(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
図1から
図14を参照して、照度制御システムの第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、照度制御システムは、調光シート10、照明器具20、屋外照度センサー30、屋内照度センサー40、及び照度制御装置50を備えている。
【0024】
調光シート10は、建造物の壁部100に形成された開口部101のうち調光窓102の内側に隣接して設けられており、屋内に太陽光を取り込んで屋内の明るさを確保する。照明器具20は、建造物の天井部103のうち屋内に面する部位に設けられており、屋内に照明光を射出して屋内の明るさを確保する。屋外照度センサー30は、壁部100のうち屋外に面する部位に設けられており、屋外の照度を検知する。屋内照度センサー40は、壁部100のうち屋内に面する部位に設けられており、屋内の照度を検知する。照度制御装置50は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報及び屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報を用いて屋外の照度と屋内の照度との差である照度差を取得し、当該取得した照度差に基づき調光シート10及び照明器具20を連携して制御することにより、屋内の照度を予め設定した設定照度となるように制御する。
【0025】
より詳細には、調光シート10は、一対の基板11、一対の透明電極12、及び調光層13を備えている。
一対の基板11は、光透過性を有している。基板11の材質としては、ガラスやシリコン、またはポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリサルホン等の高分子フィルムを用いることができる。各基板11は、第1面11Aと第2面11Bとを有し、各々の対向面となる第1面11Aに一対の透明電極12が設けられている。
【0026】
一対の透明電極12は、光透過性を有している。各透明電極12は、各基板11の第1面11Aにスズドープ酸化インジウム(ITO)や酸化スズ(TO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などの半導体セラミックスの薄膜を基板全域或いは部分的に既知の塗布法や印刷法やスパッタ等の蒸着法により形成したものである。また、各透明電極12のうち、基板11に接する面とは反対側の面には調光層13が設けられている。すなわち、調光層13は、一対の透明電極12の間に配置されている。
【0027】
調光層13は、ランダムな網目状の高分子樹脂13Aの中に液晶分子13Bが連続層を形成したPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造を有する高分子ネットワーク型液晶である。液晶分子13Bは、例えば、誘電率異方性が正であって、液晶分子13Bの長軸方向の誘電率が液晶分子13Bの短軸方向の誘電率よりも大きい。液晶分子の一例としては、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系等が挙げられる。
【0028】
そして、上述した調光層13におけるPNLC構造の製造には、高分子と液晶を相分離させる公知の方法として、例えばPIPS(Polymerization Induced Phase Separation)法、TIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、SIPS(Solvent Induced Phase Separation)法等を用いることができる。PIPS法は、アクリル系、チオール系、エポキシ系等の、熱や光によって重合する高分子前駆体と液晶を混合し、均一相の状態から重合させて相分離させる方法である。TIP法は、熱可塑性高分子と液晶を混合し、均一相を加熱した状態から冷却して分離させる方法である。SIPS法は、高分子と液晶をクロロフォルムなどの溶媒に溶かし、溶媒を蒸発させて高分子と液晶を相分離させる方法である。
【0029】
照度制御装置50は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報と、屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報とを用いて屋外の照度と屋内の照度との差である照度差を取得し、当該取得した照度差に基づき、一対の透明電極12に印加する電圧の大きさを制御する。そして、調光層13は、照度制御装置50から一対の透明電極12への電圧の印加態様に基づき、液晶の相状態を遷移させる。
【0030】
具体的には、
図1に示すように、照度制御装置50から一対の透明電極12に第1の電圧として0[V]を印加するときであって、照度制御装置50から一対の透明電極12に電圧を印加していない状態では、液晶の相状態は、液晶分子13Bの長軸方向の向きが、当該液晶分子13Bの近傍に位置する高分子樹脂13Aにも依存して不規則的になるフォーカルコニック相となる。
【0031】
このように、液晶分子13Bが配向されていない状態では、調光シート10に入射した光が進行方向を大きく曲げられて拡散するようになり、調光シート10は白濁した状態となる。そのため、
図2に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から調光シート10に入射した光が屋外側に散乱することとなり、調光シート10の厚み方向に透過して屋内には進入しにくい。その一方で、
図3に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から調光シート10に入射した光が屋内側に散乱することとなり、調光シート10の厚み方向に透過して屋外には放出されにくい。
【0032】
また、
図4に示すように、照度制御装置50から一対の透明電極12に印加する電圧が第1の電圧よりも大きい第2の電圧であるときには、液晶の相状態は、液晶分子の長軸方向が一対の透明電極12の間に作用する電界方向に配向したホメオトロピック相となる。
【0033】
このように、液晶分子13Bが配向された状態では、液晶分子13Bの屈折率と高分子樹脂13Aの屈折率とが揃うことから、調光シート10に入射した光が進行方向を大きく曲げることなく調光シート10を透過するようになり、調光シート10は透明な状態となる。そのため、
図5に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から調光シート10に入射した光が調光シート10の厚み方向に透過して屋内に進入しやすい。その一方で、
図6に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から調光シート10に入射した光が調光シート10の厚み方向に透過して屋外に放出されやすい。
【0034】
図7は、照度制御装置50から一対の透明電極12に印加される電圧と、調光シート10に入射する光の透光率との相関関係を示すグラフである。同図に示すように、一対の透明電極12に印加される電圧が第1の電圧V1であるときには、上述のように調光層13が光に対して非透光性を示すことから、透光率(第2の透光率)は比較的低い傾向にある。その一方で、一対の透明電極12に印加される電圧が第2の電圧V2であるときには、上述のように調光層13が光に対して透光性を示すことから、透光率(第1の透光率)は比較的高い傾向にある。また、一対の透明電極12に印加される電圧が第1の電圧V1から第2の電圧V2に変化する過程で、透光率はS字曲線を描きつつ増加する。そして、本実施の形態では、照度制御装置50は、この透光率のS字曲線を描く範囲も含めて、一対の透明電極12に印加する大きさを連続的に変化させることにより、透光率を定量的に調整可能となっている。
【0035】
図8は、照度制御装置50の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、照度制御装置50は、透光率算出部51、調光駆動部52、照明強度算出部53、照明駆動部54を備えている。
【0036】
透光率算出部51は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報、及び屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報とを用いて屋外の照度と屋内の照度との差である照度差を取得し、当該取得した照度差に基づき、調光シート10の透光率を算出する。調光駆動部52は、透光率算出部51により算出された透光率に基づき、図示しない駆動電源から調光シート10に印加する電圧の大きさを変化させる。なお、調光駆動部52は、例えば、PWM制御(パルス幅変調制御)を用いることにより、一対の透明電極12に印加する電圧の大きさを連続的に変化させる。また、照明強度算出部53は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報、及び屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報に基づき、照明器具20の照明強度を算出する。照明駆動部54は、照明強度算出部53により算出された照明強度に基づき、図示しない駆動電源から照明器具20の印加する電圧の大きさを変化させる。なお、照明器具20の一例としてLED(Light Emitting Diode)照明を用いる場合には、光量を一定にするための定電流回路が内蔵されていないLED照明を用いた上で、照明駆動部54からLED照明に供給する直流電流を制御することが好ましい。このとき、照明駆動部54は、例えばPWM制御を用いることにより、照明器具20に供給する直流電流の大きさを連続的に変化させる。
【0037】
より詳細には、透光率算出部51は、屋内照度センサー40から入力される屋内の照度が予め設定した設定照度よりも低いときには、この屋内の照度と屋外照度センサー30から入力される屋外の照度とを比較する。そして、透光率算出部51は、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から屋内に積極的に光を取り込むべく、調光シート10の透光率を高い値として算出する。また、照明強度算出部53も同様にして、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度と、屋内照度センサー40から入力される屋内の照度とを比較する。そして、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、上述した透光率算出部51による調光シート10の透光率の算出結果を監視する。そして、照明強度算出部53は、透光率算出部51による調光シート10の透光率の算出値が調光シート10の調整範囲の最大値であってもなお、屋内の照度が設定照度よりも低く、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から屋内への光の取り込みに加えて照明器具20により屋内を積極的に照明するべく、照明器具20の照明強度を高い値として算出する。
【0038】
また、透光率算出部51は、同じく屋内の照度が予め設定した設定照度よりも低く、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から屋外への光の放出を抑えるべく、調光シート10の透光率を低い値として算出する。また、照明強度算出部53も同様にして、屋内の照度が設定照度よりも低く、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、上述した透光率算出部51による調光シート10の透光率の算出結果を監視する。そして、照明強度算出部53は、透光率算出部51による調光シート10の透光率の算出値が調光シート10の調整範囲の最小値であってもなお、屋内の照度が設定照度よりも低く、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から屋外への光の放出を抑えることに加えて照明器具20により屋内を積極的に照明するべく、照明器具20の照明強度を高い値として算出する。
【0039】
また、透光率算出部51は、屋内の照度が設定照度よりも高いときには、照明強度算出部53により算出された照明強度に基づき、照明器具20がオン状態であるか否かを監視する。そして、透光率算出部51は、照明器具20がオン状態にあるときには、調光シート10の透光率を一定の値として算出する。また、照明強度算出部53も同様にして、屋内の照度が設定照度よりも高く、且つ、照明器具20がオン状態にあるときには、照明器具20による屋内の照明を抑えるべく、照明器具20の照明強度を低い値として算出する。そして、透光率算出部51は、照明強度算出部53による照明器具20の照明強度の算出値が照明器具20の調整範囲の最小値であってもなお、すなわち照明器具20がオフ状態にあってもなお、屋内の照度が設定照度よりも高いときには、照明器具20の照明動作をオフにすることに加えて屋外から屋内への光の入射を抑制するべく、調光シート10の透光率を低い値として算出する。
【0040】
次に、照度制御装置50が調光シート10及び照明器具20を通じて実行する屋内の照度制御について、その具体的な制御手順を説明する。ここで、照度制御装置50は、屋内の照度制御を所定の周期で実行する。
【0041】
図9及び
図10に示すように、この照度制御ではまず、照度制御装置50は、屋内照度センサー40から屋内の照度を取得するとともに、当該取得した屋内の照度と予め設定した設定照度とを比較する(ステップS10)。そして、屋内の照度が設定照度よりも高いときには(ステップS10=YES)、屋外の照度と屋内の照度とを比較する(ステップS11)。ここで、屋外の照度が屋内の照度以上であるときには(ステップS11=YES)、屋内の照明器具20の照明動作がオンであれば(ステップS12=YES)、まずは照明器具20の照明強度を下げる(ステップS13)。
【0042】
また、照度制御装置50は、照明器具20の照明強度を下げた後、屋内の照度が設定照度と一致するか否かを判定する(ステップS26)。そして、照明器具20の照明強度を下げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0043】
このとき、上述のように、屋内の照度は依然として設定照度よりも高い状態にあり(ステップS10=YES)、且つ、屋外の照度が屋内の照度以上であることから(ステップS11=YES)、その処理がステップS12に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS11〜ステップS13、ステップS26の処理を繰り返す。
【0044】
そして、照度制御装置50は、照明器具20の照明動作がオフとなるまで照明器具20の照明強度を下げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、ステップS12において屋内の照明器具20の照明動作がオフであると判定する(ステップS12=NO)。そして、照度制御装置50は、その処理をステップS14に移行して、調光シート10の透光率を下方修正する。このとき、調光シート10の透光率が下がることに合わせて、屋外から調光シート10を介して屋内に入射する光の光量が低下する。その結果、調光シート10の透光率を変化させる前と比較して、屋内の照度が低下する。
【0045】
その後、照度制御装置50は、こうして調光シート10の透光率を下方修正してもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0046】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度は依然として設定照度よりも高い状態にあることから(ステップS10=YES)、その処理をステップS11に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS11、ステップS12、ステップS14、ステップS26の処理を繰り返す。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致した時点で(ステップS26=YES)、
図9及び
図10に示す照度制御を終了する。
【0047】
その一方で、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには(ステップS11=NO)、調光シート10の透光率が最小値ではないことを条件に(ステップS15=NO)、まずは調光シート10の透光率を下方修正する(ステップS16)。このとき、調光シート10の透光率が下がることに合わせて、屋内から屋外に放出される光の光量が減少する。その結果、調光シート10の透光率を変化させる前と比較して、屋内の照度が上昇する。
【0048】
そして、照度制御装置50は、こうして調光シート10の透光率を下方修正してもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0049】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度は依然として設定照度よりも高い状態にあることから(ステップS10=YES)、屋外の照度が屋内の照度よりも低いのであれば(ステップS11=NO)、その処理をステップS15に移行する。そして、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度よりも低い間は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS11、ステップS15、ステップS16の処理を繰り返す。
【0050】
そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率が最小値となるまで下げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、ステップS15において調光シート10の透光率が最小値であると判定する(ステップS15=YES)。そして、照度制御装置50は、その処理をステップS17に移行して、照明器具20の照明強度を下げる(ステップS17)。
【0051】
その後、照度制御装置50は、こうして照明器具20の照明強度を下げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0052】
このとき、照度制御装置50は、上述のように屋内の照度が依然として設定照度よりも高い状態にあることから(ステップS10=YES)、屋外の照度が屋内の照度よりも低いのであれば(ステップS11=NO)、その処理をステップS15に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS11、ステップS15、ステップS17、ステップS26の処理を繰り返す。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致した時点で(ステップS26=YES)、
図9及び
図10に示す照度制御を終了する。
【0053】
また、照度制御装置50は、屋内照度センサー40から取得した屋内の照度が設定照度よりも低いときには(ステップS10=NO、ステップS18=YES)、屋外照度センサー30から屋外の照度を取得するとともに、当該取得した屋外の照度と上述のように屋内照度センサー40から取得した屋内の照度とを比較する(ステップS19)。そして、屋外の照度が屋内の照度以上であるときには(ステップS19=YES)、調光シート10の透光率が最大値ではないことを条件に(ステップS20=NO)、まずは調光シート10の透光率を上方修正する(ステップS21)。このとき、調光シート10の透光率が上がることに合わせて、屋外から屋内に入射する光の光量が増大する。その結果、調光シート10の透光率を変化させる前と比較して、屋内の照度が上昇する。
【0054】
そして、照度制御装置50は、こうして調光シート10の透光率を上方修正してもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0055】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度は依然として設定照度よりも低い状態にあることから(ステップS10=NO、ステップS18=YES)、その処理をステップS19に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS18〜ステップS21、ステップS26の処理を繰り返す。
【0056】
そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率が最大値となるまで上げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、ステップS20において調光シート10の透光率が最大値であると判定する(ステップS20=YES)。そして、照度制御装置50は、その処理をステップS22に移行して、照明器具20の照明強度を上げる(ステップS22)。
【0057】
その後、照度制御装置50は、こうして照明器具20の照明強度を上げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0058】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度が依然として設定照度よりも低い状態にあることから(ステップS10=NO、ステップS18=YES)、その処理をステップS19に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS18〜ステップS20、ステップS22、ステップS26の処理を繰り返す。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致した時点で(ステップS26=YES)、
図9及び
図10に示す照度制御を終了する。
【0059】
また、照度制御装置50は、先のステップS19において、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには(ステップS19=NO)、調光シート10の透光率が最小値ではないことを条件に(ステップS23=NO)、まずは調光シート10の透光率を下方修正する(ステップS24)。このとき、調光シート10の透光率が下がることに合わせて、屋内から屋外に放出される光の光量が減少する。その結果、調光シート10の透光率を変化させる前と比較して、屋内の照度が上昇する。
【0060】
そして、照度制御装置50は、こうして調光シート10の透光率を下方修正してもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26)、その処理をステップS10に戻す。
【0061】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度は依然として設定照度よりも低い状態にあることから(ステップS10=NO、ステップS18=YES)、屋外の照度が屋内の照度よりも低いのであれば(ステップS19=NO)、その処理をステップS23に移行する。そして、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS18、ステップS19、ステップS23、ステップS24、ステップS26の処理を繰り返す。
【0062】
そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最小値となるまで下げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、ステップS23において調光シート10の透光率が最小値であると判定する(ステップS23=YES)。そして、照度制御装置50は、その処理をステップS25に移行して、照明器具20の照明強度を上げる(ステップS25)。
【0063】
その後、照度制御装置50は、こうして照明器具20の照明強度を上げてもなお、屋内の照度が設定照度と一致しないときには(ステップS26=NO)、その処理をステップS10に戻す。
【0064】
このとき、照度制御装置50は、上述のように、屋内の照度が依然として設定照度よりも低い状態にあることから(ステップS10=NO、ステップS18=YES)、その処理をステップS19に移行する。そして、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度よりも低い間は、屋内の照度が設定照度と一致するまで、ステップS10、ステップS18、ステップS19、ステップS23、ステップS25、ステップS26の処理を繰り返す。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度と一致した時点で(ステップS26=YES)、
図9及び
図10に示す照度制御を終了する。
【0065】
なお、照度制御装置50は、屋内照度センサー40から取得した屋内の照度の初期値が設定照度と一致するときには(ステップS10=NO、ステップS18=NO)、先のステップS11〜ステップS25の処理を経ることなく、その処理をステップS26に移行する。このとき、照度制御装置50は、上述のように屋内の照度が設定照度と一致することから(ステップS26=YES)、
図9及び
図10に示す照度制御を終了する。
【0066】
次に、上記実施の形態の照度制御システムの作用について、特に、調光シート10と照明器具20とを組み合わせて屋内の照度を制御するときの作用に着目して以下説明する。
図11(a)〜
図11(c)に示す例では、昼間のように屋外の照度が比較的高い傾向にあって予め設定した設定照度よりも高く、且つ、照明器具20の照明強度の初期値も比較的高い傾向にあって屋内の照度の初期値も設定照度よりも高い。この例では、照度制御装置50は、まず照明器具20の照明強度を次第に下げていく。そして、こうして照明器具20の照明強度が低下することに合わせて、屋内の照度が次第に低下していく。なお、照度制御装置50は、照明器具20の照明強度を低下させている間、調光シート10の透光率を初期値に維持する。
【0067】
また、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度に達する前に、照明器具20の照明強度が「零」となって、照明器具20の照明動作が停止した時点t1で、調光シート10の透光率の下方修正を開始する。これにより、照明器具20の照明動作が停止されることに加えて、屋外の照度が屋内の照度よりも高いことに起因した屋外から屋内への光の入射が調光シート10によって抑えられる。その結果、照明器具20の照明動作が停止した時点t1と比較して、屋内の照度がより一層低下する。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度まで低下した時点t2で、調光シート10の透光率の下方修正を停止して当該時点t2における調光シート10の透光率を維持する。
【0068】
すなわち、本実施の形態では、
図11(a)〜
図11(c)に示すように、屋外の照度が設定照度よりも高く、且つ、屋内の照度の初期値が設定照度よりも高いときには、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度以上であれば、屋内の照度を下げる上でまず、照明器具20の照明強度を低下させる。そして、照度制御装置50は、照明器具20が消灯してもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも高いことを条件に、調光シート10の透光率を下方修正する。このように、照度制御装置50は、屋内の照度を下げる際には、屋外の照度が屋内の照度以上であれば、照明器具20の照明強度を下げて屋外から屋内への光の取り込みを促進する。そして、照明器具20の照明動作をオフにしてもなお、屋内の照度が設定照度に達しないときには、調光シート10の透光率を下げて屋外から屋内への光の入射を抑える。これにより、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0069】
なお、図示は省略したが、屋外の照度が設定照度よりも高く、且つ、屋内の照度の初期値が設定照度よりも高いときには、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度よりも低いのであれば、屋内の照度を下げる上でまず、調光シート10の透光率を下げる。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率が最小値になってもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも高いことを条件に、照明器具20の照明強度を低下させる。このように、照度制御装置50は、屋内の照度を下げる際には、屋外の照度が屋内の照度よりも低いのであれば、調光シート10の透光率を下げて屋外から屋内への光の放出を抑える。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最小値に設定した上で、照明器具20の照明強度を下げる。これにより、照明器具20の照明強度が最大限に活かされるかたちとなり、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0070】
また、
図12(a)〜
図12(c)に示す例では、昼間のように屋外の照度が比較的高い傾向にあって予め設定した設定照度よりも高く、且つ、照明器具20の照明強度の初期値が比較的低い傾向にあって屋内の照度の初期値が設定照度よりも低い。この例では、照度制御装置50は、まず調光シート10の透光率を次第に上げていく。そして、こうして調光シート10の透光率が上昇することに合わせて、屋内の照度が次第に上昇していく。なお、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を上げている間、照明器具20の照明強度を初期値に維持する。
【0071】
また、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度に達する前に、調光シート10の透光率が最大値となった時点t3で、照明器具20の照明強度を上げ始める。これにより、屋外の照度が屋内の照度よりも高いことに起因して屋外から入射する光が調光シート10によって屋内に取り込まれることに加えて、照明器具20の照明動作が行われることにより、調光シート10の透光率が最大値となった時点t3と比較して、屋内の照度がより一層上昇する。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度まで上昇した時点t4で、照明器具20の照明強度の上昇を停止して当該時点t4における照明器具20の照明強度を維持する。
【0072】
すなわち、本実施の形態では、
図12(a)〜
図12(c)に示すように、屋外の照度が設定照度よりも高く、且つ、屋内の照度の初期値が設定照度よりも低いときには、照度制御装置50は、屋内の照度を上げる上でまず、調光シート10の透光率を上方修正する。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最大値まで上昇させてもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも低いことを条件に、照明器具20の照明強度を上げる。このように、照度制御装置50は、屋内の照度を上げる際には、照明器具20と比較して消費電力の小さい調光シート10の透光率を優先して制御するため、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0073】
また、
図13(a)〜
図13(c)に示す例では、夕方のように屋外の照度が比較的低い傾向にあって予め設定した設定照度よりも低く、且つ、照明器具20の照明強度の初期値が比較的高い傾向にあって屋内の照度の初期値が屋外の照度よりも高い。この例では、照度制御装置50は、まず調光シート10の透光率を次第に下げていく。これにより、屋内の照度が屋外の照度よりも高いことに起因した屋内から屋外への光の放出が調光シート10によって抑えられることに加えて、屋内から屋外へ放出しようとする光が調光シート10によって屋内に反射されることにより、屋内の照度が次第に上昇していく。なお、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を上げている間、照明器具20の照明強度を初期値に維持する。
【0074】
また、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度に達する前に、調光シート10の透光率が最小値となった時点t5で、照明器具20の照明強度を上げ始める。これにより、上述のように調光シート10によって屋内の照度が高められることに加えて、照明器具20の照明動作が行われることにより、調光シート10の透光率が最小値となった時点t5と比較して、屋内の照度がより一層上昇する。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度まで上昇した時点t6で、照明器具20の照明強度の上昇を停止して当該時点t6における照明器具20の照明強度を維持する。
【0075】
すなわち、本実施の形態では、
図13(a)〜
図13(c)に示すように、屋外の照度が設定照度よりも低く、且つ、屋内の照度の初期値が屋外の照度よりも高いときには、照度制御装置50は、屋内の照度を上げる上でまず、調光シート10の透光率を下方修正する。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最小値まで低下させてもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも低いことを条件に、照明器具20の照明強度を上げる。このように、照度制御装置50は、屋内の照度を上げる際には、照明器具20と比較して消費電力の小さい調光シート10の透光率を優先して制御するため、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。また、照度制御装置50は、照明器具20の照明強度を上げる際には、調光シート10の透光率が最小値となっており、照明器具20から照らされる光が屋内から屋外に放出されることなく、調光シート10によって屋内に極力反射されやすくなっているため、この点でも、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0076】
また、
図14(a)〜
図14(c)に示す例では、夕方のように屋外の照度が比較的低い傾向にあって予め設定した設定照度よりも低く、且つ、照明器具20の照明強度の初期値が比較的低い傾向にあって屋内の照度の初期値が屋外の照度よりも低い。この例では、照度制御装置50は、まず調光シート10の透光率を次第に上げていく。これにより、屋外の照度が屋内の照度よりも高いことに起因して屋外から入射する光が調光シート10によって屋内に取り込まれる。なお、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を上げている間、照明器具20の照明強度を初期値に維持する。
【0077】
また、同図に示す例では、屋内の照度が設定照度に達する前に、調光シート10の透光率が最大値となった時点t7で、照明器具20の照明強度を上げ始める。これにより、上述のように調光シート10によって屋内の照度が高められることに加えて、照明器具20の照明動作が行われることにより、調光シート10の透光率が最大値となった時点t8と比較して、屋内の照度がより一層上昇する。
【0078】
そして、こうして屋内の照度が上昇する過程で屋内の照度が屋外の照度を上回った時点t8で、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を次第に下げていく。これにより、屋内の照度が屋外の照度よりも高いことに起因した屋内から屋外への光の放出が調光シート10によって抑えられることに加えて、屋内から屋外へ放出しようとする光が調光シート10によって屋内に反射されることにより、屋内の照度が次第に上昇していく。なお、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を下げている間、照明器具20の照明強度を維持する。
【0079】
また、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度に達する前に、調光シート10の透光率が最小値となった時点t9で、照明器具20の照明強度を上げ始める。これにより、上述のように調光シート10によって屋内の照度が高められることに加えて、照明器具20の照明動作が行われることにより、調光シート10の透光率が最小値となった時点t9と比較して、屋内の照度がより一層上昇する。その後、照度制御装置50は、屋内の照度が設定照度まで上昇した時点t10で、照明器具20の照明強度の上昇を停止して当該時点t10における照明器具20の照明強度を維持する。
【0080】
すなわち、本実施の形態では、
図14(a)〜
図14(c)に示すように、屋外の照度が設定照度よりも低く、且つ、屋内の照度の初期値が屋外の照度よりも低いときには、照度制御装置50は、屋内の照度が屋外の照度よりも低い間は、屋内の照度を上げる上でまず、調光シート10の透光率を上方修正する。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最大値まで上昇させてもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも低いことを条件に、照明器具20の照明強度を上げる。
【0081】
このように、照度制御装置50は、屋内の照度を上げる際には、照明器具20と比較して消費電力の小さい調光シート10の透光率を優先して制御するため、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0082】
また、本実施の形態では、照度制御装置50は、屋内の照度の上昇に合わせて、屋内の照度と屋外の照度との大小関係が逆転したときには、屋内の照度を上げる上でまず、調光シート10の透光率を下方修正する。そして、照度制御装置50は、調光シート10の透光率を最小値まで低下させてもなお、屋内の照度が依然として設定照度よりも低いことを条件に、照明器具20の照明強度を上げる。このように、照度制御装置50は、屋内の照度と屋外の照度の大小関係が逆転した直後にあって屋内の照度を上げる際には、照明器具20と比較して消費電力の小さい調光シート10を優先して制御するため、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。また、照度制御装置50は、照明器具20の照明強度を上げる際には、調光シート10の透光率が最小値となっており、照明器具20から照らされる光が屋内から屋外に放出されることなく、調光シート10によって屋内に極力反射されやすくなっているため、この点でも、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率が高められる。
【0083】
以上説明したように、上記第1の実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、調光シート10が比較的高い第1の透光率を示すことにより、屋外から調光シート10を介して屋内に向けて光が取り込まれる。その一方で、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、調光シート10が比較的低い第2の透光率を示すことにより、屋内から屋外に向けて放出される光が調光シート10により屋内に反射される。すなわち、屋外の照度が屋内の照度よりも高い場合であれ低い場合であれ、屋内の照度を所定の照度とするのに必要とされる屋内の照明器具20の照明強度を抑えて照明のエネルギー効率を高めることができる。
【0084】
(2)屋内の照度が予め設定した設定照度を上回るときには、屋外から調光シート10を介して屋内に取り込まれる光の光量を抑える。これにより、照明のエネルギー効率を維持しつつ、屋内の照度を設定照度に収束させることができる。
【0085】
(3)屋内の照度が設定照度を上回るときには、照明器具20の照明動作が行われているのであれば、まずは照明器具20の照明強度を低下させる。そして、照明器具20が消灯した時点であっても屋内の照度が設定照度を上回ったときに初めて、屋外から調光シート10を介して屋内に取り込まれる光の光量を抑える。これにより、照明のエネルギー効率を最大限に高めつつ、屋内の照度を設定照度に収束させることができる。
【0086】
(4)屋内の照度が設定照度を下回るときには、屋外の照度が屋内の照度よりも高く、屋外から屋内への光の入射量の方が屋内から屋外への光の放出量よりも大きい状況にあることを条件に、屋外から屋内への調光シート10を介した光の取り込みを促す。これにより、照明のエネルギー効率を高めつつ、屋内の照度を設定照度に収束させることができる。
【0087】
(5)屋内の照度が設定照度を下回るときには、屋外の照度が屋内の照度よりも低く、屋内から屋外への光の放出量の方が屋外から屋内への光の入射量よりも大きい状況にあることを条件に、屋外から屋内への調光シート10を介した光の放出を抑える。これにより、照明のエネルギー効率を高めつつ、屋内の照度を設定照度に収束させることができる。
【0088】
(6)調光シート10は、一対の透明電極12と、一対の透明電極12の間に配置され、高分子樹脂13A及び液晶分子13Bが充填された液晶層からなる調光層13とを有し、照度制御装置50は、一対の透明電極12に印加する電圧の大きさを制御する。これにより、調光シート10の透光率のダイナミックレンジを大きく確保することができるため、屋内の照度を幅広く制御することが可能となる。
【0089】
(第2の実施の形態)
図15から
図20を参照して、照度制御システムの第2の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、第1の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0090】
図15に示すように、調光シート10は、一対の基板11、一対の透明電極12、調光層13に加えて、配向膜14を更に有している。
配向膜14は、各透明電極12のうち調光層13に対向する電極面に設けられており、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シリコン、シアン化化合物等の有機化合物、SiO
2、ZrO
2等の無機化合物、又はこれらの混合物により構成されている。配向膜14は、垂直配向膜であり、液晶分子13Bの長軸方向を各透明電極12の電極面と垂直となるように配向させている。
【0091】
そして、
図15に示すように、本実施の形態では、照度制御装置50から一対の透明電極12に第1の電圧V1として0[V]を印加するときであって、照度制御装置50から一対の透明電極12に電圧を印加していない状態では、液晶の相状態は、上述した配向膜14の機能に基づき、液晶分子13Bの長軸方向が各透明電極12の電極面と垂直になるホメオトロピック相となる。
【0092】
このように、液晶分子13Bが配向された状態では、液晶分子13Bの屈折率と高分子樹脂13Aの屈折率とが揃うことから、調光シート10に入射した光が進行方向を大きく曲げることなく、調光シート10を透過するようになり、調光シート10は透明な状態となる。そのため、
図16に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から調光シート10に入射した光が調光シート10の厚み方向に透過して屋内に進入しやすい。その一方で、
図17に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から調光シート10に入射した光が調光シート10の厚み方向に透過して屋外に放出されやすい。
【0093】
その一方で、
図18に示すように、照度制御装置50から一対の透明電極12に印加する電圧が第1の電圧よりも大きい第2の電圧であるときには、液晶の相状態は、液晶分子13Bの長軸方向の向きが、当該液晶分子13Bの近傍に位置する高分子樹脂13Aにも依存して不規則的になるフォーカルコニック相となる。
【0094】
このように、液晶分子13Bが配向されていない状態では、調光シート10に入射した光が進行方向を大きく曲げられて拡散するようになり、調光シート10は白濁した状態となる。そのため、
図19に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには、屋外から調光シート10に入射した光が屋外側に散乱することとなり、調光シート10の厚み方向に透過して屋内には進入しにくい。その一方で、
図20に示すように、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには、屋内から調光シート10に入射した光が屋内側に散乱することとなり、調光シート10の厚み方向に透過して屋外には放出されにくい。
【0095】
したがって、一対の透明電極12に印加される電圧が第1の電圧であるときには、上述のように調光層13が透光性を示すことから、透光率(第1の透光率)は比較的高い傾向にある。その一方で、一対の透明電極12に印加される電圧が第2の電圧であるときには、上述のように調光層13が非透光性を示すことから、透光率(第2の透光率)は比較的低い傾向にある。すなわち、本実施の形態では、上記第1の実施の形態と比較して、印加する電圧を変化させたときの透光率の大小関係が逆転する。そして、本実施の形態では、照度制御装置50は、一対の透明電極12に印加される電圧が第1の電圧から第2の電圧に変化する過程の範囲も含めて、一対の透明電極12に印加する大きさを連続的に変化させることにより、透光率を定量的に調整可能となっている。
【0096】
以上説明したように、上記第2の実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
(第3の実施の形態)
図21から
図23を参照して、照度制御システムの第3の実施の形態について説明する。
【0097】
図21は、照度制御装置50の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、照明強度算出部53は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報、及び屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報に加え、人検知センサー60から入力される屋内の人物の有無に関する情報に基づき、照明器具20の照明強度を算出する。
【0098】
次に、照度制御装置50が、上述した人検知センサー60から入力される情報も含めて考慮しつつ、調光シート10及び照明器具20を通じて実行する屋内の照度制御について、その具体的な制御手順を説明する。ここで、照度制御装置50は、屋内の照度制御を所定の周期で実行する。
【0099】
図22及び
図23に示すように、この照度制御ではまず、照度制御装置50は、人検知センサー60から屋内の人物の有無に関するデータを取得する(ステップS30)。そして、照度制御装置50は、こうして取得したデータに基づき、屋内から人物が検知されない場合(ステップS30=NO)、屋内の照明器具20がオン状態にあるときには(ステップS31=YES)、照明器具20を消灯させてオフ状態に設定した上で(ステップS32)、その処理をステップS30に戻す。その一方で、照度制御装置50は、屋内の照明器具20が既にオフ状態に設定されているときには(ステップS31=NO)、先のステップS32の処理を経ることなく、その処理をステップS30に戻す。
【0100】
このように、照度制御装置50は、屋内から人物が検知されないときには、そもそも屋内の照度を適正に維持する必要がないことから、屋外照度センサー30や屋内照度センサー40から取得されるデータとは無関係に、照明器具20の照明動作を強制的にオフに設定する。これにより、屋内の照度を制御する上でのエネルギー効率がより一層高められる。
【0101】
そして、照度制御装置50は、人検知センサー60から取得したデータに基づき、屋内から人物が検知されたときには(ステップS30=YES)、ステップS33〜ステップS49において、上記第1の実施の形態における
図9及び
図10のステップS10〜ステップS26と同様の処理を経て、調光シート10及び照明器具20を連携させた屋内の照明制御を行った上で、
図22及び
図23に示す照明制御を終了する。
【0102】
以上説明したように、上記第3の実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(7)照度制御装置50は、人検知センサー60により屋内から人物が検知されないときには、照明器具20を消灯させる。これにより、屋内に人物が存在しないときには、屋内の照度の高低に関わらず、照明器具20の照明動作が自動的に停止されるため、照明のエネルギー効率をより一層高めることが可能となる。
【0103】
(その他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・上記各実施の形態において、調光シート10は、壁部100の開口部101のうち、調光窓102の外側に隣接して設けられてもよい。
【0104】
・上記第1及び第3の実施の形態において、調光シート10は、液晶分子を高分子中に分散させて液晶層を構成したPDLC(Polymer Stabilized Cholesteric Texture)構造を有してもよいし、高分子を含まない溶媒中に液晶分子を分散させて液晶層を構成してもよいし、調光層として液晶分子を含まないように構成してもよい。要は、印加する電圧の大きさに基づいて調光量が変化する構成であれば調光シートとして採用することは可能である。
【0105】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、照明器具20の照明強度を制御することなく調光シート10の透光率を制御することにより、屋内の照度を制御するようにしてもよい。
【0106】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、屋内の照度が予め設定した設定照度よりも低いときであって、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも高いとき、調光シート10の透光率が最大値に達する前の時点から調光シート10の透光率の上方修正と照明器具20の照明強度の増大を並行して行うようにしてもよい。
【0107】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、屋内の照度が予め設定した設定照度よりも高いときであって、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも低いとき、調光シート10の透光率が最小値に達する前の時点から調光シート10の透光率の上方修正と照明器具20の照明強度の増大とを並行して行うようにしてもよい。
【0108】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、屋内の照度が予め設定した設定照度よりも高いときであって、且つ、屋外の照度が屋内の照度よりも高いとき、屋内の照明器具20がオフ状態となる前の時点から調光シート10の透光率の下方修正と照明器具20の照明強度の低減とを並行して行うようにしてもよい。
【0109】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、屋内の照度の目標となる設定照度を予め設定することなく、屋外の照度と屋内の照度との大小関係に基づき、調光シート10の透光率を調整するようにしてもよい。この場合、照度制御装置50は、屋外の照度が屋内の照度よりも高いときには調光シート10が比較的高い透光率(第1の透光率)を示す電圧を透明電極12に印加する制御を行う一方で、屋外の照度が屋内の照度よりも低いときには調光シート10が比較的低い透光率(第2の透光率)を示す電圧を透明電極12に印加する制御を行うようにすればよい。
【0110】
・上記各実施の形態において、照度制御装置50は、屋外照度センサー30から入力される屋外の照度情報に代えて、太陽光の強度や天候情報等といった光源情報を外部から取得し、当該取得した光源情報と屋内照度センサー40から入力される屋内の照度情報とを組み合わせて屋内と屋外の照度の差である照度差を取得してもよい。また、照度制御装置50は、例えば、時間帯や天候情報等と関連付けて、屋外の照度と屋内の照度との相関関係を示す関係式を有しているのであれば、該当する関係式に対して屋外照度センサー30及び屋内照度センサー40の何れか一方から入力される照度の情報を入力することにより、屋内と屋外の照度の差である照度差を取得してもよい。