(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)未満であって、前記インバータ(4)に入力される若しくは前記交流負荷(5)に出力される電流(Iw)が第1の上限値(I3)以上であれば、前記電流についての垂下制御(S85)が行なわれ、
前記電圧値の上昇に対して前記第1の上限値は単調非減少である、請求項1に記載の交流負荷への電力供給システム。
前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)未満であって、前記コンバータ(2)へ入力する入力電流の電流値(Ii)が第2の上限値以上であれば、前記入力電流についての垂下制御(S85)が行われ、
前記電圧値(Vac)の上昇に対して前記第2の上限値は単調非減少である、請求項1から請求項2のいずれか一つに記載の交流負荷への電力供給システム。
前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)よりも低い所定の第2値(Vt2)未満であれば、前記交流負荷(5)への前記電力(Po)の供給が停止される(S73,S74)、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の交流負荷への電力供給システム。
前記モータ(5)は、冷凍回路(9)に採用される圧縮機(91)を駆動するモータ、空気調和機に採用されるファン、空気清浄機に採用されるファンを駆動するモータのいずれかである、請求項5記載の交流負荷への電力供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示はインバータに入力される電圧を出力するコンバータの発熱を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の、交流負荷への電力供給システムは、直流電圧(Vdc)から変換した第1交流電圧(V1)を印加して交流負荷(5)に電力(Po)を供給するインバータ(4)と、第2交流電圧(V2)を前記直流電圧(Vdc)に変換するコンバータ(2)と、制御回路(6)とを備える。
【0006】
その第1の態様では、前記第2交流電圧の電圧値(Vac)が所定の第1値(Vt1)未満のとき、前記制御回路は前記インバータに前記電力の低減(S85)を可能にさせる。
【0007】
そして、前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)以上であれば
、前記電力を低減するための第1条件(S83,S84)のもとで
前記電力が低減(S85)される。前記電圧値が前記第1値未満であれ
ば、前記第1条件よりも緩和された
前記電力を低減するための第2条件(S82,S84)のもとで
前記電力が低減(S85)される。
【0008】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第2の態様は、その第1の態様であって、前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)未満であって、前記インバータ(4)に入力される若しくは前記交流負荷(5)に出力される電流(Iw)が第1の上限値(I3)以上であれば、前記電流についての垂下制御(S85)が行なわれる。前記電圧値の上昇に対して前記第1の上限値は単調非減少である。
【0009】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第3の態様は、その第1の態様
又は第2の態様であって、前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)未満であって、前記コンバータ(2)へ入力する入力電流の電流値(Ii)が第2の上限値以上であれば、前記入力電流についての垂下制御(S85)が行なわれる。前記電圧値(Vac)の上昇に対して前記第2の上限値は単調非減少である。
【0010】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第4の態様は、その第1の態様又は第2の態様又は第3の態様であって、前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)よりも低い所定の第2値(Vt2)未満であれば、前記交流負荷(5)への前記電力(Po)の供給が停止される(S73,S74)。
【0011】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第5の態様は、その第2の態様又は第3の態様であって、前記交流負荷(5)はモータである。前記垂下制御(S85)は前記モータの回転速度を低減する制御を含む。
【0012】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第6の態様は、その第5の態様であって、前記モータ(5)は、冷凍回路(9)に採用される圧縮機(91)を駆動するモータ、空気調和機に採用されるファン、空気清浄機に採用されるファンを駆動するモータのいずれかである。
【0013】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第7の態様は、その第5の態様であって、前記モータ(5)は、冷凍回路(9)が備える圧縮機(91)を駆動するモータである。前記冷凍回路は膨張弁(93)を更に備える。前記垂下制御(S85)は前記膨張弁の開度を増加させる制御を含む。
【0014】
本開示の交流負荷への電力供給システムの第8の態様は、その第1の態様から第7の態様のいずれかであって、前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)未満であれば、前記直流電圧で駆動される直流負荷(93)に供給する電力が低減される。
【0015】
本開示の冷凍回路(9)は、モータ(5)が駆動する圧縮機(91)と、膨張弁(93)とを備える。前記モータ(5)は、本開示の交流負荷への電力供給システムの第7の態様によって電力が供給される前記交流負荷(5)である。
【0016】
本開示のインバータの制御方法は、入力された直流電圧(Vdc)を第1交流電圧(V1)に変換して交流負荷(5)へ印加するインバータ(4)を制御する方法である。前記直流電圧(Vdc)はコンバータ(2)によって第2交流電圧(V2)から変換して得られる。
【0017】
そして前記第2交流電圧の電圧値(Vac)が所定の第1値(Vt1)未満のとき、前記電力を低減(S85)して当該電力の供給を可能(S8)とする。
前記電圧値(Vac)が前記第1値(Vt1)以上であれば、前記電力を低減するための第1条件(S83,S84)のもとで前記電力が低減(S85)される。前記電圧値が前記第1値未満であれば、前記第1条件よりも緩和された前記電力を低減するための第2条件(S82,S84)のもとで前記電力が低減(S85)される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は交流負荷駆動システム100の構成を示すブロック図であり、ここでは交流負荷駆動システム100が交流負荷5を駆動する。交流負荷5として、単相の交流負荷、多相の交流負荷のいずれを採用することもできる。例えば交流負荷5は交流モータである。例えば当該交流モータは冷凍回路に用いられる圧縮機を駆動する。あるいは例えば当該交流モータは冷凍回路に用いられる熱交換器に送風するファンを駆動する。あるいは例えば当該交流モータは空気清浄機に用いられるファンを駆動する。
【0020】
交流負荷駆動システム100はインバータ4を備える。インバータ4は、自身に入力された直流電圧Vdcを交流電圧V1に変換して交流負荷5へ印加する。インバータ4は交流負荷5へ、交流負荷5を動作させる電力(以下「動作電力」)Poを供給する。交流電圧V1の相数は交流負荷5の相数に対応する。
【0021】
交流負荷駆動システム100はコンバータ2を備える。コンバータ2は交流電圧V2を変換して直流電圧Vdcを出力する。交流電圧V2は例えば交流電源たる商用電源1から出力される。商用電源1からコンバータ2には電流値Iiの入力電流が入力される。商用電源1から交流負荷駆動システム100へは電力Psが供給される。
【0022】
コンバータ2には例えばダイオードブリッジ整流回路、昇圧コンバータ、降圧コンバータ、昇降圧コンバータが採用される。
【0023】
図1では交流負荷駆動システム100が商用電源1とコンバータ2の入力側との間にフィルタ7を更に備える場合が例示される。この場合、交流電圧V2はフィルタ7を介して商用電源1からコンバータ2に引加される。例えばフィルタ7はチョークインプット型のローパスフィルタである。電流値Iiは商用電源1からフィルタ7へ流れる電流の値を採用してもよい。フィルタ7が有するコンデンサの両端電圧を交流電圧V2と捉えてもよい。
【0024】
図1では、交流負荷駆動システム100はコンデンサ3を更に備える場合が例示される。コンデンサ3は直流電圧Vdcを支える。コンバータ2はコンデンサ3を充電する。コンデンサ3は放電して、単独もしくはコンバータ2と共に、インバータ4へ入力する電力(以下「入力電力」と称す)Piを供給する。インバータ4における損失を無視すれば、入力電力Piは動作電力Poと等しい。
【0025】
交流負荷駆動システム100は制御回路6を備える。制御回路6はインバータ4の動作を制御する。例えばインバータ4はスイッチング動作を行なうことで直流電圧Vdcを交流電圧V1に変換する。インバータ4は例えば上述のスイッチング動作を行なうスイッチング素子を含む。
【0026】
制御回路6は当該スイッチング動作を制御する制御信号Gを生成し、インバータ4へ出力する。交流電圧V1はインバータ4のスイッチング動作に依存して変動する。交流電圧V1の変動は動作電力Poを変動させる。動作電力Poの変動は交流負荷5の動作を変動させる。
【0027】
従って、制御回路6はインバータ4の制御を介して動作電力Poを変動させ、以て交流負荷5を種々の動作で駆動する。交流負荷5が三相のモータであるときを例にとって説明する。
【0028】
制御回路6には指令データJと、交流電圧V2の電圧値Vacと、インバータ4に流れる電流Iwの値(以下「電流値Iw」とも称す)とが入力される。指令データJは例えばモータ5の回転速度、あるいは回転トルクについての指令値である。直流電圧Vdcの値が制御回路6に入力されてもよい。
【0029】
電圧値Vacは公知の電圧センサを用いて、電流値Iwは公知の電流センサを用いて、それぞれ公知の手法で得られる。電流値Iwはインバータ4に入力する電流を測定して得ることができる。
【0030】
指令データJは例えばモータ5が圧縮機を駆動する場合、当該圧縮機を用いる冷凍回路の冷却性能に依存して設定される。当該設定は例えば空気調和機において温度設定に基づいて圧縮機を駆動する制御として周知の技術である。例えば冷却性能を高めるには、圧縮機の回転速度の増大を採用することができ、例えば指令データJが示す回転速度の指令値は増大する。
【0031】
制御回路6は指令データJと、電圧値Vacと、電流値Iwとを用いて動作電力Poを決定する。例えば指令データJが回転速度、あるいは回転トルクについての指令値であるときには、当該指令値の増大は動作電力Poの増大をもたらす。
【0032】
制御回路6は、動作電力Poがインバータ4から交流負荷5へ供給されるように制御信号Gを生成する。
【0033】
インバータ4がある値の動作電力Poを供給するときに、電圧値Vacが低下すると電流値Iiが上昇する。コンバータ2の電力変換効率を一定と考えると入力電力Piは電圧値Vacと電流値Iiとの積に比例し、インバータ4における損失を無視すると入力電力Piは動作電力Poと等しいからである。電流値Iiの上昇は、コンバータ2を構成するダイオードあるいはスイッチング素子の発熱を招来する。ダイオードあるいはスイッチング素子の発熱は効率の低下、素子の性能低下を招来する。従ってコンバータ2の発熱は抑制されることが望まれる。
【0034】
本実施の形態では、かかる発熱を抑制する技術として、電圧値Vacが低下すると動作電力Poを低減する動作をインバータ4に行わせる、インバータの制御方法が提案される。具体的には例えば、制御回路6が制御信号Gを、インバータ4が上記動作を行なうように変動させる。動作電力Poの低減によって入力電力Pi、ひいては電力Psの低減を招来し、以て電流値Iiの上昇を緩和もしくは低減するためである。
【0035】
これによりコンバータ2の発熱は抑制される。フィルタ7が備えられるときには、フィルタ7が有するコイルにおける発熱も抑制される。換言すれば、交流負荷駆動システム100のうち、少なくともコンバータ2を含めた商用電源1側の発熱が抑制される。
【0036】
コンバータ2がダイオードブリッジ整流回路のように、電圧値Vacの増減によって直流電圧Vdcの電圧値も増減させる場合、電圧値Vacの低下によって直流電圧Vdcの電圧値が低下する。よって動作電力Poの低減に拘らずインバータのスイッチング損失が低減し、インバータ4の発熱が抑制される。動作電力Poが低減されたときには電流値Iwも減少するので、インバータ4の発熱は更に抑制される。例えばコンバータ2の機能によって、電圧値Vacの増減によって直流電圧Vdcの電圧値が増減しない場合でも、動作電力Poが低減されたときにはインバータ4の発熱が抑制される。
【0037】
電圧値Vacの低下に対して常に動作電力Poが低減する必要はない。スイッチング素子等の発熱を所定の上限まで許容することができるからである。たとえばこのような許容の上限は、スイッチング素子としてトランジスタを採用した場合、いわゆる許容コレクタ損失に依存する。
【0038】
従って、本実施の形態で提案される技術として、電圧値Vacが所定の閾値(以下、便宜的に「第1値Vt1」とする)未満であれば、電圧値Vacが所定の閾値以上であるときと比較して、インバータ4から交流負荷5に供給する動作電力Poを低減しやすくする技術を挙げる。
【0039】
これは、制御回路6の動作として見れば、電圧値Vacが第1値Vt1未満のときと第1値Vt1以上のときとでは動作電力Poを低減させる動作(以下「電力低減動作」とも称す)を行なわせる条件を異ならせて、インバータ4に動作電力Poを供給する制御方法の実行である。例えば制御回路6は、インバータ4に動作電力Poを低減させる動作を行なわせる制御信号Gを生成し、インバータ4へ出力する。
【0040】
図2は制御回路6の電力低減動作、およびこれに付随する動作を示すフローチャートである。ステップS71では動作電力Poが設定される。当該設定は、指令データJと、電圧値Vacと、電流値Iwとに基づいた動作電力Poの決定であり、周知の技術によって行なわれる処理である。ステップS71では、直接的に動作電力Poを決定するのみならず、交流負荷5の動作状態(例えばモータ負荷の回転数やトルク)を決定することによって間接的に動作電力Poが決定されてもよい。
【0041】
ステップS71の後、ステップS72において、動作電力Poを維持してインバータ4を動作させる制御が行なわれる。当該制御は、ステップS71で設定された動作電力Poを維持してインバータ4を動作させる制御であり、周知の技術によって行なわれる処理である。
【0042】
ステップS72の後、ステップS73において、電圧値Vacが異常に低下したときに、交流負荷5の駆動を中止するための比較が行なわれる。
【0043】
ステップS73では例えば、電圧値Vacが所定の第2値Vt2と比較される。第2値Vt2は第1値Vt1よりも小さい。電圧値Vacが第2値Vt2未満であれば(つまりVac≧Vt2が否定されるときには)、処理はステップS74へ進む。
【0044】
ステップS74ではインバータ4からの交流負荷5への動作電力Poの供給を停止する。例えば、コンバータ2にダイオードブリッジ整流回路が採用された場合、電圧値Vacの低下は直流電圧Vdcの低下を招来する。ステップS73はこのような場合における、直流電圧Vdcについての低電圧保護の処理を含んでもよい。
【0045】
ここでは動作電力Poの供給の停止は、低減するものの動作電力Poの供給を行なう電力低減動作とは異なる処理として扱っている。
【0046】
ステップS73で電圧値Vacが第2値Vt2以上であれば(つまりVac≧Vt2が肯定されるときには)、処理はステップS8へ進む。ステップS8において制御回路6は電力低減動作を行なう。但しステップS8においても、後述するように、必ずしも動作電力Poの低減は行われない。具体的にはステップS8は複数のステップS81〜S85を含み、ステップS84において処理が分岐して、ステップS8の途中から抜け出るときがある。
【0047】
ステップS8の処理の最初に、ステップS81において、第1値Vt1と電圧値Vacとの比較が行なわれる。当該比較の結果、電圧値Vacが第1値Vt1未満であれば(つまりVac<Vt1が肯定されるときには)処理がステップS82に進む。電圧値Vacが第1値Vt1以上であれば(つまりVac<Vt1が否定されるときには)処理がステップS83に進む。
【0048】
説明の便宜上、ステップS82,S83の説明の前に、ステップS84,S85の説明をする。ステップS85では電流Iwについていわゆる垂下制御が行なわれ、ステップS84ではステップS85に先だって、垂下制御の要否が判断される。
【0049】
垂下制御の例として、交流負荷5がモータであってその回転速度を低減する制御を挙げることができる。モータの回転速度の低減は電流Iwの低減で実現され、動作電力Poの直接的な低減に寄与する。
【0050】
垂下制御を行なうか否かは、インバータ4から交流負荷5に出力される電流と電流垂下値I3との比較で決定される。当該電流はインバータ4に流れる電流であるので、電流値Iwとして測定できる。
【0051】
ステップS84においてIw≧I3が肯定されるときには、処理はステップS85へ進んで垂下制御が行なわれる。これにより電流値Iwは低下する。つまり、ステップS84,S85により、電流垂下値I3は電流値Iwの上限値として機能する。
【0052】
ステップS84においてIw≧I3が否定されるとき(つまりIw<I3であるとき)には処理がステップS8から抜け出してステップS72に戻る。
【0053】
ステップS82,S83はいずれも電流垂下値I3を決定する処理である。ステップS82では電流垂下値I3が電圧値Vacの関数f(Vac)で設定される。ここで関数f(Vac)は電圧値Vacの上昇に対して単調非減少である。ステップS83では電流垂下値I3が所定値I31に設定される。例えば所定値I31には、電圧値Vacに依存しない値が採用される。
【0054】
ステップS82,S83が実行された後、ステップS84が実行される。この場合のステップS84での処理は、電流値Iwと所定値I31との比較である。即ち、ステップS82,S83,S84,S85は、電流値Iwが所定値I31を超えないようにする垂下制御を行なうステップの集合である。
【0055】
図3は、電流垂下値I3となる関数f(Vac)の、電圧値Vacに対する依存性を例示するグラフである。具体的には:
Vac≧Vt1のとき、f(Vac)=I31;
Vac≦Vt2のとき、f(Vac)=I32;
Vt2≦Vac≦Vt1のとき、
f(Vac)=I32+(Vac−Vt2)(I31−I32)/(Vt1−Vt2);である。所定値I32は所定値I31よりも小さく、かつ電圧値Vacに依存しない。
【0056】
もちろん、上記の関数f(Vac)は例示であって、Vt2≦Vac≦Vt1のときに、関数f(Vac)は電圧値Vacに対して非線形であってもよい。例えば、電圧値Vacの変化に対して、関数f(Vac)が連続的に変化してもよいし、ステップ状に変化してもよい。
【0057】
ステップS81が実行されるときには、ステップS73における判断が肯定的であったので、Vt2≦Vacが成立する。よってステップS82において、電流垂下値I3は、電圧値Vacの低下に対して単調に低下する値に設定される。
【0058】
このように設定される電流垂下値I3を採用することにより、ステップS84,S85の実行により、電流Iwについての垂下制御では、電圧値Vacが低いほど低い電流垂下値I3を上限として、電流Iwを抑制する。よって電圧値Vacの低下に従って動作電力Poが、ひいては電力Psが低減する。よって電圧値Vacが低下しても電流値Iiが増大することが抑制され、コンバータ2の発熱が抑制される。このようなステップS82,S84,S85による動作電力Poの低減は上述の電力低減動作の例示である。
【0059】
ステップS82,S83,S84の説明から、以下のように言える:
電圧値Vacが第1値Vt1以上であれば、動作電力PoをI3=I31という第1条件のもとで低減して供給し;
電圧値Vacが第1値Vt1未満であれば、動作電力PoをI3=f(Vac)という第2条件のもとで低減して供給する。
【0060】
Vac<Vt1であればf(Vac)<I31であるので、電圧値Vacが第1値Vt1未満の場合の方が、電圧値Vacが第1値Vt1以上である場合と比較して、動作電力Poが低減されやすい。換言すれば動作電力Poを低減するための第2条件は第1条件よりも緩和される。
【0061】
第2の条件は第1の条件よりも緩和されているものの、Vac<Vt1であれば必ずしも動作電力Poが低減されるというわけではない。ステップS84の判断が否定的な結果の場合には、ステップS85に進まず垂下制御が行われないからである。従って、Vac<Vt1のとき、制御回路6はインバータ4に対して電力の低減を可能にさせるということができる。
【0062】
ステップS73での判断が否定的な場合にはステップS74が実行され、動作電力Poの供給が停止されることに鑑みて、Vac<Vt2のとき、関数f(Vac)の値を設定しなくてもよい。
【0063】
関数f(Vac)を決定する第2値Vt2よりも小さな第2値Vt2’を導入し、ステップS73において電圧値Vacと比較される第2値Vt2を第2値Vt2’に置換してもよい。この場合、Vac<Vt2’では動作電力Poの供給が停止され、Vt2’≦Vac≦Vt2では電流垂下値I3が所定値I32を採り、これを上限として、電流Iwについての垂下制御が行なわれる。
【0064】
関数f(Vac)を決定する第1値Vt1よりも大きな第1値Vt1’を導入し、ステップS81において電圧値Vacと比較される第1値Vt1を第1値Vt1’に置換してもよい。この場合、Vt1≦Vac≦Vt1’では電流垂下値I3が所定値I31を採り、これを上限として、電流Iwについての垂下制御が行なわれる。つまり、関数f(Vac)は、電圧値Vacの低下に対して単調に減少するものの、電圧値Vacに依存しない領域があってもよい(電圧値Vacの上昇に対して単調非減少である)。
【0065】
垂下制御として例示したモータの回転速度の低減は、電流Iwを直接に低減する。モータの回転速度あるいは回転トルクの低減を招来する事象を発生させることにより、モータの回転速度あるいは回転トルクの低減を介して間接的に動作電力Poを低減させることも、垂下制御に含めて考えることができる。以下、そのような制御を説明する。
【0066】
図4は冷凍回路9の構成を例示するブロック図である。冷凍回路9は圧縮機91、熱交換器92,94、膨張弁93を備える。不図示の冷媒が圧縮機91によって圧縮され、熱交換器92によって蒸発し、膨張弁93によって膨張し、熱交換器94によって凝縮する。図中の白矢印は冷媒が循環する方向を示す。
【0067】
交流負荷5は冷凍回路9に備えられる圧縮機91を駆動するモータである。膨張弁93は電磁弁であって、制御回路6で生成された制御信号Lによってその開度が調整される。例えば当該電磁弁は制御信号Lによって駆動されるステッピングモータによって開度が決定される。例えば当該ステッピングモータの動作電力はコンバータ2の出力から得ることができる。
【0068】
ステップS85(
図2参照)では制御信号Lによって膨張弁93の開度を増加させる。これにより圧縮機91の機械的負荷が低減するので、圧縮機91を駆動するモータ5に必要な回転トルクが低減し、電流Iwが低減する。従って、膨張弁93の開度を増加させる処理を垂下制御に含めて捉えることができる。
【0069】
上述の様に制御信号Lおよび/または制御信号Gを生成する制御回路6は、マイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成することができる。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理のステップ(換言すれば手順)を実行する。例えば
図2の各ステップは当該マイクロコンピュータで実行される。
【0070】
上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御回路6はこれに限らず、制御回路6によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0071】
上述のように、本実施の形態では、入力された直流電圧Vdcを交流電圧V1に変換して交流負荷5へ印加するインバータ4を制御する技術が提案された。直流電圧Vdcはコンバータ2によって交流電圧V2から変換して得られる。
【0072】
交流負荷駆動システム100においては、電圧値Vacが第1値Vt1未満のとき、制御回路6はインバータ4に動作電力Poの低減を可能にさせる。これにより動作電力Po、ひいては電力Psが低減され、コンバータ2の発熱が抑制される。かかる技術は、電圧値Vacが第1値Vt1未満のとき、動作電力Poを低減して供給することを可能とするインバータ4の制御方法として見ることもできる。
【0073】
電圧値Vacが第1値Vt1以上であれば、インバータ4から交流負荷5に供給する動作電力Poを第1条件(ステップS83,S84)のもとで低減(ステップS85)して動作電力Poを供給する。電圧値Vacが第1値Vt1未満であれば、動作電力Poを第2条件(ステップS82,S84)のもとで低減(ステップS85)して動作電力Poを供給する。第2条件は第1条件よりも緩和される。
【0074】
例えば、電圧値Vacが第1値未満であって、インバータ4に入力される入力電流(電流値Ii)、若しくは交流負荷5に出力される電流Iwが、その上限値たる電流垂下値I3以上であれば、当該電流についての垂下制御が行なわれる(ステップS85)。電圧値Vacの上昇に対して電流垂下値I3は単調非減少である。これにより、インバータ4から交流負荷5に供給する動作電力Poが低減される。
【0075】
コンバータ2が入力する電流についての垂下制御が行なわれてもよい。例えば電圧値Vacが第1値未満であって、電流値Iiが上限値以上であれば当該電流についての垂下制御が行なわれる。例えば当該上限値は電圧値Vacの上昇に対して単調非減少に設定することができる。具体的には例えば、ステップS84(
図2参照)において電流値Iwを電流値Iiに読み替えたフローチャートを採用することができる。当該上限値は、上述の電流垂下値I3とは独立して設定することができる。
【0076】
電圧値Vacが第1値Vt1よりも低い第2値Vt2未満であれば、交流負荷5への動作電力Poの供給を停止してもよい。
【0077】
例えば交流負荷5はモータであって、垂下制御には、モータ5の回転速度を低減する制御を含めてもよい。これは動作電力Poの直接的な低減を招来する。
【0078】
モータ5の例としては、冷凍回路9に備えられる圧縮機91を駆動するモータを挙げることができる。例えばモータ5は、膨張弁93を備える冷凍回路9に備えられる圧縮機91を駆動する。冷凍回路9は交流負荷駆動システム100によって動作電力Poが供給されるモータ5が駆動する圧縮機91と、膨張弁93とを備える。垂下制御は膨張弁93の開度を増加させる制御を含めてもよい。これは動作電力Poの間接的な低減を招来する。
【0079】
モータ5は、空気調和機に採用されるファンや、空気清浄機に採用されるファンを駆動するモータとして採用することもできる。
【0080】
直流電圧Vdcで駆動される直流負荷が設けられる場合、当該直流負荷に供給する電力を低減する制御が行われてもよい。この場合、入力電力Piは動作電力Poと当該直流電力で消費される電力との和であり、当該直流電力の低減は電力Psの低減に資するからである。かかる制御はインバータ4の制御と独立して行なうことができる。
【0081】
例えば冷凍回路9において、膨張弁93が、その動作電力をコンデンサ3から直流電力として供給される直流負荷である場合には、電圧値Vacが第1値Vt1未満のときに膨張弁93の動作を停止してもよい。
【0082】
コンバータ2と、インバータ4と、電力低減動作を行なわせる制御回路6とを備える交流負荷駆動システム100は、交流負荷5への電力供給システムであると言える。
【0083】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。上述の各種の実施形態および変形例は相互に組み合わせることができる。