特許第6730212号(P6730212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730212
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】ラッチ回路及びコンパレータ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/037 20060101AFI20200716BHJP
【FI】
   H03K3/037 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-47689(P2017-47689)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-152725(P2018-152725A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】臼田 雅之
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−010069(JP,A)
【文献】 特開2000−228621(JP,A)
【文献】 特開平02−215218(JP,A)
【文献】 特開2005−269611(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0315924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力ノードに第1信号が入力される第1NAND回路と、
第1入力ノードに第2信号が入力され、第2入力ノードが前記第1NAND回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NAND回路の第2入力ノードに接続された第2NAND回路と、
一端が前記第1NAND回路の前記第1入力ノードに接続され、他端が前記第1NAND回路の前記出力ノードに接続された第1容量素子と、
一端が前記第2NAND回路の前記第1入力ノードに接続され、他端が前記第2NAND回路の前記出力ノードに接続された第2容量素子と、
を備えるラッチ回路。
【請求項2】
前記第1NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第1容量素子の容量と略等しく、
前記第2NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第2容量素子の容量と略等しい、
請求項1に記載のラッチ回路。
【請求項3】
第1入力ノードに第1信号が入力される第1NAND回路と、
第1入力ノードに第2信号が入力され、第2入力ノードが前記第1NAND回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NAND回路の第2入力ノードに接続された第2NAND回路と、
第1入力ノードが前記第1NAND回路の前記第1入力ノードに接続され、第2入力ノードが前記第1NAND回路の前記出力ノードに接続された第3NAND回路と、
第1入力ノードが前記第2NAND回路の前記第1入力ノードに接続され、第2入力ノードが前記第2NAND回路の前記出力ノードに接続された第4NAND回路と、
を備えるラッチ回路。
【請求項4】
前記第1NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第3NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量と略等しく、
前記第2NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第4NAND回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量と略等しい、
請求項に記載のラッチ回路。
【請求項5】
第1入力ノードに第1信号が入力される第1NOR回路と、
第1入力ノードに第2信号が入力され、第2入力ノードが前記第1NOR回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NOR回路の第2入力ノードに接続された第2NOR回路と、
一端が前記第1NOR回路の前記第1入力ノードに接続され、他端が前記第1NOR回路の前記出力ノードに接続された第1容量素子と、
一端が前記第2NOR回路の前記第1入力ノードに接続され、他端が前記第2NOR回路の前記出力ノードに接続された第2容量素子と、を備えるラッチ回路。
【請求項6】
前記第1NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第1容量素子の容量と略等しく、
前記第2NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第2容量素子の容量と略等しい、
請求項5に記載のラッチ回路。
【請求項7】
第1入力ノードに第1信号が入力される第1NOR回路と、
第1入力ノードに第2信号が入力され、第2入力ノードが前記第1NOR回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NOR回路の第2入力ノードに接続された第2NOR回路と、
第1入力ノードが前記第1NOR回路の前記第1入力ノードに接続され、第2入力ノードが前記第1NOR回路の前記出力ノードに接続された第3NOR回路と、
第1入力ノードが前記第2NOR回路の前記第1入力ノードに接続され、第2入力ノードが前記第2NOR回路の前記出力ノードに接続された第4NOR回路と、
を備えるラッチ回路。
【請求項8】
前記第1NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第3NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量と略等しく、
前記第2NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量は、前記第4NOR回路の前記第1及び第2入力ノード間の寄生容量と略等しい、
請求項に記載のラッチ回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載のラッチ回路と、
前記第1及び前記第2信号を出力する差動増幅回路と、
を備えるコンパレータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
SRラッチを用いた半導体回路。
【背景技術】
【0002】
SRラッチ回路を用いたコンパレータ回路が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5224657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動作領域を拡大することが可能なラッチ回路及びコンパレータ回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のラッチ回路は、第1及び第2NAND回路、並びに第1及び第2容量素子を含む。第1NAND回路は、第1入力ノードに第1信号が入力される。第2NAND回路は、第1入力ノードに第2信号が入力され、第2入力ノードが前記第1NAND回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NAND回路の第2入力ノードに接続される。第1容量素子は、一端が第1NAND回路の第1入力ノードに接続され、他端が第1NAND回路の出力ノードに接続される。第2容量素子は、一端が第2NAND回路の第1入力ノードに接続され、他端が第2NAND回路の出力ノードに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係るコンパレータ回路の回路図。
図2】第1実施形態に係るコンパレータ回路の動作タイミングチャート。
図3】第1実施形態の比較例に係るコンパレータ回路の回路図。
図4】第1実施形態に係るコンパレータ回路の動作タイミングチャート。
図5】第1実施形態の比較例に係るコンパレータ回路におけるラッチ回路の動作を説明する図。
図6】第1実施形態に係るコンパレータ回路におけるラッチ回路の動作を説明する図。
図7】第1実施形態に係るコンパレータ回路及び第1実施形態の比較例に係るコンパレータの動作を比較する波形図。
図8】第2実施形態に係るラッチ回路の回路図。
図9】第2実施形態に係るコンパレータ回路におけるラッチ回路の動作を説明する図。
図10】第2実施形態の変形例に係るラッチ回路の回路図。
図11】第3実施形態に係るコンパレータ回路の回路図。
図12】第3実施形態に係るコンパレータ回路におけるラッチ回路の動作を説明する図。
図13】第4実施形態に係るラッチ回路の回路図。
図14】第4実施形態に係るコンパレータ回路におけるラッチ回路の動作を説明する図。
図15】第4実施形態の変形例に係るラッチ回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的なものである。尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。
【0008】
[1]第1実施形態
以下に、第1実施形態に係るコンパレータ回路について説明する。
【0009】
[1−1]コンパレータ回路1の構成
まず、図1を用いてコンパレータ回路1の構成について説明する。図1には、コンパレータ回路1の回路構成が示されている。図1に示すようにコンパレータ回路1は、ラッチ回路10及び増幅回路20を備えている。
【0010】
ラッチ回路10は、例えばセット信号SET及びリセット信号RSTが入力されるSRラッチ回路である。図1に示すようにラッチ回路10は、NAND回路11及び12、並びに容量素子C1及びC2を含んでいる。
【0011】
セット信号SETは、NAND回路11の第1入力ノードに入力され、リセット信号RSTは、NAND回路12の第1入力ノードに入力される。NAND回路11の出力ノードは、NAND回路12の第2入力ノードに接続されている。NAND回路12の出力ノードは、NAND回路11の第2入力ノードに接続されている。そして、NAND回路11の出力ノードからは、出力信号QBが出力され、NAND回路12の出力ノードからは、出力信号Qが出力される。
【0012】
容量素子C1の一端は、NAND回路11の第1入力ノードに接続され、容量素子C1の他端は、NAND回路11の出力ノードに接続されている。容量素子C2の一端は、NAND回路12の第1入力ノードに接続され、容量素子C2の他端は、NAND回路12の出力ノードに接続されている。そして、容量素子C1の容量は、例えばNAND回路11の寄生容量と同様になるように設計され、容量素子C2の容量は、例えばNAND回路12の寄生容量と同様になるように設計される。尚、容量素子C1及びC2の容量はこれに限定されず、あらゆる容量に設計することが可能である。
【0013】
増幅回路20は、例えば入力信号IN_N及びIN_Pの差を増幅する差動増幅回路である。図1に示すように増幅回路20は、NチャネルMOSトランジスタ21〜25、並びにPチャネルMOSトランジスタ26〜29を含んでいる。
【0014】
入力信号IN_Nは、トランジスタ21のゲートに入力され、入力信号IN_Pは、トランジスタ22のゲートに入力される。トランジスタ21及び22の一端は、トランジスタ23の一端に接続され、トランジスタ23の他端は、接地線GNDに接続されている。トランジスタ21及び22の他端は、それぞれトランジスタ24及び25の一端に接続されている。トランジスタ24及び25のゲートは、それぞれトランジスタ25及び24の他端に接続されている。
【0015】
トランジスタ26及び27の一端は、それぞれトランジスタ24及び25の他端に接続され、トランジスタ26及び27の他端は、電源線VDDに接続されている。トランジスタ26及び27のゲートは、それぞれトランジスタ24及び25のゲートに接続されている。トランジスタ28及び29の一端は、それぞれトランジスタ24及び25の他端に接続され、トランジスタ28及び29の他端は、電源線VDDに接続されている。
【0016】
そして、以上で説明した増幅回路20では、トランジスタ23、28、及び29のゲートにクロック信号CLKが入力される。また、トランジスタ28の一端及びトランジスタ29の一端が、差動増幅回路の出力として使用される。つまり、本実施形態に係るコンパレータ回路1では、トランジスタ28の一端がNAND回路11の第1入力ノードに接続され、トランジスタ29の一端がNAND回路12の第1入力ノードに接続される。
【0017】
尚、以上で説明したコンパレータ回路1の回路構成は、これに限定されない。例えば、増幅回路20は、2つの入力信号の差を増幅することが可能な差動増幅回路であれば良く、図1に示された回路構成でなくても良い。
【0018】
[1−2]コンパレータ回路1の動作
次に、図2を用いてコンパレータ回路1の動作について説明する。図2はコンパレータ回路1の動作タイミングチャートであり、クロック信号CLK、並びにラッチ回路10の入力信号及び出力信号の波形の一例が示されている。尚、図2では、ラッチ回路10の入力信号に対応するセット信号SET及びリセット信号RSTが、それぞれ実線及び破線で示され、ラッチ回路10の出力信号に対応する出力信号QB及びQが、それぞれ実線及び破線で示されている。また、以下の説明において、“H”レベルとは、第1論理状態に対応する電圧値であることを示し、“L”レベルとは、第1論理状態と異なる第2論理状態に対応する電圧値であることを示している。
【0019】
図2に示すように、本例における入力信号IN_N及びIN_Pの電圧値は、クロック信号CLKが時刻t0及びt1から“H”レベルになっている期間においてIN_N<IN_Pであり、クロック信号CLKが時刻t2及びt3から“H”レベルになっている期間においてIN_N>IN_Pである。また、時刻t0より前の初期状態では、セット信号SET及びリセット信号RSTが“H”レベル、出力信号QB及びQがそれぞれ“L”レベル及び“H”レベルとされている。
【0020】
時刻t0においてクロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、入力信号IN_N及びIN_Pの電圧値に基づいて、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が下降する。この期間はIN_N<IN_Pであり、セット信号SETの電圧よりもリセット信号RSTの電圧の方が早く下降するため、リセット信号RSTの電圧が先に“L”レベルの電圧まで下降する。その結果、NAND回路12は、第1及び第2入力ノードに“L”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号QBを“L”レベルから“H”レベルにする。出力信号QBが“H”レベルになると、NAND回路11は第1及び第2入力ノードに“H”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号Qを“H”レベルから“L”レベルにする。そして、クロック信号CLKが“H”レベルから“L”レベルになると、セット信号SET及びリセット信号RSTに対応するノードが充電されるため、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が初期状態に戻る。尚、以下の説明では、クロック信号CLKに基づいてセット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が初期状態に戻る動作の説明を省略する。
【0021】
時刻t1においてクロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、時刻t0と同様にセット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が下降し、リセット信号RSTの電圧が先に“L”レベルの電圧まで下降する。その結果、NAND回路12は第1及び第2入力ノードに“L”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号Qを“H”レベルに維持する。また、NAND回路11は、第1及び第2入力ノードに“H”レベルの信号が入力された状態が維持されるため、出力信号QBを“L”レベルに維持する。
【0022】
時刻t2においてクロックCLK信号が“L”レベルから“H”レベルになると、この期間はIN_N>IN_Pであり、リセット信号RSTの電圧よりもセット信号SETの電圧の方が早く下降するため、セット信号SETの電圧が先に“L”レベルの電圧まで下降する。その結果、NAND回路11は第1及び第2入力ノードに“L”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号Qを“L”レベルから“H”レベルにする。出力信号Qが“H”レベルになると、NAND回路12は第1及び第2入力ノードに“H”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号QBを“H”レベルから“L”レベルにする。
【0023】
時刻t3においてクロックCLK信号が“L”レベルから“H”レベルになると、時刻t2と同様にセット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が下降し、セット信号SETの電圧が先に“L”レベルの電圧まで下降する。その結果、NAND回路11は第1及び第2入力ノードに“L”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号Qを“H”レベルに維持する。また、NAND回路12は、第1及び第2入力ノードに“H”レベルの信号が入力された状態が維持されるため、出力信号QBを“L”レベルに維持する。
【0024】
[1−3]第1実施形態の効果
以上で説明した第1実施形態に係るコンパレータ回路1によれば、コンパレータ回路1の動作領域を拡大することが出来る。以下に、本効果の詳細について説明する。
【0025】
コンパレータ回路は、2つの入力信号の電位差が小さい場合に、正しい判定結果が得られないことがある。この要因の一つとしては、例えばコンパレータ回路に用いられるSRラッチ回路の寄生容量の影響が考えられる。以下に、このような場合における動作について、図3に示す第1実施形態の比較例に係るコンパレータ回路を用いて説明する。
【0026】
図3に示す比較例に係るコンパレータ回路の回路構成は、図1を用いて説明した第1実施形態に係るコンパレータ回路1において、ラッチ回路10を容量素子C1及びC2を含まないラッチ回路30に置き換えたものと同様である。この比較例に係るコンパレータ回路は、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合、例えば図4及び図5に示すように動作する。図4図2と同様の動作タイミングチャートであり、図5図4の時刻t0におけるラッチ回路30の動作を示している。
【0027】
図4に示すように、本例における入力信号IN_N及びIN_Pの電圧値は、図4に示す全期間においてIN_N≒IN_Pである。また、時刻t0より前の初期状態では、セット信号SET及びリセット信号RSTが“H”レベル、出力信号QB及びQがそれぞれ“L”レベル及び“H”レベルとされている。
【0028】
時刻t0においてクロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さいため、セット信号SETの電圧とリセット信号RSTの電圧が同様の速度で下降する。すると、セット信号SETとリセット信号RSTの電位差が大きくなる前に、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が共に“L”レベルの電圧まで下降する(図5の(1))。その結果、NAND回路11は、第1及び第2入力ノードにそれぞれ“L”レベル及び“H”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号QBを“L”レベルから“H”レベルにする(図5の(2))。このとき、NAND回路11の出力電圧の変化が、NAND回路12の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介して伝わり、NAND回路12の第1入力ノードの電圧が“L”レベルから“H”レベルになる(図5の(3))。これに伴いNAND回路12は、第1及び第2入力ノードに“H”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号Qを“H”レベルから“L”レベルにする(図5の(4))。尚、時刻t1及びt3における動作は、時刻t0における動作においてNAND回路11とNAND回路12に対応する動作を逆にしたものと同様であり、時刻t2における動作は、時刻t0における動作と同様のため、説明を省略する。
【0029】
以上のようにコンパレータ回路は、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合に、SRラッチ回路の初期状態とNAND回路11及び12の寄生容量の影響を受けて出力信号QB及びBが変化することがある。この場合、クロック信号CLKのサイクル毎に、出力信号QB及びQの論理状態が入れ替わる。コンパレータ回路は、このように出力信号が発振する領域では正しい判定結果が得られ難いため、判定精度を向上するためには発振領域を抑制する必要がある。
【0030】
そこで、第1実施形態に係るコンパレータ回路1は、ラッチ回路10が容量素子C1及びC2を備えている。具体的には、NAND回路11の寄生容量と対応させた容量素子C1が、NAND回路11の第1入力ノード及び出力ノード間に接続され、NAND回路12の寄生容量と対応させた容量素子C2が、NAND回路12の第1入力ノード及び出力ノード間に接続される。以下に、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における、第1実施形態に係るコンパレータ回路1の動作について、図6を用いて説明する。図6図5に示すラッチ回路30と同じ状況におけるラッチ回路10の動作を示している。
【0031】
初期状態からクロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さいため、セット信号SETの電圧とリセット信号RSTの電圧が同様の速度で下降する。すると、セット信号SETとリセット信号RSTの電位差が大きくなる前に、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が共に“L”レベルの電圧まで下降する(図6の(1))。その結果、NAND回路11は、第1及び第2入力ノードにそれぞれ“L”レベル及び“H”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号QBを“L”レベルから“H”レベルにする(図6の(2))。このとき、NAND回路11の出力電圧の変化が、NAND回路12の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介して伝えられ、NAND回路12の第1入力ノードの電圧が上昇する(図6の(3))。そして、これに伴いNAND回路12の出力電圧が下降し、この電圧変化が容量素子C2を介してNAND回路12の第1入力ノードに伝えられる(図6の(4))。つまり、NAND回路12の第1入力ノードの電圧は、図6の(3)において“L”レベルから“H”レベルに上昇しようとし、図6の(4)において“H”レベルから“L”レベルに下降しようとする。
【0032】
このように、図6の(3)に対応する動作と、図6の(4)に対応する動作とは、打ち消し合う動作(相殺する動作)となるため、NAND回路12の第1入力ノード及び出力ノードにおける電圧変化が抑制される。そして、NAND回路12の第1入力ノードにおける電圧変化が抑制されることから、NAND回路12の第2入力ノードにおける電圧変化も抑制されるため、結果的に図6の(2)で説明した出力信号QBの変化も抑制される。尚、ラッチ回路10の出力信号QB及びQの初期状態が逆の場合の動作は、NAND回路11に対応する動作とNAND回路12に対応する動作とを入れ替え、容量素子C1に対応する動作と容量素子C2に対応する動作とを入れ替えたものと同様となるため、説明を省略する。
【0033】
以上のように、第1実施形態に係るコンパレータ回路1は、容量素子C1及びC2を追加することによって、ラッチ回路10の初期状態とNAND回路11及び12の寄生容量との影響を抑制することが出来る。言い換えると、第1実施形態に係るコンパレータ回路1は、NAND回路11及び12の寄生容量により生じるノイズを、容量素子C1及びC2により生じる逆方向のノイズによって相殺することが出来る。
【0034】
これにより、第1実施形態に係るコンパレータ回路1は、図7に示すように出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合においても、比較例に係るコンパレータ回路と比べて発振領域を狭めることが出来る。従って第1実施形態に係るコンパレータ回路1は、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における判定精度を向上することが出来、動作領域を拡大することが出来る。
【0035】
[2]第2実施形態
次に、第2実施形態に係るラッチ回路10について説明する。第2実施形態は、第1実施形態で説明したラッチ回路10が含む容量素子C1及びC2の具体例である。
【0036】
[2−1]ラッチ回路10の構成
以下に、図8を用いて第2実施形態に係るラッチ回路10について説明する。図8には、第2実施形態に係るラッチ回路10の回路構成が示されている。図8に示すように第2実施形態に係るラッチ回路10は、第1実施形態で図1を用いて説明したラッチ回路10において、容量素子C1及びC2をそれぞれNAND回路13及び14に置き換えたものと同様である。
【0037】
具体的には、図8に示すようにNAND回路13の第1入力ノードがNAND回路11の第1入力ノードに接続され、NAND回路13の第2入力ノードがNAND回路11の出力ノードに接続されている。同様に、NAND回路14の第1入力ノードがNAND回路12の第1入力ノードに接続され、NAND回路14の第2入力ノードがNAND回路12の出力ノードに接続されている。
【0038】
そして、NAND回路13の第1及び第2入力ノード間における寄生容量が、第1実施形態で説明した容量素子C1と同様の容量とされ、NAND回路14の第1及び第2入力ノード間における寄生容量が、第1実施形態で説明した容量素子C2と同様の容量とされる。つまり、第2実施形態に係るラッチ回路10では、NAND回路13が容量素子C1を含み、NAND回路14が容量素子C2を含んでいるとみなすことも出来る。この場合、容量素子C1の一端がNAND回路13の第1入力ノードに接続され、容量素子C1の他端がNAND回路14の第2入力ノードに接続されているとみなされる。同様に、容量素子C2の一端がNAND回路14の第1入力ノードに接続され、容量素子C2の他端がNAND回路14の第2入力ノードに接続されているとみなされる。
【0039】
[2−2]第2実施形態の効果
以上で説明したラッチ回路10を用いることで、第1実施形態と同様に、コンパレータ回路1の動作領域を拡大することが出来る。以下に、図9を用いて本効果の詳細について説明する。図9は、第2実施形態に係るラッチ回路10を用いたコンパレータ回路1の動作例であり、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合におけるラッチ回路10の動作が示されている。尚、図9に示す動作における初期状態は、第1実施形態で説明した図6と同じであるとする。
【0040】
図9の初期状態から(2)までの動作は、第1実施形態で説明した図6の初期状態から(2)までの動作と同様である。つまり、クロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が共に“L”レベルの電圧まで下降し(図9の(1))、NAND回路11が出力信号QBを“L”レベルから“H”レベルにする(図9の(2))。その結果、NAND回路11の出力電圧の変化が、NAND回路12の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介して伝えられ、NAND回路12の第1入力ノードの電圧が上昇する(図9の(3))。そして、これに伴いNAND回路12の出力電圧が下降し、この電圧変化がNAND回路14の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介してNAND回路12の第1入力ノードに伝えられる(図9の(4))。つまり、NAND回路12の第1入力ノードの電圧は、図9(3)において“L”レベルから“H”レベルになろうとし、図9の(4)において“H”レベルから“L”レベルになろうとする。
【0041】
このように、図9の(3)に対応する動作と、図9の(4)に対応する動作とは、相殺する動作となるため、NAND回路12の第1入力ノード及び出力ノードにおける電圧変化が抑制される。そして、NAND回路12の第1入力ノードにおける電圧変化が抑制されることから、NAND回路12の第2入力ノードにおける電圧変化も抑制されるため、結果的に図9の(2)で説明した出力信号QBの変化も抑制される。尚、ラッチ回路10の出力信号QB及びQの初期状態が逆の場合の動作は、NAND回路11に対応する動作とNAND回路12に対応する動作とを入れ替え、NAND回路13に対応する動作とNAND回路14に対応する動作とを入れ替えたものと同様となるため、説明を省略する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るラッチ回路10は、NAND回路13及び14用いることによって、ラッチ回路10の初期状態とNAND回路11及び12の寄生容量との影響を抑制することが出来る。言い換えると、第2実施形態に係るコンパレータ回路1は、NAND回路11及び12の寄生容量により生じるノイズを、NAND回路13及び14の寄生容量により生じる逆方向のノイズによって相殺することが出来る。
【0043】
これにより、本実施形態に係るラッチ回路10を用いたコンパレータ回路1は、第1実施形態と同様に、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における判定精度を向上することが出来、動作領域を拡大することが出来る。
【0044】
尚、本実施形態においてNAND回路13及び14は、例えばNAND回路11及び14とそれぞれ同様の構造で設けても良い。この場合、NAND回路13の第1及び第2入力ノード間における寄生容量は、NAND回路11の第1及び第2入力ノード間における寄生容量と同様になり、NAND回路14の第1及び第2入力ノード間における寄生容量は、NAND回路12の第1及び第2入力ノード間における寄生容量と同様になる。これによりラッチ回路10は、NAND回路11及び12の寄生容量によるノイズと、NAND回路13及び14の寄生容量による逆方向のノイズとがほぼ同等となるため、精度良く寄生容量の影響を相殺することが出来る。
【0045】
また、第2実施形態では、NAND回路13及び14の出力ノードに何も接続していない場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、図10に示すようにNAND回路11及び12の出力と、NAND回路13及び14の出力とを同様の構造にしても良い。図10は、第2実施形態の変形例に係るラッチ回路10の回路構成であり、NAND回路における出力部のより詳細な回路構成が示されている。尚、図10では、各種配線の配線抵抗及び容量が表示されている。
【0046】
図10に示すようにNAND回路11〜14の出力ノードは、それぞれ出力部40〜43に対応している。出力部40においてNAND回路11の出力配線は、例えばインバータに接続されている。出力部41は、例えば出力部40と同様の構造である。出力部42においてNAND回路13のダミー配線は、例えばインバータに接続されている。出力部43は、例えば出力部42と同様の構造である。そして本変形例では、出力部40及び42を同様の構造とし、出力部41及び43を同様の構造とする。これにより、NAND回路13及び14の出力部における配線抵抗及び容量を、NAND回路11及び14の出力部における配線抵抗及び容量と同様にすることが出来る。従って第2実施形態の変形例に係るラッチ回路10は、NAND回路13及び14の特性をNAND回路11及び12により近づけることが出来、NAND回路11及び12の寄生容量の影響を抑制する効果を大きくすることが出来る。
【0047】
[3]第3実施形態
次に、第3実施形態に係るコンパレータ回路1及びラッチ回路10について説明する。第3実施形態におけるコンパレータ回路1は、第1実施形態で説明したコンパレータ回路1において、ラッチ回路10にNOR回路を利用したものである。
【0048】
[3−1]コンパレータ回路1の構成
以下に、図11を用いて第3実施形態に係るコンパレータ回路1の構成について説明する。図11には、第3実施形態に係るコンパレータ回路1の回路構成が示されている。図11に示すように第3実施形態に係るコンパレータ回路1は、第1実施形態で図1を用いて説明したコンパレータ回路1に対して、ラッチ回路10及び増幅回路20の回路構成が異なる。
【0049】
具体的には、図11に示すようにラッチ回路10は、NOR回路15及び16、並びに容量素子C3及びC4を含んでいる。NOR回路15及び16、並びに容量素子C3及びC4の接続関係は、第1実施形態で図1を用いて説明したラッチ回路10の回路構成における、NAND回路11及び12、並びに容量素子C1及びC2の接続関係と同様のため、説明を省略する。
【0050】
図11に示すように増幅回路20は、第1実施形態で図1を用いて説明した増幅回路10が上下に反転し、電源線VDD及び接地線VSSが入れ替わったものと同様である。具体的には、トランジスタ23の他端が電源線VDDに接続され、トランジスタ26〜29の他端が接地線GNDに接続されている。その他の回路構成は同様のため、説明を省略する。
【0051】
[3−2]第3実施形態の効果
以上で説明した第3実施形態に係るコンパレータ回路1によれば、コンパレータ回路1の動作領域を拡大することが出来る。以下に、図12を用いて本効果の詳細について説明する。図12は、第3実施形態に係るコンパレータ回路1の動作例であり、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合におけるラッチ回路10の動作が示されている。尚、図12に示す動作における初期状態は、セット信号SET及びリセット信号RSTが“L”レベル、出力信号QB及びQがそれぞれ“H”レベル及び“L”レベルとされている。
【0052】
クロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さいため、セット信号SETの電圧とリセット信号RSTの電圧が同様の速度で上昇する。すると、セット信号SETとリセット信号RSTの電位差が大きくなる前に、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が共に“H”レベルの電圧まで上昇する(図12の(1))。その結果、NOR回路15は、第1及び第2入力ノードにそれぞれ“H”レベル及び“L”レベルの信号が入力された状態となるため、出力信号QBを“H”レベルから“L”レベルにする(図12の(2))。このとき、NOR回路15の出力電圧の変化が、NOR回路16の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介して伝えられ、NOR回路16の第1入力ノードの電圧が下降する(図12の(3))。そして、これに伴いNOR回路16の出力電圧が上昇し、この電圧変化が容量素子C4を介してNOR回路16の第1入力ノードに伝えられる(図12の(4))。つまり、NOR回路16の第1入力ノードの電圧は、図12の(3)において“H”レベルから“L”レベルになろうとし、図12の(4)において“L”レベルから“H”レベルになろうとする。
【0053】
このように、図12の(3)に対応する動作と、図12の(4)に対応する動作とは、相殺する動作となるため、NOR回路16の第1入力ノード及び出力ノードにおける電圧変化が抑制される。そして、NOR回路16の第1入力ノードにおける電圧変化が抑制されることから、NOR回路16の第2入力ノードにおける電圧変化も抑制されるため、結果的に図12の(2)で説明した出力信号QBの変化も抑制される。尚、ラッチ回路10の出力信号QB及びQの初期状態が逆の場合の動作は、NOR回路15に対応する動作とNOR回路16に対応する動作とを入れ替え、容量素子C3に対応する動作と容量素子C4に対応する動作とを入れ替えたものと同様となるため、説明を省略する。
【0054】
以上のように、第3実施形態に係るコンパレータ回路1は、容量素子C3及びC4を追加することによって、ラッチ回路10の初期状態とNOR回路15及び16の寄生容量との影響を抑制することが出来る。言い換えると、第3実施形態に係るコンパレータ回路1は、NOR回路15及び16の寄生容量により生じるノイズを、容量素子C3及びC4により生じる逆方向のノイズによって相殺することが出来る。
【0055】
これにより、第3実施形態に係るコンパレータ回路1は、第1実施形態と同様に、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における発振領域を狭めることが出来る。従って第3実施形態に係るコンパレータ回路1は、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における判定精度を向上することが出来、動作領域を拡大することが出来る。
【0056】
[4]第4実施形態
次に、第4実施形態に係るラッチ回路10について説明する。第4実施形態は、第3実施形態で説明したラッチ回路10が含む容量素子C3及びC4の具体例である。
【0057】
[4−1]ラッチ回路10の構成
以下に、図13を用いて第4実施形態に係るラッチ回路10について説明する。図13には、第4実施形態に係るラッチ回路10の回路構成が示されている。図13に示すように第4実施形態に係るラッチ回路10は、第3実施形態で図11を用いて説明したラッチ回路10において、容量素子C3及びC4をそれぞれNOR回路17及び18に置き換えたものと同様である。
【0058】
具体的には、図11に示すようにNOR回路17の第1入力ノードがNOR回路15の第1入力ノードに接続され、NOR回路17の第2入力ノードがNOR回路15の出力ノードに接続されている。同様に、NOR回路18の第1入力ノードがNOR回路16の第1入力ノードに接続され、NOR回路18の第2入力ノードがNOR回路16の出力ノードに接続されている。
【0059】
そして、NOR回路17の第1及び第2入力ノード間における寄生容量が、第3実施形態で説明した容量素子C3と同様の容量とされ、NOR回路18の第1及び第2入力ノード間における寄生容量が、第3実施形態で説明した容量素子C4と同様の容量とされる。つまり、第4実施形態に係るラッチ回路10では、NOR回路17が容量素子C3を含み、NOR回路18が容量素子C4を含んでいるとみなすことも出来る。この場合、容量素子C3の一端がNOR回路17の第1入力ノードに接続され、容量素子C3の他端がNOR回路17の第2入力ノードに接続されているとみなされる。同様に、容量素子C4の一端がNOR回路18の第1入力ノードに接続され、容量素子C4の他端がNOR回路18の第2入力ノードに接続されているとみなされる。
【0060】
[4−2]第4実施形態の効果
以上で説明したラッチ回路10を用いることで、第3実施形態と同様に、コンパレータ回路1の動作領域を拡大することが出来る。以下に、図14を用いて本効果の詳細について説明する。図14は、第4実施形態に係るラッチ回路10を用いたコンパレータ回路1の動作例であり、入力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合におけるラッチ回路10の動作が示されている。尚、図14に示す動作における初期状態は、第3実施形態で説明した図12と同じであるとする。
【0061】
図14の初期状態から(2)までの動作は、第3実施形態で説明した図12の初期状態から(2)までの動作と同様である。つまり、クロック信号CLKが“L”レベルから“H”レベルになると、セット信号SET及びリセット信号RSTの電圧が共に“H”レベルの電圧まで上昇し(図14の(1))、NOR回路15が出力信号QBを“H”レベルから“L”レベルにする(図14の(2))。その結果、NOR回路15の出力電圧の変化が、NOR回路16の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介して伝えられ、NOR回路16の第1入力ノードの電圧が下降する(図14の(3))。そして、これに伴いNOR回路16の出力電圧が上昇し、この電圧変化がNOR回路18の第1及び第2入力ノード間の寄生容量を介してNOR回路16の第1入力ノードに伝えられる(図14の(4))。つまり、NOR回路16の第1入力ノードの電圧は、図14(3)において“H”レベルから“L”レベルになろうとし、図14の(4)において“L”レベルから“H”レベルになろうとする。
【0062】
このように、図14の(3)に対応する動作と、図14の(4)に対応する動作とは、相殺する動作となるため、NOR回路16の第1入力ノード及び出力ノードにおける電圧変化が抑制される。そして、NOR回路16の第1入力ノードにおける電圧変化が抑制されることから、NOR回路16の第2入力ノードにおける電圧変化も抑制されるため、結果的に図14の(2)で説明した出力信号QBの変化も抑制される。尚、ラッチ回路10の出力信号QB及びQの初期状態が逆の場合の動作は、NOR回路15に対応する動作とNAND回路16に対応する動作とを入れ替え、NOR回路17に対応する動作とNOR回路18に対応する動作とを入れ替えたものと同様となるため、説明を省略する。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るラッチ回路10は、NOR回路17及び18用いることによって、ラッチ回路10の初期状態とNOR回路15及び16の寄生容量との影響を抑制することが出来る。言い換えると、第4実施形態に係るコンパレータ回路1は、NOR回路15及び16の寄生容量により生じるノイズを、NOR回路17及び18の寄生容量により生じる逆方向のノイズによって相殺することが出来る。
【0064】
これにより、本実施形態に係るラッチ回路10を用いたコンパレータ回路1は、第1実施形態と同様に、出力信号IN_N及びIN_Pの電位差が小さい場合における判定精度を向上することが出来、動作領域を拡大することが出来る。
【0065】
尚、第4実施形態においてNOR回路17及び18は、例えばNOR回路15及び16とそれぞれ同様の構造で設けても良い。この場合、NOR回路17の第1及び第2入力ノード間における寄生容量は、NOR回路15の第1及び第2入力ノード間における寄生容量と同様になり、NOR回路18の第1及び第2入力ノード間における寄生容量は、NOR回路18の第1及び第2入力ノード間における寄生容量と同様になる。これによりラッチ回路10は、NOR回路15及び16における寄生容量によるノイズと、NOR回路17及び18における寄生容量によるノイズとがほぼ同等となるため、効率的に寄生容量の影響を相殺することが出来る。
【0066】
また、第4実施形態では、NOR回路17及び18の出力ノードに何も接続していない場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、図15に示すようにNOR回路15及び16の出力と、NOR回路17及び18の出力とを同様の構造にしても良い。図15は、第4実施形態の変形例に係るラッチ回路10の回路構成であり、NOR回路における出力部のより詳細な回路構成が示されている。尚、図15では、各種配線の配線抵抗及び容量が表示されている。
【0067】
図15に示すように、NOR回路15〜18の出力ノードは、それぞれ出力部40〜43に対応している。出力部40〜43は、第1実施形態で図10を用いて説明した出力部40〜43と同様である。これにより、NOR回路17及び18の出力部における配線抵抗及び容量を、NOR回路15及び16の出力部における配線抵抗及び容量と同様にすることが出来る。従って第4実施形態の変形例に係るラッチ回路10は、NOR回路17及び18の特性をNOR回路15及び16により近づけることが出来、NOR回路15及び16の寄生容量の影響を抑制する効果を大きくすることが出来る。
【0068】
[5]変形例等
実施形態のラッチ回路10は、第1及び第2NAND回路<図1、11&12>、並びに第1及び第2容量素子を含む<図1、C1&C2>。第1NAND回路は、第1入力ノードに第1信号<図1、SET>が入力される。第2NAND回路は、第1入力ノードに第2信号<図1、RST>が入力され、第2入力ノードが前記第1NAND回路の出力ノードに接続され、出力ノードが前記第1NAND回路の第2入力ノードに接続される。第1容量素子は、一端が第1NAND回路の第1入力ノードに接続され、他端が第1NAND回路の出力ノードに接続される。第2容量素子は、一端が第2NAND回路の第1入力ノードに接続され、他端が第2NAND回路の出力ノードに接続される。
【0069】
これにより、動作領域を拡大することが可能なラッチ回路及びコンパレータ回路を提供することが出来る。
【0070】
尚、上記実施形態では、ラッチ回路10と増幅回路20との組み合わせによってコンパレータ回路1を構成した場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、コンパレータ回路1を構成する場合に、増幅回路20を設ける替わりに、ラッチ回路10に入力する2つの入力信号をそれぞれ他の回路から入力するようにしても良い。
【0071】
尚、上記実施形態では、ラッチ回路10及び増幅回路20を組み合わせたコンパレータ回路1について説明したが、ラッチ回路10の用途はこれに限定されない。例えば、ラッチ回路10は、他の半導体回路に対しても利用することが可能である。
【0072】
尚、上記実施形態では、ラッチ回路10がNAND回路又はNOR回路により構成される場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、第1及び第2実施形態で説明したラッチ回路10におけるNAND回路は、AND回路及びNOT回路の組み合わせにより構成されても良い。同様に、第3及び第4実施形態で説明したラッチ回路10におけるNOR回路は、OR回路及びNOT回路の組み合わせにより構成されても良い。このように上記実施形態は、入力及び出力する信号の論理状態が変わらなければ、あらゆる論理回路の組み合わせを適用することが可能である。
【0073】
尚、第2及び第4実施形態で説明した出力部42及び43の回路構成は、これに限定されない。例えば、出力部42及び43をそれぞれ、出力部40及び41の途中まで似せた回路構成にしても良い。具体的には、NAND回路13及び14、又はNOR回路17及び18に対して、出力配線に対応するダミー配線のみを設けても良い。このような場合においても、NAND回路13及び14の特性をNAND回路11及び12に近づけることが出来、同様にNOR回路17及び18の特性をNOR回路15及び16に近づけることが出来るため、ラッチ回路10における寄生容量の影響を抑制することが出来る。
【0074】
尚、本明細書において“接続”とは、電気的に接続されていることを示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…コンパレータ回路、10,30…ラッチ回路、11〜14…NAND回路、15〜18…NOR回路、C1〜C4…容量素子、20…増幅回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15