(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730184
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】流体輸送管を修理する方法
(51)【国際特許分類】
F16L 53/00 20180101AFI20200716BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
F16L53/00
F16L55/18 B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-530625(P2016-530625)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2016-528448(P2016-528448A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】IB2014001413
(87)【国際公開番号】WO2015015277
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2017年6月6日
(31)【優先権主張番号】2593
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】MC
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516031381
【氏名又は名称】スリーエックス エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブレ ドリア, スタニスラス
(72)【発明者】
【氏名】スリマニ, アサン
【審査官】
吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−118441(JP,A)
【文献】
実開昭49−091790(JP,U)
【文献】
特開平01−141297(JP,A)
【文献】
特開昭63−072891(JP,A)
【文献】
実開昭59−169478(JP,U)
【文献】
米国特許第04797604(US,A)
【文献】
特開2004−279247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 53/00
F16L 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体輸送管(10)の劣化した部分を修理する方法であって、劣化した部分に取り付けるスリーブ(16)のために補強テープ(20)を使用して、
前記補強テープは前記流体輸送管(10)を修理するためのものであって、前記補強テープは、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに張力下で巻き付けられ、それと同時に、架橋性樹脂が適用されて、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに前記スリーブ(16)が形成され、
前記補強テープには、長手方向に少なくとも1本の金属ワイヤ(22)が組み込まれていて、前記架橋性樹脂を架橋するのに前記金属ワイヤの電気特性が利用されるとともに、前記スリーブが形成された前記流体輸送管の部分、又は配管減肉によって拡径した前記流体輸送管の修理された部分を検出するのに、前記金属ワイヤの電気特性が利用され、
前記金属ワイヤが前記補強テープの半分のみに組み込まれ、それにより、前記補強テープが前記流体輸送管の周りに巻き付けられるたびに前記金属ワイヤを備える前記補強テープの前記半分が前記金属ワイヤを備えない先に巻かれた部分に半分重複することにより、連続して巻き付けられた前記金属ワイヤの部分の間で短絡が起きないようにしてあり、
前記補強テープに組み込まれた前記金属ワイヤ(22)に電圧を印加することにより、前記補強テープに適用された架橋性樹脂の重合反応を引き起こすのに必要な最低温度を達成すべく、前記金属ワイヤへの電圧の印加によるジュール加熱によって温度を上昇させる、方法。
【請求項2】
前記最低温度は、10℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
取り付けの前後に前記補強テープ(20)のオーム抵抗を測定し、前後の測定値の差異が巻き付け処理の際に掛けた機械的張力を反映する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
組み込まれた前記金属ワイヤの抵抗値を測定し、測定した抵抗値と前記金属ワイヤの抵抗率とから、適用すべき前記補強テープ(20)の全長を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
流体輸送管(10)の劣化した部分に取り付けられたスリーブ(16)であって、補強テープ(20)を用いて形成した前記スリーブ(16)を検出する方法であって、
前記補強テープは前記流体輸送管(10)を修理するためのものであって、前記補強テープは、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに張力下で巻き付けられ、それと同時に、架橋性樹脂が適用されて、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに前記スリーブ(16)が形成され、
前記補強テープには、長手方向に少なくとも1本の金属ワイヤ(22)が組み込まれていて、前記架橋性樹脂を架橋するのに前記金属ワイヤの電気特性が利用されるとともに、前記スリーブが形成された前記流体輸送管の部分、又は配管減肉によって拡径した前記流体輸送管の修理された部分を検出するのに、前記金属ワイヤの電気特性が利用され、
前記金属ワイヤが前記補強テープの半分のみに組み込まれ、それにより、前記補強テープが前記流体輸送管の周りに巻き付けられるたびに前記金属ワイヤを備える前記補強テープの前記半分が前記金属ワイヤを備えない先に巻かれた部分に半分重複することにより、連続して巻き付けられた前記金属ワイヤの部分の間で短絡が起きないようにしてあり、
検査ピグを前記流体輸送管の内部に沿って移動させ、前記検査ピグに備えられた磁束を生成する磁石により、前記補強テープに組み込まれた前記金属ワイヤの存在に基づいた磁束の変化が記録可能となって、前記スリーブ及び前記流体輸送管の修理された部分が検出される、方法。
【請求項6】
補強テープ(20)を用いて形成したスリーブ(16)を備える流体輸送管(10)の劣化した部分の壁の減肉による拡径を検出する方法であって、
前記補強テープは前記流体輸送管(10)を修理するためのものであって、前記補強テープは、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに張力下で巻き付けられ、それと同時に、架橋性樹脂が適用されて、前記流体輸送管の修理すべき部分の周りに前記スリーブ(16)が形成され、
前記補強テープには、長手方向に少なくとも1本の金属ワイヤ(22)が組み込まれていて、前記架橋性樹脂を架橋するのに前記金属ワイヤの電気特性が利用されるとともに、前記スリーブが形成された前記流体輸送管の部分、又は配管減肉によって拡径した前記流体輸送管の修理された部分を検出するのに、前記金属ワイヤの電気特性が利用され、
前記金属ワイヤが前記補強テープの半分のみに組み込まれ、それにより、前記補強テープが前記流体輸送管の周りに巻き付けられるたびに前記金属ワイヤを備える前記補強テープの前記半分が前記金属ワイヤを備えない先に巻かれた部分に半分重複することにより、連続して巻き付けられた前記金属ワイヤの部分の間で短絡が起きないようにしてあり、
前記補強テープに組み込まれた前記金属ワイヤの両端(26、28)に電圧を印加して、前記流体輸送管の拡径に応じて変化する、前記金属ワイヤの抵抗率を測定する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油などの流体の輸送に使用される管の修理に関し、具体的には、流体輸送管を修理するための改善された補強テープに関する。
【背景技術】
【0002】
石油の輸送管などの流体輸送管の劣化に際してなされる修理には、管の劣化部分の周りに補強テープを取り付けることが常に必要になる。補強テープは、一般的には、破断強度が高いなどの非常に優れた伸張性のある機械的特性を有する可撓性の材料から作られる。このような材料は、好ましくは、アラミド系の繊維又はガラス繊維のケブラー(商標)である。
【0003】
図1を参照すると、壁12が概して鋼で作られている管10の一部について、外面上に劣化した部分14がある。これを修理するため、まずは劣化した部分を高分子樹脂で埋める。次いで、劣化した部分を覆うスリーブ16が取り付けられる。このようなスリーブは、管の周りに巻き付けられる補強テープであって、巻き付けられるにつれて架橋性樹脂で覆われる補強テープから構成されている。
【0004】
また、
図2に示すように、管内部の劣化により減肉された部分18を示す管10の部分に対してもスリーブ16が取り付けられてよい。
【0005】
図3は、補強テープがどのように取り付けられるかを示す。まず、テープ20の始端部を任意の適切な手段で管に固定する。次いで、補強テープを管の周りに張力下で巻き付けていくがその際に、一周するごとに先に巻いた部分と(概して補強テープの半分の幅で)重複させて巻いていく。
【0006】
残念なことに、特に石油の輸送管の大部分は、地中に埋められるため、多くの欠点を抱えている。
【0007】
したがって、樹脂による優れた粘着力、化学的特性、及び機械的特性を可能にする重合反応は、少なくとも10℃の温度がなければ適切に実施されないことから、冬の低温度にさらされる地域を通過する管に、架橋性樹脂を施すことは容易ではない。
【0008】
この問題を克服するため、樹脂成分に含浸したテープを取り付けた後、重合反応を起こすために、管は、通常、加熱ブランケットで覆われる。この場合、熱が外部から内側に伝達されることから、管と含浸されたテープの第1の層との間の界面に薄い凝縮層が形成される。このため、粘着力が弱くなり、修理の機械的効率と化学的効率が損なわれ、更に錆の層が生じる。
【0009】
更に、一定の時間間隔(例えば3年毎に)で管の動作及び状態を検査するため、管の内部に沿って移動する検査ピグ(instrumented pig)と呼ばれる道具を用いて管の内部が検査される。
【0010】
しかしながら、修理した管が埋められると、修理の位置が分からなくなる。修理した部分の位置で、検査ピグは、壁が損傷していることは示すが、修理されたことは検出できない。結果として、検査ピグは、管を地中から取り出した後に修理を行われなければならないことを示す。この操作は、不必要であり、非常に高価である。
【0011】
最後に、内部又は外部において管が劣化していくと、減肉の劣化部分が経時的に広がっていくため、スリーブを取り付けることによって修理が行われたにも関わらず、管の内径が拡大することとなる。内径が大きくなりすぎると、その位置を新しいスリーブで手当てしない限り、管の壁が割れる虞があって、減肉の拡大は危険性がある。
【発明の概要】
【0012】
それ故に、本発明の目的は、流体の輸送管を修理するための補強テープにおいて、スリーブの取付けや、スリーブを設けた管の部分の検出や、管壁の減肉によって拡径した管の部分の検出などの作業を容易に行うことのできる、補強テープを提供することである。
【0013】
したがって、本発明の主題は、流体輸送管の修理に適した補強テープである。テープは、管の修理すべき部分の周りに補強テープが張力下で巻き付けられ、それと同時に、補強テープに架橋性樹脂が適用されて、修理される部分の周りにスリーブが形成される。補強テープの長手方向には、少なくとも1つの金属ワイヤが組み込まれていて、架橋性樹脂を架橋すること、スリーブが形成された流体輸送管の部分を検出すること、又は配管減肉によって拡径した管の修理された部分を検出することを含む操作に、金属ワイヤの電気特性が利用されている。
【0014】
管の劣化した部分を修理する方法であって、前記部分に取り付けられたスリーブは、上述の補強テープを含み、方法は、補強テープに組み込まれた金属ワイヤに電圧を印加することを含み、補強テープに適用された架橋性樹脂の重合反応を引き起こすのに必要な最低温度(例えば、10℃)を達成すべく、金属ワイヤへの電圧の印加によるジュール加熱によって温度を上昇させる、方法である。
【0015】
本発明の別の主題は、管の劣化した部分に取り付けられたスリーブであって、上述の補強テープを含むスリーブを検出する方法であって、検査ピグが管の内部に沿って移動して磁束を伝え、補強テープに組み込まれた金属ワイヤの存在に基づいた磁束の変化が記録可能となって、スリーブ及び管の修理された部分が検出される方法である。
【0016】
本発明の別の主題は、上述の補強テープを含むスリーブを備える管の劣化した部分の壁の減肉による拡径を検出する方法であって、補強テープに組み込まれたワイヤの両端に電圧を印加して、管の拡径に応じて変化する、金属ワイヤの抵抗率を測定する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の目的、主題、及び特性は、添付の図面と関連して見たとき、以下の記載からより明らかになるであろう。
【0018】
【
図1】スリーブの取り付けによって修理が実行された管の劣化した外部分を表す。
【
図2】スリーブの取り付けによって修理が実行された管の劣化した内部分を表す。
【
図3】管の劣化した部分の上に補強テープを配置することを表す。
【
図4】本発明に係る、金属ワイヤを有する補強テープを概略的に表す。
【
図5】金属ワイヤの端部がスリーブから突出する状態でスリーブが取り付けられた管の部分を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から3は、劣化した部分を有する管に関連する。修理はスリーブを取り付けることから構成されるが、このことは先行技術の記載において既に説明された。
【0020】
図4を参照すると、端と端をつないだ幾つかの補強テープから形成され得る補強テープ20は、ケブラーのような非常に優れた伸張性のある機械的特性を有する可撓性の材料から構成され、テープ20の長手方向でテープの中に組み込まれる金属ワイヤ22(例えば鋼で作られている)を備える。
【0021】
補強テープは、幾つかの金属ワイヤを備えてもよいことに留意するべきである。この場合、(好ましくは半分の)巻き付け部分が次の巻き付け部分によって覆われているとき(
図3を参照)、ワイヤ22がテープと同一面上にあるときに短絡が起きることができないように、ワイヤをすべて中央線24の同じ側に配置することが好ましい。
【0022】
図5では、本発明に係る、補強テープを備えるスリーブ16を有する管10が示される。図面を見ると分かるように、管を埋めたときに地面にアクセスすることができるように、金属ワイヤ22の端部26及び28はスリーブ16から突出する。
【0023】
既に上で述べたように、多くの管、特に石油を輸送するための管は、冬の温度がゼロ度未満に低下する地域で埋められる。スリーブが取り付けられたとき、補強テープは架橋性樹脂で覆われる。この樹脂は、空気に接触するときに架橋によって重合する2つの成分から通常構成される。しかしながら、温度が最小値(例えば10℃)未満に低下するとこの架橋は起きない。
【0024】
本発明に係る補強テープを使用することによって、この欠点を克服することができる。それは、金属ワイヤの2つの端部26及び28の間に低電圧が印加され、電流が金属ワイヤ内に流れ、最低温度(例えば、10℃)に達するまでジュール加熱によって温度が上昇し、樹脂の重合が開始されるためである。
【0025】
樹脂成分で含浸されている第1の補強テープが冷たい管に巻き付けられるや否や、オペレータは、それに電圧を印加し、管の温度を気にすることなく他のテープを続けて巻き付けることができる。これによって、凝縮が形成されることが防止される。
【0026】
更に、電源を入れたまま、等温性の生地(isothermal fabric)で管を保護しながら一旦巻き付けが終われば、適切な重合温度に達することを単に待つだけである。これは、感熱ラベルなどの視覚インジケータを使用して行うことができる。結果として、すべての層(最大100、すなわち50mmの厚みであってもよい)が完全に重合されたことを確認することができる。
【0027】
もう1つの利点は、圧力を再び適用できる前の待ち時間が減少することである。この待ち時間は、通常は72時間(樹脂の安定に必要とされる時間)であるが、数時間に縮めることができ、原価における著しい改善となる。
【0028】
補強テープを取り付けるとき、テープが弾性がないことを前提に、約6kgの最小限の機械的張力、すなわち、人によって適用される力が2つのテープの間で必要とされる。
【0029】
テープに組み込まれる1つ又は複数のワイヤの存在によって、緩く巻き付けられたテープ、すなわち、6kg未満の張力で巻き付けられたテープときつく巻き付けられたテープとの間の違いを確認することが可能となり、したがって、オペレータが取り付け手順に従ったかどうかを確認することが可能となる。取り付けの前と後にテープのオーム抵抗を単に測定すればよく、2つの測定値の間の差異は巻き付け処理の間の張力を反映する。
【0030】
必要とされる数の層は、所与の修理に対して計算されることに留意されたい。したがって、テープの長さは約100メートルに達してもよい。ワイヤの抵抗率が公知であることによって、抵抗率の測定が適用されるテープの全長を示す。
【0031】
管が修理されたとき、管は、次に管の内部を移動する検査ピグで検査される。検査ピグは、劣化が修理された部分に位置するとき、それが壁の上に存在することを示す。
【0032】
補強テープに組み込まれた金属ワイヤによって、検査ピグはスリーブの存在を検出する。検査ピグは、磁石の2つの極の間で管の壁を貫流する磁石の磁束を測定する手段を含む複数の測定手段を備える。補強テープを巻き付けることによって、補強テープに組み込まれた金属ワイヤは、測定された磁束を変更するコイルを形成する。結果的に、管が既に修理されたことを示すスリーブの存在を検出することが容易となる。
【0033】
上述のように、管の劣化に従って修理が行われたとき、修理の後でも劣化した部分の減肉が管を拡径させる。これは、新しいスリーブがこの位置に取り付けられない限り、直径が過剰値に達した場合に管の壁に裂け目が入ることがあるため、非常に危険であり得る。したがって、修理不能な裂け目を避けるため、修理位置の管の直径が過剰に拡大していないかを定期的に検査する必要がある。
【0034】
管の修理部分がスリーブを備えるため、管の拡径が結果としてスリーブの拡径となり、したがって、補強テープに組み込まれた金属ワイヤによって形成されたターン(turns)が拡径し、それにより、伸長されて金属ワイヤの長さが増大する結果となる。このワイヤの長さの増大は、ワイヤの抵抗率を増大させる効果がある。結果として、管の拡径の可能性を知るためには、単にワイヤの端部26及び28(
図5を参照)の間に電圧を印加し、且つその抵抗率を知るためにワイヤの抵抗率を測定することによって、ワイヤの抵抗率の変化を計算すればよい。