(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6729619
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20200713BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
B66B5/00 F
B66B3/00 L
B66B3/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-55787(P2018-55787)
(22)【出願日】2018年3月23日
(65)【公開番号】特開2019-167202(P2019-167202A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古結 敬次
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 卓哉
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−037517(JP,A)
【文献】
特開2016−023043(JP,A)
【文献】
特開2011−255982(JP,A)
【文献】
特開平04−075979(JP,A)
【文献】
特開2010−269875(JP,A)
【文献】
特開2010−023934(JP,A)
【文献】
特開2014−169144(JP,A)
【文献】
特開2017−132634(JP,A)
【文献】
特開2014−001038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内操作部とかご制御装置を具えるかごと、
前記かごの運行を制御するエレベーター制御装置と、
乗場に設置された乗場呼び操作部と、
を具え、
前記かごは、前記かご制御装置に連繋され、前記かご内の状況を検知する検知手段を具え、
前記乗場は、前記検知手段により検知された前記かご内の状況を表示する表示部を具え、
前記乗場には、利用者が前記乗場呼び操作部を操作することにより前記エレベーター制御装置が前記かごに乗場呼びを割り当てた状態で、前記かごが前記乗場を通過する通過操作部を有し、
前記エレベーター制御装置は、前記かご内操作部又は他の階床の乗場の乗場呼び操作部により、前記利用者の乗場を通過するかご呼び又は前記利用者の乗場を通過する乗場呼びが割り当てられた状態で、前記利用者の乗場の通過操作部が操作されると、前記利用者の乗場で前記かごを通過させる、
エレベーターシステムであって、
前記エレベーター制御装置は、前記かご内操作部により入力された新たなかご呼びの行先階が前記乗場である場合、前記乗場呼び操作部が操作されていない状態で通過操作部が操作された場合、前記乗場呼び操作部の何れか一方が操作されている状態で前記乗場呼び操作部の行先方向と前記かごの走行方向が異なる時に前記通過操作部が操作された場合、又は、前記通過操作部が操作された後再度前記通過操作部を操作した場合に、前記乗場で前記かごを停止させる、
ことを特徴とするエレベーターシステム。
【請求項2】
前記通過操作部は、前記乗場呼び操作部と共に前記乗場に設置される乗場操作パネルに配置される、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記乗場呼び操作部に所定の操作を行なうことにより、前記乗場呼び操作部が前記通過操作部として機能する、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前記通過操作部は、前記利用者の携帯型端末に表示される、
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗場呼びを行なった後、かご内の状況に応じて到着予定のかごを通過させることのできるエレベーターシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットを同伴してかごに乗車する利用者が、他者との同乗を控えるために、ペットボタンを乗場に配置したエレベーターシステムが提案されている(たとえば特許文献1参照)。当該ペットボタンを操作することにより、途中階での乗場呼びに応答することなく、かご呼びの行先階まで直行させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−233554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、先にかごに乗り込む利用者が操作することで、途中階の乗場呼びに応答せず、通過するようにしている。しかしながら、途中階から乗場呼びを行なった利用者も、かご内の状況、たとえば、同乗したくない乗客や混雑状況によっては、かごの通過を望むこともある。
【0005】
本発明の目的は、利用者がかご内の状況に応じてかごを通過させることのできるエレベーターシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベーターシステムは、
かご内操作部とかご制御装置を具えるかごと、
前記かごの運行を制御するエレベーター制御装置と、
乗場に設置された乗場呼び操作部と、
を具える、エレベーターシステムであって、
前記かごは、前記かご制御装置に連繋され、前記かご内の状況を検知する検知手段を具え、
前記乗場は、前記検知手段により検知された前記かご内の状況を表示する表示部を具え、
前記乗場には、利用者が前記乗場呼び操作部を操作することにより前記エレベーター制御装置が前記かごに乗場呼びを割り当てた状態で、前記かごが前記乗場を通過する通過操作部を有し、
前記エレベーター制御装置は、前記かご内操作部又は他の階床の乗場の乗場呼び操作部により、前記利用者の乗場を通過するかご呼び又は前記利用者の乗場を通過する乗場呼びが割り当てられた状態で、前記利用者の乗場の通過操作部が操作されると、前記利用者の乗場で前記かごを通過させる。
【0007】
前記通過操作部は、前記乗場呼び操作部と共に前記乗場に設置される乗場操作パネルに配置することができる。
【0008】
前記乗場呼び操作部に所定の操作を行なうことにより、前記乗場呼び操作部が前記通過操作部として機能することができる。
【0009】
前記通過操作部は、前記利用者の携帯型端末に表示することができる。
【0010】
前記エレベーター制御装置は、前記かご内操作部により入力された新たなかご呼びの行先階が前記乗場である場合、前記乗場
呼び操作部が操作されていない状態で通過操作部が操作された場合、前記乗場
呼び操作部の何れか一方が操作されている状態で前記乗場
呼び操作部の行先方向と前記かごの走行方向が異なる時に前記通過操作部が操作された場合、又は、前記通過操作部が操作された後再度前記通過操作部を操作した場合に、前記乗場で前記かごを停止させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエレベーターシステムによれば、乗場呼びを行なった利用者が、かご内の状況を参照し、当該かごへの乗車を望まない場合には、かごを通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、乗場の一実施形態を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明のエレベーターシステムのブロック図である。
【
図4】
図4は、乗場の表示部の他の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のエレベーターシステム10について、図面を参照しながら説明を行なう。なお、以下では、1基のかご30を運行するエレベーターシステム10を例示するが、本発明は、複数基のかごを運行するエレベーターシステム10にも適用できる。
【0014】
図1は、乗場40の一実施形態を示す説明図である。乗場40には、かごに乗降するための乗場側ドア41の横に乗場操作パネル42が配置されている。乗場操作パネル42は、利用者Uが行先階として所望する方向の上下の乗場呼びボタン43,44と、かごを通過させる通過操作部として通過ボタン46を具える。図示では、下向きの乗場呼びボタン44が点灯しており、利用者Uが下向きの乗場呼びを行なった状態である。また、乗場40には、乗場側ドア41の周囲にかご内の状況を表示する表示部47を具える。表示部47は、本実施形態では、かご30内に設置されたカメラ33(
図2参照)の映像を表示するモニターとすることができる。
【0015】
かご30には、
図1の表示部47に映し出されているように、かご側ドア31の横にかご内操作パネル34を具える。図示では、かご30内に2人の乗客Pが乗車している。なお、表示部47に示されている下向きの三角印48は、かご30が乗場40に向けて降下中であることを示している。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム10のブロック図である。エレベーターシステム10では、機械室等に設置されたエレベーター制御装置20によりかご30の昇降制御が行なわれ、かご30に設置されたかご制御装置32によりかご30のドア開閉等の種々の制御が行なわれる。かご30が複数基ある場合、各々のエレベーター制御装置20は、群管理制御装置に接続されて、かご30の運行を群管理制御する。
【0017】
かご30には、かご内操作パネル34、かご30内を撮影するカメラ33を具える。かご内操作パネル34には、行先階を選択するかご呼びボタン35(かご内操作部)が配置されている。乗客Pが、かご呼びボタン35を操作することで、かご制御装置32を介してエレベーター制御装置20にかご呼びが登録される。また、カメラ33は、かご30内の状況を検知する検知手段であって、かご30内の適所に設置され、かご30内を撮影する。カメラ33により撮影された映像は、かご制御装置32、エレベーター制御装置20を介して、乗場40の表示部47に表示される。
【0018】
また、乗場40に設けられた乗場呼びボタン43,44、通過ボタン46、表示部47は、エレベーター制御装置20に通信可能に接続されており、乗場呼びボタン43,44の操作により、所望の方向のかご呼びが登録される。通過ボタン46の機能については後述する。
【0019】
上記構成のエレベーターシステム10は、一般的な運用において、乗場40で利用者Uが乗場呼びボタン43,44を操作すると、乗場呼びがエレベーター制御装置20に登録され、かご30が昇降する。かご30が複数基ある場合には、群管理制御装置により、何れかのエレベーター制御装置20に乗場呼びが割り当てられる。
【0020】
かご30が乗場40に到着すると、かご制御装置32は、ドア31,41を開閉して、利用者Uを乗車させる。乗客Pが、かご30内で所望の行先階に対応するかご呼びボタン35を操作すると、かご制御装置32を介してかご呼びがエレベーター制御装置20に登録され、当該行先階までかご30が昇降する。
【0021】
通過ボタン46は、乗場呼びを行なった乗場40の利用者Uが、表示部47によりかご30内の状況を参照し、当該かご30への乗車を望まない場合に操作する。たとえば、利用者Uは、同乗したくない乗客Pや混雑状況によって、通過ボタン46を操作する。
【0022】
利用者Uが、
図1に示すように、乗場呼びボタン43又は44(
図1ではボタン44)を操作すると、該当する乗場呼びボタンが点灯すると共に、表示部47にかご30内の映像及びかごの進行方向の三角印48が表示される。利用者Uは、表示部47を参照し、かご30内の状況に応じて、当該かご30への乗車を望まない場合、フローチャート
図3に示すように、通過ボタン46を操作する(ステップS1)。このとき、乗場呼びが割り当てられたかご30が、利用者Uの乗場40を通過するかご呼び又は利用者Uの乗場40を通過する他の階床の乗場の乗場呼びを有している場合には(ステップS2のYes)、後述する所定のキャンセル条件を満たさない場合のみ通過ボタン46を有効にして(ステップS3のNo,S4)、エレベーター制御装置20は、当該乗場40にかご30を停止させることなくかご呼びの行先階または別の乗場呼びの行先階まで直行させる。
【0023】
一方、乗場呼びの割り当てられたかご30が、利用者Uの乗場40を通過するかご呼び又は利用者Uの乗場40を通過する他の階床の乗場の乗場呼びを有さない場合は(ステップS2のNo)、そもそもかご30を通過させることはできず、また、所定のキャンセル条件を満たした場合も(ステップS3のYes)、通過ボタン46を無効として(ステップS5)、かご30を利用者Uの乗場40に停止させる。
【0024】
ステップS3の所定のキャンセル条件として、利用者Uの乗場40が新たに生じたかご呼びの行先階になった場合、又は、利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44のいずれも操作されていない状態で通過ボタン46が操作された場合、又は、利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44のいずれか一方が操作されている状態で乗場呼びの行先方向とかご30の走行方向が異なる時に通過ボタン46が操作された場合、又は、利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44が操作されていて通過ボタン46が操作されて有効な状態で、再度、前記通過ボタン46の操作を行なった場合を例示できる。利用者Uの乗場40で通過ボタン46を操作した後に生じた新たなかご呼びの行先階になった場合には、当該乗場40にかご30を停止せざるを得ず、かご30に乗車するか否かは利用者Uの判断に任される。また、利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44のいずれも操作されていない状態で通過ボタン46が操作された場合には、乗場呼びが発生していないので、当然通過ボタン46をキャンセルする。さらに、利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44のいずれか一方が操作されている状態で乗場呼びの行先方向とかご30の走行方向が異なる時に通過ボタン46が操作された場合、走行方向を反転して戻ってくるかご30の乗客Pや混雑状況は判断できず、この段階で通過ボタン46を有効にする必要はないから、通過ボタン46をキャンセルする。利用者Uの乗場40で乗場呼びボタン43又は44が操作されていて通過ボタン46が操作されて有効な状態で、再度、前記通過ボタン46を再操作又は長押し操作等した場合も、通過ボタン46をキャンセルする。誤操作を解除するため、また、乗場40の他の利用者が乗車できるようにするためである。
【0025】
上記のように、利用者Uは、同乗したくない乗客Pや混雑状況によって通過ボタン46を操作することで、かご30を通過させることができる。また、利用者U以外の他の利用者がかご30に乗車したければ通過ボタン46をキャンセルすることで乗車することができる。
【0026】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0027】
たとえば、上記実施形態では、通過操作部である通過ボタン46を乗場呼びボタン43,44とは別に設けているが、通過ボタン46を省略し、両乗場呼びボタン43,44を同時に操作、一方の乗場呼びボタン43又は44を長押し、複数回押しするなどにより、通過ボタン46として機能させることもできる。また、利用者Uの所有する携帯型端末をエレベーター制御装置20と通信可能とし、アプリケーション等により通過ボタン46を表示するようにしてもよい。この場合、乗場呼びボタン43又は44を点滅等させることで、通過ボタン46が受け付けられたことを表示するようにすることができる。なお、エレベーター制御装置20と携帯型端末との通信は、セキュリティ等の問題から、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を採用することが望ましい。表示部47も乗場40に設置しているが、表示部47も携帯型端末が兼ねる構成としてもよい。
【0028】
通過ボタン46は、上下の乗場呼びボタン43,44に対応して、それぞれ1つずつ設けることもできるが、通過ボタン46は、直前に操作された乗場呼びボタン43又は44に対応するようにしてもよい。また、これら乗場呼びボタン43,44、通過ボタン46は、押下式のボタンスイッチであってもよいし、タッチパネル式であってもよい。
【0029】
かご30内の状況を検知する検知手段は、カメラ33に限らず、かご30に配置された重量センサーであってもよい。この場合、重量から算出された乗客数や混雑度合いを表示部47に表示すればよい。
図4は、混雑度合いを示す表示部47の一例であり、かご30の混雑度合いを符号49で示すように6段階で視覚的にわかりやすく表示している。
【符号の説明】
【0030】
10 エレベーターシステム
20 エレベーター制御手段
30 かご
32 かご制御装置
33 カメラ(検知手段)
35 かご呼びボタン(かご内操作部)
40 乗場
43,44 乗場呼びボタン(乗場呼び操作部)
46 通過ボタン(通過操作部)
47 表示部
U 利用者
P 乗客