(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エアベース比率算出手段により算出されたエアベース比率が、前記第2所定範囲内に収まる場合よりも前記半導体式ガスセンサの劣化が進行している状態である第3所定範囲内に収まる場合、前記半導体式ガスセンサの故障であると判断する故障判断手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
金属酸化物半導体が還元性ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力する半導体式ガスセンサの空気雰囲気におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するエアベース比率算出工程と、
前記半導体式ガスセンサのセンサ値を前記エアベース比率算出工程において算出されたエアベース比率に基づいて補正するセンサ値補正工程と、
前記センサ値補正工程において補正されたセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断し、警報状態であると判断した場合に警報出力部から警報を出力させる警報制御工程と、を備えたガス警報器の制御方法であって、
前記センサ値補正工程は、
前記エアベース比率算出工程において算出されたエアベース比率が第1所定範囲内に収まる場合に、当該エアベース比率に基づいて、前記半導体式ガスセンサのセンサ値を補正する第1補正工程と、
前記エアベース比率算出工程において算出されたエアベース比率が前記第1所定範囲内に収まる場合よりも前記半導体式ガスセンサの劣化が進行している状態である第2所定範囲内に収まる場合に、当該エアベース比率及びエアベース比率を変数に持つ所定の調整式に基づいて、前記半導体式ガスセンサのセンサ値を補正する第2補正工程と、を有する
ことを特徴とするガス警報器の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るガス警報器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、ガス警報器1は、検知対象ガスの濃度が所定濃度以上であると判断した場合に警報出力するものであって、半導体式ガスセンサ10と、制御部20と、警報音発生部(警報出力部)30と、表示部(警報出力部)40とを備えて構成されている。
【0017】
半導体式ガスセンサ10は、金属酸化物半導体をガス感応体として有し、ガス感応体が還元性ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するものである。具体的に半導体式ガスセンサ10は、酸化スズの粉体を焼成して焼結し触媒を添加したものをガス感応体とし、例えば還元性ガスであるメタンガスに曝されたときの抵抗値の低下に応じた信号を出力する。この半導体式ガスセンサ10は、ヒータによって所定温度に保たれたり、2以上の温度間で温度変化させられたり、オンオフされたりして、駆動されている。
【0018】
なお、以下において半導体式ガスセンサ10のセンサ値は、半導体式ガスセンサ10から出力された信号を抵抗値換算した値(すなわちセンサ抵抗値)であるものとして説明する。
【0019】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)により構成され、ROM(Read Only Memory)に記憶されるプログラムを実行して、半導体式ガスセンサ10のセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断するものである。警報音発生部30は、例えばスピーカと音声出力回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、警報音を出力するものである。表示部40は、例えばLED(Light Emitting Diode)と点灯回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、点灯出力又は点滅出力するものである。
【0020】
図2は、
図1に示した制御部20の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御部20は、ROMに記憶されるプログラムを実行することで、エアベース比率算出部(エアベース比率算出手段)21と、センサ値補正部(センサ値補正手段)22と、警報制御部(警報制御手段)23とが機能する。
【0021】
エアベース比率算出部21は、半導体式ガスセンサ10の空気雰囲気(清浄状態の空気雰囲気)におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するものである。このエアベース比率算出部21は、後述する更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。ここで、半導体式ガスセンサ10においてエアベース値(清浄状態の空気雰囲気におけるセンサ値)は、長期使用された場合の被毒の影響によって初期値よりも低下する傾向にある。よって、エアベース比率算出部21は、後述する更新候補値を初期値で除することで、1以下のエアベース比率を算出することとなる。
【0022】
図3〜
図5は、
図2に示したエアベース比率算出部21によるエアベース比率の算出処理の概要を示す図であり、
図3は第1段階目の処理を示し、
図4は第2段階目の処理を示し、
図5は第3段階目の処理を示している。
【0023】
まず、エアベース比率算出部21は、
図3に示すように、所定時間T毎に半導体式ガスセンサ10から得られる信号を抵抗値換算してセンサ値を求め、このセンサ値を記憶保存していく。そして、記憶保存したセンサ値がL個(Lは3以上の整数)となった場合、すなわち第1所定期間P1が経過した場合、L個のセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、(L−2)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。
【0024】
次に、エアベース比率算出部21は、
図4に示すように、第1所定期間P1毎に算出した第1候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第1候補値がM個(Mは3以上の整数)となった場合、すなわち第2所定期間P2が経過した場合、エアベース比率算出部21は、M個の第1候補値のうち2番目に高い値を示す第1候補値を第2候補値として算出する。
【0025】
ここで、第2候補値には、M個の第1候補値のうち2番目に高い値を示す第1候補値が採用されているが、2番目に限らず、最大値及び最小値を除いたいずれか1つの第1候補値が採用されてもよい。
【0026】
次いで、エアベース比率算出部21は、
図5に示すように、第2所定期間P2毎に算出した第2候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第2候補値がN個(Nは3以上の整数)となった場合、すなわち第3所定期間P3が経過した場合、エアベース比率算出部21は、N個の第2候補値のうち2番目に高い値を示す第2候補値を更新候補値として算出する。
【0027】
ここで、更新候補値には、N個の第2候補値のうち2番目に高い値を示す第2候補値が採用されているが、2番目に限らず、最大値及び最小値を除いたいずれか1つの第2候補値が採用されてもよい。
【0028】
エアベース比率算出部21は、上記のようにして更新候補値を算出する。そして、エアベース比率算出部21は、算出した更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。なお、初期値は、予め記憶された値であってもよいし、ガス警報器1の設置直後のセンサ値から求められる値であってもよい。
【0029】
ここで、エアベース比率を算出するための更新候補値については、空気雰囲気のセンサ値に基づいて得られた値である必要がある。このため、エアベース比率算出部21は、警報音発生部30及び表示部40から警報出力されているときのセンサ値を第1候補値の算出に用いないこととする。
【0030】
例えば、L個のセンサ値のうち、2つのセンサ値が警報出力時のものである場合、エアベース比率算出部21は、まずL個のセンサ値のうち警報出力時のセンサ値を除いて(L−2)個とし、(L−2)個のセンサ値の最大値と最小値とを除いた(L−4)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。また、所定時間T毎の検出タイミングにおけるセンサ値が警報出力時のものである場合、エアベース比率算出部21は、警報出力が解除されるまで待機し、解除されたときのセンサ値を所定時間T毎のセンサ値の1つとしてもよい。この場合、待機時間分だけ第1所定期間P1が延長されてもよいし、延長されなくともよい。
【0031】
再度、
図2を参照する。センサ値補正部22は、半導体式ガスセンサ10のセンサ値をエアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率に基づいて補正するものである。警報制御部23は、センサ値補正部22により補正されたセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断するものであり、警報状態であると判断した場合には、警報音発生部30から警報音を出力させ、表示部40を点灯又は点滅させるものである。
【0032】
次に、センサ値の補正の様子を説明する。
図6は、
図2に示したエアベース比率算出部21により算出されるエアベース比率の一例を示すグラフである。更新候補値はガス感応体の被毒によって低下していく傾向がある。このため、エアベース比率算出部21により算出されるエアベース比率についても被毒が進行すると低い値となる。
【0033】
図6に示す例においては、100日及び200日経過時点におけるエアベース比率が約0.8強となっており、300日経過時点におけるエアベース比率が約0.7強となっており、400日経過時点におけるエアベース比率が約0.5強となっている。
【0034】
図7は、
図6に示した被毒の進行状態における警報点の推移を示すグラフである。
図7に示すように、0日(初期)において、第1段警報点は3000ppmとなっており、第2段警報点は3500ppmとなっている。すなわち、初期においては、検知対象ガスが3000ppmであるときに第1段警報が発せられ、検知対象ガスが3500ppmであるときに第2段警報が発せられる。
【0035】
しかし、100日経過すると、第1段警報点は約2000ppmとなっており、第2段警報点は約2500ppmとなっている。このため、100日経過時点においては、検知対象ガスが2000ppmしかない環境下において第1段警報が発せられ、検知対象ガスが2500ppmしかない環境下において第2段警報が発せられてしまう。
【0036】
また、200日経過すると、第1段警報点は約1300ppmとなっており、第2段警報点は約1700ppmとなっており、300日経過すると、第1段警報点は約1000ppmとなっており、第2段警報点は約1400ppmとなっている。このため、200日経過時点や300日経過時点では、これらの濃度の検知対象ガスしかない環境下において第1又は第2段警報が発せられてしまう。特に、400日経過すると、第1段警報点及び第2段警報点は共に1000ppmを下回ってしまう。すなわち、検定下限レベルを下回る結果となってしまう。
【0037】
図8は、
図7に示したセンサ値をエアベース比率で補正したときの警報点の推移を示すグラフである。
図8に示すように、センサ値をエアベース比率で補正(除算)することで、第1段警報点及び第2段警報点の低下を抑えることができ、400日経過時点において検定下限レベルを下回ることがないようになっている。すなわち、警報の鋭敏化を食い止める結果となっている。
【0038】
以上のように、センサ値のエアベース比率で補正することにより、警報が鳴り易くなってしまう事態を防止している。ここで、本件発明者らは半導体式ガスセンサ10について鋭意研究を重ねた結果、劣化度合いが或る程度進行するとエアベース比率に基づく補正のみでは不充分であることを見出した。
【0039】
図9は、
図2に示したエアベース比率算出部21により算出されるエアベース比率の他の例を示すグラフである。
図9に示す例においては、100日及び200日経過時点におけるエアベース比率は
図6に示すものと同様である。しかし、300日経過時点以降においては半導体式ガスセンサ10の劣化が
図6に示す例よりも進行しており、300日経過時点におけるエアベース比率が約0.4強となっており、400日経過時点におけるエアベース比率が約0.1となっている。
【0040】
図10は、
図9に示したセンサ値をエアベース比率で補正したときの警報点の推移を示すグラフである。
図10に示すように、センサ値をエアベース比率で補正(除算)することで、200日経過する迄は第1段警報点及び第2段警報点を横ばいとすることができる。しかし、300日経過以降においては、第1段警報点及び第2段警報点が上昇することとなり、警報の鈍化を招くこととなっている。特に、350日経過以降において鈍化は顕著となり検定上限レベルを上回る結果となっている。
【0041】
図11は、エアベース比率と感度比率(3500ppmのメタンガス雰囲気におけるセンサ値の初期値に対する感度割合)との相関を示すグラフである。
図11に示すように、エアベース比率が0.5以上となる領域においては、エアベース比率と感度比率とが比例関係にあると言える。すなわち、エアベース比率が0.5において感度比率も約0.5を示し、エアベース比率が0.7において感度比率も約0.7を示し、エアベース比率が0.9において感度比率も約0.9を示している。従って、エアベース比率が0.5以上となる範囲において半導体式ガスセンサ10が劣化していたとしても、センサ値をエアベース比率で除する補正処理によって、メタンガスの検知精度が維持されることとなる。
【0042】
これに対し、エアベース比率が0.5未満となる領域においては、エアベース比率と感度との間に上記関係がなくなる。特に、この領域においては、感度比率がエアベース比率を上回る結果となっている。すなわち、エアベース比率が0.4において感度比率は約0.5以上を示し、エアベース比率が0.2において感度比率も約0.4以上を示している。このため、センサ値をエアベース比率で除する補正処理では過剰な補正(過補正)となってしまい、
図10に示すように、メタンガスの検知精度が鈍化方向に推移してしまうこととなる。
【0043】
そこで、本実施形態に係るセンサ値補正部22は、上記のような現象に対応すべく、
図2に示すように、第1補正部(第1補正手段)22aと、第2補正部(第2補正手段)22bとを備えている。
【0044】
第1補正部22aは、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率が第1所定範囲内に収まる場合に、そのエアベース比率に基づいて半導体式ガスセンサ10のセンサ値を補正するものである。具体的に第1補正部22aは、エアベース比率が0.5を超え0.9以下となる場合に、センサ値をエアベース比率で除することで、センサ値を補正する。
【0045】
第2補正部22bは、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率が第1所定範囲内に収まる場合よりも半導体式ガスセンサ10の劣化が進行している状態である第2所定範囲内に収まる場合、そのエアベース比率及びエアベース比率を変数に持つ所定の調整式に基づいて半導体式ガスセンサ10のセンサ値を補正するものである。具体的に第2補正部22bは、エアベース比率が0.2を超え0.5以下となる場合に、センサ値をエアベース比率及び所定の調整式から得られた値で除することで、センサ値を補正する。
【0046】
ここで、所定の調整式は、例えばy=−ax+bなる1次式であって、xがエアベース比率であり、a及びbは予め定められた定数である。よって、例えばエアベース比率が0.4である場合、第2補正部22bは、センサ値÷0.4÷(−0.4a+b)とすることで、センサ値を補正することとなる。
【0047】
なお、所定の調整式は、
図11に示した感度比率が、エアベース比率に比例する関係となるように調整するための式となっていれば、上記のような1次式に限らず、対数式や累乗式であってもよい。
【0048】
また、上記において第1所定範囲は0.5を超え0.9以下の範囲であるが、特にこの範囲に限られるものではなく、例えば0.5を超え1.0以下の範囲であってもよいし、他の数値範囲であってもよい。さらに第1所定範囲は上限値を無限大とする範囲も含む概念である。このため、エアベース比率が0.5を超えるという下限の条件のみを満たせばエアベース比率は第1所定範囲に含まれると判断されてもよい。
【0049】
加えて、上記において第2所定範囲は0.2を超え0.5以下の範囲であるが、特にこの範囲に限られるものではなく、例えば0を超え0.5以下の範囲であってもよいし、他の数値範囲であってもよい。さらに第2所定範囲は下限値を有しない範囲も含む概念である。このため、エアベース比率が0.5以下となるという上限の条件のみを満たせばエアベース比率は第2所定範囲に含まれると判断されてもよい。
【0050】
図12は、センサ値を第1補正部22a及び第2補正部22bにより補正したときの警報点の推移を示すグラフである。なお、
図12に示す例では、横軸に示す経過年数3年以降においてエアベース比率が0.5以下となるものとする。
【0051】
図12に示す例では、エアベース比率が第1所定範囲内であるときに第1補正部22aによってエアベース比率による補正を行い、第2所定範囲内であるときに第2補正部22bによってエアベース比率及び調整式に基づく補正を行っている。このため、劣化度合いが進行したエアベース比率が第2所定範囲内であるときには、調整式によって補正が適切化されており、経過年数3年以降においても第1段警報点及び第2段警報点が上昇することなく横ばいとなっている。すなわち、警報の鈍化を食い止める結果となっている。
【0052】
再度、
図2を参照する。制御部20は、ROMに記憶されるプログラムを実行することで、更に故障判断部(故障判断手段)24が機能する。故障判断部24は、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率が、第2所定範囲内に収まる場合よりも半導体式ガスセンサ10の劣化が進行している状態である第3所定範囲(0以上0.2以下)内に収まる場合、半導体式ガスセンサ10が故障していると判断するものである。
【0053】
ここで、本件発明者らは、エアベース比率が第2所定範囲内に収まる場合、エアベース比率及び調整式に基づいて補正することでセンサ値の補正精度を維持できるが、更に半導体式ガスセンサ10の劣化が進行すると、所定の調整式を用いたとしても、もはや補正精度を維持できなくなることを見出した。よって、所定の調整式に基づく補正によっても補正精度を維持できなくなる劣化の進行時に故障と判断することとしている。これにより、所定の調整式を用いない場合には補正精度を維持できず半導体式ガスセンサ10の使用が不可となる第2所定範囲内において、所定の調整式を用いることで半導体式ガスセンサ10の長寿命化を図りつつも、更に劣化が進行したときには故障を判断することができる。
【0054】
なお、上記において第3所定範囲は0以上0.2以下の範囲であるが、特にこの範囲に限られるものではなく、他の数値範囲であってもよい。さらに第3所定範囲は下限値を有しない範囲も含む概念である。このため、エアベース比率が0.2以下となるという上限の条件のみを満たせばエアベース比率は第3所定範囲に含まれると判断されてもよい。
【0055】
次に、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法について説明する。
図13は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、エアベース比率の算出処理を示している。なお、
図13に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0056】
図13に示すように、制御部20は、まず所定時間Tが経過したか否かを判断する(S1)。所定時間Tが経過していないと判断した場合(S1:NO)、所定時間Tが経過したと判断するまで、この処理が繰り返される。
【0057】
所定時間Tが経過したと判断した場合(S1:YES)、エアベース比率算出部21は、半導体式ガスセンサ10からの信号に基づくセンサ値を記憶する(S2)。次に、エアベース比率算出部21は、第1所定期間P1が経過したかを判断する(S3)。第1所定期間P1が経過していないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0058】
一方、第1所定期間P1が経過したと判断した場合(S3:YES)、エアベース比率算出部21は、ステップS2において記憶したセンサ値のうち、警報時のセンサ値を除外すると共に、除外したセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、センサ値の平均値を第1候補値として算出し記憶する(S4)。
【0059】
次いで、エアベース比率算出部21は、第2所定期間P2が経過したかを判断する(S5)。第2所定期間P2が経過していないと判断した場合(S5:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0060】
一方、第2所定期間P2が経過したと判断した場合(S5:YES)、エアベース比率算出部21は、ステップS4にて算出して記憶された第1候補値のうち、2番目に大きい値を第2候補値として算出し記憶する(S6)。その後、エアベース比率算出部21は、第3所定期間P3が経過したかを判断する(S7)。
【0061】
第3所定期間P3が経過していないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、第3所定期間P3が経過したと判断した場合(S7:YES)、エアベース比率算出部21は、ステップS6にて算出して記憶された第2候補値のうち、2番目に大きい値を更新候補値として算出する(S8)。
【0062】
次いで、エアベース比率算出部21は、ステップS8にて算出された更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する(S9)。その後、
図13に示す処理は終了する。
【0063】
図14は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、警報故障判断処理を示している。なお、
図14に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0064】
図14に示すように、まず制御部20は、半導体式ガスセンサ10からの信号に基づくセンサ値を算出する(S10)。次に、制御部20は、現在のエアベース比率(
図13のステップS9で算出されたエアベース比率)が第1所定範囲内であるか(例えば0.5<エアベース比率≦0.9であるか)を判断する(S11)。
【0065】
第1所定範囲内であると判断した場合(S11:YES)、センサ値補正部22は、ステップS10にて算出したセンサ値をエアベース比率により除することでセンサ値を補正して、補正センサ値を算出する(S12)。そして、処理はステップS18に移行する。
【0066】
一方、第1所定範囲内でないと判断した場合(S11:NO)、制御部20は、現在のエアベース比率が第2所定範囲内であるか(例えば0.2<エアベース比率≦0.5であるか)を判断する(S13)。
【0067】
第2所定範囲内であると判断した場合(S13:YES)、センサ値補正部22は、ステップS10にて算出したセンサ値をエアベース比率及び調整式によって得られた値の双方にて除することでセンサ値を補正して、補正センサ値を算出する(S14)。そして、処理はステップS18に移行する。
【0068】
一方、第2所定範囲内でないと判断した場合(S13:NO)、制御部20は、現在のエアベース比率が第3所定範囲内であるか(例えば0≦エアベース比率≦0.2であるか)を判断する(S15)。第3所定範囲内であると判断した場合(S15:YES)、故障判断部24は、半導体式ガスセンサ10の故障であると判断する(S16)。そして、故障判断部24は、警報音発生部30及び表示部40を通じて、その旨の報知を行う(S17)。そして、
図14に示す処理は終了する。
【0069】
第3所定範囲内でないと判断した場合(S15:NO)、すなわち、エアベース比率が0.9を超える場合、処理はステップS18に移行する。
【0070】
ステップS18において警報制御部23は、ステップS12若しくはステップS14で算出された補正センサ値、又は、ステップS10にて算出されたセンサ値(但しステップS15で「NO」と判断された場合に限る)に基づいて警報状態であるかを判断する(S18)。このとき、警報制御部23は、補正センサ値又はセンサ値と第1段警報点及び第2段警報点とを比較して警報状態であるかを判断する。すなわち、警報制御部23は、補正センサ値又はセンサ値が第1段警報点以下となると警報状態であると判断し、更に第2段警報点以下となるとより緊急度が高い警報状態であると判断する。
【0071】
警報状態でないと判断した場合(S18:NO)、
図14に示す処理は終了する。一方、警報状態であると判断した場合(S18:YES)、警報制御部23は、警報音発生部30及び表示部40から警報出力させる(S19)。なお、ここでの警報出力の内容は、第1段警報点以下であるか、第2段警報点以下であるかによって変化させられる。その後、
図14に示す処理は終了する。
【0072】
このようにして、本実施形態に係るガス警報器1及びその制御方法によれば、エアベース比率が第1所定範囲内に収まる場合に、当該エアベース比率に基づいてセンサ値を補正し、エアベース比率の劣化が進行している第2所定範囲内に収まる場合に、当該エアベース比率及び当該エアベース比率を変数に持つ所定の調整式に基づいて、センサ値を補正する。ここで、本件発明者らは、半導体式ガスセンサ10の劣化度合いがある程度進行するとエアベース比率のみに基づく補正では不充分であることを見出した。このため、半導体式ガスセンサ10の劣化度合いがある程度進行した場合に、エアベース比率及びエアベース比率を変数に持つ所定の調整式に基づいてセンサ値を補正することで、センサ値の補正精度をより向上させることができる。
【0073】
また、エアベース比率が、第2所定範囲内に収まる場合よりも半導体式ガスセンサ10の劣化が進行している状態である第3所定範囲内に収まる場合、半導体式ガスセンサ10の故障であると判断する。ここで、本件発明者らは、エアベース比率が第2所定範囲内に収まる場合、エアベース比率及びエアベース比率を変数に持つ所定の調整式に基づいて補正することでセンサ値の補正精度を維持できるが、更に半導体式ガスセンサ10の劣化が進行すると、所定の調整式を用いたとしても、もはや補正精度を維持できなくなることを見出した。よって、所定の調整式に基づく補正によっても補正精度を維持できなくなる劣化の進行時に故障と判断することで、半導体式ガスセンサ10の長寿命化を図りつつも故障を判断することができる。
【0074】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0075】
例えば、本実施形態に係るガス警報器1は、検知対象となる還元性ガスがメタンガスである都市ガス向けの警報器として説明したが、これに限らず、検知対象となるガスがプロパンガスやブタンガスなどであるLPガス向けの警報器であってもよい。また、ガス警報器1は、火災警報機能を更に有するガス火災警報器として構成されてもよい。
【0076】
加えて、上記では、半導体式ガスセンサ10から電圧信号を抵抗値換算した値をセンサ値としたが、これに限らず、電圧信号をセンサ値としてもよい。この場合、上記説明においてセンサ値の大小関係の概念が逆になるなど、適宜処理内容が変わることはいうまでもない。また、センサ値は抵抗値や電圧信号に限らず、電圧信号を濃度換算した値などであってもよい。すなわち、センサ値とは、出力される信号そのもの、又はその信号から求められる値であれば、特に上記に限られるものではない。