(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[I.一実施形態]
本実施形態の装置および方法で薬剤が噴霧される帯状体は、帯状の半製品であり、「ウェブ」とも称される。この半製品としては、ティシュペーパやトイレットペーパなどの紙製品を製造するための原紙をはじめ、反物や不織布といった原布などが挙げられる。
さらに、本実施形態の帯状体は、多孔質状であり、空気が通過することのできる性質(通気性)をもつ。この帯状体は、張力が印加された状態でロールに架け渡されて鉛直方向に搬送される。また、帯状体への薬剤の噴霧装置および紙製品の生産方法では、帯状体の厚み方向に沿って一方から薬剤が噴霧され、帯状体に対して面状に薬剤を付着させる。
【0016】
以下の実施形態では、水平方向のうち、帯状体の厚みに沿う方向をX方向とする。詳細には、帯状体に対して薬剤が噴霧される側(
図1では右側)をX
1方向とし、X
1方向の反対側(
図1では左側)をX
2方向とする。また、鉛直方向をY方向とする。詳細には、重力の作用方向をY
1方向(下方)とし、Y
1方向の反対側をY
2方向(上方)とする。なお、X方向およびY方向の何れにも直交する方向が帯状体の幅方向(短手方向)であり、帯状体の長手方向はY方向に沿っている。
【0017】
[1.噴霧装置]
まず、
図1を参照して、帯状体2を薬剤Aの噴霧対象とする噴霧装置1の基本的な構成を述べる。
噴霧装置1には、搬送される帯状体2の一部を囲繞する噴霧室10が設けられている。ここでは、内部100に中空の空間を有する直方体状の噴霧室10が形成される。ただし、噴霧室10としては、周囲の構成や要求仕様などに応じて種々の形状のものを採用することができる。
この噴霧室10の内部100には、帯状体2へ薬剤Aを噴霧する噴霧器9が設けられている。
【0018】
この帯状体2は、二つの通過口19を通って噴霧室10の内部100を通過する。詳細に言えば、帯状体2は、噴霧室10の下壁部101に設けられた第一通過口191を通って内部100に入り、噴霧室10の上壁部102に設けられた第二通過口192を通って内部100から出る。
帯状体2が鉛直方向(Y
2方向)に搬送されることから、通過口191,192は、同一の仮想的な鉛直平面上に配置される。
【0019】
これらの通過口191,192は、搬送される帯状体2とのクリアランスを確保するために、帯状体2の厚みや幅よりもやや大きな寸法に形成されたスリット状の開口である。
なお、搬送される帯状体2の寸法に応じて通過口191,192の寸法を可変に調節する調節機構を設けてもよい。たとえば、帯状体2が噴霧室10でX方向にばたつきうる変位量や帯状体2の厚みなどに応じて、通過口191,192のX方向寸法を拡縮させる調節機構を設けてもよい。あるいは、製品ロットに応じて変更された帯状体2の幅(
図1の奥行き方向寸法)に応じて、通過口191,192の長手方向寸法(幅方向寸法)を拡縮させる調節機構を設けてもよい。
【0020】
通過口191,192を通過して噴霧室10を縦断する帯状体2により、噴霧室10は、X
1方向側の第一噴霧室11とX
2方向側の第二噴霧室12とに区分される。
ここでは、第一噴霧室11の内部110に噴霧器9が設けられている。
【0021】
噴霧器9は、薬剤Aを噴霧するスプレーである。この噴霧器9は、薬剤Aの噴出口を帯状体2に対面させて配置され、X
2方向に薬剤Aを噴霧する。
噴霧される薬剤Aとしては、保湿剤や芳香剤をはじめ、医療成分,清涼剤,顔料といったさまざまな液剤が挙げられる。たとえば、グリセリンやソルビトールを保湿剤として薬剤Aに用いることができる。
【0022】
ここでは、薬剤Aと圧縮空気とを混合して噴出する二流体スプレーを噴霧器9に用いている。そのため、薬剤Aの噴霧圧は、圧縮空気の気圧に応じた圧力となる。
【0023】
つぎに、噴霧装置1の詳細な構成について、白抜きの矢印で示す空気の流れに関する強制排気部20および通気口30を説明する。
強制排気部20は、噴霧室10の内部100から強制的に排気する機構である。これに対し、通気口30は、噴霧器10の内部100と外部200との間で空気が通過する開口である。この通気口30では、噴霧室10の外部200から内部に自然吸気され、あるいは、内部100から外部200に自然排気される。
【0024】
強制排気部20の強制排気によれば、噴霧室10の内部100に空気の流れが強制的に形成される。一方、通気口30の通気によれば、噴霧室10の内部100において、空気の停滞が抑えられ、空気の流れが促進される。噴霧室10の内部100における空気の流れを促進させるものとも言える。
以下、強制排気部20,通気口30の順に各構成を詳述する。
【0025】
[1.1.強制排気部]
ここでは、強制排気部20として二つの強制排気部21,22が設けられている。具体的には、主要な強制排気部(以下「主強制排気部」〈第一強制排気部〉という)21が第二噴霧室12の側壁部121(壁部)に設けられている。また、補助的な強制排気部(以下「補助強制排気部」〈第二強制排気部〉という)22が第一噴霧室11の上壁部112(壁部)に設けられている。
【0026】
主強制排気部21は、第二噴霧室12の内部120から外部200に排気する。ここでは、帯状体2を挟んで噴霧器9と対向して主強制排気部21が配置される。具体的に言えば、噴霧器9による薬剤Aの噴霧中心軸をX方向に延長した直線状の仮想線L上に、主強制排気部21が配置される。この主強制排気部21では、排気口210に排気ファン211(第一強制排気ファン)が設けられる。
また、補助強制排気部22は、第一噴霧室11の内部110から外部200に排気する。この補助強制排気部22では、主強制排気部21と同様に、排気口220に排気ファン221(第二強制排気ファン)が設けられる。
【0027】
主強制排気部21の排気口210は、第二噴霧室12の側壁部121を貫通し、第二噴霧室12の内部120と外部200とを連通させる開口である。
また、補助強制排気部22の排気口220は、第一噴霧室11の上壁部112を貫通し、第一噴霧室11の内部110と外部200とを連通させる開口である。
これらの排気口210,220は、通気口30や通過口19とは離隔(独立)して別設されている。
【0028】
主強制排気部21の排気ファン211は、回転する羽根車で空気を圧送する送風機である。この排気ファン211の回転数(回転速度)は、噴霧器9の噴霧圧,帯状体2の搬送速度をはじめ、帯状体2の通気性や厚みといった各種のパラメータに基づいて、予め実験的または経験的に設定することができる。このように設定される回転数は、固定値であってもよいし、各種のパラメータに応じて変動する可変値であってもよい。
また、補助強制排気部22の排気ファン221は、上記の排気ファン211と同様の送風機である。この排気ファン221の回転数は、主強制排気部21の排気ファン211に関する各種のパラメータに加えて、主強制排気部21の排気ファン211の回転数に基づいて、予め実験的または経験的に設定することができる。
【0029】
さらに、主強制排気部21の排気口210には、排気フィルタ212(フィルタ)が設けられている。ここでは、排気ファン211による排気方向基準で上流側に排気フィルタ212が配置されている。そのうえ、排気フィルタ212の内表面は、第二噴霧室12の内壁表面に沿って配置される。
同様に、補助強制排気部22の排気口220にも排気フィルタ222(フィルタ)が設けられている。
これらのフィルタ212,222は、気体を通過させるとともに液体あるいは固体を分離する濾過器である。フィルタ212,222としては、不織布やスポンジといった公知の通気性材料を用いることができる。
【0030】
[1.2.通気口]
ここでは、通気口30として二つの通気口31,32が設けられている。具体的には、主要な通気口(以下「主通気口」〈第一通気口〉という)31が第一噴霧室11の側壁部111(壁部)に設けられている。また、補助的な通気口(以下「補助通気口」〈第二通気口〉という)32が第二噴霧室12の上壁部122(壁部)に設けられている。
【0031】
主通気口31は、第一噴霧室11において第二噴霧室12の側壁部121と対面して立設された側壁部111を貫通して設けられ、第一噴霧室11の内部110と外部200とを連通させる開口である。この開口により、第一噴霧室11の外部200から内部110に吸気され、あるいは、内部110から外部200に排気される。
ここでは、噴霧器9に対して薬剤Aの噴霧方向とは反対側に主通気口31が配置されている。すなわち、噴霧器9に対してX
1方向側(噴霧器9の背部)に主通気口31が位置する。さらに、主通気口31,噴霧器9および主強制排気部21は、仮想線L上に配置されている。
【0032】
また、補助通気口32は、第二噴霧室12の上壁部122を貫通して設けられ、第二噴霧室12の内部120と外部200とを連通させる開口である。この開口により、第二噴霧室12の外部200から内部120に吸気され、あるいは、内部120から外部200に排気される。
【0033】
これらの通気口31,32は、排気口210,220のほか通過口19と離隔(独立)して別設されている。
さらに、通気口31,32のそれぞれには、通気フィルタ310,320が設けられている。これらの通気フィルタ310,320は、排気フィルタ212,222と同様に、各内表面が噴霧室11,12の内壁表面に沿って配置され、公知の通気性材料を用いることができる。
【0034】
[1.3.排液部]
そのほか、噴霧装置1には、薬剤Aを排出させて回収する排液部40A,40Bが設けられている。
排液部40A,40Bは、噴霧器9で噴霧された薬剤Aのうち帯状体2に付着しなかったものを回収するための構造である。帯状体2に付着しなかった薬剤Aの一部は噴霧室10の内壁表面に付着し、内壁表面に付着した薬剤Aどうしが液滴となって滴下あるいは流下(単に「滴下」という)する。このように滴下する薬剤Aの回収構造として、排液部40A,40Bが配備される。
ここでは、第一噴霧室11の薬剤Aを回収する第一排液部40Aが設けられている。また、薬剤Aが帯状体2を通過して第二噴霧室12に進入するのに備えて、第二噴霧室12の薬剤Aを回収する第二排液部40Bが設けられている。
【0035】
第一排液部40Aには、第一噴霧室11の下壁部113(壁部)に形成されて薬剤Aを案内する案内部41Aと、この案内部41に接続されて案内部41Aで案内された薬剤Aを排出する排液管42Aが設けられる。さらに、排液管42Aが内挿され、排液管42Aで排出された薬剤Aを貯留するタンク43Aが第一排液部40Aに設けられる。
ここでは、案内部41Aおよび排液管42Aが漏斗状をなしており、タンク43Aに薬剤Aが案内される。詳細に言えば、案内部41Aは、上底よりも下底のほうが小さい錐台状に第一噴霧室11の下壁部113が凹設された部位である。この錐台状の下底に上端部が結合された排液管42Aが下方に延びて配置される。そして、排液管42Aの下部が内挿される位置にタンク43Aが配置される。
【0036】
同様にして、第二排液部40Bにも案内部41B,排液管42Bおよびタンク43Bが設けられている。
あるいは、二つのタンク43A,43Bに替えて一つのタンクを設け、このタンクに二つの排液管42Aおよび42Bを内挿することもできる。
【0037】
[2.紙製品の生産方法]
つづいて、上述した噴霧装置1を用いて帯状体2へ薬剤Aを噴霧し、紙製品を生産する方法を述べる。
この方法では、噴霧室10の内部100で帯状体2へ薬剤Aを噴霧する噴霧工程が実施される。さらに、噴霧室10の内部100から強制的に排気する強制排気工程と、この強制排気工程中に噴霧室10の内部100と外部200との間で通気する通気工程とが実施される。
【0038】
噴霧工程では、噴霧器9によって薬剤Aを帯状体2に噴霧する。
強制排気工程では、噴霧室10の内部100から外部200に強制排気部20で強制的に排気する。
通気工程では、上記した強制排気工程中に、噴霧室10の内部100と外部200との間で通気口30を空気が通過する。
【0039】
[3.作用および効果]
本実施形態の噴霧装置1は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)噴霧装置1では、噴霧室10の内部100において帯状体2へ噴霧器9で薬剤Aを噴霧するため、噴霧室10の外部200へ薬剤Aが飛散することを抑えることができる。そのため、帯状体2への薬剤Aの付着効率を高めることができる。また、噴霧室10の周辺設備に薬剤Aが付着することによる汚れを抑えることができる。
【0040】
また、噴霧室10の内部100から強制的に排気する強制排気部20によって、噴霧室10の内部100に空気の流れを強制的に形成させることができる。そのため、強制排気部の設けられていない従来の噴霧装置と比べて、停滞した空気に薬剤Aが滞留することを抑えることができる。よって、薬剤Aの付着による噴霧器9の汚れや詰まりが抑えられ、帯状体2への薬剤Aの付着量を適正化することができる。そのうえ、仮に噴霧室10の内圧が上昇したとしても、この内圧上昇を強制排気部20の排気によって抑えることができ、通過口19から外部200に薬剤Aが飛散することも抑えることができる。
【0041】
さらに、噴霧室10の内外で空気が通過する通気口30によって、強制排気部20で形成された空気の流れを促進させることができる。そのため、噴霧室10の内部100において、強制排気部20の周辺のみならず、他の領域にも気流を形成することができる。よって、停滞した空気に滞留する薬剤Aによる噴霧器9の詰まりが抑えられ、帯状体2へ薬剤Aを適切に噴霧することができる。
【0042】
二流体スプレーを用いる噴霧装置では、強制排気部やそのフィルタが詰まりうる。これにより、噴霧室内の圧力が上昇し、帯状体の通過口から空気とともに薬剤が外部に飛散するおそれもある。
これに対し、本噴霧装置1には、強制排気部20に加えて通気口30が設けられているため、強制排気部20やそのフィルタ212,222の詰まりにより噴霧室10の内圧が正圧(外部200の気圧〈大気圧〉よりも高い気圧)へ上昇する場合には、通気口30によって噴霧室10の内部100から外部200に自然排気される。したがって、噴霧室10の内圧上昇を抑えることができる。これにより、通過口19から外部200に薬剤Aが飛散することを抑えることもできる。
また、噴霧室10の内圧が負圧(外部200の気圧よりも低い気圧)の場合には、通気口30によって噴霧室10の外部200から内部100に自然吸気され、噴霧室10の内圧低下を抑えることができる。
このようにして、噴霧室10の内圧変動を抑えることもできる。
よって、帯状体2へ薬剤Aを適切に噴霧することができる。
【0043】
(2)具体的には、主通気口31での通気によって、第一噴霧室11の内部110における空気の流れを促進させることができ、第一噴霧室11の内圧変動を抑えることもできる。
【0044】
(3)ところで、主通気口31の設けられていない従来の噴霧装置では、薬剤Aの噴霧方向(X
2方向)に薬剤Aや空気の流れが形成されるものの、この噴霧方向とは反対側(X
1方向)に存在する空気が停滞して薬剤Aが滞留するおそれがある。
これに対して、本実施形態の噴霧装置1には、噴霧器9に対して薬剤Aの噴霧方向とは反対側に主通気口31が配置される。そのため、主通気口31の通気により、噴霧器9に対して薬剤Aの噴霧方向とは反対側に存在する空気の流れを促進し、第一噴霧室11の内部110において浮遊する薬剤Aの滞留を抑えることができる。
【0045】
(4)また、補助通気口32での通気によって、第二噴霧室12の内部120における空気の流れを促進させることができ、第二噴霧室12の内圧変動を抑えることもできる。
【0046】
(5)主強制排気部21によって第二噴霧室12の内部120から強制的に排気することで、第一噴霧室11の内部110から第二噴霧室12の内部120に向かう方向(X
1側からX
2側に向かうX方向)の空気の流れを形成することができる。この気流によって、帯状体2への薬剤Aの付着効率を向上させることができる。更に言えば、帯状体2に薬剤Aを浸透させることができ、製品の品質を向上させることができる。
【0047】
(6)主強制排気部21,噴霧器9および主通気口31がX方向に沿って直線状に延びる同一の仮想線L上に配置されるため、X
1側からX
2側に向かうX方向に噴霧装置1を横断する空気の流れを形成することができる。
具体的に言えば、噴霧装置1を横断する気流は、下記に示すように形成された三つの気流が連なることで形成される。
気流1:主強制排気部21の強制的な排気による気流
気流2:噴霧器9の薬剤Aの噴霧による気流
気流3:主通気口31の自然吸気による気流
上記の気流1は、第二噴霧室12の内部120において、X
1側からX
2側に流れる。
上記の気流2は、第一噴霧室11の内部110のうち噴霧器9よりもX
2方向側で、X
1側からX
2側に流れる。
上記の気流3は、第一噴霧室11の内部110のうち噴霧器9よりもX
1方向側で、X
1側からX
2側に流れる。
これらの気流1〜3によって、帯状体2に薬剤Aを浸透させることができる。
【0048】
(7)補助強制排気部22によって強制的に排気することで、第一噴霧室11の内部110における気流形成を促進させることができる。そのほか、第一噴霧室11の内圧の上昇を抑えることもできる。
【0049】
(8)噴霧室10の内部100で帯状体2が鉛直方向(Y
2方向)に搬送されるため、噴霧室10の内部100で薬剤Aの液滴が落下したとしても、この液滴の帯状体2に対する付着を抑えることができる。よって、製品の品質のばらつきや歩留まりを向上させることができる。
【0050】
(9)そのほか、排気フィルタ212,222や通気フィルタ310,320によって、噴霧室10の内部100への異物の混入や外部200への薬剤Aの飛散を抑えることができる。
さらに、主強制排気部21の排気フィルタ212や主通気口31の通気フィルタ310は、各内表面が側壁部111,121の内表面に沿って配置されるため、側壁部111,121およびフィルタ212,310に沿って薬剤Aを円滑に滴下させることができる。
【0051】
(10)滴下した薬剤Aが排液部40A,40Bによって噴霧室10から排出されて回収されるため、薬剤Aを再利用することができる。
さらに、排液部40A,40Bで排出された薬剤Aがタンク43A,43Bに貯留されるため、タンク43A,43Bに貯留された薬剤Aに異物の除去処理や他の洗浄処理を施すことで、再利用時の薬剤Aの品質低下を抑えることもできる。
【0052】
(11)ところで、通過口と連続して通気口が設けられた噴霧装置において、通気口にフィルタを設ける場合には、搬送される帯状体にフィルタが干渉するおそれや、フィルタを安定して取り付けられないおそれがある。
これに対し、通過口19と離隔して別設される通気口31,32には、通気フィルタ310,320を安定して取り付けることができ、搬送される帯状体2に対する通気フィルタ310,320の干渉も防ぐことができる。
(12)なお、本実施形態の紙製品の生産方法によっても上述した作用および効果を得ることができる。
【0053】
[II.その他]
最後に、本実施形態のその他の変形例について述べる。
たとえば、噴霧室10の内圧を検出するセンサを設けたうえで、このセンサで検出された内圧に応じて噴霧室10の内部100から排気(排出駆動)する駆動部が上述した噴霧装置1の通気口30に追加されてもよい。この駆動部としては、強制的に排気するファン(強制排気ファン)を用いることができる。
【0054】
たとえば、上記のファンは、センサで検出された内圧が大気圧とほぼ等しい場合には所定回転数で駆動される。ここでいう所定回転数は、他の排気ファン211,221と同様に、噴霧器9の噴霧圧,帯状体2の搬送速度をはじめ、帯状体2の通気性や厚みといった各種のパラメータに基づくほか、これらの排気ファン211,221の回転数に基づいて、予め実験的または経験的に設定される。
更に言えば、センサで検出された内圧が大気圧よりも高い場合には、所定回転数よりも高い回転数でファンが駆動される。反対に、センサで検出された内圧が大気圧よりも低い場合には、所定回転数よりも低い回転数でファンが駆動される。
【0055】
あるいは、駆動部として、センサで検出された内圧が大気圧よりも低い場合に噴霧室10の内部100に吸気(吸引駆動)するブロアを用いることも可能である。
これらのセンサや駆動部が設けられた噴霧装置1では、通気口30で確実に吸排気させることができ、噴霧室10の内圧変動を確実に抑えることができる。
【0056】
また、通気口30では、強制排気部20に比べて空気の流通量が抑えられることから、通気フィルタ310,320を省略してもよい。さらに、強制排気部20による排気を製造装置の系外に導くダクトを用いれば、排気フィルタ212,222を省略してもよい。
あるいは、強制排気部20および通気口30は、少なくとも一箇所に設けられていればよく、三箇所以上に設けられていてもよい。
そのほか、帯状体2の搬送方向は、鉛直方向に限定されず、たとえば水平方向であってもよい。
なお、上記の排気ファン211,221には、ブロアやポンプといった公知の送風機を用いてもよい。