場合を「◎」、微小なひび割れ・クラックが発生した場合を「○」、大きなひび割れ・クラックが発生した場合を「×」として評価した。
【0046】
(粘着シートの生産性の評価)
各実施例及び各比較例の粘着シートについて、生産性の評価を行った。
生産性の評価について、生産性が非常に良好であった場合を「◎」、生産性が劣る場合を「△」、生産性が大きく劣る(例えば粘着性シートの製造が不可能である)場合を「×」とした。
【0047】
以下の表1に、実施例及び比較例の構成を示す。また、以下の表2に、評価結果を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
(考察)
表1から分かるように、フィルム層(透明フィルム)形成時にキャリアシートをフィルム層のシート層として用いる実施例1の粘着シートは、比較例1の粘着シートと比較して生産性が顕著に向上した。これは、比較例1のような、キャリアシートから樹脂層を剥がす工程が不要であるため、粘着シートの製造時間が短縮されたためであると考えられる。
また、実施例1の粘着シートは、比較例1の粘着シートと比較して耐候性が向上した。これは、比較例1の粘着シートよりもフィルム層が厚いため、粘着シートとしての安定性が向上したためであると考えられる。また、実施例1の粘着シートのフィルム層では、複数層のうち表面保護層に対向する層に紫外線吸収剤を添加しているため、表面保護層に対向していない層への紫外線の影響を低減し、耐候性が向上したと考えられる。
【0051】
以上のように、本実施形態の粘着シートは、実施例1のように、フィルム層がシート層と樹脂層とを有し、シート層及び樹脂層の少なくとも一方が紫外線吸収剤を含んでいる。また、本実施形態の粘着シートは、実施例1のように、シート層及び樹脂層の間に介在するアンカーコート層を有することが好ましい。本実施形態の粘着シートは、実施例1のように、積層構成を有するフィルム層の表面保護層と対向する層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0052】
[その他]
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。