(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
本実施形態の装置および方法で薬剤が噴霧される帯状体は、帯状の半製品であり、「ウェブ」とも称される。この半製品としては、ティシュペーパやトイレットペーパなどの紙製品を製造するための原紙をはじめ、織布や不織布といった原布などが挙げられる。
さらに、本実施形態の帯状体は、多孔質状であり、空気が通過することのできる性質(通気性)をもつ。この帯状体は、張力が印加された状態でロールに架け渡されて鉛直方向に搬送される。また、帯状体への薬剤の噴霧装置および紙製品の生産方法では、帯状体の厚み方向に沿って一方から薬剤が噴霧され、帯状体に対して面状に薬剤を付着させる。
【0015】
参照する図面では、水平方向のうち、帯状体の厚みに沿う方向をX方向とする。詳細には、帯状体に対して薬剤が噴霧される方向(薬剤の噴霧方向とは反対方向)をX
1方向とし、X
1方向の反対方向をX
2方向とする。また、鉛直方向をY方向とする。詳細には、重力の作用方向(下方)をY
1方向とし、Y
1方向の反対方向(上方)をY
2方向とする。さらに、X方向およびY方向の何れにも直交する方向をZ方向とする。詳細には、Z方向の一方をZ
1方向とし、Z
1方向の反対方向をZ
2方向とする。
【0016】
以下の実施形態では、上記したX方向に対応する帯状体の厚み方向およびこれに沿う方向について、単に「厚み方向」と呼ぶ。また、上記したY方向に対応する帯状体の搬送方向(長手方向)およびこれに沿う方向についても単に「搬送方向」と呼ぶ。さらに、上記したZ方向に対応する帯状体の幅方向(短手方向)およびこれに沿う方向ついても、単に「幅方向」と呼ぶ。
【0017】
[I.第一実施形態]
はじめに、第一実施形態の噴霧装置および紙製品の生産方法を述べる。
[1.噴霧装置]
まず、
図1を参照して、帯状体2を薬剤Aの噴霧対象とする噴霧装置1の基本的な構成を説明する。
【0018】
噴霧装置1には、搬送される帯状体2が中空の内部空間(単に「内部」という)100を通過する噴霧室10が設けられている。ここでは、直方体状の噴霧室10が形成される。ただし、噴霧室10としては、周囲の構成や要求仕様などに応じて種々の形状のものを採用することができる。
この噴霧室10の内部100には、帯状体2へ薬剤Aを噴霧する噴霧器9が設けられている。
【0019】
また、噴霧室10の内部100には、二つの通過口19を経て帯状体2が通過する。詳細に言えば、帯状体2は、噴霧室10の下壁部101に設けられた第一通過口191を通って内部100に入り、この内部100を搬送されて、噴霧室10の上壁部102に設けられた第二通過口192を通って内部100から出る。
帯状体2が鉛直方向に搬送されることから、通過口191,192は、同一の仮想的な鉛直平面上に配置される。
【0020】
これらの通過口191,192は、搬送される帯状体2に対するクリアランスを確保するために、帯状体2の厚みや幅よりもやや大きな寸法に形成されたスリット状の開口である。
通過口191,192を通過して噴霧室10を縦断する帯状体2により、噴霧室10は、薬剤Aが帯状体2に噴霧される側(X
1方向側)の第一噴霧室11とこの第一噴霧室11とは反対側(X
2方向側)の第二噴霧室12とに区分される。
ここでは、第一噴霧室11の内部110に噴霧器9が設けられている。
【0021】
噴霧器9は、薬剤Aを噴霧するスプレーである。この噴霧器9は、薬剤Aの噴出口を帯状体2に対面させて配置され、帯状体2へ向かう方向(X
2方向)に薬剤Aを噴霧する。
噴霧される薬剤Aとしては、保湿剤や芳香剤をはじめ、医療成分,清涼剤,顔料といったさまざまな液剤が挙げられる。たとえば、グリセリンやソルビトールを保湿剤として薬剤Aに用いることができる。
【0022】
ここでは、薬剤Aと圧縮空気とを混合して噴出する二流体スプレーを噴霧器9に用いている。そのため、薬剤Aの噴霧圧は、圧縮空気の気圧に応じた圧力となる。ただし、圧縮空気を用いずに圧送された液体を噴出する一流体スプレーを噴霧器9に用いてもよい。この場合の噴霧圧は、圧送される薬剤Aの液圧に応じた圧力となる。
【0023】
ところで、上記した噴霧器9で薬剤Aが噴霧されることにより、帯状体2が厚み方向にばたつくおそれがある。
そこで、本噴霧装置1には、第二噴霧室12の内部120へ進入する方向(X
2方向)の帯状体2のばたつきを抑えるために、帯状体2の搬送軌道を規制する部材(以下「規制部材」という)20が設けられている。
【0024】
〈規制部材〉
規制部材20は、噴霧室10の内部100で搬送される帯状体2を挟んで噴霧器9と対向して配置される。すなわち、第二噴霧室12の内部120に規制部材20が配備されている。
この規制部材20は、ばたついていない帯状体2に対しては非接触であり、ばたついている帯状体2に対しては接触しうる位置に設けられている。なお、
図1には、理想的な軌道でばたつかずに搬送される帯状体2を例示する。
【0025】
ここでは、
図3に示すように、搬送方向に延びる長尺状であって搬送方向に対して幅方向にやや傾斜する複数の規制部材20(一箇所にのみ符号を付す)が設けられている。これらの規制部材20は、幅方向に間隔をあけて配置されている。規制部材20の材料としては、樹脂や金属といった種々の公知材料を用いることができる。
なお、
図3では五つの規制部材20を例示するが、規制部材20の数は、四つ以下や六つ以上の複数であってもよい。
【0026】
以下、噴霧装置1の規制部材20に関して詳述する。
まず、
図4を参照して、規制部材20の基本的な構造を説明する。なお、ここで説明する規制部材20は、第二噴霧室12に取り付けられた姿勢であるものとする。
規制部材20は、第二噴霧室12に嵌め合わせられる嵌合部21,22と、これらの嵌合部21,22どうしを接続するように延びて設けられる延在部23(平板部)とに大別される。延在部23の下端部から第二噴霧室12の内部120に向かう方向(X
2方向)に第一嵌合部21が突出して設けられる。同様に、延在部23の上端部から第二噴霧室12の内部120に向かう方向(X
2方向)に第二嵌合部22が突出して設けられる。
【0027】
言い換えれば、搬送方向に延びるとともに幅方向に沿ってやや傾斜した平板状の部材が幅方向に沿う上下の折れ目で折り曲げられた形状に規制部材20が形成されている。折れ目のそれぞれよりも端部側の部位が嵌合部21,22であり、上下の折れ目で挟まれる部位が延在部23である。この延在部23のうち帯状体2に対面する表面23aは、上下に延びる平面(YZ平面)に形成される。
【0028】
そのほか、第一嵌合部21の下面と第二嵌合部22の上面とが上下に離隔する寸法は、規制部材20が嵌め合わせられる第二噴霧室12の下壁部101の上面と上壁部102の下面とが上下に離隔する寸法よりもやや大きく設定されている。よって、第二噴霧室12に対して規制部材20が確実に嵌め合わせられて固定される。
規制部材20の取り付け時には、延在部23を撓ませた状態で嵌合部21,22が第二噴霧室12に挿入されて、嵌め合わせられる。規制部材20の取り外し時には、取り付け時と同様に延在部23を撓ませて、第二噴霧室12に対する嵌合部21,22の嵌め合わせが解除される。
【0029】
さらに、第二噴霧室12に対する嵌合部21,22の嵌め合わせ時に、各規制部材20の幅方向位置を変更すれば、規制部材20どうしの間隔が拡縮する。すなわち、各規制部材20の嵌め合わせ位置によって、規制部材20どうしの間隔が変更される。このように規制部材20どうしの間隔が調節可能であるため、第二噴霧室12における上下の壁部101,102と、延在部23の可撓性によって壁部101,102に対して着脱可能に嵌め合わせられる嵌合部21,22とは、規制部材20どうしの間隔を手動で調節可能な間隔調節機構30を構成するものと言える。
【0030】
つぎに、延在部23の表面23aについて延べる。
図2に示すように、延在部23の表面23aは、帯状体2の所定搬送軌道P
Pに対して、第二噴霧室12の内部120に向かう側(X
2方向側)に所定寸法L
Pだけ離隔して対面(対向)して配置される。
所定搬送軌道P
Pとは、噴霧室10の内部100における理想的な帯状体2の搬送軌道である。この所定搬送軌道P
Pは、鉛直方向(YZ平面)に沿っており、たとえば、噴霧器9から薬剤Aが噴霧されていない状態で搬送される帯状体2の軌道に設定される。
【0031】
また、所定寸法L
Pとは、規制部材20が設けられていない場合に、噴霧器9から薬剤Aが噴霧された帯状体2が所定搬送軌道P
Pから最も逸脱して搬送されうる軌道P
Dまでの厚み方向寸法L
D(最大変位量)よりも小さい寸法である。
上記の所定搬送軌道P
Pおよび所定寸法L
Pは、予め実験的または経験的に設定される。
【0032】
さらに、延在部23の表面23aは、
図3に示すように、搬送方向に延びるとともに幅方向に傾斜した対辺S
1,S
1と幅方向に延びる対辺S
2,S
2とを有する平行四辺形をなしている。
そのうえ、延在部23の表面23aに対して噴霧領域Rの最も下端部で厚み方向に重複する領域の帯状体2は、噴霧領域Rの上端部に搬送されると規制部材20に対して厚み方向に重複しなくなるように、表面23aが幅方向に傾斜されている。
【0033】
詳細に言えば、表面23aのなす平行四辺形のうち搬送方向に延びる対辺S
1,S
1が搬送方向から幅方向に傾斜する角度を「θ」としたときに、次の不等式I「arctan(W
2/W
1)≦θ」を満たす。この不等式Iでは、帯状体2おける噴霧器9からの薬剤Aの噴霧領域Rのうち搬送方向の寸法を「W
1」で示し、規制部材20の表面23aにおける幅方向の寸法(対辺S
2,S
2の寸法)を「W
2」で示している。
たとえば、搬送方向寸法「W
1」に比較して幅方向寸法「W
2」が小さければ、上記した傾斜角度「θ」の最小値も小さくなる。
なお、規制部材20に関する「長尺」とは、搬送方向寸法「W
1」よりも長く延びることを意味する。
【0034】
また、噴霧領域Rの搬送方向寸法「W
1」は、噴霧器9から帯状体2までの離隔寸法や噴霧器9の仕様や噴霧圧によって設定される。また、表面23aの幅方向寸法「W
2」は、軌道を逸脱した帯状体2を確実に支持する観点からは大きいほど好ましいものの、帯状体2において空気を通過させることにより薬剤Aを浸透させる観点からは、小さいほど好ましい。そのため、帯状体2の確実な支持と薬剤Aの浸透との双方を考慮して幅方向寸法「W
2」を設定することが好ましい。
【0035】
不等式Iでは、傾斜角度「θ」をラジアン(弧度)で表記している。ただし、不等式Iの左辺に「180/π」を乗算すれば、傾斜角度「θ」は度数で表記される。
この傾斜角度「θ」の上限は、搬送される帯状体2が延在部23の表面23aに接触した際の抵抗の増大を抑えるため、あるいは、延在部23で厚み方向に延びる面に薬剤Aや紙粉が堆積するのを抑えるために、「π/4(45°)」以下であることが好ましく、「π/6(30°)」以下であることが更に好ましい。
【0036】
なお、噴霧領域Rの幅方向寸法は、帯状体2に対して幅方向全域に薬剤Aを噴射するために、帯状体2の幅方向寸法よりもやや大きく設定される。
そのほか、規制部材20の表面23aは、帯状体2に対する摩擦係数が抑えられている。たとえば、規制部材20の表面23aは、ポリ四フッ化エチレンのテープ貼着や加工によって形成され、あるいは、表面粗さ(Ra)の抑えられた滑面に加工され、搬送される帯状体2への動摩擦係数が抑えられる。
【0037】
[2.紙製品の生産方法]
つづいて、上述した噴霧装置1を用いて帯状体2へ薬剤Aを噴霧し、紙製品を生産する方法を述べる。
この方法では、帯状体2を搬送する搬送工程と、搬送工程で搬送される帯状体2へ薬剤Aを噴霧する噴霧工程とが前提として実施される。そのうえで、搬送工程で搬送される帯状体2が噴霧工程における薬剤Aの噴霧圧で所定搬送軌道P
Pから逸脱した際に、この逸脱を規制する規制工程が実施される。
【0038】
規制工程では、所定搬送軌道P
Pに対する帯状体2の逸脱が規制部材20によって規制される。具体的に言えば、複数の規制部材20が幅方向に間隔をあけて配置されることから、所定搬送軌道P
Pに対する帯状体2の逸脱が幅方向において間欠的に規制される。
また、規制部材20が幅方向に傾斜して設けられることから、帯状体2の移動にともなって、帯状体2が規制部材20により逸脱を規制される箇所が幅方向に移動する。したがって、帯状体2の規制部材20に対向する面は、帯状体2の移動にともなって、一時的に規制部材20で覆われるものの、他のタイミングでは規制部材20に覆われることなく開放状態になる。
【0039】
言い換えれば、帯状体2のうち搬送方向上流で所定搬送軌道P
Pに対する逸脱が規制部材20に規制される部位は、搬送方向下流では所定搬送軌道P
Pに対する逸脱が規制部材20に規制されない。反対に、帯状体2のうち搬送方向上流で所定搬送軌道P
Pに対する逸脱が規制部材20に規制されない部位は、搬送方向下流で所定搬送軌道P
Pに対する逸脱が規制部材20に規制されうる。このように、所定搬送軌道P
Pに対する帯状体2の逸脱が搬送方向位置ごとに異なる幅方向の一部で規制される。
なお、帯状体2への噴霧圧の印加時に所定搬送軌道P
Pから帯状体2が逸脱していなければ、規制部材20が帯状体2に対して非接触であり、帯状体2の軌道は規制されない。
【0040】
[3.作用および効果]
本実施形態の噴霧装置1は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
(1)規制部材の設けられていない従来装置の帯状体は、所定搬送軌道から逸脱してばたつくと、搬送速度が変動し、周辺構造に接触し、搬送方向とは逆向きのブレーキ作用により、その引っ張り強度よりも大きな張力によって破断する。
これに対し、本噴霧装置1の規制部材20は、帯状体2を挟んで噴霧器9と対向して配置されることから、噴霧器9からの薬剤Aの噴霧方向に帯状体2が押圧されたとしても、この押圧による帯状体2の変位が規制部材20で規制される。したがって、帯状体2のばたつきを規制部材20で抑えることができる。
【0041】
具体的には、噴霧器9の噴霧圧で押圧された帯状体2が所定搬送軌道P
Pから逸脱したとしても、このように逸脱する変位量を所定寸法L
Pまでに規制部材20で抑えつつ帯状体2を搬送させることができる。このようにして、規制部材20で支持されつつ搬送される帯状体2の軌道の逸脱が規制されることで、帯状体2の破断による操業の停止や資材の損失を抑えることができ、帯状体2に塗布される薬剤Aの量(以下「塗布量」という)のばらつきを抑えることができる。延いては、製品の品質向上や歩留まりの向上に寄与する。
【0042】
さらに、複数の規制部材20が幅方向に間隔をあけて配置されることから、規制部材20に対して厚み方向に重複しない領域の帯状体2において、厚み方向への通気性が向上する。そのため、帯状体2への薬剤Aの浸透を促進させることができる。
そのほか、一体のプレートにスリットが形成された部材が規制部材として設けられた噴霧装置に比較して、複数の規制部材20が設けられることから、規制部材20どうしの間隔を容易に調節することができる。よって、種々の周辺構造やさまざまな幅寸法の帯状体2に対応することができ、汎用性に優れる。
【0043】
(2)帯状体2に対面する平板状の延在部23が規制部材20に設けられることから、所定搬送軌道P
Pから帯状体2が逸脱した際には、帯状体2に対して延在部23が面状に接触する。そのため、延在部23に対する帯状体2の接触圧を分散させることができる。よって、帯状体2の破断による操業の停止や資材の損失を抑えることができる。
【0044】
(3)
図3に仮想線(二点鎖線)で示すように、搬送方向に沿って規制部材201が配置されていると、薬剤Aの噴霧領域Rで搬送中の帯状体2は、その一部が厚み方向に規制部材201と重複しつづける。このように規制部材201と重複する帯状体2の幅方向領域では、帯状体2への薬剤Aの浸透が促進されにくく、薬剤Aの塗布量が幅方向位置によってばらつきやすくなる。
これに対し、規制部材20の延在部23が幅方向に傾斜していることから、薬剤Aの噴霧領域Rで搬送中の帯状体2は、規制部材20に対して厚み方向に重複しつづける領域が抑えられる。そのため、帯状体2への薬剤Aの浸透を促進させることができ、帯状体2への薬剤Aの塗布量が幅方向位置によってばらつくのを抑えることができる。
【0045】
(4)詳細に言えば、延在部23の表面23aは、不等式I「arctan(W
2/W
1)≦θ」を満たす角度「θ」で幅方向に傾斜していることから、薬剤Aの噴霧領域Rで搬送中の帯状体2が規制部材20に対して厚み方向に重複しつづける領域が無い。そのため、帯状体2への薬剤Aの塗布量が幅方向位置によってばらつくのを抑えることができ、帯状体2への薬剤Aの浸透を幅方向の全域で促進させることができる。
【0046】
(5)本噴霧装置1には、間隔調節機構30が設けられていることから、薬剤Aが噴霧されつつ搬送される帯状体2の挙動に応じて、規制部材20どうしの間隔を調節することができる。
たとえば、帯状体2が薄くなるほど、あるいは、噴霧器9の噴霧圧が高くなるほど規制部材20どうしの間隔を狭めることで、規制部材20どうしの間への帯状体2の潜り込みを抑えることができる。これにより、帯状体2の損傷を抑えることができ、薬剤Aの塗布量のばらつきも抑えることができる。
【0047】
また、帯状体2の幅方向寸法が大きくなるほど、規制部材20どうしの間隔を拡げてもよく、あるいは、規制部材20の本数を増加させてもよい。このようにして、帯状体2の安定搬送および破損抑制を両立することができる。
このように帯状体2の挙動に関する各種のパラメータに応じて、規制部材20の間隔あるいは本数を調節することで、帯状体2を所望の状態で搬送させることができる。
【0048】
(6)延在部23の表面23aは、帯状体2に対する摩擦係数が抑えられていることから、表面23aに帯状体2が接触した際の摩擦抵抗を低減させることができる。これにより、帯状体2の損傷を抑えることができる。さらに、表面23aへの帯状体2の接触によって帯状体2から塵埃(たとえば紙粉)が飛散することを抑えることもできる。
そのほか、延在部23の表面23aがポリ四フッ化エチレンのテープを貼着された構成であれば、帯状体2に対する摩擦係数の抑制構造を容易に後付けすることができる。
【0049】
(7)噴霧装置1では、噴霧室10の内部100において帯状体2へ噴霧器9で薬剤Aが噴霧されることから、噴霧室10の外部200へ薬剤Aが飛散することを抑えることができる。そのため、帯状体2への薬剤Aの塗布効率を高めることができる。また、噴霧室10の周辺設備に薬剤Aが付着することによる汚れを抑えることができる。
【0050】
(8)なお、本実施形態の紙製品の生産方法によっても上述した噴霧装置1と同様の作用および効果を得ることができる。
【0051】
[I′.第一実施形態の変形例]
つぎに、
図5を参照して、第一実施形態の変形例を説明する。
本変形例の噴霧装置1′には、規制部材20′どうしの間隔を手動ではなく自動で調節する間隔調節機構30′が設けられている。なお、ここでいう相違点を除いては上述した第一実施形態と同様の構成であり、これらについての詳細な説明は省略する。
【0052】
[1.構成]
間隔調節機構30′には、センサ31′の検出結果に基づいて規制部材20′の間隔を自動的に変更する変更部32′が設けられている。この変更部32′には、センサ31′が入力側に接続されたコントローラ32a′と、コントローラ32a′の出力側に接続されたアクチュエータ32b′とが設けられている。
さらに、規制部材20′の嵌合部21′,22′が嵌め合わせられる第二噴霧室12′の上下の壁部101′,102′には、嵌合部21′,22′を幅方向に摺動させるスライドレール33′が設けられている。
【0053】
センサ31′は、所定搬送軌道P
P′に対する帯状体2′の逸脱を検出対象とする検出器である。ここでは、厚み方向への帯状体2′の逸脱がセンサ31′で検出される。たとえば、厚み方向に規制部材20′が重複していない領域における帯状体2′の所定搬送軌道P
P′に対する変位(逸脱)が検出される。具体的には、規制部材20′どうしの間に潜り込んだ帯状体2′が、所定搬送軌道P
P′から所定変位寸法よりも大きく潜り込んだか否かがセンサ31′で検出される。
【0054】
センサ31′としては、第二噴霧室12′で幅方向に投光および受光する光電センサを用いることができる。この光電センサでは、所定搬送軌道P
P′に対して所定変位寸法だけ第二噴霧室12′の内部120′に進入した箇所で幅方向に投光する。この投光が所定搬送軌道P
P′から逸脱した帯状体2′によって遮断されると、所定変位寸法よりも大きく帯状体2′が逸脱したことが検出される。
上記のセンサ31′で検出された情報は、コントローラ32a′に伝達される。
【0055】
コントローラ32a′は、センサ31′の検出情報に基づいて、規制部材20′どうしの間隔を調節させる駆動信号をアクチュエータ32b′に出力する。たとえば、センサ31′によって所定搬送軌道P
P′からの帯状体2′の逸脱が検出されると、規制部材20′どうしの間隔を狭める駆動信号をアクチュエータ32b′に出力する。
アクチュエータ32b′は、各規制部材20′を幅方向に移動させる駆動装置である。このアクチュエータ32b′は、規制部材20′のそれぞれに連結され、コントローラ32a′から出力される駆動信号に応じて作動する。
【0056】
たとえば、規制部材20′に対して個別にアクチュエータ32b′が連結され、これらのアクチュエータ32b′がコントローラ32a′によって同期して駆動制御される。これにより、規制部材20′どうしの間隔のそれぞれが保持されつつ、これらの間隔が拡縮される。
あるいは、規制部材20′どうしの間隔のそれぞれを等しく保持しつつこれらの間隔を規制部材20′の幅方向位置に応じて拡縮させるように規制部材20′どうしを連結するリンク機構やギヤ機構といった連結機構を設けてもよい。この場合には、一つのアクチュエータ32b′で一つの規制部材20′を幅方向に移動させることで、規制部材20′どうしの間隔のそれぞれを保持しつつこれらの間隔を拡縮することができる。
【0057】
[2.作用および効果]
上述したように間隔調節機構30′が構成されることから、薬剤A′が噴霧されながら搬送される帯状体2′の挙動に応じて、規制部材20′どうしの間隔を自動的に調節することができる。
具体的には、所定搬送軌道P
P′から逸脱した帯状体2′を自動的にセンサ31′で検出して、その逸脱に応じた間隔に規制部材20′の相対配置を変更部32′で自動的に変更することができる。よって、帯状体2′の安定搬送および破損抑制を自動的かつ適切に両立することができる。
さらに、噴霧室10′の内部100′における帯状体2′の搬送状態は視認不能あるいは視認しにくいことから、上記した間隔調節機構30′による規制部材20′どうしの間隔調節の自動化が有効である。
【0058】
そのほか、センサ31′の検出対象は、所定搬送軌道P
P′に対する幅方向への帯状体2′の逸脱であってもよい。この場合には、センサ31′によって幅方向への帯状体2′の逸脱が検出されると、コントローラ32a′からアクチュエータ32b′に規制部材20′どうしの間隔を拡げる駆動信号が出力される。
【0059】
あるいは、センサ31′が帯状体2′の幅方向寸法を検出し、この幅方向寸法に基づいて規制部材20′どうしの間隔を変更部32′によって自動的に変更してもよい。この場合には、さまざまな幅方向寸法の帯状体2′に対して、規制部材20′どうしの相対配置を自動的に変更して適切な間隔を設定することができ、帯状体2′の安定搬送および破損抑制の両立に寄与する。
【0060】
[II.第二実施形態]
つぎに、
図6および
図7を参照して、第二実施形態を説明する。
本実施形態の噴霧装置1″は、搬送方向に周回する無端ベルト20″が規制部材として設けられている。なお、ここでいう相違点を除いては上述した第一実施形態およびその変形例と同様の構成であり、これらについての詳細な説明は省略する。
【0061】
[1.構成]
無端ベルト20″は、駆動源290″(
図7参照)によって回転駆動される駆動ローラ291″および従動する従動ローラ292″からなる一対の回転ローラ29″に巻き掛けられている。この無端ベルト20″は、駆動源290″で駆動ローラ291″が駆動されて回転することで、搬送される帯状体2″に対面する部位(以下「対面部」という)23″が搬送方向に周回する。
なお、
図7には、駆動ローラ291″のそれぞれに連結された駆動源290″を例示する。これらの駆動源290″は、同期して等速で回転するものとする。ただし、各駆動ローラ291″どうしが等速に回転するようにギヤ機構やリンク機構などを介して連結したうえで、一つの駆動源を用いてもよい。
【0062】
図7に示すように、対面部23″は、上述した延在部23と同様に、搬送方向に延びるとともに幅方向にやや傾斜して設けられている。そのため、対面部23″の周回速度V
Rは、搬送方向に沿う速度成分V
RYと幅方向に沿う速度成分V
RZとに分解することができる。ここでは、前者の速度成分V
RYが帯状体2″の搬送速度V
Cと等しく(V
RY=V
C)またはほぼ等しく(V
RY≒V
C)設定されている。
このように周回速度V
Rを設定するのは、後述するように対面部23″が帯状体2″に接触した際に、この接触が搬送抵抗となるのを抑制するためである。搬送方向に沿う速度成分V
RYと帯状体2″の搬送速度V
Cとの速度差が小さいほど、搬送抵抗が生じにくいが、必ずしもこれらの速度差(V
C−V
RY)は、ゼロ(V
RY=V
C)でなくてもよい。
【0063】
[2.作用および効果]
上述したように無端ベルト20″の対面部23″が搬送方向に周回することから、対面部23″に帯状体2″が接触した際に、搬送方向の抵抗を低減させることができる。そのため、帯状体2″の損傷を抑えることができる。詳細には、対面部23″の周回速度V
Rのうち搬送方向に沿う速度成分V
RYが帯状体2″の搬送速度V
Cと等しいまたはほぼ等しいことから、上記した作用および効果を確実に得ることができる。
【0064】
そのほか、一対の回転ローラ29″の双方が従動ローラであってもよい。すなわち、無端ベルト20″を周回させる駆動源を省略してもよい。この場合には、無端ベルト20″に帯状体2″が接触することで、無端ベルト20″が帯状体2″に連れ回される。よって、搬送される帯状体2″に対する無端ベルト20″の相対速度を抑えることができ、帯状体2″の損傷抑制に寄与する。
【0065】
[III.その他]
最後に、その他の変形例について述べる。
規制部材のそれぞれは、
図3に例示するように幅方向の一方(Z
1方向側)に傾斜する配向に限らず、幅方向の他方(Z
2方向側)に傾斜して配向されてもよいし、幅方向の一方および他方に傾斜する配向が混在していてもよい。たとえば、幅方向に隣接する規制部材がV字状をなすように、幅方向の一方および他方に交互に傾斜して配向されてもよい。規制部材をV字状に配向する場合には、帯状体のシワの発生や紙切れのリスクを抑えるために、傾斜角度「θ」を小さくすることが好ましい。このように幅方向における規制部材の傾斜方向を混在させることによっても、帯状体のばたつきを抑えることができる。
【0066】
上述した規制部材は、幅方向に傾斜せずに、搬送方向と平行に設けられてもよい。つまり、傾斜角度「θ」が「0(0°)」であってもよい。この場合には、規制部材の形状や配向を簡素化することができ、装置の製造コストの低減に寄与する。
また、上述した規制部材は、少なくとも単数が設けられていればよい。この場合には、規制部材の数を抑えて簡素な構造とすることができ、装置の組立コストや製造コストの低減に寄与する。
【0067】
さらに、規制部材の延在部や対面部は、少なくとも帯状体に対向していればよく、平面状に限らず、凹面状や凸面状に対向していてもよい。そのうえ、延在部や対面部は、搬送方向に延びる長尺状に限らず、水平方向に延びていていもよいし、逆に、長尺状でなくてもよい。このような規制部材によっても帯状体のばたつきを抑えることができる。
また、噴霧室を省略し、開放された空間で薬剤が帯状体に噴霧されてもよい。この場合には、噴霧された薬剤が飛散しうるものの、装置構成を簡素にすることができ、装置コストを低減させることができる。
そのほか、搬送方向は、鉛直方向に限定されず、たとえば水平方向であってもよい。この場合には、搬送方向に応じて、幅方向や厚み方向をはじめ、通過口の配設箇所や規制部材の配置が設定される。