特許第6729404号(P6729404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6729404車載用電源装置の故障検出装置及び車載用電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6729404
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】車載用電源装置の故障検出装置及び車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200713BHJP
【FI】
   H02M3/155 C
   H02M3/155 W
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-1498(P2017-1498)
(22)【出願日】2017年1月9日
(65)【公開番号】特開2018-113740(P2018-113740A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 敦志
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−135347(JP,A)
【文献】 特開平8−29470(JP,A)
【文献】 特開2010−57244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電路と第2導電路とに接続されるとともに前記第1導電路及び前記第2導電路の一方の導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する動作を少なくとも行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、複数の検出対象位置で生じる電流又は電圧の異常を検出する複数の異常検出回路を備えるとともに各々の前記異常検出回路が電流又は電圧の異常を検出した場合に異常検出信号を出力する異常検出部と、を有する車載用電源装置の故障を検出する故障検出装置であって、
各々の前記異常検出回路に対して異常時の動作を指示する検査用指示信号を、共通信号線を介して出力する信号出力部と、
前記共通信号線から分岐する複数の分岐信号線を備え、前記信号出力部から前記共通信号線に出力された前記検査用指示信号を、各々の前記分岐信号線によって各々の前記異常検出回路に伝送する信号分配部と、
前記信号出力部が前記共通信号線を介して前記検査用指示信号を出力したときに各々の前記異常検出回路から出力される信号に基づき、各々の前記異常検出回路が故障であるか否かをそれぞれ判定する判定部と、
を有する車載用電源装置の故障検出装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、複数の前記異常検出回路として、前記電圧変換部の出力側の導電路の電流の異常を検出する出力電流異常検出回路と前記出力側の導電路の電圧の異常を検出する出力電圧異常検出回路とを備え、
前記信号分配部は、前記信号出力部から前記共通信号線に出力された前記検査用指示信号を、少なくとも前記出力電流異常検出回路と前記出力電圧異常検出回路とに分配する請求項1に記載の車載用電源装置の故障検出装置。
【請求項3】
前記電圧変換部は、前記第1導電路に電気的に接続されたスイッチング素子からなる第1素子と、前記第1導電路と前記第1導電路の電位よりも低い所定の基準電位に保たれる基準導電路との間に電気的に接続されたスイッチング素子又はダイオードからなる第2素子と、前記第1素子及び前記第2素子と前記第2導電路との間に電気的に接続されたインダクタとを備え、
前記異常検出部は、前記異常検出回路として前記第2素子と前記基準導電路との間を流れる電流の異常を検出する基準導電路側の異常検出回路を備え、
前記信号分配部は、前記信号出力部から前記共通信号線に出力された前記検査用指示信号を、少なくとも前記基準導電路側の異常検出回路に分配する請求項1又は請求項2に記載の車載用電源装置の故障検出装置。
【請求項4】
前記車載用電源装置は、前記電圧変換部が複数設けられ、
前記異常検出部は、各々の前記電圧変換部にそれぞれ対応付けて1又は複数の前記異常検出回路が設けられ、
前記信号分配部は、前記信号出力部から前記共通信号線に出力された前記検査用指示信号を、各々の前記電圧変換部に対応付けられた前記異常検出回路にそれぞれ分配する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車載用電源装置の故障検出装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、
複数の前記検出対象位置にそれぞれ対応した複数の信号伝送路と、各々の前記検出対象位置での電圧又は電流に応じた電圧信号を各々の前記信号伝送路にそれぞれ印加する複数の電圧信号入力部と、
複数の前記電圧信号入力部にそれぞれ対応する複数の比較部と、
を備え、
前記比較部は、対応する前記電圧信号入力部によって対応する前記信号伝送路に印加された入力電圧を基準電圧と比較し、前記入力電圧と基準電圧とが所定の正常関係である場合に正常信号を出力し、前記入力電圧と基準電圧とが前記正常関係ではない異常関係である場合に異常信号を出力し、
前記信号分配部は、前記信号出力部から前記検査用指示信号が出力された場合に各々の前記比較部への入力経路である各々の前記信号伝送路に対し、基準電圧との関係が異常関係となる電圧を印加する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用電源装置の故障検出装置。
【請求項6】
前記電圧変換部と、前記制御部と、前記異常検出部と、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の故障検出装置とを含む車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電源装置の故障検出装置及び車載用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載用の電源装置の一例が開示され、この電源装置を保護するための保護装置が併せて開示されている。特許文献1で開示される電源装置は、入力された直流電圧を昇圧又は降圧して出力するように動作し、出力電圧が設定された目標電圧となるように制御を行う。そして、保護装置は、電源装置において過電流が生じているか否かを判定する判定手段を備えており、判定手段によって過電流が流れていると判定された場合に、電子機器の動作を停止させるように制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−100240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載用電源装置は、過電流や過電圧などの異常状態を検出することを目的とした異常検出回路が搭載されることが多いが、この種の異常検出回路は、基本的に電源装置内で異常状態が発生したときに動作するものであるため、動作頻度が極めて低いという特徴がある。例えば、電源装置において長期間にわたって異常が発生しないと、異常検出回路が動作しないまま長い期間が経過してしまうことになる。
【0005】
しかし、異常検出回路の動作停止期間(異常が発生するまで待機する期間)が長くなるほど、その動作停止期間内に異常検出回路自体が故障する可能性が高まる。このように動作停止期間に異常検出回路自体が故障してしまうと、異常検出回路によって検出されるべき異常状態がその後に電源装置内で発生しても、その異常状態を検出できないまま放置されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に基づいてなされたものであり、車載用電源装置で生じる異常を検出し得る複数の検出回路の少なくともいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定し得る故障検出装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、
第1導電路と第2導電路とに接続されるとともに前記第1導電路及び前記第2導電路の一方の導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する動作を少なくとも行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、複数の検出対象位置で生じる電流又は電圧の異常を検出する複数の異常検出回路を備えるとともに各々の前記異常検出回路が電流又は電圧の異常を検出した場合に異常検出信号を出力する異常検出部と、を有する車載用電源装置の故障を検出する故障検出装置であって、
各々の前記異常検出回路に対して異常時の動作を指示する検査用指示信号を、共通信号線を介して出力する信号出力部と、
前記共通信号線から分岐する複数の分岐信号線を備え、前記信号出力部から前記共通信号線に出力された前記検査用指示信号を、各々の前記分岐信号線によって各々の前記異常検出回路に伝送する信号分配部と、
前記信号出力部が前記共通信号線を介して前記検査用指示信号を出力したときに各々の前記異常検出回路から出力される信号に基づき、各々の前記異常検出回路が故障であるか否かをそれぞれ判定する判定部と、
を有する。
【0008】
第2の発明である車載用電源装置は、前記電圧変換部と、前記制御部と、前記異常検出部と、前記故障検出装置とを含む。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明の故障検出装置では、信号出力部が、共通信号線を介して検査用指示信号(各々の異常検出回路に対して異常時の動作を指示する信号)を出力する。そして、信号分配部は、信号出力部から共通信号線に出力された検査用指示信号を複数の前記分岐信号線によって各々の異常検出部に伝送する。このような構成であるため、実際には各異常検出回路による検出対象位置に異常が生じていないときでも複数の異常検出回路に異常時の動作を行わせることができ、更に判定部を有するため、このときに各々の異常検出回路から出力される信号に基づき、各々の異常検出回路が故障であるか否かをそれぞれ判定することができる。しかも、複数の異常検出回路に対して一斉に異常時の動作を指示することができ、これら異常検出回路に検査用の動作を迅速に行わせることができるため、複数の異常検出回路の少なくともいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0010】
第2の発明の車載用電源装置は、第1の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図2図2は、実施例1の車載用電源装置における故障検出装置を概略的に示すブロック図である。
図3図3は、図2の故障検出装置の具体例を簡略的に示すブロック図である。
図4図4は、異常検出回路及びその周辺構成を例示する回路図である。
図5図5は、制御部で実行される異常検出制御の流れを例示するフローチャートである。
図6図6は、制御部で実行される故障検出制御の流れを例示するフローチャートである。
図7図7は、実施例2の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図8図8は、他の実施例の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、発明の望ましい例を示す。
【0013】
異常検出部は、複数の異常検出回路として電圧変換部の出力側の導電路の電流の異常を検出する出力電流異常検出回路と出力側の導電路の電圧の異常を検出する出力電圧異常検出回路とを備えたものであってもよい。信号分配部は、信号出力部から共通信号線に出力された検査用指示信号を、少なくとも出力電流異常検出回路と出力電圧異常検出回路とに分配する構成であってもよい。
【0014】
このように構成された故障検出装置は、出力側の導電路の電流の異常を検出する異常検出回路(出力電流異常検出回路)と、出力側の導電路の電圧の異常を検出する異常検出回路(出力電圧異常検出回路)とを一斉に検査することができ、重要な位置の異常を検出し得る異常検出回路のいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0015】
電圧変換部は、第1導電路に電気的に接続されたスイッチング素子からなる第1素子と、第1導電路と第1導電路の電位よりも低い所定の基準電位に保たれる基準導電路との間に電気的に接続されたスイッチング素子又はダイオードからなる第2素子と、第1素子及び第2素子と第2導電路との間に電気的に接続されたインダクタとを備えたものであってもよい。異常検出部は、異常検出回路として第2素子と基準導電路との間を流れる電流の異常を検出する基準導電路側の異常検出回路を備えたものであってもよい。信号分配部は、信号出力部から共通信号線に出力された検査用指示信号を、少なくとも基準導電路側の異常検出回路に分配する構成であってもよい。
【0016】
このように構成された故障検出装置は、基準導電路側の異常検出回路を他の異常検出回路とともに一斉に検査することができ、重要な位置の異常を検出し得る異常検出回路に故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0017】
車載用電源装置は、電圧変換部が複数設けられたものであってもよい。異常検出部は、各々の電圧変換部にそれぞれ対応付けて1又は複数の異常検出回路が設けられたものであってもよい。信号分配部は、信号出力部から共通信号線に出力された検査用指示信号を、各々の電圧変換部に対応付けられた異常検出回路にそれぞれ分配する構成であってもよい。
【0018】
このように構成された故障検出装置は、電圧変換部を複数備えて多相式として構成された車載用電源装置において、複数の電圧変換部にそれぞれ対応付けられた複数の異常検出回路を一斉に検査することができ、異常検出回路の数が多くなりやすい多相式の電源装置であっても、異常検出回路に故障が生じているか否かをより短時間で判定することができる。
【0019】
異常検出部は、複数の検出対象位置にそれぞれ対応した複数の信号伝送路と、各々の検出対象位置での電圧又は電流に応じた電圧信号を各々の信号伝送路にそれぞれ印加する複数の電圧信号入力部と、複数の電圧信号入力部にそれぞれ対応する複数の比較部と、を備えたものであってもよい。比較部は、対応する電圧信号入力部によって対応する信号伝送路に印加された入力電圧を基準電圧と比較し、入力電圧と基準電圧とが所定の正常関係である場合に正常信号を出力し、入力電圧と基準電圧とが正常関係ではない異常関係である場合に異常信号を出力する構成であってもよい。信号分配部は、信号出力部から検査用指示信号が出力された場合に各々の比較部への入力経路である各々の信号伝送路に対し、基準電圧との関係が異常関係となる電圧を印加する構成であってもよい。
【0020】
このように構成された故障検出装置は、信号伝送路(検出対象位置の異常時に異常電圧が印加される伝送路)に印加される入力電圧を基準電圧と比較して異常を判定する異常検出回路を複数備えた車載用電源装置において、簡易な構成で複数の比較部に異常発生時の動作を行わせることができ、複数の異常検出回路を迅速かつ効率的に検査することができる。
【0021】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載用の電源システム100は、車載用の電源部として構成される第1電源部91及び第2電源部92と、車載用電源装置1(以下、電源装置1ともいう)とを備え、車両に搭載された負荷93,94に電力を供給し得るシステムとして構成されている。負荷93,94は、車載用電気部品であり、その種類や数は限定されない。
【0022】
第1電源部91は、例えば、リチウムイオン電池、或いは電気二重層キャパシタ等の蓄電手段によって構成され、第1の所定電圧を発生させるものである。例えば、第1電源部91の高電位側の端子は48Vに保たれ、低電位側の端子はグラウンド電位(0V)に保たれている。第1電源部91の高電位側の端子は、車両内に設けられた配線部81に電気的に接続されており、第1電源部91は、配線部81に対して所定電圧を印加する。第1電源部91の低電位側の端子は、車両内のグラウンド部に電気的に接続されている。配線部81は、電源装置1の入力側端子21Aに接続されており、入力側端子21Aを介して第1導電路21と導通している。
【0023】
第2電源部92は、例えば、鉛蓄電池等の蓄電手段によって構成され、第1電源部91で発生する第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧を発生させるものである。例えば、第2電源部92の高電位側の端子は12Vに保たれ、低電位側の端子はグラウンド電位(0V)に保たれている。第2電源部92の高電位側の端子は、車両内に設けられた配線部82に電気的に接続されており、第2電源部92は、配線部82に対して所定電圧を印加する。第2電源部92の低電位側の端子は車両内のグラウンド部に電気的に接続されている。配線部82は、電源装置1の出力側端子22Aに接続されており、出力側端子22Aを介して第2導電路22と導通している。
【0024】
基準導電路83は、車両のグラウンド部として構成され、一定のグラウンド電位(0V)に保たれている。この基準導電路83には、第1電源部91の低電位側の端子と第2電源部92の低電位側の端子とが導通し、更に、後述する第2素子12のソースが第3導電路23及びグラウンド側端子23Aを介して電気的に接続されている。
【0025】
電源装置1は、車両内に搭載されて使用される車載用の降圧型DCDCコンバータとして構成されており、入力側の導電路(第1導電路21)に印加された直流電圧を降圧して出力側の導電路(第2導電路22)に出力する構成をなすものである。
【0026】
電源装置1は、主として、第1導電路21、第2導電路22、第3導電路23、電圧変換部10、制御部30、異常検出部36、信号伝送部70などを備える。そして、異常検出部36、信号伝送部70、制御部30を備えた形で故障検出装置3が構成されている。
【0027】
第1導電路21は、相対的に高い電圧が印加される一次側(高圧側)の電源ラインとして構成されている。第1導電路21は、配線部81を介して第1電源部91の高電位側の端子に導通するとともに、第1電源部91から所定の直流電圧が印加される構成をなす。図1の構成では、第1導電路21の端部に入力側端子21Aが設けられ、この入力側端子21Aに配線部81が電気的に接続されている。
【0028】
第2導電路22は、相対的に低い電圧が印加される二次側(低圧側)の電源ラインとして構成されている。第2導電路22は、配線部82を介して第2電源部92の高電位側の端子に導通するとともに、第2電源部92から第1電源部91の出力電圧よりも小さい直流電圧が印加される構成をなす。図1の構成では、第2導電路22の端部に出力側端子22Aが設けられ、この出力側端子22Aに配線部82が電気的に接続されている。
【0029】
電圧変換部10は、第1導電路21と第2導電路22とに接続されるとともに第1導電路21及び第2導電路22の一方の導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する動作を少なくとも行うものである。以下では、電圧変換部10が、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に出力する動作を行う例について説明する。
【0030】
電圧変換部10は、第1導電路21と第2導電路22との間に設けられ、第1導電路21に電気的に接続された半導体スイッチング素子として構成されるハイサイド側の第1素子11と、第1導電路21と基準導電路83(第1導電路21の電位よりも低い所定の基準電位に保たれる導電路)との間に電気的に接続された半導体スイッチング素子として構成されるローサイド側の第2素子12と、第1素子11及び第2素子12と第2導電路22との間に電気的に接続されたインダクタ14とを備える。電圧変換部10は、スイッチング方式の降圧型DCDCコンバータの要部をなし、第1素子11のオン動作とオフ動作との切り替えによって第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に出力する降圧動作を行い得る。なお、図示は省略するが、第1導電路21と第3導電路23との間には図示しない入力側コンデンサが設けられ、第2導電路22と第3導電路23との間には図示しない出力側コンデンサが設けられている。
【0031】
第1素子11及び第2素子のいずれも、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、ハイサイド側の第1素子11のドレインには、第1導電路21の一端が接続されている。第1素子11のドレインは、図示しない入力側コンデンサの一方側の電極に電気的に接続されるとともに第1導電路21及び配線部81を介して第1電源部91の高電位側端子にも電気的に接続され、これらとの間で導通しうる。また、第1素子11のソースには、ローサイド側の第2素子12のドレイン及びインダクタ14の一端が電気的に接続され、これらとの間で導通し得る。第1素子11のゲートには、制御部30に設けられた駆動回路34(図2)からの駆動信号及び非駆動信号が入力されるようになっており、制御部30からの信号に応じて第1素子11がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0032】
ローサイド側の第2素子12のソースには、第3導電路23が接続されている。第3導電路23は、第2素子12のソースとグラウンド側端子23Aとの間の導電路であり、この第3導電路23には、図示しない入力側コンデンサ及び出力側コンデンサのそれぞれの他方側の電極が電気的に接続されている。ローサイド側の第2素子12のゲートにも、制御部30からの駆動信号及び非駆動信号が入力されるようになっており、制御部30からの信号に応じて第2素子12がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0033】
インダクタ14は、第1素子11と第2素子12との間の接続部に一端が接続され、その一端は第1素子11のソース及び第2素子12のドレインに電気的に接続されている。インダクタ14の他端は、第2導電路22(具体的には、第2導電路22において、電流検出部44よりも電圧変換部10側の部分)に接続されている。
【0034】
スイッチング素子15は、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、逆流保護用のスイッチング素子として機能し得る。スイッチング素子15のドレインには、第2導電路22における一方側の経路が接続され、スイッチング素子15のソースには、第2導電路22における他方側の経路が接続されている。スイッチング素子15のゲートには、制御部30からのオン信号及びオフ信号が入力されるようになっており、制御部30からの信号に応じてスイッチング素子15がオン状態とオフ状態とに切り替わるようになっている。
【0035】
異常検出部36は、第1検出部40と、第2検出部50と、第3検出部60とを備え、電源装置1の各検出対象位置における電圧又は電流の検出、及び検出値が異常であるか否かを判定する機能を有する。異常検出部36は、例えば図2のような構成をなしており、図1には、簡略的に示している。この異常検出部36は、複数の異常検出回路42,52,62が、複数の検出対象位置で生じる電流又は電圧の異常を検出するように機能する。
【0036】
図2のように、第1検出部40は、電流検出部44と異常検出回路42とを備える。電流検出部44は、電圧信号入力部として機能し、第2導電路22を流れる電流Ioutを示す値を出力する。具体的には、電流検出部44は、第2導電路22に介在する抵抗部Raの両端の電位差ΔVaを示すアナログ電圧信号、又は両端の電位差ΔVaを増幅したアナログ電圧信号を出力する。電流検出部44から出力されるアナログ電圧信号(出力電流Ioutを示す電圧信号)は信号伝送路46に印加され、異常検出回路42及び制御回路32に入力される。
【0037】
第2検出部50は、電圧検出部54と異常検出回路52とを備える。電圧検出部54は、電圧信号入力部として機能し、第2導電路22の電圧Voutを示す値を信号伝送路56に印加する。電圧検出部54は、第2導電路22の電圧Voutを示す値を信号伝送路56に印加し得る公知の電圧検出回路であればよく、例えば、第2導電路22の電圧を分圧して信号伝送路56に印加するような分圧回路として構成されていてもよく、第2導電路22と信号伝送路56とを電気的に接続して導通させる回路であってもよい。
【0038】
第3検出部60は、電流検出部64と異常検出回路62とを備える。電流検出部64は、電圧信号入力部として機能し、第3導電路23を流れる電流Igndを示す値を出力する。具体的には、電流検出部64は、第2導電路22に介在する抵抗部Rbの両端の電位差ΔVbを示すアナログ電圧信号、又は両端の電位差ΔVbを増幅したアナログ電圧信号を出力する。電流検出部64から出力されるアナログ電圧信号(第2素子12と基準導電路83との間を流れる電流Igndを示す電圧信号)は信号伝送路66に印加され、異常検出回路62及び制御回路32に入力される。
【0039】
異常検出部36を構成する第1検出部40、第2検出部50、第3検出部60は、異常検出回路42,52,62のそれぞれが、例えば、図4のような構成をなしている。図4では、異常検出回路62の構成を代表的に示しているが、異常検出回路42,52も同様の構成をなす。図4で示す異常検出回路62は、コンパレータ回路として構成され、信号伝送路66に印加される電圧が閾値を超える場合には異常検出信号を出力し、信号伝送路66に印加される電圧が閾値未満の場合には異常検出信号を出力しないようになっている。なお、図4で示す異常検出回路はあくまで一例であり、異常検出回路42,52,62のいずれも、対応する信号伝送路に印加された入力電圧が閾値を超える場合に所定の異常検出信号を出力し、超えない場合には異常検出信号を出力しないようになっていればよい。異常検出部36は、複数の異常検出回路42,52,62のいずれかが電流又は電圧の異常を検出した場合に、制御部30に対して異常検出信号を出力するように動作する。
【0040】
異常検出回路42は、出力電流異常検出回路の一例に相当し、出力側の導電路である第2導電路22の電流の異常を検出する。具体的には、図3のように、異常検出回路42は、、対応する電圧信号入力部である電流検出部44から信号伝送路46に印加される電圧(第2導電路22の電流に応じた電圧)を入力電圧として、この入力電圧と基準電圧とを比較部42Bによって比較し、入力電圧が基準電圧よりも高い場合には比較部42Bが所定の異常検出信号を出力し、入力電圧が基準電圧以下である場合には所定の正常信号を出力する。つまり、第2導電路22を流れる電流が閾値電流を超える場合に、比較部42Bから異常検出信号が出力される。
【0041】
異常検出回路52は、出力電圧異常検出回路の一例に相当し、出力側の導電路である第2導電路22の電圧の異常を検出する。具体的には、異常検出回路52は、対応する電圧信号入力部である電圧検出部54から信号伝送路56に印加される電圧(第2導電路22の電圧に応じた電圧)を入力電圧として、この入力電圧と基準電圧とを比較部52Bによって比較し、入力電圧が基準電圧よりも高い場合には比較部52Bが所定の異常検出信号を出力し、入力電圧が基準電圧以下である場合には所定の正常信号を出力する。つまり、第2導電路22における検出位置の電圧が閾値電圧を超える場合に、比較部52Bから異常検出信号が出力される。
【0042】
異常検出回路62は、基準導電路側の異常検出回路の一例に相当し、第2素子12と基準導電路83との間を流れる電流の異常を検出する。具体的には、異常検出回路62は、対応する電圧信号入力部である電流検出部64から信号伝送路66に印加される電圧(第3導電路23の電流に応じた電圧)を入力電圧として、この入力電圧と基準電圧とを比較部62Bによって比較し、入力電圧が基準電圧よりも高い場合には比較部62Bが所定の異常検出信号を出力し、入力電圧が基準電圧以下である場合には所定の正常信号を出力する。つまり、第3導電路23を流れる電流が閾値電流を超える場合に、比較部62Bから異常検出信号が出力される。
【0043】
このように、異常検出回路42,52,62の各々は、対応する電圧信号入力部から信号伝送路に印加された電圧を入力電圧として比較部によって基準電圧と比較し、入力電圧が基準電圧を超える場合には異常検出信号を出力し、入力電圧が基準電圧以下である場合には正常信号を出力するように動作する。
【0044】
図2のように、制御部30は、制御回路32と駆動回路34とを備え、電圧変換部10を制御する機能を有する。制御回路32は、例えば、マイクロコンピュータとして構成され、様々な演算処理を行うCPU、プログラム等の情報を記憶するROM、一時的に発生した情報を記憶するRAM、入力されたアナログ電圧をデジタル値に変換するA/D変換器などを備える。A/D変換器には、電流検出部44,64からの各検出信号(検出電圧に対応したアナログ電圧信号)や、電圧検出部54からの検出信号(検出電流に対応したアナログ電圧信号)が与えられる。なお、制御回路32において、信号出力部32A、判定部32B、演算部32Cとして機能する各部分は、マイクロコンピュータにおけるソフトウェア処理によって実現されてもよく、ハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0045】
制御回路32は、電圧変換部10に降圧動作を行わせる場合に、電圧検出部54によって第2導電路22の電圧Voutを検出しながら、第2導電路22に印加される電圧を設定された目標値に近づけるようにフィードバック演算を行い、PWM信号を発生させる。具体的には、制御回路32において、演算部32Cとして機能する部分が、電圧検出部54によって検出される第2導電路22の電圧Voutを監視しながら短い時間間隔でフィードバック演算を繰り返す。そして、演算部32Cは、電圧検出部54によって検出される第2導電路22の電圧が目標値よりも小さければ目標値に近づけるようにフィードバック演算によってデューティを増大させ、目標値よりも大きければ目標値に近づけるようにフィードバック演算によってデューティを減少させるようにデューティを調整する。
【0046】
駆動回路34は、制御回路32から与えられたPWM信号に基づいて、第1素子11及び第2素子12のそれぞれを各制御周期で交互にオンするためのオン信号を、第1素子11及び第2素子12のゲートに印加する。第1素子11のゲートに印加されるオン信号は、第2素子12のゲートに与えられるオン信号に対して位相が略反転しており且つ所謂デッドタイムが確保されたオン信号が与えられる。
【0047】
このように構成される電源装置1は、同期整流方式の降圧型DCDCコンバータとして機能し、ローサイド側の第2素子12のオン動作とオフ動作との切り替えを、ハイサイド側の第1素子11の動作と同期させて行うことで、第1導電路21に印加された直流電圧を降圧し、第2導電路22に出力する。具体的には、制御部30の制御により、第1素子11をオン状態とし、第2素子12をオフ状態とした第1状態と、第1素子11をオフ状態とし、第2素子12をオン状態とした第2状態とが交互に切り替えられる。第1状態と第2状態との切り替えを繰り返すことで、第1導電路21に印加された直流電圧を降圧し、第2導電路22に出力する。第2導電路22の出力電圧は、第1素子11のゲートに与えるPWM信号のデューティ比に応じて定まる。なお、図1図2では、第1素子11のゲートに与える信号をS1として概念的に示し、第2素子12のゲートに与える信号をS2として概念的に示している。
【0048】
制御回路32は、電流検出部44から出力される検出値に基づき第2導電路22を流れる電流の状態が逆流状態であるか否かを判定する。第2導電路22を流れる電流の正常状態とは、スイッチング素子15のソース側からドレイン側に電流が流れる状態であり、逆流状態とは、スイッチング素子15のドレイン側からソース側に電流が流れる状態である。制御回路32は、例えばスイッチング素子15をオン状態で維持しながら電圧変換部10を駆動させ、その駆動の最中に第2導電路22において逆流状態が発生した場合、スイッチング素子15をオフ状態に切り替えるように保護動作を行う。なお、図1図2では、スイッチング素子15のゲートに与える信号をS3として概念的に示す。
【0049】
ここで、制御部30によって実行される基本制御について説明する。
電源装置1の制御部30は、所定の開始条件の成立に応じて電圧変換部10を駆動し、電圧変換動作を行わせる。具体的には、例イグニッションスイッチがオン状態である場合に外部装置から制御部30に対してイグニッションオン信号が与えられるようになっており、イグニッションスイッチがオフ状態である場合に外部装置から制御部30に対してイグニッションオフ信号が与えられるようになっている。制御部30は、例えばイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わったことを開始条件として電圧変換部10に制御信号を与え、電圧変換部10に電圧変換動作を行わせる。具体的には、電圧検出部54によって監視される第2導電路22の電圧に基づき、第2導電路22の電圧を所望の目標電圧(基準導電路83の電圧よりも大きい所定電圧値であり、例えば第2電源部92の満充電時の出力電圧よりも少し大きい値)とするように、フィードバック演算を繰り返してPWM信号のデューティを調整しつつ電圧変換部10に降圧動作を行わせる。
【0050】
次に、制御部30によって実行される異常検出制御について説明する。
制御部30は、上述した基本制御の実行中に、図5のような異常検出制御を繰り返し行う。異常検出制御を行う場合、まずステップS11において異常検出回路42,52,62のいずれかから異常検出信号が出力されているか否かを制御回路32が判定する。異常検出回路42,52,62のいずれからも異常検出信号が出力されていない場合(ステップS11にてNoの場合)には、図5の異常検出制御を終了した後、即座に図5の異常検出制御を開始するように繰り返す。異常検出回路42,52,62のいずれかから異常検出信号が出力されている場合(ステップS11にてYesの場合)には、制御回路32が駆動回路34に対して異常停止要求を与える(ステップS12)。ステップS12の後のステップS13では、異常停止要求を受けた駆動回路34が第1素子11、第2素子12、スイッチング素子15に与える信号S1,S2,S3をいずれもオフ信号とし、電圧変換部10の動作を停止させる。このように、異常検出回路42,52,62のいずれかで異常が検出され、異常検出信号が出力された場合には、第1素子11、第2素子12、スイッチング素子15をオフ動作させ、電圧変換部10を停止させることができる。
【0051】
ここで、故障検出装置3の動作について説明する。
図2のように、故障検出装置3は、複数の異常検出回路42,52,62を備えた異常検出部36と、制御部30と、信号伝送部70とを含んだ構成をなす。故障検出装置3は、制御部30が主体となり、図6のような流れで故障検出制御を行う。
【0052】
制御部30は、上述した基本制御及び異常検出制御を行い得る構成となっており、更に、所定の検査時期には、図6で示す故障検出制御を実行し、異常検出回路42,52,62が故障しているか否かを判定するように動作する。なお、所定の検査時期の例は様々に考えられるが、例えば、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった直後であってもよく、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態に切り替わった直後であってもよい。或いは、制御部30が上記基本制御を行っている最中の所定タイミングであってもよい。
【0053】
制御部30は、検査時期の到来に応じて図6の制御を開始した場合、まず、ステップS21の処理を実行する。具体的には、制御部30において信号出力部32Aとして機能する部分が、ステップS21の処理の実行時に、複数の異常検出回路42,52,62に対して異常時の動作を指示する検査用指示信号を、共通信号線71を介して出力するように動作する。検査用指示信号は、例えば所定電圧のハイレベル信号である。信号出力部32Aから出力する検査用指示信号の電圧は、例えば第1電源部91及び第2電源部92の出力電圧よりも低く且つ比較部42B,52B,62Bで用いる各基準電圧よりも高い電圧とする。なお、信号出力部32Aは、検査時期でない場合、共通信号線71に印加する電圧を所定のローレベル(例えば、比較部42B,52B,62Bで用いる各基準電圧よりも大幅に低い電圧値)で維持する。
【0054】
信号出力部32Aが検査用指示信号を共通信号線71に出力すると、信号伝送部70は、この検査用指示信号を異常検出回路42,52,62の各々に伝送する。信号伝送部70は、共通信号線71と、この共通信号線に接続された信号分配部72とを備える。信号分配部72は、共通信号線71から分岐する複数の分岐信号線72A,72B,72Cを有し、制御部30(信号出力部32A)から共通信号線71に出力された検査用指示信号を、複数の分岐信号線72A,72B,72Cによって異常検出回路42(出力電流異常検出回路)と異常検出回路52(出力電圧異常検出回路)と異常検出回路62(基準導電路側の異常検出回路)とに分配する。なお、分岐信号線72A,72B,72Cの各々には、ダイオード42A,52A,62Aがそれぞれ設けられており、信号伝送路46,56,66から共通信号線71側に電流が流れないようになっている。
【0055】
比較部42B,52B,62Bで用いる各基準電圧は、電源装置1の正常動作時には、正常動作時に比較対象となる信号伝送路46,56,66の各々に印加される電圧よりも高くなるような値で設定される。また、比較部42B,52B,62Bで用いる各基準電圧は、電流検出部44,電圧検出部54,電流検出部64からの出力が基準電圧未満である場合において制御部30(信号出力部32A)から検査用指示信号が出力されたときの比較対象となる信号伝送路46,56,66の各々の電圧よりも低くなるような値で設定されている。つまり、信号分配部72は、共通信号線71に検査用指示信号が印加された場合に、各々の信号伝送路46,56,66の各々に対して、各々の電圧と比較される基準電圧よりも大きい電圧を印加するように検査用指示信号を分配する。
【0056】
このような構成であるため、制御部30(信号出力部32A)が検査用指示信号を共通信号線71に出力したときには、信号伝送路46,56,66の各々に基準電圧を超える電圧が印加され、異常検出回路42,52,62が故障しておらず正常に動作するのであれば、異常検出回路42,52,62の各々から異常検出信号が出力されることになる。
【0057】
ステップS21で信号出力部32Aが検査用指示信号を出力した後、制御部30において判定部32Bとして機能する部分は、ステップS22において、異常検出回路62(基準導電路側の異常検出回路)が異常を検知したか否か、即ち、異常検出回路62から異常検出信号が出力されているか否かを判定する。判定部32Bは、ステップS22において異常検出回路62から異常検出信号が出力されていないと判定した場合、ステップS23において、異常検出回路62(基準導電路側の異常検出回路)が故障であると判定する。
【0058】
判定部32Bは、ステップS22において異常検出回路62から異常検出信号が出力されていると判定した場合(ステップS22でYesの場合)、ステップS24において異常検出回路42(出力電流異常検出回路)が異常を検知したか否か、即ち、異常検出回路42から異常検出信号が出力されているか否かを判定する。判定部32Bは、ステップS24において異常検出回路42から異常検出信号が出力されていないと判定した場合、ステップS25において、異常検出回路42(出力電流異常検出回路)が故障であると判定する。
【0059】
判定部32Bは、ステップS24において異常検出回路42から異常検出信号が出力されていると判定した場合(ステップS24でYesの場合)、ステップS26において異常検出回路52(出力電圧異常検出回路)が異常を検知したか否か、即ち、異常検出回路52から異常検出信号が出力されているか否かを判定する。判定部32Bは、ステップS26において異常検出回路52から異常検出信号が出力されていないと判定した場合、ステップS27において、異常検出回路52(出力電圧異常検出回路)が故障であると判定する。
【0060】
判定部32Bは、ステップS26でYesとなる場合、又はステップS27の後、ステップS28において、異常検出回路42,52,62のいずれかが異常を検知したか否かを判定する。判定部32Bは、ステップS28において、いずれかが異常を検知したと判定した場合、即ち、ステップS23,S25,S27のいずれかの判定を行っている場合には、ステップS30において、「異常検出回路の故障あり」と判定する。一方、判定部32Bは、異常検出回路42,52,62のいずれも異常を検知していない場合、即ち、ステップS23,S25,S27のいずれの判定も行っていない場合には、ステップS29において、「全ての異常検出回路が正常」と判定する。なお、判定部32Bは、ステップS30の判定を行った場合、外部のECUなどに、異常検出回路の故障が発生している旨の情報を送信してもよく、その他のエラー対応動作(ランプや音声などによるエラー報知など)を行ってもよい。
【0061】
このように本構成では、制御回路32の少なくとも一部が判定部32Bとして機能し、信号出力部32Aが共通信号線71を介して検査用指示信号を出力したときに複数の異常検出回路42,52,62から出力される信号に基づき、異常検出回路42,52,62の各々が故障であるか否かをそれぞれ判定する。
【0062】
以下、本構成の効果を例示する。
上述した故障検出装置3では、制御回路32の少なくとも一部が信号出力部32Aとして機能し、共通信号線71を介して検査用指示信号(複数の異常検出回路42,52,62に対して異常時の動作を指示する信号)を出力する。そして、信号分配部72は、制御回路32から共通信号線71に出力された検査用指示信号を複数の分岐信号線72A,72B,72Cによって各々の異常検出回路42,52,62に伝送する。このような構成であるため、実際には各異常検出回路42,52,62による検出対象位置に異常が生じていないときでも複数の異常検出回路42,52,62に異常時の動作を行わせることができる。更に制御回路32の少なくとも一部が判定部32Bとして機能し、検査用指示信号の出力時に複数の異常検出回路42,52,62から出力される信号に基づき、各々の異常検出回路42,52,62が故障であるか否かをそれぞれ判定することができる。しかも、複数の異常検出回路42,52,62に対して一斉に異常時の動作を指示することができ、これら異常検出回路42,52,62に検査用の動作を迅速に行わせることができるため、複数の異常検出回路42,52,62の少なくともいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0063】
異常検出部36は、複数の異常検出回路として電圧変換部10の出力側の導電路(第2導電路22)の電流の異常を検出する出力電流異常検出回路としての異常検出回路42と出力側の導電路の電圧の異常を検出する出力電圧異常検出回路としての異常検出回路52とを備える。信号分配部72は、信号出力部に相当する制御回路32から共通信号線71に出力された検査用指示信号を、少なくとも出力電流異常検出回路(異常検出回路42)と出力電圧異常検出回路(異常検出回路52)とに分配する構成となっている。
【0064】
このように構成された故障検出装置3は、出力側の導電路(第2導電路22)の電流の異常を検出する出力電流異常検出回路(異常検出回路42)と、出力側の導電路の電圧の異常を検出する出力電圧異常検出回路(異常検出回路52)とを一斉に検査することができ、重要な位置の異常を検出し得る異常検出回路42,52のいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0065】
電圧変換部10は、第1導電路21に電気的に接続されたスイッチング素子からなる第1素子11と、第1導電路21と第1導電路21の電位よりも低い所定の基準電位に保たれる基準導電路83との間に電気的に接続されたスイッチング素子からなる第2素子12と、第1素子11及び第2素子12と第2導電路22との間に電気的に接続されたインダクタ14とを備えた構成をなす。異常検出部36は、第2素子12と基準導電路83との間を流れる電流の異常を検出する基準導電路側の異常検出回路(異常検出回路62)を備える。信号分配部72は、信号出力部に相当する制御回路32から共通信号線71に出力された検査用指示信号を、少なくとも基準導電路側の異常検出回路(異常検出回路62)に分配する構成をなす。
【0066】
このように構成された故障検出装置3は、基準導電路側の異常検出回路(異常検出回路62)を他の異常検出回路とともに一斉に検査することができ、重要な位置の異常を検出し得る異常検出回路62に故障が生じているか否かを、より短時間で判定することができる。
【0067】
異常検出部36は、複数の検出対象位置にそれぞれ対応した複数の信号伝送路46,56,66と、各々の検出対象位置での電圧又は電流に応じた電圧信号を信号伝送路46,56,66の各々にそれぞれ印加する複数の電圧信号入力部(電流検出部44、電圧検出部54、電流検出部64)と、それら複数の電圧信号入力部にそれぞれ対応する複数の比較部42B,52B,62Bと、を備える。比較部42B,52B,62Bの各々は、対応する電圧信号入力部(電流検出部44、電圧検出部54、電流検出部64の各々)の各々によって対応する信号伝送路46,56,66の各々に印加された入力電圧を基準電圧と比較し、入力電圧と基準電圧とが所定の正常関係である場合に正常信号を出力し、入力電圧と基準電圧とが正常関係ではない異常関係である場合に異常信号を出力する。信号分配部72は、信号出力部に相当する制御回路32から検査用指示信号が出力された場合に比較部42B,52B,62Bの各々への入力経路である信号伝送路46,56,66の各々に対し、基準電圧との関係が異常関係となる電圧を印加する。
【0068】
このように構成された故障検出装置3は、信号伝送路(検出対象位置の異常時に異常電圧が印加される伝送路)に印加される入力電圧を基準電圧と比較して異常を判定する異常検出回路を複数備えた車載用電源装置1において、簡易な構成で複数の比較部42B,52B,62Bに異常発生時の動作を行わせることができ、複数の異常検出回路42,52,62を迅速かつ効率的に検査することができる。
【0069】
<実施例2>
次に、実施例2について説明する。
図7で示す車載用の電源システム200は、電源装置201のみが図1で示す車載用の電源システム100と異なる。実施例2の電源装置201は、第1導電路21と第2導電路22との間に電圧変換部10を複数並列に設けた点のみが実施例1の電源装置1と比較したときの回路構成上の相違点であり、それ以外の回路構成は実施例1と同様である。なお、図7では、制御部30から、各々の電圧変換部10のスイッチング素子(第1素子11、第2素子12、スイッチング素子15)に接続される信号線の図示は省略している。
【0070】
図7で示す電源装置201は、第1素子11、第2素子12、インダクタ14とを備えた電圧変換部10が複数設けられ、それぞれの電圧変換部10が第1導電路21と第2導電路22との間に並列に設けられている。各相の電圧変換部10は、実施例1と同様の構成をなす。各々の電圧変換部10の第3導電路23はいずれもグラウンド部として構成された基準導電路83に電気的に接続され、グラウンド部との間で電流が流れる構成をなす。
【0071】
電源装置201では、各々の電圧変換部10の出力側導電路222A,222Bのそれぞれにおいて、実施例1と同様の第1検出部40及び第2検出部50がそれぞれ設けられ、これらは実施例1における第1検出部40及び第2検出部50(図2図3)と同様の構成をなし、それぞれと同様に動作する。また、各々の電圧変換部10の第3導電路23には、実施例1と同様の第3検出部60がそれぞれ設けられ、これらは実施例1における第3検出部60と同様に構成され、同様に動作する。
【0072】
このように異常検出部36は、電圧変換部10にそれぞれ対応付けて第1検出部40、第2検出部50、第3検出部60が設けられており、電圧変換部10にそれぞれ対応付けて複数の異常検出回路42,52,62が設けられている。この構成でも共通信号線71が制御部30に接続されており、この共通信号線71から複数の分岐信号線が分岐する。具体的には、異常検出回路42,52,62のそれぞれに接続する分岐信号線72A,72B,72Cが、複数の電圧変換部10の各々に対応するように複数セット設けられている。この構成でも、制御部30における制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)の少なくとも一部が信号出力部32A(図2)と同様に機能し、実施例1と同様の検査用指示信号(複数の異常検出回路に対して異常時の動作を指示する信号)を、共通信号線71を介して出力する。信号分配部72は、信号出力部に相当する制御部30内の制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)から共通信号線71に出力される検査用指示信号を、各々の電圧変換部10に対応付けられた異常検出回路42,52,62にそれぞれ分配する構成となっている。そして、この構成でも、制御部30における制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)の少なくとも一部が判定部32B(図2)と同様に機能し、当該制御回路が共通信号線を介して検査用指示信号を出力したときに複数の異常検出回路(各々の電圧変換部10に対応する複数の異常検出回路42,52,62)から出力される信号に基づき、実施例1と同様の方法で各々の異常検出回路が故障であるか否かをそれぞれ判定する。このように、本構成でも、異常検出部36、信号伝送部70、制御部30を備えた形で故障検出装置3が構成されている。
【0073】
このように構成された故障検出装置3は、電圧変換部10を複数備えて多相式として構成された車載用電源装置1において、複数の電圧変換部10にそれぞれ対応付けられた複数の異常検出回路42,52,62を一斉に検査することができ、異常検出回路42,52,62の数が多くなりやすい多相式の電源装置1であっても、異常検出回路42,52,62に故障が生じているか否かをより短時間で判定することができる。
【0074】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例や後述する実施例は矛盾しない範囲で組み合わせることが可能である。
【0075】
実施例1、2では、第2導電路22に第2電源部92が電気的に接続された構成を例示したが、実施例1、2又は実施例1、2を変更したいずれの例においても、第2導電路22に第2電源部92が電気的に接続されていなくてもよい。又は、第1導電路21に第1電源部91が電気的に接続されていなくてもよい。
【0076】
実施例1、2では、第2素子12がスイッチング素子として構成された同期整流方式の降圧型DCDCコンバータを例示したが、実施例1、2又は実施例1、2を変更したいずれの例においても、第2素子がダイオード(第1素子側にカソードが接続され基準導電路側にアノードが接続されたダイオード)として構成されたダイオード方式の降圧型DCDCコンバータであってもよい。
【0077】
実施例1、2では、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に出力する動作を行う電圧変換部10について例示したが、実施例1、2又は実施例1、2を変更したいずれの例においても、電圧変換部10は、第1導電路21に印加された電圧を昇圧して第2導電路22に出力する動作、或いは、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に出力する動作を行う昇圧型のDCDCコンバータであってもよい。或いは、第1導電路21に印加された電圧を昇圧又は降圧して第2導電路22に出力する動作と、第2導電路22に印加された電圧を昇圧又は降圧して第1導電路21に出力する動作とを行い得る双方向型のDCDCコンバータなどであってもよい。電圧変換部をいずれのタイプのDCDCコンバータとする場合でも、電流又は電圧の異常を検出する異常検出回路(図4で示す異常検出回路62と同様の回路)を複数の位置に設けることができ、上述した実施例と同様の方法で異常検出回路が故障であるか否かを一斉に検査することができる。
【0078】
実施例1、2では、異常検出回路42,52,62に設けられた比較部42B,52B,62Bは、信号伝送路に印加される入力電圧を基準電圧と比較し、入力電圧が基準電圧以下である関係を所定の正常関係とし、入力電圧が基準電圧よりも大きい関係を異常関係とし、入力電圧が基準電圧よりも大きい場合に異常検出信号を出力する構成であったが、実施例1、2又は実施例1、2を変更したいずれの例においても、入力電圧が基準電圧よりも大きく且つ入力電圧と基準電圧との差が所定値以上である関係を異常関係とし、そうでない場合を所定の正常関係とし、異常関係のときに異常検出信号を出力する構成であってもよい。
【0079】
実施例2では、多相式の電源装置201において、各々の電圧変換部10の出力側導電路222A,222Bのそれぞれに、実施例1と同様の第1検出部40及び第2検出部50がそれぞれ設けられた例を示したが、多相式の構成では、この例に限定されない。例えば、各々の電圧変換部10の出力側導電路222A,222Bではなく、図8のように、出力側導電路222A,222Bの両電流が流れる共通の出力側導電路(第2導電路22)に、実施例1と同様の第1検出部40及び第2検出部50がそれぞれ設けられていてもよい。これらは実施例1における第1検出部40及び第2検出部50(図2図3)と同様に動作する。なお、各々の電圧変換部10の第3導電路23には、実施例1と同様の第3検出部60がそれぞれ設けられ、これらは実施例1における第3検出部60と同様に構成され、同様に動作する。
この構成でも、制御部30における制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)の少なくとも一部が信号出力部32A(図2)と同様に機能し、実施例1と同様の検査用指示信号(複数の異常検出回路に対して異常時の動作を指示する信号)を、共通信号線71を介して出力する。信号分配部72は、信号出力部に相当する制御部30内の制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)から共通信号線71に出力される検査用指示信号を、各々の電圧変換部10に対応付けられた異常検出回路42,52,62にそれぞれ分配する構成となっている。そして、この構成でも、制御部30における制御回路(図2図3の制御回路32と同様の回路)の少なくとも一部が判定部32B(図2)と同様に機能し、当該制御回路が共通信号線を介して検査用指示信号を出力したときに複数の異常検出回路(各々の電圧変換部10に対応する複数の異常検出回路42,52,62)から出力される信号に基づき、実施例1と同様の方法で各々の異常検出回路が故障であるか否かをそれぞれ判定する。
この構成によれば、部品点数が多くなりがちな多相式の電源装置において部品点数の削減やコストの低減を図りつつ、複数の異常検出部の少なくともいずれかにおいて故障が生じているか否かを、より短時間で判定し得る故障検出装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,201…車載用電源装置
3…車載用電源装置の故障検出装置
10…電圧変換部
11…第1素子
12…第2素子
14…インダクタ
21…第1導電路
22…第2導電路
30…制御部
32…制御回路
32A…信号出力部
32B…判定部
36…異常検出部
42…異常検出回路(出力電流異常検出回路)
42B,52B,62B…比較部
44,54,64…電圧信号入力部
46,56,66…信号伝送路
52…異常検出回路(出力電圧異常検出回路)
62…異常検出回路(基準導電路側の異常検出回路)
71…共通信号線
72…信号分配部
72A,72B,72C…分岐信号線
83…基準導電路
図1
図2
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図5
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図7
図8