特許第6729560号(P6729560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6729560
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】導光板用成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/04 20060101AFI20200713BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   C08G64/04
   G02B1/04
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-509968(P2017-509968)
(86)(22)【出願日】2016年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2016059873
(87)【国際公開番号】WO2016158844
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-72686(P2015-72686)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】新居 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小川 典慶
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/132874(WO,A1)
【文献】 特開2006−028391(JP,A)
【文献】 特開2000−153535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00−64/42
G02B1/00−1/08、3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示す末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が13,000〜18,000であるポリカーボネート樹脂を含有する、導光板用射出成形体。
【化1】

(式中、
は2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基及びドコシル基からなる群のうち、いずれか一種以上であり、
〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基及び置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基からなる群のうちいずれかを表す。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(2)で表される構造単位を含有するものである、請求項1に記載の成形体。
【化2】

(式中、
〜R13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造である。)
【化3】

(式中、
14及びR15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、
cは1〜20の整数を表す。)
【化4】

(式中、R16及びR17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R16及びR17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化5】

(式中、R18〜R21はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R18及びR19並びにR20及びR21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化6】

(式中、R22〜R31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【請求項3】
前記末端構造が、下記一般式(8)で示される構造を有する、請求項1または2に記載の成形体。
【化7】

(式中、Rは、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基及びドコシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である。)
【請求項4】
前記一般式(2)におけるXが、前記一般式(3)の構造を有する、請求項2に記載の成形体。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂のQ値が、10×10-2cc/sec以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂のIzod衝撃強度が30J/m以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が90℃以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体を部材として含有する導光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む導光板用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット型端末等の各種携帯端末においては、液晶ディスプレイの薄肉化や大型薄肉化が著しいスピードで進行している。それに伴い、導光板への入光方法は、直下型から横側エッジより行うエッジ型を採用する場合が多くなり、超薄型の光源として十分な輝度とさらなる強度が要求されている。
【0003】
また、タッチパネルを搭載した液晶ディスプレイの場合、小型であっても導光板の損傷防止が重要になる。入力ペンや指などによる入力時の荷重によりタッチパネル表面に異常に大きな負荷がかかると、導光板にクラックやクレーズが発生し、導光板の上面の微細な突起形状が傷ついてしまう。
その結果、傷ついた箇所が点灯時に明るく発光し、液晶ディスプレイの視認性が著しく低下することになる。このような損傷を防ぐために、導光板の強度を向上することが重要となっている。特に大画面化した液晶ディスプレイでは、入力時の荷重による撓みが生じやすいため、導光板の耐衝撃性強度を向上することは極めて重要である。
【0004】
一般的に、熱可塑性樹脂を使用して大型・薄型の成形体を射出成形法によって製造する際には、高い転写性を確保するために、樹脂の流動性を高める必要がある。そのために樹脂の粘度平均分子量を低分子量化することが多い。しかし、樹脂の分子量があまりに小さくなると、成形体の強度が不足して、離型時に成形体に割れが生じやすくなる。そのため、低分子量化により樹脂の流動性を向上するには限界がある。
また、同じ構造単位から得られる熱可塑性樹脂であれば、ガラス転移温度(Tg)が低いほど、流動性や転写性に優れた成形体が得られる傾向がある。しかし、Tgをあまりに低くすると、耐熱性に優れた射出成形体を得ることができなくなる。
【0005】
例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA、以下BPAと略記)をホスゲンあるいは炭酸ジエステルと反応させて得られる従来のポリカーボネート樹脂(通称BPA−PC、以下BPA−PCと略記)は、耐熱性、透明性に優れ、しかも耐衝撃性等の機械的特性に優れていることから、構造材料はもとより、光学材料として液晶用導光板、光ディスク基板、各種レンズ、プリズム、光ファイバー等に幅広く利用されている。
【0006】
しかし、近年の光学材料用途の広がりに伴い、BPA−PCでは耐衝撃性が不足する場合があるため、耐衝撃性が改善された大型・薄型の導光板用射出成形体の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−300842号公報
【特許文献2】特開2000−153535号公報
【特許文献3】国際公開第2007/132874号
【特許文献4】特許第4156162号公報
【特許文献5】特許第3758951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1〜3には、主骨格はビスフェノールA型そのままに、末端停止剤の種類を変えることにより、射出成形に適したポリカーボネート樹脂を用いた光ディスク基板が開示されている。しかし、特許文献1〜3には、ポリカーボネート樹脂を用いた導光板については記載が無い上に、これらの文献に記載された樹脂は、大型導光板として用いるのに十分な耐衝撃性強度を有していない可能性がある。
特許文献4には長鎖アルキル基を末端基として有する、流動性が改善されたポリカーボネート樹脂を用いた導光板が提案されている。しかし、大型化には更なる流動性の改善が求められ、耐衝撃性についても改善する余地があった。
特許文献5には、長鎖アルキル基を末端基として有するポリカーボネート樹脂を用いて耐熱変色を改良した光学情報記録媒体用基板が提案されているが、導光板用成形体としては、耐衝撃性や転写性をさらに改善する余地があった。
【0009】
本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む、耐衝撃性の優れた導光板用成形体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の末端構造と特定の粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂を含む導光板用射出成形体は、従来のポリカーボネート樹脂よりなる成形体と比較して、耐衝撃性に優れ、且つ大型成形体となり得ることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下に示すポリカーボネート樹脂を含む導光板用射出成形体に関する。
<1>下記一般式(1)に示す末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が13,000〜18,000であるポリカーボネート樹脂を含有する、導光板用射出成形体。
【化1】
(式中、
は炭素数5〜23のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表し、
〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基及び置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基からなる群のうちいずれかを表す。)
<2>前記ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(2)で表される構造単位を含有するものである、<1>に記載の成形体。
【化2】
(式中、
〜R13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、
Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造である。)
【化3】
(式中、
14及びR15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、
cは1〜20の整数を表す。)
【化4】
(式中、R16及びR17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R16及びR17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化5】
(式中、R18〜R21はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R18及びR19並びにR20及びR21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化6】
(式中、R22〜R31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
<3>前記末端構造が、下記一般式(8)で示される構造を有する、<1>または<2>に記載の成形体。
【化7】
(式中、Rは、炭素数5〜23のアルキル基である。)
<4>前記一般式(8)におけるRが、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基及びドコシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である、<3>に記載の成形体。
<5>前記一般式(2)におけるXが、前記一般式(3)の構造を有する、<2>〜<4>のいずれかに記載の成形体。
<6>前記ポリカーボネート樹脂のQ値が、10×10-2cc/sec以上である<1>〜<5>のいずれかに記載の成形体。
<7>前記ポリカーボネート樹脂のIzod衝撃強度が30J/m以上である<1>〜<6>のいずれかに記載の成形体。
<8>前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が90℃以上である<1>〜<7>のいずれかに記載の成形体。
<9><1>〜<8>のいずれかに記載の成形体を部材として含有する導光板。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導光板射出用成形体は、従来の成形体に比べて、耐衝撃性が優れ、容易に大型化が可能となり得る。また、本発明の成形体は、ポリカーボネート樹脂本来の特長を維持したまま、液晶用導光板に要求される特性(例えば、耐衝撃性、転写性、耐熱性、透明性、色相)を保持できるため、薄肉・大型化した光学材料、特に導光板用射出成形体として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
【0013】
〔導光板用射出成形体〕
本発明の導光板用射出成形体は、特定の構造および粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂を含有している。以下にそのポリカーボネート樹脂について説明する。
【0014】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)に示す末端構造を有し、かつ、粘度平均分子量が13,000〜18,000である。
【化8】
【0015】
一般式(1)中、Rは炭素数5〜23のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基及び置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基からなる群のうちいずれかを表す。ここで、上記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。
【0016】
また、一般式(1)で示される末端構造は、一般式(8)で表されるものであることがさらに好ましい。
【化9】
一般式(8)中、Rは、炭素数5〜23のアルキル基を表す。より好ましいRは炭素数6〜22、さらに好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基である。Rは、具体的には、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基及びドコシル基からなる群のうち、いずれか一種以上であるのが好ましい。
【0017】
該ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物、炭酸エステル形成化合物を用いて重合を行い、一般式(1a)で表される末端停止剤により反応を停止させて得られる。
【化10】
下記にポリカーボネート樹脂のそれぞれの原料について詳述する。
【0018】
<ジヒドロキシ化合物>
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂に用いるジヒドロキシ化合物は、分子中に二つの水酸基を有するフェノール系化合物であれば特に限定されないが、得られる成形体の耐衝撃性と、純度が高く、流通量が多いという観点から一般式(7)で表される2価フェノールのものが好ましい。このような2価フェノールを用いることで、得られるポリカーボネート樹脂が一般式(2)で表される構造単位を有することとなる。
【化11】
【0019】
一般式(7)中、R〜R13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造である。
【0020】
【化12】

一般式(3)中、R14及びR15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。ここで、上記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。cは1〜20の整数、好ましくは1〜12、さらに好ましくは1の整数を表す。
【0021】
【化13】
一般式(4)中、R16及びR17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。ここで、上記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。R16及びR17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の炭素環又は複素環を形成してもよい。
【0022】
【化14】
一般式(5)中、R18〜R21はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜5のアルケニル基を表す。ここで、上記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。また、R18とR19及びR20とR21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。
【0023】
【化15】
一般式(6)中、R22〜R31は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R22〜R31のうち少なくとも1つ、好ましくは3つが炭素数1〜3のアルキル基である。
【0024】
一般式(7)で示されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[=ビスフェノールZ]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンがより好ましく、モノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物量が少ないものの入手が容易である等の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)が特に好ましい。
これらのジヒドロキシ化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
また、本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂は、必要に応じて分岐構造を有しても良い。分岐したポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で表されるポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等で表される多官能化合物を上述したジヒドロキシ化合物の一部として置き換えて用いればよく、使用量としては、全ジヒドロキシ化合物の0.01〜10モル%、好ましくは、0.1〜3モル%を置き換えることができる。
【0026】
<炭酸エステル形成化合物>
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂に用いる炭酸エステル形成化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、炭酸ジエステル、及び、カルボニル化合物が例示される。炭酸エステル形成化合物の中でも、特にホスゲンが、得られる樹脂の色相や安定性などの品質、更にはコストの観点から好ましい。
【0027】
カルボニル化合物としては、例えば一酸化炭素、二酸化炭素が挙げられる。
【0028】
炭酸ジエステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、およびジ−p−クロロフェニルカーボネート等の炭酸ジアリール化合物が挙げられる。これらの中でも、ジフェニルカーボネート、ならびにジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、およびジ−p−クロロフェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の色相、更にはコストの観点から好ましく、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
<末端停止剤>
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂に用いる末端停止剤は、下記一般式(1a)で表される1価フェノールである。
【0030】
【化16】
一般式(1a)中、Rは炭素数5〜23のアルキル基又は炭素数8〜36のアルケニル基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基を表す。R〜Rは、好ましくは、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜9のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数6〜8のアリール基である。ここで、上記置換基はそれぞれ独立に、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基である。
【0031】
一般式(1a)中、Rは、炭素数5〜23のアルキル基又は炭素数8〜36のアルケニル基であることが、流動性と熱安定性を保持する観点から好ましい。
一般式(1a)におけるRの炭素数が23以下の場合は、本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂のTgが比較的高くなり、熱安定性が向上する傾向があり、Rの炭素数が5を上回る場合、流動性と耐衝撃性が向上する傾向がある。
【0032】
また、一般式(1a)で表される末端停止剤は、一般式(8a)で表されるものであることがさらに好ましい。
【化17】
一般式(8a)中、Rは、炭素数5〜23のアルキル基を表す。より好ましいRは炭素数6〜22、さらに好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基である。
【0033】
末端停止剤の具体例としては、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸ドコシルエステルのいずれかもしくは複数を末端停止剤として使用することが、耐熱性の観点から好ましい。
さらに、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステルのいずれかもしくは両方を末端停止剤として使用することが、耐熱性に加え、入手のし易さの観点からより好ましい。
【0034】
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂の製造条件によっては、末端停止剤と反応しないフェノール性OH基のままの末端基が形成され得る。このフェノール性OH基は、耐加水分解性の観点から、少ないほど好ましい。具体的には、全末端中の80mol%以上が一般式(1)で表される構造で封止されていることが好ましく、全末端中の90mol%以上が一般式(1)で表される構造で封止されていることが特に好ましい。
【0035】
本発明に用いる末端停止剤は、材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で2種類以上併用してもよく、一般式(1a)で示される構造以外の構造のものと併用することは許容される。
併用してもよい末端停止剤としては、フェノール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,4−キシレノール、p−t−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、p−アリルフェノール、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−プロピルフェノール、p−クミルフェノール、p−フェニルフェノール、o−フェニルフェノール、p−トリフルオロメチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、オイゲノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール、パルミチルフェノール、ステアリルフェノール、ベヘニルフェノール等のアルキルフェノール及びパラヒドロキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アミルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル等のパラヒドロキシ安息香酸アルキルエステルが挙げられる。また、上記末端停止剤を2種類以上併用して使用することも可能である。特に併用してもよい末端停止剤は、純度やコストの観点から、p−t−ブチルフェノールである。
他の末端停止剤を使用する場合は、全末端停止剤中の20mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましい。
【0036】
<末端停止剤(1価フェノール)の使用量>
本発明の導光板用射出成形体に含まれるポリカーボネート樹脂は、末端停止剤の使用量によって分子量が制御される。
主骨格のために使用するジヒドロキシ化合物の重合度と、末端停止剤の使用量は下記数式(I)に示される。
【数1】
【0037】
この式に基づいて末端停止剤(1価フェノール)とジヒドロキシ化合物の使用量が定められるが、ジヒドロキシ化合物の使用量(モル):末端停止剤の使用量(モル)の好ましい範囲は、50:1〜4:1であり、さらに好ましくは40:1〜6:1の範囲であり、特に好ましくは20:1〜6:1ある。
【0038】
本発明の導光板用射出成形体に含有されるポリカーボネート樹脂は、材料に対する要求特性により、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、他の樹脂や、種々の添加剤と混合したりすることは許容される。
【0039】
[混合できる他の樹脂]
本発明の導光板用射出成形体には、必要に応じて、他の樹脂が含まれていてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、本発明で用いるポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン等を挙げることができる。特に好ましい混合樹脂としては、PS樹脂、AS樹脂、PMMA樹脂が挙げられる。
本発明の導光板用射出成形体中における、他の樹脂の成分割合は、全樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。他の樹脂の成分割合を10質量%以下とすることで、諸物性を維持することができる。
【0040】
[添加剤]
本発明の導光板用射出成形体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤から成る群から選択された少なくとも1種類の添加剤が例示される。
また、所望の諸物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0041】
熱安定剤としては、フェノール系やリン系、硫黄系の熱安定剤を挙げることができる。具体的には、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等のリンのオキソ酸; 酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等の酸性ピロリン酸金属塩; リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等、第1族又は第10族金属のリン酸塩; 有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物等を挙げることができる。あるいは、分子中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル化合物(a)、亜リン酸(b)及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト(c)の群から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。亜リン酸エステル化合物(a)の具体例として、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等を挙げることができる。
【0043】
また、リン酸系安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0044】
熱安定剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0045】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3 −(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4− ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。 フェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等を挙げることができる。なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0046】
酸化防止剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の添加割合が少なすぎると、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の添加割合が多すぎると、効果が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0047】
難燃剤としては、有機スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、金属塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを挙げることができる。アルカリ土類金属として、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。本発明で用いる有機スルホン酸金属塩の好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属であり、より好ましくはナトリウム、カリウムである。このような金属を採用することにより、燃焼時の炭化層形成を効果的に促進し、高い透明性も維持できるという効果が得られる。
【0048】
脂肪族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩を挙げることができる。
また、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩として、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができ、その中でもアルカリ金属塩が好ましい。フルオロアルカンスルホン酸金属塩の炭素数としては、1〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。このような範囲とすることにより、高い透明性を維持できるという効果が得られる。好ましいフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例として、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロエタン−スルホン酸カリウム、等を挙げることができる。
【0049】
芳香族スルホン酸金属塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を挙げることができ、アルカリ金属塩が好ましい。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩等を挙げることができる。
【0050】
本発明による導光板用射出成形体に用いることができる有機スルホン酸金属塩は、特に、成形体の透明性を向上させる観点から、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、p−トルエンスルホン酸カリウム塩、p−スチレンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩が好ましく、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩がより好ましい。尚、ポリカーボネート樹脂100質量部に対する、有機スルホン酸金属塩の添加質量は、0.005質量部〜0.1質量部であるが、好ましくは0.01質量部〜0.1質量部、より好ましくは0.03質量部〜0.09質量部である。また、本発明では、有機スルホン酸金属塩以外の難燃剤を配合してもよい。
【0051】
難燃助剤として、例えばシリコーン化合物を加えることができる。シリコーン化合物としては、分子中にフェニル基を有するものが好ましい。フェニル基を有することによりシリコーン化合物のポリカーボネート中への分散性が向上し、透明性と難燃性に優れる。シリコーン化合物の好ましい質量平均分子量は450〜5,000であり、中でも750〜4,000、更には1,000〜3,000、特に1,500〜2,500であることが好ましい。質量平均分子量を450以上とすることにより、製造が容易になり、工業的生産への適応が容易となり、シリコーン化合物の耐熱性も低下しにくくなる。逆にシリコーン化合物の質量平均分子量を5,000以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂中での分散性が低下しにくく、その結果、成形体の難燃性の低下や、機械物性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0052】
難燃助剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上であり、また、7.5質量部以下、好ましくは5質量部以下である。難燃助剤の添加割合が少なすぎると、難燃性が不十分となる可能性があり、難燃助剤の添加割合が多すぎると、デラミ等外観不良が発生し透明性が低下すると共に、難燃性が頭打ちとなり、経済的でなくなる可能性がある。
【0053】
紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物、サリチル酸フェニル系化合物等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物の具体例として、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]、[メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例として、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等を挙げることができる。また、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例として、フェニルサリシレート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート等を挙げることができる。更には、トリアジン系紫外線吸収剤の具体例として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール等を挙げることができる。また、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等を挙げることができる。
【0054】
紫外線吸収剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の添加割合が少なすぎると、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の添加割合が多すぎると、成形体にモールドデボジット等が生じ、成形時に金型汚染を引き起こす可能性がある。
【0055】
離型剤としては、カルボン酸エステル、ポリシロキサン化合物、パラフィンワックス(ポリオレフィン系)等の離型剤を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。脂肪族カルボン酸として、飽和または不飽和の脂肪族1価、2価または3価カルボン酸を挙げることができる。ここで、脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中でも、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価または2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。脂肪族カルボン酸の具体例として、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸として、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとして、飽和または不飽和の1価または多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが更に好ましい。ここで、脂肪族には脂環式化合物も包含される。アルコールの具体例として、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。尚、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例として、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等を挙げることができる。数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素として、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等を挙げることができる。ここで、脂肪族炭化水素には脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5,000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であってもよく、主成分が上記の範囲内であればよい。ポリシロキサン系シリコーンオイルとして、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等を挙げることができる。これらの2種類以上を併用してもよい。
離型剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。離型剤の添加割合が少なすぎると、成形時の離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の添加割合が多すぎると、成形体の耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等が生じる可能性がある。
【0056】
着色剤としての染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料等を挙げることができる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系顔料等を挙げることができる。また、着色剤としての有機顔料および有機染料として、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;キノリン系、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等を挙げることができる。そして、これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、カーボンブラック、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系染顔料等が好ましい。尚、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。また、染顔料は、押出時のハンドリング性改良、樹脂組成物中への分散性改良の目的のために、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂とマスターバッチ化されたものも用いてもよい。
着色剤の添加割合は、配合する場合、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、例えば5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。着色剤の添加割合が多すぎると成形体の耐衝撃性が十分で無くなる可能性がある。
【0057】
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明の成形体に含まれるポリカーボネート樹脂は、公知の方法に基づき合成することができ、例えば、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法、環状カーボネート化合物の開環重合法をはじめとする各種合成方法を挙げることができる。具体的には、ジヒドロキシ化合物と、炭酸エステル形成化合物とを、反応させることによって直鎖状熱可塑性ポリカーボネートの重合体が得られる。また、上記ポリヒドロキシ化合物や多官能化合物を併用した場合は、分岐状熱可塑性ポリカーボネートの共重合体が得られる。
【0058】
界面重合法による反応にあっては、反応に不活性な有機溶媒、アルカリ水溶液の存在下で、通常pHを10以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物および末端停止剤、必要に応じて芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のための酸化防止剤を用い、ホスゲンと反応させた後、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加し、界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得ることができる。末端停止剤の添加は、ホスゲン化時から重合反応開始時までの間であれば、特に限定されない。尚、反応温度は0〜35℃であり、反応時間は数分〜数時間である。
【0059】
ここで、反応に不活性な有機溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。末端停止剤として、先に挙げた化合物の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、一価のフェノール性水酸基を有する化合物を併用することができる。重合触媒として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0060】
上記方法で得られたポリカーボネート樹脂のフレークは、例えば、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液を45℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去することで得ることができるし、あるいは、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をメタノール中に投入し、析出したポリマーを濾過、乾燥して得ることができるし、あるいは、界面重合法にて得られたポリカーボネート樹脂を含んだジクロロメタン溶液をニーダーにて攪拌下、40℃に保ちながら攪拌粉砕後、95℃以上の熱水で脱溶剤して得ることができる。
【0061】
エステル交換法による反応は、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応である。通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率を調整したり、反応時の減圧度を調整したりすることによって、所望のポリカーボネート樹脂の分子量と末端ヒドロキシル基量が決められる。末端ヒドロキシル基量は、ポリカーボネート樹脂の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには、好ましくは1,000ppm以下であり、より好ましくは700ppm以下である。ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モルの量で用いられる。
【0062】
エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を合成する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいは、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。このような原料を用いたエステル交換反応では、2価フェノール、1価フェノール(末端停止剤)、炭酸ジエステルの混合物を、溶融下に、反応器に供給し、100〜320℃の温度で反応を行い、最終的には2.7×102Pa(2mmHg)以下の減圧下、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。溶融重縮合は、バッチ式、又は、連続的に行うことができるが、本発明で用いるポリカーボネート樹脂にあっては、安定性等の観点から、連続式で行うことが好ましい。エステル交換法において、ポリカーボネート樹脂中の触媒の失活剤として、触媒を中和する化合物、例えばイオウ含有酸性化合物、又は、それより形成される誘導体を使用することが好ましく、その量は、触媒のアルカリ金属に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量の範囲であり、ポリカーボネート樹脂に対して通常1〜100ppm、好ましくは1〜20ppmの範囲で添加する。
【0063】
本発明の導光板用射出成形体に含まれるポリカーボネート樹脂は、種々の添加剤を任意の割合で添加してもよく、周知のストランド方式のコールドカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物をストランド状に成形、冷却後、所定の形状に切断してペレット化する方法)、空気中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂を、空気中で水に触れぬうちにペレット状に切断する方法)、水中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂を、水中で切断し、同時に冷却してペレット化する方法)によって、ポリカーボネート樹脂ペレットを得ることができる。得られたポリカーボネート樹脂ペレットは、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用いた乾燥といった方法に基づき乾燥させることが好ましい。
【0064】
[評価方法]
<分子量>
本発明の成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の分子量はウベローデ粘度計を用い、以下に示す条件にて測定した粘度平均分子量(Mv)にて評価する。
【0065】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、下記数式(II)により算出する。
【数2】
【0066】
本発明の導光板用射出成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、13,000以上18,000以下である。好ましくは粘度平均分子量(Mv)が14,000以上18,000以下であり、より好ましくは粘度平均分子量(Mv)が15,000以上18,000以下であり、特に好ましくは粘度平均分子量(Mv)が15,000以上17,000以下である。粘度平均分子量(Mv)が13,000以上の場合は機械的強度が向上し、18,000以下の場合は、溶融粘度が低くなり流動性が向上し、薄肉・大型の成型品の成形が容易になる。
【0067】
<容量流速(Q値)>
本発明の導光板用射出成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の溶融流動性は高化式フローテスターを用い、以下に示す条件にて測定した容量流速(Q値)にて評価する。Q値が高いと溶融流動性が高いことを示し、Q値が低いと溶融流動性が低いことを示す。
【0068】
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター
荷重:160kgf/cm
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:240℃
試験には例えば、株式会社島津製作所製CFT−500Dを使用することができる。
【0069】
上記測定条件で測定した本発明の導光板用射出成形体に含まれるポリカーボネート樹脂のQ値は、測定温度240℃において、好ましくは10×10-2cc/sec以上であり、より好ましくは13×10-2cc/sec以上であり、特に好ましくは15×10-2cc/sec以上であり、最も好ましくは19×10-2cc/sec以上である。このような範囲とすることにより、薄肉・大型の成形体の成形が可能となる。導光板用射出成形体の生産安定性が良好となり、成形体生産時のエネルギー消費量も抑制できる。一方、上記のQ値が10×10-2cc/sec未満となると、溶融流動性が低くなるため、通常より高温条件で導光板を成形する必要があり、エネルギー消費量が増加したり、樹脂が分解する傾向がある。また、Q値は100×10-2cc/sec以下であることが好ましく、80×10-2cc/sec以下であることがより好ましい。Q値が100×10-2cc/sec以下の場合、スプルー折れや空洞の発生等の成形不良をより効果的に防止できる傾向がある。
【0070】
<ガラス転移温度の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)
加温速度:10℃/分
ガスフロー環境:窒素20ml/分
試料前処理:300℃加熱融解
試験には例えば、株式会社島津製作所製示差走査熱量測定機(DSC)DSC−50を使用することができる。
【0071】
本発明の成形体に含まれるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは95℃以上であり、特に好ましくは100℃以上である。このような範囲とすることにより、耐熱性に優れた製品が得られる。上記のガラス転移温度が90℃以上であれば、上記ポリカーボネート樹脂の製造上、造粒、乾燥工程においてポリカーボネート樹脂粉末が凝集し、著しく生産性が低下することをより効果的に防止することができる。
【0072】
<Izod衝撃強度>
本発明の成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の耐衝撃性は、ASTM−D256に基づいて、Izod衝撃強度により評価する。試験には例えば、東洋精機製作所製Izod衝撃試験機を使用することができる。
【0073】
本発明の成形体のIzod衝撃強度は、好ましくは30J/m以上であり、より好ましくは50J/m以上であり、特に好ましくは80J/m以上である。このような範囲とすることにより、成形時や成形後の成形体の割れ、クラック発生をより効果的に防止することができる。
【0074】
〔用途〕
本発明の導光板用射出成形体は、従来の成形体に比べて、耐衝撃性が優れ、容易に大型化が可能となり得ることから、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野の導光板として好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。本発明の一態様によれば、本発明の成形体を部材として含有する導光板が提供される。
【0075】
〔成形方法〕
本発明の導光板用射出成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用することができる。その例を挙げると、溶融射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等が挙げることができる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。特に好ましくは、溶融射出成形法である。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例で使用した原料および評価方法は次の通りである。
【0077】
<分子量の測定>
本実施例において得られた成形体に含まれるポリカーボネート樹脂の分子量は、ウベローデ粘度計を用い、以下に示す条件にて測定した粘度平均分子量(Mv)にて評価した。
【0078】
<粘度平均分子量(Mv)測定条件>
測定機器:ウベローデ毛管粘度計
溶媒:ジクロロメタン
樹脂溶液濃度:0.5グラム/デシリットル
測定温度:25℃
上記条件で測定し、ハギンズ定数0.45で極限粘度[η]デシリットル/グラムを求め、下記数式(II)により算出した。
【数3】
【0079】
<成形性評価>
射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で3.5インチ、厚み0.4mmの導光板型試験片を成形し、その際に充填不足や成型品の変形や、割れの発生の有無等により、成形体の評価を行った。
【0080】
<Q値測定条件>
測定機器:流動特性評価装置フローテスター
荷重:160kgf/cm
オリフィス:直径1mm×長さ10mm
測定温度:240℃
測定機器:株式会社島津製作所製CFT−500D
【0081】
<ガラス転移温度の測定条件>
測定機器:示差走査熱量測定機(DSC)
加温速度:10℃/分
ガスフロー環境:窒素20ml/分
試料前処理:300℃加熱融解
測定機器:株式会社島津製作所製示差走査熱量測定機(DSC)DSC−50
【0082】
<Izod衝撃強度>
本発明の成形体の耐衝撃性は、STM−D256に基づいて、ノッチ付きIzod衝撃強度により評価した。
測定機器:東洋精機製作所製Izod衝撃試験機
【0083】
〔末端停止剤の製造〕
<製造例1>
有機化学ハンドブック(第3版:有機合成化学協会編:技術堂発行)の第143頁〜150頁の記載に基づき、東京化成工業株式会社製の4−ヒドロキシ安息香酸と東京化成工業株式会社製の1−ブタノールを用いて脱水反応によるエステル化を行い、パラヒドロキシ安息香酸ブチル(末端停止剤1)を得た。
【0084】
<製造例2>
1−ブタノールを三菱化学株式会社製の2−エチルヘキサノールに変更した以外は、製造例1と同様にして、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル(末端停止剤2)を得た。
【0085】
<製造例3>
1−ブタノールを東京化成工業株式会社製の1−ヘキサデカノールに変更した以外は、製造例1と同様にして、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル(末端停止剤3)を得た。
【0086】
<製造例4>
1−ブタノールを東京化成工業株式会社製の1−ドコサノールに変更した以外は、製造例1と同様にして、パラヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル(末端停止剤4)を得た。
【0087】
<製造例5>
1−ブタノールを東京化成工業株式会社製の1−テトラコサノールに変更した以外は、製造例1と同様にして、パラヒドロキシ安息香酸テトラコシルエステル(末端停止剤5)を得た。
【0088】
〔ポリカーボネート樹脂を含有する導光板用射出成形体の製造〕
<実施例1>
9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液57.2kgに、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA(BPA)7.1kg(31.14mol)とハイドロサルファイト30gを加えて溶解した。これにジクロロメタン40kgを加え、撹拌しながら、溶液温度を15℃〜25℃の範囲に保ちつつ、ホスゲン4.33kgを30分かけて吹き込んだ。
【0089】
ホスゲンの吹き込み終了後、9w/w%の水酸化ナトリウム水溶液6kg、ジクロロメタン11kg、及びジクロロメタン10kgに前記の末端停止剤2を628g(2.51mol)溶解させた溶液を加え、激しく撹拌して乳化させた後、重合触媒として10mlのトリエチルアミンを加え約40分間重合させた。
【0090】
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで純水で水洗を繰り返した。この精製されたポリカーボネート樹脂溶液から有機溶媒を蒸発留去することによりポリカーボネート樹脂粉末を得た。
【0091】
得られたポリカーボネート樹脂粉末をスクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0092】
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを用いて、粘度平均分子量、ガラス転移点、Q値測定を実施した結果、粘度平均分子量18,000、ガラス転移点(Tg)125℃、Q値10×10−2cc/secであった。
【0093】
得られたペレットを100℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(新興セルビック社製「C-Mobile」)により、樹脂温度300℃、金型温度80℃でIzod衝撃試験用試験片を成形し、ASTM D256に準拠してノッチ付きIzod衝撃試験を実施した。
【0094】
Izod衝撃強度を測定した結果、450J/mであった。
【0095】
さらに得られた乾燥ペレットを用いて、射出成形機(ソディック社製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で3.5インチ、厚み0.4mmの導光板型試験片を成形した。その際に、充填不足や成形体に変形・割れの発生について成形性を確認した。成形性において問題なく良好な成形体が得られた場合を「○」、問題が発生し不良だった場合を「×」とした。
【0096】
成形性は、良好であった。
【0097】
<実施例2>
末端停止剤2の量を643g(2.57mol)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0098】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16,500、ガラス転移点(Tg)は120℃、Q値は15×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は190J/mであり、成形性は良好であった。
【0099】
<実施例3>
末端停止剤2の量を818g(3.27mol)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0100】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は15,000、ガラス転移点(Tg)は118℃、Q値は27×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は200J/mであり、成形性は良好であった。
【0101】
<実施例4>
末端停止剤2の量を943g(3.77mol)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0102】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000、ガラス転移点(Tg)は99℃、Q値は70×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は50J/mであり、成形性は良好であった。
【0103】
<実施例5>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を897g(2.47mol)の末端停止剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0104】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は18,000、ガラス転移点(Tg)は115℃、Q値は20×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は350J/mであり、成形性は良好であった。
【0105】
<実施例6>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1143g(3.15mol)の末端停止剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0106】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は15,000、ガラス転移点(Tg)は104℃、Q値は35×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は180J/mであり、成形性は良好であった。
【0107】
<実施例7>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1310g(3.61mol)の末端停止剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0108】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000、ガラス転移点(Tg)は95℃、Q値は57×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は50J/mであり、成形性は良好であった。
【0109】
<実施例8>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1565g(3.51mol)の末端停止剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0110】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は18,000、ガラス転移点(Tg)は110℃、Q値は19×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は300J/mであり、成形性は良好であった。
【0111】
<実施例9>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1717g(3.85mol)の末端停止剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0112】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16,000、ガラス転移点(Tg)は101℃、Q値は35×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は190J/mであり、成形性は良好であった。
【0113】
<実施例10>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を2130g(4.78mol)の末端停止剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0114】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000、ガラス転移点(Tg)は90℃、Q値は70×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は50J/mであり、成形性は良好であった。
【0115】
<比較例1>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を448g(2.31mol)の末端停止剤1に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0116】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は15,000、ガラス転移点(Tg)は128℃、Q値は9×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は230J/mであり、成形性は不良であった。
【0117】
<比較例2>
末端停止剤2の量を291g(1.16mol)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0118】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は24,000、ガラス転移点(Tg)は138℃、Q値は1×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は700J/mであり、成形性は不良であった。
【0119】
<比較例3>
末端停止剤2の量を1171g(4.69mol)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0120】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000、ガラス転移点(Tg)は85℃、Q値は104×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は10J/mであり、成形性は不良であった。
【0121】
<比較例4>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を730g(2.01mol)の末端停止剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0122】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20,000、ガラス転移点(Tg)は119℃、Q値は9×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は530J/mであり、成形性は不良であった。
【0123】
<比較例5>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1775g(4.89mol)の末端停止剤3に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0124】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000、ガラス転移点(Tg)は71℃、Q値は93×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は10J/mであり、成形性は不良であった。
【0125】
<比較例6>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1267g(2.84mol)の末端停止剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0126】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22,000、ガラス転移点(Tg)は117℃、Q値は4×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は650J/mであり、成形性は不良であった。
【0127】
<比較例7>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を2163g(4.85mol)の末端停止剤4に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0128】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は10,000、ガラス転移点(Tg)は80℃、Q値は90×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は10J/mであり、成形性は不良であった。
【0129】
<比較例8>
628g(2.51mol)の末端停止剤2を1824g(3.85mol)の末端停止剤5に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂ペレット及び成形体を得た。
【0130】
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16,000、ガラス転移点(Tg)は85℃、Q値は36×10−2cc/sec、Izod衝撃強度は180J/mであり、成形性は不良であった。
【0131】
【表1】
上述のように流動性、衝撃強度に優れたポリカーボネート樹脂を含むことにより、耐衝撃性が良好な導光板用射出成形体を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のポリカーボネート樹脂を含む成形体は、樹脂の流動性が高く、耐衝撃性の必要な導光板用射出成形体として好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。
【0133】
本発明は、以下の態様をも含むものである。
<1>下記一般式(1a)で表される1価フェノールを末端停止剤として反応させて得られるポリカーボネート樹脂を含有する、導光板用射出成形体。
【化18】

(式中、Rは炭素数5〜23のアルキル基、又は、炭素数8〜36のアルケニル基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基及び置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基からなる群のうちいずれかを表す。)
<2>前記ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(2)で表される構造単位を含有するものである、<1>に記載の成形体。
【化19】
(式中、R〜R13はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基及び置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルケニル基からなる群のうちいずれかを表し、Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び下記一般式(3)〜(6)からなる群のうち、いずれかの構造である。)
【化20】
(式中、R14及びR15はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、cは1〜20の整数を表す)
【化21】
(式中、R16及びR17はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R16及びR17はそれぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化22】
(式中、R18〜R21はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2〜5のアルケニル基及び置換基を有してもよい炭素数7〜17のアラルキル基からなる群のうちいずれかを表し、R18及びR19並びにR20及びR21は、それぞれ互いに結合して、炭素数1〜20の炭素環又は複素環を形成してもよい。)
【化23】
(式中、R22〜R31はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。
<3>前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、13,000〜18,000である、<1>又は<2>に記載の成形体。
<4>前記一般式(1a)が、下記一般式(8a)である、<1>〜<3>のいずれかに記載の成形体。
【化24】
(式中、Rは、炭素数5〜23のアルキル基である。)
<5>前記一般式(8a)におけるRが、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基及びヘキサデシル基からなる群のうち、いずれか一種以上である、<4>に記載の成形体。
<6>前記一般式(2)におけるXが、前記一般式(3)である、<2>〜<5>のいずれかに記載の成形体。
<7>前記ポリカーボネート樹脂のQ値が、10×10-2cc/sec以上である<1>〜<6>のいずれかに記載の成形体。
<8>前記ポリカーボネート樹脂のIzod衝撃強度が30J/m以上である<1>〜<7>のいずれかに記載の成形体。
<9>前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が90℃以上である<1>〜<8>のいずれかに記載の成形体。
<10><1>〜<9>に記載のいずれか一項に記載の成形体を部材として含有する導光板。