(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、シャント抵抗器に監視対象の電流を流し、抵抗器両端の電極間に生じる電圧を計測し、既知の抵抗値から電流を検出する電流検出装置が知られている。電流検出装置を用いて、抵抗器に流れる高周波成分を含む電流を検出する場合、抵抗器が有する僅かな寄生インダクタンスが検出値に誤差をもたらす。
【0003】
図14は、一般的な電流検出装置Xの一例を示す平面図である。基板111上に、第1のランドおよび第2のランドを有する配線(電流端子)117a、117bと、その間の隙間121内から隙間121外まで引き出し配線部125a、127aにより引き出されるセンシング用の配線パターン125、127(電圧検出端子)とを有している。そして、第1のランドおよび第2のランドに、シャント抵抗器101の端子を接続する。
【0004】
かかる構成において、抵抗体のもつ寄生インダクタンス(抵抗体の長さ、すなわち電極間距離)が、被測定電流の時間変化分に対応した電圧を発生させるため、この電圧分だけ誤差が生じる。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、電圧検出端子に接続する基板上の配線パターンを被検出電流の流れ方向と同一方向に配置し、且つある程度の長さを持たせることで、その部分の配線パターンと抵抗体との間に相互誘導が生じる。これにより抵抗体のインダクタンス分による誘導電圧を打ち消し、測定系から見た抵抗体の誘導電圧によって発生する検出誤差を低減とすることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2は、シャント抵抗器を搭載するための基板と、該基板に形成され抵抗器1に電流を流すための一対のランドと、基板に形成され抵抗器とワイヤにより接続される一対のワイヤ接続部とから構成される抵抗器を実装した構造であって、一対のワイヤ接続部は、それぞれが一対のランド間における抵抗器の側方に配置され、一のワイヤは、他のワイヤが接続される電圧検出配線またはその延長線を跨いで、抵抗器の電圧検出位置と電圧検出配線先端のワイヤ接続部との間に接続されている構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術を用いると、構造が複雑になり、製造工程が増える。
【0009】
また、特許文献2の技術を用いると、ワイヤ形成工程が困難になりやすい場合がある。
【0010】
本発明は、比較的簡単な構造で、抵抗体の長さに起因する寄生インダクタンスの影響を抑制可能なシャント抵抗器の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、一対の端子部を備え、電流検出をするための抵抗器と、前記一対の端子部がそれぞれ接続され、前記抵抗器に測定対象電流を流す一対の第1のランドおよび第2のランドからなる実装部と、前記一対のランドが形成された基体と、前記基体に形成され、前記第1のランドから引き出された引き出し配線部により接続される第1の電圧端子と、前記第2のランドからワイヤにより接続される第2の電圧端子と、を有する実装基板と、を備えたシャント抵抗器の実装構造が提供される。
【0012】
ランドと電圧端子との間の接続を、一方を引き出し配線部により、他方をワイヤにより行うことで、配線を空間的に分離することができる。
【0013】
前記引き出し配線部と前記ワイヤとは、前記基体の平面視において交差していることが好ましい。
【0014】
配線パターンのクロス構造を簡単に形成し、センシング部のループ面積を小さくすることができる。
【0015】
前記引き出し配線部は、前記第1のランドの側部から引き出されていることが好ましい。側部から引き出すことで、パターンをより微細化することができる。
【0016】
前記抵抗器の端子に、合金のめっき膜が形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の他の観点によれば、一対の端子部を備え、電流検出をするための抵抗器を実装する実装基板であって、前記一対の端子部がそれぞれ接続され、前記抵抗器に測定対象電流を流す一対の第1のランドおよび第2のランドからなる実装部と、前記一対のランドが形成された基体と、前記基体に形成され、前記第1のランドから引き出された引き出し配線部により接続される第1の電圧端子と、前記第2のランドから離されて形成された(ワイヤによる接続用の)第2の電圧端子と、を備えたシャント抵抗器の実装基板が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的簡単な構造で、抵抗体の長さに起因する寄生インダクタンスの影響を抑制可能なシャント抵抗器の実装構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態による抵抗器の実装構造について、シャント抵抗器を例にして図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施の形態において用いられるシャント抵抗器の構成例について、以下に説明する。
【0022】
図1は、シャント抵抗器の第1構成例を示す斜視図である。シャント抵抗器1は、例えば、抵抗体3と、第1および第2の電極(一対の端子部)5a、5bとの端面を突き合わせた突き合わせ構造を有する。抵抗体3は、Cu−Ni系、Ni−Cr系、Cu−Mn系などの抵抗材料を用いることができる。電極5a、5bは、Cuなどの材料を用いることができる。抵抗体3と電極5a、5bとの接合は、電子ビーム、レーザービームなどの溶接の他、クラッド接合、金属ナノペーストによるろう付け等を用いて形成することができる。シャント抵抗器の製品のサイズの一例としては10×10×0.5(mm)で、抵抗値は0.1mΩである。なお、シャント抵抗器1は、前述の抵抗材料のみからなる(別の金属材料の電極を備えない)構造であってもよい。
【0023】
図2は、シャント抵抗器の第2構成例を示す斜視図である。
図2のシャント抵抗器1の構成は、
図1の抵抗器1の全面にめっきをした構造である。めっき膜41は、ワイヤーボンディングをし易くするための表面処理として用いることができる。めっき膜41は、Ni−Pめっき、Ni−P−Wめっきなどの合金めっきであり、少なくとも電極のCuより抵抗率の大きな材料を用いるのが良い。めっき膜41は、電解めっきや無電解めっきにより形成される。
【0024】
尚、
図2においては、破線により抵抗体3と電極5bとの境界を示したがめっきをすると境界が目視しにくくなる。そこで、境界の近くの電極にマーク7を付した。このマーク7は、後述するように後の工程で行うワイヤーボンディングの位置を決めるための目印表示の一例である。
【0025】
マークを付すための処理例としては、まず、電極5bにパンチ等で凹みをつけておき、その後にめっき膜41を形成することで凹みを保ったままとし目印とすることができる。
【0026】
図3は、シャント抵抗器の第3構成例を示す斜視図である。
図3のシャント抵抗器1の構成は、シャント抵抗器1の上面のみにめっきをした例である。すなわち、側面と下面にはめっき膜41がない。上面にはめっき膜41があるため、マーク7を上面に形成することでワイヤーボンディングの位置決めの目印として有効である。
【0027】
図4は、シャント抵抗器の第4構成例を示す斜視図である。
図4のシャント抵抗器1の構成は、電極5a、5bの上面のみにめっきをした例である。すなわち、側面と下面、抵抗体3にはめっき膜41がない。電極5a、5bの上面にはめっき膜41があるため、例えば、
図3と異なり新たなマークを形成しない場合でも、めっき膜41の厚さ分の段差が目印となり、ワイヤーボンディングを行う位置を決めることが容易にできる。
【0028】
図5は、シャント抵抗器の第5構成例を示す斜視図である。
図5のシャント抵抗器1の構成は、電極5a、5bの露出部分にめっきをした例である。抵抗体3の表面にはめっき膜41は形成されていない。
【0029】
この構造においても、電極5a、5bの上面にはめっき膜41があるため、例えば、
図3と異なり新たなマークを形成しない場合でも、めっき膜41の厚さ分の段差が目印となり、ワイヤーボンディングを行う位置を決めることが容易にできる。
【0030】
尚、上記の
図2から
図5までにおいて、めっきの形成部位のバリエーションを示したが、ワイヤーボンディングがし易いという効果を発揮させるという点では、ワイヤーボンディングをする位置又はその近傍も含む領域にのみめっきを形成するようにしてもよい。
【0031】
図6は、シャント抵抗器の第6構成例を示す斜視図である。
図6のシャント抵抗器1aの構成は、一方の電極5aと、他方の電極5bとがΔhの段差を有する例である。この例では、一方の電極5aを曲げ加工することで、段差を形成している。段差を形成する意味については後述する。
【0032】
図7(a)から
図7(d)までは、シャント抵抗器1の電極5a、5bの一部を抵抗体3側に突出させて、ワイヤーボンディング位置の目印とした例を示す図である。
図7(a)は、一方の電極5bのみに突出部9を形成した例を示す図である。
図7(b)は、両方の電極5a、5bに突出部9a、9bを形成した例を示す図である。
図7(c)は、一方の電極5bのみに突出部9cを形成しており、突出部の位置を電極と抵抗体との接合部が形成されている方向に沿っていずれか一方の端部側にずらして形成した例を示す図である。
図7(d)は、
図7(c)における突出部9cを、一方の側面側に寄せて突出部9dとし、突出部9dの一端と抵抗器1の一端とを一致させた例を示す図である。
【0033】
以上のように、突出部9aから9dまでのいずれかを設けることで、ワイヤーボンディングの位置の目印とすることも可能である。
【0034】
尚、上記のシャント抵抗器は、電極端子を設けていない抵抗体のみの構成でも良い。
【0035】
次に、上記において例示的に説明したシャント抵抗器の実装構造について詳細に説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
図8は、本発明の第1の実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造の一構成例を示す図である。
図8(a)はシャント抵抗器の実装前、
図8(b)はシャント抵抗器の実装後の構成を示す斜視図である。
【0037】
図8に示すように、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造は、上記において
図1から
図5までおよび
図7で説明したうちのいずれか1のシャント抵抗器1と、シャント抵抗器1を実装するための実装基板Aと、を有している。
【0038】
シャント抵抗器1は、例えば、上記のように、一対の端子部(第1および第2の電極)5a、5bを備え、電流検出をするための抵抗器である。
【0039】
図9は、
図8に対応するシャント抵抗器の実装構造の回路構成の一例を示す図である。
【0040】
図9に示す実装構造(電流検出モジュール)Bは、例えば、上記のシャント抵抗器1と、
図8に示す実装基板Aであって、シャント抵抗器1の両端子5a、5b間の電圧信号を増幅するアンプ63と、アンプ63により増幅した信号をA/D変換するA/D変換器65と、デジタル信号出力を受け取って演算を行うマイコン67とを有する(
図8では図示せず)。
【0041】
通電時に、シャント抵抗器1の引き出し配線部25a、ワイヤ28より取得した電圧値が増幅され、デジタルデータに変換され、マイコン67によって電流値が演算される。電流値は、データバス等を通じて各種電気機器へ送られる。
【0042】
実装基板Aは、例えばガラスエポキシ基板などからなる基板(基体)11と、基板11の一面に例えば銅箔などの導電性パターンにより形成される第1の配線パターン17a、第2の配線パターン17bと、を有する。
【0043】
以下に製造工程について簡単に説明する。
1)基板11の一面に銅箔などによる配線パターンをエッチング工程などにより形成する。
2)任意に、レジスト膜などにより、実装領域等を開口させ、それ以外を覆う。
3)抵抗器を搭載する(
図8(a)、L1参照)ことで、一方が配線される。
4)ワイヤーボンディングにより他方を結線(ワイヤ28)する。
【0044】
第1の配線パターン17aと、第2の配線パターン17bとは、それぞれ、シャント抵抗器1の一対の端子部5a、5bとそれぞれ電気的に接続され、シャント抵抗器1に測定対象電流が流れる。配線パターン17a,17bにおける端子部5a、5bの接続箇所を、本明細書では、一対のランド31a、31bと称する。
【0045】
一対のランド31a、31bは、それぞれの対向する近接端面22a、22b同士が、距離L11だけ隙間21をもって離間している。
図8(b)に符号31に示す領域が、シャント抵抗器1の実装部を形成する。尚、一対のランド(第1のランド)31a、31bと、シャント抵抗器1の一対の電極(端子部)5a、5bとは、はんだなどによりそれぞれ接続される。
【0046】
さらに、実装基板Aにおいて、基体11には、第1のランド31aと略対向する位置であって、第1の配線パターン17aの側部23とは隙間21が延在する方向に離れた位置に設けられた第2の電圧端子27と、第2のランド31bと略対向する位置であって、第2の配線パターン17bの側部23とは隙間21が延在する方向に離れた位置に設けられた第1の電圧端子25とが設けられている。
【0047】
さらに、基体11には、第1のランド31aから第1の電圧端子25まで斜め方向に延びる引き出し配線部25aが設けられている。さらに、第2のランド31bと第2の電圧端子27との間を接続する、例えば金属製のワイヤ28が設けられている。ワイヤ28は、例えば、ワイヤーボンディングにより形成することができる。なお、電圧端子25、27は、前述のアンプ63等に電気的に接続されている(図示せず)。
【0048】
図8(b)に示すように、引き出し配線部25aとワイヤ28とが、基体11の平面視において交差しているが、ワイヤ28が基体11の表面から浮いているので、引き出し配線部25aとワイヤ28とを、空間的には基体11の表面から法線方向に離間させることができる。
【0049】
従って、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造を用いると、比較的簡単な構造で、抵抗体のもつ寄生インダクタンスの影響を抑制することができる。配線パターンのクロス構造を簡単に形成し、センシング部のループ面積を小さくすることができるため、電流検出精度を向上させることができる。一方の配線を基板配線により、他方をワイヤ配線により行うため、実装用のパターンも小型化することができる。
【0050】
また、2箇所をワイヤーボンディングする場合に比べて、ワイヤーボンディングを1箇所のみ行えば良いため、製造工程が簡単になる。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造について説明する。
図10(a)(b)は、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造を示す図であり、
図8(a)(b)に対応する。
【0052】
図8と
図10との相違点は、
図10の実装構造における実装基板Aでは、第2の配線パターン17b上に、半導体部品や金属部品(抵抗体などを含む)などの電子部品31が搭載されている点である。
【0053】
このような実装基板Aにシャント抵抗器を搭載する場合には、
図6に示すシャント抵抗器1aを用いると良い。シャント抵抗器1aの一方の端子5bは、電子部品31側の領域33にはんだなどで接続する。
図6にも示すように、シャント抵抗器1aにおける、一方の電極5aと他方の電極5bとの段差(Δh)を電子部品の厚さと略一致させることで、シャント抵抗器1aを実装基板Aの主面に対して水平に配置することができる。抵抗体のもつ寄生インダクタンスの影響を抑制する効果については、第1の実施の形態と同様である。
【0054】
(第1および第2の実施の形態の利点のまとめ)
図11は、第1又は第2の実施の形態による実装構造(
図11(a))と、一般的な実装構造(
図11(b))とを対比させて示す平面図である。
図11(b)に示す実装構造では、第1の配線パターン17aと、第2の配線パターン17bとから、それぞれ、引き出し配線部25c、25dにより、第1の電圧端子25と第2の電圧端子27とを引き出している。従って、符号AR1で示す領域において発生する磁束インダクタンスに起因する測定誤差が無視できなくなる。
【0055】
図11(a)と
図11(b)とを比較すれば、本実施の形態に対応する
図11(a)の構造では、引き出し配線を空間的に離した状態で交差させているため、磁束インダクタンスに起因する測定誤差を抑制することができる。
【0056】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造について説明する。
【0057】
図12は、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造の一例を示す平面図である。
【0058】
図8と比較するとわかるように、
図12に示す実装構造では、第1のランド31aと第1の電圧端子25との間を繋ぐ引き出し配線部25bが、端面22aと略平行な第1の部分25b−1と、斜めに延びる第2の部分25b−2とから構成されている点である。また、第1の部分25b−1を隙間21の切れる位置まで設けるようにしても良い。
【0059】
図12に示す構造を、
図8に示す構造と比較すると、引き出し配線部における斜めに延びる部分を短くすることができるため、隙間の長さL12を従来に比べて狭くすることができる。従って、本実施の形態によれば、従来に比べて、より微細な実装構造とすることができる。
【0060】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造について説明する。
【0061】
図13は、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造の一例を示す平面図である。
【0062】
図8と比較すればわかるように、
図13においては、第2のランド31bから第1の電圧端子25まで水平方向に延びる引き出し配線部25cが設けられている。さらに、第1のランド31aと第2の電圧端子27との間を接続する、例えば金属製のワイヤ28が設けられている。
図13に示すように、引き出し配線部25cとワイヤ28とが、基体11の平面視において略平行で交差していない。
【0063】
本実施の形態においても、ワイヤ28が空間的に基体11の表面から法線方向に離間させることができる。
【0064】
従って、本実施の形態によるシャント抵抗器の実装構造を用いると、他の実施の形態と比べて寄生インダクタンス抑制において効果が劣るものの、ランド31a,31bの間隔を狭くでき、微細な実装構造を実現できる。
【0065】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0066】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。