(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
[原理モデル]
まず、
図1及び
図2を参照しながら、評価装置の原理モデル1の概要について説明する。原理モデル1は、テラヘルツ時間領域分光法を用いて、膜状体Mの光学的特性(例えば、吸収率や、屈折率、透過率等。)を評価する装置である。膜状体Mは、厚さ寸法が他の寸法と比べて小さい物体である。評価対象にできる膜状体Mとして、例えば、綿織物や、キュプラ織物、樹脂フィルム等が挙げられる。
図1に示されるように、原理モデル1は、発信部2と、受信部3と、導波部材4と、演算部7と、を備えている。
【0017】
発信部2は、外部の空間に電磁波を発信する機器である。詳細には、発信部2は、周波数が0.1THz〜10THz、波長が300μm〜3mmの電磁波であるテラヘルツ波を発生させる。発信部2は、フェムト秒レーザ、光伝導アンテナや、テラヘルツ発信共鳴トンネルダイオード(RTD)、テラヘルツ量子カスケードレーザ等、テラヘルツ波を発信可能な機構を有している。
図1はこれらを簡略し、発信部2を1つのユニットとして図示している。発信部2は、不図示の制御装置から受信する制御信号に基づいて電磁波を発信する。
【0018】
受信部3は、発信部2が発信した電磁波を受信する機器である。受信部3は、発信部2と間隔を空けて配置されている。受信部3は、光伝導素子等の複数の部材を有している。
図2はこれらを簡略し、受信部3を1つのユニットとして図示している。受信部3は、発信部2が発信した電磁波を受信し、当該電磁波の電場強度を電流として検出することができる。
【0019】
導波部材4は、発信部2と受信部3との間に配置される部材である。導波部材4は、その内部に導波路40を有している。導波路40は、その端部が開放されている。詳細には、導波部材4は、隙間を隔てて対向する導波板5,6を有しており、当該隙間が導波路40に相当する。膜状体Mは、この導波路40の一部に配置されている。後述するように、発信部2が発信した電磁波はこの導波路40を通過することによって受信部3に導かれる。
【0020】
尚、理解を容易にするため、
図1に示されるように、導波板5,6が対向する方向をZ方向とし、当該Z方向に直交する方向をX方向、Y方向とする直交座標を用いて説明する。
図3以降においても、当該直交座標と対応する座標が示される。
【0021】
演算部7は、膜状体Mの特性を導出する機器である。演算部7は、少なくとも受信部3と接続されている。演算部7は、受信部3が検出した電流に基づいて所定の演算を行うことにより、膜状体Mの特性を導出する。
【0022】
演算部7は、
図2に示される電流波形を受信部3から取得する。
図2は、発信部2から電磁波が発信された後に、受信部3が検出した電流の変化を示している。導波路40に膜状体Mが配置されていない場合に受信部3が検出する電流Erの波形は、実線によって示されている。一方、導波路40に膜状体Mが配置されている場合に受信部3が検出する電流Emの波形は、破線によって示されている。電流Er及び電流Emの波形は、電磁波が受信部3によって受信されたタイミングにピークを有している。
【0023】
導波路40に膜状体Mが配置されていない場合、発信部2が発信した電磁波は、導波路40において殆ど吸収されることなく受信部3に至る。この場合、電流Erの波形のピークが明瞭に現れる。このような電流Erの波形は、膜状体Mの評価に先駆けて取得されている。
【0024】
一方、導波路40に膜状体Mが配置されている場合、発信部2が発信した電磁波の一部は、導波路40において当該膜状体Mによって吸収される。電磁波の他部は、当該膜状体Mを透過し、導波路40を通過して発信部2に至る。つまり、電流Emの波形は、多重反射も含めた透過後の電磁波のものを示している。このため、電流Emの波形のピークは、電流Erの波形のものよりも小さくなる。また、電流Emの波形のピークは、電流Erのピークが現れるタイミングからやや遅れて現れる。
【0025】
演算部7は、このような電流Er,Emの波形のそれぞれに所定の処理を施す。詳細には、演算部7は、電流Er,Emの波形のそれぞれの複素フーリエ成分を計算し、両者の比を計算する。両者の比は複素振幅透過率に相当し、複素屈折率の関数として表される。したがって、演算部7は、予め実験で得られている複素振幅透過率に基づいて、膜状体Mの光学的特性の1つである複素屈折率を導出することができる。
【0026】
このように構成された原理モデル1において、膜状体Mの特性を高い精度で評価するためには、電流Erの波形と電流Emの波形との差異が、有意なものでなければならない。換言すれば、導波路40における膜状体Mの有無に応じて、電流Er,Emの波形の差異が顕著となるように原理モデル1を構成する必要がある。
【0027】
そこで、原理モデル1では、電流Er,Emの波形の差異を顕著なものとすべく、導波部材4の構成に工夫がなされている。次に
図3から
図7を参照しながら、この導波部材4の構成について説明する。
【0028】
図3及び
図4に示されるように、導波板5,6は、X軸方向を長手方向とし、Z軸方向を厚さ方向とする板形状を呈している。導波板5,6は、アルミニウムによって形成されている。X軸方向における導波板5,6の寸法Lxは、90mm程度である。
図3に示されるように、導波板5,6は、その一側面に反射面50,60を有している。
【0029】
反射面50,60は、研磨が施されることにより凹凸が少ない滑らかな面となっている。これにより、後述するように反射面50,60において電磁波が反射する際の散乱が抑制される。反射面50,60は、入口側テーパ部51,61、平坦部52,62、及び出口側テーパ部53,63を有している。
【0030】
平坦部52,62は、X軸方向において反射面50,60の中央部に位置する平坦な面である。X軸方向における平坦部52,62の寸法Lx1は30mm程度である。導波板5,6は、この平坦部52,62が、Z軸方向に隙間を隔てて互いに平行となるように配置されている。Z軸方向における隙間の寸法dは、発信部2が発信する電磁波の波長以下(例えば、200μm)に設定されている。導波路40のうち、この平坦部52と平坦部62との間に形成される部分は、膜状体配置部42と称される。尚、説明の理解の為、
図3から
図7では、導波路40を極端に大きく示している。
【0031】
膜状体Mは、この膜状体配置部42に、その厚さ方向がZ方向と直交しないように配置される。詳細には、膜状体Mは、その厚さ方向がZ方向と一致するとともに、平坦部52,62に沿って延びるように膜状体配置部42に配置される。膜状体Mは、平坦部52,62と接触しないように、Y軸方向の両端部が不図示の治具によって固定されている。
【0032】
入口側テーパ部51,61は、平坦部52,62よりも発信部2(
図3では不図示)側に位置し、平坦部52,62に連続する面である。入口側テーパ部51,61は、導波路40に向かって突出するように湾曲している。導波路40のうち、この入口側テーパ部51と入口側テーパ部61との間に形成される部分は入口部41と称される。入口部41において、入口側テーパ部51,61は、X軸方向に向かうにつれて漸次近接するように形成されている。換言すれば、入口部41は、X軸方向に向かうにつれてその幅が漸次減少するように形成されている。
【0033】
出口側テーパ部53,63は、平坦部52,62よりも受信部3(
図3では不図示)側に位置し、平坦部52,62に連続する面である。出口側テーパ部53,63は、導波路40に向かって突出するように湾曲している。導波路40のうち、この出口側テーパ部53と出口側テーパ部63との間に形成される部分は出口部43と称される。出口部43において、出口側テーパ部53,63は、X軸方向に向かうにつれて漸次離反するように形成されている。換言すれば、出口部43は、X軸方向に向かうにつれてその幅が漸次増加するように形成されている。
【0034】
図5に示されるように、発信部2(
図5では不図示)によって発信された電磁波は、まず、導波路40の−X方向における端部から入口部41に進入する。
図5は、電磁波の進行方向を、矢印A1によって模式的に示している。矢印A1で示されるように、電磁波は、入口側テーパ部51,61において繰り返し反射することにより、Z方向に往復する。
【0035】
また、前述したように、入口側テーパ部51,61は導波路40に向かって突出するように湾曲している。このため、入口側テーパ部51,61は、X方向を指向するように電磁波を反射させる。また、入口部41は、X軸方向に向かうにつれてその幅が漸次減少しているため、Z方向における電磁波の移動距離は漸次小さくなる。この結果、電磁波は収束しながら膜状体配置部42に向かって進行する。
【0036】
入口部41を通過した電磁波は、次に、
図6に示されるように膜状体配置部42に進入する。前述したように、Z軸方向における膜状体配置部42の寸法dは、電磁波の波長よりも小さい。一般的に、電磁波は、その回折限界のため、寸法が波長よりも小さい隙間を通過することは困難である。
【0037】
原理モデル1では、平坦部52,62は、金属材料であるアルミニウムによって形成されている。膜状体配置部42に進入した電磁波が平坦部52,62の近傍を進行する際は、当該電磁波の電場の成分のうち、表面に平行な成分は金属中の自由電子に遮蔽され存在せず、表面に垂直な成分のみが存在するという境界条件が満たされる。膜状体配置部42の寸法dを電磁波の回折限界以下とした場合でも、この境界条件は満たされ、電磁波は平坦部52,62で反射しながら進行することが可能である。
【0038】
電磁波は、矢印A2で示されるように、平坦部52,62において繰り返し反射し、Z方向に往復しながら膜状体配置部42を進行する。したがって、電磁波は、膜状体配置部42に配置されている膜状体Mを、その厚さ方向に繰り返し透過する。詳細には、膜状体Mに達した電磁波の一部が膜状体Mによって吸収され、他部が膜状体Mを透過する。
【0039】
膜状体配置部42を通過した電磁波は、次に、
図7に示されるように出口部43に進入する。矢印A3で示されるように、電磁波は、出口側テーパ部53,63において繰り返し反射することにより、Z方向に往復する。
【0040】
一般に、導波路の終端に頂角が形成されていると、当該頂角において電磁波の回折が生じる。この結果、導波路の終端から電磁波が拡散し、受信部3が受信できる電磁波が減少してしまう。
【0041】
原理モデル1では、前述したように、出口側テーパ部53,63は導波路40に向かって突出するように湾曲している。これにより、導波路40の終端における電磁波の拡散が抑制される。このようにして出口部43を通過した電磁波は、受信部3によって受信される。
【0042】
以上の説明のように構成された原理モデル1によれば、発信部2が発した電磁波は、一対の反射面50,60の間で反射しながら受信部3に導かれる。膜状体Mは、その厚さ方向が、反射面50,60が対向する方向と直交しないように配置されている。このため、電磁波は、膜状体Mをその厚さ方向に複数回透過する。この結果、膜状体Mにおける電磁波の透過距離を大きくし、膜状体Mの特性を精度よく評価することが可能になる。
【0043】
ところで、膜状体配置部42の寸法dが小さいほど、膜状体配置部42に電磁波を収束させ、評価精度を向上させることが可能になる。しかしながら、反射面50,60間の寸法dが電磁波の波長を下回ると、回折限界のため、電磁波が膜状体配置部42を通過できなくなる。
【0044】
そこで、原理モデル1では、反射面50,60は、金属材料によって形成されている。この構成によれば、反射面50,60間の寸法dが電磁波の波長よりも小さい場合であっても、電磁波は、反射面50,60に存在する自由電子との相互作用により、膜状体配置部42を通過することが可能になる。この結果、膜状体配置部42に電磁波を収束させ、特性の評価精度を向上させることが可能になる。この構成は、発信部2が発信する電磁波が、他の電磁波と比較して波長が長いテラヘルツ波である場合に特に好適である。
【0045】
また、反射面50,60は、発信部2側から膜状体配置部42側に向かって導波路40の幅を漸次減少させる入口側テーパ部51,61を有している。この構成によれば、発信部2から発信された電磁波を、入口側テーパ部51,61によって収束させながら膜状体配置部42に導くことが可能になる。この結果、特性の評価精度をさらに高めることが可能になる。
【0046】
また、入口側テーパ部51,61は、導波路40に向かって突出するように湾曲している。この構成によれば、発信部2から発信された電磁波を、より膜状体配置部42に指向させることができる。この結果、電磁波を高い効率で収束させ、特性の評価精度をさらに高めることが可能になる。
【0047】
また、反射面50,60は、膜状体配置部42側から受信部3側に向かって導波路40の幅を漸次増加させる出口側テーパ部53,63を有している。この構成によれば、導波路40の終端における電磁波の回折を抑制し、膜状体配置部42を通過した電磁波を更に確実に受信部3に受信させることが可能になる。
【0048】
次に、原理モデル1を応用した実施形態に係る評価装置について説明する。これから説明する評価装置は、膜状体の製造工程に適用される。具体的には、当該評価装置は、膜状体を不図示の成形機から搬送する工程に適用され、搬送中の膜状体の特性を評価する。
【0049】
[第1実施形態]
図8及び
図9を参照しながら、第1実施形態に係る評価装置1Aについて説明する。
図8は、評価装置1Aを示す斜視図である。
図9は、評価装置1Aを示す正面図であり、後述する導波板5Aの近傍を拡大して示している。評価装置1Aの構成のうち、原理モデル1の構成と同様の機能を有するものには同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0050】
評価装置1Aは、不図示の成形機によって成形された膜状体M1の光学的特性を評価し、それに基づいて膜状体M1に発生している不具合を検出する。膜状体M1は帯形状を呈し、成形機によってポリマーを架橋することによって成形されている。評価装置1Aは、この膜状体M1においてポリマーが適切に架橋されていない部位の有無を検出する。
【0051】
評価装置1Aは、この膜状体M1を搬送する搬送装置に組み込まれる。評価装置1Aは、発信部2と、受信部3と、導波板5Aと、演算部7(
図8参照)と、ローラ8と、入口側レンズ91と、出口側レンズ92を備えている。
【0052】
ローラ8は、膜状体M1を搬送する機器である。ローラ8は略円柱形状を呈しており、
図8に示される回転軸81を中心として回転可能である。膜状体M1は、回転軸81が延びる方向と幅方向が一致するように配置され、一側面がローラ8の外周面831と当接して支持される。
【0053】
不図示のアクチュエータが駆動すると、ローラ8は当該アクチュエータから力を受け、矢印R1で示される方向に回転する。この回転に伴い、膜状体M1は、矢印A4で示されるようにローラ8の外周面831を指向して進行する。膜状体M1は、外周面831に沿って折り返し、矢印A5で示される方向に進行する。
【0054】
図9に示されるように、ローラ8は、骨格部82と、金属膜83と、を有している。骨格部82は、ローラ8の中央部に設けられ、略円柱形状のローラ8の骨格を成している。金属膜83は、骨格部82の外周部に設けられており、アルミニウムによって形成されている。ローラ8の外周面831でもある金属膜83の表面は、研磨が施されることにより、凹凸が少ない滑らかな面となっている。これにより、後述するように外周面831において電磁波が反射する際の散乱が抑制される。
【0055】
導波板5Aは、板形状を呈する部材である。導波板5Aは、アルミニウムによって形成されており、ローラ8の外周面831の一部に沿うように湾曲している。また、
図9に示されるように、導波板5Aは、外周面831と寸法dの隙間を隔てて対向している。当該隙間は導波路40Aに相当する。膜状体M1は、この導波路40Aに配置されている。発信部2及び受信部3は、ローラ8の周方向において、この導波路40Aを挟んで互いに対向するように配置されている。導波板5Aは、ローラ8の金属膜83とともに、前述した原理モデル1の導波部材4と同等の機能を発揮する。
【0056】
図9に示されるように、導波板5Aは、その一側面に反射面50Aを有している。反射面50Aは、研磨が施されることにより、凹凸が少ない滑らかな面となっている。さらに、反射面50Aは、入口側テーパ部51A、中央部52A及び出口側テーパ部53Aを有している。
【0057】
入口側テーパ部51Aは、中央部52Aよりも発信部2側に位置し、中央部52Aに連続する面である。入口側テーパ部51Aは、ローラ8の外周面831に向かって突出するように湾曲している。導波路40Aのうち、この入口側テーパ部51Aと外周面831との間に形成される部分は入口部41Aと称される。入口部41Aにおいて、入口側テーパ部51Aは、受信部3側に向かうにつれて外周面831に漸次近接するように形成されている。換言すれば、入口部41Aは、受信部3側に向かうにつれてその幅が漸次減少するように形成されている。
【0058】
中央部52Aは、導波板5Aの中央部に位置する面である。中央部52Aは、ローラ8の外周面831との間に寸法dの隙間を形成するように配置される。寸法dは、発信部2が発信する電磁波の波長よりも小さい。導波路40Aのうち、この中央部52Aと、外周面831との間に形成される部分は、中央部42Aと称される。
【0059】
出口側テーパ部53Aは、中央部52Aよりも受信部3側に位置し、中央部52Aに連続する面である。出口側テーパ部53Aは、ローラ8の外周面831に向かって突出するように湾曲している。導波路40Aのうち、この出口側テーパ部53Aと外周面831との間に形成される部分は出口部43Aと称される。出口部43Aにおいて、出口側テーパ部53Aは、受信部3側に向かうにつれて外周面831に漸次近接するように形成されている。換言すれば、出口部43は、受信部3側に向かうにつれてその幅が漸次増加するように形成されている。
【0060】
入口側レンズ91及び出口側レンズ92は、電磁波を屈折させる素子である。入口側レンズ91及び出口側レンズ92は、一側面から入射させた電磁波を、収束又は発散させて他側面から出射させる。入口側レンズ91は、発信部2と導波路40Aとの間に配置されている。入口側レンズ91は、その平面が発信部2と対向するように配置されている。出口側レンズ92は、導波路40Aと受信部3との間に配置されている。出口側レンズ92は、その平面が受信部3と対向するように配置されている。
【0061】
図9に示されるように、発信部2によって発信された電磁波は、まず、入口側レンズ91の一側面に入射する。当該電磁波は、入口側レンズ91を透過することにより、ローラ8の回転軸81が延びる方向に発散し、他側面から出射する。これにより、電磁波は、膜状体M1の幅方向において広範囲に出射する。
【0062】
入口側レンズ91を透過した電磁波は、導波路40Aの入口部41Aに進入する。
図9は、電磁波の進行方向を、矢印A4によって模式的に示している。矢印A4で示されるように、電磁波は、入口側テーパ部51Aとローラ8の外周面831とにおいて繰り返し反射することにより、ローラ8の径方向に往復する。
【0063】
また、前述したように、入口側テーパ部51Aは導波路40Aに向かって突出するように湾曲している。このため、入口側テーパ部51Aは、受信部3を指向するように電磁波を反射させる。また、入口部41Aは、受信部3側に向かうにつれてその幅が漸次減少しているため、ローラ8の径方向における電磁波の移動距離は漸次小さくなる。この結果、電磁波は収束しながら導波路40Aの中央部42Aに向かって進行する。
【0064】
電磁波は、ローラ8の径方向に往復することにより、ローラ8の外周面831に支持されている膜状体M1を、その厚さ方向に繰り返し透過する。詳細には、膜状体Mに達した電磁波の一部が膜状体Mによって吸収され、他部が膜状体Mを透過する。
【0065】
入口部41Aを通過した電磁波は、次に、中央部42Aに進入する。前述したように、中央部42Aの寸法dは、電磁波の波長よりも小さい。しかしながら、前述した電磁波と自由電子との相互作用により、電磁波は、中央部42Aを進行することができる。
【0066】
中央部42Aを通過した電磁波は、次に、出口部43Aに進入する。矢印A4で示されるように、電磁波は、出口側テーパ部53Aとローラ8の外周面831とにおいて繰り返し反射することにより、ローラ8の径方向に往復する。
【0067】
前述したように、出口側テーパ部53Aはローラ8の外周面831に向かって突出するように湾曲している。これにより、電磁波は、導波路40Aの終端において拡散することなく、出口部43Aを通過する。
【0068】
出口部43Aを通過した電磁波は、次に、出口側レンズ92の一側面に入射する。当該電磁波は、出口側レンズ92を透過することによりローラ8の回転軸81が延びる方向に収束し、他側面から出射する。当該電磁波は、出口側レンズ92の他側面と対向するように配置されている受信部3によって受信される。
【0069】
演算部7(
図8参照)は、受信部3から電流波形を取得する。演算部7は、導波路40Aに膜状体M1が配置されている場合の電流波形と、配置されていない場合の電流波形と、差異に基づいて、膜状体M1の光学的特性を評価する。当該光学的特性に基づき、ポリマーが適切に架橋されていない部位が膜状体M1にあることを検出することができる。
【0070】
このような評価装置1Aの構成によれば、膜状体M1はローラ8の外周面831によって支持され、ローラ8の回転によって搬送される。評価装置1Aは、このように搬送中の膜状体M1の特性を評価する。このため、例えば、成形後の膜状体M1をローラ8によって成形機から搬送する際等に、膜状体M1の特性を評価することができる。したがって、少ない手間で膜状体M1の特性を評価することが可能になる。
【0071】
また、評価装置1Aの構成によれば、発信部2が発した電磁波は、ローラ8の外周面831と、導波板5Aの反射面50Aとの間で反射しながら受信部3に導かれる。このため、電磁波は、膜状体M1を厚さ方向に複数回透過する。この結果、膜状体M1における電磁波の透過距離を大きくし、膜状体M1の特性を精度よく評価することが可能になる。
【0072】
また、ローラ8の外周面831、及び、導波板5Aの反射面50は、金属材料によって形成されている。この構成によれば、反射面50Aとローラ8の外周面831との間の寸法dが電磁波の波長よりも小さい場合であっても、電磁波は、反射面50及び外周面831に存在する自由電子との相互作用により、導波路40Aを通過することが可能になる。この結果、導波路40Aに電磁波を収束させ、特性の評価精度を向上させることが可能になる。この構成は、発信部2が発信する電磁波が、他の電磁波と比較して波長が長いテラヘルツ波である場合に特に好適である。
【0073】
また、反射面50Aは、発信部2側から受信部3側に向かって導波路40Aの幅を漸次減少させる入口側テーパ部51Aを有している。この構成によれば、発信部2から発信された電磁波を、入口側テーパ部51Aによって収束させながら受信部3側に導くことが可能になる。この結果、特性の評価精度をさらに高めることが可能になる。
【0074】
また、入口側テーパ部51Aは、外周面831側に向かって突出するように湾曲している。この構成によれば、発信部2から発信された電磁波を、より受信部3側に指向させることができる。この結果、電磁波を高い効率で収束させ、特性の評価精度をさらに高めることが可能になる。
【0075】
また、反射面50Aは、発信部2側から受信部3側に向かって導波路40Aの幅を漸次増加させる出口側テーパ部53Aを有している。この構成によれば、導波路40Aの終端における電磁波の回折を抑制し、導波路40Aを通過した電磁波を更に確実に受信部3に受信させることが可能になる。
【0076】
また、評価装置1Aは、発信部2と導波路40Aとの間に、発信部2が発信した電磁波を発散させる入口側レンズ91を備えている。この構成によれば、電磁波を発散させることにより、膜状体M1の広範囲に電磁波を透過させることができる。したがって、膜状体M1の広範囲に亘って特性を評価することが可能になる。
【0077】
また、評価装置1Aは、導波路40Aと受信部3の間に、導波路40Aを通過した電磁波を収束させる出口側レンズ92を備えている。この構成によれば、入口側レンズ91を透過することによって発散し、導波路40Aを通過した電磁波を、受信部3に向かって収束させることが可能になる。これにより、膜状体M1の広範囲に電磁波を透過させながらも、当該電磁波を確実に受信部3に受信させることが可能になる。
【0078】
[変形例]
図10を参照しながら、第1実施形態の変形例に係る評価装置1Bについて説明する。
図10は、評価装置1Bを示す斜視図である。評価装置1Bの構成のうち、原理モデル1及び評価装置1Aの構成と同様の機能を有するものには同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0079】
評価装置1Bは、導波板5B1,5B2を備えている。導波板5B1,5B2は、アルミニウムによって形成されており、ローラ8の外周面831の一部に沿うように湾曲している。導波板5B1,5B2は、互いに独立しており、回転軸81が延びる方向に隣り合うように配置されている。導波板5B1,5B2は、それぞれ外周面831と寸法dの隙間を隔てて対向している。当該隙間は、互いに独立した導波路となる。膜状体M1は、それぞれの導波路を横断するように配置されている。
【0080】
また、評価装置1Bは、発信部2及び受信部3をそれぞれ2つ備えている(
図10では、1つの発信部2の図示が省略されている)。発信部2及び受信部3は、ローラ8の周方向において、各導波路を挟んで互いに対向するように配置されている。導波板5B1,5B2は、ローラ8の金属膜83とともに、前述した原理モデル1の導波部材4と同等の機能を発揮する。
【0081】
また、導波板5B1,5B2が形成する各導波路の端部には、入口側レンズ911,912と、出口側レンズ921,922と、が配置されている。詳細には、導波板5B1が形成する導波路を挟んで入口側レンズ911と出口側レンズ921とが対向配置され、導波板5B2が形成する導波路を挟んで入口側レンズ912と出口側レンズ922とが対向配置される。
【0082】
このような評価装置1Bの構成によれば、2つの発信部2が発した電磁波は、それぞれ互いに異なる導波路を反射しながら進行するとともに、互いに異なる受信部3によって受信される。このため、回転軸81が延びる方向において異なる部位ごとに、膜状体M1の特性を評価することができる。したがって、膜状体M1に発生している不具合を検出する際等に、不具合が生じている箇所をより詳細に特定することが可能になる。
【0083】
[第2実施形態]
図11及び
図12を参照しながら、第2実施形態に係る評価装置1Cについて説明する。
図11は、評価装置1Cを示す斜視図である。
図12は、
図11のXII−XII断面を示す断面図であり、導波板5Cの近傍を拡大して示している。評価装置1Cの構成のうち、原理モデル1及び評価装置1A,1Bの構成と同様の機能を有するものには同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0084】
評価装置1Cでは、ローラ8Cは、回転軸81が延びる方向における両端部に、半径が漸次変化する部分を有している。詳細には、ローラ8Cの外周面831Cは、入口テーパ部61Cと、出口側テーパ部63Cと、を有しており、ローラ8Cは、その半径が入口テーパ部61Cと、出口側テーパ部63Cとにおいて変化するように構成されている。入口テーパ部61C及び出口側テーパ部63Cは、後述する導波路40Cに向かって突出するように湾曲している。
【0085】
また、発信部2及び受信部3は、ローラ8Cの回転軸81が延びる方向に互いに離間して配置されている。また、
図12に示されるように、導波板5Cは、ローラ8Cの外周面831Cと寸法dの隙間を隔てて対向している。当該隙間は、導波路40Cに相当し、回転軸81が延びる方向が長手方向となるように形成されている。発信部2及び受信部3は、当該方向において、導波路40Cを挟んで互いに対向するように配置されている。導波板5Cは、ローラ8Cの金属膜83Cとともに、前述した原理モデル1の導波部材4と同等の機能を発揮する。
【0086】
図12に示されるように、導波板5Cは、その一側面に反射面50Cを有している。さらに、反射面50Cは、入口側テーパ部51C、中央部52C及び出口側テーパ部53Cを有している。入口側テーパ部51C、中央部52C及び出口側テーパ部53Cは、第1実施形態に係る入口側テーパ部51A、中央部52A及び出口側テーパ部53Aと同様に機能する。つまり、入口側テーパ部51C、中央部52C、出口側テーパ部53Cは、ローラ8Cの外周面831Cとの間に、入口部41C、中央部42C、出口部43Cを形成する。膜状体M1は、この導波路40Cのうち、中央部42Cのみに配置されている。
【0087】
また、評価装置1Cは、入口側レンズ93及び出口側レンズ94を備えている。入口側レンズ93は、発信部2と導波路40Cとの間に配置されている。出口側レンズ94は、導波路40Cと受信部3との間に配置されている。
【0088】
図12に示されるように、発信部2によって発信された電磁波は、矢印A5で示されるように、導波路40Cの入口部41Cに進入する。入口部41Cは、中央部42Cに向かうにつれてその幅が漸次減少しているため、ローラ8Cの径方向における電磁波の移動距離は漸次小さくなる。この結果、電磁波は収束しながら中央部42Cに向かって進行する。
【0089】
入口部41Cを通過した電磁波は、次に、中央部42Cに進入する。中央部42Cの寸法dは、電磁波の波長よりも小さい。しかしながら、前述した自由電子の作用により、電磁波は、導波板5Cの反射面50Cとローラ8Cの外周面831Cとにおいて繰り返し反射しながら、中央部42Cを進行することが可能である。電磁波は、ローラ8Cの外周面831Cに支持されている膜状体M1を、その厚さ方向に繰り返し透過する。当該電磁波は、導波路40Cを通過した後に受信部3によって受信される。
【0090】
このように、評価装置1Cでは、発信部2及び受信部3は、回転軸81が延びる方向において互いに離間して配置されている。この構成によれば、導波路40Cに配置される膜状体M1の長さが安定しているため、特性の評価精度をさらに高めることが可能になる。
【0091】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0092】
上記実施形態では、アルミニウムによって形成された導波板5A,5B1,5B2,5Cの一側面において電磁波を反射させている。しかしながら、本発明はこの形態に限定されない。例えば、導波板を樹脂材料等によって形成するとともに、ローラ8の外周面831と対向する面に、金属材料によって形成された別部材を配置したり、金属材料の被膜を形成したりしてもよい。この場合、当該別部材や被膜が反射面として機能する。
【0093】
上記実施形態では、ローラ8の金属膜83がアルミニウムによって形成されている。しかしながら、本発明はこの形態に限定されない。例えば、金属膜83を、クロムメッキによって形成してもよい。この場合、アルミニウムによって形成した場合と比べて、膜状体M1との干渉による摩耗に対し、高い耐久性を発揮することが可能になる。