特許第6729042号(P6729042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6729042
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20200713BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20200713BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   B01D61/12
   C02F5/00 610E
   C02F5/00 620B
   C02F5/00 620C
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-121132(P2016-121132)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-221929(P2017-221929A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】武内 誠
(72)【発明者】
【氏名】菊池 陽介
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−192374(JP,A)
【文献】 特開2005−329359(JP,A)
【文献】 特開2013−193004(JP,A)
【文献】 特開平1−231988(JP,A)
【文献】 特開昭62−61691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
5/00 − 5/14
B01D 61/00 − 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
供給水を前記逆浸透膜モジュールに向けて供給する供給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水が流通する濃縮水ラインと、
前記濃縮水ラインに接続され、循環水を前記供給水ラインに返送する循環水ラインと、
供給水又は濃縮水のpHを検出pH値として検出するpH検出手段と、
供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を設定する添加量設定部と、
前記添加量設定部で設定される添加量のpH調整剤を供給水又は循環水に添加するpH調整剤添加手段と、
検出pH値が目標範囲から外れないように前記添加量設定部を制御する添加量制御部と、を備え、
前記添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合には、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量の変更量を前記検出pHを用いた演算に基づいて変更し、且つ、供給水又は循環水に対する変更後のpH調整剤の添加量の割合を所定時間変更しないように前記添加量設定部を制御し、
前記添加量制御部は、供給水又は循環水のMアルカリ度、硬度又はシリカ濃度の少なくとも一つ以上の値に基づいて供給水又は循環水に対するpH調整剤の前記変更量を設定し、
前記添加量設定部は、前記添加量制御部でpH調整剤の前記変更量を決定できない又は前記添加量制御部で決定されたpH調整剤の前記変更量が予め設定された許容範囲から外れた場合には、前記pH検出手段が故障していると判定する、水処理システム。
【請求項2】
前記添加量制御部は、供給水又は循環水に対するpH調整剤の前記変更量を決定するための補正係数として予め設定された第1補正係数を変更することなく、前記補正係数に基づいて前記変更量を設定するように前記添加量設定部を制御する第1モードと、前記補正係数を変更し、変更された第2補正係数に基づいて前記変更量を設定するように前記添加量設定部を制御する第2モードとで前記添加量設定部を制御し、
前記添加量制御部は、前記第1モードで前記添加量設定部を制御しても、検出pH値が目標範囲に収束しない場合には、制御モードを第1モードから第2モードに切り換える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合において、まずは前記第1モードで前記添加量設定部を制御する請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記pH検出手段は、非連続的に検出pH値を検出する、請求項1〜のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項5】
前記pH検出手段は、濃縮水のpHを検出する、請求項1〜のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールを備えた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や医薬の製造過程においては、製品の品質向上や安全性確保等の観点から、溶存している天然成分や懸濁物質等の夾雑成分を除去した精製水が大量に使用されており、そのような精製水は、例えば、工業用水、上水又は地下水等の原水を逆浸透膜装置でろ過処理することで製造されている。
【0003】
このような精製水の製造では、連続的な大量生産が求められることから、逆浸透膜装置でのろ過水量(透過水量)を安定に維持する必要がある。ところが、逆浸透膜装置は、原水に含まれる夾雑成分を逆浸透膜で高度に分離するものであり、結果的に逆浸透膜における原水の導入側において夾雑成分の濃度が高まった濃縮水が接触した状態になるため、原水の導入側においてファウリングやスケールが生じ、透過水量が漸減する傾向にある。ここで、ファウリングとは、原水中の懸濁物質や有機物等が逆浸透膜の膜面に沈着又は吸着する現象をいい、逆浸透膜での透過水量を低下させる原因となり得る。一方、スケールは、原水に主として天然成分として含まれるカルシウム等の硬度成分やシリカが堆積したものであり、逆浸透膜の微孔を閉塞させることで逆浸透膜での透過水量を低下させる原因となり得る。
【0004】
一般に、逆浸透膜装置は、回収率、すなわち、原水に対して得られる透過水の割合を高めると濃縮水での夾雑成分濃度が高まり、ファウリングやスケールによる透過水量の減少が短時間で発生しやすくなるため、回収率を低めに制御することで濃縮水での夾雑成分濃度の上昇を抑えて安定な透過水量を比較的長期間に亘って維持することができる。しかし、この場合、透過水量あたりの排水量が増えることになるため、原水の処理効率(すなわち、精製水の製造効率)が損なわれる。
【0005】
このような不具合への対策として、逆浸透膜装置に供給される供給水のpHを所定の値に管理できる水処理システムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−61433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の水処理システムには、少なくとも、2つのpH調整剤添加装置と、2つのpHセンサが設置されなければならない。水処理システム内の検出器や制御対象となる装置が多くなるため、pH調整剤添加装置の制御が煩雑になり、適切に水処理システム内のpHを管理することが困難となる。水処理システムの導入、メンテナンスにコストがかかることにも問題がある。
【0008】
また、実際には、酸を原水に添加してからpHが安定して検出されるまでには、所定の時間を要する(タイムラグが発生する)。特許文献1に記載の水処理システムによるpH調整剤添加装置の制御において、このタイムラグを更に考慮すると、制御が更に煩雑になる。循環水を用いる水処理システムにおいても同様の問題がある。
【0009】
そのため、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することが求められている。
【0010】
本発明は、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、供給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、供給水を前記逆浸透膜モジュールに向けて供給する供給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水が流通する濃縮水ラインと、前記濃縮水ラインに接続され、循環水を前記供給水ラインに返送する循環水ラインと、供給水又は濃縮水のpHを検出pH値として検出するpH検出手段と、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を設定する添加量設定部と、前記添加量設定部で設定される添加量のpH調整剤を供給水又は循環水に添加するpH調整剤添加手段と、検出pH値が目標範囲から外れないように前記添加量設定部を制御する添加量制御部と、を備え、前記添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合には、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量の変更量を前記検出pHを用いた演算に基づいて変更し、且つ、供給水又は循環水に対する変更後のpH調整剤の添加量の割合を所定時間変更しないように前記添加量設定部を制御し、前記添加量制御部は、供給水又は循環水のMアルカリ度、硬度又はシリカ濃度の少なくとも一つ以上の値に基づいて供給水又は循環水に対するpH調整剤の前記変更量を設定し、前記添加量設定部は、前記添加量制御部でpH調整剤の前記変更量を決定できない又は前記添加量制御部で決定されたpH調整剤の前記変更量が予め設定された許容範囲から外れた場合には、前記pH検出手段が故障していると判定する、水処理システムに関する。
【0012】
また、前記添加量制御部は、供給水又は循環水に対するpH調整剤の前記変更量を決定するための補正係数として予め設定された第1補正係数を変更することなく、前記補正係数に基づいて前記変更量を設定するように前記添加量設定部を制御する第1モードと、前記補正係数を変更し、変更された第2補正係数に基づいて前記変更量を設定するように前記添加量設定部を制御する第2モードとで前記添加量設定部を制御し、前記添加量制御部は、前記第1モードで前記添加量設定部を制御しても、検出pH値が目標範囲に収束しない場合には、制御モードを第1モードから第2モードに切り換えることが好ましい。
【0013】
また、前記添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合において、まずは前記第1モードで前記添加量設定部を制御することが好ましい。
【0016】
また、前記pH検出手段は、非連続的に検出pH値を検出することが好ましい。
【0017】
また、前記pH検出手段は、濃縮水のpHを検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図2】本実施形態の通常モードと自動学習モードとの間の状態遷移図である。
図3】本実施形態の基準水に70%希硫酸を添加することでpHを目標範囲に収める制御例を示す模式図である。
図4】本実施形態の20%上昇水に70%希硫酸を添加することでpHを目標範囲に収める制御例を示す模式図である。
図5】本実施形態の制御部がpHセンサの故障を検出する制御例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の水処理システム1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0021】
図1に示すように、水処理システム1は、主な構成として、pH調整剤添加手段としてのpH調整剤添加装置5と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10と、pH検出手段としてのpHセンサ16と、制御部30と、を備える。また、水処理システム1は、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「供給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいい、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「循環水」ともいう。また、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0022】
供給水ラインL1は、供給水をRO膜モジュール10に向けて供給するラインである。供給水ラインL1は、上流側から下流側に向けて、第1供給水ラインL11と、第2供給水ラインL12とを有する。
【0023】
第1供給水ラインL11の上流側の端部は、原水W11の水源2に接続されている。第1供給水ラインL11の下流側の端部及び循環水ラインL4の下流側の端部(後述)は、第2供給水ラインL12の上流側の端部に接続されている(合流している)。第1供給水ラインL11には、上流側から下流側に向けて、前処理装置3と、流量センサFMと、pH調整剤添加装置5と、が設けられている。
【0024】
前処理装置3は、原水W11に前処理を行う装置である。本実施形態においては、前処理装置3は、硬水軟化装置である。前処理装置3は、原水W11に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)を、陽イオン交換樹脂床(図示しない)においてナトリウムイオン(又はカリウムイオン)に置換して軟水W12を製造する。前処理装置3は、第1供給水ラインL11に設けられる。なお、その由来(出所)やその水質(ナトリウムイオン濃度等)によらず、前処理装置3よりも下流側の第1供給水ラインL11を流通する水を「軟水W12」ともいう。
【0025】
流量センサFMは、供給水の流量を検出する装置である。本実施形態においては、流量センサFMは軟水W12の流量を検出する。流量センサFMは、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFMから出力された検出信号は、制御部30へ送信される。
【0026】
pH調整剤添加装置5は、制御部30の添加量設定部で設定される添加量のpH調整剤を供給水又は循環水に添加する装置である。本実施形態においては、pH調整剤添加装置5は、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する供給水(軟水W12)にpH調整剤を添加することにより、pH調整剤が添加された供給水W13を得る装置である。pH調整剤添加装置5は、制御部30(例えば、添加量設定部)と電気的に接続されている。
【0027】
第2供給水ラインL12の上流側の端部は、第1供給水ラインL11の下流側の端部(循環水ラインL4の下流側の端部)に接続されている。第2供給水ラインL12の下流側の端部は、RO膜モジュール10の一次側入口ポート(供給水W14の入口)に接続されている。第2供給水ラインL12には、加圧ポンプ8及びインバータ9が設けられる。
【0028】
加圧ポンプ8は、供給水W14を吸入し、RO膜モジュール10に向けて圧送(吐出)する装置である。なお、第2供給水ラインL12を流通してRO膜モジュール10に供給される水を「供給水W14」ともいう。加圧ポンプ8には、インバータ9から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ8は、供給(入力)された駆動電力の周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0029】
インバータ9は、加圧ポンプ8に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ9は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ9には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ9は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動電力の周波数の駆動電力を加圧ポンプ8に出力する。
【0030】
供給水W14は、加圧ポンプ8を介してRO膜モジュール10に供給される。また、供給水W14は、供給水W13及び循環水W40(後述)からなる。
【0031】
逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10は、供給水W14を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、RO膜モジュール10は、加圧ポンプ8から吐出された供給水W14を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール10は、単一又は複数のRO膜エレメント(図示せず)を備える。RO膜モジュール10は、これらRO膜エレメントにより供給水W14を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0032】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール10で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール10の二次側ポート(透過水W20の出口)に接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンクや需要箇所(図示せず)に接続されている。
【0033】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール10の一次側出口ポート(濃縮水W30の出口)に接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側の端部は、循環水ラインL4の上流側の端部及び濃縮排水ラインL5の上流側の端部に接続されている(分岐している)。
【0034】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3の下流側の端部に接続され、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、上流側から下流側に向けて、比例制御排水弁15と、pHセンサ16が設けられる。
【0035】
比例制御排水弁15は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。比例制御排水弁15は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁15の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30からの電流値信号に基づいて、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0036】
pHセンサ16は、供給水又は濃縮水のpHを検出pH値として検出する装置である。本実施形態においては、pHセンサ16は、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50(濃縮水)のpHを非連続的に検出する(以下、pHセンサ16で検出されるpHを「検出pH値PV」ともいう)。pHセンサ16は、制御部30と電気的に接続されている。
【0037】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、循環水W40を供給水ラインL1に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、供給水ラインL1における加圧ポンプ8よりも上流側に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、濃縮水ラインL3と濃縮排水ラインL5との間の分岐部に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、pH調整剤添加装置5と加圧ポンプ8との間の接続部において、供給水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4の途中には、定流量弁14が設けられる。
【0038】
定流量弁14は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。なお、「一定流量値」とは、定流量弁における目標流量値のみに限られず、目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を含む概念である。定流量弁14は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものでもよく、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0039】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0040】
制御部30は、例えば、添加量設定部と、添加量調整部とを備える。制御部30の添加量設定部は、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を設定する。また、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れないように制御部30の添加量設定部を制御する。
【0041】
制御部30の添加量制御部は、検出pH値PVが目標範囲から外れた場合には、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を所定の演算によって得られる変更量変更し、且つ、供給水又は循環水に対する変更後のpH調整剤の添加量の割合を所定時間(例えば、水質安定時間T2)、変更しないように制御部30の添加量設定部を制御する。本実施形態においては、制御部30は、検出pH値PVが目標範囲から外れた場合には、供給水(軟水W12)に対するpH調整剤の添加量を所定の演算によって得られる変更量変更し、且つ、供給水(軟水W12)に対する変更後のpH調整剤の添加量の割合を水質安定時間T2、変更しないように制御部30の添加量設定部を制御する。
【0042】
水質安定時間T2は、pH調整剤の添加量を変化させてからpH測定点(pHセンサ16の設置位置)のpHが安定するまでの時間を下限値として、それよりも長い時間に設定される。pHが安定するまでの時間は、例えば、pH調整剤の添加位置(pH調整剤添加装置5の設置位置)からpH測定点(pHセンサ16の設置位置)までの間の保有水量(配管部分及びRO膜モジュールの容積)、pH調整剤の添加量、供給水W14等の水処理システム内の水の流量、供給水W14に対する循環水W40の比率及びpHセンサ16の応答時間の影響を受ける。
【0043】
水質安定時間T2は、供給水W14のpHが許容範囲を外れた状態で水処理システム1の運転が許容される時間を上限値として、それよりも短い時間に設定される。供給水W14のpHは、RO膜モジュール10へのスケール付着による詰まり(膜詰まり)に影響する。膜詰まりは、長期間の水処理システム1の運転によって蓄積されるため、秒単位や分単位でリアルタイムにpHを目標範囲内に維持する必要はない。
【0044】
水質安定時間T2は、概ね数十分から数時間の間で設定されるとよい。水質安定時間T2は、10〜240分の範囲で設定されることが好ましく、30〜90分の範囲で設定されることが更に好ましい。
【0045】
制御部30の添加量制御部は、供給水又は循環水のMアルカリ度、硬度又はシリカ濃度の少なくとも一つ以上の値に基づいて、供給水又は循環水に対するpH調整剤の変更量を設定する。本実施形態においては、制御部30は、pH調整剤の変更量を設定する(後述)。また、この補正係数Mは、供給水又は循環水のMアルカリ度(又はPアルカリ度)が高い程、高い値に設定される。
【0046】
制御部30が適切に機能するために、制御部30の内部メモリには、水質安定時間T2と、各種の設定データと、各種の運転データ(検出値を含む)とが記憶されている。各データに付された識別符号である「0」については、初期値を、「a」については、今回の値(現在の値、更新後の値)を、「b」については、前回の値(過去の値、更新前の値)を、それぞれ示す。また、以下の構成を説明するにあたって、初期値か、今回の値か、前回の値かを区別する必要がない場合には、識別符号である「0」、「a」、「b」について適宜に省略して説明する。
【0047】
本実施形態においては、初期値の薬品投入量Y0[mL/m]と、目標上限値SPH[−]と、目標下限値SPL[−]と、初期値の補正係数M0[−]とが制御部30の内部メモリに設定データとして記憶されている。
【0048】
初期値の薬品投入量Y0は、制御の初期値として設定される値である。目標上限値SPHは、検出pH値の目標範囲の上限値である。目標下限値SPLは、検出pH値の目標範囲の下限値である。言い換えれば、検出pH値の目標範囲は、目標上限値SPHと目標下限値SPLとにより規定される。
【0049】
初期値の補正係数M0は、検出pH値を1変化させるために必要なpH調整剤の変更量として設定される値である。また、補正係数Mの符号は、薬品(pH調整剤)の種類により決定され、薬品が酸なら負(M<0)になり、アルカリなら正(M>0)になる。また、補正係数Mは、原水水質のMアルカリ度又はPアルカリ度と、投入する薬品の濃度によって決定される。補正係数Mは、Mアルカリ度又はPアルカリ度が高いほど大きい値となり、投入する薬品の濃度が高いほど小さい値となる。
【0050】
また、本実施形態においては、制御部30は今回の薬品投入量Yaを設定するための運転データとして、今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定するための運転データとして、検出pH値pVと、前回の薬品投入量補正値ΔYbと、補正係数M等の各種のデータが運転データとして記憶されている。
【0051】
制御部30の添加量制御部は、第1モードとしての通常モードと、第2モードとしての自動学習モードとで、制御部30の添加量設定部を制御し、所定の切り換え条件に基づいて通常モード(第1モード)と自動学習モード(第2モード)とを切り換える。本実施形態においては、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合において、まずは制御の起点となる通常モードで制御部30の添加量設定部を制御し、通常モードで制御部30の添加量設定部を制御しても、検出pH値が目標範囲に収束しない場合には、制御モードを通常モードから自動学習モードに切り換える。制御部30の添加量制御部の機能の詳細について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態の通常モードと自動学習モードとの間の状態遷移図である。
【0052】
まず、通常モードについて説明する。
〔通常モード〕
第1モードとしての通常モードでは、制御部30の添加量制御部は、供給水又は循環水に対するpH調整剤の変更量を決定するための補正係数として予め設定された第1補正係数を変更することなく、補正係数に基づいて変更量を設定するように制御部30の添加量設定部を制御する。通常モードは、制御の起点となる制御モードである。通常モードは、主に以下の(ST1)〜(ST4)の工程からなる。
【0053】
(ST1)
制御部30は、検出pH値PVを取得する。制御部30は、取得した検出pH値PVが所定の目標範囲の範囲内から外れない(PV≦SPH、且つ、PV≧SPL)か否かを判定する。取得した検出pH値PVが所定の目標範囲の範囲内から外れない場合には、制御部30は、所定時間(例えば、水質安定時間T2)の経過後に検出pH値PVを取得する。
【0054】
(ST2)
制御部30は、取得した検出pH値PVが所定の目標範囲の範囲内から外れる(PV>SPH、又は、PV<SPL)場合には、pH調整剤の変更量としての今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。通常モードでの今回の薬品投入量補正値ΔYaは、前回の薬品投入量補正値ΔYbと、予め設定された第1補正係数としての今回の補正係数Maと、目標上限値SPH又は目標下限値SPLと、検出pH値PVとから、以下の式(1)又は式(2)のいずれかによって求められる。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (1)
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPL−PV) (2)
検出pH値PVが目標上限値SPHを上回る(PV>SPH)場合には、式(1)で今回の薬品投入量補正値ΔYaが求められる。検出pH値PVが目標下限値SPLを下回る(PV<SPL)場合には、式(2)で今回の薬品投入量補正値ΔYaが求められる。
【0055】
(ST3)
制御部30は、今回の薬品投入量Yaを設定する。通常モードでの今回の薬品投入量Yaは、初期値の薬品投入量Y0と、式(1)又は式(2)で求められた今回の薬品投入量補正値ΔYaとから、以下の式(3)によって求められる。
Ya=Y0+ΔYa (3)
【0056】
続いて、自動学習モードについて説明する。
〔自動学習モード〕
第2モードとしての自動学習モードでは、制御部30の添加量制御部は、補正係数を変更し、変更された第2補正係数に基づいて変更量を設定するように制御部30の添加量設定部を制御する。自動学習モードは、通常モードと同等の(ST1)の工程と、以下の(ST2A)〜(ST4A)の工程からなる。
【0057】
(ST2A)
制御部30は、取得した検出pH値PVが所定の目標範囲の範囲内から外れる(PV>SPH、又は、PV<SPL)場合には、前回の補正係数Mbを変更された第2補正係数としての今回の補正係数Maに変更する。具体的には、今回の補正係数Maは、前回の補正係数Mbと、目標上限値SPH又は目標下限値SPLと、前回の検出pH値PVbと、今回の検出pH値PVaとから、以下の式(4)又は式(5)のいずれかによって求められる。
Ma=Mb×(SPH−PVb)÷(PVa−PVb) (4)
Ma=Mb×(SPL−PVb)÷(PVa−PVb) (5)
検出pH値PVが目標上限値SPHを上回る(PV>SPH)場合には、式(4)で今回の補正係数Maが求められる。検出pH値PVが目標下限値SPLを下回る(PV<SPL)場合には、式(5)で今回の補正係数Maが求められる。
【0058】
なお、制御部30の添加量設定部は、制御部30の添加量制御部でpH調整剤の変更量を決定できない又は制御部30の添加量制御部で決定されたpH調整剤の変更量が予め設定された許容範囲から外れた場合には、pHセンサ16が故障していると判定する。具体的には、式(4)又は式(5)を用いた演算において、前回の検出pH値PVbと、今回の検出pH値PVaとの差がほとんどない(PVa≒PVb)場合には、制御部30は、式(4)又は式(5)を用いても今回の補正係数Maを演算できない又は今回の補正係数Maを許容範囲から外れる値として演算する。ここで、補正係数Mは、pH調整剤の変更量を決定するための値である。制御部30が今回の補正係数Maを演算できない又は今回の補正係数Maを許容範囲から外れる値として演算する場合には、pH調整剤の変更量を決定できない又は決定されたpH調整剤の変更量が予め設定された許容範囲から外れる。「pHセンサ16が故障している」については、図5を用いて後述する。
【0059】
(ST3A)
制御部30は、今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。自動学習モードでの今回の薬品投入量補正値ΔYaは、前回の薬品投入量補正値ΔYbと、式(4)又は式(5)で求められた今回の補正係数Maと、目標上限値SPH又は目標下限値SPLと、検出pH値PVとから、以下の式(6)又は式(7)のいずれかによって求められる。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (6)
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPL−PV) (7)
検出pH値PVが目標上限値SPHを上回る(PV>SPH)場合には、式(6)で今回の薬品投入量補正値ΔYaが求められる。検出pH値PVが目標下限値SPLを下回る(PV<SPL)場合には、式(7)で今回の薬品投入量補正値ΔYaが求められる。
【0060】
(ST4A)
制御部30は、今回の薬品投入量Yaを設定する。自動学習モードでの今回の薬品投入量Yaは、初期値の薬品投入量Y0と、式(6)又は式(7)で求められた今回の薬品投入量補正値ΔYaとから、以下の式(8)によって求められる。
Y=Y0+ΔYa (8)
【0061】
続いて、制御部30が制御モードを切り換える移行条件(イベントE1、イベントE2)について説明する。
【0062】
図2に示すように、制御部30は、イベントE1が発生すると通常モードから自動学習モードに制御モードを切り換える。例えば、通常モードでpH調整剤の添加量を変化させてもpHが目標範囲に収まらない場合にイベントE1が発生する。
【0063】
また、制御部30は、イベントE2が発生すると自動学習モードから通常モードに制御モードを切り換える。例えば、自動学習モードでpH調整剤の添加量を変化させることによりpHが目標範囲に収まった場合にイベントE2が発生する。
【0064】
制御部30が、通常モードと自動学習モードとで、pHを目標範囲に収める処理の例について、図3図5を用いて説明する。
【0065】
まず、質量%濃度が70%の硫酸(以下、「70%希硫酸」ともいう)を用いて、Mアルカリ度が47[mg/L]を示す水(以下、「基準水」ともいう)に添加することで、pHを目標範囲に収める処理を例に説明する。図3は、基準水に70%希硫酸を添加することでpHを目標範囲に収める制御例を示す模式図である。図3中の実線で示された曲線は、基準水に対する70%希硫酸添加量とpHの相関を示す曲線である。この曲線は、基準水に対して70%希硫酸を滴定した場合の中和滴定曲線の一部を抜き出した形となる。
【0066】
図3(後述する図4図5)に示す制御例において、初期値の薬品投入量Y0は20[mL/m]に、目標上限値SPHは6.0に、目標下限値SPLは5.8に、初期値の補正係数M0は−20[mL/m](酸を用いるため負の値)に、それぞれ設定されている。
【0067】
制御部30は、pH調整剤の添加量を初期値の薬品投入量Y0(20[mL/m])に設定する。pH調整剤添加装置5は、基準水に対して70%希硫酸を20[mL/m]添加する。水質安定時間T2の経過後に、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.5と検出される(図3中(3−1)を参照)。
【0068】
制御部30は、制御モードの起点となる通常モードで今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(1a)に各種の設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の薬品投入量補正値ΔYbに0を代入する。また、制御部30は、今回の補正係数Maに、初期値の補正係数M0を参照して、−20を代入する。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (1a)
=0+(−20)×(6.0−6.5)
=10
【0069】
制御部30は、通常モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(3a)に各種の設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量Yaを設定する。
Ya=Y0+ΔYa (3a)
=20+10
=30
【0070】
pH調整剤添加装置5は、基準水に対して70%希硫酸を30[mL/m]添加する。水質安定時間T2の経過後に、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.0と検出される(図3中(3−2)を参照)。
【0071】
検出pH値PVが目標範囲に収束したため、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れないように制御部30の添加量設定部を制御する。具体的には、制御部30の添加量制御部は、制御部30の添加量設定部が基準水に対するpH調整剤の添加量を維持するように制御部30の添加量設定部を制御する。これにより、検出pH値PVが目標範囲に収束している状態が維持される。
【0072】
続いて、基準水のMアルカリ度が20%上昇したMアルカリ度が56.4[mg/L]を示す水(以下、「20%上昇水」ともいう)に70%希硫酸を添加することでpHを目標範囲に収める制御の一例を説明する。図4は、20%上昇水に70%希硫酸を添加することでpHを目標範囲に収める制御例を示す模式図である。図4中の実線で示された曲線は、基準水に対する70%希硫酸添加量とpHの相関を示す曲線である。また、図4中の点線で示された曲線は、20%上昇水に対する70%希硫酸添加量とpHの相関を示す曲線である。
【0073】
なお、基準水のMアルカリ度が20%上昇した要因としては、原水W11の水質変動、軟水W12の水質変動等が挙げられる。
【0074】
基準水から水質変動がない状態では、pH調整剤添加装置5が基準水に対して70%希硫酸を30[mL/m]添加する状態が維持される。また、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.0と検出される状態が維持される(図4中(4−1)を参照)。
【0075】
水質変動によって、基準水のMアルカリ度が20%上昇する。具体的には、基準水のMアルカリ度の上昇により70%希硫酸の消費量が上昇することで、70%希硫酸の添加量が不足して検出pH値PVが上昇する。pHセンサ16で検出pH値PVが、6.3と検出される(図4中(4−2)を参照)。
【0076】
制御部30は、制御モードの起点となる通常モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(1b)に設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の薬品投入量補正値ΔYbに、式(1a)を参照して、10を代入する。また、制御部30は、今回の補正係数Maに、初期値の補正係数M0を参照して、−20を代入する。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (1b)
=10+(−20)×(6.0−6.3)
=16
【0077】
制御部30は、通常モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(3b)に各種の設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量Yaを設定する。
Ya=Y0+ΔYa (3b)
=20+16
=36
【0078】
pH調整剤添加装置5は、20%上昇水に対して70%希硫酸を30[mL/m]添加する。水質安定時間T2の経過後に、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.05と検出される(図4中(4−3)を参照)。
【0079】
制御部30は、通常モードでpH調整剤の添加量を変化させてもpHが目標範囲に収まらなかったため(PV:6.05>SPH:6.0)、制御モードを通常モードから自動学習モードに切り換える。
【0080】
制御部30は、自動学習モードで今回の補正係数Maを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(4b)に設定データ、運転データを代入して今回の補正係数Maを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の補正係数Mbに、初期値の補正係数M0を参照して、−20を代入する。
Ma=Mb×(SPH−PVb)÷(PVa−PVb) (4b)
=−20×(6.0−6.3)÷(6.05−6.3)
=−24
【0081】
制御部30は、自動学習モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(6b)に設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の薬品投入量補正値ΔYbに、式(1b)を参照して、16を代入する。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (6b)
=16+(−24)×(6.0−6.05)
=17.2
【0082】
制御部30は、自動学習モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(8b)に各種の設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量Yaを設定する。
Ya=Y0+ΔYa (8b)
=20+17.2
=37.2
【0083】
pH調整剤添加装置5は、20%上昇水に対して70%希硫酸を30[mL/m]添加する。水質安定時間T2の経過後に、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.0と検出される(図4中(4−4)を参照)。
【0084】
検出pH値PVが目標範囲に収束したため、制御部30は、制御モードを自動学習モードから通常モードに切り換える。また、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れないように制御部30の添加量設定部を制御する。具体的には、制御部30の添加量制御部は、制御部30の添加量設定部が20%上昇水に対するpH調整剤の添加量を維持するように制御部30の添加量設定部を制御する。これにより、検出pH値PVが目標範囲に収束している状態が維持される。
【0085】
続いて、制御部30がpHセンサ16の故障を検出する制御の一例を説明する。図5は、制御部30がpHセンサ16の故障を検出する制御例を示す模式図である。図5中の点線で示された曲線は、20%上昇水に対する70%希硫酸添加量とpHの相関を示す曲線である。
【0086】
なお、pHセンサ16の故障が発生する要因としては、pH電極の異常やサンプル水ラインの詰まりによるサンプル水供給停止により指示値が固着した場合が挙げられる。
【0087】
20%上昇水から水質変動がない状態では、pH調整剤添加装置5が20%上昇水に対して70%希硫酸を37.2[mL/m]添加する状態が維持される。また、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.0と検出される状態が維持される(図5中(5−1)を参照)。
【0088】
pHセンサ16が故障し、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.4と検出される(図5中(5−2)を参照)。
【0089】
制御部30は、制御モードの起点となる通常モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(1c)に設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量補正値ΔYaを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の薬品投入量補正値ΔYbに、式(6b)を参照して、17.2を代入する。また、制御部30は、今回の補正係数Maに、式(4b)を参照して、−24を代入する。
ΔYa=ΔYb+Ma×(SPH−PV) (1c)
=17.2+(−24)×(6.0−6.4)
=26.8
【0090】
制御部30は、通常モードで今回の薬品投入量Yaを設定する。具体的には、以下の式(3c)に各種の設定データ、運転データを代入して今回の薬品投入量Yaを設定する。
Ya=Y0+ΔYa (3c)
=20+26.8
=46.8
【0091】
pH調整剤添加装置5は、供給水に対して70%希硫酸を46.8[mL/m]添加する。水質安定時間T2の経過後に、pHセンサ16で検出pH値PVが、6.4と検出される(図5中(5−3)を参照)。
【0092】
制御部30は、通常モードでpH調整剤の添加量を変化させてもpHが目標範囲に収まらなかったため(PV:6.4>SPH:6.0)、制御モードを通常モードから自動学習モードに切り換える。
【0093】
制御部30は、自動学習モードで今回の補正係数Maを設定する。具体的には、制御部30は、以下の式(4c)に設定データ、運転データを代入して今回の補正係数Maを設定する。なお、本実施形態においては、制御部30は、前回の補正係数Mbに、式(4b)を参照して、−24を代入する。
Ma=Mb×(SPH−PVb)÷(PVa−PVb) (4c)
=−24×(6.0−6.4)÷(6.4−6.4)
=9.6÷0
【0094】
制御部30は、自動学習モードで今回の補正係数Maを演算(設定)できない。そのため、検出pH値PVの値が正しくなかったことが認められる。つまり、pHセンサ16又はその付近に何らかの異常をきたしていること(例えば、pHセンサ16が故障していること)が認められる。このように、制御部30の添加量設定部は、制御部30の添加量制御部でpH調整剤の変更量を決定できない場合には、pHセンサ16が故障していると判定する。本実施形態においては、今回の検出pH値PVaと、前回の検出pH値PVbとが等しいために、制御部30は、補正係数Mを演算できないことから(補正係数Mを演算できないため変更量を設定できないことから)、pHセンサ16が故障していると判定する
【0095】
〔効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
本実施形態の水処理システム1は、供給水W14を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール10と、供給水W14をRO膜モジュール10に向けて供給する供給水ラインL1と、RO膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通する濃縮水ラインL3と、濃縮水ラインL3に接続され、循環水W40を供給水ラインL1に返送する循環水ラインL4と、供給水又は濃縮水のpHを検出pH値として検出するpH検出手段としてのpHセンサ16と、供給水に対するpH調整剤の添加量を設定する制御部30の添加量設定部と、制御部30の添加量設定部で設定される添加量のpH調整剤を供給水又は循環水に添加するpH調整剤添加手段としてのpH調整剤添加装置5と、検出pH値が目標範囲から外れないように制御部30の添加量設定部を制御する制御部30の添加量制御部と、を備え、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合には、供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を所定の演算によって得られる変更量変更し、且つ、供給水又は循環水に対する変更後のpH調整剤の添加量の割合を所定時間(例えば、水質安定時間T2)変更しないように制御部30の添加量設定部を制御する。
【0096】
pH調整剤の添加量変更直後の検出pH値PVは、値が安定しづらく、信頼性が低い。反対に、所定時間経過後の検出pH値PVは、値が安定しやすくなり、信頼性が高くなる。従って、制御部30は、信頼性が高い検出pH値PVに基づいて、pH調整剤の添加量を設定できる。そのため、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0097】
また、制御部30の添加量制御部は、供給水又は循環水に対するpH調整剤の変更量を決定するための補正係数として予め設定された第1補正係数を変更することなく、補正係数に基づいて変更量を設定するように制御部30の添加量設定部を制御する通常モードと、補正係数を変更し、変更された第2補正係数に基づいて変更量を設定するように制御部30の添加量設定部を制御する自動学習モードとで制御部30の添加量設定部を制御すると共に、所定の切り換え条件に基づいて通常モードと自動学習モードとを切り換える。そのため、通常モードでは補正係数を変更せずに、自動学習モードで補正係数を変更させながら、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0098】
また、制御部30の添加量設定部は、制御部30の添加量制御部でpH調整剤の変更量を決定できない又は制御部30の添加量制御部で決定されたpH調整剤の変更量が予め設定された許容範囲から外れた場合には、pHセンサ16が故障していると判定する。制御部30は、通常であれば安定して検出される検出pH値に基づいてpH調整剤の変更量を決定できる。そのため、制御部30がpH調整剤の変更量を決定できない場合又は決定されたpH調整剤の変更量が許容範囲から外れる場合(例えば、添加量を変更したにもかかわらずpHの変動がほとんどない場合)には、pHセンサ16の故障とみなすことができる。そのため、より精度よくpHセンサ16が故障していると判定できる。
【0099】
また、制御部30の添加量制御部は、検出pH値が目標範囲から外れた場合において、まずは通常モードで制御部30の添加量設定部を制御し、通常モードで制御部30の添加量設定部を制御しても、検出pH値が目標範囲に収束しない場合には、制御モードを通常モードから自動学習モードに切り換える。そのため、通常モードで制御を開始し、段階的に自動学習モードに切り換えて、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0100】
また、制御部30の添加量制御部は、供給水又は循環水のMアルカリ度、硬度又はシリカ濃度の少なくとも一つ以上の値に基づいて供給水又は循環水に対するpH調整剤の変更量を設定する。そのため、供給水又は循環水の水質(Mアルカリ度、硬度又はシリカ濃度)に応じて簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0101】
また、pHセンサ16は、非連続的に検出pH値を検出する。水処理システム1において、RO膜モジュール10の膜詰まりは、長期間の水処理システム1の運転によって蓄積されるため、秒単位や分単位でリアルタイムにpHを検出する必要はない。また、pHセンサ16が連続的にpHを検出してもpHが安定するまでの間に検出されるpH(水質安定時間T2の経過よりも前に検出される値)は、安定しないため不正確である。そのため、pHセンサ16で必要十分な頻度でpHの検出を行い、正確な検出pH値に基づいて、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0102】
また、pHセンサ16は、濃縮水のpHを検出する。水処理システム1において、濃縮水(濃縮排水W50)は劣化が進行しやすい。そのため、劣化の進行しやすい濃縮水のpHを監視(検出)することで、簡易的かつ適切に水処理システム内のpHを管理することができる。
【0103】
〔変形例〕
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0104】
例えば、pHセンサ16が、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50のpHを検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、pHセンサ16がpHを検出するラインは、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4のいずれか一つであってもよい。また、pHセンサ16がpHを検出するラインは、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5の二つ以上であってもよい。
【0105】
また、pH調整剤添加装置5は、供給水ラインL1(第1供給水ラインL11)を流通する供給水(軟水W12)にpH調整剤を添加する例について説明したが、これに限定されない。例えば、pH調整剤添加装置5は、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4にpH調整剤を添加してもよい。更に、pH調整剤添加装置5は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの二つ以上のラインにスケール分散剤を添加してもよい。
【0106】
また、pHセンサ16が、非連続的に供給水又は濃縮水のpHを検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、pHセンサ16は連続的に供給水又は循環水のpHを検出してもよい。
【0107】
制御部30の添加量設定部が供給水又は循環水に対するpH調整剤の添加量を設定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、pH調整剤添加装置5が添加量設定部を備えてもよい。
【0108】
また、図3図4を用いて、制御部30が、検出pH値PVが目標上限値SPHを上回る場合に、供給水(軟水W12)に対する酸(70%希硫酸)を増量するようにpH調整剤添加装置5を制御することで、検出pH値PVを目標範囲内に収束させる例について説明したが、これに限定されない。
【0109】
例えば、pH調整剤添加装置5が供給水(軟水W12)に添加するpH調整剤は、70%希硫酸に限定されない。pH調整剤は、70%希硫酸以外の酸であってもよく、アルカリであってもよい。
また、制御部30が、検出pH値PVが目標上限値SPHを上回る場合に、供給水に対するアルカリを減量するようにpH調整剤添加装置5を制御することで、検出pH値PVを目標範囲内に収束させてもよい。制御部30が、検出pH値PVが目標下限値SPLを下回る場合に、供給水に対する酸を減量(アルカリを増量)するようにpH調整剤添加装置5を制御することで、検出pH値PVを目標範囲内に収束させてもよい。
【0110】
また、図5を用いて、今回の検出pH値PVaと、前回の検出pH値PVbとが等しいために、制御部30は、補正係数Mを演算できないことから(補正係数Mを演算できないため変更量を設定できないことから)、pHセンサ16が故障していると判定する例について説明したが、これに限定されない。
【0111】
例えば、制御部30は、制御部30の添加量制御部で決定されたpH調整剤の変更量が予め設定された許容範囲から外れた場合にpHセンサ16が故障していると判定してもよい。この許容範囲は、例えば、今回の検出pH値PVaと、前回の検出pH値PVbとの差がほとんどない(例えば、0.01)場合、供給水又は循環水に対して酸(アルカリ)を増量したにもかかわらず検出pH値PVが増加(減少)した場合等には、許容範囲から外れるように適宜に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 水処理システム
5 pH調整剤添加装置(pH調整剤添加手段)
10 RO膜モジュール(逆浸透膜モジュール)
16 pHセンサ(pH検出手段)
30 制御部(添加量設定部、添加量制御部)
W11 原水(供給水)
W12 軟水(供給水)
W13 供給水
W14 供給水
W20 透過水
W30 濃縮水(循環水)
W40 循環水(濃縮水)
W50 濃縮排水(濃縮水)
L1 供給水ライン
L3 濃縮水ライン
L4 循環水ライン
図1
図2
図3
図4
図5