(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の遮光膜は、耐久性(耐擦傷性)及び耐溶剤性が十分であるとまではいえず、さらなる改善が求められている。また、滑り性(摺動性)についても同様に、さらなる性能向上が求められている。ところが例えば従来技術において光学濃度が5.4以上のものは、カーボンブラック、滑剤、シリカ微粒子等の充填剤の充填率は既に飽和状態にあり、充填剤のこれ以上の高充填は技術的限界を迎えている。かかる状況の下で、例えば滑り性を向上させるために滑剤を高充填する場合には、カーボンブラック等の他の充填剤の配合量を削減する必要があり、そのような設計変更では遮光性が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、耐久性及び耐溶剤性に優れる、遮光部材、黒色樹脂組成物及び黒色樹脂成形品を提供することを目的とする。また、本発明のさらなる目的は、耐久性及び耐溶剤性のみならず、滑り性及び遮光性にも優れる、遮光部材、黒色樹脂組成物及び黒色樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、バインダー樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(11)に示す具体的態様を提供する。
(1)基材と、該基材の少なくとも一面に設けられた遮光膜とを備え、前記遮光膜は、バインダー樹脂と該バインダー樹脂中に分散された充填剤とを少なくとも含有し、前記バインダー樹脂は、紫外線硬化型樹脂を含有し、前記充填剤は、黒色顔料を含有する、遮光部材。
【0010】
(2)前記遮光膜は、光及び/又は熱重合開始剤をさらに含有する、上記(1)に記載の遮光部材。
(3)前記遮光膜中の充填剤の含有量が、前記遮光膜中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、10質量%以上、60質量%以下である、上記(1)又は(2)に記載の遮光部材。
(4)前記黒色顔料の含有量が、前記充填剤の総量に対する固形分換算で、85質量%以上、100質量%以下である、上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の遮光部材。
(5)前記遮光膜は、3μm以上、10μm未満の総厚みを有する、上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の遮光部材。
(6)前記基材は、シート状基材であり、前記遮光膜が、前記シート状基材の一方の主面及び他方の主面に設けられている、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の遮光部材。
【0011】
(7)マトリックス樹脂と該マトリックス樹脂中に分散された充填剤とを少なくとも含有し、前記マトリックス樹脂は、紫外線硬化型樹脂を含有し、前記充填剤は、黒色顔料を含有する、黒色樹脂組成物。
(8)光及び/又は熱重合開始剤をさらに含有する、上記(7)に記載の黒色樹脂組成物。
(9)前記充填剤の含有量が、全樹脂成分に対する固形分換算で、10質量%以上、60質量%以下である、上記(7)又は(8)に記載の黒色樹脂組成物。
(10)前記黒色顔料の含有量が、前記充填剤の総量に対する固形分換算で、85質量%以上、100質量%以下である、上記(7)〜(9)のいずれか一項に記載の黒色樹脂組成物。
(11)上記(7)〜(10)のいずれか一項に記載の黒色樹脂組成物を成形してなる、黒色樹脂成形品。
【0012】
本発明においては、バインダー樹脂として紫外線硬化型樹脂を採用することで、耐久性(耐擦傷性)及び耐溶剤性を向上させている。そのため、滑り性の向上のための滑剤の高充填が必須とされず、黒色顔料の配合量を比較的に高く維持することができるため、滑り性及び遮光性の劣化が抑制される。また、本発明の好ましい態様では、光及び/又は熱重合開始剤をさらに含有している。このように構成すれば、製膜時の光照射処理及び/又は熱処理によって、より強固な遮光膜を形成できるので、耐久性や耐溶剤性をさらに向上させることができる。また、他の好ましい態様では、充填剤の含有量を比較的に少なく設定しているため、これによっても耐久性及び耐溶剤性をさらに向上させることができる。この場合であっても、充填剤の総量に対する黒色顔料の使用割合を比較的に高く維持することで、遮光性についても高次元でバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性及び耐溶剤性に優れる、遮光部材、黒色樹脂組成物及び黒色樹脂成形品を提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、耐久性及び耐溶剤性のみならず、滑り性及び遮光性にも優れる、遮光部材、黒色樹脂組成物及び黒色樹脂成形品を提供することができる。そして、本発明によれば、耐久性及び耐溶剤性の改善により、製品寿命を長くすることができる。また、耐溶剤性が向上することで、抜き加工や製品への組み込み前などに行われる薬品洗浄時において、塗膜の脱落や変色などが抑制することもできるため、製品の歩留まり向上にも資する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その上限値「1」及び下限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0016】
図1は、本発明の第一実施形態の遮光部材1の要部を模式的に示す図である。本実施形態の遮光部材1は、基材11と、この基材11の少なくとも一面に設けられた遮光膜21とを備える。遮光膜21は、バインダー樹脂及びこのバインダー樹脂中に分散された充填剤を少なくとも含有するものである。そして、本実施形態の遮光部材1は、遮光膜21中に含まれるバインダー樹脂及び充填剤として、紫外線硬化型樹脂及び黒色顔料を含有することを特徴とするものである。
【0017】
以下、遮光部材1の各構成要素について詳述する。
基材11は、遮光膜21を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。その具体例としては、紙、合成紙、金属シート、合金シート、金属箔、合成樹脂フィルム及びこれらの積層体等挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、基材11は、遮光膜21と接着性を有するものであっても、有さないものであってもよい。遮光膜21と接着性を有さない基材11は、離型フィルムとして機能させることができる。寸法安定性、機械的強度及び軽量化等の観点からは、合成樹脂フィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。また、アクリル系、ポリオレフィン系、セルロース系、ポリスルホン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系のフィルムを用いることもできる。これらの中でも、基材11としては、ポリエステルフィルムが好適に用いられる。とりわけ、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムは、機械的強度及び寸法安定性に優れるため、特に好ましい。また、耐熱用途には、ポリイミドフィルムが特に好ましい。ここで、基材11の外観は、透明、半透明、不透明のいずれであってもよく、特に限定されない。例えば発泡ポリエステルフィルム等の発泡した合成樹脂フィルムや、カーボンブラック等の黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムを用いることもできる。より一層薄く且つ高い遮光性が必要される場合は、光学濃度が高い基材11を用いることで、遮光部材1全体の光学濃度を補強することもできる。
【0018】
基材11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。一般的には1μm以上、250μm未満が目安とされる。ここで遮光部材1の強度や剛性等の観点からは51μm以上、250μm未満が好ましく、軽量化及び薄膜化の観点からは、1μm以上、50μm以下が好ましい。本実施形態の遮光部材1においては、遮光膜21の厚み換算の光学濃度(ODt)が殊に高められるため、基材11及び遮光膜21の双方を薄膜に設定しても、遮光性等の諸性能を維持したまま、例えば総厚みが60μm以下、好ましくは総厚みが35μm以下、さらに好ましくは総厚みが15μm以下、特に好ましくは総厚みが10μm以下の遮光部材1を実現することができる。そのため、薄膜化が特に求められる用途においては、基材11の厚みは、より好ましくは1μm以上、25μm以下、さらに好ましくは4μm以上、10μm以下、特に好ましくは5μm以上、7μm以下である。なお、遮光膜21との接着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材11表面にアンカー処理やコロナ処理等の各種公知の表面処理を行うこともできる。
【0019】
遮光膜21は、上述した基材11の少なくとも一面に設けられるものであり、紫外線硬化型樹脂及び黒色顔料を少なくとも含有する。なお、
図1では、シート状の基材11の一方の主面(上面)のみに遮光膜21を設けた態様を示したが、シート状の基材11の一方の主面(上面)及び他方の主面(下面)に遮光膜21をそれぞれ設けてもよい。シート状の基材11の上面及び下面の双方に遮光膜21を設けることで、遮光部材1の取扱性が高められる。
【0020】
遮光膜21は、バインダー樹脂として紫外線硬化型樹脂を必須成分として含有する。この紫外線硬化型樹脂としては、紫外線の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーを用いることができる。例えば、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造を形成するアクリル系プレポリマーが好適に用いられる。アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。紫外線硬化型樹脂は、1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。上述したアクリル系プレポリマーは、単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させる等の種々の性能を付与するために、重合性モノマーを併用してもよい。
【0021】
上記の光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
遮光膜21中の紫外線硬化型樹脂の含有量は、特に限定されないが、遮光膜21の総量に対する固形分換算(phr)で、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%である。紫外線硬化型樹脂の含有量を上記の好ましい範囲とすることで、基材1と遮光膜21との接着性、遮光膜21の耐久性、耐溶剤性、遮光性、表面光沢性及び滑り性等の物性を高次元でバランスさせることができる。また、形成される遮光膜21の耐傷付性を向上させるとともに、遮光膜21が脆くなることを防止することもできる。
【0023】
一方、遮光膜21に含有される黒色顔料は、紫外線硬化型樹脂を黒色に着色して遮光性を付与するものである。ここで用いる黒色顔料としては、例えば、黒色樹脂粒子、チタンブラック、マグネタイト系ブラック、銅・鉄・マンガン系ブラック、チタンブラック、カーボンブラック等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、隠蔽性に優れることから、黒色樹脂粒子、チタンブラック、カーボンブラックが好ましく、より好ましくはカーボンブラックである。カーボンブラックとしては、遮光膜21に導電性を付与し静電気による帯電を防止する観点から、導電性カーボンブラックが特に好ましく用いられる。カーボンブラックの歴史は古く、例えば三菱化学株式会社、旭カーボン株式会社、御国色素株式会社、レジノカラー社、Cabot社、DEGUSSA社等から、各種グレードのカーボンブラック単体及びカーボンブラック分散液が市販されており、要求性能や用途に応じて、これらの中から適宜選択すればよい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
遮光膜21の遮光性を効率的に高める観点からは、遮光膜21に含有される黒色顔料として平均粒子径が異なる2種の黒色顔料を用いることが好ましい。このように大小2種の黒色顔料を用いることで、大きな黒色顔料の粒子間の空隙に小さな黒色顔料が密に充填され、黒色顔料の総充填量に対する遮光性が高められた遮光膜21を得ることができる。より具体的には、平均粒子径D
50が0.4〜2.5μmの第1黒色顔料とともに、平均粒子径D
50が0.01〜0.3μmの第2黒色顔料を併用することが好ましい。さらに、第1黒色顔料の平均粒子径D
50は、表面光沢度を低く押さえ、滑り性を向上させる等の観点から、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。また、第2黒色顔料の平均粒子径D
50は、分散性や十分な遮光性を得る等の観点から、0.08〜0.2μmであることがより好ましい。なお、本明細書における平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD−7000等)で測定されるメディアン径(D
50)を意味する。このように大小2種の黒色顔料を用いる場合、第1黒色顔料及び黒色顔料の含有割合は、特に限定されないが、遮光性、表面光沢度、滑り性のバランスの観点から、固形分換算の質量比で20:80〜95:5であることが好ましく、より好ましくは30:70〜80:20であり、さらに好ましくは40:60〜70:30である。なお、遮光膜21は、上述した第1及び第2黒色顔料以外の黒色顔料を含有していてもよい。
【0025】
遮光膜21中の全黒色顔料の含有量は、特に限定されないが、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算(phr)で、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上、40質量%以下である。黒色顔料の含有量を上記の好ましい範囲とすることで、基材1と遮光膜21との接着性、遮光膜21の耐久性、耐溶剤性、遮光性、表面光沢性及び滑り性等の各物性を高次元でバランスさせることができる。
【0026】
なお、遮光膜21は、バインダー樹脂として、上述した紫外線硬化型樹脂紫外線硬化型樹脂以外の、他の樹脂を含有していてもよい。この他の樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー等も用いることができる。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
また、上述した紫外線硬化型樹脂を使用するにあたり、遮光膜21に、光及び/又は熱重合開始剤をさらに含有させることが好ましい。光及び/又は熱重合開始剤を含有させることにより、製膜時の光照射処理及び/又は熱処理によって、より強固な遮光膜を形成できるので、耐久性及び耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0028】
光重合開始剤は、重合反応のきっかけとなり得る波長の紫外線を照射することにより開裂し、ラジカルを生成する物質であればよく、その種類は特に限定されない。例えば、芳香族ケトン類、芳香族ケタール類、メタロセン化合物、オキシムエステル類、カルボニル化合物、チオキサントン類等の光重合開始剤が挙げられる。より具体的には、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
熱重合開始剤は、加熱することにより開裂し、ラジカルを生成する物質であればよく、その種類は特に限定されない。例えば、有機ハロゲン化物、有機過酸化物、オニウム塩化合物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、アゾ化合物が好ましく用いられる。アゾ化合物としては、アゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミジン化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。例えば、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボン酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(トリフルオロメチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等がアゾビスアセトキシフェニルエタン等も使用可能である。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
光及び/又は熱重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、合計で1.0〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは3.0〜10質量%である。光及び/又は熱重合開始剤の含有量を上記の好ましい範囲とすることで、基材1と遮光膜21との接着性、遮光膜21の耐久性や耐溶剤性等により一層優れる遮光膜21が得られ易い。
【0031】
またさらに、遮光膜21は、熱重合開始剤と光重合開始剤とを含有することが特に好ましい。このように重合開始剤を併用することで、熱重合開始剤を用いた熱硬化及び光重合開始剤を用いた光硬化によって、遮光膜21の膜表面及び膜内部の硬化度の制御が容易となり、得られる遮光膜21の強度、表面光沢性及び滑り性等の調整が容易となる。このように重合開始剤を併用する場合、熱重合開始剤と光重合開始剤の配合割合は、特に限定されないが、10:90〜70:30であることが好ましく、より好ましくは20:80〜60:40であり、さらに好ましくは30:70〜50:50である。なお、製膜時の硬化処理は、熱処理及び光照射処理を順次行っても、両処理を同時に行ってもよい。得られる遮光膜21の強度、表面光沢性及び滑り性等の調整の容易性の観点からは、熱処理を光照射処理よりも先行して行うことが好ましい。この場合、熱処理後に光照射処理を行っても、熱処理後にさらに引き続き熱処理を行いながら光照射処理を行ってもよい。
【0032】
なお、遮光膜21は、上述した光及び/又は熱重合開始剤とともに、重合促進剤を含有していてもよい。ここで、重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。その具体例としては、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
また、遮光膜21は、上述した紫外線硬化型樹脂、黒色顔料、光及び/又は熱重合開始剤以外に、滑剤を含有していてもよい。滑剤を含有することで、遮光膜21の表面の滑り性(摺動性)が向上し、光学機器のシャッター、絞り部材、レンズユニット等に加工した際、作動時の摩擦抵抗が小さくなり、表面の耐擦傷性を向上させることができる。この滑剤としては、公知の粒子状滑剤として知られている有機系滑剤や無機系滑剤を用いることができる。これらの中でも、液状滑剤が好ましい。具体的には、ポリエチレン、パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤;アルコール系滑剤;金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤;シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂粒子;架橋ポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、特に有機系滑剤が好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
滑剤の含有割合は、特に限定されないが、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、一般的には0.5〜10質量%であることが好ましい。なお、本実施形態においては、遮光膜21が滑剤を実質的に含まないことも好ましい態様の一つである。このように滑剤レスの態様とすることで、遮光膜21中の紫外線硬化型樹脂や黒色顔料の相対的含有量を高くすることができる。これにより、遮光性及び導電性並びに滑り性の低下を抑制することができ、さらには、遮光膜21の接着性、耐久性及び耐溶剤性の向上にも寄与し得る。なお、実質的に滑剤を含まないとは、滑剤の含有割合が、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、0.5質量%未満であることを意味し、より好ましくは0.1質量%未満である。
【0035】
また、遮光膜21は、マット剤(艶消し剤)を含有していてもよい。マット剤を含有することで、遮光膜21の表面の光沢度(鏡面光沢度)を低下させ、遮光性を向上させることができる。このマット剤としては、公知のものを用いることができる。具体的には、架橋アクリルビーズなどの有機系微粒子、シリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化チタンなどの無機系微粒子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、分散性やコスト等の観点からシリカが好ましい。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
マット剤の含有割合は、特に限定されないが、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、一般的には0.5〜20質量%であることが好ましい。なお、本実施形態においては、遮光膜21がマット剤を実質的に含まないことが好ましい態様の一つである。このようにマット剤レスの態様とすることで、遮光膜21中の紫外線硬化型樹脂や黒色顔料の相対的含有量を高くすることができる。これにより、遮光性及び導電性並びに滑り性の低下を抑制することができ、さらには、遮光膜21の接着性及び耐溶剤性の向上にも寄与し得る。なお、実質的にマット剤を含まないとは、マット剤の含有割合が、遮光膜21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、0.5質量%未満であることを意味し、より好ましくは0.1質量%未満である。
【0037】
また、遮光膜21は、他の成分をさらに含有していてもよい。この他の成分としては、SnO
2等の導電剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光重合開始剤を用いる場合には、例えばn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤や紫外線吸収剤等を用いてもよい。
【0038】
一方、遮光膜21の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。厚みが許容される用途においては、遮光膜21の厚みを十分に採ればよく、これにより、遮光膜21中の全黒色顔料の含有割合が大幅に削減された遮光膜21を実現することができる。このような用途においては、遮光膜21の総厚みは、10μm以上、60μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上、40μm以下である。一方、特に薄膜化が求められる用途においては、遮光膜21の総厚みは、3μm以上、10μm未満が好ましく、より好ましくは4μm以上、9μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上、8μm以下である。ここで、遮光膜21の総厚みは、基材11の一方の主面のみに遮光膜21を設ける場合には、その遮光膜21の厚みを意味し、基材11の両面(一方の主面及び他方の主面)に遮光膜21を設ける場合には、その両面の遮光膜21の厚みを加算した値を意味する。
【0039】
ここで、上述した遮光膜21は、厚み換算した光学濃度(ODt)が0.54〜2.00(μm
−1)であることが好ましく、より好ましくは0.55〜2.00(μm
−1)、さらに好ましくは0.80〜1.80(μm
−1)、特に好ましくは0.90〜1.50(μm
−1)、殊に好ましくは0.91〜1.40(μm
−1)、最も好ましくは0.92〜1.20(μm
−1)である。厚み換算した光学濃度(ODt)が上記の好ましい範囲にあることで、十分な光学濃度(OD)を有しながらも高度に薄膜化された遮光膜21を実現することができる。
【0040】
また、遮光膜3は、表面光沢度が5.0%以下であることが好ましい。このように表面光沢度が低いと、入射光の反射が少なくなり、遮光部材とした際の艶消し性が向上して光吸収性が高められる傾向にある。遮光膜3の表面光沢度は4.0%以下であることがより好ましい。
【0041】
そして、本実施形態の遮光部材1は、さらなる薄膜化に対応可能であるとともに十分な遮光性を具備させる観点から、5.4〜6.0の光学濃度(OD)を有することが好ましく、より好ましくは5.5〜6.0である。なお、本明細書において、光学濃度(OD)は、後述する実施例に記載した条件下で測定した値とする。
【0042】
本実施形態の遮光部材1の製造方法は、上述した構成及び組成の遮光部材が得られる限り、特に限定されない。再現性よく簡易且つ低コストで遮光膜3を製膜する観点からは、ドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法が好適に用いられる。そして、このように塗布された塗膜に、紫外線照射処理を施し、必要に応じて熱及処理や加圧処理等を行うことにより、基材11上に遮光膜21を製膜することができる。より具体的には、上述した紫外線硬化型樹脂、黒色顔料、並びに必要に応じて配合される任意成分(光及び/又は熱重合開始剤、滑剤、マット剤、他の成分等)を溶媒中に含有する遮光膜用塗布液を、基材11の片面または両面に塗布し、乾燥した後、紫外線照射処理を施し、さらに必要に応じて熱処理や加圧処理等を行うことにより、基材11上に遮光膜21を製膜することができる。ここで使用する塗布液の溶媒としては、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、基材11と遮光膜21との接着を向上させるため、必要に応じてアンカー処理やコロナ処理等を行うこともできる。さらに、必要に応じて、基材11と遮光膜21との間に接着層等の中間層を設けることもできる。
【0043】
ここで、紫外線照射処理において使用する光源は、紫外線を発生する光源である限り、特に限定されない。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、紫外線の照射条件は、使用する光源の種類や出力性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない。紫外線の照射量は、一般的には積算光量1000〜6000mJ/cm
2程度が目安とされ、好ましくは2000〜5000mJ/cm
2である。
【0044】
また、熱処理において使用する熱源も、特に限定されない。接触式及び非接触式のいずれであっても好適に使用することができる。例えば、遠赤外線ヒーター、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オーブン、ヒートローラ等を用いることができる。熱処理における処理温度は、特に限定されないが、一般的には100〜200℃であり、好ましくは120〜190℃、より好ましくは130℃〜180℃である。
【0045】
以上詳述したとおり、本実施形態の遮光部材1は、滑り性及び遮光性を過度に損なうことなく、耐久性及び耐溶剤性が向上されているため、例えば精密機械分野、半導体分野、光学機器分野等において、長寿命な遮光部材として好適に用いることができる。また、滑り性及び耐久性に優れていることから、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器用の遮光部材、例えばシャッター、絞り部材、レンズユニット等として殊に好適に用いることができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、基材11上に遮光膜21を設けた態様を示したが、本発明は、基材11を省略した態様でも実施可能である。例えば、マトリックス樹脂とこのマトリックス樹脂中に分散された充填剤とを少なくとも含有する樹脂組成物(黒色樹脂組成物)であって、マトリックス樹脂として、紫外線硬化型樹脂を含有し、充填剤として黒色顔料を含有するものとして、本発明は有効に実施できる。ここで用いるマトリックス樹脂としては、上記の第一実施形態の紫外線硬化型樹脂及び他の樹脂で説明したものと同様のものを用いることができる。また、黒色顔料としては、上記の第一実施形態で説明したものと同様のものを用いることができる。そして、この黒色樹脂組成物は、上記実施形態で説明した遮光膜21と同様の組成を有するため、耐久性及び耐溶剤性に優れるものとなる。そのため、これを紫外線硬化成形、熱成形、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、トランスファ成形、押出成形等の各種公知の成形法により成形することで、耐久性及び耐溶剤性に優れる成形品(黒色樹脂成形品)を得ることができる。また、一旦シート状に成形した後、真空成形や圧空成形等を行うこともできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表し、「phr」は、遮光膜中に含まれる「全樹脂成分に対する固形分換算の質量%」を表す。
【0048】
(実施例1)
基材として厚み6μmのポリエステルフィルム(K200:三菱化学ポリエステル社)の両面に、下記の遮光膜用塗布液E1をバーコート法により乾燥後の厚みが3μmとなるように各々塗布し乾燥させた。その後、循環式熱風乾燥機を用いて150℃の熱処理を行い、次いで高圧水銀灯を用いてUV照射処理(積算光量:1000mJ/cm
2)を行って、基材の両面に厚み3μmの遮光膜を各々形成することで、実施例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0049】
<遮光膜用塗布液E1>
・ウレタンアクリレート 100質量部
(樹脂1700BA:日本合成化学社製、固形分:90%)
・第1黒色顔料 10.1phr
(導電性カーボンブラックSD-TT2003:レジノカラー社製、平均粒子径0.6μm)
・第2黒色顔料 9.9phr
(導電性カーボンブラック#273:御国色素社製、平均粒子径0.15μm)
・レベリング剤 固形分総量に対して0.2質量%
(シリコーン系添加剤M-ADDITIVE:東レダウコーニング社製)
・アゾ系重合開始剤 5.0質量部
・オキシムエステル系光重合開始剤 3.0質量部
・希釈溶剤 100質量部
(MEK:酢酸ブチル=54:46の混合溶媒)
【0050】
(実施例2)
遮光膜用塗布液E1において第1及び第2黒色顔料の配合量を7.6phr及び7.4phrにそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様に操作し、実施例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0051】
(実施例3)
遮光膜用塗布液E1において第1及び第2黒色顔料の配合量を15.1phr及び14.9phrにそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様に操作し、実施例3の光学機器用遮光部材を作製した。
【0052】
(比較例1)
上記の遮光膜用塗布液E1に代えて下記の遮光膜用塗布液CE1を用い、熱処理及びUV照射処理を省略すること以外は、実施例1と同様に操作し、比較例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0053】
<遮光膜用塗布液CE1>
・アクリルポリオール 100質量部
(アクリディックA801P:大日本インキ化学工業社製、固形分:50%)
・イソシアネート 22.7質量部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社製、固形分:60%)
・導電性ナノ粒子カーボンブラック 23.16phr
(バルカンXC-72R :Cabot社製、平均一次粒子径30nm、凝集体粒子径0.4μm)
・マット剤 5.6phr
(シリカ微粒子Acematt_TS100:EVONIK社製、平均粒子径10μm)
・レベリング剤 固形分総量に対して0.1質量%
(シリコーン系添加剤M-ADDITIVE:東レダウコーニング社製)
・希釈溶剤 100質量部
(MEK:トルエン:酢酸ブチル=4:3:3の混合溶媒)
【0054】
(比較例2)
遮光膜用塗布液CE1に代えて、下記の遮光膜用塗布液CE2を用いること以外は、比較例1と同様に操作し、比較例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0055】
<遮光膜用塗布液CE2>
・アクリルポリオール 100質量部
(アクリディックA801P:大日本インキ化学工業社製、固形分:50%)
・イソシアネート 25.0質量部
(タケネートD110N:三井化学ポリウレタン社製、固形分:60%)
・導電性ナノ粒子カーボンブラック 40.00phr
(バルカンXC-72R :Cabot社製、平均一次粒子径30nm、凝集体粒子径0.4μm)
・レベリング剤 固形分総量に対して0.05質量%
(シリコーン系添加剤M-ADDITIVE:東レダウコーニング社製)
・希釈溶剤 100質量部
(MEK:トルエン:酢酸ブチル=4:3:3の混合溶媒)
【0056】
(比較例3)
遮光膜用塗布液CE2に比較例1で用いたマット剤5.6phrを配合した、遮光膜用塗布液CE3を用いること以外は、比較例2と同様に操作し、比較例3の光学機器用遮光部材を作製した。
【0057】
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の光学機器用遮光部材について、以下の条件で各物性の測定及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0058】
(1)耐久性(耐擦傷性)
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3の光学機器用遮光部材をカメラの絞り部材として用い、100万回動作させて塗膜面の擦傷と剥がれの有無を調べた。ここでは、擦傷及び剥がれのないものを「◎」、若干の擦傷又は剥がれがあるものの使用に問題がないものを「○」、使用できないものを「×」と評価した。
【0059】
(2)耐溶剤性
遮光膜に、メチルエチルケトンを含ませたウェスを20往復させて、遮光膜の変化を調べた。変化がないものを「◎」、若干の変化があるものの使用に問題がないものを「○」、使用できないものを「×」と評価した。
【0060】
(3)光学濃度OD
光学濃度の測定は、JIS−K7651:1988に基づき光学濃度計(TD−904:グレタグマクベス社)を用いて測定した。なお、測定はUVフィルターを用いた。
【0061】
(4)厚み換算の光学濃度ODt
光学濃度を膜厚で除して、厚み1μmあたりの光学濃度ODt(μm
−1)を算出した。
【0062】
(5)表面光沢度
デジタル変角光沢計(UGV-5K:スガ試験機社)を用い、JIS−Z8741:1997に準拠して、入射受光角60°における遮光膜表面の表面光沢度(鏡面光沢度)(%)を測定した。光沢度が低いほど、艶消し性に優れることが認められる。
【0063】
(6)滑り性の評価
遮光膜の静摩擦係数(μs)と動摩擦係数(μk)を、JIS−K7125:1999に準拠して、荷重200(g)、速度100(mm/min)の条件下で測定し、それぞれ以下の基準で評価した。
静摩擦係数(μs)
0.30未満 ◎
0.30以上0.35未満 ○
0.35以上0.40未満 △
0.40以上 ×
動摩擦係数(μk)
0.30以上0.35未満 ◎
0.35以上0.40未満 ○
0.40以上 ×
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すとおり、従来処方である比較例1の光学機器用遮光部材においては、耐久性及び耐溶剤性が悪いものであった。また、遮光膜の厚み換算の光学濃度(ODt)が0.51と低く、基本性能としての遮光性も不十分である。さらに、表面光沢度を低く抑えるために配合しているマット剤により、滑り性も悪化している。
【0066】
また、光学濃度ODを向上するために黒色顔料を高充填した比較例2の光学機器用遮光部材は、比較例1に対して遮光性及び滑り性は向上しているものの、依然として耐久性及び耐溶剤性が悪く、さらに表面光沢度が悪化している。この表面光沢度の悪化を改善するために、さらにマット剤を配合したものが比較例3である。この比較例3の光学機器用遮光部材においては、マット剤の配合により、表面光沢度を低く抑えることができているものの、その一方で、依然として耐久性及び耐溶剤性が悪く、また、滑り性が大きく損なわれている。
【0067】
これに対し、本発明の実施例1〜3の光学機器用遮光部材は、いずれも耐久性及び耐溶剤性が改善されていることが理解される。また、実施例1〜3の対比から、黒色顔料の含有量を低減すると、耐久性及び耐溶剤性がさらに改善する傾向にあることがわかる。さらに、実施例1〜3の光学機器用遮光部材は、遮光性、表面光沢度及び滑り性についても、高性能なものであることがわかる。とりわけ、表面光沢度及び滑り性に関しては、マット剤や滑り剤を使用していないにも関わらず、優れた性能を示していることが理解される。以上のことから、本発明の実施例1〜3の光学機器用遮光部材は、片面の膜厚が3μmと超薄膜化を達成しつつも、遮光性、表面光沢度及び滑り性を過度に損なうことなく、耐久性及び耐溶剤性を改善したものであることが確認された。
【0068】
(実施例4)
遮光膜用塗布液E1に代えて下記の遮光膜用塗布液E4を用い、基材の両面に乾燥後の厚みが片面5μmとなるように各々塗布すること以外は、実施例1と同様に操作し、実施例4の光学機器用遮光部材を作製した。
【0069】
<遮光膜用塗布液E2>
・ウレタンアクリレート 100質量部
(樹脂1700BA:日本合成化学社製、固形分:90%)
・黒色顔料 30.0phr
(導電性カーボンブラックSD-TT2003:レジノカラー社製、平均粒子径0.6μm)
・レベリング剤 固形分総量に対して0.2質量%
(シリコーン系添加剤M-ADDITIVE:東レダウコーニング社製)
・アゾ系重合開始剤 5.0質量部
・オキシムエステル系光重合開始剤 3.0質量部
・希釈溶剤 100質量部
(MEK:酢酸ブチル=54:46の混合溶媒)
【0070】
(実施例5)
遮光膜用塗布液E4において黒色顔料の配合量を40.0phrに変更した遮光膜用塗布液E5を用い、基材の両面に乾燥後の厚みが片面4μmとなるように各々塗布すること以外は、実施例1と同様に操作し、実施例5の光学機器用遮光部材を作製した。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示すとおり、本発明の実施例4〜5の光学機器用遮光部材は、いずれも耐久性及び耐溶剤性が改善されていることが理解される。また、実施例4〜5の光学機器用遮光部材は、遮光性、表面光沢度及び滑り性についても、十分な性能を有していることがわかる。とりわけ、滑り性に関しては、マット剤や滑り剤を使用していないにも関わらず、優れた性能を示していることが理解される。以上のことから、本発明の実施例4〜5の光学機器用遮光部材は、遮光性、表面光沢度及び滑り性を過度に損なうことなく、耐久性及び耐溶剤性を改善したものであることが確認された。