(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
本発明のエアフィルター用濾材は、積層された複数の繊維シートを有し、隣り合う前記繊維シートの層間のうちの少なくとも1つの層間が、加熱膨張性粒子およびバインダーを有するものである。
【0012】
詳細は後述するが、加熱膨張性粒子は、少量の添加量でエアフィルター用濾材の難燃性を優れたものとすることができる。また、そのことによって、加熱膨張性粒子をエアフィルター用濾材に添着させるのに大量のバインダーを必要としないため、エアフィルター用濾材として重要な特性である通気特性を低下させることなく、エアフィルター用濾材に優れた難燃性を付与することができる。
【0013】
また、本発明のエアフィルター用濾材は、そのダスト捕集効率を優れたものとするために、積層された複数の繊維シートを有している。ここで、上記の繊維シートは、後述するとおり天然繊維や合成繊維を含んでいるため可燃性であるとともに、上記の繊維シートを構成する繊維は、紡糸性が低下する等の理由により難燃剤を添加することが困難である場合や、難燃剤を添加できてもその含有量が少ない場合が多い。
【0014】
さらに、本発明のエアフィルター用濾材では、少なくとも一部の繊維シートを接着させるのに、可燃性のバインダーを用いている。しかし、このような構成の本発明のエアフィルター用濾材であっても、加熱膨張性粒子を用いることで、優れた難燃性を有したものとなる。
【0015】
まず、本発明のエアフィルター用濾材に用いる加熱膨張性粒子について説明する。ここで、加熱膨張性粒子とは、それ自身が難燃性を有し、加熱されることで膨張する粒子状の物質をいい、具体的には、層状無機化合物、難燃化マイクロカプセルまたは含水鉱物などが挙げられる。膨張性に優れ、可燃性樹脂を含まないとの観点から、加熱膨張性粒子としては層状無機化合物を用いるのが好ましい。
【0016】
ここで、層状無機化合物とは、層間化合物を有する層状無機物のことをいい、具体的には、膨張性黒鉛、モンモリロナイトまたは層状ペロブスカイト化合物などが挙げられる。また、層状無機物としては黒鉛、金属酸化物、金属リン酸塩、粘土鉱物、ケイ酸塩などが挙げられる。また、層間化合物としては硫酸や硝酸などの加熱時にガス化する化合物が挙げられる。
【0017】
加熱膨張性粒子の中でも、膨張開始温度や膨張倍率を高く設計することが可能である膨張性黒鉛が好ましい。膨張開始温度を高くすることでエアフィルター用濾材の製造時の加熱では膨張せず燃焼時の加熱でのみ膨張するためエアフィルター用濾材の製造時などの取り扱い性に優れ、膨張倍率を高くすることで難燃性を向上させることが可能である。
【0018】
ここで、膨張性黒鉛とは、黒鉛に硫酸や硝酸などをインターカレーションしたものをいう。また、原料の黒鉛については特に制限はないが、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解黒鉛等のように高度に結晶が発達した黒鉛が好ましい。エアフィルター用濾材に用いた際の難燃性付与能と経済性のバランスから、中でも天然黒鉛が好ましい。
【0019】
天然黒鉛としては、例えば、鱗片状の天然黒鉛がある。この天然黒鉛を用いた膨張性黒鉛では、天然黒鉛の鱗片の層の間に、加熱によりガスの発生が起こる層間化合物が挿入される。詳細は後述するが、上記の天然黒鉛を用いた膨張性黒鉛に熱が加わると上記の層間化合物からガスが発生し、発生したガスより、鱗片状の天然黒鉛が膨張して、熱に対して安定した炭化壁を形成する。そして、上記の炭化壁が炎や熱の燃焼帯域から非燃焼帯域への伝達を遮断することで、本発明のエアフィルター用濾材に優れた難燃性をもたらすものと推測される。
【0020】
また、少量の加熱膨張性粒子の添加量でもエアフィルター用濾材の難燃性を十分なものとすることができていることから、少量の加熱膨張性粒子の添加量であっても炎や熱の燃焼帯域から非燃焼帯域への伝達を遮断するのに適した大きさの炭化壁が形成されるものと推測される。
【0021】
また、本発明のエアフィルター用濾材に用いられる加熱膨張性粒子の膨張開始温度としては、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が特に好ましい。上記範囲とすることで、エアフィルター用濾材の製造時の加熱では膨張せず、燃焼時など適切な場面でのみ膨張する加熱膨張性粒子とすることができる。また、上限については、特に限定はされないが、燃焼温度付近での加熱により膨張が開始する必要があるため、800℃以下が好ましい。また、加熱膨張性粒子の膨張開始温度は、層間化合物の選定などの手段により調整することができる。
【0022】
次に、加熱膨張性粒子は、加熱(具体的には、800〜1000℃)されたときに黒鉛のへき開面に直角方向であるC軸方向に対して50倍以上の膨張倍率をもつことが好ましく、100倍以上の膨張倍率をもつことがより好ましく、さらに150倍以上の膨張倍率をもつことが特に好ましい。
【0023】
加熱膨張性粒子の膨張倍率を50倍以上とすることで、上記の加熱膨張性粒子を有するエアフィルター用濾材の難燃性がより向上する。また、上限については、特に限定はされないが、入手が容易となる観点から、500倍以下が好ましい。また、加熱膨張性粒子の膨張倍率は、層間化合物の含有割合を変更するなどの手段により調整することができる。ここで、膨張開始温度とは、加熱膨張性粒子を一定条件で加熱したときに、加熱膨張性粒子の体積が、その元の体積の1.1倍となる温度である。
【0024】
次に、加熱膨張性粒子の膨張前の数平均粒径は100μm以上800μm以下であることが好ましい。下限として200μm以上がより好ましく、上限としては600μm以下がより好ましい。
【0025】
加熱膨張性粒子の膨張前の数平均粒径を100μm以上とすることで、エアフィルター用濾材に十分な難燃性を付与することができる。特に粒子径100μm未満の粒子の含有割合を減らすことで、粉塵の飛散が防止しやすいため、作業環境上好ましい。また、加熱膨張性粒子の膨張前の数平均粒径を800μm以下とすることで加熱膨張性粒子の散布時の散布ムラがより軽減でき、それによりエアフィルター用濾材としたときの圧力損失を低減することが可能である。
【0026】
ここで、上記の数平均粒径は、粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の最大径と最小径を測定し、それらの平均値を粒子径として、粒子100個の粒子径を算術平均した値である。
【0027】
次に、加熱膨張性粒子の含有量としては、エアフィルター用濾材全体100質量%に対して、0.5〜30質量%が好ましい。加熱膨張性粒子の含有量を0.5質量%以上とすることで、エアフィルター用濾材の燃焼部分からエアフィルター用濾材の未燃焼部分を隔離するのにより適した大きさの炭化層を形成することができ、エアフィルター用濾材の難燃性がより優れたものとなる。この観点から、下限としては1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。
【0028】
また、加熱膨張性粒子の含有量を30質量%以下とすることで、加熱膨張性粒子をエアフィルター用濾材に添加するのに必要なバインダーの量をより低減することができ、難燃性に優れ、圧力損失の低いエアフィルター用濾材とすることができる。この観点から、上限としては20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、高い難燃性および低い圧力損失を有するエアフィルター用濾材とすることができる。
【0029】
また、本発明のエアフィルター用濾材は、積層された複数の繊維シートを有し、隣り合う前記繊維シートの層間のうちの少なくとも1つの層間が、加熱膨張性粒子およびバインダーを有することが必要である。上記のような形態のエアフィルター用濾材では、加熱膨張性粒子は繊維シートにより挟まれており、さらに、加熱膨張性粒子はバインダーによりエアフィルター用濾材に固定されているので、加熱膨張性粒子がエアフィルター用濾材から脱落するのを抑制することができる。
【0030】
ここで、本発明のエアフィルター用濾材では、層間のみが加熱膨張性粒子を含有していてもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上記の層間以外、例えば繊維シートも、その内部に加熱膨張性粒子を含有していてもよい。
【0031】
また、詳細は後述するが、エアフィルター用濾材が、積層された3枚以上の繊維シートを有しており、2つ以上の層間を有する場合においては、それらの2つ以上の層間のうち少なくとも1つが加熱膨張性粒子およびバインダーを有しても、全ての層間が加熱膨張性粒子およびバインダーを有していてもよい。
【0032】
本発明のエアフィルター用濾材が、優れた難燃性を発揮するメカニズムについて、詳細は不明であるが、推測される難燃性発現のメカニズムを、図を用いて説明する。
図1は、一部が燃焼し加熱膨張性粒子が膨張したエアフィルター用濾材の斜視図を示す。また
図2は、
図1に示すエアフィルター用濾材のA−Aでの断面図を示す。本発明のエアフィルター用濾材1の一部に着火した場合、エアフィルター用濾材1の着火した部分、および、その周辺部分の加熱膨張性粒子が火の熱により膨張し、着火した部分を囲むように炭化壁4が形成される。すると,この炭化壁4が、エアフィルター用濾材1の燃焼部分3からエアフィルター用濾材の未燃焼部分2を隔離し、エアフィルター用濾材の延焼が抑制されることで、優れた難燃性が発揮されるものと推測される。
【0033】
次に、本発明のエアフィルター用濾材について説明する。本発明のエアフィルター用濾材が有する剛軟度は0.1mN以上20mN以下であることが好ましい。剛軟度を0.1mN以上とすることで、プリーツ加工性に優れ、風圧によるプリーツ形状の変形を抑制できるため、圧力損失の低いエアフィルターを得ることができる。また、20mN以下とすることで、プリーツ状に折り曲げるのを容易にすることができる。下限としては1mN以上であることがより好ましく、上限としては15mN以下であることがより好ましい。
【0034】
また剛軟度は、繊維の製造方法、繊維径の選定、または、バインダーの使用量などにより、もしくは、それらの手法を複数組み合わせて行うことにより所望のものとすることができる。ここで、剛軟度とは、JIS L109
6(2010年)
の曲げ反発性A法に規定す
る剛軟度
(ガ−レ法)を表す。
【0035】
本発明のエアフィルター用濾材の厚みは、0.1mm以上3mm以下であることが好ましい。下限としては0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。上限としては2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、エアフィルター用濾材の圧力損失をより低減することができ、またプリーツ加工などの加工性にもより優れたものとなる。
【0036】
面風速10.8cm/秒の時の本発明のエアフィルター用濾材の圧力損失は150Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。ここで、面風速10.8cm/秒の時の本発明のエアフィルター用濾材の圧力損失を上記の範囲とするには、エアフィルター用濾材の目付け、繊維シートの形態、使用する繊維の繊維径などを適宜選択することにより、もしくは、それらの手法を複数組み合わせて行うことにより所望のものとすることができる。
【0037】
次に、本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートについて説明する。本発明のエアフィルター用濾材は、積層された複数の繊維シートを有している。よって、本発明のエアフィルター用濾材は、3枚の繊維シートが積層され2つの層間を有する形態、4枚の繊維シートが積層され3つの層間を有する形態、または、5枚の繊維シートが積層され4つの層間を有する形態などを取り得る。なお、上記の複数の繊維シートは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、繊維シート間の接着力をより優れたものとする観点から、上記の層間はバインダーで固定されていることが好ましい。
【0038】
ここで、本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートの形態としては、不織布、織布、ネットまたは紙などが挙げられる。このなかでも、ダストの捕集効率およびプリーツ加工性に優れるとの観点から、本発明のエアフィルター用濾材が有する複数の繊維シートは、全て不織布であることが好ましい。
【0039】
本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートに使用する繊維としては、従来から公知の天然繊維、合成繊維が広く使用でき、中でも溶融紡糸が可能な熱可塑性繊維が好ましい。合成繊維を形成する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ビニロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸等を挙げることができ、用途等に応じて選択できる。また、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
熱可塑性繊維は溶融紡糸が可能であり紡糸性に優れるとの観点から、エアフィルター濾材が有する繊維シートの少なくとも1枚が熱可塑性繊維を主成分とする不織布であることが好ましい。ここで、主成分とは不織布全体100質量%に対し、熱可塑性繊維を50質量%を超えて有することをいい、60質量%以上を有することがより好ましく、80質量%以上を有することがさらに好ましく、100質量%とすることが特に好ましい。
【0041】
エアフィルター用濾材のダスト捕集効率をより優れたものとする観点から、エアフィルター用濾材が有する繊維シートの少なくとも1枚がエレクトレット不織布であることが好ましい。
【0042】
本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートに使用する繊維の構成は、単一型、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維等のいかなる構成のものも使用できる。繊維の断面形状も特に制限はなく、円形のみならず楕円形、三角形、星形、T型、Y型、葉状等いわゆる異型断面形状のものでもよい。さらに、表面に空隙をもつもの、あるいは枝分かれした構造を有するものも使用することができる。また、必要に応じて上記の繊維を2種類以上混合して使用することもできる。通気性を高くするために捲縮性繊維を用いてもよい。
【0043】
上記のとおり、本発明のエアフィルター用濾材が有する複数の繊維シートは、同じものであってもよいが、それらの繊維シートを、互いに異なった特性を有する互いに異なる繊維シートである方が、エアフィルター用濾材のダスト捕集効率や圧力損失などをより優れたものとできるため好ましい。
【0044】
ここで、本発明のエアフィルター用濾材の一形態として、互いに異なる積層された2枚の繊維シートを有し、それらの繊維シートの層間が加熱膨張性粒子およびバインダーを有するエアフィルター用濾材を例示し、本発明のエアフィルター用濾材に用いることができる2枚の互いに異なる繊維シートの説明をする。
【0045】
また、この場合、便宜上、通風方向に対して、上流側に位置する繊維シートを繊維シートA、繊維シートAから下流側に位置する繊維シートを繊維シートBと区別して説明する。この場合、繊維シートAおよび/または繊維シートB自体が2枚以上の不織布の積層体であってもよい。ここで、通風方向とは、エアフィルター用濾材をフィルターユニットとして、例えば空気清浄機に搭載し、通風した際の風の流入側を上流側、流出側を下流側と定義する。
【0046】
このエアフィルター用濾材では、繊維シートAと繊維シートBとの層間に加熱膨張性粒子が配されているため、加熱膨張性粒子がエアフィルター用濾材から脱落するのを抑制できる。
【0047】
また、繊維シートBと繊維シートAとは、互いに異なる性能や特性を有するものであるので、本発明のエアフィルター用濾材は、ダスト捕集効率等の性能により優れたものとなる。具体的には、繊維シートBよりも剛性が高く、嵩高で目の粗い繊維シートAを、繊維シートBと積層し、そのエアフィルター用濾材を、繊維シートAが通風方向の上流側となるように空気清浄機などにセットすることで、繊維シートAの高い剛性により高風量下でもエアフィルター用濾材の変形はより抑制され、圧力損失をより低くすることができる。
【0048】
また、繊維シートBを、繊維シートAよりも目の細かい繊維シートとして、繊維シートAと積層し、その積層体であるエアフィルター用濾材を、繊維シートBが通風方向の下流側となるように空気清浄機などにセットすることで、繊維シートAでは捕集できないような小さいダストも繊維シートBにより捕集することが可能となりエアフィルター用濾材のダスト捕集効率をより優れたものとすることができる。
【0049】
さらに、この場合、繊維シートBの孔を詰まらせてしまうような大きいダストを、嵩高で目の粗い繊維シートAが繊維シートBに到達するまえに捕集することで繊維シートBの目詰まりが抑制されるので、エアフィルター用濾材の製品寿命をより長くすることが可能となる。
【0050】
ここで、繊維シートAは、不織布、織布、ネットまたは紙などであってもよい。これらの中でも、ダストの捕集効率およびプリーツ加工性に優れるとの観点から、繊維シートAは、不織布であることが好ましい。また、その不織布は、従来の不織布の製造方法などにより得ることができる。
【0051】
ここで、繊維シートAに用いることができる不織布としては、湿式抄紙法および乾式法により得られた繊維ウェブに対して、ケミカルボンド法、サーマルボンド法またはニードルパンチ法、ウォータジェットパンチ法などにより繊維同士を結合させることにより得られる不織布や、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接紡糸法により得られる不織布が挙げられる。特に湿式抄紙法は、乾式法にくらべ繊維を分散させてから抄紙するため、不織布の目開きのバラツキが少なく、繊維特性が異なる複数の繊維群を任意に混合して不織布製造が可能であり、エアフィルター用濾材の基本要求特性である通気性を優れたものとできる繊維シートAを得ることができる。
【0052】
上記の観点から、繊維シートAは、湿式抄紙不織布であることがより好ましい。さらに、繊維シートAを剛性の高い繊維シートとする観点からは、湿式抄紙法により得られた繊維ウェブに対して、ケミカルボンド法で繊維同士を結合させて得られる湿式抄紙ケミカルボンド不織布が特に好ましい。
【0053】
繊維シートAに含まれる繊維としては、天然繊維および合成繊維を挙げることができ、中でも、溶融紡糸が可能であり紡糸性に優れるとの観点から、合成繊維の一種である熱可塑性繊維であることが好ましい。ここで、繊維シートAは熱可塑性繊維を主成分とすることが好ましく、主成分とは繊維シートA全体100質量%に対し、熱可塑性繊維を50質量%を超えて有することをいい、60質量%以上を有することがより好ましく、80質量%以上を有することがさらに好ましく、100質量%とすることが特に好ましい。
【0054】
熱可塑性繊維を形成する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ビニロン、ポリスチレン、ポリ乳酸等を挙げることができ、用途等に応じて選択できる。また、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
繊維シートAに使用する繊維の繊維径としては、エアフィルター用濾材をエアフィルターとして使用する用途において目標とする通気性や捕集効率に応じて選択すればよいが、上記のとおり繊維シートAは高い剛性を有することが好ましく、そのため繊維シートAに使用する繊維の繊維径は、好ましくは0.1〜500μmである。下限として1μm以上がより好ましい。上限として300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、通気性の低下を防ぐことができるし、繊維シートAの剛性を高めることができる。
【0056】
また、本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートAの目付けとしては、5〜500g/m
2が好ましい。下限としては、10g/m
2以上がより好ましく、上限としては、200g/m
2以下がより好ましい。
【0057】
繊維シートAの目付けを5g/m
2以上とすることで、繊維シートAの強度がより高くなり、プリーツ加工やハニカム加工などの加工性に優れ、圧力損失の低いエアフィルター用濾材を得ることができる。一方で、繊維シートAの目付けを500g/m
2以下とすることで、エアフィルター用濾材の厚みを抑え、そのエアフィルター用濾材をプリーツ状フィルター等に用いたときに、濾材厚みに起因するプリーツ状フィルターの圧力損失の上昇を抑えることができる。また、プリーツ加工などの加工性にも優れたエアフィルター用濾材ともなる。
【0058】
本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートAの引張強度(破断強度)は任意の方向、および、上記の任意の方向に垂直な方向ともに10〜250N/5cm巾が好ましい。また、その下限としては、20N/5cm巾以上がより好ましく、30N/5cm巾以上がさらに好ましい。一方で、その上限としては、200N/5cm巾以下がより好ましい。
【0059】
繊維シートAの引張強度(破断強度)を10N/5cm巾以上とすることでエアフィルター用濾材の破断を防ぐことができ、繊維シートAの引張強度(破断強度)を250N/5cm巾以下とすることでエアフィルター用濾材としたときにプリーツ状に折り曲げるのを容易にすることができる。ここで、引張強度(破断強度)はJIS L1913(2010年)に準じて測定した値である。
【0060】
以下に、繊維シートBについて説明する。繊維シートBは、不織布、織布、ネットまたは紙などであってもよい。このなかでも、ダストの捕集効率およびプリーツ加工性に優れるとの観点から、繊維シートBは、不織布であることが好ましい。また、その不織布は、従来の不織布の製造方法などにより得ることができる。
【0061】
ここで、繊維シートBに適した不織布としては、湿式抄紙法および乾式法により得られた繊維ウェブに対して、ケミカルボンド法、サーマルボンド法またはニードルパンチ法、ウォータジェットパンチ法などにより繊維同士を結合させることにより得られる不織布や、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接紡糸法により得られる不織布が挙げられるが、メルトブロー式で得られる不織布は、極めて薄型で繊維径の細い繊維を有し、上記のとおりダスト捕集効率にも優れるものであるので、特に好ましい。なお、上記の不織布は従来の製造方法などにより製造することができる。
【0062】
繊維シートBに含まれる繊維としては、天然繊維および合成繊維を挙げることができ、中でも、溶融紡糸が可能であり紡糸性に優れるとの観点から、合成繊維の一種である熱可塑性繊維であることが好ましい。ここで、繊維シートBは熱可塑性繊維を主成分することが好ましい。主成分とは繊維シートB全体100質量%に対し、熱可塑性繊維を、50質量%を超えて有することをいい、60質量%以上を有することがより好ましく、80質量%以上を有することがさらに好ましく、100質量%とすることが特に好ましい。
【0063】
熱可塑性繊維を形成する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ビニロン、ポリスチレン、ポリ乳酸等を挙げることができ、用途等に応じて選択できる。また、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
繊維シートBに使用する繊維の繊維径としては、エアフィルター用濾材をエアフィルターとして使用する用途において目標とする通気性や捕集効率に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1〜500μmである。下限として1μm以上がより好ましい。上限として300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0065】
上記範囲とすることで、通気性の低下を防ぐことができるし、繊維シートBの強度を高めることができる。また、ダスト捕集効率を極めて優れたものとすることができるとの観点からは、繊維シートBに使用する繊維の繊維径は20μm以下であることが好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0066】
また、繊維シートBの目付けとしては、5〜500g/m
2が好ましい。下限として10g/m
2以上が好ましく、上限として200g/m
2以下がより好ましく、100g/m
2以下が特に好ましい。
【0067】
繊維シートBの目付けを5g/m
2以上とすることで、繊維シートBの捕集効率がより向上し、さらにエアフィルター用濾材の製品寿命もより優れたものとなる。一方で、繊維シートBの目付けを500g/m
2以下とすることで、エアフィルター用濾材の厚みを抑えることができ、それをプリーツ状フィルター等にしたときに、エアフィルター用濾材の厚みに起因するプリーツ状フィルターの圧力損失の上昇を抑えることができる。また、プリーツ加工などの加工性にも優れたエアフィルター用濾材とすることもできる。
【0068】
また、繊維シートBは、エレクトレット不織布であることが好ましい。繊維シートBがエレクトレット不織布であることで、静電気力によるダストの捕集効果が付加され捕集効率に非常にすぐれたエアフィルター用濾材とすることができる。
【0069】
また、繊維シートBがエレクトレット不織布である場合、繊維シートBに用いられる繊維は、帯電しやすさの観点から熱可塑性繊維が主成分であることが好ましい。ここで、主成分とは、繊維シートBを構成する繊維全体100質量%に対し、熱可塑性繊維を、50質量%を超えて有することをいい、60質量%以上を有することがより好ましく、80質量%以上を有することがさらに好ましい。一方、上限については特に制限はなく、エレクトレット不織布を構成する繊維のすべてが熱可塑性繊維であってもよい。
【0070】
上記の繊維シートBを構成する繊維に含まれる熱可塑性繊維に用いられる熱可塑性樹脂は、高い電気抵抗率を有し、帯電しやすいとの観点からポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0071】
次に、繊維シートBに帯電加工を施す手法としては、特に限定されず、コロナ放電方式、純水接触方式など公知の方法から任意に選択することができる。ここで、静電気力が高く圧力損失の低い繊維シートを得ることができるので、純水接触方式を用いることが好ましい。
【0072】
上記のとおり、エアフィルター用濾材の捕集効率をより一層向上させるためには、繊維シートBを、ポリオレフィン系の熱可塑性繊維からなるエレクトレット化メルトブロー不織布とすることがより好ましい。
【0073】
一方、上記のエレクトレット化メルトブロー不織布は、可燃性のポリオレフィン系の熱可塑性繊維からなり、その繊維の繊維径は極めて細く、さらに、エレクトレット性を低下させないように、通常は難燃剤を含有させないため、上記に挙げた不織布のなかでも特に燃えやすいものとなる。よって、エレクトレット化メルトブロー不織布を用いたエアフィルター用濾材は極めて優れた捕集効率を有するものの、その難燃性は低下する傾向にある。
【0074】
しかし、本発明のエアフィルター用濾材は、少量の添加量でエアフィルター用濾材に優れた難燃性を付与することができる加熱膨張性粒子を用いているため、繊維シートBをポリオレフィン系の熱可塑性繊維を主体とするエレクトレット化メルトブロー不織布とした場合であっても、その捕集効率を優れたものとしつつ、優れた難燃性を有するものとなる。
【0075】
すなわち、繊維シートBをポリオレフィン系の熱可塑性繊維からなるエレクトレット化メルトブロー不織布とした本発明のエアフィルター用濾材は、優れた捕集効率、低い圧力損失および優れた難燃性を有するものとなる。
【0076】
ここで、繊維シートBが2枚の不織布から構成される場合において説明する。2枚の不織布のうち1枚の不織布は、繊維径の細い繊維で構成される不織布(以下、細繊維層という)であることが好ましく、2枚の不織布のうち残りの不織布は、細繊維層を構成する繊維の繊維径よりも大きい繊維径の繊維で構成される不織布(以下、太繊維層という)であることが好ましい。
【0077】
細繊維層は、摩擦などの外力により傷つきやすいものであるので、細繊維層の繊維シートAと接する面の反対側の面に摩擦などの外力により傷つきにくい太繊維層を積層したエアフィルター用濾材とすることで、細繊維層の繊維シートAと接する面の反対側の面の毛羽や破れを抑制できる。
【0078】
また、細繊維層と繊維シートAとの間に太繊維層を積層することで、大きなサイズのダストによる細繊維層の目詰まりを抑制することができ、エアフィルター用濾材の製品寿命をより優れたものとすることができる。上記の2つの効果を同時に奏するべく、繊維シートBを細繊維層の両面に太繊維層を積層した3層構造としてもよい。
【0079】
次に、本発明のエアフィルター用濾材に用いるバインダーについて説明する。本発明のエアフィルター用濾材は、バインダーで固定された層間を少なくとも1つ有する。層間がバインダーで固定されることで、繊維シート間の接着力が優れたものとなるとともに、バインダーに含まれている加熱膨張性粒子がバインダーによりエアフィルター用濾材に固定されるため、エアフィルター用濾材からの加熱膨張性粒子の脱落が抑制される。また、本発明のエアフィルター用濾材が2以上の層間を有する場合には、繊維シート間の接着力をより優れたものとできるなどの観点から、全ての層間がバインダーで固定されていることが好ましい。
【0080】
本発明のエアフィルター用濾材に用いるバインダーは、熱接着性粒子または熱接着性繊維とすることが好ましい。これらの形態のバインダーを使用することで、接着される複数の繊維シートの層間に存在する接着点が少なくなり、通気性を損なわずに積層体とすることができる。また、熱接着性粒子や熱接着性繊維は従来公知の合成樹脂からなるものを用いることができる。
【0081】
また、バインダーが熱接着性粒子である場合、熱接着性粒子の平均粒子直径は、50μm〜800μmが好ましい。下限としては100μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。上限としては600μm以下が好ましく、400μm以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、微粉末の発生が抑制されて取り扱い性が良くなり、なおかつ良好な接着性を保つことができる。
【0082】
また、バインダーが熱接着性繊維である場合、熱接着性繊維は、例えば、他の繊維よりも融点が低い単一の樹脂成分からなる熱可塑性繊維や、他の繊維よりも融点が低い単一の樹脂成分を繊維表面に有する複合繊維が挙げられる。
【0083】
上記の複合繊維について、その横断面形状が、例えば、低融点の樹脂成分を繊維表面に有する芯鞘型やサイドバイサイド型等の複合繊維があり、またその材質は例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、または、ポリエチレン/ポリエステルなどの繊維形成性重合体の組み合わせからなる複合繊維がある。なお、前記熱接着性繊維のエアフィルター用濾材全体に占める割合は、本発明の効果を損なわない限り任意の割合で用いることが出来る。
【0084】
また、バインダーに含まれる低融点の樹脂成分は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなることが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリオレフィンの単体及び各種共重合体;エチレンと炭素数が4以上のα−オレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ないしアイオノマー、又はこれらの混合樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ナイロン、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂の単体及び共重合体等、やこれらの混合樹脂等を挙げることができる。
【0085】
成膜性、柔軟性、低温での加工性を付与し、また比較的低コストとすることができ、また汎用性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、が好ましく、特にポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0086】
また、バインダーとして合成樹脂の水溶液、または、水系エマルジョンの形態のものも用いることができるが、それらの形態のバインダーを用いた場合には、繊維シートが有する孔がバインダーにより塞がれてしまい、本発明のエアフィルター用濾材の特徴である低い圧力損失が損なわれる傾向があるため、好ましくない。
【0087】
また、上記のバインダーが含む低融点の樹脂成分の溶融流動性を表すメルトフローレート(MFR:g/10min)は、30〜300g/10minであることが好ましい。下限としては50g/10min以上がより好ましく、80g/10min以上がさらに好ましい。上限としては200g/min以下であることがより好ましい。メルトフローレートを上記範囲とすることで、バインダーに加熱膨張性粒子の保持を担わせる場合に、加熱膨張性粒子のエアフィルター用濾材への固着がより強くなる。
【0088】
ここで上記メルトフローレート(MFR:g/10min)はJIS K 7210(2014年)に準じた方法で測定した値を表す。上記測定方法の代表例は、ポリエチレン(温度:190℃、荷重:2.16kgf)、ポリプロピレン(温度:230℃、荷重:2.16kgf)である。
【0089】
隣り合う繊維シートの層間をバインダーで固定する方法としては、特に限定されるものでなく、従来公知の方法を用いることができる。例として、熱接着性樹脂からなる粒子(熱接着性粒子)を隣り合う繊維シートの層間に配し、その繊維シートの積層体を加熱し圧着する方法や、熱接着性樹脂からなる繊維(熱接着性繊維)を繊維シートに含有させて、エンボスロールによる接着方法などが挙げられる。
【0090】
次に、本発明のエアフィルター用濾材に用いることのできる機能性粒子について説明する。エアフィルター用濾材は機能性粒子を有することで、エアフィルター用濾材に不快な臭気の除去機能や、抗菌性・防黴性などの機能を付与することが可能である。このことから、エアフィルター用濾材は、隣り合う前記繊維シートの層間のうちの少なくとも1つの層間に、機能性粒子を有することが好ましい。
【0091】
また、その場合、機能性粒子は、隣り合う繊維シートの層間に配されているため、機能性粒子がエアフィルター用濾材から脱落するのをより抑制することができる。また、エアフィルター用濾材が、積層された3枚以上の繊維シートを有する場合には、エアフィルター用濾材は2つ以上の層間を有するが、製造過程において、加熱膨張性粒子と機能性粒子とを混合したものをエアフィルター用濾材に一括で付与することができ、生産性を向上させることができるため、機能性粒子は、加熱膨張性粒子およびバインダーを有する層間に配されていることが好ましい。
【0092】
ここで、機能性粒子とは脱臭粒子、光触媒粒子、抗菌剤粒子、防黴剤粒子、抗ウイルス剤粒子、防虫剤粒子、害虫忌避剤粒子、芳香剤粒子などが例示される。また、上記に例示した機能性粒子のうち、2種類以上の機能性粒子を併用してもよい。機能性粒子の目付けは、その機能が発現するように適宜設計が可能である。
【0093】
機能性粒子として、例えば脱臭粒子を用いた場合、揮発性有機化合物など室内環境にとって有害となり得る臭気を吸着除去することが可能であり好ましい。脱臭粒子としては、各種有機素材、無機素材もしくは有機無機複合物からなるものを一種類もしくは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0094】
有機素材としては各種高分子からなる合成物脱臭粒子、メンブレン、樹脂発泡体、多孔質繊維などであり、無機素材としてはカーボンブラック、炭、活性炭、各種ゼオライト、各種シリカゲル、アルミナ、メソポーラスシリカ、シリコアルミノリン酸型モレキュラーシーブ、アルミノリン酸型モレキュラーシーブ、その他発泡金属、多孔性金属酸化物、金属塩、粘土鉱物などを例示することができる。有機無機複合物としては、MOFと称される金属−有機化合物骨格を有するもの、層間化合物中に有機分子を配置したものなどが挙げられる。
【0095】
これらの中でも特に、活性炭や多孔質シリカゲルが有用である。活性炭は非常に幅広いガスに対して吸着効果を示し、かつ優れた吸着速度を有することから好ましい。活性炭は、有害ガス成分を除去できれば特に限定されない。活性炭の炭素質材料としては例えば、果実殻(ヤシ殻、クルミ殻など)、木材、鋸屑、木炭、果実種子、パルプ製造副生成物、リグニン、廃糖蜜などの植物系材料;泥炭、草炭、亜炭、褐炭、レキ青炭、無煙炭、コークス、コールタール、石炭ピッチ、石油蒸留残渣などの鉱物系材料;フェノール樹脂、
ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂などの合成系材料;再生繊維(レーヨンなど)などの繊維系材
料等を使用することができる。
【0096】
これらの中でも、硬度が高く、ミクロ孔が多いヤシ殻活性炭を用いることが特に好ましい。
ここで硬度とはJIS K 1474(2014年)活性炭試験方法による硬度を表し、90%以上であることが好ましく、95%以上が特に好ましい。上記範囲とすることでシート加工時やプリーツ加工時の活性炭の微粉末化が抑制され、濾材表面やプリーツ頂点からの活性炭微粉末の脱落が防止できる。
【0097】
活性炭粒子のBET比表面積は、好ましくは500m
2/g以上、さらに好ましくは1000m
2/g以上である。上記範囲とすることで濾材としてのガスの除去性能が向上し、通気抵抗の上昇を防ぐことができる。活性炭の形状は、特に制限されず、粒状(粉粒状)、繊維状などであってもよい。
【0098】
なお、活性炭粒子のBET比表面積の測定方法としては、従来公知の方法を使用することができる。以下にその一例を挙げて説明する。まず、活性炭粒子のサンプルを約100mg採取し、180℃で2時間真空乾燥の後、秤量する。次に、マイクロメリティックス社製自動比表面積装置、装置名ジェミニ2375を使用し、液体窒素の沸点(−195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧0.02〜1.00の範囲で徐々に高めながら40点測定し、上記サンプルの窒素吸着等温線を作製し、相対圧0.02〜1.00での結果をBETプロットする。これにより、活性炭粒子の重量当りのBET比表面積(m
2/g)を求めることができる。
【0099】
上記の脱臭粒子は薬品で添着処理を施したものであることも好ましい。例えば、酸性、塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることを目的に、エタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、ヒドラジン等のアミン系薬剤や、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸グアニジン等のアルカリ成分を脱臭粒子に担持もしくは添着させることにより、アルデヒド系ガス、窒素酸化物、硫黄酸化物、酢酸等の酸性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。
【0100】
また、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の酸性薬剤を脱臭粒子に担持もしくは添着させることにより、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン等の塩基性ガスに対する吸着性能を向上させることができる。
【0101】
薬品の担持方法には特に制限が無く、通常の方法で担持可能である。担持させる薬品を含む水溶液に脱臭粒子を浸す方法や、添着する薬品を含む水溶液を噴霧する方法、添着する薬品を含むガスに接触させる方法等、添着する薬品によって選択することができる。脱臭粒子に担持させる薬品は2種類以上であってもかまわない。さらにこれら薬品を担持させた脱臭粒子を2種類以上混合して使用しても構わない。これらは除去対象ガスの種類・組成に応じて選択することができる。
【0102】
脱臭粒子の数平均粒径としては、100〜800μmが好ましく、下限として150μm以上がより好ましく、200μm以上が特に好ましい。上限として500μm以下がより好ましい。上記範囲とすることで脱臭粒子の繊維シートからの脱落を防止でき、さらに圧力損失の増大を防ぐことが出来る。また、エアフィルター用濾材としての厚みを抑え、プリーツ状フィルター等にしたときに、濾材厚みに起因するフィルター圧力損失の上昇を抑えることができる。また、プリーツ加工などの後加工性にも優れる。
【0103】
ここで、脱臭粒子の数平均粒径は粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の最大径と最小径を測定し、それらの平均値を粒子径として、粒子100個の粒子径を算術平均した値である。
さらに、低圧力損失、脱臭性能の有効発現性のためには、脱臭粒子の粒子径の分布をシャープなものとすることも好ましい。
【0104】
機能性粒子として脱臭粒子をエアフィルター用濾材に用いる場合には、脱臭粒子の目付けとしては、10〜1000g/m
2が好ましい。下限として20g/m
2以上が好ましい。上限としては800g/m
2以下が好ましく、600g/m
2以下がより好ましい。
【0105】
10g/m
2以上とすることで、エアフィルター用濾材としたときに脱臭機能が付与できる場合が多い。一方で、脱臭粒子の目付けを1000g/m
2以下とすることで、エアフィルター用濾材としたときに圧力損失の上昇が抑制され、またさらに厚みを抑えることができ、それをプリーツ状フィルター等にしたときに、エアフィルター用濾材の厚みに起因するプリーツ状フィルターの圧力損失の上昇を抑えることができる。また、プリーツ加工などの加工性にも優れたエアフィルター用濾材とすることもできる。
【0106】
また、本発明のエアフィルター用濾材では、隣り合う前記繊維シートの層間のうちの少なくとも1つの層間が、加熱膨張性粒子およびバインダーを有しており、その層間においては、バインダーが、加熱膨張性粒子を強固にエアフィルター用濾材に固定し、エアフィルター用濾材からの加熱膨張性粒子の脱落を抑制する。よって、その層間に、さらに機能性粒子が配されていれば、その機能性粒子も加熱膨張性粒子と同様にバインダーによりエアフィルター用濾材に固定され、エアフィルター用濾材からの機能性粒子の脱落も抑制される。
【0107】
また、エアフィルター用濾材が、積層された3枚以上の繊維シートを有し、2つ以上の層間を有する場合であって、機能性粒子が、加熱膨張性粒子およびバインダーを有する層間以外の層間に配されている場合には、その機能性粒子が配された層間もバインダーで固定されていることが好ましい。この様な形態とすることで、機能性粒子が配されている層間で、機能性粒子はバインダーによりエアフィルター用濾材に固定されるので、エアフィルター用濾材からの機能性粒子の脱落が抑制される。
【0108】
上記の加熱膨張性粒子や機能性粒子のエアフィルター濾材からの脱落の抑制の観点から、エアフィルター用濾材が有する1つの層間におけるバインダーの含有量は、加熱膨張性粒子、機能性粒子、バインダーや難燃剤などのその層間に配されるものの合計100質量%に対し、10質量%以上100質量%未満であることが好ましい。
【0109】
その含有量を10質量%以上とすることで、加熱膨張性粒子や機能性粒子などをエアフィルター用濾材に固定することができ、加熱膨張性粒子および機能性粒子などがエアフィルター用濾材から脱落をより抑制することができる。一方で、その含有量を100質量%未満とすることで、可燃性のバインダーの含有量を減らすことができ、エアフィルター用濾材の難燃性をより優れたものとすることができる。下限としては、20質量%以上がより好ましい。上限としては、50質量%以下とすることがより好ましい。
【0110】
次に、エアフィルター用濾材に用いることができる加熱膨張性粒子以外の難燃剤について説明する。エアフィルター用濾材は、加熱膨張性粒子以外に難燃剤を有することが好ましく、難燃性にさらに優れるエアフィルター用濾材を得ることができる。
【0111】
ここで、難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤およびこれらの複合系などの有機系難燃剤と、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンチモン系、シリコーン系などの無機系難燃剤を挙げることができる。
【0112】
環境適合性等の観点から、上記難燃剤のなかでもリン系難燃剤を用いることがより好ましい。リン系難燃剤としては、例えば、リン酸のほか、リン酸エステル、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素およびこれらの化合物のポリ化合物などが挙げられる。
【0113】
難燃性向上の観点から、エアフィルター用濾材が有する繊維シートの少なくとも一枚が難燃剤を含有することが好ましい。また、繊維シートの目詰まりを抑制して圧力損失を軽減する観点からは、繊維シート内ではなく、エアフィルター用濾材が有する層間に難燃剤を配することが好ましい。
【0114】
ここで、繊維シートへの難燃剤の付与方法としては、難燃剤を有する難燃繊維を使用する方法、繊維シートを構成する繊維間を結合するバインダーの中に難燃剤を含有させる方法など公知の方法から任意に選択できる。これら一つの方法で難燃性を達成しても構わないが、2つ以上の方法を併用しても構わない。
【0115】
繊維シートに含まれる難燃剤の含有量は、難燃剤を含む繊維シート100質量%に対し、1質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。下限としては、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、上限としては20質量%以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、難燃性を向上させ、繊維シートの剛性を保つことができ、さらに通気抵抗の上昇を抑制できる。
【0116】
上記難燃剤を、加熱膨張性粒子や機能性粒子が配されている層間に含有せしめる態様の場合、難燃剤の含有量は、その層間に配される加熱膨張性粒子、バインダーおよび難燃剤などの合計100質量%に対して、該難燃剤が3〜10質量%の範囲であることが好ましい。上記範囲とすることで、難燃性を向上させ、通気抵抗の上昇を抑制できる。
【0117】
さらに本発明のエアフィルター用濾材が有する繊維シートは、所望により抗菌、防黴、抗ウイルス、防虫、殺虫、害虫忌避などの機能を付与した機能性のものとすることが可能である。繊維シートにこれら機能を付与させる方法としては、繊維シートの原料に練り混む方法、繊維シートの湿式抄造において混抄する方法、繊維シートに塗布、印刷、含浸等する方法等、を用いることができる。
【0118】
次に、本発明のエアフィルター用濾材の製造方法について説明する。その製造方法の一例は、少なくとも1枚の繊維シートを有する第一の布帛の一方の面の上に加熱膨張性粒子とバインダーとを含む混合物を配置する工程と、上記の第一の布帛の上記の混合物が配置された側の面の上に、少なくとも1枚の繊維シートを有する第二の布帛を重ね合わせて積層体を得る工程と、上記のバインダーの融点以上、かつ、上記の加熱膨張性粒子の膨張開始温度以下の温度で、上記の積層体を加熱し、圧着する工程とを有する。
【0119】
ここで、第一の布帛の一方の面の上に加熱膨張性粒子とバインダーの混合物を配置する手法、第一の布帛と第二の布帛を重ね合わせて積層体を得る手法、および、その積層体を加熱し、圧着する手法は、当業者が、通常、行う手法を用いることができる。
【0120】
また、上記の第一の布帛および上記の第二の布帛は、それぞれ、繊維シートを1枚のみ有していてもよいし、積層された複数の繊維シートを有していてもよい。第一の布帛または第二の布帛が、積層された複数の繊維シートを有する場合、それらは少なくとも1つの隣り合う繊維シートの層間を有する。また、その層間は、繊維シート間の接着力向上の観点からバインダーを有していることが好ましい。また、その層間は、バインダーに加え、加熱膨張性粒子および/または機能性粒子を有していてもよい。
【0121】
また、エアフィルター用濾材の製造方法で用いられるバインダーは、上記のとおり、熱接着性粒子または熱接着性繊維であることが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、本明細書に記載の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0123】
[測定方法]
(1)加熱膨張性粒子または機能性粒子の数平均粒径[μm]
加熱膨張性粒子または機能性粒子を顕微鏡(SEM)で観察し、上記の粒子の最大径と最小径を測定し、それらの平均値を粒子径として、粒子100個の粒子径の算術平均値を数平均粒径とした。
【0124】
(2)エアフィルター用濾材の厚み[mm]
JIS L 1913(2010年) 6.1項記載の方法により測定した。
【0125】
(3)エアフィルター用濾材または繊維シートの目付け[g/m
2]
JIS L 1913(2010年) 6.2項記載の方法により測定した。
【0126】
(4)平均繊維径[μm]
顕微鏡で不織シートの表面を撮影し、繊維本数100本の繊維幅を測定して算術平均したものを平均繊維径とした。
【0127】
(5)エアフィルター用濾材の圧力損失[Pa]
平板状のエアフィルター用濾材を有効間口面積0.03m
2の風洞の通風路にセットし、風速10.8cm/秒で空気を透過させたときの、シートの上流側および下流側の差圧を、マノスターゲージを用いて測定した。
【0128】
(6)エアフィルター用濾材のダスト捕集効率[%]
平板状のエアフィルター用濾材を有効間口面積0.1m
2のホルダーにセットし、面風速10.8cm/秒で鉛直方向に空気を通過させ、上流側よりJIS Z 8901(2006年)に15種として規定される混合ダストを濃度70mg/m
3で供給した時のフィルター上下流の圧力差を差圧計で測定し、初期圧力損失から150Pa上昇するまでに供給されたダスト供給量W1と、その間のエアフィルター用濾材の質量変化W2からダスト捕集効率を次式より算出した。測定は1検体から任意に5か所をサンプリングして行い、その平均値を用いた。
ダスト捕集効率(%)=(W2/W1)×100
【0129】
(7)エアフィルター用濾材の脱臭効率[%]
平板状のエアフィルター用濾材を実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.1m/secの速度で送風した。さらに上流側から、標準ガスボンベによりトルエンを上流濃度70ppmとなるように添加し、シートの上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれのトルエン濃度を経時的に測定し、これからトルエンの脱臭効率および吸着容量を求めた。
脱臭効率(%)=[(C0−C)/C0]×100
ここで、C0:上流側のトルエン濃度(=80ppm)、C:下流側のトルエン濃度(ppm)である。トルエンの添加開始から3分後の脱臭効率を初期脱臭効率とした。実施例では、脱臭効率60%以上の場合に脱臭性能が高いと判断した。
【0130】
(8)エアフィルター用濾材の難燃性
FMVSS 302(JIS D1201(1998年))「内装材料の可燃性」の難燃レベルを基準として、実施例では、標線に達しなかった場合に「A」、標線に達し、かつ、燃焼速度が100mm/min以下となった場合に「B」、標線に達し、かつ、燃焼速度が100mm/minを超えた場合は「C」、と表記した。
【0131】
(繊維シートI)
繊度3dtexのポリエステル短繊維10質量%、繊度1.3dtexのポリエステル短繊維10質量%、繊度6.7dtexのビニロン短繊維15質量%、繊度17.0dtexのビニロン短繊維36質量%及びリン酸メラミン含有アクリル樹脂バインダー30質量%とからなる目付け46g/m
2の湿式抄紙不織布を繊維シートIとして得た。このときリン酸メラミンの含有量は、繊維シートI全体に対して15質量%であった。すなわち、繊維シートIは、後述する繊維シートIIIと比較し含まれる難燃剤の量が少ない低難燃支持体である。
【0132】
(繊維シートII)
繊度3dtexのポリエステル短繊維12.5質量%、繊度1.3dtexのポリエステル短繊維12.5質量%、繊度6.7dtexのビニロン短繊維17質量%、繊度17.0dtexのビニロン短繊維45質量%及びアクリル樹脂バインダー13質量%とからなる目付け37g/m
2の湿式抄紙不織布を繊維シートIIとして得た。すなわち、繊維シートIIは、難燃剤を含まない非難燃支持体である。
【0133】
(繊維シートIII)
繊度3dtexのポリエステル短繊維7.5質量%、繊度1.3dtexのポリエステル短繊維7.5質量%、繊度6.7dtexのビニロン短繊維9質量%、繊度17.0dtexのビニロン短繊維27質量%及びリン酸メラミン含有アクリル樹脂バインダー49質量%とからなる目付け62g/m
2の湿式抄紙不織布を繊維シートIIIとして得た。このときリン酸メラミンの含有量は、繊維シートIII全体に対して30質量%であった。すなわち、繊維シートIIIは、繊維シートIと比較し含まれる難燃剤の量が多い高難燃支持体である。
【0134】
(繊維シートIV)
ポリプロピレン樹脂をスパンボンド法により平均繊維径20μm、目付15g/m
2、厚み0.15mmとなるように製布した。すなわち、繊維シートIVは、スパンボンド不織布(SB)である。
【0135】
(繊維シートV)
ポリプロピレン繊維からなる平均繊維径6μm、目付30g/m
2、厚み0.20mmのエレクトレットメルトブロー不織布(東レ・ファインケミカル社製“トレミクロン(R)”)を使用した。すなわち、繊維シートVは、メルトブロー不織布(MB)である。
【0136】
[実施例1]
(繊維シートA)繊維シートI
(繊維シートB)繊維シートIV
(加熱膨張性粒子)
数平均粒径300μm、膨張開始温度300℃の膨張性黒鉛を加熱膨張性粒子として使用した。
(エアフィルター用濾材)
上記繊維シートA上にポリエチレン製の熱接着性粒子(以下、ポリエチレン粒子とする)を5g/m
2と上記加熱膨張性粒子8g/m
2を散布し、その上に上記繊維シートBを重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.7mmに設定することにより、目付け74g/m
2、厚さ0.65mmのエアフィルター用濾材を得た。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は11質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は38質量%であった。
【0137】
[実施例2]
繊維シートBに繊維シートVを使用した以外は実施例1と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け89g/m
2、厚さ0.66mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は9質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は38質量%であった。
【0138】
[実施例3]
(繊維シートA)繊維シートI
(繊維シートB)繊維シートIV
(機能性粒子)
数平均粒径270μmの粒状活性炭を機能性粒子として使用した。
(加熱膨張性粒子)
数平均粒径300μm、膨張開始温度300℃の膨張性黒鉛を加熱膨張性粒子として使用した。
(エアフィルター用濾材)
上記繊維シートA上に上記機能性粒子を200g/m
2とポリエチレン粒子を60g/m
2と上記加熱膨張性粒子8g/m
2を散布し、その上に上記繊維シートBを重ね合わせ、120℃に加熱した2本の回転ロール間に挟んでゲージ間を0.9mmに設定することにより、目付け329g/m
2、厚さ0.95mmのエアフィルター用濾材を得た。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は2質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は22質量%であった。
【0139】
[実施例4]
繊維シートBに繊維シートVを使用した以外は実施例3と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け344g/m
2、厚さ1.01mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は2質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は22質量%であった。
【0140】
[実施例5]
繊維シートAに繊維シートIIを使用した以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け335g/m
2、厚さ1.02mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は2質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は22質量%であった。
【0141】
[実施例6]
加熱膨張性粒子を16g/m
2とした以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け352g/m
2、厚さ1.04mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は5質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は22質量%であった。
【0142】
[実施例7]
加熱膨張性粒子を2g/m
2とした以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け338g/m
2、厚さ0.99mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は1質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は23質量%であった。
【0143】
[実施例8]
数平均粒径150μm、膨張開始温度180℃の膨張性黒鉛を加熱膨張性粒子として使用した以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け344g/m
2、厚さ1.01mmであった。このとき、エアフィルター用濾材全体に対する加熱膨張性粒子の含有量は2質量%であり、難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は22質量%であった。
【0144】
[比較例1]
加熱膨張性粒子を使用しない以外は実施例1と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け66g/m
2、厚さ0.65mmであった。難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は100質量%であった。
【0145】
[比較例2]
加熱膨張性粒子を使用しない以外は実施例2と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け81g/m
2、厚さ0.65mmであった。難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は100質量%であった。
【0146】
[比較例3]
加熱膨張性粒子を使用しない以外は実施例3と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け321g/m
2、厚さ1.01mmであった。難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は23質量%であった。
【0147】
[比較例4]
加熱膨張性粒子を使用しない以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け336g/m
2、厚さ1.02mmであった。難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は23質量%であった。
【0148】
[比較例5]
繊維シートAに繊維シートIIIを使用し、加熱膨張性粒子を使用しない以外は実施例4と同様にしてエアフィルター用濾材を作製した。目付け352g/m
2、厚さ1.10mmであった。難燃剤などの層間に配されるものの合計100質量%に対する層間のバインダーの含有量は23質量%であった。
【0149】
実施例1〜8および比較例1〜5のエアフィルター用濾材の構成および評価結果を表1、2および3に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
繊維シートAと繊維シートBの層間に加熱膨張性粒子を配置した実施例1および2のエアフィルター用濾材では難燃性に優れる結果となった。一方、同じ構成で加熱膨張性粒子を使用しなかった比較例1および2のエアフィルター用濾材では難燃性が実施例1および2のエアフィルター用濾材のそれに比べ劣る結果であった。
【0154】
繊維シートAと繊維シートBの層間に、機能性粒子である脱臭粒子と加熱膨張性粒子とバインダーを配置した構成の実施例3〜8のエアフィルター用濾材では、脱臭機能が付与されている。また、それらのエアフィルター用濾材では、脱臭粒子を固着させるために脱臭粒子が配されている層間(繊維シートAと繊維シートBの層間)における可燃物であるバインダーの含有量(絶対量)が多くなっている。しかし、実施例3〜8のエアフィルター用濾材は、上記の層間に加熱膨張性粒子を有するため、難燃性に優れる結果となった。
【0155】
一方で、同じ構成で加熱膨張性粒子を使用しなかった比較例3および4のエアフィルター用濾材では、その難燃性が実施例3〜8のエアフィルター用濾材のそれに比べ劣る結果であった。また、比較例5では、繊維シートAに難燃剤を多量に添加したため、その難燃性は、比較例3および4のエアフィルター用濾材の難燃性と比較し優れるものであったが、繊維シートAに多量の難燃剤を固定するためのバインダーの含有量が大きくなり、結果、エアフィルター用濾材の圧力損失が上昇する結果となった。
【0156】
以上の結果から、本発明のエアフィルター用濾材は、圧力損失を上昇させることなく、優れた難燃性を付与できることがわかる。したがって、本発明のエアフィルター用濾材は、フィルター用途、特に難燃性が要求されるキャビンフィルター用途に適しているといえる。
【0157】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2015年3月26日付で出願された日本特許出願(特願2015−064009)に基づいており、その全体が引用により援用される。