(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
与えられた放送プログラムに従って放送関連機器を状態遷移させるための制御情報と当該制御情報の送出時刻とを計算し、当該放送プログラムを反映する制御スケジュールを作成する作成部と、
前記制御スケジュールに基づいて前記放送関連機器を制御する制御部と、
試験環境下での前記状態遷移の時間間隔を短縮すべく、前記計算された制御情報の送出タイミングを可変制御する試験期間短縮部と、
前記放送関連機器にマスタ時刻を供給する時計ノードとを具備し、
前記試験期間短縮部は、前記マスタ時刻を適応的に進めて前記時間間隔を短縮する、放送システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。この実施形態では、複数の放送関連機器を備える放送システムについて説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、地上デジタル放送システムの一例を示す概念図である。放送局100のマスタ送出システムで作成されたトランスポートストリーム(TS)は、専用線網などの通信ネットワーク200を経由して例えば電波塔300まで伝送される。電波塔300はTS信号をデジタル変調してマイクロ波帯で放射する。放射された電波は各家庭400の受像機で受信され、映像と音声が再生される。模式的に示すように、放送局100に備えられる設備機器は大規模かつ多種多様である。
【0010】
図2は、実施形態に係る放送局設備の一例を示す機能ブロック図である。放送局設備は、情報系10、信号処理系20、伝送系30、監視系システム40および時計ノード80を備える。これらはLAN(Local Area Network)などの局内ネットワーク50を介して相互接続される。このうち時計ノード80は、各放送関連機器に対しマスタ時刻を供給する。
【0011】
局内ネットワーク50は、例えば、画像/音声データ、放送関連機器間で授受される制御情報や各種電文などを伝送する。
【0012】
情報系10は、放送情報スケジューラ11、およびデータベース12を備える。
信号処理系20は、制御系60、スイッチャ(SW)21、エンコーダ(ENC)23、SI送出部24、VBR25、多重化部(MUX)26、およびSCR27を備える。信号処理系20は1系および0系を含む冗長構成をとることも可能である。
【0013】
スイッチャ21は、収録済み放送素材サーバ70からの番組コンテンツやCMコンテンツ、文字情報、LIVE素材である回線素材、スタジオからの映像/音声信号、あるいは各種機材からの映像信号/音声信号/データ信号を取り込み、番組表に従って経路切換して次段のエンコーダ23に接続する。エンコーダ23はいわゆる符号化多重化部制御装置(EMC:Encoder & Multiplexer Controller)であり、入力された信号の符号化及び多重化に関する制御を行う。
【0014】
エンコーダ23は所定の手順に従って映像信号/音声信号/データ信号を符号化し、次段の多重化部26に入力する。多重化部26は、エンコーダ23からの符号化信号、SI送出部24からのSI(Service Information)信号、ECM信号、およびVBR25からの信号を多重化し、SCR27経由で、伝送系30のストリーム切り替え部31,32に送出する。
【0015】
信号処理系20の制御系60は、機器制御スケジューラ61、リアルタイムコントローラ62、およびノード(NODE)63を備える。機器制御スケジューラ61は、放送スケジュールの制御に係わる処理を実行する。
【0016】
リアルタイムコントローラ62は、実時間制御に係わる処理を実行する。すなわちリアルタイムコントローラ62は、放送プログラムに基づいて作成された制御スケジュールに基づいて、各放送関連機器を制御する。
【0017】
ノード63は、例えば、局内ネットワーク50への接続インタフェース持たない機材(アナログVTRなど)に接続され、局内ネットワーク50へのインタフェース機能を提供する。これにより旧式の機材なども放送局設備の制御下に置くことができる。必要に応じてノード63は複数設けられても良い。
【0018】
監視系システム40は、放送スケジュール表示、システム系統状態表示、素材・送出映像表示、機器操作などの複数の監視制御用機器とその操作機能を備える。放送スケジュール表示機能は、例えばOA(オンエア)表示端末に関連する機能である。システム系統状態表示機能は、例えば監視指示端末およびアラーム端末に関連する機能である。素材・送出映像表示機能は、例えばマルチモニタに関連する機能である。機器操作機能は、例えば監視卓および監視指示端末に関連する機能である。
【0019】
時計ノード80は、上記の各放送関連機器に対しマスタ時刻を供給する。
【0020】
図3は、
図2に示される放送局設備におけるイベントの発生に伴う制御シーケンスの一例を示す図である。
図3において、VTR1から10:00にオンエア(OA)データを出力するメッセージが、放送プログラム送出部91から機器制御スケジューラ61に与えられたとする。そうすると機器制御スケジューラ61はリアルタイムコントローラ62にCDTメッセージを与える。
【0021】
これを受けたリアルタイムコントローラ62は専用電文により、VTR−startメッセージ(START(PLAY))をVTR−NODE92に通知する。VTR93の機構的なタイムラグや制御遅延などを考慮して、ターゲット時刻より前(例えば09:59:57)にVTR93をスタートすべき指示をVTR−startメッセージに含ませても良い。これを受けたVTR−NODE92は、VTR93にPLAY指示を与えて映像再生が開始される。
【0022】
一方、10:00:00に、クロスポイント(Xp)切替指示がリアルタイムコントローラ62からスイッチャ制御NODE94に与えられる。これにより、例えば色付きの電文メッセージがログに表示される(自動運行サービス制御)。
【0023】
スイッチャ制御NODE94は、配下のスイッチャ21にクロスポイント切替指示を与え、これに応じてスイッチャ21はクロスポイントを切り替える(自動運行制御)。またスイッチャ21は、自らのクロスポイントの設定状態(Xp状態)を、タリー信号としてTP95に通知する(Xp状態表示切替)。
【0024】
図4は、データベース12に記憶される情報および機器制御スケジューラ61に備わる機能の一例を示す図である。データベース12は、例えば半導体メモリなどの記憶デバイスであり、放送プログラムデータ12a、制御情報データ12b、および制御ポイントデータ12cを記憶する。
【0025】
機器制御スケジューラ61は、実施形態に係わる処理機能として放送プログラム取得部61a、制御情報作成部61b、制御スケジュール作成部61c、および時刻制御可能ポイント出力部61dを備える。放送プログラム取得部61a、制御情報作成部61b、制御スケジュール作成部61c、および時刻制御可能ポイント出力部61dは、コンピュータとしての機器制御スケジューラ61を制御するプログラムにより実現される機能である。詳しくは、コンピュータのメモリに記憶されたプログラムに従うCPU(Central Processing Unit)の演算処理により実現される、処理機能である。
【0026】
データベース12の放送プログラムデータ12aは、いわゆる番組プログラム情報(EPG)に相当するデータであり、時刻ごとの放送コンテンツを時系列で示すデータである。例えば試験用の放送プログラムの一例を
図5に示す。放送プログラム取得部61aはこの放送プログラムデータ12aをデータベース12から取得し、制御情報作成部61bに渡す。
【0027】
制御情報作成部61bは、放送プログラムデータ12aに従って各放送関連機器を適切に状態遷移させるための制御情報と、その送出時刻とを計算する。作成された制御情報は送出時刻とともに制御スケジュール作成部61cおよび時刻制御可能ポイント出力部61dに渡される。
【0028】
制御スケジュール作成部61cは、制御情報作成部61bから渡された各制御情報とその送出時刻に基づいて、放送プログラムデータ12aを反映する制御スケジュールを作成する。制御スケジュールは制御情報データ12bとしてデータベース12に記憶される。
【0029】
図6は、制御スケジュールの一例を示す図である。制御スケジュールは、放送プログラムに基づいて計算された制御情報とその送出時刻とを、時系列でリストアップしたデータといえる。
【0030】
時刻制御可能ポイント出力部61dは、制御情報作成部61bから渡された制御情報から、制御スケジュールにおいて制御情報の送出時刻が規定間隔を超えるポイントを抽出する。抽出されたポイントは、制御ポイントデータ12cとしてデータベース12に記憶される。
【0031】
機器制御スケジューラ61は、作成した制御スケジュールをリアルタイムコントローラ62(
図2)に渡す。これを受けたリアルタイムコントローラ62は、制御スケジュールにプログラムされた制御情報(制御命令)を、その送出時刻に従って送出する。これにより各放送関連機器は、リアルタイムコントローラ62により、制御スケジュールに基づいて制御される。
【0032】
機器制御スケジューラ61から制御情報を送出する際の基準となる時刻は、時計ノード80から供給されるマスタ時刻である。つまり時計ノード80のマスタ時刻を操作することで、制御情報の送出タイミングを自在に可変制御することができる。
【0033】
試験という環境下では、マスタ時刻は、現実世界における実時間の時刻と必ずしも一致する必要はない。このことを逆手にとって第1の実施形態では、時計ノード80のマスタ時刻を可能な範囲で進めることで、実時間での制御情報の送出タイミングを制御する。すなわち、リアルタイムコントローラ62は、試験環境下での放送関連機器の状態遷移の時間間隔を短縮すべく、機器制御スケジューラ61により計算された制御情報の送出タイミングを、さらに可変制御する。
【0034】
またリアルタイムコントローラ62は、ユーザの介入を要するイベントの待機期間を確保したうえで制御情報の送出タイミングを可変制御する。ユーザの介入を要するイベントとは、例えば手動操作を伴う試験項目に関するイベントであって、放送スケジュール中に明確になっている場合とそうではない場合(不確定イベント区間と称する)とがある。リアルタイムコントローラ62は、この不確定イベント区間に関しては期間短縮を行わず、実時間で実行することで、ユーザの手動操作をし易くする。次に、上記構成を基礎として第1の実施形態における作用を説明する。
【0035】
図7は、第1の実施形態における制御系60の処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば放送システムの実稼働前試験に実施される。試験に際しては実運用を想定した放送プログラムが用意され、そのプログラムに従ってシステムの動作を確認することとなる。
【0036】
図7において、先ず、試験時間範囲が設定される(ステップS1)。そうすると、次の制御情報および制御ポイント情報がデータベース12から読み込まれ(ステップS2、S3)、さらに、試験に係わる放送時刻が設定される(ステップS4)。
【0037】
次に、試験終了時間が到来したか否かが判定され(ステップS5)、ここでYesと判定されるまでステップS6〜S8を含むループが繰り返される。ループに入ると、先ず、不確定イベントの時間帯であるかどうかがマスタ時刻に基づいて判定される(ステップS6)。
【0038】
不確定イベントの時間帯でなければ(No)、制御系60は、次の制御時刻、つまりその時点から見て次の制御情報の送出時刻を制御ポイントデータ12cから検出し(ステップS7)、その時刻までマスタ時刻(放送時刻)を進める。つまり制御系60は、変数としての放送時刻に、次の制御時刻を代入する(ステップS8)
一方、ステップS6で不確定イベントの時間帯であれば(Yes)、制御系60は放送時刻を進める処理をスキップしてステップS5の判定処理にもどる。これによりマスタ時刻は進むことなく実時間と同期した状態を保つ。
【0039】
単純に次の制御時刻を目指してマスタ時刻を進ませると、進んだ先の制御情報単独では機器が正しく動作しないことがある。そこで、機器制御スケジューラ61の時刻制御可能ポイント出力部61dは、その制御を含む事前準備に関連する情報を事前に明確にし、ジャンプ可能な制御時刻を時刻制御可能ポイントとして検出する。この時刻制御可能ポイントは制御スケジュールに埋め込まれても良い。あるいは関連する情報を予め別途テーブル化し、ジャンプ可能な位置情報を算出できるようにしてもよい。
【0040】
以上述べたように第1の実施形態では、制御スケジュールにおいて制御情報の送出の間隔が規定値を超えるポイントを抽出し、マスタ時刻を進めることでその期間を短縮して、試験時間全体での無駄時間を削減するようにした。これにより、試験にかかる時間を短縮することができる。
【0041】
一般に、テレビ番組等の放送プログラムには、番組本編や、コマーシャル(以後CMと呼ぶ)や文字情報(データ放送や、天気情報など)があり、これらを予め計画した放送プログラムに合わせて、様々な放送関連機器が制御される。しかし、放送プログラムの実行時間中であっても制御の空き時間、つまり制御情報が局内ネットワーク50経由で送出されていない期間も存在する。これが積み重なると、特に試験環境下では大きな無駄時間になる。
【0042】
これに対し第1の実施形態では、制御スケジュールに基づいて制御の空き時間を検出し、不確定イベントの期間でない場合には次の制御情報の送出時刻までマスタ時刻を進めるようにした。これにより無駄時間を効果的に削減することができる。また、不確定イベントの時間帯であればマスタ時刻を進めることはせず、不確定イベント時間帯が経過するまで待つようにする。
【0043】
このようにリアルタイムコントローラ62は、盲目的にではなく、いわば適応的にマスタ時刻を進ませる。従って無駄時間を効果的に削減し、トータルでの試験時間を短縮することができる。つまり、試験項目に不確定イベントが含まれていない場合にはもちろん、不確定イベントが実行された場合であっても、トータルでの試験時間を短縮することが可能になる。これらのことから、ユーザの介入の余地を残しつつ、しかも試験時間を効果的に短縮することの可能な放送システムとその試験方法、およびプログラムを提供することが可能になる。
【0044】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、時計ノード80から供給されるマスタ時刻を強制的に進ませることで、無駄時間を省くようにした。第2の実施形態では、制御スケジュールそのものを編集することで試験に置ける無駄時間を省くようにする。
【0045】
図8は、改変された制御スケジュール、つまり制御スケジュール(圧縮版)の一例を示す図である。
図6の(*)マークで示されるイベントは、次のイベントまで3分、あるいは10分程度の空き時間がある。そこで第2の実施形態では、機器制御スケジューラ61は、この空き時間を削除すべく制御スケジュールを改変し、
図8に示されるような制御スケジュール(圧縮版)を作成する。
【0046】
つまり機器制御スケジューラ61は、制御スケジュールにおける制御情報の送出時刻が規定間隔を超えるポイントを抽出し、この抽出されたポイントに係わる制御情報の送出時刻を前倒しすることで、制御スケジュールの圧縮版を作成する。
図8に示される制御スケジュール(圧縮版)においては、(○)マークで示されるように、イベント間の時間間隔は1分程度に短縮されている。もちろん、第1の実施形態で述べたように、不確定イベント時間帯にかかる部分においては制御スケジュールの制御情報送出時刻を前倒ししないようにすればよい。
【0047】
このように第2の実施形態では、放送プログラムに基づいて作成された制御スケジュールにおける無駄時間を抽出し、その結果に基づいて制御スケジュールを改変することで、無駄時間の積み重なりを防止するようにした。このようにしても、試験時間を効果的に短縮することの可能な放送システムとその試験方法、およびプログラムを提供することが可能になる。
【0048】
なお本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば実施形態で説明したシステムおよび試験方法は、実体を伴う放送システムに適用することができることはもちろんである。さらに、コンピュータを用いた仮想環境下において構築される放送システムに対しても、上記試験方法を適用することが可能である。
【0049】
また、実施形態に係る試験方法を実現するプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することも可能である。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させることにより、仮想試験システムを実現することが可能である。「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0050】
また「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0051】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0052】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0053】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。