【文献】
荒田吉明ら,窒化ケイ素焼結体の接合に関する基礎的研究(第1報),溶接学会全国大会講演概要,1986年 4月,第38集,P.54−55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合層の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス/アルミニウム接合体。
前記セラミックス部材の表面から前記アルミニウム部材側に10μm離間した位置において、銅が1.2mass%以下かつ鉄が0.6mass%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス/アルミニウム接合体。
前記接合層の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムであることを特徴とする請求項4に記載の絶縁回路基板。
前記セラミックス基板の表面から前記アルミニウム板側に10μm離間した位置において、銅が1.2mass%以下かつ鉄が0.6mass%以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の絶縁回路基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した絶縁回路基板(パワーモジュール用基板)においては、セラミックス基板とアルミニウム板との接合にAl−Si系ろう材などを用いた例が示されているが、窒化ケイ素(Si
3N
4)からなるセラミックス基板(絶縁層)と、アルミニウム板との接合においては、セラミックス基板の焼結助剤などの影響によって、接合強度を十分に保つことができなかった。
特に、パワー半導体素子の動作時の発熱による高温状態と、非動作時の低温状態との間で繰り返し冷熱サイクルが加わる絶縁回路基板(パワーモジュール用基板)にあっては、セラミックス基板(絶縁層)と金属層との間で接合信頼性が低下しやすいという課題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、窒化ケイ素からなるセラミックス部材に対してアルミニウム部材を高い接合信頼性を保って接合させたセラミックス/アルミニウム接合体、絶縁回路基板、およびこれを備えたパワーモジュール、LEDモジュール、熱電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の接合体は、セラミックス部材と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム部材とが接合されてなるセラミックス/アルミニウム接合体であって、前記セラミックス部材は、マグネシウムを含む窒化ケイ素で構成されており、前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材との接合界面には、アルミニウム、ケイ素、酸素、および窒素の化合物にマグネシウムが含まれた接合層が形成されて
おり、前記接合層にはマグネシウムが3at%〜8at%含まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明の接合体によれば、セラミックス部材とアルミニウム部材との接合界面に形成されたマグネシウムを含む接合層が、マグネシウムがほとんど存在しない場合と比較して、セラミックス部材の厚み方向の内部により深く形成される。即ち、マグネシウムの存在によって、セラミックス部材の内部のより深い領域まで、サイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成される。これによって、セラミックス部材とアルミニウム部材との接合強度が高められ、接合体の接合信頼性を向上させることを可能にする。
【0010】
前記接合層の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムであることを特徴とする。
接合層の組成割合を上述した範囲にすることで、セラミックス部材の内部のより深い領域まで、接合層を構成するサイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成され、セラミックス部材とアルミニウム部材との接合強度を高めることができる。
接合層のマグネシウム濃度が3at%未満の場合、接合層の生成が不均一になり、接合性が低下するおそれがある。また、マグネシウム濃度が8at%を超えると、マグネシウムが過剰に存在することにより、接合層が脆くなり、接合信頼性が低下するおそれがある。
【0011】
また、本発明の接合体は、前記セラミックス部材の表面から前記アルミニウム部材側に10μm離間した位置において、銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であることを特徴とする。
この場合、接合界面近傍における、銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であるので、アルミニウム部材のうちセラミックス部材との接合界面の近傍が、過剰に硬くなることを抑制でき、セラミックス部材に亀裂等が生じることを抑制できる。
【0012】
本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板とが接合されてなる絶縁回路基板であって、前記セラミックス基板は、マグネシウムを含む窒化ケイ素で構成されており、前記セラミックス基板と前記アルミニウム板との接合界面には、アルミニウム、ケイ素、酸素、および窒素の化合物にマグネシウムが含まれた接合層が形成されて
おり、前記接合層にはマグネシウムが3at%〜8at%含まれていることを特徴とする。
【0013】
本発明の絶縁回路基板によれば、セラミックス基板とアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板との接合界面に生じるマグネシウムを含む接合層が、マグネシウムがほとんど存在しない場合と比較して、セラミックス基板の厚み方向の内部により深く形成される。即ち、マグネシウムの存在によって、セラミックス基板の内部のより深い領域まで、サイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成される。これによって、セラミックス基板とアルミニウム板との接合強度が高められ、絶縁回路基板の接合信頼性を向上させることを可能にする。
【0014】
前記接合層の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムであることを特徴とする。
接合層の組成割合を上述した範囲にすることで、セラミックス基板の内部のより深い領域まで、接合層を構成するサイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成され、セラミックス基板とアルミニウム板との接合強度を高めることができる。
接合層のマグネシウム濃度が3at%未満の場合、接合層の生成が不均一になり、接合性が低下するおそれがある。また、マグネシウム濃度が8at%を超えると、マグネシウムが過剰に存在することにより、接合層が脆くなり、接合信頼性が低下するおそれがある。
【0015】
また、本発明の絶縁回路基板は、前記セラミックス基板の表面から前記アルミニウム板側に10μm離間した位置において、銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であることを特徴とする。
この場合、接合界面近傍における、銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であるので、アルミニウム板のうちセラミックス基板との接合界面の近傍が、過剰に硬くなることを抑制でき、セラミックス基板に亀裂等が生じることを抑制できる。
【0016】
本発明のパワーモジュールは、前項に記載の絶縁回路基板と、この絶縁回路基板に搭載されたパワー半導体素子と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明のLEDモジュールは、前項に記載の絶縁回路基板と、この絶縁回路基板に搭載されたと、を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明の熱電モジュールは、前項に記載の絶縁回路基板と、この絶縁回路基板に搭載された熱電素子と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明のパワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールによれば、セラミックス基板とアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板との接合界面に生じるマグネシウムを含む接合層が、マグネシウムがほとんど存在しない場合と比較して、セラミックス基板の厚み方向の内部により深く形成される。即ち、マグネシウムの存在によって、セラミックス基板の内部のより深い領域まで、サイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成される。これによって、セラミックス基板とアルミニウム板との接合強度が高められ、パワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールの接合信頼性を向上させることを可能にする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、窒化ケイ素からなるセラミックス部材に対してアルミニウム部材を高い接合信頼性を保って接合させたセラミックス/アルミニウム接合体、絶縁回路基板、およびこれを備えたパワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態のセラミックス/アルミニウム接合体、絶縁回路基板を示す断面図である。
本実施形態であるセラミックス/アルミニウム接合体は、セラミックス部材としてセラミックス基板11、アルミニウム部材としてアルミニウム板が接合されてなる回路層12、アルミニウム部材としてアルミニウム板が接合されてなる金属層13を備えた絶縁回路基板10とされている。
また、本実施形態のパワーモジュール30は、絶縁回路基板10の回路層12に、はんだ層23を介してパワー半導体素子等の半導体素子24を実装してなる。
また、本実施形態では、金属層13のセラミックス基板11とは反対側の面に冷却器14を形成し、冷却器付き絶縁回路基板20としている。
【0024】
セラミックス基板(セラミックス部材)11は、絶縁性および放熱性に優れたSi
3N
4(窒化ケイ素)の少なくとも表面にマグネシウム(Mg)を含むセラミックス材料から構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、例えば、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
【0025】
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面(
図1及び
図2において上面)にアルミニウム又はアルミニウム合金板(アルミニウム部材)が接合されることで形成されている。アルミニウム又はアルミニウム合金板(アルミニウム部材)としては、例えば、純度が99質量%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上のアルミニウムや純度が99.99質量%以上のアルミニウム等の圧延板から形成されている。本実施形態では、純度が99質量%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)を用いている。なお、回路層12の厚さは、例えば0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
【0026】
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面(
図1及び
図2において下面)にアルミニウム又はアルミニウム合金板(アルミニウム部材)が接合されることで形成されている。アルミニウム又はアルミニウム合金板(アルミニウム部材)としては、例えば、純度が99質量%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上のアルミニウムや純度が99.99質量%以上のアルミニウム等の圧延板から形成されている。本実施形態では、純度が99質量%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)を用いている。なお、金属層13の厚さは、例えば0.1mm以上3.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、2.1mmに設定されている。
【0027】
図2は、セラミックス基板11と、回路層12および金属層13との接合界面を含む領域を示す要部拡大断面図である。
絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10を構成するセラミックス基板(セラミックス部材)11と、回路層(アルミニウム部材、アルミニウム板)12および金属層(アルミニウム部材、アルミニウム板)13とは、それぞれAl−Si系ろう材を用いて接合されている。そして、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合界面には、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)、および窒素(N)の化合物にマグネシウム(Mg)が含まれた接合層21がそれぞれ形成されている。
【0028】
接合層21は、Al−Si系ろう材によってセラミックス基板11と、回路層12および金属層13とをそれぞれ接合した際に、セラミックス基板11の一方の面と回路層12、およびセラミックス基板11の他方の面と金属層13との接合界面にそれぞれ生じる層である。こうした接合層21は、SiAlON化合物に所定の濃度範囲のMgが含まれたものから構成されている。
【0029】
なお、ここでいうSiAlON化合物とは、ケイ素原子の一部にアルミニウム原子が置換し、窒素原子の一部に酸素原子が置換してサイアロン構造を成すものであり、接合層21は、このサイアロン構造の一部にマグネシウムが含まれている。マグネシウムが含まれる形態は、サイアロン構造を成す元素の一部がマグネシウムに置換されたものや、サイアロン構造にさらにマグネシウムが付加されたものなどである。接合層21に含まれるマグネシウムは、マグネシウムが含まれたSi
3N
4(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板(セラミックス部材)11に由来するものである。
【0030】
このような接合層21の元素の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムとされている。接合層21の組成割合の一例として、ケイ素:14.1at%、酸素:29.1at%、窒素:32.9at%、マグネシウム:6.3at%、アルミニウム:17.7at%である。
【0031】
接合層21は、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合界面にマグネシウムがほとんど存在しない場合と比較して、セラミックス基板11の厚み方向(内部)に、より深く形成される。即ち、マグネシウムの存在によって、セラミックス基板11の内部のより深い領域まで、サイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成される。これによって、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合強度が高められ、接合信頼性が向上する。
【0032】
また、セラミックス基板(セラミックス部材)11と、回路層(アルミニウム部材)12および金属層(アルミニウム部材)13との接合界面においては、セラミックス基板(セラミックス部材)11の表面から回路層(アルミニウム部材)12および金属層(アルミニウム部材)13側に10μm離間した位置の銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であることが好ましい。
銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であることから、回路層12および金属層13のうちセラミックス基板11との接合界面の近傍が、過剰に硬くなることを抑制できる。これにより、セラミックス基板11に亀裂や割れが生じることを抑制することができる。
【0033】
冷却器14は、絶縁回路基板10の熱を効率よく放散させるためのものであり、本実施形態の冷却器付き絶縁回路基板20では、
図1に示すように、冷却媒体が流通する複数の流路15が設けられている。この冷却器14は、例えば、アルミニウム合金で構成されており、本実施形態では、A6063で構成されている。冷却器14と金属層13とは、例えば、Al−Si系ろう材によって直接接合されている。
【0034】
以上のような構成の絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10、およびパワーモジュール30によれば、少なくとも表面にマグネシウムを含むSi
3N
4(窒化ケイ素)をセラミックス基板(セラミックス部材)11として用い、セラミックス基板11の一方の面と回路層(アルミニウム部材、アルミニウム板)12との接合界面、およびセラミックス基板11の他方の面と金属層(アルミニウム部材、アルミニウム板)13との接合界面に、それぞれSiAlON化合物に所定の濃度範囲のMgが含まれてなる接合層21を形成することによって、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合信頼性が高められる。
【0035】
これにより、例えば、半導体素子24の発熱による高温状態と、非動作時の低温状態との間で繰り返し冷熱サイクルが加わるような環境であっても、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合界面で亀裂や剥離が生じることを確実に防止できる。
【0036】
なお、上述した第一実施形態の絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10では、セラミックス基板(セラミックス部材)11の一方の面と他方の面に、回路層(アルミニウム部材、アルミニウム板)12、金属層(アルミニウム部材、アルミニウム板)13をそれぞれ形成しているが、本発明の絶縁回路基板は、Mgを含むSi
3N
4からなるセラミックス基板(セラミックス部材)の少なくともいずれか一方の面に、Mgを含むSiAlON構造をもつ接合層を介してアルミニウム板(アルミニウム部材)が接合された構成であればよい。
【0037】
具体的には、上述した第一実施形態の回路層をCu板から構成し、セラミックス基板の他方の面側のみ、Mgを含むSiAlON構造をもつ接合層を介してアルミニウム板(アルミニウム部材)を接合した構成にすることもできる。
また、これとは逆に、セラミックス基板の一方の面側のみ、Mgを含むSiAlON構造をもつ接合層を介してアルミニウム板(アルミニウム部材)を接合し、セラミックス基板の他方の面側は、Cuなどからなる金属層とした構成にすることもできる。
【0038】
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態のセラミックス/アルミニウム接合体、絶縁回路基板を示す断面図である。
なお、第一実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態であるセラミックス/アルミニウム接合体は、Si
3N
4(窒化ケイ素)にマグネシウム(Mg)を含む材料から構成されるセラミックス基板(セラミックス部材)11、セラミックス基板11の一方の面(
図3において上面)に設けられた回路層(アルミニウム板、アルミニウム部材)12、およびセラミックス基板11の他方の面(
図3において下面)に接合された金属層(アルミニウム板、アルミニウム部材)13を備えたパワーモジュール用基板10とされている。
また、本実施形態のパワーモジュール30は、絶縁回路基板10の回路層12に、はんだ層23を介してパワー半導体素子等の半導体素子24を実装してなる。
また、本実施形態では、金属層13のセラミックス基板11とは反対側の面に重ねて冷却器14を形成し、冷却器付き絶縁回路基板20としている。
【0039】
図3は、セラミックス基板と、回路層および金属層との接合界面を含む領域を示す要部拡大断面図である。
本実施形態においては、セラミックス基板(セラミックス部材)11と、アルミニウム板(アルミニウム部材)は、Al−Si−Mg系ろう材を用いて接合されている。例えば、Al−Si−Mg系ろう材箔をセラミックス基板(セラミックス部材)11と、回路層12となるアルミニウム板(アルミニウム部材)および金属層13となるアルミニウム板(アルミニウム部材)との間にそれぞれ配して加熱することで、それぞれの界面を接合する。
【0040】
セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合界面には、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)、および窒素(N)の化合物にマグネシウム(Mg)が含まれた接合層21がそれぞれ形成されている。
【0041】
接合層21は、Al−Si−Mg系ろう材によってセラミックス基板11と、回路層12、および金属層13とをそれぞれ接合した際に、セラミックス基板11の一方の面と回路層12、およびセラミックス基板11の他方の面と金属層13との接合界面にそれぞれ生じる層である。こうした接合層21は、SiAlON化合物に所定の濃度範囲のMgが含まれたものである。
【0042】
そして、本実施形態においては、接合層21と回路層12の間及び接合層21と金属層13の間に、窒化アルミニウム層22が形成されている。窒化アルミニウム層22はセラミックス基板11と、回路層12および金属層13を構成するアルミニウム板との接合の際に、セラミックス基板11を構成するSi
3N
4が分解して生成したNとAlが反応して形成されたものである。
【0043】
ここで、接合層21と回路層12及び金属層13(アルミニウム部材)の間に形成された窒化アルミニウム層22は、
図4に示すように、接合層21側から順に、窒素濃度が高く、かつ、厚さ方向に窒素の濃度傾斜を有する第1窒化アルミニウム層22aと、窒素濃度が一定とされた第2窒化アルミニウム層22bと、を備えている。第1窒化アルミニウム層22aにおけるN濃度は50at%以上80at%以下の範囲内とされており、第2窒化アルミニウム層22bにおけるN濃度は30at%以上50at%未満の範囲内とされている。
また、
図4に示すように、第2窒化アルミニウム層22bと回路層12及び金属層13(アルミニウム部材)との間に、酸素(O)を含有するAlNからなる第3窒化アルミニウム層22cが存在する場合もある。なお、この第3窒化アルミニウム層22cには、Mgを含むこともある。
【0044】
上述の窒化アルミニウム層22の厚さは4nm以上100nm以下の範囲内とするとよい。窒化アルミニウム層22の厚さを4nm以上とすることにより、接合界面近傍のSi
3N
4が確実に分解されることになり、セラミックス基板11と回路層12及び金属層13(アルミニウム部材)との接合信頼性をより向上させることができる。一方、窒化アルミニウム層22の厚さを100nm以下とすることにより、熱膨張係数の差によって窒化アルミニウム層22に割れが生じることを抑制することができる。
【0045】
なお、セラミックス基板11と回路層12及び金属層13(アルミニウム部材)との接合信頼性をさらに向上させるためには、窒化アルミニウム層22の厚さの下限を5nm以上とすることが好ましく、15nm以上とすることがさらに好ましい。一方、窒化アルミニウム層22における割れの発生をさらに抑制するためには、窒化アルミニウム層22の厚さの上限を80nm以下とすることが好ましく、60nm以下とすることがさらに好ましい。
【0046】
以上のような構成の絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10においても、マグネシウムを含むSi
3N
4(窒化ケイ素)をセラミックス基板11として用い、セラミックス基板11の一方の面と回路層12、およびセラミックス基板11の他方の面と金属層13とのそれぞれの接合界面に、SiAlON化合物に所定の濃度範囲のMgが含まれてなる接合層21を形成することによって、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合信頼性が高められる。
【0047】
これにより、例えば、パワーモジュール30を構成する半導体素子24の発熱による高温状態と、非動作時の低温状態との間で繰り返し冷熱サイクルが加わるような環境であっても、セラミックス基板11と回路層12および金属層13との接合界面で亀裂や剥離が生じることを確実に防止できる。
また、本実施形態においては、接合層21と回路層12の間及び接合層21と金属層13の間に、窒化アルミニウム層22が形成されているので、セラミックス基板11と回路層12及びセラミックス基板11と金属層13との接合信頼性をより向上させることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態以外にも、例えば、回路層や金属層をアルミニウム板と銅板とが接合されたものから構成することもできる。この場合、例えば、無酸素銅の圧延板とアルミニウム板とを固相拡散接合することで、回路層や金属層を形成することができる。
【0049】
(第一実施形態に示した絶縁回路基板の製造方法)
次に、第一実施形態に示した絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)の製造方法の一例について説明する。
図1に示す絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)を製造する際には、まず、マグネシウムが含まれたSi
3N
4(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板(セラミックス部材)11を用意する。
【0050】
次に、このマグネシウムを含有するSi
3N
4(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板11の一方の面側(回路層を接合させる面側)および他方の面側(金属層を接合させる面側)に、それぞれ、例えば、酸化マグネシウム(MgO)等のマグネシウム化合物を顕在化させるマグネシウム顕在化処理を行う。具体的には、例えば、まず、セラミックス基板11の一方の面側および他方の面側をホーニング処理により清浄化する。
ホーニング処理としては、研磨具を用いたドライホーニング、あるいは、研磨粒子を含む研磨液を用いたウエットホーニングなどが挙げられる。こうしたホーニング処理によって、セラミックス基板11の表面に存在する不純物を取り除き、清浄化する。
【0051】
次に、ホーニング処理を行ったセラミックス基板11に対して、アルカリ液によるエッチング処理を行う。このエッチング処理では、セラミックス基板11の一方の面側や他方の面側に存在するアルミナ(Al
2O
3)や酸化イットリウム(Y
2O
3)などの不純物を溶解除去し、アルカリ液に対して耐エッチング性のある酸化マグネシウム(MgO)等のマグネシウム化合物を選択的に残留させる。
【0052】
こうしたマグネシウム顕在化処理を行うことによって、セラミックス基板11の一方の面側や他方の面側のマグネシウム化合物が顕在化される。例えば、セラミックス基板11の表面のマグネシウム化合物の濃度が高められる。
【0053】
なお、アルカリ液によるエッチング処理には、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水、有機アミン類やその水溶液等を用いることができる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、pHが12〜14の水溶液を用いることができる。エッチング処理時間は5分〜30分の範囲内、望ましくは10分〜20分の範囲内とすることができる。また、エッチング処理は、70℃〜90℃の範囲内で行うことができる。
これらの範囲内で、アルカリ液によるエッチング処理を行うことで、セラミックス基板11の一方の面側や他方の面側の表面のマグネシウム化合物を顕在化させることができるとともに、アルカリ液によるセラミックス基板11の脱粒や表面粗さの増加などが防止でき、接合性や接合信頼性の低下を防ぐことができる。
【0054】
次に、このマグネシウム化合物を顕在化させたセラミックス基板11の一方の面側、および他方の面側に、Siを1mass%以上12mass%以下の範囲内で含有するアルミニウム合金からなるろう材箔又はろう材ペーストを配置する。ろう材箔を用いる場合は、厚さが5μm以上30μm以下の範囲内の箔材を用いるとよい。ろう材ペーストを用いる場合は、金属成分の換算厚さが5μm以上30μm以下の範囲内となるよう塗布するとよい。そして、ろう材箔又はろう材ペースト上にアルミニウム板(アルミニウム部材)を重ねる。そして上述した積層体を積層方向に加圧した状態で加熱炉内に装入して加熱する。
【0055】
すると、ろう材とアルミニウム板の一部とが溶融し、アルミニウム板とセラミックス基板との界面にそれぞれ溶融金属領域が形成される。この加熱工程の条件は、雰囲気は真空雰囲気(10
−4Pa以上10
−3Pa以下)または酸素分圧が500volppm以下の窒素雰囲気、接合温度は580℃以上650℃以下の範囲内、加熱時間は1分以上180分以下の範囲内とされている。この加熱工程によって、セラミックス基板11の深部までSiAlONにMgが含まれた接合層21が形成される。
【0056】
こうして得られた接合層21の組成割合は、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムとされている。接合層21の組成割合の一例として、ケイ素:11.7at%、酸素:25.4at%、窒素:36.5at%、マグネシウム:3.9at%、アルミニウム:22.5at%である。
また、セラミックス基板(セラミックス部材)11と、と回路層(アルミニウム部材)12および金属層(アルミニウム部材)13との接合界面において、セラミックス基板(セラミックス部材)11の表面から回路層12側および金属層13側に10μm離間した位置の銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下であることが好ましい。
【0057】
こうして得られた本発明の絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10は、マグネシウムが含まれないセラミックス基板を用いた場合と比較して、セラミックス基板11の内部のより深い領域まで、サイアロン構造にマグネシウムが含まれた化合物が形成される。これによって、セラミックス基板11と回路層12、金属層13との接合強度が高められ、接合信頼性が向上する。
【0058】
また、セラミックス基板(セラミックス部材)11と、回路層12および金属層13との接合界面において、セラミックス基板(セラミックス部材)11の表面から回路層12側および金属層13側に10μm離間した位置の銅の濃度が1.2mass%以下かつ鉄の濃度が0.6mass%以下とすることで、回路層12および金属層13のうちセラミックス基板11との接合界面の近傍が、過剰に硬くなることを抑制できる。これにより、セラミックス基板11に亀裂や割れが生じることを抑制することができる。なお、これらの銅や鉄は、アルミニウム板やろう材に含まれていた不純物に由来するものである。
【0059】
この後、得られた絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)10を用いて冷却器付き絶縁回路基板20を製造する際には、金属層13のセラミックス基板11とは反対側の面に重ねて、アルミニウムやアルミニウム合金からなる冷却器14を、例えばAl−Si系ろう材を用いて接合する。これによって、冷却器付き絶縁回路基板20を製造することができる。
【0060】
(第二実施形態に示した絶縁回路基板の製造方法)
次に、第二実施形態に示した絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)の製造方法の一例について説明する。
第二実施形態に示した絶縁回路基板の製造方法は、前述した第一実施形態に示した絶縁回路基板の製造方法において、セラミックス基板とアルミニウム板との接合にAl−Si−Mg系のろう材を用いる点で異なる。
【0061】
Al−Si−Mg系ろう材は、Siを1mass%以上12mass%以下の範囲内、Mgを0mass%を超え0.20mass%以下の範囲内で含有するアルミニウム合金からなるろう材箔又はろう材ペーストを用いることができる。ろう材箔を用いる場合は、厚さが5μm以上30μm以下の範囲内の箔材を用いるとよい。ろう材ペーストを用いる場合は、金属成分の換算厚さが5μm以上30μm以下の範囲内となるよう塗布するとよい。
なお、Mgの含有量は0.05mass%以上0.20mass%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0062】
このようなAl−Si−Mg系ろう材を用いて、セラミックス基板とアルミニウム板とを接合することにより、ケイ素が10at%〜18at%、酸素が20at%〜35at%、窒素が25at%〜40at%、マグネシウムが3at%〜8at%、残部がアルミニウムとされた接合層21が形成されると共に、接合層21と回路層12の間及び接合層21と金属層13との間に、窒化アルミニウム層22が形成される。
【0063】
本発明の実施形態を説明したが、これらの各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、追加、ないし変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0064】
また、本実施形態では、絶縁回路基板にパワー半導体素子を搭載してパワーモジュールを構成するものとして説明したが、これに限定されることはない。例えば、絶縁回路基板の回路層にLED素子を搭載してLEDモジュールを構成してもよいし、絶縁回路基板の回路層に熱電素子を搭載して熱電モジュールを構成してもよい。熱電素子としては、例えば、マグネシウムシリサイドやマンガンシリサイド、Bi
2Te
3,PbTe,CoSb
3,SiGe等を用いることができる。
【0065】
さらに、本実施形態においては、セラミックス基板の一方の面及び他方の面にそれぞれアルミニウム板を接合して回路層及び金属層を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、セラミックス基板の一方の面にのみアルミニウム板を接合して回路層を形成し、金属層を形成しなくてもよいし、他の金属等で構成してもよい。また、セラミックス基板の他方の面にのみアルミニウム板を接合して金属層を形成し、回路層を他の金属等で構成してもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本実施形態の効果を検証した実験例を示す。
【0067】
(実施例1)
まず、窒化ケイ素基板(40mm×40mm×0.32mmt)に対し、窒化ケイ素基板表面のMg濃度が表1記載の通りとなるよう上述した実施形態に記載の方法によって窒化ケイ素を作製した。なお、Mg濃度は、表面のEPMA分析によって求めた。なお、EPMA分析は、日本電子株式会社製FE−EPMA JXA−8530Fを用い、加速電圧15kV、ビーム電流50nAの条件で10箇所測定を行い、その平均値をMg濃度とした。
そして、得られた各窒化ケイ素の一方の面に回路層となる表1記載のAl板(37mm×37mm×0.6mmt)を、他方の面に金属層となる表1記載のAl板(37mm×37mm×1.6mmt)を表1記載のろう材箔を介して積層した。そして、積層方向に5kgf/cm
2で加圧しながら加熱することで、Al板とセラミックス基板を接合し、各絶縁回路基板を作成した。加熱温度、加熱時間及び雰囲気は表1記載の通りとした。そして、得られた各絶縁回路基板の金属層に、Al−Si系ろう材を用いて、ヒートシンク(A6063、50mm×60mm×5mmt)を接合した。接合は、積層方向の荷重:3.0kgf/cm
2、真空中、加熱温度610℃とした。
得られた絶縁回路基板に対して、接合層の有無、接合層内のMg濃度、界面のCu及びFe濃度、接合率(初期及び冷熱サイクル後)を測定した。
【0068】
(接合層の確認方法、接合層及び界面の各元素濃度の測定方法)
絶縁回路基板を積層方向に機械切断し、得られた断面を厚さ約50μmまで機械研磨し、断面試料とする。その後、接合界面付近に4kVのアルゴンイオンを上下(積層方向と垂直の面)から4度の角度で入射させ、スパッタリングで断面試料に穴が開くまで薄片化する。穴の縁がエッジ状になって電子線が透過可能な厚さ0.1μm程度となるので、この部分をTEM及びEDSで測定し、接合層の有無、接合層及び界面の各元素濃度を測定した。TEMおよびEDSによる測定は、FEI社製Titan ChemiSTEM(EDS検出器付)、加速電圧:200kV、倍率:45万〜91万倍で行った。接合層は界面近傍のマッピングにおいてMg、Si、Al、O、Nが重なる領域とした。
Cu及びFeについては、絶縁回路基板の接合界面の断面をEPMA(日本電子株式会社製JXA−8539F、倍率1000倍)を用いて観察し、セラミックス基板(窒化ケイ素基板)の表面から回路層(Al板)側に10μm離間した位置における濃度を測定した。測定は5ヶ所行い、その平均値をCu濃度、Fe濃度とした。
【0069】
(接合率の評価)
冷熱衝撃試験機(エスペック株式会社製TSB−51)を使用し、絶縁回路基板に対して、液相(フロリナート)で、−40℃×5分←→150℃×5分の2000サイクルを実施した。
この後、回路層とセラミックス基板との接合率を以下のようにして評価した。なお、接合率の評価は、冷熱サイクル試験前(初期接合率)と冷熱サイクル試験後(サイクル後接合率)に行った。
接合率の評価は、絶縁回路基板に対し、セラミックス基板と金属層との界面の接合率について超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて評価し、以下の式から接合率を算出した。
ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち本実施例では金属層の面積(37mm×37mm)とした。
(接合率)={(初期接合面積)−(剥離面積)}/(初期接合面積)
超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積とした。
これらの結果を表1に記載した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から、接合層が形成され、接合層のマグネシウムの濃度が3at%〜8at%の範囲内とされた実験例1〜実験例10では、初期の接合率が高く、冷熱サイクル後の接合率も高いままであり、接合信頼性の高い、絶縁回路基板(セラミックス/アルミニウム接合体)が得られることが分かった。一方、接合層が形成されなかった実験例12では、冷熱サイクル後の接合率が大幅に低下した。また、接合層のマグネシウム濃度が8at%を超えた実験例11では、冷熱サイクル後の接合率が、実験例1〜実験例10と比べると、若干低くなった。
【0072】
(実施例2)
窒化ケイ素基板(40mm×40mm×0.32mmt)に対し、窒化ケイ素基板表面のMg濃度が表2記載の通りとなるよう上述した実施形態に記載の方法によってSi
3N
4基板を作製した。なお、窒化ケイ素基板表面のMg濃度は、実施例1と同様の方法で測定した。
得られた各窒化ケイ素基板の一方の面に回路層となるAl板(37mm×37mm×0.6mmt)を、他方の面に金属層となるAl板(37mm×37mm×1.6mmt)をろう材箔を介して積層した。ここで、回路層及び金属層となるAl板としては、Cu:0.01mass%、Fe:0.02mass%、Al:残部を用いた。また、ろう材として、Al−7.5mass%Siとし、Mgを含有しないものを用いた。
【0073】
そして、積層方向に5kgf/cm
2で加圧しながら加熱することで、Al板とセラミックス基板を接合し、各絶縁回路基板を作成した。加熱温度、加熱時間及び雰囲気は表2記載の通りとした。
得られた各絶縁回路基板の金属層に、Al−Si系ろう材を用いて、ヒートシンク(A6063、50mm×60mm×5mmt)を接合した。ヒートシンクの接合条件は、積層方向の荷重:3.0kgf/cm
2、真空中、加熱温度610℃とした。
得られた絶縁回路基板に対して、窒化アルミニウム層の厚さ、接合層内のMg濃度、接合率(初期及び冷熱サイクル後)を測定した。
【0074】
ここで、窒化アルミニウム層の厚さは、窒化ケイ素基板と金属層の接合界面の断面を透過型電子顕微鏡(FEI社製Titan ChemiSTEM)を用いたライン分析から、Al,Si,O,N,Mgを合わせて100at%としたとき、Al:15at%〜60at%、且つ、N:30at%〜80at%の領域を窒化アルミニウム層とし、その厚さを測定した。例えば、
図5に示すように、線Aと線Bの間の領域が窒化アルニウム層となる。
なお、接合層内のMg濃度、接合率(初期及び冷熱サイクル後)は、実施例1で説明した方法で評価した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果から、窒化アルミニウム層の厚さが4nm以上100nm以下の範囲内である場合には、接合信頼性がさらに向上することが確認された。さらに、窒化アルミニウム層の厚さが15.8nm以上76.9nm以下の範囲内である場合には、接合信頼性がさらに向上することが確認された。