(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリプロピレンBのゲル分率は、前記ポリプロピレンBの質量を基準に1000質量ppm以下である、請求項1または2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記ポリプロピレンBは、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られたものである、請求項1〜3のいずれか1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記ポリプロピレンAとポリプロピレンBの質量比率は、ポリプロピレンA:ポリプロピレンB=50:50〜99.9:0.1である、請求項1〜5のいずれか1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪1.本実施形態に係るフィルム≫
以下、本発明の一実施形態に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて説明する。
本実施形態に係るフィルムは、歪み硬化性パラメータが3未満であるポリプロピレンAと、歪み硬化性パラメータが3以上20以下であるポリプロピレンBとを樹脂成分として含有することを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0020】
<歪み硬化性パラメータ(λ)>
歪み硬化性パラメータ(λ)は以下の通り求める。樹脂ペレットからプレスシートを得て、そのプレスシートを用いて剪断粘弾性および伸長粘度の測定を行う。剪断粘弾性測定から粘度成長関数
【数1】
を求め、伸長粘度測定から非定常一軸伸長粘度関数η
E(t)を求め、η
E(t)において歪の大きさが2以上で伸長粘度が最大となる点における時間をt
maxとして、下記の(A)式:
【数2】
により歪み硬化性パラメータ(λ)を得る。なお、粘度成長関数
【数3】
については、以下の(B)式:
【数4】
(ただしω=1/tとする。)で得られる。ここで、G’(ω)は角速度ωの関数としての貯蔵弾性率、G’(ω/2)はω/2の関数としての貯蔵弾性率、G”(ω)は各速度ωの関数としての損失弾性率、G”(ω/2)はω/2の関数としての損失弾性率、tは時間である。上記の歪み硬化性パラメータを得る方法は概要であり、当該歪み硬化性パラメータを得る方法の詳細については本願明細書の[実施例]の項目で記載する。
【0021】
このようにして得られた歪み硬化性パラメータ(λ)は、歪み硬化現象と呼ばれる、ある歪みを超えると伸長粘度が時間とともに急激に成長する現象を捉えるパラメータである。
歪み硬化性パラメータが大きい場合、歪み硬化性が大きく、伸長変形に対する抵抗が大きい、すなわち分子鎖の絡まり合いの度合が大きいことを示す。歪み硬化性パラメータが小さい場合は歪み硬化性が小さく、分子鎖の絡まり合いの度合いが小さいことを示す。
歪み硬化現象は分岐をもつ高分子で観察され、分子収縮の阻害により、分子鎖、特に分岐点間の分子鎖セグメントの内部歪みが外部歪みに従って大きく増加するために生じる。また、主鎖セグメントの伸長に加え、分岐セグメントの圧縮によって生じる応力も歪み硬化に寄与する。
したがって、歪み硬化性パラメータは、高分子の分岐構造のみが異なる場合で、かつMolecular Stress Function(MSF)理論[W.H.Wagner、M.Yamaguchi、M.Takahashi、J.Rheol.,vol.47,p.779(2003)]に従うとすれば、分岐鎖の長さにより大きく変化し、分岐鎖が長いと大きくなる。
【0022】
非定常一軸伸長粘度関数η
E(t)は、一軸伸長粘度測定装置を用いて任意の歪速度にて測定できる。また、剪断粘弾性の測定は、レオメータなどの動的粘弾性測定装置を用いて行うことができる。
【0023】
<原理>
上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムが、コンデンサ用として用いた場合に絶縁破壊の強さに優れるのは以下の理由による。但し、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムが上記効果に優れる理由について、仮に下記の理由とは異なっていたとしても、本発明の範囲内であることをここで明記する。
歪み硬化性パラメータ(非線形性パラメータ)が3未満のポリプロピレンは伸長粘度の歪み硬化性がほとんどないことを意味し、シートの薄肉部といった力学的に弱い部分が局所的に変形しやすい。したがって、このような延伸フィルムは厚み均一性が低いため、フィルムに存在する薄肉部において絶縁破壊が起こりやすく、絶縁破壊の強さの低下を招きやすい。逆に、歪み硬化性パラメータが20を超えるポリプロピレンでは、隣接高分子鎖によって、分岐鎖間の分子鎖収縮運動の阻害が顕著に現われることで、(a)自由体積の増加、(b)結晶欠陥やミクロボイドの発生、を招いてしまい、絶縁破壊の強さが上がりにくくなる。また、ゲルのような高度に分岐の発達した成分は歪み硬化性パラメータ3未満のポリプロピレンとの相溶性が低く、延伸操作によりゲル周囲にボイドによる絶縁欠陥が発生しやすくなる。そこで、歪み硬化性パラメータが3未満のポリプロピレンAと歪み硬化性パラメータ3以上20以下のポリプロピレンBとを組み合わせて樹脂成分とすることにより、上記ポリプロピレンAに起因する薄肉部の発生を抑えつつ、分岐鎖間の分子鎖収縮運動が阻害されない。その結果、当該フィルムをコンデンサ用として用いた場合に、絶縁破壊の強さを向上させることができる。
【0024】
<ポリプロピレンA>
ポリプロピレンAの歪み硬化性パラメータは3未満である。
【0025】
ポリプロピレンAの歪み硬化性パラメータは、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。ポリプロピレンAの歪み硬化性パラメータが上記であれば、良好な成形性が得られ、機械強度にも優れるフィルムが得られるため好ましい。なお、歪み硬化性パラメータの下限値は通常、1である。そのため、ポリプロピレンAの歪硬化性パラメータは、1以上である。
また、歪み硬化性パラメータが3以上の樹脂のみでフィルム成形を行うと、高引取り速度において分子鎖間の絡まり合いが顕著に現われ、成形中の熔融破断が発生しやすくなる。
【0026】
ポリプロピレンA中のゲル分率は、樹脂成分中のポリプロピレンAの質量に対して(ポリプロピレンAを全体としたときに質量で)好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、より一層好ましくは500質量ppm以下、さらに好ましくは200質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下である。また、ポリプロピレンAのゲル分率は少なければ少ないほど好ましい。したがって、その下限値は特に限定されないが例えば0質量ppm、1質量ppm等である。
【0027】
ゲル分率とは、樹脂中のゲル成分の質量割合のことである。ゲル成分とは、ポリマーが架橋されることで網目構造が形成されたものをいう。ポリプロピレンA中のゲル分率が1000質量%以下であれば、フィルム中の絶縁欠陥が少なくなり、絶縁破壊の強さにより優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られるため好ましい。
【0028】
ゲル分率は、以下の通り測定した。
(1)200mLのキシレンへ約1gの秤量された試料を投入し、120±5℃にて12時間加熱した。
(2)得られた液体を秤量された200メッシュ金網にて濾過した。
(3)濾過したメッシュを室温にて8時間、80℃にて3時間乾燥した。
(4)濾過したメッシュを秤量し、残渣の割合をゲル分率とした。
【0029】
ポリプロピレンAの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは25万以上45万以下、より好ましくは25万以上40万以下である。ポリプロピレンAの重量平均分子量が25万以上45万以下である場合には、樹脂流動性が適度であり、キャスト原反シートの厚みの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易になり得る。更に、シートおよびフィルムの厚みにムラを発生し難くなり、シートが適度な延伸性を有し得るので好ましい。
【0030】
ポリプロピレンAの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))は、好ましくは7.0以上12.0以下、より好ましくは7.5以上12.0以下、さらに好ましくは7.5以上11.0以下であり、特に好ましくは8.0以上10.0以下である。
また、ポリプロピレンAの分子量分布(Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn))は、より好ましくは25.0以上60.0以下、さらに好ましくは25.0以上50.0以下であり、特に好ましくは40.0以上50.0以下である。
【0031】
ポリプロピレンAの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定することができる。本発明では、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC−8121GPC−HT(商品名)を使用して測定した。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR−H(20)HTを連結して使用した。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得た。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をポリスチレン値に換算して、Mw、Mn及びMzを得た。更に、標準ポリスチレンの分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
【0032】
ポリプロピレンAは、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、好ましくは8.0%以上18.0%以下、より好ましくは10.0%以上17.0%以下、さらに好ましくは11.0以上16.0以下、特に好ましくは12.0%以上16.0%以下である。
【0033】
このような微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得ることができる。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることができる。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読み、上記関係を得ることができる。
【0034】
ポリプロピレンAのメソペンタッド分率([mmmm])は、好ましくは94.0%以上98.0%未満、より好ましくは94.5%以上97.9%以下、さらに好ましくは94.5%以上97.5%以下、特に好ましくは95.0%以上97.0%以下である。ポリプロピレンAのメソペンタッド分率[mmmm]が、94.0%以上98.0%未満である場合、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性が適度に向上する傾向にある。一方、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適当で有り、適度の延伸性を有し得る。
【0035】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。具体的には、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500を利用して測定することができる。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、溶媒には、o−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いることができる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
【0036】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとすることができる。
【0037】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmm及びmrrm等)に由来する各シグナルの強度の積分値に基づいて百分率で計算される。mmmm及びmrrm等に由来する各シグナルは、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等を参照して帰属することができる。
【0038】
とりわけ、ポリプロピレンAは、重量平均分子量(Mw)が25万以上45万以下;分子量分布(Mw/Mn)が7.0以上12.0以下;Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn)が20.0以上70.0以下;分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が8.0%以上18.0%以下;およびメソペンタッド分率([mmmm])が94.0%以上98.0%未満であることが好ましい。
【0039】
この場合、Mwの値(25万〜45万)より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、対数分子量Log(M)=4.5の成分を、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、Log(M)=6.0前後の成分と比較すると、低分子量成分の方が8.0%以上18.0%以下の割合で多いことが理解される。
【0040】
つまり、分子量分布Mw/Mnが7.0〜12.0であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。ポリプロピレンAは、広い分子量分布を有すると同時に、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、8.0%以上18.0%以下の割合で多く含むことが好ましい。
【0041】
ポリプロピレンAは、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、8.0%以上18.0%以下である場合には、低分子量成分を、高分子量成分と比較すると、8.0%以上18.0%以下の割合で多く含むこととなるので、結晶子サイズがより小さくなり、所望の配向性及び粗化された表面を得やすくなるため好ましい。
【0042】
ポリプロピレンAの230℃における溶融張力は、好ましくは1g以下である。ポリプロピレンAの230℃における溶融張力が上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくい。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部が形成され難くなるという利点がある。溶融張力は、東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力を、溶融張力とした。
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
シリンダー押出速度:20mm/分
巻き取り速度:4.0m/分
温度:230℃
熔融張力が極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力を熔融張力とした。
【0043】
ポリプロピレンAの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、1〜10g/10minが好ましく、1.5〜8g/10minがより好ましく、2〜6g/10minが特に好ましい。ポリプロピレンAの230℃におけるMFRが上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくく、また、延伸時の破断も抑えられる。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部の形成が抑制されるという利点がある。メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠し、株式会社東洋精機製作所製メルトインデクサーを用いて測定した。
【0044】
ポリプロピレンAは、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。本実施形態のフィルムに用い得るポリプロピレンAを製造することができる限り、特に制限されることはない。そのような重合方法として、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
【0045】
重合は、1つの重合反応器を用いる単段(一段)重合であってよく、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。更に、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行ってもよい。
【0046】
触媒は、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒等を使用することができ、本実施形態に係るポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されることはない。また、触媒は、助触媒成分やドナーを含むことができる。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、及び立体規則性等を制御することができる。
【0047】
歪み硬化性パラメータが3未満であるポリプロピレンAを得る方法として、例えば、各重合法を採用して、ポリプロピレン分子中の分岐鎖が短い分岐構造のポリプロピレンを得る、又はポリプロピレン分子中の分岐構造を多く持たない(直鎖状に近い)ポリプロピレンを得ることが挙げられる。言い換えれば、歪み硬化性パラメータは、高分子の分岐構造のみが異なる場合でかつMSF理論に従う場合には、ポリプロピレン分子中の分岐鎖が長いと大きくなる傾向があるため、ポリプロピレン分子中の分岐鎖の(a)長さ、(b)数(量)及び(c)分布等を適宜調整することにより、歪み硬化性パラメータが3未満であるポリプロピレンAを得ることができる。このポリプロピレンAを得る際には、(i)重合方法及び重合の際の温度・圧力等の各条件、(ii)重合の際の反応器の形態、(iii)添加剤の使用有無、種類及び使用量、(iv)重合触媒の種類及び使用量、などを適宜選択又は調整することにより、上記ポリプロピレンAを選択的に得ることができる。重合法としては、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずモノマー自身(例:プロピレン)を溶媒として用いるバルク法、溶液重合法、実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法等が挙げられる。重合の際の反応器は、1つの重合反応器を用いる一段重合であってよく、2以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、添加剤については、反応器中に水素、各種コモノマー等を分子量調整剤として添加して重合を行ってもよい。重合触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒等を使用することができ、重合触媒には助触媒成分やドナーが含まれていてもよい。なお、ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布および立体規則性等は、重合触媒その他の重合条件を適宜調整することによって制御することができる。このポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、立体規則性、分岐(量、長さ、分布)等を制御することで、上記歪み硬化性パラメータを制御することができる。
【0048】
重合条件によって、分子量分布の構成を調整する場合には、重合触媒を用いることにより、分子量分布や分子量の構成を容易に調整することができる。多段重合反応により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。
【0049】
触媒の存在下、高分子量重合反応器と低分子量または中分子量反応器の複数の反応器により高温で重合する。生成樹脂の高分子量成分及び低分子量成分は、反応器における順番を問わず調整される。まず、第1重合工程において、プロピレン及び触媒が第1重合反応器に供給される。これらの成分とともに、分子量調整剤としての水素を、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量で混合する。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70〜100℃程度、滞留時間は20分〜100分程度である。複数の反応器は、例えば直列に使用することができ、その場合、第1の工程の重合生成物は、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに連続的に次の反応器に送られ、続いて、第1重合工程より低分子量あるいは高分子量に分子量を調整した第2の重合が行われる。第1及び第2の反応器の収量(生産量)を調整することによって、高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を調整することが可能となる。
【0050】
触媒は、助触媒成分やドナーを含んでも構わない。触媒や重合条件を適宜調整することによって、分子量分布をコントロールすることが可能となる。
【0051】
過酸化分解によって、ポリプロピレン原料樹脂の分子量分布の構成を調整する場合には、過酸化水素や有機化酸化物などの分解剤による過酸化処理による方法が好ましい。
ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに過酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれることが知られている。したがって、高分子量成分から高い確率で分解が進行し、よって、低分子量成分が増大し、分子量分布の構成を調整することができる。
【0052】
低分子量成分を適度に含有している樹脂を過酸化分解により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。
【0053】
重合して得たポリプロピレンの重合粉あるいはペレットと、有機過酸化物として、例えば、1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンなどを0.001質量%〜0.5質量%程度、目標とする高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を考慮しながら調整添加して、溶融混練器機にて、180℃〜300℃程度の温度にて溶融混練することによって行うこともできる。
【0054】
ブレンド(樹脂混合)により低分子量成分の含有量を調整する場合には、少なくとも2種以上の異なる分子量の樹脂を、ドライ混合あるいは、溶融混合するのがよい。一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高いか、あるいは低い添加樹脂を1〜40質量%程度混合する2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましく利用される。
【0055】
また、この混合調整の場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1〜30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から良い。
【0056】
「微分分布値の差」を調節する方法としては、例えば、重合条件を調節する方法、分子量分布を調整する方法、分解剤を使用する方法、高分子量成分を選択的に分解処理する方法、異なる分子量の樹脂を混合する方法が挙げられる。微分分布値の差は、これらの方法を単独でまたは2以上を組み合わせて用いることにより、所望の値に調節することができる。
【0057】
ポリプロピレンAとして、市販の生成物(例えばプライムポリマー株式会社製のポリプロピレン)を用いることもできる。
【0058】
本実施形態のフィルム中のポリプロピレンAの含有量は、樹脂成分を基準に好ましくは50質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは60質量%以上99.5質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上99質量%以下、特に好ましくは80質量%以上98.5質量%以下、より特に好ましくは90質量%以上98質量%以下である。また、本実施形態のフィルムは、1種又は2種以上のポリプロピレンAを含有することができる。
【0059】
<ポリプロピレンB>
ポリプロピレンBの歪み硬化性パラメータは3以上20以下である。歪み硬化性パラメータが20を超えるとフィルムに過剰な残留応力や異方性が生じ、耐衝撃性能や耐ストレスクラック性等の問題が生ずる。
【0060】
ポリプロピレンBの歪み硬化性パラメータは、好ましくは3.5以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは5.5以上である。歪み硬化性パラメータが3以上であれば、繰り返し混練による溶融張力の低下が起こりにくく、かつ伸長変形時の樹脂の歪み硬化性が維持されるため好ましい。
また、ポリプロピレンBの歪み硬化性パラメータは、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下、特に好ましくは12以下である。ポリプロピレンBの歪み硬化性パラメータが20以下であれば、繰り返し混練による溶融張力の低下が起こりにくく、かつ伸長変形時の樹脂の歪み硬化性が維持されるため好ましい。
【0061】
歪み硬化性パラメータは、<歪み硬化性パラメータ(λ)>において述べた通り、ポリプロピレン分子中の分岐鎖が長いと大きくなる傾向がある。したがって、ポリプロピレンBは、ポリプロピレン分子中の分岐構造、当該分岐構造における分子鎖長等を調整することで得られる。ポリプロピレンBは、好ましくは、長鎖分岐ポリプロピレンである。ポリプロピレンBが長鎖分岐ポリプロピレンである場合には、歪み硬化性パラメータが適度なものとなるため好ましい。
【0062】
ポリプロピレンBの製造方法としては、例えばメタロセン触媒を用いてプロピレンを重合する方法が挙げられる。メタロセン触媒は、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であることが一般的である。メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られたポリプロピレン(メタロセン触媒型ポリプロピレン)の場合には、ポリプロピレンの分岐鎖長や分岐鎖間隔が適度なものとなり、線状ポリプロピレンとの優れた相溶性及び均一な組成や表面形状を得られるため好ましい。ポリプロピレンBの製造において、使用する触媒の種類や使用量以外のその他の各条件、例えば(i)重合方法及び重合の際の温度・圧力等の各条件、(ii)重合の際の反応器の形態、(iii)添加剤の使用有無、種類及び使用量、(iv)分子量、分子量分布、及び立体規則性の各調整方法、(v)微分分布値の差を調整する方法、などは、<ポリプロピレンA>で述べた各条件と同様であってもよい。
【0063】
また、ポリプロピレンBの重合にメタロセン触媒を用いた場合、重合の後工程での架橋及び変性を行うことなく長鎖分岐ポリプロピレンが得られるため、後工程に起因するゲル分率が少なくなり、絶縁破壊の強さにより優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られるため好ましい。
【0064】
さらに、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られたポリプロピレンは、樹脂の重合の後工程で電子線の照射等の方法により部分的な架橋構造をもうける方法や架橋助剤と過酸化物をポリプロピレンに添加して混練する方法により製造された長鎖分岐構造又は架橋構造を有するポリプロピレン樹脂に比べ、残存ラジカル(イオン性キャリア)が少ないことから、経時での樹脂の着色が起こりにくいため好ましい。
【0065】
ポリプロピレンBのゲル分率は、樹脂成分中のポリプロピレンBの質量に対して(ポリプロピレンBを全体としたときに質量で)好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、さらに好ましくは500質量ppm以下、特に好ましくは100質量ppm以下である。ポリプロピレンBのゲル分率が1000質量ppm以下であると、絶縁欠陥が少なくなり、絶縁破壊の強さに優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られるため好ましい。また、ポリプロピレンBのゲル分率は少なければ少ないほど良い。したがって、その下限値は特に限定されないが例えば0質量ppm、1質量ppm、10質量ppm、250質量ppm等である。ポリプロピレンBのゲル分率は、上述の通り測定することができる。
【0066】
ポリプロピレンBの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは15万以上60万以下、より好ましくは20万以上50万以下、さらに好ましくは25万以上45万以下、特に好ましくは26万以上42万以下である。ポリプロピレンBの重量平均分子量が15万以上60万以下である場合には、樹脂流動性が適度であり、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易になり得る。更に、シートおよびフィルムの厚みにムラを発生し難くなり、シートが適度な延伸性を有し得るので好ましい。
【0067】
ポリプロピレンBの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))は、好ましくは1.5以上4.5以下、より好ましくは1.8以上4.2以下、さらに好ましくは2.0以上4.0以下、特に好ましくは、2.1以上3.9以下であり、より特に好ましくは2.2以上3.8以下である。
また、ポリプロピレンBの分子量分布(Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn))は、好ましくは4.0以上9.0以下、より好ましくは4.2以上8.8以下、さらに好ましくは4.5以上8.5以下、特に好ましくは5.0以上8.2以下である。
【0068】
ポリプロピレンBの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定することができる。より具体的には、例えば、高温GPC−MALS測定、すなわち光散乱検出器(DAWN EOS;Wyatt Technology製)を備えた高温GPC装置(HLC−8121GPC/HT;東ソー製)により測定できる。
カラムとして、いずれも東ソー株式会社製の、TSKgel guardcolumnHHR(30)(7.8mmID×7.5cm)と3本のTSKgel GMH−HR−H(20)HT(7.8mmID×30cm)とを連結して使用した。カラム温度を140℃に設定し、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/分の流速で流して、MwとMnの測定値を得た。
【0069】
ポリプロピレンBの分子量、分子量分布等は、上述の通り、触媒や重合条件を調整することによって制御することができる。
【0070】
ポリプロピレンBの230℃における溶融張力は、1〜50gが好ましく、2〜40gがより好ましく、4〜30gがさらに好ましい。ポリプロピレンBの230℃における溶融張力が上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくい。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部が形成され難くなるという利点がある。
【0071】
ポリプロピレンBの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜12g/10minが好ましく、0.5〜11g/10minがより好ましく、1〜10g/10minがさらに好ましい。ポリプロピレンBの230℃におけるMFRが上記範囲内である場合、熔融状態での流動特性に優れるため、メルトフラクチャーといった不安定流動が発生しにくく、また、延伸時の破断も抑えられる。したがって、膜厚均一性が良好であるため、絶縁破壊の起こり易い薄肉部の形成が抑制されるという利点がある。
【0072】
本実施形態のフィルム中のポリプロピレンBの含有量は、樹脂成分を基準に好ましくは0.1質量%以上50質量%、より好ましくは0.5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上30質量%以下、特に好ましくは3質量%以上20質量%以下、より特に好ましくは3.5質量%以上10質量%以下である。また、本実施形態のフィルムは、1種又は2種以上のポリプロピレンBを含有することができる。
【0073】
ポリプロピレンBの代表的市販品としては、例えば日本ポリプロ株式会社製MFX3、MFX6、日本ポリプロ株式会社製MFX8等が挙げられる。
【0074】
<樹脂成分>
本実施形態のフィルムに含まれるポリプロピレンAとポリプロピレンBの質量比率は、好ましくはポリプロピレンA:ポリプロピレンB=50:50〜99.9:0.1、より好ましくは60:40〜99:1、さらに好ましくは70:40〜90:10、特に好ましくは75:25〜85:15である。
本実施形態のフィルムを構成する樹脂成分全体に対するポリプロピレンA及びポリプロピレンBの合計質量%は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%(即ち、本実施形態のフィルムを構成する樹脂成分がポリプロピレンA及びポリプロピレンBの二種類であること)である。ポリプロピレンA及びポリプロピレンB以外の樹脂成分(他の樹脂成分)としては、ポリプロピレンA及びポリプロピレンBのいずれにも該当しないオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0075】
<添加剤>
本実施形態のフィルムは、樹脂成分に加えて、更に、添加剤を少なくとも1種含有してもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレンに使用される添加剤であって、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。添加剤には、例えば、β晶造核剤、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の必要な安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤等が含まれる。そのような添加剤を用いる場合、本実施形態のフィルムは、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で添加剤を含むことができる。
【0076】
「β晶造核剤」は、ポリプロピレンに一般的に用いられ、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。β晶造核剤は、ポリプロピレン原料とドライブレンド又はメルトブレンドし、ペレット化して用いることもできるし、ポリプロピレンペレットと共に押出機に投入して用いることもできる。β晶造核剤を用いることによりフィルムの表面粗さを所望の粗さに調節することができる。β晶造核剤の代表的市販品の例としては、例えば新日本理化株式会社製のエヌジェスターNU−100が挙げられる。本実施形態のフィルムがβ晶造核剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)好ましくは1〜1000質量ppm、より好ましくは50〜600質量ppmである。
【0077】
「酸化防止剤」とは、一般に酸化防止剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、コンデンサ用フィルムとしての長期使用における劣化抑制及びコンデンサ性能向上に寄与することである。押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能向上に寄与する酸化防止剤を、「2次剤」ともいう。
【0078】
これらの2つの目的に、2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的に1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
【0079】
1次剤としては、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)が挙げられる。1次剤は、通常、後述の<本実施形態のフィルムの製造方法>において説明するポリプロピレン樹脂組成物の調製の際に、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する目的で添加することができる。この目的でポリプロピレン樹脂組成物に添加される酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない。したがって、本実施形態のフィルムが1次剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)通常100質量ppm未満である。
【0080】
2次剤としては、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0081】
「カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤」とは、通常、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とされ、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。
【0082】
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられるが、高分子量であり、ポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、とりわけ好ましい。
【0083】
本実施形態のフィルムは、長期使用時における時間と共に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種類以上含んでもよい。本実施形態のフィルムがカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1種類以上含有する場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)、好ましくは4000質量ppm以上6000質量ppm以下、より好ましくは4500質量ppm以上6000質量ppm以下である。フィルム中のカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が4000質量ppm以上6000質量ppm以下であることが、適切な効果発現の観点から好ましい。
【0084】
ポリプロピレンと分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させた本実施形態のフィルムを含むコンデンサ用フィルムは、長期耐用性が向上するので好ましい。
【0085】
「塩素吸収剤」とは、一般に塩素吸収剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。そのような塩素吸収剤を用いる場合、本実施形態のフィルムは、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で塩素吸収剤を含むことができる。
【0086】
<厚み>
本実施形態のフィルムの厚みは、好ましくは0.8μm以上50μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは1.5μm以上20μm以下であり、特に好ましくは、1.7μm以上10μm以下であり、より特に好ましくは1.8μm以上7μm以下である。
また、本実施形態のフィルムの厚みは、15μmより大きく50μm未満であることも好ましい。本実施形態のフィルムの厚みは、より好ましくは16μmより大きく30μm未満であり、さらに好ましくは17μmより大きく20μm未満である。本実施形態のフィルムは、厚みが極めて薄いフィルムであることが好ましい。
【0087】
本発明のフィルムの厚みは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定される値をいう。
【0088】
<絶縁破壊の強さ(ES)>
本実施形態のフィルムの交流絶縁破壊の強さ(ES)は、好ましくは240[V
AC/μm]以上、より好ましくは243[V
AC/μm]以上、さらに好ましくは245[V
AC/μm]以上である。
また、本実施形態のフィルムの直流絶縁破壊の強さ(ES)は、好ましくは465[V
DC/μm]以上、より好ましくは470[V
DC/μm]以上、さらに好ましくは480[V
DC/μm]以上である。
【0089】
二軸延伸フィルムの直流絶縁破壊の強さ(ES)は、JIS C 2330:2010及びJIS C 2151:2006 17.2.2(絶縁破壊電圧・平板電極法)に準じて測定することができる。二軸延伸フィルムの交流絶縁破壊の強さ(ES)は、直流に代えて交流とする以外は、上記JIS C 2330:2010及びJIS C 2151:2006 17.2.2(絶縁破壊電圧・平板電極法)に準じて測定することができる。測定には、例えば耐電圧試験器を用いることができる。
【0090】
<ファーストランでの融点>
本実施形態のフィルムのファーストランでの融点は、好ましくは166℃以上、より好ましくは168℃以上、さらに好ましくは169℃以上である。前記ファーストランでの融点が166℃以上であると、絶縁破壊の強さを保つために必要なラメラの厚みとなる。また、前記ファーストランでの融点は、好ましくは188℃以下、より好ましくは187℃以下、さらに好ましくは185℃以下である。前記ファーストランでの融点の上限は、ポリプロピレンの平衡融点(ラメラの厚みが無限大のときの融点)以下であり、成形加工性の観点から187℃以下が好ましい。前記ファーストランでの融点は、示差走査熱量測定のファーストランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0091】
<ファーストランでの融解エンタルピー>
本実施形態のフィルムのファーストランでの融解エンタルピーは、好ましくは105J/g以上、より好ましくは106J/g以上、さらに好ましくは107J/g以上である。前記ファーストランでの融解エンタルピーが105J/g以上であると、絶縁破壊の強さを保つために必要な結晶化度となる。また、前記ファーストランでの融解エンタルピーは、好ましくは150J/g以下、より好ましくは130J/g以下、さらに好ましくは120J/g以下である。前記ファーストランでの融解エンタルピーが150J/g以下であると、適切な薄膜延伸性を有する。前記ファーストランでの融解エンタルピーは、示差走査熱量測定のファーストランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0092】
<ファーストランでの結晶化温度>
本実施形態のフィルムのファーストランでの結晶化温度は、好ましくは112.8℃以上、より好ましくは112.9℃以上、さらに好ましくは113℃以上である。前記ファーストランでの結晶化温度が112.8℃以上であると、溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成する球晶サイズを小さく制御でき、延伸工程で生成する絶縁欠陥の生成を低く抑えることができる。また、前記ファーストランでの結晶化温度は、好ましくは125℃以下、より好ましくは123℃以下、さらに好ましくは122℃以下である。前記ファーストランでの結晶化温度が125℃以下であると、結晶変態による粗面形成が可能になる。前記ファーストランでの結晶化温度は、示差走査熱量測定のファーストランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0093】
<ファーストランでの結晶化エンタルピー>
本実施形態のフィルムのファーストランでの結晶化エンタルピーは、好ましくは−150J/g以上、より好ましくは−130J/g以上、さらに好ましくは−120J/g以上、特に好ましくは−110J/g以上である。前記ファーストランでの結晶化エンタルピーが−150J/g以上であると、適切な薄膜延伸性を有する。また、前記ファーストランでの結晶化エンタルピーは、好ましくは−98J/g以下、より好ましくは−100J/g以下、さらに好ましくは−102J/g以下である。前記ファーストランでの結晶化エンタルピーが−98J/g以下であると、絶縁破壊の強さを保つために必要な結晶化度となる。前記ファーストランでの結晶化エンタルピーは、示差走査熱量測定のファーストランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0094】
<セカンドランでの融点>
本実施形態のフィルムのセカンドランでの融点は、好ましくは160℃以上、より好ましくは161℃以上、さらに好ましくは162℃以上である。前記セカンドランでの融点が160℃以上であると、絶縁破壊の強さを保つために必要なラメラの厚みを有するフィルムを得やすい。また、前記セカンドランでの融点は、好ましくは188℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは165℃以下である。前記セカンドランでの融点が188℃以下であると、成形加工性の観点から好ましい。前記セカンドランでの融点は、示差走査熱量測定のセカンドランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0095】
<セカンドランでの融解エンタルピー>
本実施形態のフィルムのセカンドランでの融解エンタルピーは、好ましくは95J/g以上、より好ましくは97J/g以上、さらに好ましくは98J/g以上である。前記セカンドランでの融解エンタルピーが95J/g以上であると、絶縁破壊の強さを保つために必要な結晶化度を得やすい。また、前記セカンドランでの融解エンタルピーは、好ましくは110J/g以下、より好ましくは105J/g以下、さらに好ましくは103J/g以下である。前記セカンドランでの融解エンタルピーが110J/g以下であると、適切な薄膜延伸性を有する。前記セカンドランでの融解エンタルピーは、示差走査熱量測定のセカンドランで求めた値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0096】
≪2.本実施形態のフィルムの製造方法≫
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一般的に知られている二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法、例えばポリプロピレンAおよびポリプロピレンBを、必要に応じて他の樹脂および/または添加剤等と共に混合することにより得られたポリプロピレン樹脂組成物からキャスト原反シートを作製し、次いでキャスト原反シートを二軸延伸することにより製造することができる。
【0097】
<ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
ポリプロピレン樹脂組成物を調製する方法としては、特に制限はないが、ポリプロピレンAおよびポリプロピレンBの重合粉あるいはペレットを、必要に応じて他の樹脂および/または添加剤等と共に、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、ポリプロピレンAおよびポリプロピレンBの重合粉あるいはペレットを、必要に応じて他の樹脂および/または添加剤等と共に、混練機に供給し、溶融混練してメルトブレンド樹脂組成物を得る方法などがあるが、いずれでも構わない。
【0098】
ミキサーや混練機にも特に制限は無く、また、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、またはそれ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
【0099】
溶融混練によるブレンドの場合、混練温度は、良好な混練さえ得られれば特に制限はないが、好ましくは170〜320℃の範囲であり、より好ましくは200℃〜300℃の範囲であり、さらに好ましくは230℃〜270℃である。あまり高い混練温度は、樹脂の劣化を招くので好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによって、メルトブレンド樹脂組成物のペレットを得ることができる。
【0100】
ポリプロピレン樹脂組成物の調製の際に、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する目的で、上述の<添加剤>において述べた酸化防止剤としての1次剤を添加することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含む場合、その含有量は、好ましくは樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)1000質量ppm〜5000質量ppmである。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない。
【0101】
上述の<添加剤>において述べたカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を2次剤としてポリプロピレン樹脂組成物に添加することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物がカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)好ましくは100質量ppm〜10000質量ppm、より好ましくは5500質量ppm〜7000質量ppmである。押出機内では少なからず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤も消費される。
ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。これは、押出機内で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増えるためである。ポリプロピレン樹脂組成物が1次剤を含まず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む場合、その含有量は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)6000質量ppm〜8000質量ppm以下である。
【0102】
ポリプロピレン樹脂組成物中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、樹脂成分の質量に対して(樹脂成分を全体としたときに質量で)、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは40質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下である。
【0103】
<キャスト原反シートの作製>
キャスト原反シートは、予め作製したドライブレンド樹脂組成物および/またはメルトブレンド樹脂組成物のペレット類を押出機に供給して、加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、好ましくは170℃〜320℃、より好ましくは200℃〜300℃に加熱溶融してTダイから溶融押し出し、好ましくは40℃〜140℃、より好ましくは80℃〜140℃、さらに好ましくは90〜140℃、特に好ましくは90〜120℃、より特に好ましくは90〜105℃の温度(キャスト温度)に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることにより得ることができる。
【0104】
上記キャスト原反シートの厚みは、本発明が目的とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、好ましくは0.05mm〜2mm、より好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0105】
尚、キャスト原反シートの作製工程中(特に、押出機内)においては、ポリプロピレンは、少なからず熱劣化(酸化劣化)やせん断劣化を受ける。このような劣化の進行度合い、即ち分子量分布や立体規則性の変化は、押出器内の窒素パージ(酸化の抑制)、押出機内のスクリュー形状(せん断力)、キャスト時のTダイの内部形状(せん断力)、酸化防止剤の添加量(酸化の抑制)、キャスト時の巻き取り速度(伸長力)などにより抑制することが可能である。
【0106】
<延伸処理>
本実施形態のフィルムは、上記キャスト原反シートに延伸処理を施すことによって製造することができる。延伸方法としては逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、まずキャスト原反シートを好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3〜7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。この縦延伸工程の温度を適切に調整することにより、β晶は融解しα晶に転移し、凹凸が顕在化する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて好ましくは160℃以上、より好ましくは160〜180℃の温度で幅方向に3〜11倍に横延伸した後、緩和、熱固定を施して、巻き取る。
【0107】
巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。
【0108】
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された二軸延伸フィルムとなる。
【0109】
また、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、金属蒸着加工工程などの後工程において、接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスを用いて行うことが好ましい。
【0110】
≪3.本実施形態のフィルムを含む金属化フィルム及びコンデンサ≫
本実施形態は、別の態様では、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する金属化フィルムである。
【0111】
本実施形態のフィルムの表面を金属化する方法として、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法を例示することができるが、特に限定されない。生産性および経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。用いられる金属は、例えば亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、およびニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、およびそれらの合金などを使用することができるが、環境、経済性およびコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。なお、蒸着させて得られる金属膜を金属蒸着膜ともいう。
【0112】
金属膜の膜抵抗値は、コンデンサの電気特性の点から、好ましくは1〜100Ω/□である。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は好ましくは5Ω/□以上、より好ましくは10Ω/□以上である。また、コンデンサ素子としての安全性の点から、膜抵抗は好ましくは50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下である。金属膜の膜抵抗値は、例えば、当業者に既知の二端子法によって金属膜中に測定することができる。金属膜の膜抵抗値の調節は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量を調整することにより、行うことができる。金属膜の厚さは特に限定されないが、好ましくは1nm〜100nmである。
【0113】
フィルムの片面に金属膜を形成する場合、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、金属化ポリプロピレンフィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は好ましくは2〜8Ω/□、より好ましくは3〜6Ω/□である。
【0114】
蒸着により金属化する際のマージンパターンも特に限定されるものではないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターン等といった、いわゆる特殊マージンを含むパターンを本実施形態のフィルムの片面に施した場合、保安性が高まり、コンデンサの破壊、ショートの防止などの点からも効果的であり好ましい。
【0115】
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限されること無く使用することができる。
【0116】
扁平型コンデンサを得る場合、電極が取り付けられた、または金属化された本実施形態のフィルムを、単独で、または2枚以上相合わせて、好ましくは2枚相合わせて巻回する。巻回の回数は、コンデンサの用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、扁平型コンデンサの場合、500〜2000回程度が挙げられる。巻回は、自動巻取機を用いて行うことができる。素子巻きした素子は、加圧下および/または加熱下で熱処理を行うことができる。上記加圧下における圧力は例えば200〜1000kPa程度が挙げられる。また、上記加熱下における温度は、例えば60〜130℃程度が挙げられる。熱処理した素子端面に例えば亜鉛金属を溶射する。これにより扁平型コンデンサを得ることができる。
【0117】
本実施形態の金属化フィルムは、優れた絶縁破壊の強さを有するため、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバーター及びインバーター等のフィルター用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等のコンデンサ用誘電体フィルムとして好適に用いることができる。また、電気自動車やハイブリッド自動車等に用いられる駆動モーターを制御するインバーター電源回路平滑用コンデンサに使用してもよい。
【0118】
また、本実施形態のフィルムに電極を付けることによりコンデンサに用いることもできる。電極を取り付ける方法は特に制限なく、一般に公知の方法を用いることができる。また、電極としては、特に限定されることはなく、通常コンデンサを製造するために使用される電極を用いることができる。電極として、例えば金属箔、少なくとも片面を金属化した紙およびプラスチックフィルム等を例示することができる。用いられる金属は、上述の金属を用いることができる。
【0119】
本実施形態は、別の態様では、本実施形態のポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に金属膜を有する金属化フィルムを含むコンデンサである。
【0120】
本実施形態のフィルムは、絶縁破壊の強さが高いためコンデンサに極めて好適に使用することができる。
【0121】
コンデンサの容量は、好ましくは5μF以上、より好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上である。
【0122】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【実施例】
【0123】
〔ポリプロピレン樹脂〕
実施例及び比較例のポリプロピレンフィルムを製造するために使用したポリプロピレン樹脂を以下の表1に示す。また、特に断らない限り、「部」及び「%」という記載は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0124】
ポリプロピレン樹脂Aとして、以下の表1に示す数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)を有するポリプロピレン樹脂A1(アイソタクチックポリプロピレン、プライムポリマー株式会社製;以下、樹脂A1という)を使用した。なお、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態で、上記の測定方法に従い測定した値である。
ポリプロピレン樹脂Bとして、以下の表1に示す数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)を有する下記の各ポリプロピレンを使用した。具体的には、
ポリプロピレンB1(日本ポリプロ株式会社製WAYMAX MFX6、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られた長鎖分岐ポリプロピレン;以下、樹脂B1という)、
ポリプロピレンB2(日本ポリプロ株式会社製WAYMAX MFX8、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られた長鎖分岐ポリプロピレン;以下、樹脂B2という)、
ポリプロピレンB3(日本ポリプロ株式会社製WAYMAX MFX3、メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合することにより得られた長鎖分岐ポリプロピレン;以下、樹脂B3という)
を用いた。
ポリプロピレン樹脂B’として、
B’4(ボレアリスAG製Daploy WB135HMS、過酸化物による架橋変性により得られた長鎖分岐ポリプロピレン;以下、樹脂B’4という)、
を用いた。
表1に、ポリプロピレン樹脂A1及びB1〜B’4の歪み硬化性パラメータ、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)を示した。
【0125】
<歪み硬化性パラメータ>
a)動的粘弾性測定
装置 :ARES−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
治具 :コーンプレート(25mmφ、0.1rad.)
温度 :230℃
周波数 :100〜0.01rad./sec.
b)伸長粘度測定
装置 :ARES−G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)
治具 :伸長粘度フィクスチャー
温度 :230℃
歪み速度 :0.1/s。ただし、この条件でトルクが低く、伸長粘度が測定できない場合は、歪み速度を1.0/sとした。
予備歪み :0.2mm
測定手順:
(1)樹脂ペレットを230℃で5分間、熱プレス機を用いて加熱圧縮し、約0.6mmのプレスシートを作製した。得られたプレスシートをティー・エイ・インスツルメント社製のレオメータARES−G2を用いて剪断粘弾性測定(周波数分散)および伸長粘度測定を行った。
(2)剪断粘弾性測定(周波数分散)は、コーンプレート治具(25mmφ、0.1rad)へプレスシートを挟み、230℃で周波数100〜0.01rad/secで測定した。
(3)伸長粘度測定は、伸長粘度測定治具を用いて230℃で、予備歪み0.2mmを与えた後に歪み速度0.1/sで測定した。なお、この条件でトルクが低く、伸長粘度が測定できない場合は、歪み速度を1.0/sとした。上記伸長粘度測定治具は、熔融ポリマー等の高粘性物質の伸長粘度を測定するための治具であり、一定のHenky歪み速度で引っ張ることができるように、固定部と回転ドラムから構成されている。
(4)剪断粘弾性測定(周波数分散)により得られたデータを、「尾崎邦宏 村井朝 別所信夫 金鳳植 日本レオロジー学会誌 4巻 166(1976)」の記載の方法に基づき、次式(B)に示される粘度成長関数
【数5】
を求めた。
【数6】
ただしω=1/tとする。
ここで、G’(ω)は角速度ω の関数としての貯蔵弾性率、G’(ω/2)はω/2の関数としての貯蔵弾性率、G”(ω)は角速度ω の関数としての損失弾性率、tは時間である。
(5)一方、伸長粘度測定により得られた非定常一軸伸長粘度曲線η
E(t)において、歪の大きさが2以上で伸長粘度が最大となる点における時間をt
maxとし、下記式(A)により伸長粘度の非線形性パラメータ、すなわち歪み硬化性パラメータ(λ)を求めた。なお、λについての概念図を
図1に示した。
【数7】
(6)なお、式(B)により得られる粘度成長関数と、非定常一軸伸長粘度曲線との間で、短時間側の線形領域の重なりが悪い場合には、非定常一軸伸長粘度曲線における線形部分の中点付近が重なるようにシフトさせてから歪み硬化性パラメータλを求めた。これは、伸長粘度測定において、歪の開放等で想定値よりも断面積が増加する場合、粘度が小さいために試料が垂れ下がり断面積が低下する場合があるため、その誤差を軽減するための措置である。
【0126】
<ゲル分率>
各樹脂のゲル分率の測定条件は、以下の通りとした。
試料量 :約1g
溶媒 :キシレン(200mL)
加熱温度 :120℃
加熱時間 :12時間
ろ過メッシュ :200メッシュ金網
乾燥 :室温×8時間+80℃×3hr
200mLのキシレンへ約1gの秤量された試料を投入し、120℃にて12時間加熱した。得られた液体を秤量された200メッシュ金網にて濾過した。濾過したメッシュを室温にて8時間、80℃にて3時間乾燥した。濾過したメッシュを秤量し、残渣の割合をゲル分率とした。
【0127】
<ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)および微分分布値の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)、分布曲線の微分分布値を測定した。
東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC装置であるHLC−8121GPC−HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgelGMHHR−H(20)HTを3本連結し、さらに、TSKgel guardcolumnHHR(30)1本使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、1,2,4−トリクロロベンゼンに0.05wt%の2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、1.0ml/minの流速で流して測定し、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びz平均分子量(Mz)を得た。このMzとMnの値を用いて分子量分布(Mz/Mn)を、また、MwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。測定条件は、以下の通りである。
GPC装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー製)
光散乱検出器:DAWN EOS(Wyatt Technology社)、
カラム :TSKgel guardcolumnHHR(30)(7.8mmID×7.5cm)×1本+TSKgel GMHHR−H(20)HT(7.8mmID×30cm)×3本(東ソー製)
溶離液 :1,2,4−トリクロロベンゼンに0.05wt%のBHT
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :2mg/mL
注入量 :300μL
カラム温度 :140℃
システム温度:40℃
前処理 :試料を精秤し、溶離液を加えて140℃で1時間振とう溶解させ、0.5μmの焼結金属フィルターで熱ろ過を行った。
【0128】
<微分分布値の差>
微分分布値の差は、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得ることが出来た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。また、微分分布値の測定及び微分分布値の差の算出は、上記樹脂A1に対してのみ行った。
測定及び算出の結果、樹脂A1の上記微分分布値の差(Log(M)=4.5のときの微分分布値に対してLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた、差)は、11.7であった。
【0129】
<メソペンタッド分率([mmmm])の測定>
ポリプロピレンを溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、メソペンタッド分率([mmmm])を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:
13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH
3(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashiet al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考とした。なお、メソペンタッド分率の測定は、上記樹脂A1に対してのみ行った。樹脂A1のメソペンタッド分率は、97.8%であった。
【0130】
<メルトフローレートの測定>
JIS K 7210:1999に準じて、測定温度230℃にて、株式会社東洋精機製作所製メルトインデクサーを用いて測定した。
【0131】
<溶融張力の測定>
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力を、溶融張力とした。
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
シリンダー押出速度:20mm/分
巻き取り速度:4.0m/分
温度:230℃
熔融張力が極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力を熔融張力とする。
【0132】
【表1】
【0133】
上述のポリプロピレン樹脂を用いて、実施例1〜6、比較例1〜6のポリプロピレンフィルムを製造し、その物性を評価した。
【0134】
〔実施例1〕
樹脂A1と樹脂B1をA1/B1=80/20(質量比)で、連続的に計量し混合したドライブレンド樹脂組成物を、押出機に供給した。ドライブレンド樹脂組成物を230℃の温度で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度(キャスト温度)を45℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させて、厚さ900μmのキャスト原反シートを製造した。このキャスト原反シートをBrueckner社製バッチ式二軸延伸機KARO IVを用いて165℃で、流れ方向に5倍、次いで横方向に10倍に延伸して、厚さ18μmの二軸延伸PPフィルムを得た。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめた。
【0135】
〔実施例2〕
樹脂B1に代えて樹脂B2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0136】
〔実施例3〕
樹脂A1と樹脂B1を表1に記載の質量比で用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0137】
〔実施例4〕
樹脂B1に代えて樹脂B2を用いたこと以外は、実施例3と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0138】
〔実施例5〕
樹脂B1に代えて樹脂B3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0139】
〔実施例6〕
樹脂A1と樹脂B1をA1/B1=98/2(質量比)で、連続的に計量し混合したドライブレンド樹脂組成物を、押出機に供給した。ドライブレンド樹脂組成物を250℃の温度で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度(キャスト温度)を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させて厚さ100μmのキャスト原反シートを製造した。この未延伸のキャスト原反シートを140℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4.5倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて、横延伸温度158℃で幅方向に10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して、厚み2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを巻き取った。
【0140】
〔比較例1〕
樹脂成分として樹脂A1のみを単独で用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0141】
〔比較例2〕
樹脂B1に代えて樹脂B’4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは18μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0142】
〔比較例3〕
樹脂成分として樹脂B1のみを単独で用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ようとしたところ、押出成形時のメルトフラクチャーにより平滑なキャストシートが作製できなかった。そのため、得られたキャストシートを延伸した時に破断が起こり、延伸フィルムを得られなかった。
【0143】
〔比較例4〕
樹脂成分として樹脂B2のみを単独で用いたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ようとしたところ、押出成形時のメルトフラクチャーにより平滑なキャストシートが作製できなかった。そのため、得られたキャストシートを延伸した時に破断が起こり、延伸フィルムを得られなかった。
【0144】
〔比較例5〕
樹脂A1と樹脂B1のドライブレンド体に代えて樹脂A1のみを使用したとした以外は、実施例6と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは2.5μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0145】
〔比較例6〕
樹脂A1と樹脂B1のドライブレンド体に代えて樹脂A1と樹脂B’4のドライブレンド体(A1/B’4=98/2(質量比))を使用したとした以外は、実施例6と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは2.5μmであった。樹脂の配合比と得られたフィルムの物性値を表2にまとめる。
【0146】
〔特性値の測定方法等〕
実施例及び比較例における特性値の測定方法等は以下の通りである。
【0147】
<二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さ>
マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0148】
<絶縁破壊強度>
二軸延伸フィルムの耐電圧性は、JIS C 2330:2010及びJIS C 2151:2006 17.2.2(絶縁破壊電圧・平板電極法)に準じて絶縁破壊の強さ(ES)を測定した。雰囲気温度100℃にて測定を行った。昇圧速度は100Vac/sec、破壊の際の遮断電流は10mAとし、測定回数は18回とした。ここでは、測定された平均電圧値を、フィルムの厚みで割ったものを、絶縁破壊強度として評価に用いた。送風循環式高温槽内にフィルム及び電極冶具をセットして、評価温度100℃にて、測定を行った。
なお、実施例1〜5、及び、比較例1〜2については、交流絶縁破壊の強さ(ES)を測定し、実施例6、比較例5、及び、比較例6については、直流絶縁破壊の強さ(ES)を測定した。一般的に、交流で電圧をかける方が直流で電圧をかけるよりも負荷は高い。そこで、厚さ18μmの実施例1〜5、及び、比較例1〜2については、直流で測定すると負荷が充分とならず、適切な評価ができないため、交流で測定した。一方、厚さ2.5μmの実施例6、比較例5、及び、比較例6は、直流にて充分な負荷を与えることができるため、直流で測定した。
【0149】
<ファーストランでの融点、融解エンタルピー、結晶化温度、及び、結晶化エンタルピーの測定>
実施例、比較例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムから5mgの試料を切り出し、アルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製のDiamondDSC)で入力補償示差走査熱量測定をおこなった。測定では、窒素雰囲気下で30℃から280℃まで20℃/分で昇温(ファーストラン)した。ファーストランの結果から、融点、融解エンタルピー、結晶化温度、及び、結晶化エンタルピーを求めた。
【0150】
<セカンドランでの融点、及び、融解エンタルピーの測定>
ファーストランの後、280℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分の条件で30℃まで冷却し、30℃で5分間保持した。その後、窒素雰囲気下で30℃から280℃まで20℃/分で昇温(セカンドラン)した。セカンドランの結果から、融点、及び、融解エンタルピーを求めた。
【0151】
<コンデンサ素子の作製>
各実施例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面に、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗12Ω/□にてアルミニウム蒸着により施して金属膜を形成し、金属化フィルムを得た。小幅にスリットした後に、2枚の金属化フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機3KAW−N2型を用い、巻き取り張力200gにて、1360ターン巻回を行った。
素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて4時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサを得た。出来上がったコンデンサの静電容量は、100μF(±5μF)であった。
【0152】
【表2】
【0153】
実施例1〜6から明らかな通り、本発明のフィルムは、絶縁破壊の強さが高く、コンデンサ用フィルムとして極めて好適である。