(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1〜
図3を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、
図1〜
図3に示されるように、反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたセル領域1と、当該セル領域1を囲むように外周耐圧構造が形成された外周領域2とを有する構成とされている。なお、
図2中のセル領域1は、
図1中のII−II線に沿った断面図に相当し、
図3中のセル領域1は、
図1中のIII−III線に沿った断面図に相当する。また、
図1は、MOSFETのセル領域1における1セル分の斜視断面図である。
【0018】
図1〜
図3に示されるように、SiC半導体装置は、SiCからなるn
+型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11は、例えば、(0001)Si面に対して0〜8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば1.0×10
19/cm
3とされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。
【0019】
なお、
図1〜
図3では、基板11の面方向をxy平面とし、xy平面における<11−20>方向をy軸方向、y軸方向と直交する方向をx軸方向としている。また、基板11の面方向に対する法線方向をz軸方向としている。
【0020】
基板11の表面上には、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば5.0〜10.0×10
15/cm
3とされ、厚さが10〜15μm程度とされたSiCからなるn
−型層12が形成されている。このn
−型層12は、不純物濃度が深さ方向において一定であってもよいが、濃度分布に傾斜を付け、n
−型層12のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにすると好ましい。例えば、n
−型層12は、基板11の表面から3〜5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×10
15/cm
3程度他の部分よりも高くなるようにするのがよい。このような構成にすると、n
−型層12の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。なお、本実施形態では、n
−型層12が第1不純物領域に相当している。
【0021】
そして、セル領域1では、n
−型層12の表層部に、n
−型層12よりも高不純物濃度とされた第1電流分散層13が形成されている。第1電流分散層13は、窒素やリン等のn型不純物によって構成され、深さが0.3〜1.5μmとされている。なお、第1電流分散層13の具体的な不純物濃度については後述する。
【0022】
また、第1電流分散層13は、本実施形態では、セル領域1のみに形成されている。つまり、本実施形態では、n
−型層12の表層部に第1電流分散層13が形成されている領域がセル領域1とされ、n
−型層12の表層部に第1電流分散層13が形成されていない領域が外周領域2とされている。
【0023】
第1電流分散層13には、ボロン等のp型不純物濃度が例えば2.0×10
17〜2.0×10
18とされたp型の第1ディープ層14が複数形成されている。本実施形態では、複数の第1ディープ層14は、ストライプ状となるように、それぞれx軸方向に沿って延設され、y軸方向に沿って等間隔に配列されている。
【0024】
また、第1ディープ層14は、第1電流分散層13より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層14は、底部が第1電流分散層13内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層14は、n
−型層12との間に第1電流分散層13が位置するように形成されている。
【0025】
なお、本実施形態では、第1ディープ層14は、後述するようにイオン注入によって形成されるが、イオン注入時におけるフォトリソグラフィーの加工限界を考慮し、y軸方向の長さが0.3μm以上となるように形成されている。また、隣合う第1ディープ層14のy軸方向に沿った間隔、つまり隣合う第1ディープ層14で挟まれる第1電流分散層13のy軸方向に沿った幅(以下では、単に第1電流分散層13の幅ともいう)については、後述する。但し、隣合う第1ディープ層14の間隔は、後述する隣合うトレンチ21の間隔よりも狭くされている。
【0026】
第1電流分散層13および第1ディープ層14上には、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば1.0×10
16〜5.0×10
17とされ、厚さが0.5〜2μmとされた第2電流分散層15が形成されている。なお、本実施形態では、後述するように、n
−型層12、第1電流分散層13、および第2電流分散層15を含んでドリフト層16が構成されている。
【0027】
また、第2電流分散層15には、当該第2電流分散層15を貫通するように、ボロン等のp型不純物濃度が例えば2.0×10
17〜2.0×10
18とされ、厚さが第2電流分散層15と等しくされた複数の第2ディープ層17が形成されている。本実施形態では、第2ディープ層17は、y軸方向に沿って延設されている。つまり、第2ディープ層17は、各第1ディープ層14と交差する方向に延設されている。そして、各第2ディープ層17は、それぞれ複数の第1ディープ層14と繋がっている。なお、第2ディープ層17は、後述するトレンチ21を挟むように形成されている。つまり、第2ディープ層17は、トレンチ21から離れて形成されている。
【0028】
第2電流分散層15および第2ディープ層17上には、P型のベース領域18が形成されている。そして、ベース領域18の表層部には、n
+型のソース領域19およびp
+型のコンタクト層20が形成されている。なお、ソース領域19は、後述するトレンチゲート構造の両側に配置されており、コンタクト層20は、ソース領域19を挟んでトレンチゲート構造と反対側に備えられている。また、本実施形態では、ソース領域19が第2不純物領域に相当している。
【0029】
ベース領域18は、ボロン等のp型不純物濃度が例えば5.0×10
16〜2.0×10
19/cm
3、厚さが2.0μm程度で構成されている。ソース領域19は、表層部における窒素やリン等のn型不純物濃度(すなわち、表面濃度)が例えば1.0×10
21/cm
3、厚さが0.3μm程度で構成されている。コンタクト層20は、例えば表層部におけるボロン等のp型不純物濃度(すなわち、表面濃度)が例えば1.0×10
21/cm
3、厚さが0.3μm程度で構成されている。
【0030】
また、ベース領域18およびソース領域19を貫通して第2電流分散層15に達すると共に、底面が第2電流分散層15内に位置するように、例えば幅が1.4〜2.0μmとされたトレンチ21が形成されている。言い換えると、トレンチ21は、第1電流分散層13および第1ディープ層14に達しないように形成されている。つまり、トレンチ21は、当該トレンチ21の底面よりも下方に第1電流分散層13および第1ディープ層14が位置するように形成されている。なお、トレンチ21がベース領域18およびソース領域19を貫通するように形成されているため、ベース領域18およびソース領域19は、トレンチ21の側面と接するように形成されているともいえる。
【0031】
そして、トレンチ21は、内壁面に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22の表面に形成されたドープトPoly−Siによって構成されるゲート電極23によって埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜22は、トレンチ21の内壁面を熱酸化することで形成され、厚さがトレンチ21の側面側および底部側で共に100nm程度とされている。
【0032】
本実施形態では、このようにして、トレンチゲート構造が構成されている。また、トレンチ21は、
図1中のy軸方向(すなわち、<−1120>方向)を長手方向として延設されている。本実施形態では、このようにトレンチ21が<11−20>方向に延設されることにより、トレンチ21の側壁面である(1−100)面にファセット面が形成されることを抑制できる。また、(1−100)面をチャネルとして用いることができるため、チャネル移動度依存性の影響を低減できる。なお、トレンチ21は、実際には、
図1中のx軸方向に沿って複数並べて形成されることでストライプ状とされる。また、上記のソース領域19およびコンタクト層20は、トレンチ21の延設方向に沿って延設されている。
【0033】
ソース領域19およびコンタクト層20の表面やゲート電極23の表面には、ソース電極24やゲート配線(図示せず)が形成されている。なお、本実施形態では、ソース電極24が第1電極に相当している。
【0034】
ソース電極24およびゲート配線は、複数の金属(例えばNi/Al等)にて構成されており、少なくともn型SiC(すなわち、ソース領域19やnドープの場合のゲート電極23)と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、ソース電極24およびゲート配線は、少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト層20やpドープの場合のゲート電極23)と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。
【0035】
なお、これらソース電極24およびゲート配線は、層間絶縁膜25上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、ソース電極24は、層間絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aを通じてソース領域19およびコンタクト層20と電気的に接続されている。これにより、第1ディープ層14は、コンタクト層20、ベース領域18、第2ディープ層17を介してソース電極24と同電位に維持される。また、ゲート配線は、
図1〜
図3とは別断面において、層間絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aを通じてゲート電極23と電気的に接続されている。
【0036】
基板11の裏面側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極26が形成されている。なお、本実施形態では、基板11がドレイン層として機能する。また、本実施形態では、ドレイン電極26が第2電極に相当している。
【0037】
以上説明したように、セル領域1には、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。
【0038】
外周領域2は、
図2および
図3に示されるように、n
−型層12上に、セル領域1に形成された第2ディープ層17が延設されている。そして、n
−型層12の表層部には、第2ディープ層17と繋がると共に、セル領域1を囲む複数のP型のガードリング27が構成されている。本実施形態では、ガードリング27は、第1電流分散層13と同じ不純物濃度とされていると共に、同じ深さとされている。なお、外周領域2には、上記のように、第1電流分散層13は形成されていない。
【0039】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。次に、上記SiC半導体装置の作動について説明する。
【0040】
まず、上記SiC半導体装置は、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース領域18に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極26に正の電圧(例えば、1600V)が印加されたとしても、ソース領域19からベース領域18内に電子が流れず、ソース電極24とドレイン電極26との間には電流が流れない。
【0041】
また、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前の状態では、ドレイン−ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜22の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ21よりも深い位置に、第1ディープ層14および第1電流分散層13が備えられている。このため、第1ディープ層14および第1電流分散層13との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による高電界がゲート絶縁膜22に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜22が破壊されることを抑制できる。
【0042】
そして、ゲート電極23に所定のゲート電圧(例えば、20V)が印加されると、ベース領域18のうちのトレンチ21に接している表面にチャネルが形成される。このため、ソース電極24から注入された電子は、ソース領域19からベース領域18に形成されたチャネルを通った後、第2電流分散層15に流れる。そして、第2電流分散層15に流れた電子は、第1電流分散層13を通過してn
−型層12に流れ、その後にドレイン層としての基板11を通過してドレイン電極26へ流れる。これにより、ソース電極24とドレイン電極26との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子が第2電流分散層15、第1電流分散層13、およびn
−型層12を通過して基板11へと流れるため、第2電流分散層15、第1電流分散層13、およびn
−型層12を有してドリフト層16が構成されているといえる。
【0043】
この際、第1ディープ層14および第2ディープ層17と、第1電流分散層13および第2電流分散層15との間には、逆バイアスが印加された状態となり、空乏層が伸びる。しかしながら、本実施形態では、第1電流分散層13および第2電流分散層15は、n
−型層12よりも高不純物濃度とされている。このため、ドリフト層と接するようにディープ層が形成された従来のSiC半導体装置と比較して、第1ディープ層14から延びる空乏層の広がりが抑制される。このため、電流経路が狭くなることが抑制され、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0044】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の作動である。次に、第1電流分散層13の具体的な不純物濃度および幅について説明する。
【0045】
まず、
図4に示されるように、第1電流分散層13のオン抵抗は、第1電流分散層13の不純物濃度が高くなるほど低くなる。詳しくは、第1電流分散層13のオン抵抗は、0.5mΩ・cm
2以上の範囲では、不純物濃度が高くなるにつれて急峻に低くなり、0.5mΩ・cm
2未満の範囲では、不純物濃度が高くなるにつれて緩やかに低くなる。また、オン抵抗は、第1電流分散層13の幅にも依存し、第1電流分散層13の幅が広くなるほど低くなる。このため、本実施形態では、オン抵抗が0.5mΩ・cm
2未満となるように、第1電流分散層13の不純物濃度および幅が設定されている。
【0046】
次に、
図5に示されるように、オフ時にゲート絶縁膜22に印加される電界は、第1電流分散層13の不純物濃度が高くなるほど大きくなり、第1電流分散層13の幅が広くなるほど大きくなる。ここで、本実施形態のようたトレンチゲート構造を有するSiC半導体装置では、ゲート絶縁膜22に印加される電界が3.0MV/cm未満であれば一般的に高信頼性とされている。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜22に印加される電界が3.0MV/cm未満となるように、第1電流分散層13の不純物濃度および幅が設定されている。
【0047】
さらに、
図6に示されるように、耐圧は、第1電流分散層13の不純物濃度が高くなるほど低くなり、第1電流分散層13の幅が広くなるほど低くなる。ここで、本実施形態のようなトレンチゲート構造を有するSiC半導体装置では、現状では、2000Vの耐圧が理論的に最大とされており、1600Vの耐圧を有すれば十分に高耐圧であるとされている。このため本実施形態では、耐圧が1600V以上となるように、第1電流分散層13の不純物濃度および幅が設定されている。
【0048】
そして、上記
図4〜
図6をまとめると、
図7のようになる。具体的には、
図7において、ハッチングを施した部分が、
図4の第1電流分散層13のオン抵抗、
図5のゲート絶縁膜22に印加される電界、
図6の耐圧の全てを満たす領域となる。
【0049】
このため、本実施形態では、第1電流分散層13の不純物濃度をy[cm
−3]とし、第1電流分散層13の幅をx[μm]とすると、2×10
16/x
1.728<y<−2×10
17x+3×10
17とされている。これにより、本実施形態では、オン抵抗を低減しつつ、ゲート絶縁膜22に印加される電界を低減でき、さらに耐圧が低下することも抑制できる。なお、本実施形態では、複数の第1ディープ層14は、それぞれx軸方向に沿って延設されているため、第1電流分散層13の幅が第1電流分散層13における最も狭い部分の長さに相当する。
【0051】
まず、
図8(a)および
図11(a)示されるように、上記n
+型の基板11を用意する。そして、この基板11の表面に、SiCからなるn
−型層12をエピタキシャル成長させる。なお、基板11は、上記セル領域1および外周領域2を構成可能な面積を有するものが用いられる。
【0052】
次に、
図8(b)および
図11(b)に示されるように、n
−型層12の表面に図示しないマスクを形成し、第1電流分散層13の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。具体的には、セル領域1のみが開口するように、マスクをパターニングする。そして、マスク上から窒素またはリン等のn型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、セル領域1のみに第1電流分散層13を形成する。その後、マスクを除去する。なお、マスクとしては、例えば、LTO(すなわち、Low Temperature oxide)膜等が用いられる。また、本実施形態では、後述の工程でもマスクが用いられるが、各マスクは、例えば、LTO膜等が用いられる。
【0053】
本実施形態では、このように第1電流分散層13をイオン注入によって形成している。このため、第1電流分散層13をエピタキシャル膜で形成する場合と比較して、第1電流分散層13の不純物濃度の制御が容易になり、特性がばらつくことを抑制できる。
【0054】
次に、
図8(c)および
図11(c)に示されるように、図示しないマスクを形成し、第1ディープ層14およびガードリング27の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。そして、マスク上からボロン等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、第1ディープ層14およびガードリング27を形成する。つまり、本実施形態では、第1ディープ層14およびガードリング27を同じ工程で形成する。
【0055】
なお、第1ディープ層14は、上記のように、ストライプ状であって、第1電流分散層13より浅く形成される。また、第1電流分散層13および第1ディープ層14は、上記のように、2×10
16/x
1.728<y<−2×10
17x+3×10
17を満たすように形成される。
【0056】
続いて、
図8(d)および
図11(d)に示されるように、n
−型層12上に、SiCからなる第2電流分散層15をエピタキシャル成長させる。これにより、n
−型層12、第1電流分散層13、第2電流分散層15を有するドリフト層16が構成される。
【0057】
次に、
図9(a)および
図12(a)に示されるように、図示しないマスクを形成し、第2ディープ層17の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。そして、マスク上からボロン等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、第2ディープ層17を形成する。
【0058】
この際、第2ディープ層17を第1ディープ層14の延設方向と交差する方向に延設する。このため、第2ディープ層17を形成する際に多少の位置ずれがあったとしても、第1ディープ層14と第2ディープ層17とが繋がらないという不具合が発生することを抑制できる。
【0059】
次に、
図9(b)および
図12(b)に示されるように、第2電流分散層15および第2ディープ層17上に、p型不純物層をエピタキシャル成長させることによってベース領域18を形成する。
【0060】
続いて、
図9(c)および
図12(c)に示されるように、ベース領域18上に、n型不純物層をエピタキシャル成長させることによってソース領域19を形成する。
【0061】
そして、
図10(a)および
図13に示されるように、図示しないマスクを形成し、コンタクト層20の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。そして、マスク上からボロン等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、コンタクト層20を形成する。
【0062】
次に、
図10(b)に示されるように、図示しないマスクを形成した後、トレンチ21の形成旅程領域が開口するようにマスクをパターニングする。そして、異方性エッチングを行ってトレンチ21を形成する。具体的には、ソース領域19およびベース領域18を貫通し、第2電流分散層15内に底部が位置するように、トレンチ21を形成する。つまり、トレンチ21の底面より下方に、第1電流分散層13および第1ディープ層14が位置するように、トレンチ21を形成する。なお、異方性エッチングを行った後、必要に応じて等方性エッチングや犠牲層酸化を行うようにしてもよい。
【0063】
次に、
図10(c)に示されるように、トレンチ21内を含む場所にゲート絶縁膜22を形成する。具体的には、ウェット雰囲気を用いたパイロジェニック法によるゲート酸化(すなわち、熱酸化)によりゲート絶縁膜22を形成する。続いて、ゲート絶縁膜22の表面にn型不純物をドーピングしたポリシリコン層を例えば600℃の温度下で440nm程度成膜したのち、トレンチ21内にゲート絶縁膜22およびゲート電極23が残るようにエッチバック工程等を行う。これにより、トレンチゲート構造が構成される。
【0064】
その後の工程に関しては、従来と同様であるため図示しないが、簡単に説明すると、まず、層間絶縁膜25を成膜する。そして、ソース領域19の一部およびコンタクト層20が露出するコンタクトホール25aおよびゲート電極23の一部が露出するコンタクトホールを形成する。次に、各コンタクトホール25aを埋め込むように電極材料を成膜した後、当該電極材料をパターニングすることでソース電極24やゲート配線を形成する。また、基板11の裏面側にドレイン電極26を形成する。以上のようにして、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、トレンチ21よりも深い位置に、n
−型層12よりも高不純物濃度とされた第1電流分散層13と、当該第1電流分散層13内に形成された第1ディープ層14とを有している。このため、ゲート絶縁膜22に高電界が入り難くなり、ゲート絶縁膜22が破壊されることを抑制できる。
【0066】
また、第1電流分散層13がn
−型層12よりも高不純物濃度とされているため、ドリフト層と接するようにディープ層が形成された従来のSiC半導体装置と比較して、第1ディープ層14から延びる空乏層の広がりが抑制される。このため、第1ディープ層14によって電流経路が狭くなることが抑制され、オン抵抗の低減を図ることができる。
【0067】
さらに、第1電流分散層13および第1ディープ層14は、トレンチ21よりも深い位置に形成されている。このため、第1ディープ層14を形成する際にアライメントズレ等が発生したとしても、第1ディープ層14とトレンチ21とが接することを抑制できる。
【0068】
また、第1ディープ層14は、第1電流分散層13内に形成されている。つまり、第1ディープ層14は、第1ディープ層14の底部とn
−型層12との間に第1電流分散層13が位置するように形成されている。このため、第1ディープ層14から延びる空乏層がn
−型層12側に大きく延び、オン抵抗が増加することを抑制できる。
【0069】
さらに、第2ディープ層17は、第1ディープ層14の延設方向と交差する方向に延設されている。このため、第2ディープ層17を第1ディープ層14の延設方向に沿って延設した場合と比較して、位置ずれ等が発生した場合に第2ディープ層17と第1ディープ層14とが繋がらないという不具合が発生することを抑制できる。つまり、第1ディープ層14がフローティング状態になるという不具合が発生することを抑制できる。
【0070】
また、第2ディープ層17は、第1ディープ層14とベース領域18(つまり、ソース電極24)とを繋ぐ機能を主に発揮するものであり、トレンチ21から離れた位置に形成されている。このため、第2ディープ層17がトレンチ21と接している場合と比較して、ベース領域18に形成されたチャネルを通過した電子が第2電流分散層15に流れる際、第2電流分散層15へと流れる経路が狭くなることを抑制できる。したがって、オン抵抗が増加することを抑制できる。
【0071】
さらに、第2電流分散層15は、n
−型層12よりも高不純物濃度とされている。このため、例えば、第2電流分散層15がn
−型層12と同じ不純物濃度とされている場合と比較して、第2ディープ層17から延びる空乏層の広がりも抑制される。つまり、第1電流分散層13内の電流経路が狭くなることを抑制できる。したがって、オン抵抗が増加することを抑制できる。
【0072】
また、第1電流分散層13および第1ディープ層14は、第1電流分散層13の不純物濃度をy[cm
−3]、第1電流分散層13の幅をx[μm]とすると、2×10
16/x
1.728<y<−2×10
17x+3×10
17となるように形成されている。このため、オン抵抗を低減しつつ、ゲート絶縁膜22に印加される電界を低減でき、さらに耐圧が低下することも抑制できる。
【0073】
さらに、第1電流分散層13は、セル領域1のみに形成されており、外周領域2には形成されていない。このため、外周領域2では、空乏層が広がり易い構成となり、等電位線の間隔が広がり易くなることで電界集中が発生し難い構成とできる。したがって、設計の自由度を向上できる。
【0074】
また、第1電流分散層13は、イオン注入によって形成される。このため、第1電流分散層13をエピタキシャル膜で形成する場合と比較して、第1電流分散層13の不純物濃度の制御が容易になり、特性がばらつくことを抑制できる。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1ディープ層14の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0076】
本実施形態では、
図14に示されるように、第1ディープ層14は、x軸方向に沿って複数延設されている。そして、隣合う第1ディープ層14同士は、複数の箇所で繋がっている。つまり、本実施形態では、第1ディープ層14は、格子状に形成されているといえる。なお、本実施形態では、第1電流分散層13は、最も狭い部分の長さが上記幅xとなる。つまり、例えば、
図14中では、第1電流分散層13は、第1ディープ層14で囲まれる部分の平面形状が正方形とされているが、平面形状が長方形状である場合、短辺の長さが上記幅xとなる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態では、第1ディープ層14が格子状に形成されている。このため、さらに第1ディープ層14と第2ディープ層17とが繋がらないという不具合が発生することをさらに抑制しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFETに対しても本発明を適用することができる。また、上記各実施形態では、トレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明したが、同様のトレンチゲート構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対して基板11の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【0080】
また、上記第1実施形態において、外周領域2はメサ構造とされていてもよい。すなわち、
図15および
図16に示されるように、外周領域2は、ソース領域19、ベース領域18を貫通してn
−型層12に達する凹部28が形成されたメサ構造とされていてもよい。なお、
図15のセル領域1は、
図1中のII−II線に沿った断面に相当し、
図16中のセル領域1は、
図1中のIII−III線に沿った断面に相当する。
【0081】
そして、上記各実施形態において、第2ディープ層17は、複数形成されておらず、1つのみであってもよい。このようなSiC半導体装置としても、1つの第2ディープ層17が各第1ディープ層14と繋がることにより、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
さらに、上記各実施形態において、第1ディープ層14は、例えば、y軸方向に沿って延設されていてもよい。つまり、第1ディープ層14は、第2ディープ層17と同じ方向に延設されていてもよい。また、上記各実施形態において、第2電流分散層15は、例えば、n
−型層12と同じ不純物濃度とされていてもよい。そして、第1電流分散層13は、外周領域2にも形成されていてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態において、コンタクト層20を形成されていなくてもよい。つまり、ソース電極24がベース領域18と接続されていてもよい。
【0084】
そして、上記各実施形態において、ゲート絶縁膜22は、熱酸化によらない酸化膜、または窒化膜等を含む構成とされていてもよい。
【0085】
さらに、上記各実施形態において、ベース領域18上にp型不純物層をエピタキシャル成長させることによってコンタクト層20を形成した後、ソース領域19を形成するようにしてもよい。
【0086】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(−)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。