特許第6728945号(P6728945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6728945
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】吸収体製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20200713BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   A61F13/15 321
   A61F13/532 200
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-92089(P2016-92089)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-196347(P2017-196347A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧山 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】野田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 竜祐
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−115999(JP,A)
【文献】 特開2013−123513(JP,A)
【文献】 特開2013−188493(JP,A)
【文献】 特開2015−059287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維素材と吸水性ポリマーとを第1空気流で混合し、ダクト内を流れる第1空気流を用いて搬送し、周方向に回転する回転ドラムの外周面に前記繊維素材と前記吸水性ポリマーとの混合物を堆積させることによって、吸収体を製造する吸収体製造装置であって、
前記繊維素材の投入部および前記吸水性ポリマーの投入部よりも前記第1空気流の下流側において、前記回転ドラムの外周面に吸収体に溝を設けるための第2空気流を提供する供給管を備えたことを特徴とする吸収体製造装置。
【請求項2】
前記供給管は、前記第1空気流の流れ方向の形状が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1に記載の吸収体製造装置。
【請求項3】
前記供給管は、供給部の前記第1空気流上流側の位置に連結されており、
前記供給部は、前記第2空気流の流れ方向に向かって内部の断面積が漸増する前記第2空気流の通路を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収体製造装置。
【請求項4】
前記第2空気流は、前記第1空気流の流速と同速であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の吸収体製造装置。
【請求項5】
前記第2空気流は、前記供給管の一部を大気開放することによって提供されることを特徴とする請求項4に記載の吸収体製造装置。
【請求項6】
前記供給管は、供給部の前記第1空気流上流側の位置に連結されており、
前記供給部は、前記回転ドラムの回転方向に沿って延在する開口を有する、とともに、前記回転ドラムの軸に交差する方向に沿った断面が略三角形状を有し、前記第1空気流の上流側に位置する頂点が丸みを帯びていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の吸収体製造装置。
【請求項7】
前記第2空気流は、前記吸収体を形成する素材を搬送することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の吸収体製造装置。
【請求項8】
繊維素材と吸水性ポリマーとを第1空気流で混合し、ダクト内を流れる第1空気流を用いて搬送し、回転ドラム外周面に前記繊維素材と前記吸水性ポリマーとの混合物を堆積させることによって、吸収体の製造を行う吸収体製造方法であって、
前記回転ドラム外周面に吸収体に溝を設けるための第2空気流を提供することにより、前記吸収体にを形成することを特徴とする吸収体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品には、液体や体液(以下、単に液体という)を吸収する吸収体が使用されている。吸収体を製造する方法としては、例えば、繊維素材と吸水性ポリマーをダクト内に散布させ、ダクトと対向する位置に、回動する回転ドラムの外周面の成形型を位置づけ、成形型に繊維素材等を堆積させて、吸収体を形成するものがある。また、吸収した液体を各方向へすばやく拡散させるための溝やスリットをもつ吸収体を製造するものもある。例えば、特許文献1では、回転ドラムの成形型に凸部を形成しておき、繊維素材や吸水性ポリマーを堆積させることで溝やスリットを持つ吸収体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−273842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、凸部が加工された成形型を用いて吸収体を製造するものであるので、それぞれの凸部の加工特性によって溝やスリットにムラが生じ、結果として吸収体の品質にばらつきが生じることがある。溝やスリットのムラは、成形型自体の加工特性によるものであるため、吸収体の形成後に修正することは困難である。
【0005】
よって、本発明の目的は、吸収体に、加工特性によるムラのない溝やスリットを形成することのできる吸収体製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、繊維素材と吸水性ポリマーとをダクト内を流れる第1空気流を用いて搬送し、周方向に回動する回転ドラムの外周面に堆積させることによって、吸収体を製造する吸収体製造装置であって、前記繊維素材の投入部および前記吸水性ポリマーの投入部よりも前記第1空気流の下流側において、前記回転ドラムの外周面に第2空気流を提供する供給管を備えたことを特徴とする吸収体製造装置を提案する。
【0007】
本発明は、繊維素材と吸水性ポリマーとをダクト内を流れる第1空気流を用いて搬送し、回転ドラムの外周面に堆積させ、吸収体の製造を行う吸収体製造方法であり、前記回転ドラムの外周面に第2空気流を提供することで、前記吸収体に凹部を形成することを特徴とする吸収体製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、供給装置から空気流や吸収体材料を的確に提供することで、加工特性によるムラなどがない凹部を形成でき、吸収体の品質や吸収性効率の向上に資することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の模式的な側断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の模式的な斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る供給装置の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る供給装置の断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の平面図である。
図6】(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る吸収体製造装置の模式的な斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る吸収体製造装置の正面図である。
図9】(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る吸収体製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1および図2は、それぞれ、本発明の第1実施形態の吸収体製造装置の模式的な側断面図および斜視図である。吸収体製造装置1は、繊維素材3と吸水性ポリマー5とを混合させた吸収体材料9を堆積して吸収体7を製造するものであり、吸収体材料9を含む第1空気流2を、回転ドラム10の外周面12に搬送し、吸収体材料9を堆積させるためのダクト4を備える。
【0011】
ダクト4は、上壁、下壁および左右に側壁を有する略矩形の断面をなす筒形状であり、ダクト4における、回転ドラム側とは反対の端部付近に繊維素材3を投入する繊維素材投入装置20が配設され、繊維素材投入装置20と回転ドラム10との間に吸水性ポリマー供給管31が配設されている。
【0012】
繊維素材投入装置20は、繊維素材3の原反から引き出された繊維素材3をシート状にしたものを解繊して繊維素材3を得る解繊機6と、解繊機6から送り出された繊維素材3を気流に乗せて搬送するための投入口21を有している。繊維素材3として、例えば、広葉樹および針葉樹から得られる木材パルプや、ケナフ、亜麻などから得られる非木材パルプなどが挙げられる。
【0013】
吸水性ポリマー供給管31は、吸水性ポリマー5を供給する管状部材であり、ダクト4内に位置している。吸水性ポリマー5、例えば、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;SAP)などがある。高吸水性ポリマーには、例えば、デンプン系やセルロース系や、合成樹脂系などを用いることができる。これらを混合させた吸収体材料9を第1空気流2により搬送することで回転ドラム10の外周面12に堆積させる。
【0014】
回転ドラム10は、第1空気流2に対して直交する回転軸を有する円筒体であり、回転ドラム10の外周面12には、吸収体材料9を堆積させるための吸気口(図示せず)を有している。回転ドラム10の内側から吸引力を作用させることで、ダクト4内から排出される第1空気流2に含まれる吸収体材料9を効率よく堆積させる。
【0015】
また、ダクト4は、外周面12に対し好ましい状態で気流が搬送され、吸収体材料9の所望の堆積が生じるように構成される。すなわち、ダクト4内の上壁、下壁方向には気流の乱れを生じさせることで繊維素材3と吸水性ポリマー5とがよりよい割合で混合されようにする。一方、ダクト4の左右壁方向に気流が乱れると吸収体材料9を堆積する上で左右のバランスが低下するため、左壁、右壁方向には気流が乱れないようにする。
【0016】
さらに本実施形態では、回転ドラム10の外周面12と対向するように、第2空気流103を供給する一対の供給装置100を配置する。一対の供給装置100は、それぞれ供給管101と供給部102とを有している。供給管101の先端と供給部102の第1空気流上流側の頂点付近とが連結されており、供給管101はダクト4の左右の側壁から回転ドラム軸と平行に延在している。なお、供給装置100の強度は第1空気流2に煽られて、撓らない程度の強度があればよい。
【0017】
供給管101の第1空気流上流側は、第1空気流2により搬送されてきた吸収体材料9が堆積しないように丸みを帯びた形状になっている。また、供給管101の第1空気流下流側の形状も、丸みを帯びていてもよい。要は、供給管101は吸収体材料9が堆積しない形状、かつ左壁、右壁方向には気流を乱さない形状を有していればよい。
【0018】
供給管101に吸収体材料9を堆積させないようにする理由は、堆積物が剥離すると、これが外周面12に向かって搬送され、吸収体に付着することで、吸収体の品質低下につながるからである。
【0019】
また、供給管101は、上記の形状に加え、上壁、下壁方向に気流を乱す形状を有しているのが好ましい。これにより、吸収体材料9がより均一に混ざり合うため、吸収体7において体液の吸収速度と保持力のバランスが良くなる。
【0020】
以上を考慮すると、供給管の横断面は、第1空気流の流れ方向の上流側が膨らんだ涙滴形状を有していることが好ましい。
【0021】
なお、図示の実施形態では、供給管101が左右の側壁から突出して延在しているものとしたが、これに限られない。例えば、供給管101を上壁から突出させてもよく、その供給管が第1空気流の流れ方向の形状が左壁、右壁方向に気流を乱さない形状を有していればよい。
【0022】
図3および図4は、それぞれ、本発明の第1実施形態による供給装置の斜視図および断面図である。供給管101は、その一部が大気開放されており、これにより、第2空気流103がダクト4内に導入すなわち供給される。また、このような導入を行うことで、第1空気流2と第2空気流103は同速となるため、供給部102内およびその周辺の気流を乱すことはない。従って、回転ドラム10の外周面12に第2空気流103を供給することで、吸収体材料9が混入することなく吸収体7に溝またはスリットを形成することができる。
【0023】
供給部102内には第2空気流103を通過させるための通路が画成され、これは供給管101の接続口から供給口104に向かうに従って漸増する幅を有している。上述した供給部102内の通路を用いることで、ダクト4の第1空気流2の流れを乱すことなく供給部102内に十分な空気を供給し、吸収体7に供給口104の全体から均等な第2空気流103を供給することができる。
【0024】
また、供給部102は、回転ドラム10の回転方向11に沿って延在する供給口104を有しており、回転ドラム軸に交差する方向に沿った断面が略三角形状を有している。供給部102の第1空気流2の上流側の頂点は、第1空気流2を乱さないために丸みを帯びた形状を有しており、吸収体材料9が頂点に堆積しないようになっている。
【0025】
回転ドラム10の外周面12から15mm〜30mm離れた位置に供給部102を配置する。これは、供給装置100の第2空気流103の供給を停止した場合、凹部8を形成しない吸収体7の製造が可能であることを意味する。つまり、供給部102と回転ドラム10の外周面12との距離が近すぎると回転ドラム10の外周面12の吸気の妨げになるので、第2空気流103を停止した場合において、不所望の凹部が形成されないようにするためである。
【0026】
図5は、本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の平面図であり、回転ドラムに対向する方向から見た状態を示している。第1空気流2に搬送されてきた吸収体材料9は、供給装置100によって一部は遮断されるが、それ以外は回転ドラム10の外周面12に堆積される。供給装置100によって遮断された部分は、遮断される時間が長ければ長いほど凹部8が深く形成される。
【0027】
次に、図6を用いて、回転ドラム10の外周面12に吸収体材料9の堆積について、詳細に説明をする。
【0028】
図6(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態に係る吸収体製造装置の断面図である。図6(a)は、図5のVIA−VIA´の断面図であり、この位置では、回転ドラム10の外周面12の吸気により、第1空気流2より搬送されてきた吸収体材料9が外周面12に堆積している。次に、図6(b)は、図5のVIB−VIB´の断面図である。この位置では、第1空気流2によって搬送されてきた吸収体材料9は、供給部102から第2空気流103が供給されている外周面12には堆積せず、供給されていない外周面12には堆積する。さらに、図6(c)は、図5のVIC−VIC´の断面図である。この位置では、第1空気流2より搬送されてきた吸収体材料9が回転ドラム10の外周面12に堆積する。図6(b)に示す位置で堆積されなかった部分にも堆積は生じるが、堆積されてきた部分よりは低く堆積する。以上によって、凹部8を有した吸収体7を製造することができる。
【0029】
ここで、供給部102の回転方向11に沿った供給口104の延在長さを本発明の第1実施形態よりも大とすると、第1空気流2から吸収体材料9をより長く遮断するので凹部8は深いものが形成でき、供給部102の長さを本発明の第1実施形態よりも小とすると、凹部8の浅いものが形成できる。また、供給部102の幅を本発明の第1実施形態よりも大とすると、太い凹部が形成でき、供給部102の幅を本発明の第1実施形態よりも小とすると、細い凹部が形成できる。
【0030】
(第2実施形態)
続いて、図7および図8を参照し、第2実施形態を説明する。図7および図8は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る吸収体製造装置の斜視図および平面図である。第1実施形態に加え、ダクト4内に供給装置100をもう一対、回転ドラム10の外周面12に対向し、かつダクト4の上壁に近い位置に配設する。以下では、下壁に近い一対の供給装置100を第1供給装置105として参照し、上壁に近い一対の供給装置100を第2供給装置106として参照する。
【0031】
かかる構成において、第1供給装置105には、第2空気流103のみを供給させ、第2供給装置106には、第1空気流2に搬送される吸収体材料9とは別の吸収体材料9´を、第2空気流103に混ぜて供給する。
【0032】
図9(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態に係る吸収体製造装置の断面図である。図9(a)は、図8のIXA−IXA´の断面図であり、この位置では、回転ドラム10の外周面12を第1供給装置105により遮断することで、遮断された部分には第1空気流2により、搬送されてきた吸収体材料9は堆積せず、他の部分には堆積する。次に、図9(b)は、図8のIXB−IXB´の断面図である。この位置では、遮断されているので遮断されていない部分には堆積する。
【0033】
さらに、図9(c)は、図8のIXC−IXC´の断面図である。この位置では、第2供給装置106から吸収体材料9´を含んだ第2空気流103を供給するため、凹部8に吸収体材料9´が堆積し、他の部分にも第1空気流2に搬送されてきた吸収体材料9を堆積する。
【0034】
このとき、第1空気流2から搬送される吸収体材料9のほうが、別の吸収体材料9´よりも吸水性が高いものにすることで、凹部8を液体が流れやすくすることができ、より遠くに拡散し、すばやく吸水することができる。
【0035】
(その他)
なお、本発明は、上述した実施形態に限られること無く、適宜の変形、修正および代替などが可能である。例えば、上記実施形態の凹部8を形成するだけでなく、下壁に近い位置から上壁の位置に向かって、供給部102の幅を徐々に広がる構造にすることで、V字の溝が形成されるようにしてもよい。また、供給装置100の配設する位置によって、深い凹部8から浅い凹部8まで形成してもよく、さらに供給装置100を増やすことで凹部8をいくつも形成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 吸収体製造装置
2 第1空気流
3 3´ 繊維素材
7 7´ 吸収体
8 凹部
10 回転ドラム
12 外周面
100 供給装置
101 101´ 供給管
102 102´ 供給部
103 第2空気流
104 供給口
105 第1供給装置
106 第2供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9