(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101を説明する分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101を説明する斜視図である。
図3(a)は、
図2をZ1側から見たレンズ駆動装置101の上面図であり、
図3(b)は、
図2をY2側から見たレンズ駆動装置101の正面図である。
図4(a)は、
図2に示すレンズ駆動装置101の固定側部材R4であるケース14を省略した斜視図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示す枠状部材44及び位置検出手段K7を更に省略した斜視図である。
図5(a)は、
図4(a)をX1側から見た側面図であり、
図5(b)は、
図4(b)をX1側から見た側面図である。
図6(a)は、
図2をZ2側から見たレンズ駆動装置101の底面図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示すベース部材8を省略した底面図である。
図7は、
図3(a)に示すVII−VII線における断面図である。なお、
図5及び
図7においては、コイル35に電流を流していない初期状態を示している。
【0027】
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101は、
図2、
図3及び
図6(a)に示すような直方体形状の外観を呈し、
図1及び
図7に示すように、レンズ体(図示していない)を保持可能な筒状のレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動可能に支持する付勢部材3と、レンズ保持部材2を収容する筐体4を含む固定側部材R4と、レンズ保持部材2を光軸方向KD(
図2に示すZ方向)に沿って移動させる駆動機構M5と、レンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置を検出する位置検出手段K7と、を備えて構成されている。
【0028】
また、本発明の第1実施形態では、付勢部材3は、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、レンズ保持部材2の上部に固定される上側板ばね3Aと、
図5及び
図6(b)に示すように、レンズ保持部材2の下部に固定される2つの下側板ばね3C及び下側板ばね3Eと、を備えて構成され、レンズ保持部材2を支持している。
【0029】
また、固定側部材R4は、前述した筐体4の他に、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、レンズ保持部材2の上方(
図4(a)に示すZ1方向)に配設された枠状部材44を有している。また、固定側部材R4の筐体4は、直方体形状に形成され、
図1に示すように、外形が箱状に形成されたケース14と、
図2に示すように、ケース14に一体化されるベース部材8と、から構成されている。
【0030】
また、駆動機構M5は、
図4及び
図7に示すように、レンズ保持部材2の周囲に巻かれた環状のコイル35と、コイル35に対向配置された2つの駆動用磁石55と、を備えている。
【0031】
また、位置検出手段K7は、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、レンズ保持部材2に固定された検出用磁石75と、検出用磁石75に対向して設けられた磁気検出部材77と、磁気検出部材77が搭載された板状部材79と、を備えている。
【0032】
そして、レンズ駆動装置101は、図示しないレンズ体をレンズ保持部材2に保持し、撮像素子を実装した実装基板(図示していない)上に取り付けられる。そして、レンズ体に保持されたレンズを光軸方向KD(
図2に示すZ方向)に駆動させて焦点距離を調整するために、レンズ駆動装置101は、電源からコイル35に電流が流されて生じる電磁力により、撮像素子に対して、レンズ保持部材2を光軸方向KDに沿って移動させるものである。
【0033】
次に、各構成部品について詳細に説明する。先ず、レンズ駆動装置101のレンズ保持部材2について説明する。
図8は、レンズ保持部材2を説明する図であって、
図8(a)は、レンズ保持部材2の斜視図であり、
図8(b)は、
図8(a)に示すレンズ保持部材2にコイル35が巻回された斜視図である。
【0034】
レンズ駆動装置101のレンズ保持部材2は、合成樹脂の1つである液晶ポリマー(LCP、Liquid Crystal Polymer)等を用い、
図8に示すように、筒状に形成されており、円形形状の内周面及び角形形状の外周面(上端側は円形形状)を有する筒部12と、筒部12の上端側(
図4に示すZ1側)の外周面から径方向外側に突出した庇部22と、庇部22と対向して設けられ筒部12の下端(
図4に示すZ2側)の外周面から径方向外側に突出した鍔部32と、から構成されている。そして、レンズ保持部材2は、
図4に示すように、ベース部材8の上方(
図4に示すZ1方向)に配置されている。
【0035】
レンズ保持部材2の筒部12は、その内周面に、
図8に示すように、雌ねじ部12nが形成されており、この雌ねじ部12nに図示しないレンズ体が装着されて、保持される。また、筒部12の外周面は、
図8(a)に示すように、鍔部32と庇部22とに挟まれた部分が八角形状に形成されており、
図8(b)に示すように、この外周面に支持されてコイル35が八角形状に巻回されている。
【0036】
また、庇部22の上方で筒部12の外周面には、
図8に示すように、台座部12dが2箇所に対向して形成されている。そして、レンズ駆動装置101が組立てられた際には、
図4(b)に示すように、対向する(
図4(b)に示すX方向)2箇所の台座部12d(レンズ保持部材2)と付勢部材3の上側板ばね3A(後述する第1部分13)とが接着剤で固定される。
【0037】
また、鍔部32側のレンズ保持部材2の底面には、
図6(b)に示すように、下方(
図6(b)では紙面手前で
図8に示すZ2方向)に突出する円柱状の凸設部12tが4箇所(2つの凸設部12t
1及び2つの凸設部12t
2)に設けられている。そして、レンズ駆動装置101が組立てられた際には、
図6(b)に示すように、2つの凸設部12t
1が下側板ばね3C(後述する第3部分33)と係合するとともに、2つの凸設部12t
2が下側板ばね3E(後述する第3部分33)と係合する。
【0038】
更に、レンズ保持部材2の底面には、
図6(b)に示すように、下方に突出する角柱状の絡げ部12kが2箇所に設けられている。そして、コイル35のコイル端部のそれぞれが、この絡げ部12kに巻き付けられて、2つの下側板ばね3C及び下側板ばね3Eにそれぞれはんだ付けされている。なお、
図6(b)では、2つのコイル端部と下側板ばね3C及び下側板ばね3Eとがはんだ付けされた半田HDを破線で囲まれたクロスハッチングで模式的に示している。
【0039】
次に、レンズ駆動装置101の付勢部材3について説明する。
図9は、付勢部材3を説明する図であって、
図9(a)は、
図1に示す上側板ばね3AをZ1側から見た上面図であり、
図9(b)は、
図1に示す下側板ばね3C及び下側板ばね3EをZ1側から見た上面図である。
【0040】
レンズ駆動装置101の付勢部材3は、銅合金を主な材質とした金属板から作製されており、
図4(b)に示すように、レンズ保持部材2の筒部12の内周面よりも大径な開口を有し、レンズ保持部材2と枠状部材44との間に配設される上側板ばね3Aと、レンズ保持部材2とベース部材8との間に配設される2つの下側板ばね3C及び下側板ばね3Eと、から構成されている。そして、レンズ保持部材2に付勢部材3のそれぞれ(上側板ばね3A、下側板ばね3C、下側板ばね3E)の一部が固定されて、レンズ保持部材2が光軸方向KD(
図2に示すZ方向)へ移動可能になるように、付勢部材3がレンズ保持部材2を空中で支持している。なお、下側板ばね3C及び下側板ばね3E(2つの板ばね)は、
図6(b)に示すように、半田HDによりコイル35と電気的に接続されているので、コイル35への給電部材としての機能も有している。
【0041】
先ず、付勢部材3の上側板ばね3Aは、
図9(a)に示すように、外形形状が略矩形状をしており、レンズ保持部材2に固定される複数(本発明の第1実施形態では2箇所)の第1部分13と、第1部分13よりも外周側に位置し固定側部材R4(具体的には枠状部材44)に固定される4箇所の第2部分23と、第1部分13と第2部分23との間に設けられた4箇所の弾性腕部53aと、第1部分13から延設されて連結された連結部63と、4箇所の第2部分23同士を繋ぐ桟部73と、を有して構成されている。そして、第1部分13と連結部63とで内側形状が円環形状を形成しているとともに、第2部分23と桟部73とで外側形状が矩形形状を形成している。
【0042】
そして、上側板ばね3Aがレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、
図4(b)に示すように、第1部分13がレンズ保持部材2の台座部12dに載置され、第1部分13と台座部12dとを接着剤で固定することにより、上側板ばね3Aの一方側がレンズ保持部材2に固定されるようになる。なお、
【0043】
一方、
図7に示すように、第2部分23の2箇所は、駆動用磁石55の上面と当接しており(
図4(b)及び
図5を参照)、枠状部材44とともに、駆動用磁石55とケース14とにより挟持される。なお、駆動用磁石55は、ケース14に接着剤で固定されている。更に、図示はしていないが、他の2箇所の第2部分23は、枠状部材44の下面に接着剤で固定されるので、上側板ばね3Aの他方側が固定されるようになる。
【0044】
このようにして、上側板ばね3Aは、
図9(a)に示すように、ほぼ線対称の形状に構成されており、レンズ保持部材2に対して第1部分13の2箇所の均等な位置で固定されているとともに(
図4を参照)、固定側部材R4(ケース14及び枠状部材44)に対して第2部分23の4箇所の均等な位置で固定されている(
図7を参照)。これにより、レンズ保持部材2をバランス良く空中で支持することができる。
【0045】
次に、付勢部材3の下側板ばね3C及び下側板ばね3Eは、
図9(b)に示すように、外形形状が略矩形状でそれぞれの内側形状が半円形状をしており、レンズ保持部材2と固定される4箇所の第3部分33と、ベース部材8と固定される4箇所の第4部分43と(後述する
図10(b)を参照)、第3部分33と第4部分43との間に位置する2箇所の弾性腕部53c及び弾性腕部53eと、それぞれ2箇所の第3部分33を繋ぐ第1連鎖部83と、それぞれ2箇所の第4部分43を繋ぐ第2連鎖部93と、を有して構成されている。
【0046】
また、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの第3部分33には、
図9(b)に示すように、円形の貫通孔33kがそれぞれ形成されている。また、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの第4部分43には、円形の貫通孔43mがそれぞれ形成されているとともに、それぞれ1箇所に矩形の貫通孔43s及び貫通孔43tが形成されている。
【0047】
そして、この下側板ばね3C及び下側板ばね3Eがレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、
図6(b)に示すように、レンズ保持部材2の2つの凸設部12t
1(12t)が、下側板ばね3Cの貫通孔33k(
図9(b)を参照)に挿通されて嵌合されるとともに、レンズ保持部材2の2つの凸設部12t
2(12t)が、下側板ばね3Eの貫通孔33k(
図9(b)を参照)に挿通されて嵌合される。これにより、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの一方側がレンズ保持部材2に位置決めされるとともに、レンズ保持部材2に固定される。なお、この際には、レンズ保持部材2の凸設部12t(12t
1、12t
2)に熱かしめを施して、より確実に下側板ばね3C及び下側板ばね3Eをレンズ保持部材2に固定している。
【0048】
一方、後述するベース部材8の上面に設けられた突設部18t(
図1を参照)が、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの貫通孔43m(
図9(b)を参照)に挿通されて嵌合される。これにより、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの他方側がベース部材8に位置決めされるとともに、ベース部材8に固定される。
【0049】
このようにして、下側板ばね3Cと下側板ばね3Eとは、
図9(b)に示すように、ほぼ線対称の形状に構成されており、レンズ保持部材2に対して第3部分33の4箇所の均等な位置で接続されているとともに、ベース部材8に対して第4部分43の4箇所の均等な位置で接続されている。これにより、レンズ保持部材2をバランス良く空中で支持することができる。従って、以上のように構成された付勢部材3は、レンズ保持部材2を光軸方向KDへ移動可能に支持している。
【0050】
次に、レンズ駆動装置101の固定側部材R4について説明する。
図10(a)は、ベース部材8の斜視図であり、
図10(b)は、
図10(a)のベース部材8に下側板ばね3C及び下側板ばね3Eが載置された状態を示す斜視図である。
【0051】
固定側部材R4は、レンズ保持部材2が光軸方向KDに沿って移動するのに対して、その移動を可能に支持する付勢部材3の一部を固定する機能を有した部材である。つまり、本発明の第1実施形態では、固定側部材R4は、
図1に示すように、駆動用磁石55との間に上側板ばね3Aの第2部分23を挟んで固定するケース14と、上側板ばね3Aの第2部分23が接着剤で固定される枠状部材44と、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの第4部分43が固定されるベース部材8と、を備えて構成されている。なお、本発明の第1実施形態では、上側板ばね3Aの第2部分23の2箇所を枠状部材44と駆動用磁石55とで挟持することにより、上側板ばね3Aの他方側を固定しているので、この駆動用磁石55も付勢部材3の一部を固定する固定側部材R4とも云える。
【0052】
先ず、固定側部材R4のケース14について説明する。ケース14は、非磁性の金属材料からなる金属板を用いて切断加工、絞り加工等を行い作製されており、
図1に示すような外形が箱状に形成されて、
図3(a)に示すような略矩形状(平面視して)をしている。そして、ケース14は、平板状の側壁部14Aと、側壁部14Aの上端(
図1に示すZ1側)と連続して設けられた平板状の上板部14Bと、側壁部14Aを繋ぐ部分に位置する角部14Cと、を有して構成されており、上板部14Bに略円形状の開口部14kが形成されている。
【0053】
また、ケース14は、
図2に示すように、レンズ保持部材2、付勢部材3(上側板ばね3A、下側板ばね3C、下側板ばね3E)、枠状部材44及び駆動機構M5(コイル35及び駆動用磁石55)を覆うようにして、それら部材を収容して、下方(
図2に示すZ2方向)に配設されたベース部材8に係合され、ベース部材8と一体化されている。
【0054】
次に、固定側部材R4の枠状部材44について説明する。枠状部材44は、ポリブチレンテレフタレート(PBT、polybutyleneterephtalate)等の合成樹脂を用い、
図1に示すように、中央に矩形状の開口部44kを有し略矩形形状をなした枠体である。そして、枠状部材44は、互いに対向する一組の辺である第1延在部44Aと、この一組の辺と交差する他の一組の辺である第2延在部44Bと、第1延在部44Aと第2延在部44Bとを接続する角側部44Cと、を備えて構成されている。
【0055】
そして、枠状部材44がレンズ駆動装置101に組み込まれた際には、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、上側板ばね3Aの上方に配設されて、
図7に示すように、対角に配置された枠状部材44の角側部44Cと駆動用磁石55とで上側板ばね3Aの第2部分23を挟持するようになる。また、
図4(a)に示すように、枠状部材44の第1延在部44Aが上側板ばね3Aの連結部63の外周側に沿って延在するとともに、枠状部材44の第2延在部44Bの中間部が上側板ばね3Aの第1部分13と対向して位置するようになる。
【0056】
次に、固定側部材R4のベース部材8について説明する。ベース部材8は、レンズ保持部材2と同じ液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂材を用いて射出成形して作製されており、
図10(a)に示すように、外形が矩形の板状形状で構成され、その中央部分に円形状の開口部8kを有する環状形状に形成されている。また、ベース部材8の上面には、
図10(a)に示すように、上方に向けて突出する4つの突設部18t(2つの突設部18t
1及び2つの突設部18t
2)が四隅に設けられている。そして、前述したが、
図10(b)に示すように、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eの貫通孔43m(
図9(b)を参照)に、この突設部18tが挿通されて嵌合される。なお、この際には、ベース部材8の突設部18tに熱かしめを施して、より確実に下側板ばね3C及び下側板ばね3Eをベース部材8に固定している。
【0057】
また、ベース部材8には、
図10(a)に示すように、銅や鉄若しくはそれらを主成分とした合金等の材質を用いた金属板からなる3つの端子T9(給電端子T9C、給電端子T9E、グランド端子T9G)が、インサート成形されて埋め込まれている。この電気的に絶縁された3つの端子T9のそれぞれは、図示していない撮像素子を実装した実装基板の電極ランドと電気的に接続され、この実装基板の電極ランドから電力を供給できるとともに、電極ランドに接地されるようになっている。つまり、給電端子T9C及び給電端子T9Eが電源に接続され、グランド端子T9Gがグランドに接続されている。
【0058】
また、給電端子T9Cは、
図10(b)に示す下側板ばね3Cの貫通孔43sの部分で、
図10(a)に示す接続部T9dと電気的に接続されるとともに、給電端子T9Eは、
図10(b)に示す下側板ばね3Eの貫通孔43tの部分で、
図10(a)に示す接続部T9fと電気的に接続されている。これにより、この給電端子T9C及び給電端子T9Eから、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eを介して、コイル35に電流を流す(通電する)ことができる。なお、下側板ばね3C及び下側板ばね3Eと給電端子T9C及び給電端子T9Eとの接続は、図示はしていないが、はんだ付けや溶接等により容易に接続される。
【0059】
また、ベース部材8には、詳細な図示はしていないが、銅や鉄若しくはそれらを主成分とした合金等の材質を用いた金属板からなる接続部材59も、3つの端子T9と同様に、インサート成形されて埋め込まれており、接続部材59の一部は、
図3(a)に示すように、ケース14の四隅に一部を露出している。そして、ケース14の側壁部14Aの内壁とベース部材8の外周側面が組み合わされて位置決めされた後に、ベース部材8の接続部材59とケース14の四隅とのつなぎ目部分を4箇所溶接して、ケース14をベース部材8に固定している。なお、接続部材59の少なくとも一部は、グランド端子T9Gと一体に形成されている。このため、ケース14は、接続部材59及びグランド端子T9Gを介して、接地可能となっている。
【0060】
次に、レンズ駆動装置101の駆動機構M5について説明する。
図11は、駆動機構M5を説明する図であって、
図6(b)に示す下側板ばね3C、下側板ばね3E及びレンズ保持部材2を省略した底面図である。
図11には、ケース14、枠状部材44、上側板ばね3A、駆動機構M5及び位置検出手段K7が図示されている。
【0061】
駆動機構M5は、レンズ保持部材2を光軸方向KD(
図1に示すZ方向)に沿って移動させる機能を有し、
図4(a)に示すように、レンズ保持部材2の周囲に巻かれた環状のコイル35と、コイル35に対向配置された2つの駆動用磁石55と、を備えて構成されている。
【0062】
先ず、駆動機構M5のコイル35は、外周に絶縁被覆(コーティング)が施された金属線材からなり、
図8(b)に示すように、レンズ保持部材2の外周に巻回されて、
図11に示すように、略八角形の環状に形成さている。その際には、コイル35は、
図8(b)に示すように、庇部22と鍔部32との間に配設され、角形形状の外周面に内側から支持されて固定される。なお、コイル35は、金属線材が巻回されて束ねられた形状となっているが、
図1、
図4及び
図8(b)等では、簡略化して、表面を平坦にして示している。
【0063】
また、コイル35は、巻回された金属線材の両端部が電気的に導通可能となっており、前述したように、
図6(b)に示すように、コイル端部のそれぞれが2つの下側板ばね3C及び下側板ばね3Eとはんだ付けされて電気的に接続されている。
【0064】
次に、駆動機構M5の駆動用磁石55は、例えばサマリウムコバルト磁石を2つ用い、
図11に示すように、光軸を挟んで筐体4(ケース14)の対角に位置する一対の角部14Cにそれぞれ1つずつ配置され、コイル35と対向配置されている。また、駆動用磁石55は、この角部14Cに駆動用磁石55を効率良く配置するため、横断面形状が台形形状に作製されており、上底が角部14Cに対向し、下底がコイル35に対向し、脚が側壁部14Aに沿った形状となっている。そして、駆動用磁石55は、脚が側壁部14Aに押し付けられて、固定側部材R4であるケース14に接着剤で固定されている。なお、駆動用磁石55は、コイル35に対向する内側(台形形状の下底側)と内側の反対側である外側(台形形状の上底側)とで異なる磁極となるように着磁されている。
【0065】
以上のようにして、レンズ保持部材2及びコイル35とケース14及び駆動用磁石55とが各々配設されて構成されているので、レンズ駆動装置101は、電源からコイル35に電流が流されて生じる電磁力により、電流が流れる方向に対応してコイル35に推力が働き、レンズ保持部材2が上下に移動するようになっている。しかも、本発明の第1実施形態では、駆動用磁石55が光軸を挟んで筐体4の対角に位置する一対の角部14Cにそれぞれ1つずつ配置されているので、コイル35と駆動用磁石55で作り出す光軸方向KDへの駆動力をレンズ保持部材2に対してバランス良く働かせることができる。
【0066】
最後に、レンズ駆動装置101の位置検出手段K7について説明する。
図12(a)は、位置検出手段K7の斜視図であり、
図12(b)は、
図12(a)に示すY1側から見た位置検出手段K7の斜視図である。
図13は、位置検出手段K7を説明する図であって、
図5(a)に示すP部分の拡大側面図である。なお、
図5(a)、
図12及び
図13には、着磁された磁極の境界線を二点鎖線で示している。
【0067】
位置検出手段K7は、
図12に示すように、レンズ保持部材2に固定された(
図4(a)及び
図5(a)を参照)検出用磁石75と、検出用磁石75に対向して設けられた磁気検出部材77と、磁気検出部材77が搭載された板状部材79と、を備えている。
【0068】
先ず、位置検出手段K7の検出用磁石75は、例えばサマリウムコバルト磁石を1つ用いて直方体形状に形成され、
図4(a)に示すように、レンズ保持部材2の鍔部32上に配設されて接着剤によって固定されている。これにより、レンズ保持部材2の移動に伴って検出用磁石75が移動するようになっている。
【0069】
また、検出用磁石75は、
図12及び
図13に示すように、光軸方向KDにおいて、互いに異なる磁極に着磁された第1着磁部MG1と、第1着磁部MG1とは逆の磁極となるように着磁された第2着磁部MG2と、を有しており、第1着磁部MG1と第2着磁部MG2とが隣接して設けられている。具体的には、
図13に示すように、磁気検出部材77に近い側の第1着磁部MG1は、上方側がS極、下方側がN極に着磁され、第2着磁部MG2は、第1着磁部MG1とは逆の磁極となるように、上方側がN極、下方側がS極に着磁されている。これにより、検出用磁石75と駆動用磁石55との磁界の干渉を打ち消し合うことができ、駆動用磁石55が受ける検出用磁石75からの磁界の影響を抑制することができる。このことは、N極とS極の一組で着磁された磁石を用いた場合に、検出用磁石75と駆動用磁石55との磁界同士が干渉し、この干渉により、初期状態において、レンズ保持部材2の高さ位置のズレが発生したり、レンズ保持部材2の姿勢が傾むいたり、と云う課題を解決することとなる。
【0070】
また、本発明の第1実施形態では、検出用磁石75は、
図11に示すように、筐体4(ケース14)の一対の角部14C(駆動用磁石55が配置されている角部14C)とは異なる他の角部14Cに対応する位置に配置されている。これにより、検出用磁石75とそれぞれの駆動用磁石55との距離を同程度でしかもより長くすることができる。このため、検出用磁石75からの磁界の影響をそれぞれの駆動用磁石55に対して均等により少なくすることができ、レンズ保持部材2の姿勢に対してより影響を与えないものとすることができる。
【0071】
なお、本発明の第1実施形態では、検出用磁石75が一つの磁石で構成されいるので、2つの磁石で構成する場合に比べて、検出用磁石75を容易に配設することができるとともに、安く作製することができる。
【0072】
次に、位置検出手段K7の磁気検出部材77は、磁気の変化を検出するホール素子を用いており、4つの端子部(
図12(b)では、片側の2つの端子部のみを示しており、77a及び77bとして図示している)を外側に露出して、このホール素子を内蔵したパッケージで形成されている。
【0073】
また、磁気検出部材77は、後述する板状部材79の4つの導電部材79dとはんだ付けされて、検出用磁石75と対向するようにして板状部材79に固定されている。これにより、磁気検出部材77をレンズ保持部材2の側方に配置する構成となり、レンズ保持部材2の上方側或いは下方側に配置する場合と比較して、高さ寸法を小さくすることができる。なお、ホール素子の感磁方向は、
図12に示すY方向となっている。
【0074】
そして、磁気検出部材77は、レンズ保持部材2に固定されている検出用磁石75が発生し、光軸方向KDの移動による磁界の変化を検出することができる。このため、本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101は、レンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置を検出することができ、レンズ保持部材2の実際の位置を調整することができる。このことにより、調整して位置が明確になっているレンズ保持部材2を例えば画像のピントが合う位置等の所定の位置まで速やかに移動させることができる。従って、レンズ保持部材2の位置が定まるまでの時間を短縮することができ、レンズ保持部材2を所定の位置まで速やかに且つ確実に移動させることができる。
【0075】
また、磁気検出部材77が第2着磁部MG2よりも第1着磁部MG1に近い位置に配設されているので、第1着磁部MG1と第2着磁部MG2との磁界が打ち消し合う位置には、磁気検出部材77が配設されないこととなる。このため、第1着磁部MG1からの磁界を磁気検出部材77で確実に検出することができる。このことにより、レンズ保持部材2の位置を確実に調整することができ、レンズ保持部材2を所定の位置まで速やかに且つ確実に移動させることができる。
【0076】
次に、位置検出手段K7の板状部材79は、
図12(b)に示すように、導電性の金属部材で形成された4つの外部端子79cと、この外部端子79cと一体に形成され導電パターンを形成する導電部材79dと、外部端子79cを露出して導電部材79dを埋設する基材部79fと、を備えて構成されている。そして、板状部材79には、磁気検出部材77が搭載されて、板状部材79の4つの外部端子79cは、磁気検出部材77と導電部材79dを介して電気的に接続される。
【0077】
また、レンズ駆動装置101が組み立てられた際には、板状部材79は、
図11に示すように、ケース14の側壁部14Aの内面に沿うように筐体4内に配設されており、
図2に示すように、外部端子79cがケース14の外方へ露出させた状態となっている。そして、この4つの外部端子79cは、ベース部材8の端子T9とともに、図示していない撮像素子を実装した実装基板の電極ランドと電気的に接続される。これにより、容易にレンズ保持部材2の側方に磁気検出部材77を配置することができる。また、3つの端子T9(給電端子T9C、給電端子T9E、グランド端子T9G)と外部端子79cとが一列に並んでいるので(
図6(a)を参照)、レンズ駆動装置101が実装される実装基板等のレイアウトが容易となる。なお、板状部材79は、筐体4を構成するベース部材8とケース14との少なくともいずれか一方に接着剤で固定されている。
【0078】
以上のように構成された位置検出手段K7は、レンズ保持部材2の移動に伴って検出用磁石75が移動することにより、検出用磁石75から発生する磁束が変化し、この磁束の変化を磁気検出部材77で検出している。これにより、位置検出手段K7は、磁束の変化に対応した位置、すなわちレンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置を検出することができる。
【0079】
最後に、以上に構成されたレンズ駆動装置101の動作について簡単に説明する。
【0080】
先ず、レンズ駆動装置101においては、コイル35の両端部が下側板ばね3C及び下側板ばね3Eを介して給電端子T9Cと給電端子T9Eとに電気的に接続されているため、給電端子T9C及び給電端子T9Eからコイル35に電流を流すことができる。一方、駆動用磁石55からの磁束は、駆動用磁石55を発してコイル35を通過して駆動用磁石55に戻るものとなっている。
【0081】
この初期状態から、給電端子T9C側からコイル35に電流を流すと、コイル35にはフレミングの左手の法則に従って、光軸方向KDであるZ1方向からZ2方向へ向かう電磁力が発生する。そして、レンズ保持部材2がZ2方向に移動することとなる。一方、給電端子T9E側からコイル35に電流を流すと、光軸方向KDであるZ2方向からZ1方向へ向かう電磁力が発生し、レンズ保持部材2がZ1方向に移動することとなる。
【0082】
このように、コイル35に電流を流すことで、コイル35に発生する電磁力により、レンズ駆動装置101は、上側板ばね3Aと下側板ばね3C及び下側板ばね3Eとのどちらか一方の付勢力に反して、図示しないレンズ体をレンズ保持部材2と一体にして、光軸方向KD(
図2に示すZ方向)に沿って移動させることが可能となる。なお、コイル35に流される電流は、位置検出手段K7で検出したレンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置精度に基づいて制御される。
【0083】
以上のように構成された本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0084】
本発明の第1実施形態のレンズ駆動装置101は、レンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置を検出する位置検出手段K7を有しているので、レンズ保持部材2の位置を調整することができ、調整して位置が明確になっているレンズ保持部材2を例えば画像のピントが合う位置等の所定の位置まで速やかに移動させることができる。このため、レンズ保持部材2の位置が定まるまでの時間を短縮することができる。しかも、位置検出手段K7として簡単な構成の検出用磁石75と磁気検出部材77とを用いたとしても、検出用磁石75が光軸方向KDにおける磁極が逆となる第1着磁部MG1と第2着磁部MG2とを有するので、検出用磁石75と駆動用磁石55との磁界の干渉を打ち消し合うことができ、駆動用磁石55が受ける検出用磁石75からの磁界の影響を抑制することができる。このため、レンズ保持部材2の高さ位置や傾き等の姿勢が検出用磁石75により影響を受けることを抑制できる。これらのことにより、位置検出手段K7がレンズ保持部材2の光軸方向KDにおける位置を確実に検出して、レンズ保持部材2の移動の際に、レンズ保持部材2を所定の位置まで速やかに且つ確実に移動させることができる。従って、オートフォーカスの高速化に対応可能なレンズ駆動装置101を提供することができる。
【0085】
また、磁気検出部材77が第2着磁部MG2よりも第1着磁部MG1に近い位置に配設されているので、第1着磁部MG1と第2着磁部MG2との磁界が打ち消し合う位置には、磁気検出部材77が配設されないこととなる。このため、第1着磁部MG1からの磁界を磁気検出部材77で確実に検出することができる。このことにより、レンズ保持部材2の位置を確実に調整することができ、レンズ保持部材2を所定の位置まで速やかに且つ確実に移動させることができる。
【0086】
また、駆動用磁石55が光軸を挟んで筐体4の対角に位置する一対の角部14Cにそれぞれ1つずつ配置されているので、コイル35と駆動用磁石55で作り出す光軸方向KDへの駆動力をレンズ保持部材2に対してバランス良く働かせることができる。また、検出用磁石75が一対の角部14Cとは異なる他の角部14Cに対応する位置に配置されているので、検出用磁石75とそれぞれの駆動用磁石55との距離を同程度でしかもより長くすることができる。このため、検出用磁石75からの磁界の影響をそれぞれの駆動用磁石55に対して均等により少なくすることができ、レンズ保持部材2の姿勢に対してより影響を与えないものとすることができる。
【0087】
また、検出用磁石75が一つの磁石で構成されいるので、2つの磁石で構成する場合に比べて、検出用磁石75を容易に配設することができるとともに、安く作製することができる。
【0088】
また、磁気検出部材77をレンズ保持部材2の側方に配置する構成とすることで、レンズ保持部材2の上方側或いは下方側に配置する場合と比較して、高さ寸法を小さくすることができる。
【0089】
また、磁気検出部材77を搭載した板状部材79を筐体4に配置することで、容易にレンズ保持部材2の側方に磁気検出部材77を配置することができる。また、給電端子T9C及び給電端子T9E(グランド端子T9Gも含む)と外部端子79cとが一列に並んでいるので、レンズ駆動装置101が実装される実装基板等のレイアウトが容易となる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0091】
<変形例1>
上記第1実施形態では、検出用磁石75として、1つの磁石を用いて簡易な構成としたが、これに限るものではない。例えば、検出用磁石75が、第1着磁部MG1を有する第1磁石と、第2着磁部MG2を有する第2磁石と、の二つの磁石で構成されていても良い。これにより、一つの磁石で構成する場合に比べて、検出用磁石75からの大きな磁力が得られ易くなり、レンズ保持部材2の位置の検出精度を高めることができる。
【0092】
<変形例2>
上記第1実施形態では、第1着磁部M1の上方側をS極、下方側をN極に着磁し、第2着磁部MG2の上方側をN極、下方側をS極に着磁して構成したが、これに限るものではなく、光軸方向KDにおいて、第1着磁部MG1と第2着磁部MG2とが互いに逆の磁極となるように着磁されていれば良い。例えば、第1着磁部M1の上方側をN極、下方側をS極に着磁し、第2着磁部MG2の上方側をS極、下方側をN極に着磁しても良い。
【0093】
<変形例3>
上記第1実施形態では、板状部材79として、外部端子79cと一体の導電部材79dを基材部79fに埋設したものを好適に用いたが、これに限るものではなく、例えば一般に用いられているプリント配線板(PWB、printed wiring board)に外部端子79cを実装したものを用いても良い。
【0094】
<変形例4>
上記第1実施形態では、磁気検出部材77として、ホール素子を用いて構成したが、これに限るものではなく、例えば磁気の変化によって抵抗が変化する磁気抵抗効果素子であっても良い。
【0095】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。