(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原子炉建屋における原子炉ウェルに複数段に備えたプラグ係止部に取り付けられている複数の遮蔽プラグのうち、上段プラグ係止部に取り付けられている第1層遮蔽プラグを撤去する工程と、
前記第1層遮蔽プラグの撤去後に残る第2層以下の遮蔽プラグの開口部に連通させて配置するための遮蔽円筒の外周に支持鉄骨を取り付けたブロックを形成する工程と、
前記ブロックを搬送して原子炉ウェルの上方に前記遮蔽円筒を配置すると共に、前記支持鉄骨の外周端側を、前記上段プラグ係止部に設置する工程と、
前記遮蔽円筒の上側に開閉可能な遮蔽扉を設置する工程と、
前記原子炉ウェルを囲む配置の側壁と、前記側壁の上端側に気密に取り付けられ且つ前記遮蔽円筒の上方に開口部を備えた天井壁と、前記開口部に気密に取り付けられて下端側が前記遮蔽扉の上面に近接する高さ位置に配置されたリテーナリングと、前記リテーナリングの下端側に取り付けられた膨張式シールとを備えた気密カバーを形成する工程と、
前記遮蔽円筒の内側から、前記第2層以下の遮蔽プラグに開口を形成する工程と、を行って遮蔽ポートを形成すること
を特徴とする遮蔽ポート設置工法。
前記支持鉄骨は、前記遮蔽円筒を中心として周方向に間隔を隔てた少なくとも3個所以上の複数個所に前記遮蔽円筒の径方向に沿って延びるよう配置して、前記遮蔽円筒に取り付ける
請求項1記載の遮蔽ポート設置工法。
前記遮蔽円筒の内側から、前記第2層以下の遮蔽プラグに開口を形成する工程の前に、該第2層以下の遮蔽プラグにおける開口形成後に残る部分を、前記支持鉄骨に連結して支持させる工程を行う
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の遮蔽ポート設置工法。
原子炉建屋における原子炉ウェルに複数段に備えたプラグ係止部に取り付けられている複数の遮蔽プラグのうち、上段プラグ係止部に取り付けられている第1層遮蔽プラグを撤去した後に残る第2層以下の遮蔽プラグに設けた開口部と、
前記開口部に連通させて配置した遮蔽円筒と、
内周端側が前記遮蔽円筒の外周に取り付けられ且つ外周端側が前記上段プラグ係止部に設置された支持鉄骨と、
前記遮蔽円筒の上端側の開口を開閉可能な遮蔽扉と、
前記原子炉ウェルを囲む配置の側壁と、前記側壁の上端側に気密に取り付けられ且つ前記遮蔽円筒の上方に開口部を備えた天井壁と、前記開口部に気密に取り付けられて下端側が前記遮蔽扉の上面に近接する高さ位置に配置されたリテーナリングと、前記リテーナリングの下端側に取り付けられた膨張式シールとを有する気密カバーと、を備えること
を特徴とする遮蔽ポート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、遮蔽ポート設置工法を適用する原子炉の一例を示すもので、
図1(a)は原子炉建屋の概略切断側面図、
図1(b)は原子炉ウェルの部分を拡大して示す切断側面図である。
【0026】
図2は遮蔽ポート設置工法で形成する遮蔽ポートを示す概略切断側面図である。
図3は
図2の要部を拡大して示す図である。
図4は
図2のA−A方向矢視図である。
図5は、遮蔽ポート設置工法で使用するプラグ支持ロッドを示すもので、
図5(a)は、係止アームをロッド本体に沿わせた姿勢とした状態を示す図、
図5(b)は係止アームを遮蔽プラグの下面側に係止させた状態を示す図である。
図6は
図2のB−B方向矢視図である。
図7は
図2のC−C方向矢視図である。
【0027】
図8乃至
図18は、遮蔽ポート設置工法の実施形態の手順を示すもので、
図8は遮蔽用コンクリート層形成工程を示す概要図である。
図9は第1層遮蔽プラグ撤去工程を示す概要図である。
図10はスリット形成工程を示す概要図である。
図11は孔位置マーキング工程を示す概要図である。
図12はロッド挿通孔形成工程を示す概要図である。
図13は下部遮蔽円筒体設置工程を示す概要図である。
図14は遮蔽用コンクリート層追加形成工程を示す概要図である。
図15はベースプレート設置工程を示す概要図である。
図16は上部遮蔽円筒体設置工程を示す概要図である。
図17は遮蔽扉設置工程と気密カバー形成工程を示す概要図である。
図18は遮蔽室設置工程を示す概要図である。
【0028】
先ず、本実施形態の遮蔽ポート設置工法の適用対象となる原子炉の構造について説明する。
【0029】
原子炉は、
図1(a)に示すように、コンクリート製の原子炉建屋1内に、原子炉格納容器2を備えた構成とされている。原子炉格納容器2の内部には、原子炉圧力容器3が収納されている。
【0030】
原子炉格納容器2にて、原子炉圧力容器3の蓋よりも上方の縦穴は、原子炉ウェル4とされている。原子炉ウェル4は、
図1(b)に示すように、上端側開口寄りの内周面に、上方が開放された上段プラグ係止部5と、上段プラグ係止部5よりも小さい内径の中段プラグ係止部6と、中段プラグ係止部6よりも小さい内径の下段プラグ係止部7とが、上方から順に段差を設けて形成されている。各プラグ係止部5,6,7の上下方向の深さ寸法は、次に述べる各遮蔽プラグ8,9,10の厚み寸法に対応する寸法とされている。
【0031】
上段プラグ係止部5、中段プラグ係止部6、下段プラグ係止部7の内側には、それぞれに対応する外径を備えた円板状の第1層遮蔽プラグ8、第2層遮蔽プラグ9、第3層遮蔽プラグ10が上方から挿入されて取り付けられている。
【0032】
各層の遮蔽プラグ8,9,10は、炉内側から原子炉ウェル4に到達する放射線を遮蔽するために、厚さが数百ミリメートルの鉄筋コンクリート製とされている。そのため、各層の遮蔽プラグ8,9,10は、重量が大となっている。
【0033】
そこで、各遮蔽プラグ8,9,10は、幅方向に複数分割、たとえば3つずつの分割ピース8a,9a,10aに分割された分割構造とされ、分割ピース8a,9a,10aごとに図示しない吊部を備えた構成とされている。これにより、各遮蔽プラグ8,9,10は、対応するプラグ係止部5,6,7に対して取付けや取り外しを行うときには、分割ピース8a,9a,10aごとに吊って順次搬送することができる。
【0034】
更に、各遮蔽プラグ8,9,10では、隣接配置される分割ピース8a,9a,10a同士の継ぎ目は、各遮蔽プラグ8,9,10の板厚方向に沿う方向から屈曲した複雑形状部とされていて、継ぎ目における放射線のストリーミング(漏れ)が抑制されている。
【0035】
なお、
図1では、図示する便宜上、各遮蔽プラグ8,9,10は、いずれも分割ピース8a,9a,10aが図上左右方向に配列された構成を示してあるが、実際には、第1層遮蔽プラグ8および第3層遮蔽プラグ10と、第2層遮蔽プラグ9とでは、分割ピース8a,10aの配列方向と分割ピース9aの配列方向とが互いに交差するように配置されている。これにより、各遮蔽プラグ8,9,10における継ぎ目同士が上下方向にできるだけ重ならないようにして、放射線のストリーミングをより抑えるようにしてある。
【0036】
したがって、原子炉ウェル4は、各プラグ係止部5,6,7に取り付けられた3層の遮蔽プラグ8,9,10により、封止されると共に、炉内側から原子炉ウェル4に達する放射線についての遮蔽が図られている。
【0037】
原子炉建屋1にて、原子炉ウェル4の側方には、機器仮置きプール(DSプール)11および燃料貯蔵プール12が設けられている。
【0038】
また、原子炉建屋1にて、原子炉ウェル4の上端側開口の周囲は、作業用の床であるオペレーションフロア13とされている。オペレーションフロア13にて、原子炉ウェル4の上方となる位置には、第1層遮蔽プラグ8よりも一回り大きな平面形状の仮設の遮蔽鋼板14が載置された構成とされている。
【0039】
更に、オペレーションフロア13の上方には、建屋揚重機としての天井クレーン15が設けられている。
【0040】
次に、以上の構成を備えた原子炉に対して適用する本実施形態の遮蔽ポート設置工法について説明する。
【0041】
ここで、
図2乃至
図7を用いて、本実施形態の遮蔽ポート設置工法で形成する遮蔽ポート16の構成について説明する。
【0042】
遮蔽ポート16は、
図2、
図3に示すように、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10に設けた開口17,18を備え、第2層遮蔽プラグ9の開口17の内側からオペレーションフロア13よりも高い位置まで上下方向に延びる遮蔽円筒19を備え、また、遮蔽円筒19の上端側の開口20の上側に、開閉可能な遮蔽扉21を備え、更に、遮蔽扉21により遮蔽円筒19の開口20を閉じた状態のときに、気密機能を得る気密カバー22を備えた構成とされている。
【0043】
遮蔽円筒19は、原子炉ウェル4の内側と連通させて設けることが所望される開口、すなわち、第3層遮蔽プラグ10の開口18の内径と同様の内径で上下方向に延びる円筒状の部材であり、放射線に対する遮蔽機能を得るために、炭素鋼製とされている。なお、遮蔽円筒19の周壁の厚みは、各遮蔽プラグ9,10の板厚に比して小さくてもよい。これは、遮蔽プラグ9,10に対しては、原子炉ウェル4を通過する放射線が板厚方向に入射するのに対し、遮蔽円筒19では、周壁に対し、放射線が斜め下方から入射するようになるためである。したがって、遮蔽円筒19の周壁の厚みは、前述した放射線が周壁を斜めに通過しようとする方向の長さが、各遮蔽プラグ9,10の板厚と凡そ対応するように、数百ミリメートル程度に設定されている。
【0044】
更に、本実施形態では、遮蔽円筒19は、下部遮蔽円筒体23と上部遮蔽円筒体24とに上下方向に2分割された構造を備えている。これは、下部遮蔽円筒体23と上部遮蔽円筒体24とで設置作業を分けて実施できるようにして、それぞれの設置作業時に天井クレーン15(
図1参照)などを用いて吊って搬送する対象物の重量の軽減化を図るためである。
【0045】
下部遮蔽円筒体23の上端側と上部遮蔽円筒体24の下端側との継ぎ目は、放射線のストリーミングを抑制するために、内外方向に対して屈曲した複雑形状部とされている。たとえば、
図3に示すように、下部遮蔽円筒体23の周壁の上端側には、内周寄り部分に軸心方向に沿って上向きに突出する内周側凸部23aを備え、且つ外周寄り部分には内周側凸部23aに比して軸心方向位置が後退した外周側凹部23bを備える。一方、上部遮蔽円筒体24の周壁の下端側には、外周寄り部分に軸心方向に沿って下向きに突出する外周側凸部24aを備え、且つ内周寄り部分には外周側凸部24aに比して軸心方向位置が後退した内周側凹部24bを備える。下部遮蔽円筒体23の上側に上部遮蔽円筒体24を配置するときには、内周側凸部23aを内周側凹部24bに、また、外周側凸部24aを外周側凹部23bにそれぞれ嵌合させる。これにより、下部遮蔽円筒体23と上部遮蔽円筒体24との継ぎ目は、遮蔽円筒19の内周面から外周面までの途中でクランク状に屈曲する複雑形状部とすることができる。
【0046】
なお、下部遮蔽円筒体23の上端側と上部遮蔽円筒体24の下端側との継ぎ目が、遮蔽円筒19の内周面から外周面まで連続する直線状の配置とならないようにしてあれば、継ぎ目の複雑形状部は、図示した以外の形状を採用してもよいことは勿論である。
【0047】
下部遮蔽円筒体23の外周には、
図2、
図3、
図4に示すように、外周端側を上段プラグ係止部5に載置した支持鉄骨25が設けられている。支持鉄骨25は、下部遮蔽円筒体23を中心として、周方向に間隔を隔てた少なくとも3個所以上の複数個所、たとえば、周方向の8個所に、下部遮蔽円筒体23の径方向に沿って延びる配置とされている。周方向に隣接する支持鉄骨25の中間部同士は、連結部材26で連結されている。これにより、すべての支持鉄骨25は、下部遮蔽円筒体23の径方向に沿う角度姿勢に保持されている。
【0048】
各支持鉄骨25の内周端側は、下部遮蔽円筒体23の外周部に取り付けられている。この際、下部遮蔽円筒体23の上下方向に関する各支持鉄骨25の取付け位置は、下部遮蔽円筒体23の下部寄りが、第2層遮蔽プラグ9の板厚に対応する寸法分、各支持鉄骨25の下方へ突出するように設定されている。このため、下部遮蔽円筒体23は、各支持鉄骨25より下方へ突出する部分が、第2層遮蔽プラグ9の開口17の内側に挿入して配置されている。
【0049】
第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10にて開口17,18を形成した後に残る外周寄りの部分は、周方向の複数個所で、上端側が支持鉄骨25または連結部材26に連結されたプラグ支持ロッド27によって支持されている。この際、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10では、すべての分割ピース9a,10a(
図1参照)についての支持を行うことができるように、プラグ支持ロッド27の数と、各プラグ支持ロッド27の配置が設定されている。
【0050】
プラグ支持ロッド27は、たとえば、
図3に示すように、第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10に上下方向に貫通して設けられたロッド挿通孔28に挿通配置された上下方向に延びるロッド本体27aと、ロッド挿通孔28の直径よりも長い寸法を有して、長手方向の中間部がロッド本体27aの下端側に揺動可能に取り付けられた係止アーム27bとを備えた構成とされている。
【0051】
係止アーム27bは、
図5(a)に実線で示すように、ロッド本体27aの長手方向に概ね沿う方向の姿勢から、
図5(a)に二点鎖線で示すように、ロッド本体27aに対して交差する方向の姿勢まで角度変更可能とされている。更に、係止アーム27bは、たとえば、長手方向中間部の一側にウエイト27cを取り付けた構成として、姿勢の制限や拘束を外部から受けない状態では、係止アーム27bが自動的にロッド本体27aに対して交差する姿勢をとるようにしてある。
【0052】
これにより、プラグ支持ロッド27は、係止アーム27bを概ねロッド本体27aに沿わせた姿勢とした状態で、ロッド本体27aの下部側および係止アーム27bを、第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10に設けられているロッド挿通孔28に上方から挿通させることができる。また、プラグ支持ロッド27は、ロッド本体27aの下部側を、ロッド挿通孔28の下方へ、係止アーム27bがロッド挿通孔28に掛からなくなる位置まで突出させると、係止アーム27bが自動的にロッド本体27aに対して交差する姿勢となる。よって、この状態で、
図5(b)に示すように、ロッド本体27aを引き上げることにより、係止アーム27bの長手方向の両端側を、第3層遮蔽プラグ10の下面におけるロッド挿通孔28の周縁に係止させることができる。
【0053】
プラグ支持ロッド27は、
図3に示すように、ロッド本体27aの上部側に、各支持鉄骨25や各連結部材26に対して連結する連結手段27dを備えている。この連結手段27dは、前述したように、係止アーム27bを第3層遮蔽プラグ10の下面におけるロッド挿通孔28の周縁に係止させた後に、ロッド本体27aを上方に引き上げる方向に付勢した状態で、ロッド本体27aの上部側を各支持鉄骨25や各連結部材26に保持させる機能を備えている。この機能を実現できれば、連結手段27dは、たとえば、ロッド本体27aの上部側に設けた雄ねじ部とナットとを用いる形式や、その他、任意の形式を採用してよいことは勿論である。
【0054】
以上の構成としてあるプラグ支持ロッド27によれば、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10に複数のロッド挿通孔28が設けられている状態で、第2層遮蔽プラグ9の上方からの作業により、第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10を、各ロッド挿通孔28に挿通配置した複数のプラグ支持ロッド27を介して、各支持鉄骨25及び各連結部材26に取り付けて支持させることができる。
【0055】
なお、プラグ支持ロッド27は、第2層遮蔽プラグ9の上方からの作業により、第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10を各支持鉄骨25及び各連結部材26に取り付けて支持させることができるものであれば、図示した以外の形式や形状を備えたものとしてもよいことは勿論である。
【0056】
各支持鉄骨25の外周側端部は、
図2、
図3、
図4に示すように、上段プラグ係止部5の周壁の内側近傍に配置された上下方向に延びる円筒部材29に取り付けられている。
【0057】
円筒部材29は、軸心方向寸法が、上段プラグ係止部5の高さ寸法と、後述するオペレーションフロア13に打設する遮蔽用コンクリート層30の厚みと、気密カバー22のベースプレート31の板厚とを足した寸法に対応する寸法に設定されている。なお、気密カバー22のベースプレート31を含む具体的な構成については後述する。
【0058】
更に、円筒部材29は、外周面における上端からベースプレート31の板厚に対応する寸法分、低い位置に、周方向の全周に亘り外側に張り出す環状プレート32が取り付けられている。
【0059】
円筒部材29は、上段プラグ係止部5に、シール部材33を介装した状態で載置されている。これにより、円筒部材29の下端側と上段プラグ係止部5との間は、気密にシールされている。このように上段プラグ係止部5に載置された円筒部材29は、円筒部材29の上部側が、オペレーションフロア13から、遮蔽用コンクリート層30の厚みとベースプレート31の板厚とを足した寸法に対応する寸法で、上方に突出している。
【0060】
更に、円筒部材29の外周となるオペレーションフロア13の上面、および、円筒部材29の外周面と上段プラグ係止部5の周壁との隙間には、環状プレート32の上面とほぼ同様のレベルの表面を備えた遮蔽用コンクリート層30が設けられている。
【0061】
環状プレート32とその外側の遮蔽用コンクリート層30の上側には、矩形の平面形状を有し、中央部における一方の短辺寄りとなる位置に円筒部材29の外径に対応する径の開口部34を備えたベースプレート31が、開口部34に円筒部材29の上端側を挿通させた配置で設置されている。この際、上下方向に重ねて配置される環状プレート32の上面と、ベースプレート31の下面における開口部34の周縁部との間は、介装したシール部材35により気密にシールされている。この状態で、ベースプレート31は、図示しない固定手段を介して環状プレート32に固定されている。更に、ベースプレート31は、図示しない別の固定手段を介して、遮蔽用コンクリート層30に固定されていてもよい。
【0062】
上部遮蔽円筒体24の外側には、
図2、
図3、
図6に示すように、主鉄骨36が設けられている。なお、
図6では、図示する便宜上、支持鉄骨25および連結部材26の記載は省略してある。
【0063】
主鉄骨36は、たとえば、ほぼ水平な面内で一方向に延びる4本の縦梁部材37と、縦梁部材37と交差する方向に延びる3本の横梁部材38とが組まれて形成された格子構造を備えている。この格子構造は、上部遮蔽円筒体24を収容可能な1つの格子目を有し、この格子目の内側に、上部遮蔽円筒体24が、支持部材39を介して取り付けられている。
【0064】
更に、主鉄骨36は、各縦梁部材37、および、3本のうちの2本の横梁部材38が、原子炉ウェル4を跨ぐように配置された状態で、ベースプレート31の上側に設置されている。これにより、上部遮蔽円筒体24は、下部遮蔽円筒体23の上側に載置されて支持されると共に、主鉄骨36を介してベースプレート31上に支持されている。
【0065】
主鉄骨36の各縦梁部材37のうち、上部遮蔽円筒体24の両側部近傍に配置されている2本の縦梁部材37の上側には、長手方向に沿って延びるレール40がそれぞれ取り付けられている。
【0066】
遮蔽扉21は、遮蔽円筒19の開口20の上方に近接配置される扉本体41と、扉本体41の両側に、各レール40の上方位置まで横方向に張り出す一対の支持部42とを備え、この支持部42の下面側に設けられた車輪43を介して、各レール40の上側に移動可能に載置されている。
【0067】
なお、遮蔽扉21は、車輪43が設置された個所同士の間の部分に自重による撓みが生じることを抑える必要がある点、移動するものであるため破損が生じ難い構造が望まれる点、遮蔽扉21の移動経路に確保すべきスペースの削減化を図る点などを考慮して、遮蔽扉21は炭素鋼製とすることが好ましい。なお、遮蔽扉21は、遮蔽円筒19の開口20の部分に望まれる遮蔽性能を備えていれば、任意の材質製のものとしてもよいことは勿論である。
【0068】
更に、遮蔽扉21は、各支持部42の外側に、各レール40と平行に延びるラック44が、歯を下に向けた状態で取り付けられた構成を備えている。
【0069】
主鉄骨36における各レール40の両外側となる位置には、各ラック44に噛み合うピニオン45を備えた駆動装置46が設けられている。
【0070】
なお、駆動装置46の配置と、各ラック44の長さ寸法は、
図6に実線で示すように、遮蔽扉21が、扉本体41が遮蔽円筒19の開口20の上方に配置された状態となる位置から、
図6に二点鎖線で示すように扉本体41を開口20の上方から退避させて開口20を開放した状態となる位置までの範囲で移動可能となるように適宜設定されている。
【0071】
これにより、駆動装置46を運転して遮蔽扉21を移動させることで、開口20が開放された状態と、開口20が遮蔽扉21によって閉じられた状態とを切り替えることができる。
【0072】
気密カバー22は、
図2、
図3、
図7に示すように、ベースプレート31と、側壁47と、天井壁48とを備えた構成とされている。
【0073】
側壁47は、原子炉ウェル4および主鉄骨36の外側を囲むように配置されていて、側壁47の下端側が、ベースプレート31の周縁部の上側に気密に取り付けられている。
【0074】
天井壁48は、側壁47に囲まれた部分と同様の平面形状を備え、且つ遮蔽円筒19の開口20の真上となる位置に開口20と同様か、開口20よりも大きな開口部49を備えた構成としてある。天井壁48の外周部は、側壁47の上端側に、シール部材50を介して気密に取り付けられている。
【0075】
なお、天井壁48は、図示しないが、たとえば、格子状に組まれた補強部材で下面側から補強されると共に、複数個所が、主鉄骨36の上側に立設した支柱部材で支持されている。また、天井壁48は、開口部49の周囲の上面を、機材などを載置するプラットホームとして使用してもよい。
【0076】
開口部49の内側には、上下方向に延びる円筒状のリテーナリング51がシール部材52を介して気密に取り付けられている。
【0077】
リテーナリング51は、下端部が遮蔽扉21の上面に近接する高さ位置に配置されている。リテーナリング51の下端側には、周方向の全周に亘り膨張式シール53が設けられている。
【0078】
膨張式シール53は、図示しないガス出入口から内部ガスを抜いて膨張させていない状態では、遮蔽扉21の上面に非接触となる。一方、空気出入口から圧縮空気のような加圧されたガスを注入すると、遮蔽扉21の上面に接する位置まで膨張するものとしてある。
【0079】
これにより、膨張式シール53を膨張させていない状態では、遮蔽扉21は、遮蔽円筒19の開口20に対する開閉動作を自在に行うことができる。また、遮蔽扉21を開口20を塞ぐように遮蔽円筒19の真上に配置した状態で、膨張式シール53を膨張させると、遮蔽扉21の上面とリテーナリング51の下端側との間は、膨張した膨張式シール53により気密にシールすることができる。
【0080】
したがって、気密カバー22は、上段プラグ係止部5にシール部材33を介して気密に取り付けられた円筒部材29の外周の環状プレート32と、ベースプレート31との間がシール部材35により気密にシールされ、側壁47と天井壁48の間がシール部材50により気密にシールされ、天井壁48とリテーナリング51との間がシール部材52により気密にシールされている。更に、遮蔽円筒19の開口20を遮蔽扉21により閉じた状態では、遮蔽扉21の上面とリテーナリング51の下端側との間を膨張式シール53により気密にシールすることができるため、気密カバー22の内側に気密性を得ることができる。
【0081】
また、以上の構成としてある遮蔽ポート16は、第2層遮蔽プラグ9の開口17の内側に配置して第3層遮蔽プラグ10の開口18に連通する遮蔽円筒19を備え、遮蔽円筒19の上端側の開口20は遮蔽扉21により閉じることができるため、この遮蔽扉21を閉じた状態とすることで、原子炉格納容器2(
図1参照)から原子炉ウェル4に到達する放射線についての遮蔽機能を備えたものとすることができる。
【0082】
更に、遮蔽円筒19と第3層遮蔽プラグ10とが接する部分は、第3層遮蔽プラグ10の上面に沿う水平方向の配置となるが、遮蔽円筒19と第2層遮蔽プラグ9とが接する部分は、第2層遮蔽プラグ9の開口17の内面に沿う上下方向の配置となる。このため、遮蔽円筒19が各遮蔽プラグ9,10と接する部分における放射線のストリーミングは、抑制することができる。
【0083】
以上の構成としてある遮蔽ポート16を設けるときには、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10に開口17,18を形成する工程が生じるが、この開口17,18を形成するときには、遮蔽ポート16の外側で、放射線の遮蔽性と気密性とを確保する必要がある。また、完成した遮蔽ポート16にて遮蔽扉21を開放する際には、遮蔽ポート16の外部で遮蔽性と気密性とを確保する必要がある。そのため、遮蔽ポート16には、
図2に示すように、遮蔽ポート16の外側の遮蔽用コンクリート層30の上側に、気密カバー22全体を覆う配置の遮蔽室54が付設されている。遮蔽室54は、側壁および天井壁に遮蔽機能と気密機能を備え、図示しないが、少なくとも一つの開閉扉を備えた構成とされている。
【0084】
次いで、原子炉ウェル4の上方に前記構成としてある遮蔽ポート16を設ける遮蔽ポート設置工法の実施形態について、
図8乃至
図18を用いて説明する。
【0085】
本実施形態の遮蔽ポート設置工法は、遮蔽用コンクリート層形成工程、第1層遮蔽プラグ撤去工程、スリット形成工程、孔位置マーキング工程、ロッド挿通孔形成工程、下部遮蔽円筒体設置工程、遮蔽プラグ支持工程、遮蔽用コンクリート層追加形成工程、ベースプレート設置工程、上部遮蔽円筒体設置工程、遮蔽扉設置工程、および、気密カバー形成工程を備え、更に、遮蔽室設置工程と、開口形成工程とを備えている。
【0086】
また、本実施形態の遮蔽ポート設置工法を実施するときには、下部遮蔽円筒体23は、
図2、
図3、
図4に示したように、支持鉄骨25と、連結部材26と、円筒部材29と、環状プレート32とを取り付けて、下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを予め形成しておく。また、上部遮蔽円筒体24は、
図2、
図3、
図6に示したように、主鉄骨36と、レール40と、ピニオン45を備えた駆動装置46とを取り付けて、上部遮蔽円筒体設置用ブロックYを予め形成しておく。更に、ベースプレート31には、側壁47の下端側を予め気密に取り付けてブロック化しておく。天井壁48には、予め、開口部49にシール部材52を介してリテーナリング51を取り付け、リテーナリング51の下端側には、膨張式シール53を取り付けてブロック化しておく。なお、下部遮蔽円筒体設置用ブロックX、上部遮蔽円筒体設置用ブロックY、ベースプレート31のブロック化されたもの、および、天井壁48のブロック化されたものは、いずれも、吊上げ時に使用される図示しない天秤などの着脱式吊具の重量を足した重量が、天井クレーン15の吊り上げ荷重の制限内となるように設計されている。
【0087】
遮蔽用コンクリート層形成工程は、
図8に示すように、オペレーションフロア13にて、原子炉ウェル4の上段プラグ係止部5の上端側の周縁を隙間を隔てて取り囲む位置に、周方向の全周に亘る環状の型枠55を設置する。次に、型枠55よりも外側のオペレーションフロア13の上面には、高流動タイプのグラウトを打設し、このグラウトを養生、硬化させて、型枠55の外側に遮蔽用コンクリート層30を形成する。
【0088】
この遮蔽用コンクリート層30は、使用したグラウトの高流動性に起因して、表面が水平で且つ平坦な状態で設けることができる。
【0089】
したがって、遮蔽用コンクリート層形成工程によれば、たとえ、既存のオペレーションフロア13に汚れや凹凸が生じていたとしても、その汚れや凹凸の影響を受けることなく、上段プラグ係止部5の外周側に、表面が水平で且つ平坦な遮蔽用コンクリート層30を設けることができる。
【0090】
なお、原子炉ウェル4と、機器仮置きプール11との間の壁や、燃料貯蔵プール12との間の壁に補強が望まれる場合は、遮蔽用コンクリート層形成工程と同じかまたは前後するタイミングで、補強が必要とされる壁の側面にコンクリートの打設を行って、該壁の補強を行うようにしてもよい。
【0091】
第1層遮蔽プラグ撤去工程は、
図9に示すように、仮設遮蔽鋼板14を撤去した後、第1層遮蔽プラグ8を、上段プラグ係止部5から抜き出して撤去する。この仮設遮蔽鋼板14と第1層遮蔽プラグ8の撤去作業は、天井クレーン15(
図1(a)参照)を遠隔操作して行うようにすればよい。
【0092】
この第1層遮蔽プラグ撤去工程を実施すると、原子炉ウェル4における上段プラグ係止部5を空けることができると共に、第2層遮蔽プラグ9が露出される。
【0093】
なお、上段プラグ係止部5に、たとえば、スキマーサージドレンタンク開口部のような図示しない開口部が存在している場合は、該開口部をシール材により閉塞する作業を行って、上段プラグ係止部5の周壁や段差面について気密性を得ることができるようにする。
【0094】
スリット形成工程は、
図10に示すように、前記第1層遮蔽プラグ撤去工程で露出させた第2層遮蔽プラグ9に、下部遮蔽円筒体23の下部寄りの部分の円筒形状に対応する円状のスリット56を形成する。このスリット56の形成は、第2層遮蔽プラグ9を上面側からコンクリートを削ることで実施すればよい。
【0095】
孔位置マーキング工程は、
図11に示すように、先ず、天井クレーン15(
図1(a)参照)により、下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを搬送して、上段プラグ係止部5の内側に仮置きする。この際、下部遮蔽円筒体23は、下部寄りの部分を、前記スリット形成工程で第2層遮蔽プラグ9に形成したスリット56に挿入する。また、各支持鉄骨25の外周端側、および、円筒部材29は、上段プラグ係止部5に配置する。
【0096】
この状態で、各支持鉄骨25と各連結部材26(
図4参照)の実際の配置に合わせて、第2層遮蔽プラグ9の表面に対し、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10に
図11に一点鎖線で示すように設けるべきロッド挿通孔28の位置についてのマーキングを行う。
【0097】
ロッド挿通孔形成工程は、
図12に示すように、天井クレーン15(
図1(a)参照)を用いて下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを上段プラグ係止部5より一旦取り外した状態で、前記孔位置マーキング工程でマーキングした位置に、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10を貫通するロッド挿通孔28を形成する。この際、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10を貫通するロッド挿通孔28が形成された時点で、ロッド挿通孔28の内側ではコンクリート層による放射線の遮蔽が行われなくなる。そのため、ロッド挿通孔28を形成するドリルなどの図示しない孔形成用の装置は、第2層遮蔽プラグ9の上側に配置される遮蔽ボックス57で覆われた空間内でロッド挿通孔28を形成することができるようにしてある。また、形成されたロッド挿通孔28には、速やかに遮蔽機能と気密機能を有する孔プラグ58を挿入して、後の遮蔽プラグ支持工程で使用するまでの間、ロッド挿通孔28の部分でも放射線の遮蔽を図るようにしてある。
【0098】
下部遮蔽円筒体設置工程は、
図13に示すように、前記ロッド挿通孔形成工程でロッド挿通孔28が形成された第2層遮蔽プラグ9の上方にて、下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを、前記仮置きの場合と同様の配置で、上段プラグ係止部5の内側に設置する。この際、円筒部材29と上段プラグ係止部5との間は、シール部材33を介装して気密にシールする。
【0099】
次いで、遮蔽プラグ支持工程では、
図13に示すように、第2層遮蔽プラグ9と第3層遮蔽プラグ10を貫通するロッド挿通孔28に挿通配置したプラグ支持ロッド27を介して、第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10を、各支持鉄骨25または各連結部材26に連結する。これにより、後の開口形成工程で第2層遮蔽プラグ9および第3層遮蔽プラグ10に開口17および開口18を形成しても、残る部分が炉内側に脱落する虞を防止できる。
【0100】
遮蔽用コンクリート層追加形成工程は、
図13の状態から型枠55を撤去した後、
図14に示すように、前記遮蔽用コンクリート層形成工程で既設の遮蔽用コンクリート層30と、円筒部材29との間の領域に、高流動タイプのグラウトを追加して打設する。この際、円筒部材29と上段プラグ係止部5の周壁との隙間にもグラウトを流入させるようにする。このグラウトを養生、硬化させて、円筒部材29の外側に、既設の遮蔽用コンクリート層30とほぼ面一で、環状プレート32の上面とほぼ対応した表面を備えた遮蔽用コンクリート層30を形成する。
【0101】
ベースプレート設置工程は、
図15に示すように、前記遮蔽用コンクリート層形成工程および遮蔽用コンクリート層追加形成工程で形成された遮蔽用コンクリート層30の上側に、天井クレーン15(
図1(a)参照)を用いて、側壁47が取り付けられてブロック化されたベースプレート31を搬入して設置する。この際、環状プレート32とベースプレート31との間は、シール部材35を介装して気密にシールする。
【0102】
上部遮蔽円筒体設置工程は、
図16に示すように、天井クレーン15(
図1(a)参照)により、上部遮蔽円筒体設置用ブロックYを搬送して、上部遮蔽円筒体24の下端側を、下部遮蔽円筒体23の上端側に取り付けて遮蔽円筒19を形成する。また、主鉄骨36は、前記ベースプレート設置工程で設置されたベースプレート31の上側に設置する。
【0103】
遮蔽扉設置工程は、
図17に示すように、前記上部遮蔽円筒体設置工程で設置された主鉄骨36の上側に予め取り付けられているレール40の上側に、遮蔽扉21を、車輪43を介して移動可能に取り付ける。この際、遮蔽扉21の搬送および設置は、天井クレーン15(
図1(a)参照)を用いて行うようにすればよい。
【0104】
次いで、気密カバー形成工程では、
図17に示すように、天井クレーン15(
図1(a)参照)により、リテーナリング51が予め取り付けられてブロック化された天井壁48を搬送して、前記遮蔽扉設置工程で設置した遮蔽扉21の上側に配置し、この天井壁48を側壁47の上端側にシール部材50を介して取り付けて、気密カバー22を形成する。
【0105】
その後、遮蔽室設置工程では、
図18に示すように、遮蔽用コンクリート層30の上側に、前記気密カバー形成工程で形成された気密カバー22全体を覆うように、遮蔽室54を設置する。この際、遮蔽室54の下端側と遮蔽用コンクリート層30の表面との間は、図示しないシール手段で気密にシールする。
【0106】
しかる後、開口形成工程では、前記遮蔽室設置工程で設置された遮蔽室54の開閉扉を閉止した状態で、遮蔽扉21を遮蔽円筒19の開口20を開放する配置とする。この状態で、遮蔽円筒19の内側から、第2層遮蔽プラグ9におけるスリット56よりも内側の部分と、第3層遮蔽プラグ10における遮蔽円筒19の下方に位置する部分よりも内側の部分、すなわち、
図18に一点鎖線で示す位置よりも内側の部分とを除去することにより、各遮蔽プラグ9,10に、
図2に示した如き開口17,18を形成する。
【0107】
以上により、
図2乃至
図7に示したように、開閉可能な遮蔽扉21を備えた遮蔽ポート16が、原子炉ウェル4に設けられる。
【0108】
本実施形態の遮蔽ポート設置工法では、放射線の遮蔽を担う遮蔽部材である遮蔽円筒19を下部遮蔽円筒体23と上部遮蔽円筒体24とによる2分割構造としている。
【0109】
このうち下部遮蔽円筒体23は、支持鉄骨25と、連結部材26と、円筒部材29と、環状プレート32とを取り付けた構成の下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを予め形成する。そして、
図11に示した孔位置マーキング工程、および、
図13に示した下部遮蔽円筒体設置工程のように、下部遮蔽円筒体23を原子炉ウェル4の上方に配置するときには、いずれの場合も、上段プラグ係止部5に下部遮蔽円筒体設置用ブロックXを配置する処理を行うようにしてある。
【0110】
したがって、原子炉ウェル4の上方に下部遮蔽円筒体23が配置された状態のときに、万一、地震が発生して、下部遮蔽円筒体23に水平方向の力が作用しても、その力は、支持鉄骨25と連結部材26、および、円筒部材29を介して、原子炉建屋1における上段プラグ係止部5の周壁に伝えて支持することができる。
【0111】
また、上部遮蔽円筒体24は、下端側に、下部遮蔽円筒体23の上端側の凹凸形状に嵌合する凹凸形状を備えた構成としてある。更に、上部遮蔽円筒体24は、主鉄骨36と、レール40と、ピニオン45を備えた駆動装置46とを取り付けた構成の上部遮蔽円筒体設置用ブロックYを予め形成するようにしてある。そして、
図16に示した上部遮蔽円筒体設置工程のように、上部遮蔽円筒体24を原子炉ウェル4の上方に配置するときには、上部遮蔽円筒体設置用ブロックYを搬送して、上部遮蔽円筒体24の下端側を、下部遮蔽円筒体23の上端側に取り付けると共に、主鉄骨36をベースプレート31の上側に設置するようにしてある。
【0112】
したがって、原子炉ウェル4の上方に上部遮蔽円筒体24が配置された状態のときに、万一、地震が発生して、上部遮蔽円筒体24に水平方向の力が作用すると、その力は、主として、上部遮蔽円筒体24から、下部遮蔽円筒体23、支持鉄骨25と連結部材26、および、円筒部材29を介して、原子炉建屋1における上段プラグ係止部5の周壁に伝えて支持することができる。
【0113】
また、上部遮蔽円筒体24に作用する水平方向の力は、主鉄骨36を介してベースプレート31に伝えられ、ベースプレート31から環状プレート32および円筒部材29を介して、原子炉建屋1における上段プラグ係止部5の周壁に伝えることによっても支持することができる。
【0114】
更に、下部遮蔽円筒体23から上段プラグ係止部5の周壁への水平方向の力の伝達は、主として支持鉄骨25の長手方向に沿う方向の圧縮荷重と、円筒部材29の周壁の内外方向に沿う方向の圧縮荷重とによって行われる。したがって、部材の曲げ荷重や剪断荷重による力の伝達を少なくすることができるため、下部遮蔽円筒体23や上部遮蔽円筒体24の重量が大となっていて、これらに水平方向の大きな力が作用するとしても、その力を効率よく上段プラグ係止部5の周壁へ伝えて支持することができる。
【0115】
また、本実施形態の遮蔽ポート設置工法で原子炉ウェル4の上方に設けられた遮蔽ポート16においても、地震発生時に下部遮蔽円筒体23と上部遮蔽円筒体24とにより構成される遮蔽円筒19に作用する水平方向の力は、前記と同様に、支持鉄骨25と連結部材26、および、円筒部材29を介して、原子炉建屋1における上段プラグ係止部5の周壁に伝えて支持することができる。
【0116】
更に、本実施形態の遮蔽ポート設置工法は、下部遮蔽円筒体設置用ブロックX、ベースプレート31のブロック化されたもの、上部遮蔽円筒体設置用ブロックY、遮蔽扉21、天井壁48のブロック化されたものを、それぞれ適切な配置で嵌め合いながら順次重ねる作業によって遮蔽ポート16の主要な構造を構築することができる。
【0117】
そのため、本実施形態の遮蔽ポート設置工法は、遮蔽ポート16の構成部材を現場で1つずつ位置決めする作業が不要なため、現場での作業の単純化を図ることができる。この現場作業の単純化は、マニプレータ等の操作腕を用いた遠隔操作での作業の実施に有利になる。
【0118】
更に、遮蔽ポート16を構築する際に現場での溶接作業が必要とされる場合は、溶接対象の部材の配置を決めた後に溶接作業を行うので現場での作業時間が嵩むが、本実施形態の遮蔽ポート設置工法のようにブロック化された部材同士を嵌め合いながら重ねる作業によれば、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0119】
したがって、本実施形態の遮蔽ポート設置工法は、遮蔽ポート16の設置の際の作業員の被ばくの防止や、被ばく量の低減化を図るのに有利なものとすることができる。
【0120】
なお、本発明は、前記実施形態にのみ限定されるものではなく、各構成部材の長さや厚さは図示するための便宜上のものであり、実際の各構成部材の長さや厚さを反映したものではない。
【0121】
建屋揚重機は、天井クレーン15を例示したが、原子炉建屋1に備えて原子炉ウェル4の真上を含むオペレーションフロア13の上方の領域で機材の搬送を行うことができれば、橋型クレーンや、その他の天井クレーン15以外の形式の揚重機であってもよい。また、建屋揚重機は、原子炉建屋1の内外に機材を搬出入するために用いられるものであってもよい。
【0122】
本発明の適用対象となる原子炉は、原子炉ウェル4に複数段に備えたプラグ係止部に複数の遮蔽プラグが取り付けられた構成を備えていれば、任意の形式の沸騰水型原子炉であってもよく、沸騰水型原子炉以外の原子炉であってもよい。
【0123】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。