特許第6730266号(P6730266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ グリーソン ワークスの特許一覧

<>
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000002
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000003
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000004
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000005
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000006
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000007
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000008
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000009
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000010
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000011
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000012
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000013
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000014
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000015
  • 特許6730266-多回転刃部を持ったアキシャルホブ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730266
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】多回転刃部を持ったアキシャルホブ
(51)【国際特許分類】
   B23F 21/16 20060101AFI20200716BHJP
   B23F 5/22 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   B23F21/16
   B23F5/22
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-518124(P2017-518124)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公表番号】特表2017-534472(P2017-534472A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015053111
(87)【国際公開番号】WO2016054146
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月12日
(31)【優先権主張番号】62/058,719
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイ.シュタットフェルト
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−237131(JP,A)
【文献】 特開2011−218455(JP,A)
【文献】 特開2014−039971(JP,A)
【文献】 特開2012−166336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車および他の歯付き物品を機械加工するためのアキシャルホブであって、前記アキシャルホブは円筒形状であって、
ある長さと、ある直径と、軸線方向に対向する一対の端部とを具え、回転軸線が前記ホブの長手方向に延在すると共に前記軸線を中心に回転でき、
前記ホブを取り巻いて設けられた複数の刃部を具え、前記刃部は前記軸線を基準とする第1のねじれ角によって画成された第1の方向に配置され、
それぞれの前記刃部はすくい面を含み、すべてのすくい面は前記軸線方向に対向する一対の端部の一方に向けて配置されており、
前記すくい面は、前記第1のねじれ角によって画成された第1のつる巻き線に対して直交している切削最前面を形成することを特徴とするアキシャルホブ
【請求項2】
前記回転軸線に対して直交する線を基準とする第2のねじれ角によって画成された第2の方向に配置される前記刃部をさらに具えていることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルホブ。
【請求項3】
前記第1の方向および前記第2の方向が相互に直交していることを特徴とする請求項に記載のアキシャルホブ。
【請求項4】
前記第2のねじれ角がゼロ度に等しいことを特徴とする請求項2に記載のアキシャルホブ。
【請求項5】
前記ホブが有する刃部は、その周縁を中心としてそのそれぞれを設けた複数の切削ディスクを具え、前記切削ディスクは、前記軸線方向に連続的に設けられると共に相互に回転配置され、それによってすべてのディスクの前記刃部が前記回転軸線を基準とする第1の方向に配置されて前記第1のねじれ角を規定するように集合的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルホブ。
【請求項6】
それぞれのすくい面が左の刃形および右の刃形を具えていることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルホブ。
【請求項7】
前記左の刃形および前記右の刃形は、それぞれの形状がインボリュートの形態にあることを特徴とする請求項6に記載のアキシャルホブ。
【請求項8】
前記左右の刃形に等しい面すくい角をさらに具えていることを特徴とする請求項6に記載のアキシャルホブ。
【請求項9】
それぞれのすくい面が交換可能な切削ブレードに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルホブ。
【請求項10】
アキシャルホブを用いて歯車素材から歯車を製造する方法であって、前記歯車素材は回転軸線を有し、前記方法は、
アキシャルホブを用意し、前記アキシャルホブが円筒形状であって、ある長さと、ある直径と、軸線方向に対向する一対の端部と、前記ホブの長手方向に延在する回転軸線であって前記アキシャルホブがこの軸線を中心に回転できる回転軸線と、前記ホブを取り巻いて設けられた複数の刃部とを具え、前記刃部が前記回転軸線を基準とした第1のねじれ角によって規定される第1の方向に配置され、それぞれの前記刃部がすくい面を含み、すべてのすくい面が前記軸線方向に対向する一対の端部の一方に向けて配置されることと、
前記ホブおよび前記歯車素材をこれらのそれぞれの回転軸線を中心にあらかじめ設定された比率にて回転することと、
前記アキシャルホブの回転軸線を前記歯車素材の軸線を基準とする取付角で配置することと、
前記ホブを前記歯車素材の回転軸線と平行な送り方向に前記歯車素材の外面を横切って動かすことと
を具えており、
前記すくい面は、前記第1のねじれ角によって画成された第1のつる巻き線に対して直交している切削最前面を形成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2014年10月2日に提出された米国仮特許出願第62/058719号の利益を請求し、これによりその開示全体が参照することによってここに組み入れられる。
【0002】
本発明は、円筒体をらせん形状に取り囲んで設けられる歯を持った切削工具に関する。切削最前面は、つる巻き線に対して直交している。
【背景技術】
【0003】
円筒形ホブは、平歯車や、はすば歯車およびウォーム歯車の如き、円筒外歯車の製造のために用いられる。円筒状のホブ切り工具を使って内歯車を製造することは、中心線に対して左右を切り取るために可能ではない。円筒形ホブの歯形は、製造される部分の圧力角とモジュール(歯丈および間隔)とを反映した台形であり、「基準歯形」として知られている。この基準歯形は、軸平面(例えば図1の水平面)におけるホブの中心を通る面で観察されることができる。平歯車を製造する場合のホブおよび被加工物の軸線方向は、直交しているか、あるいはある角度だけわずかに傾けられており、これはホブの歯の進み角に対して同じか、または同様な大きさである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
はすば歯車の場合、ホブの軸線は、ホブの進み角の(進み方向に依存した)可能な増減と共にねじれ角の値だけ被加工物の軸線に対して傾けられている。ホブの一回転(一条ホブの場合)は、1ピッチだけ「G」方向に仮想創成ラックの移動を必要とする。例えば、円筒状被加工外歯車がホブに対して仮想創成ラックの反対側に配される場合であって、この被加工歯車が仮想創成ラックと「噛み合わされる」場合、結果として、ホブはこれが回転する(方向F)と同時に被加工歯車素材にインボリュート歯を切削しよう。被加工歯車は、それぞれホブ(一条ホブ)の回転中に1ピッチ回転しなければならない。創成ラックはホブが回転すると同時に「G」方向に移動しなければならないので、被加工歯車もまた、インボリュート歯形を順に創成し、また被加工歯車の周囲を加工して被加工歯車の周辺にすべての歯(溝)を切削するため、「C」方向に回転する必要があろう。
【0005】
形削りは、円筒形のピニオン形状カッターが軸線方向にストロークする(図2のV)と同時に、これが外側または内側の被加工物と噛み合わされる方法である。すべての前進ストロークが材料を除去する一方、このストロークと同時に形削りカッターと被加工物との間の連続する割り出し回転が行われる。形削りカッターが1ピッチ(回転Sk)回転すると同時に創成ラックが「G」方向に1ピッチ移動し、そして被加工歯車が(図2中の)回転方向「C」に1ピッチ回転する。すべての後退ストロークは非生産的であり、形削りを幾分遅い作業にする。形削りは、(ホブ切りではできない)内歯車や、あるいは(同様にホブ切りではしばしばできない)機械加工される歯の端部の後方にオーバートラベルのための遊隙なしを可能にする歯車を機械加工する場合、その強みを有する。
【0006】
パワースカイビングは、被加工物と刃部を周辺に持つディスク形状のカッターとの間の相対運動を利用した方法である。この相対運動は、被加工物とカッターとの間の取付角(図3中の軸角度Σを参照のこと)により作り出される。刃部が被加工物の溝に噛み合わされると同時にカッターと被加工物とが回転して図3中の速度VtoolおよびVworkを作り出す。これら2つの周速度の間の差が切削速度Vcutとして用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒体をらせん形状に取り囲んで設けられる刃部を持ったアキシャルホブに関する。その切削最前面は、つる巻き線に対して直交している。再研削可能なブレード厚みは、つる巻き線のリード方向(例えば図4)に向けられている。工具が回転すると同時に有効な切削最前面は、1つのブレードから、回転方向に依存して前進または後退位置にある次へと変化する。しかしながら、この回転は、個々のブレードに切り屑除去動作を与えるのではなく、次に続くブレードを前進または後退個所、例えば機械加工される歯溝に位置させるだけであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】円筒形ホブと仮想創成ラックと被加工歯車との三次元画像を示す。
図2】形削りカッターと仮想創成ラックと被加工歯車との三次元画像を示す。
図3】パワースカイビングカッターおよび内歯車の向きを示す正面図および平面図である。
図4】多回転刃部を持ったアキシャルホブの三次元図面を示す。
図5a】ねじれアキシャルホブの端面図を示す。
図5b】ねじれアキシャルホブの側面(長手方向)図を示す。
図6】進み角ゼロ度のアキシャルホブの三次元図面を示す。
図7】組み立て式マルチディスクホブの三次元描写を示す。
図8】組み立て式スティックブレードホブの三次元描写を示す。
図9a】アキシャルホブを用いた外歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。唯一の送り方向が径方向の切り込みである。
図9b】アキシャルホブを用いた外歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。その送りはホブの軸線方向である。
図10】アキシャルホブを用いた外歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。ホブの送り方向は被加工歯車の軸線方向である。
図11】アキシャルホブを用いた内歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。ホブの送り方向は径方向である。
図12】アキシャルホブを用いた内歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。ホブの送り方向はホブの軸線方向である。
図13】アキシャルホブを用いた内歯車のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示す。ホブの送り方向は被加工歯車の軸線方向である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この明細書で用いた「発明」,「この発明」および「本発明」という用語は、この明細書の内容のすべてと下の特許請求の範囲のすべてとを概括的に参照するように意図される。これらの用語を含む記述は、ここに記述された内容を限定するか、または下の特許請求の範囲のすべての意味または範囲を限定するように理解されるべきではない。さらにまた、この明細書は、この出願の何れか特定の部分や、段落,記述または図面における何らかの請求によって包含される内容を記述するか、または限定することを求めていない。この内容は、明細書全体と、すべての図面と、下の特許請求の範囲全体を参照することによって理解されるべきである。本発明は、他の構成を種々の方法で実践または実行することができる。同様に、ここで用いた言い回しおよび用語が説明の目的のためであって、限定するものとして見なされるべきではないと解釈される。ここでの「含む」や「有する」および「具えている」ならびにこれらの変化形の使用は、この後に列挙される部材およびそれらの均等物を追加の部材と同様に包含するように意図される。
【0010】
ここで、この発明の詳細がほんの一例としてこの発明を例示する添付図面を参照しつつ論じられよう。図面中、類似の機能または構成要素が類似の参照符号によって参照されよう。
【0011】
図面の説明中に、上,下,上方,下方,後方,底,上端,前,後ろなどの如き方向に対して参照が以下でなされる可能性があるけれども、便宜的に(普通に見られるように)図面に対して参照がなされる。これら方向は、指定されない限り、文字通りに取られるように意図したり、あるいは何らかの形で本発明を限定したりしない。
【0012】
図1は、円筒形ホブ2および仮想創成ラック4の三次元画像を示す。ホブは、図1に示す単純な場合、ホブの回転軸線を含む水平面にて創成ラックの歯形(この図面はラックの上端歯形面を示している)をシミュレートする。ホブが(「F」で示すように)回転する場合、創成ラックは「G」方向に移動しよう。一条ホブの場合、一回転がラックをG方向に一ピッチ移動させよう。図1にてラックの歯幅を持つ歯車を切削するため、ホブは(ホブの軸線を含む)水平面がラックの底歯形面に達するまで「E」方向に移動しなければならない。それで、ホブの歯は前面が軸平面と一致する場合、その前面にラック歯形を描く。一ピッチずつラックを移動させるホブのそれぞれの回転もまた、一ピッチずつ被加工物6の回転(C回転)を要求する。このような場合において、すべての主切削力は、ホブに対して接線方向にあって、ホブを回転するために必要とされるトルクへと直接変えられる。
【0013】
図2は、形削りカッター8および仮想創成ラックの三次元画像を示す。形削りカッターがその軸線を中心に(SKで示されるように)回転すると同時に、創成ラックは「G」方向に移動し、形削りカッターの歯のインボリュート歯形はラックの台形基準歯形を形成しよう。記述されたカッターの回転およびラックの移動は、ラックの歯形を形成しようが、これは如何なる切削動作をももたらさないであろう。形削りカッターの歯は、径方向平面(形削りカッターの軸線に対して直交)にて直線歯形のラック歯を形成するために必要とされるインボリュート歯形を有する。形削りカッターの軸線方向のストローク動作「V」は、切削動作を導入するために不可欠であり、また歯車の歯幅を切削するためにも必要である。ストロークの長さがラックの幅と等しい場合、その場合には図2に示したものと同じ歯幅を持つ円筒歯車を切削することが可能である。創成ラックが例えば一ピッチだけ「G」方向に移動すると同時に、このラックと噛み合わされる被加工物もまた、一ピッチだけ回転(回転C)しなければならない。図2に示す場合において、すべての主切削力は、形削りカッターの軸線方向に向けられる。
【0014】
図3は、パワースカイビングカッター10および内歯車12の向きを示す正面図および平面図である。カッターが回転すると同時に、その歯のインボリュート歯形は、仮想創成ラック(図3に示さず)の直線歯形を形成する。カッターの回転は、創成ラックを(図2と同じに)横方向に移動させる。創成ラックの歯幅を包含すること(切削される円筒歯車の歯幅と等しい)は、被加工歯車の軸線方向(Y4,Z4)へのカッターの送り運動を必要とする。
【0015】
図2の形削りカッター8とは対照的に、その切削動作は、軸線方向のストロークによってではなく、その代わりにスカイビングカッター10と被加工歯車12との間の(両方の同期回転中の)相対運動によって引き起こされ、被加工歯車の歯のリード方向に向けられる。それで、切削速度Vcutは、カッターのRPM(すなわち角速度ωtool)と取付角Σとの関数:
Vcut=ωtool・sinΣ
である。
【0016】
図4は、ホブの軸線Tを中心として回転できる多回転刃部16を持ったアキシャルホブ14の三次元図面を示す。ホブ形カッター14の歯(すなわち切削ブレード)16は、第1のつる巻き線方向H1に(すなわち第1のねじれ角に)向けられ、ブレードが円筒体19の周縁にある第2つる巻き線方向H2に(すなわち第2のねじれ角に)沿って一まとまりにされ(図5aおよび図5bを参照のこと)、これは円筒形ホブの長手方向に沿ってブレードを螺旋状に巻き付ける作用を持つ。ホブ14は、軸線方向に対向した一対の両端である第1の端21と第2の端23との間の所定の軸線方向長さに達している。当業者によって理解されるように、アキシャルホブの実際の長さは、特定のホブ盤や、被加工物の寸法,製造パラメーターなどの如き要因に基づいて決定される。図5(b)に見られるように、第1のねじれ角はホブの軸線Tを基準にして測定され、第2のねじれ角はホブの軸線Tに対して直交する線を基準にして測定される。第1のつる巻き線は、円筒歯車のねじれ角と類似している。第2のつる巻き線は、円筒体19の幅に沿ってブレードを通す一定の進み角(すなわち第2のねじれ角)を有する。第2つる巻き線の方向は、第1のつる巻き線の方向に対して好ましくは直交し、これは左右の刃形に(ゼロ度の)等しい面すくい角を持ったブレード前面18(すなわちすくい面)を作り出そう。ブレードは、製造される円筒歯車の歯直角歯形に由来したインボリュート歯形(図4および図5a)を好ましくは有する。
【0017】
ブレード16は、ホブ寿命の終りまでブレードの厚みを減らす磨滅される刃であってよい。それで、ブレード16の刃先は、対向する両端の一方に概ね面し、これは図5(a)および図5(b)に関し、端21である。それで、切削方向は、概ね軸線方向Tにあり、すなわち軸線Tを基準にして何らかの規定された角度にある。このホブは、ブレード厚み方向に研摩される前面であるので、それぞれ研摩された後にマシンセッティングにて考慮しなければならないホブの外径が減じられる。この外径は、このような種類のブレードにおける上端面逃げおよび側面逃げがそれぞれのブレードを上端面から研削している間に、製造機械の径方向歯形逃げ動作によって作り出されるという事実のために減じられる。実際のホブ径は、反対の位置にある2つのブレード(例えば20,22)の歯先面(すなわち上端面)から測定される。
【0018】
工具が回転する間、有効な切削前面は、一方のブレードから、前進または後退位置での回転方向に応じた次へと変化する。しかしながら、回転のみが個々のブレードに切り屑除去動作を与えるのはなく、前進または後退位置での、例えば機械加工される歯溝での次に続くブレードの位置を特定するだけであろう。
【0019】
アキシャルホブをパワースカイビング加工にて用いる場合、その場合には、工具の軸線と被加工物の軸線とを相互に傾けるようにしなければならない。従来のパワースカイビングと同様に、切り屑除去表面速度は、この軸線の傾きによって作り出されなければならない(図3中の軸角度Σを参照)。スカイビングでの主切削力は、被加工歯車の軸線方向に向けられる。
【0020】
図5(a)は、軸線方向前端面図を示し、図5(b)はねじれアキシャルホブ14の(長手方向)側面図を示す。第1のつる巻き線(ブレードの向き)および第2のつる巻き線(ブレードの前面位置)の方向が図5(b)に示されている。第2のねじれ角まで傾斜させた薄い砥石車を用い、このようなホブの研削を行うことができる。研削中に、ホブは回転することができると同時に、砥石車はホブの軸線T方向の動作を持ったつる巻き線を可能にする。
【0021】
砥石車の動作=(山形フライスの速度)×(カッターのピッチ半径)
前述したように、ブレード16は、ホブ寿命の終りまでブレードの厚みを減らす磨滅される刃であってよい。ブレードの厚み方向において、外径の大きさ(反対の位置にある2つのブレードの歯先面の間を測定される)は、上端面の逃げおよび側面の逃げをもたらす径方向歯形の逃げのために減少する。従って、ホブは研削される前面であるので、その直径は減じられ、これは、それぞれ研削後のマシンセッティングにおいて考慮されなければならない。
【0022】
ホブは、リング状ブレードの向き(図6)と共に製造されることができ、これはブレードがつる巻き線に沿って方向付けられるのではなく、事実上、円である(第2のねじれ角がゼロである)ことを意味する。個々のブレードは、ヘリカルホブと同様に第1のつる巻き線方向に向けられている。切削ブレードを持つホブ円筒体全体を構成するため、所定層の切削ブレードリングがホブのベース円筒体に方向を定めて配される。
【0023】
図6は、軸線方向の進み角がゼロのホブ30の三次元図面を示している。この実施形態に関し、第2のねじれ角がホブの軸線Tに対して直交するホブのリードの方向H2を結果としてもたらすゼロであることを除き、直前の図4および5の記述が当てはまる。ホブ30が単一部材の材料(例えば高速度鋼または超硬合金)から製造され、そして第1のつる巻き線方向に対して直交する前面の表面32を再研摩しなければならない場合、この場合には、それぞれのブレード(歯)34は、周囲のブレードとの干渉を回避するように、小径の砥石車を用いてシングルセットアップにて研削されなければならない。
【0024】
図7は複数の切削ディスク42を具えたアキシャルホブ40の三次元描写を示している。4枚のディスクが示されているけれども、本発明は2枚以上の任意の数のディスクを意図している。組み立て式ディスクホブは、進み角ゼロのホブ30(図6)と同じ機能を有している。再研削のため、あるいは歯が破損または欠損した場合に分解することができ、単一のディスクを交換することができる。組み立て式マルチディスクホブの製造は、超硬合金または高速度鋼で作られるより小さな個々の部品のため、進み角ゼロのホブの製造ほど複雑ではない。組み立て式ディスクの角度方向は、ブレードが1つのディスクから次へと第1のつる巻き線を正確に従うようにしなければならない。
【0025】
図7のアキシャルホブは、極めて費用効率の高いアキシャルホブを作成する方法を表している。このようなホブは、あらゆるオーバートラベル状態のみならず被加工物の幅を考慮して望ましい仕様へと組み立てられることができるので、極めて融通性がある。単一のディスクを製造することは、むくのHSSまたは超硬合金の部材からホブ全体を製造するよりもさらに費用効率が高い。不均一な摩耗や、切刃の欠け、あるいは歯の破損の場合であっても、ディスクを(切削方向に沿って)配列し直すか、単一のブレードに交換することができる。ブレードの回転方向が
(工具と被加工物との間の傾き)・(ディスク隙間距離)/(ホブ有効径)・180°/π
だけ変えられるように、多数のディスクカッターを組み立てなければならない。
【0026】
図8は、スティックブレード54がそれぞれ装備される複数(図示では4つ)の単一ディスクカッター52を具えたアキシャルホブ50の三次元描写を示している。スティックブレードは、取り外されて個々に再研摩されることができる。単一ディスクやむく型ホブと比較すると、低コストにて破損したブレードを交換することができる。組み立て式ディスクの角度方向は、ブレードが1つのディスクから次へと第1のつる巻き線(すなわちブレードの向き)を正確に従うようにしなければならない。
【0027】
アキシャルホブ50はまた、1つ以上の外周カッターを相互に背後に組み立ててリード角ゼロのホブを作成することにより、費用効率の高いモジュール式のアキシャルホブを作成する方法を提示する。アキシャルホブ50は、あらゆるオーバートラベル状態のみならず被加工物の幅を考慮して望ましい仕様へと組み立てられることができるので、極めて融通性がある。不均一な摩耗や、切刃の欠け、あるいは歯の破損の場合であっても、単一のブレードに交換することができる。ブレードの回転方向が
(工具と被加工物との間の傾き)・(ディスク隙間距離)/(ホブ有効径)・180°/π
だけ変えられるように、多数のカッター52を組み立てなければならない。
【0028】
切り屑除去動作を引き起こすため、本発明のアキシャルホブを形削り加工における形削りカッターのように用いることができる。この利点は、軸線方向のストローク中に、ただ1回のストロークにて全溝深さの切削を可能にする溝深さ方向での切り込み動作を導入することができることである。インボリュート歯形を創成するため、カッターと被加工物との間の転がり動作が依然として必要とされる。1つの被加工物の回転の後、この被加工物は仕上げられるか、または荒仕上げされる。高品質の歯車および高い表面仕上げが要求される場合、仕上げストロークを伴う被加工物の第2の回転を与えることができる。個々の仕上げストロークをそれぞれに伴う追加の被加工物の回転もまた、意図される。仕上げのため、カッターの位置を軸線方向に動かして仕上げのためにだけ用いられる工具の新たな部分を利用することができる。
【0029】
切り屑除去動作を引き起こすため、アキシャルホブをブローチのように用いることができる。このホブは、(形削りと同様な)ブローチストロークを行うと同時に、ただ1回のストロークにて円筒内歯車が仕上げられるように、ホブが全歯丈に設定されて(被加工物に対して正しい割合で)回転する。高い表面仕上げおよびより小さな切削力のため、数回のストロークにて歯車を仕上げることができる。半ブローチ加工の場合、歯はホブの一端からホブの他端まで互い違いに配されるべきである。それで、ホブの直径はホブの切削が始まる側(前端)からホブの切削が終わる側(後端)まで増大する。
【0030】
アキシャルホブをパワースカイビング加工にて用いる場合、工具の軸線と被加工物の軸線とを傾けなければならない。従来のパワースカイビングと同様に、切り屑を除去する表面速度は、この軸線の傾きによって作り出されなければならない(図3を参照のこと)。
【0031】
本発明のアキシャルホブは、歯車形削り盤や、パワースカイビングマシン,多軸自由形式の傘歯車およびハイポイドギヤマシン(例えば米国特許第6712566号)および5軸マシニングセンタを含むが、これらに限定されない機械での歯車の製造に適している。
【0032】
実施例1
アキシャルホブは、被加工物の歯幅の中間にホブおよび被加工物の軸線の交点(被加工物の外側にある)を有して配され、工具は被加工物の径方向への送りにより被削材へと(内側の方に)送り込まれる。のど部を有する創成された「円筒状の」歯車が形成される。ホブのブレード先端の鼓形円筒体は、被加工歯車の中心線に対して歯幅の中間にて最短距離を有する(図9(a)を参照のこと)。この距離は、円筒状の被加工歯車の両端を向く両方向で増大し、従って鼓形、すなわちのど付き歯車を形成する。
【0033】
図9(a)は、アキシャルホブ62を用いた外歯車60のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示している。その送り方向は、径方向の切り込みである。創成された円筒外歯車の構造は、ピッチ要素におけるのど部を示している。このピッチ要素は円筒体状ではなく双曲面である。
【0034】
実施例2
アキシャルホブは、被加工物の歯幅の中間にホブおよび被加工物の軸線の交点を有して配され、このホブは、被加工物を処理するために被加工歯車の外側へとその軸線に沿って移動させられる。この実施例における移動は、切削工具の軸線方向に与えられる軸線方向の送り運動である(図9(b)を参照のこと)。また、この実施例において、創成される「円筒状の」歯車はのど部を有しよう。ホブのブレード先端の鼓形円筒体は、被加工歯車の中心線に対して歯幅の中間にて最短距離を有する。この距離は、のど部を形成する円筒状の被加工歯車の両端を向く両方向に従って増大する。
【0035】
図9(b)は、アキシャルホブ66を用いた外歯車64のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示している。送りはホブの軸線方向である。軸線方向の送り方向に関し、創成される外円筒歯車の結果として生ずる構造は、ピッチ要素でののど部である。このピッチ要素は円筒状ではなく双曲面である。
【0036】
実施例3
図10は、アキシャルホブ72を用いた外歯車70のパワースカイビングのための工具と被加工物との間の向きを示している。ホブの送り方向は、被加工歯車70の軸線Wの方向である。この送り方向に関し、ピッチ要素の完全なロールアウトが達成される。結果として生ずるピッチ要素は円筒状である。
【0037】
ホブ72は、軸線の交点(被加工物の外側にある)が被加工歯車70の一方側の面から周知の距離にあるように配され、軸線方向の送り動作が被加工物の軸線の方向に与えられる。結果として、ホブのブレード先端の鼓形円筒体と被加工歯車の軸線との間の最短距離が歯幅に沿って広がる一方、送り運動がホブを被加工歯車の軸線の方向に移動する。被加工物の回転とホブの回転との間の比iは、
i=Zhob/Zwork
から計算される。ここで、
Zhob=ホブの「スタート」ブレードの数
Zwork=被加工物の歯数
RPMhob=RPMwork・i
正しいインボリュート歯形と正しい進み角とを創成するため、被加工物(またはホブ)は、付加された差回転Δφを実施しなければならない。ホブのための差回転Δφは、
Δφ=2・(軸線方向送り量)・sin(被加工物のねじれ角)/(ピッチ円径)
によって計算される。
【0038】
この差回転Δφは、被加工歯車が平歯車の場合にゼロとなる。この場合、創成されるピッチ要素は円筒状である。
【0039】
図11図13(実施例4〜6)は、アキシャルホブを用いた内歯車のパワースカイビングのためのアキシャルホブと被加工物との間の向きを示す。ホブの送り方向は、アキシャルホブの方向、または被加工歯車の軸線方向の何れかにおいて径方向である。径方向のプランジおよびホブの軸線に対して軸線方向の送りは、双曲線のピッチ要素(のど部ピッチ要素)を創成する。このような内歯車は、交差した軸線構成に関して用いられることができ、内歯車は円筒状のピニオンと噛み合う。
【0040】
実施例4
図11に関し、ホブ80が被加工物の径方向(外側に向けて)被加工物へと送られ、アキシャルホブ80は、ホブ(カッター)の軸線と被加工物の軸線との交点を被加工物82の歯幅の中間(被加工物の内側にある)に有して配される。のど付き内歯車が作成される。
【0041】
実施例5
図12に関し、アキシャルホブ86は、ホブ(カッター)の軸線と被加工物の軸線との交点が被加工歯車88の一方側にある面(被加工物の内側にある)から周知の距離にあるように位置決めされ、軸線方向送り動作がホブの軸線方向に与えられる。のど付き内歯車が作成される。
【0042】
実施例6
図13に関し、アキシャルホブ90は、ホブおよび被加工物の軸線の交点が被加工歯車92の一方側の面から(被加工物の内側に対して)周知の距離にあるように配され、軸線方向の送り動作が被加工物の軸線方向に与えられる。この場合、被加工歯車はホブの2つの端によって切り取られ、被加工歯車は破壊されよう。
【0043】
被加工歯車の軸線方向に送りを与えることは、歯が除去される区域に(円筒体素材の谷底に結果として生ずる)内歯車を切り取ろう。この切り取りは、ホブの長手方向がより大きくなるに連れて、より大きくなる。
【0044】
本発明が好ましい実施形態に関して記述されているけれども、本発明はこれらの詳細に限定されないことを理解されるべきである。本発明は、添付した特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、当業者らにとって明白であるような内容が属する変更を含むように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13