特許第6730412号(P6730412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730412
(24)【登録日】2020年7月6日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】3次元物体の生成
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20200716BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200716BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20200716BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20200716BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200716BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20200716BHJP
【FI】
   B29C64/153
   B33Y30/00
   B29C64/209
   B29C64/393
   B33Y50/02
   B29C64/264
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-228697(P2018-228697)
(22)【出願日】2018年12月6日
(62)【分割の表示】特願2017-538601(P2017-538601)の分割
【原出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2019-55596(P2019-55596A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス,ベルナルド,エイ
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ヤコブ,ティー
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィク,マイケル,エイ
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−533480(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0180957(US,A1)
【文献】 特開2012−30389(JP,A)
【文献】 特開2004−114685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/153
B29C 64/209
B29C 64/264
B29C 64/393
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元物体を生成するためのシステムであって、
構築材料の層の部分上へ、第1の濃度で及び前記第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤を選択的に供給するための少なくとも1つの薬剤分配器と、
3次元物体を表すデータを取得し、前記合体剤が前記第2の濃度で供給されるべき部分を追加するために前記データを変更し、変更されたデータから導出された個々の第1及び第2のパターンで前記層の個々の第1及び第2の部分上へ前記第1及び第2の濃度で前記合体剤を選択的に供給するように、前記変更されたデータに従って前記少なくとも1つの薬剤分配器を制御するためのコントローラとを含み、エネルギーが前記層に印加された際に、前記構築材料が前記第1のパターンに従って前記3次元物体のスライスを形成するために合体および凝固することができるようになっており、前記第2の部分が前記変更されたデータの前記追加された部分に対応し且つ第1の部分の境界に近接しており、前記第2の部分における前記合体剤の存在により、前記エネルギーが印加された際に、少なくとも一部の熱が前記第1の部分から流出することを防止することができる、システム。
【請求項2】
前記第2の濃度は、前記エネルギーが印加された際に前記第2の部分で完全な固形化を達成するのに不十分である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記3次元物体を表すデータのデータは、閾値の厚さより大きい厚さを有する厚い部分、及び前記閾値の厚さより小さい厚さを有する薄い部分を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、(i)前記3次元物体を表すデータの境界を侵食することによって浸食データを生成し、(ii)前記薄い部分を識別するために、前記3次元物体を表すデータを前記浸食データと比較し、(iii)前記識別された薄い部分を拡張することにより、前記変更されたデータを生成する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記浸食する距離は、前記閾値の厚さの半分に等しい、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記拡張する距離は、前記薄い部分の厚さに基づいて決定される、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の部分は、前記薄い部分の境界、又は前記3次元物体のスライスの全周囲境界を取り囲む、請求項3〜6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の濃度は、前記薄い部分の厚さに基づいて決定される、請求項3〜7の何れか1項に記載のシステム。
【請求項9】
構築材料の層を供給し、
3次元物体を表すデータを取得し、前記データのスライスデータが厚い部分と薄い部分を含み、
合体剤が第2の濃度で前記構築材料の層に供給される部分を追加するために前記スライスデータを変更し
前記変更されたスライスデータから導出された個々の第2及び第1のパターンで前記構築材料の層の個々の第2及び第1の部分上へ前記第2の濃度で及び前記第2の濃度より高い第1の濃度で前記合体剤を選択的に付着するように、前記変更されたスライスデータに従って少なくとも1つの薬剤分配器を制御し、前記第2の部分が、前記変更されたスライスデータの前記追加された部分に対応し、且つ前記第1の部分の境界に近接し、
前記第1のパターンに従って前記3次元物体のスライスを形成するように前記構築材料を合体および凝固するためにエネルギーを印加することを含み、
前記第2の部分における前記合体剤の存在により、前記エネルギーが印加された際に、少なくとも一部の熱が前記第1の部分から流出することを防止する、方法。
【請求項10】
前記厚い部分の厚さは閾値の厚さより大きく、前記薄い部分の厚さは前記閾値の厚さより小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スライスデータを変更することは、前記スライスデータの境界を侵食することによって浸食スライスデータを生成すること、前記薄い部分を識別するために、前記スライスデータを前記浸食スライスデータと比較すること、及び前記識別された薄い部分を拡張することを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記拡張する距離は、前記薄い部分の厚さに基づいて決定される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
層毎に3次元物体を生成する積層造形システムは、3次元物体を作成するための潜在的に便利な方法として提案されている。係るシステムにより作成された物体の品質は、使用される積層造形技術のタイプに応じて大きく異なる可能性がある。
【0002】
幾つかの例は、以下の図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1a】幾つかの例による、3次元物体を生成するためのシステムを示す図である。
図1b】幾つかの例による、方法を示す流れ図である。
図1c】幾つかの例による、持続性コンピュータ可読記憶媒体を示すブロック図である。
図2】幾つかの例による、積層造形システムの簡易等角図である。
図3】幾つかの例による、3次元物体を生成する方法を示す流れ図である。
図4a】幾つかの例による、3次元物体を表すデータを示す図である。
図4b】幾つかの例による、3次元物体を表すデータを示す図である。
図4c】幾つかの例による、3次元物体を表すデータを示す図である。
図5a】幾つかの例による、構築材料の層の一連の垂直断面図を示す図である。
図5b】幾つかの例による、構築材料の層の一連の垂直断面図を示す図である。
図5c】幾つかの例による、構築材料の層の一連の垂直断面図を示す図である。
図5d】幾つかの例による、構築材料の層の一連の垂直断面図を示す図である。
図6a】幾つかの例による、構築材料の層の一連の平面図を示す図である。
図6b】幾つかの例による、構築材料の層の一連の平面図を示す図である。
図6c】幾つかの例による、構築材料の層の一連の平面図を示す図である。
図6d】幾つかの例による、構築材料の層の一連の平面図を示す図である。
【0004】
詳細な説明
以下の用語は、明細書または特許請求の範囲によって記載された場合に、以下のことを意味すると理解される。単数形の「a」、「an」及び「the」は、「1つ又は複数」を意味する。用語「含む(including)」及び「有する(having)」は、用語「含む(comprising)」と同じ包括的な意味を有することが意図されている。
【0005】
幾つかの積層造形システムは、粉末または液体の構築材料のような、構築材料の逐次の層の部分の固形化処理を通じて3次元物体を生成する。生成される物体の特性は、構築材料のタイプ及び使用される固形化処理メカニズムのタイプに依存する可能性がある。幾つかの例において、固形化処理は、構築材料を化学的に凝固させるために液体の結合剤を用いて達成され得る。他の例において、固形化処理は、構築材料にエネルギーを一時的に印加することにより達成され得る。例えば、これは、合体剤を使用することを含むことができ、当該合体剤は、適切な量のエネルギーが構築材料と合体剤の組み合わせに印加された際に、構築材料を合体および凝固させることができる物質である。例えば、合体剤は、合体剤を有する構築材料の部分が合体および凝固を蒙るように、印加されたエネルギーの吸収体としての役割を果たすことができる。幾つかの例において、2014年1月16日に出願され、「GENERATING A THREE-DIMENSIONAL OBJECT」と題する国際出願第PCT/EP2014/050841号に記載されたような複数の薬剤の積層造形システムが使用されることができ、当該国際出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、構築材料の層に合体剤を選択的に供給することに加えて、合体改質剤も構築材料の層に選択的に供給され得る。合体改質剤は、合体改質剤が供給された又は浸透した構築材料の部分の合体の度合いを変更する働きをすることができる。更に他の例において、固形化処理の他の方法は、例えば数ある中でも、選択的レーザ焼結(SLS)、光重合を使用することができる。本明細書で説明される例は、上記の積層造形システム及びその適切な改作物の何れかと共に使用され得る。
【0006】
固形化処理が合体剤およびエネルギーの印加を用いて達成される例において、物体を形成するために合体剤が供給された又は浸透された構築材料により吸収されるエネルギーは、生成されている物体から離れて、且つ合体剤が供給されておらず固形化処理が意図されていない周囲の構築材料へ部分的に伝播する可能性もある。この影響は、比較的高い熱伝導率を有することができる構築材料を用いる場合に悪化する可能性があり、その理由は、これが、形成される際にそれぞれの新たに形成された層の表面の下に熱だめの形成を妨げる原因となる可能性があるからである。熱だめの熱は、生成されている物体から離れて、例えば構築材料を横方向に横切って、最も新しい層の下に、及び/又は今後の層が最も新しい層の上に付着されたらすぐに当該今後の層へと伝播する可能性がある。
【0007】
かくして、生成されている物体は、意図されているものよりも少ない熱を受け取り、それ故に意図されているものよりも少ない度合いの合体および固形化を蒙り、例えば意図された通りに完全に合体および凝固することができず、不十分な表面特性、不十分な精度、不十分な強度、又は中間層の不十分な結合のような、不十分な物体特性という結果になる。幾つかの例において、生成されている物体の薄い部分は特に、熱が当該薄い部分から離れて伝播する可能性があるので、不十分な固形化の危険性があるかもしれない。これにより、当該薄い部分が不完全に形成される可能性があり、物体が生成された後に、これら薄い部分が壊れる可能性さえある。
【0008】
従って、本開示は、例えば、良好な表面特性、良好な精度、良好な強度、及び中間層の良好な結合を含む良好な物体特性を備える物体という結果になることができる様々な例を提供する。例えば、物体の薄い部分は、正確に形成されることができ、壊れることができない。例えば、これは、凝固されるべき第1の部分に第1の濃度で合体剤を供給し、当該第1の部分を取り囲む、例えば当該第1の部分の薄い部分を取り囲む第2の部分に当該第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤を供給することにより達成され得る。第2の濃度により、第2の部分が熱くなることを可能にすることができ、その結果、第1の部分(例えば、薄い部分)から熱が流出することが防止されることができるが、第2の部分が完全な固形化を達成することを可能にするのに十分に高くなることはできない。
【0009】
図1aは、幾つかの例による、3次元物体を生成するためのシステム100を示すブロック図である。システム100は、第1の濃度で、及び第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤を構築材料の層の部分上へ選択的に供給するための少なくとも1つの薬剤分配器102を含むことができる。システム100は、生成されるべき3次元物体を表すデータから導出された個々の第1及び第2のパターンの、層の個々の第1及び第2の部分上へ第1及び第2の濃度で合体剤を選択的に供給するために少なくとも1つの薬剤分配器を制御するためのコントローラ104を含むことができ、その結果、エネルギーが当該層に印可された場合に、構築材料が、当該第1のパターンに従って3次元物体のスライスを形成するように合体および凝固することができる。第2の部分は、第1の部分の境界に近接することができる。第2の部分に合体剤が存在することにより、エネルギーが印加された際に少なくとも一部の熱が第1の部分から流出することを防止することができる。
【0010】
図1bは、幾つかの例による、方法110を示す流れ図である。112において、構築材料の層が供給され得る。114において、合体剤が、第1の濃度で層の第1の部分に選択的に付着され得る。116において、合体剤が、第1の濃度より低い第2の濃度で層の第2の部分に選択的に付着され得る。第2の部分は、第1の部分の境界の周りに配置され得る。118において、エネルギーが層に印加されることにより、第1の部分が3次元物体のスライスを形成するために合体および凝固することができる。第2の部分に合体剤が存在することにより、少なくとも一部の熱が第1の部分から流出することが防止され得る。
【0011】
図1cは、幾つかの例による、持続性コンピュータ可読記憶媒体120を示すブロック図である。媒体120は、プロセッサにより実行された場合に、生成されるべき3次元物体を表すデータをプロセッサに取得させる命令122を含むことができる。データは、第1の濃度で合体剤が供給されるべき場所を画定する第1の部分を含むことができる。媒体120は、プロセッサにより実行された場合に、第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤が供給されるべき第2の部分を含めるように、プロセッサにデータを変更させる命令124を含むことができる。第2の部分は、第1の部分の少なくとも一部を取り囲むことができる。媒体120は、プロセッサにより実行された場合に、第1の濃度で合体剤を第1の部分に供給し、第2の濃度で合体剤を第2の部分に供給するように、当該変更されたデータ(以降、変更データと呼ぶ)を用いてプロセッサに少なくとも1つの薬剤分配器を制御させる命令126を含むことができ、その結果、エネルギーが印加された際に、第1の部分が合体および凝固することができる。第2の濃度は、エネルギーが印加された際に、第2の部分において完全な固形化を達成するのに不十分とすることができる。第2の部分に合体剤が存在することにより、エネルギーが印可された際に第1の部分から熱が流出することを防止することができる。
【0012】
図2は、幾つかの例による、積層造形システム200の簡易等角図である。システム200は、3次元物体を生成するために図3の流れ図に関連して更に後述されるように動作することができる。
【0013】
幾つかの例において、構築材料は、粉末ベースの構築材料とすることができる。本明細書で使用される限り、用語「粉末ベースの材料」は、乾燥および湿った粉末ベースの材料、微粒子材料、及び粒状材料を含むことが意図されている。幾つかの例において、構築材料は、例えば約40%の空気および約60%の固体ポリマ粒子の比において、空気と固体ポリマ粒子の混合物を含むことができる。1つの適切な材料は、例えば、Sigma-Aldrich Co. LLCから入手できるNylon 12とすることができる。別の適切なNylon 12材料は、Electro Optical Systems EOS GmbHから入手できるPA 2200とすることができる。適切な構築材料の他の例には、例えば粉末金属材料、粉末複合材料、粉末セラミック材料、粉末ガラス材料、粉末樹脂材料、粉末ポリマ材料など、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。しかしながら、理解されるべきは、本明細書で説明される例は、粉末ベースの材料または上記に列挙された材料の何れかに限定されない。他の例において、構築材料は、ペースト、液体またはゲルの形態とすることができる。一例によれば、適切な構築材料は、粉末状準結晶性熱可塑性プラスチック材料とすることができる。
【0014】
積層造形システム200は、システムコントローラ210を含むことができる。本明細書で開示された動作および方法の何れかは、積層造形システム200及び/又はコントローラ210において実現および制御され得る。
【0015】
コントローラ210は、本明細書で説明された方法を実現することができる命令を実行するためのプロセッサ212を含むことができる。プロセッサ212は、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はコンピュータプロセッサ等とすることができる。プロセッサ212は、例えばチップ上の複数のコア、複数のチップにわたる複数のコア、複数のデバイスにわたる複数のコア、又はそれらの組み合わせを含むことができる。幾つかの例において、プロセッサ212は、少なくとも1つの集積回路(IC)、他の制御論理回路、他の電子回路、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
プロセッサ212は、例えば通信バスを介してコンピュータ可読記憶媒体216と通信することができる。コンピュータ可読記憶媒体216は、単一の媒体または複数の媒体を含むことができる。例えば、コンピュータ可読記憶媒体216は、ASICのメモリ及びコントローラ210の別個のメモリの一方または双方を含むことができる。コンピュータ可読記憶媒体216は、任意の電子、磁気、光または他の物理的記憶デバイスとすることができる。例えば、コンピュータ可読記憶媒体216は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックメモリ、読み出し専用メモリ、電気的消去可能ROM(EEPROM)、ハードドライブ、光ドライブ、記憶ドライブ、CD、及びDVD等とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体216は持続性とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体216は、プロセッサ212により実行された場合に、様々な例による本明細書で開示された方法または動作の何れかをプロセッサ212に実行させることができるコンピュータ実行可能命令218を格納、符号化または保持することができる。
【0017】
システム200は、支持部材204上に設けられる構築材料の逐次の層に合体剤を選択的に供給するための合体剤分配器202を含むことができる。1つの制限しない例によれば、適切な合体剤は、例えばHewlett-Packard Companyから市販されているCM997Aとして知られるインク配合物のような、カーボンブラックを含むインク型配合物とすることができる。一例において、係るインクは、追加として赤外線吸収体を含むことができる。一例において、係るインクは、追加として近赤外線吸収体を含むことができる。一例において、係るインクは、追加として可視光吸収体を含むことができる。一例において、係るインクは、追加としてUV光吸収体を含むことができる。可視光促進剤を含むインクの例は、Hewlett-Packard Companyから市販されているCM993A及びCE042Aとして知られるインクのような、染料ベースの有色インク及び顔料ベースの有色インクである。
【0018】
コントローラ210は、命令218に従って、供給された構築材料の層に対する合体剤の選択的な供給を制御することができる。
【0019】
薬剤分配器202は、サーマルインクジェットプリントヘッド又は圧電インクジェットプリントヘッドのようなプリントヘッドとすることができる。プリントヘッドはノズルのアレイを有することができる。一例において、市販のインクジェットプリンタに一般に使用されているようなプリントヘッドが使用され得る。他の例において、薬剤は、プリントヘッドを介してではなくて、噴射ノズルを介して供給され得る。同様に他の供給機構も使用され得る。薬剤分配器202は、液体のような適切な流体の形態である場合に合体剤を選択的に供給する、例えば付着するために使用され得る。
【0020】
合体剤分配器202は、合体剤の供給部を含むことができるか、又は合体剤の別個の供給部に接続可能とすることができる。
【0021】
薬剤分配器202は、液体のような適切な流体の形態である場合に合体剤を選択的に供給する、例えば付着するために使用され得る。幾つかの例において、薬剤分配器202は、薬剤分配器202が液滴を選択的に吐出することができるノズルのアレイを有することができる。幾つかの例において、各液滴は、1滴当たり約10ピコリットル(pl)程度とすることができるが、他の例において、薬剤分配器202はより高い又はより低い液滴サイズを供給することができる。幾つかの例において、薬剤分配器202は様々なサイズの小滴を供給することができる。
【0022】
幾つかの例において、合体剤は、プリントヘッドを介して供給されることを可能にするために、水または任意の他の適切な溶剤または分散剤のような液体キャリアを含むことができる。
【0023】
幾つかの例において、プリントヘッドは、ドロップオンデマンドのプリントヘッドとすることができる。他の例において、プリントヘッドは、連続吐出のプリントヘッドとすることができる。
【0024】
幾つかの例において、薬剤分配器202は、システム200の一体部分とすることができる。幾つかの例において、薬剤分配器202は、ユーザ交換可能とすることができ、この場合、それらは、適切な薬剤分配器レシーバ又はシステム200のインターフェースモジュールへ着脱可能に挿入可能とすることができる。
【0025】
図2に示された例において、薬剤分配器202は、所謂ページ幅アレイ構成で支持部材204の全幅に広がることを可能にする長さを有することができる。一例において、これは、複数のプリントヘッドの適切な配列を通じて達成され得る。他の例において、支持部材204の幅に広がることを可能にするための長さを備えるノズルアレイを有する単一のプリントヘッドが使用され得る。他の例において、薬剤分配器202は、支持部材204の全幅に広がることを可能にしない、より短い長さを有してもよい。
【0026】
薬剤分配器202は、図示されたy軸に沿って支持体204の長さを横切って双方向に移動することを可能にするために可動キャリッジに搭載され得る。これは、単一のパスにおいて、支持体204の全幅および長さを横切る合体剤の選択的供給を可能にする。他の例において、薬剤分配器202は固定されてもよく、支持部材204が薬剤分配器202に対して移動することができる。
【0027】
他の例において、薬剤分配器は固定されてもよく、支持部材204が薬剤分配器に対して移動することができる。
【0028】
留意されるべきは、本明細書で使用される用語「幅」は概して、図2に示されたx軸およびy軸に平行な平面において最も短い寸法を示すために使用されるが、本明細書で使用される用語「長さ」は概して、この平面において最も長い寸法を示すために使用される。しかしながら、理解されるべきは、他の例において、用語「幅」は用語「長さ」と取り替え可能とすることができる。例えば、他の例において、薬剤分配器202は、支持部材204の全長に広がることを可能にする長さを有することができるが、可動キャリッジは支持部材204の幅を横切って双方向に移動することができる。
【0029】
別の例において、薬剤分配器202は、支持部材の全幅に広がることを可能にする長さを備えないが、追加として、図示されたx軸において支持部材204の幅を横切って双方向に移動可能である。この構成は、複数のパスを用いて、支持体204の全幅および長さを横切る合体剤の選択的供給を可能にする。しかしながら、ページ幅アレイの構成のような他の構成により、3次元物体がより速く形成されることを可能にすることができる。
【0030】
システム200は更に、支持部材204上に構築材料の逐次の層を提供する、例えば供給する及び/又は堆積するための構築材料分配器224を含むことができる。適切な構築材料分配器224は、例えばワイパーブレード及びローラを含むことができる。構築材料は、ホッパ又は構築材料貯蔵部から構築材料分配器224に供給され得る。図示された例において、構築材料分配器224は、構築材料の層を堆積するために支持部材204の長さ(y軸)を横切って移動する。前述されたように、構築材料の層は、支持部材204上に堆積されるが、構築材料の後続の層が、構築材料の以前に堆積された層上に堆積される。構築材料分配器224は、システム200の固定部とすることができるか、又はシステム200の固定部ではなくて、代わりに例えば、可動モジュールの一部とすることができる。幾つかの例において、構築材料分配器224は、キャリッジ上に搭載され得る。
【0031】
幾つかの例において、各層の厚さは、約50μm(ミクロン)〜約300μm(ミクロン)の間の範囲から、又は約90μm(ミクロン)〜約110μm(ミクロン)の間の範囲から、又は約250μm(ミクロン)から選択された値を有することができるが、他の例において、構築材料のより薄い又はより厚い層が提供されてもよい。厚さは、例えば命令218に基づいて、コントローラ210により制御され得る。
【0032】
幾つかの例において、図2に示された分配器に対して、任意の数の追加の薬剤分配器および構築材料分配器が存在することができる。幾つかの例において、システム200の分配器は、同じキャリッジ上に、互いに隣接して又は短い距離だけ離れて位置することができる。他の例において、2つ又はそれより多いキャリッジがそれぞれ、分配器を含むことができる。例えば、各分配器は、それ自体の別個のキャリッジに位置することができる。任意の追加の分配器が、合体剤分配器202に関連して前述されものと類似の特徴要素を有することができる。しかしながら、幾つかの例において、様々な薬剤分配器が、例えば様々な合体剤および/または合体改質剤を供給することができる。
【0033】
図示された例において、支持体204は、構築材料の新たな層が堆積される際に、構築材料の最後に堆積された層の表面と薬剤分配器202の下側の表面との間に、所定の間隙が維持されるように、z軸において移動可能である。しかしながら、他の例において、支持体204はz軸において移動可能でなくてもよく、薬剤分配器202がz軸において移動可能としてもよい。
【0034】
システム200は更に、合体剤が供給された又は浸透した場所に応じて、構築材料の部分の固形化を引き起こすように構築材料にエネルギーを印加するためのエネルギー源226を含むことができる。幾つかの例において、エネルギー源226は、赤外線(IR)放射線源、近赤外線放射線源、ハロゲン放射源、又は発光ダイオードである。幾つかの例において、エネルギー源226は、支持体204上に堆積された構築材料にエネルギーを均一に印加することができる単一のエネルギー源とすることができる。幾つかの例において、エネルギー源226は、エネルギー源のアレイを含むことができる。
【0035】
幾つかの例において、エネルギー源226は、構築材料の層の全表面に実質的に均一な態様でエネルギーを印加するように構成される。これらの例において、エネルギー源226は、非集束エネルギー源であると考えられ得る。これらの例において、層の全体にエネルギーが同時に印加されることができ、3次元物体が生成され得る速度を上げることに役立つことができる。
【0036】
他の例において、エネルギー源226は、構築材料の層の全表面の一部に実質的に均一な態様でエネルギーを印加するように構成される。例えば、エネルギー源226は、構築材料の層の全表面の細片にエネルギーを印加するように構成され得る。これらの例において、エネルギー源は、実質的に等しい量のエネルギーが構築材料の層の全表面にわたって最終的に印加されるように、構築材料の層を横切って移動または走査され得る。
【0037】
幾つかの例において、エネルギー源226は、可動キャリッジ203a又は203bに搭載され得る。
【0038】
他の例において、エネルギー源226は、例えば命令218に従って、構築材料の層を横切って移動する際に可変量のエネルギーを印加することができる。例えば、コントローラ210は、合体剤が塗布された構築材料の部分にのみエネルギーを印加するようにエネルギー源を制御することができる。
【0039】
更なる例において、エネルギー源226は、レーザビームのような集束エネルギー源とすることができる。この例において、レーザビームは、構築材料の層の全体または一部を横切って走査するように制御され得る。これらの例において、レーザビームは、薬剤供給制御データに従って、構築材料の層を横切って走査するように制御され得る。例えば、レーザビームは、合体剤が供給される層のこれら部分にエネルギーを印加するように制御され得る。
【0040】
供給されるエネルギー、構築材料、及び合体剤の組み合わせは、何らかの合体のにじみの影響を除外する、即ちi)合体剤が供給されていない構築材料の部分は、エネルギーが一時的にそれらに印加された際に合体しない;ii)合体剤のみが供給された又は浸透した構築材料の部分は、エネルギーが一時的にそれに印加された際に合体するように、選択され得る。
【0041】
図2に示されていないが、幾つかの例において、システム200は更に、支持部材204上に堆積された構築材料を所定の温度範囲内に維持するための予熱器を含むことができる。予熱器の使用は、合体剤が供給された又は浸透した構築材料の合体および後続の固形化を引き起こすために、エネルギー源226により印加されなければならないエネルギーの量を低減することに役立つことができる。
【0042】
図3は、幾つかの例による、3次元物体を生成する方法300を示す流れ図である。幾つかの例において、図示された順序付けは、変更されることができ、幾つかの要素は同時に行われることができ、幾つかの要素は追加されることができ、及び幾つかの要素は省略され得る。
【0043】
図3を説明する際、図2図4a〜図4c、図5a〜図5d及び図6a〜図6dを参照する。図4a〜図4cは、幾つかの例による、3次元物体を表すデータを示す。図5a〜図5dは、幾つかの例による、構築材料の層の一連の垂直断面図を示す。図6a〜図6dは、幾つかの例による、構築材料の層の一連の平面図を示す。図5aの線6a−6a沿った層の平面図が図6aに示され、図6aの線5a−5aに沿った垂直断面図が図5aに示される。図5bの線6b−6b沿った層の平面図が図6bに示され、図6bの線5b−5bに沿った垂直断面図が図5bに示される。図5cの線6c−6c沿った層の平面図が図6cに示され、図6cの線5c−5cに沿った垂直断面図が図5cに示される。図5dの線6d−6d沿った層の平面図が図6dに示され、図6dの線5d−5dに沿った垂直断面図が図5dに示される。
【0044】
302において、3次元物体を表すデータ400は、コントローラ210により生成または取得され得る。「3次元物体を表すデータ」は、本明細書において3次元物体設計データとしてのその最初の生成から生成されるべき物体のスライスを表すスライスデータへのその変換までの物体を定義する任意のデータを含むと定義される。データ400は、命令218の一部とすることができる。
【0045】
3次元物体設計データは、生成されるべき物体の3次元モデル、及び/又は当該物体の特性(例えば、密度、表面粗さ、及び強度など)を表すことができる。当該モデルは、物体の固体部分を定義することができる。3次元物体設計データは、例えば、入力デバイス220を介してユーザから、ユーザからの入力として、ソフトウェアドライバから、コンピュータ援用設計(CAD)のアプリケーションのようなソフトウェアアプリケーションから受け取られることができ、或いはデフォルト又はユーザ定義の物体設計データ及び物体特性データを格納するメモリから取得され得る。3次元物体設計データは、当該モデルの平行面のスライスを表すスライスデータを生成するために、3次元物体処理システムにより処理され得る。
【0046】
各スライスは、積層造形システムにより固形化されるべき構築材料の個々の層の一部を画定することができる。スライスデータは、(1)ベクトルフォーマットで物体のスライスを表すベクトルスライスデータから、(2)ビットマップ又はラスタ化フォーマットで物体のスライスを表すコントーンスライスデータへの、(3)薬剤の小滴が物体の各スライスに対する構築材料の層に付着されるべき場所またはパターンを表すハーフトーンスライスデータへの、(4)薬剤の小滴が、例えば薬剤分配器のノズルを用いて、物体の各スライスに対する構築材料の層上の場所、部分またはパターンに何時付着されるべきであるかに関するタイミングを表すマスクスライスデータへの変換を蒙ることができる。
【0047】
図4aの例において、データ400の例は、生成されるべき物体のスライス402を有するスライスデータとして示される。スライス402は、厚い部分404を含むことができる。厚い部分は、閾値の厚さより小さい、その軸(例えば、幅または長さ)を横切る厚さを備えていない部分である。スライス402は薄い部分406を含むことができる。薄い部分は、閾値の厚さ未満である、少なくとも1つの軸(例えば、幅または長さ)を横切る厚さを有する部分である。幾つかの例において、閾値の厚さは、2mmとすることができ、又は1mmとすることができる。
【0048】
幾つかの例において、スライスの薄い部分は、前述したように、当該薄い部分から周囲の構築材料への熱放散に起因して、スライスの厚い部分よりも不十分な固形化の影響を受けやすいかもしれない。従って、データ400は、スライス402を生成するために供給されるべき合体剤の濃度または量に対して、より低い濃度または量の合体剤が供給されるべき部分414(図4cに示されるような)を追加するために、304〜308で処理され得る。部分414は、任意の薄い部分、例えば薄い部分406の境界(例えば、外部境界)を取り囲むことができる。
【0049】
幾つかの例において、薄い部分の境界の周りに部分414を追加するのではなくて、部分414は、部分414がスライス402を完全に取り囲むように、薄い部分および厚い部分を含むスライス全体の全周囲境界の周りに追加され得る。
【0050】
方法300は304〜308において、データ400が処理されていることを説明するが、他の例において、3次元物体設計データ又は任意の他のタイプのスライスデータを含む他のタイプのデータが、304〜308において処理され得る。更に、スライスデータが304〜308で処理される場合、印刷ジョブの(物体の複数のスライスを表す)全てのスライスデータが処理され得る。
【0051】
304において、コントローラ210は、図4bに示されるように、浸食されたデータ(以降、浸食データと呼ぶ)408を生成するためにデータ400を浸食する(削り取る)ことができる。浸食は、所定の浸食距離だけ、データ400のスライス402の境界を浸食する(例えば、縮ませる)ことを含むことができる。幾つかの例において、浸食距離は、薄い部分を識別するために使用される閾値の厚さの半分に等しくすることができる。例えば、閾値の厚さが2mmである場合、浸食距離は1mmとすることができる。かくして、例えばスライス402がひとたび浸食されると、閾値の厚さ(例えば、2mm)未満であるあらゆる薄い部分は、浸食データ408において除去されることができ、その理由は、向かい合って面する境界の双方を浸食距離(例えば、1mm)だけ浸食することが、例えば2mmの閾値の厚さだけ薄い部分を浸食することができるからである。図4bにおいて、浸食されたスライス410が薄い部分を備えずに(例えば、薄い部分406が除去されて)示されるが、厚い部分404から導出された、浸食された厚い部分410は保持されている。
【0052】
306において、コントローラ210は、データ400の何らかの薄い部分、例えば薄い部分406を識別するために、データ400と浸食データ402を比較することができる。これは、データ400のどの部分が浸食データ402において完全に除去されたかを検査することにより行われ得る。かくして、例えば、コントローラ210は、浸食により除去されたような薄い部分406を識別することができる。
【0053】
308において、コントローラ210は、変更データ412を生成するためにデータ400を変更することができる。データ400のスライス402を含めることに加えて、変更データ412は、スライス402を生成するために供給されるべき合体剤の濃度および量に対して、より低い濃度または量の合体剤が供給されるべき部分414を含むことができる。部分414は、薄い部分406の境界を取り囲むことができる。変更は、識別された薄い部分406を拡張することにより行われ得る(又は全スライスが部分414によって取り囲まれるべきである例において、全スライス402が拡張され得る)。拡張は、薄い部分406の境界(又は全スライス402が部分414により取り囲まれるべきである場合には全スライス402)を、所定の拡張距離だけ拡張する(例えば、膨張させる)ことを含むことができる。幾つかの例において、拡張距離は、約0.1mm〜約10mmに等しくすることができる。拡張距離は、薄い部分406に隣接する部分414の幅に対応することができる。幾つかの例において、拡張距離は、厚さ又は部分(例えば、薄い部分)に依存することができる。例えば、物体の第2の薄い部分よりも薄い、物体の第1の薄い部分は、第2の薄い部分よりも大きい拡張距離まで拡張され得る。ひとたび拡張が完了すると、変更データ412は、新たに追加された部分を識別するためにデータ400に対して比較され得る。新たに追加された部分は、より低い濃度または量の合体剤が供給されるべき部分414として設計され得る。
【0054】
前述したように、スライスデータが304〜308において処理される場合、304〜308の処理は、印刷ジョブの全てのスライスデータ(物体の複数のスライスを表す)に対して実行され得る。幾つかの例において、別個のスライスを表すスライスデータは、310〜314における印刷中に処理されることができ、例えば310〜314の特定の繰り返しにおいて印刷されるべき特定のスライスを表すスライスデータは、例えば312における薬剤の塗布の前に、処理され得る。
【0055】
310において、図5a及び図6aに示されるように、構築材料の層502bが提供され得る。例えば、コントローラ210は、前述されたように、y軸に沿って構築材料分配器224を移動させることにより、支持部材204上の以前に完成した層502a上に層502bを提供するように、構築材料分配器224を制御することができる。完成した層502aは、凝固された部分508を含むことができる。完成した層502aが例示のために図5a〜図5dに示されるが、理解されるべきは、第1の層502aを生成するために310〜314が最初に適用され得る。
【0056】
幾つかの例において、層502bを付着した後、構築材料の層502bは、構築材料を所定の温度範囲内に加熱および/または維持するためにヒータにより加熱され得る。所定の温度範囲は、例えば構築材料が合体剤504の存在する状態で結合を蒙る温度未満とすることができる。例えば、所定の温度範囲は、約155℃〜約160℃の間とすることができるか、又は当該範囲は、約160℃に中心があることができる。予熱は、合体剤が供給された又は浸透した構築材料の合体および後続の固形化を引き起こすために、エネルギー源226により印加されなければならないエネルギーの量を低減することに役立つことができる。
【0057】
312において、図5b及び図6bに示されるように、合体剤504及び506が、変更データ412に従って、層502bの部分の表面にパターンで選択的に供給され得る。前述されたように、薬剤504及び506は、例えば液滴のような流体の形態で、薬剤分配器202により供給され得る。「選択的に供給すること」は、薬剤が様々なパターンで構築材料の表面層の選択された部分に供給され得ることを意味する。
【0058】
変更データ412は、図5b及び図6bに示されるように、合体剤504を用いて生成されている3次元物体の部分を形成するために固体になるべきであるスライスを定義するスライス402を含むことができる。幾つかの例において、スライスを形成するために、エネルギーの印加の際に構築材料の合体および固形化を生じるのに十分な濃度または量で、合体剤504が供給されるべきである(例えば、合体および固形化を容易にするために、印加されたエネルギーの吸収体の役割を果たす合体剤504に起因して)。幾つかの例において、薬剤分配器202は、0.04233mm(1/600インチ)×0.04233mm(1/600インチ)の領域(1.792×10−3mm(1/360000平方インチ))当たり約0.5〜2滴(例えば、1滴)の濃度で合体剤504の小滴を供給することができるかもしれない。各小滴は、約5ng〜約20ngの質量を有することができる。他の例において、薬剤分配器202は、合体および固形化を達成するのに十分なより高い又はより低い濃度で合体剤504の小滴を供給することができるかもしれない。
【0059】
また、変更データ412は、変更データ412のスライス402により定義されたスライスを生成するために供給されるべき合体剤504の濃度または量に対してより低い濃度または量の、供給されるべき合体剤506を定義する部分414も含む事ができる。低い濃度の合体剤506は、合体剤504を用いて生成された薄い部分の境界を取り囲むパターンで供給され得る。幾つかの例において、合体剤506は、印加されたエネルギーの吸収体の役割を果たすことができ、合体剤504に対してより低い濃度の合体剤506は、以下の効果を有することができる。合体剤506が塗布された構築材料はエネルギーの印加の際に合体および凝固することができないか、又は何らかの僅かに凝固した部分が、生成されている物体の永久的な部分を形成することができない(例えば、僅かに凝固した部分が、形成された部分から取り除かれ得る)ように、最小限に合体および凝固することができる。かくして、合体剤506の濃度は、エネルギーが印加された際に第2の部分において完全な固形化を達成するのに不十分とすることができる。更に、合体剤506が塗布される構築材料によって、少なくとも一部の熱が、構築材料に合体剤504を塗布することにより生成されるスライスの薄い部分414から流出することが防止され得る。これは、合体剤506が塗布されていない場合と比較した場合よりも、合体剤506を有する部分が、合体剤504を有する部分の温度に近くなることに起因して、合体剤504を有する部分と合体剤506を有する部分との間の低減された温度勾配によることができる。幾つかの例において、例えば、薬剤分配器202は、1/600×1/600インチの領域(1/360000平方インチ)当たり約1/128〜1/32滴の濃度(例えば、1/64滴)で、合体剤506の小滴を供給することができるかもしれない。各小滴は、約5ng〜約20ngの質量を有することができる。幾つかの例において、供給されるべき合体剤506の濃度は、供給されるべき合体剤504の濃度よりも少なくとも1桁低くすることができる。幾つかの例において、合体剤506の濃度は、厚さ又は当該部分(例えば、薄い部分)に依存することができる。例えば、物体の第2の薄い部分よりも薄い、物体の第1の薄い部分は、第2の薄い部分の周囲部分の合体剤の濃度よりも大きい濃度の合体剤506の周囲部分を有することができるかもしれない。
【0060】
他の例において、薬剤分配器202は、合体剤506が供給された場所で固形化を生じない又は最小限の固形化を生じるが、少なくとも一部の熱が薄い部分414から流出するのを防止するのに十分により高い又はより低い濃度で合体剤506の小滴を供給することができるかもしれない。
【0061】
幾つかの例において、同じ合体剤分配器202が異なる濃度の合体剤504及び506を供給することができるかもしれないが、他の例において、異なる合体剤分配器が異なる濃度の合体剤504及び506を供給することができるかもしれない。
【0062】
幾つかの例において、合体改質剤は同様に、低い濃度の合体剤506を有する部分を取り囲む層502bの部分に対するパターンで選択的に供給され得る。また、幾つかの例において、合体改質剤は、より高い濃度の合体剤504を有するスライスの厚い部分を取り囲む層502bの部分に対するパターンで選択的に供給され得る。合体改質剤は、凝固されることが意図されていない構築材料の部分の固形化となる合体のにじみを低減することができるかもしれない。例えば、合体のにじみは、生成される3次元物体の全体としての精度の低下という結果になるかもしれない。
【0063】
図5c及び図6cは、構築材料の層502bの部分へ実質的に完全に浸透した合体剤504及び506を示すが、他の例において、浸透の度合いは100%未満とすることができる。例えば、浸透の度合いは、供給される薬剤の量、構築材料の特性、薬剤の特性などに依存することができる。
【0064】
314において、所定レベルのエネルギーが構築材料の層502bに一時的に印加され得る。様々な例において、印加されるエネルギーは、赤外線または近赤外線エネルギー、マイクロ波エネルギー、紫外線(UV)光、ハロゲン光、又は超音波エネルギーなどとすることができる。幾つかの例において、エネルギー源は集束され得る。他の例において、エネルギー源は集束されなくてもよい。エネルギーの一時的な印加により、より高い濃度の合体剤504が供給された構築材料の部分は、構築材料の融点より上に加熱されて合体し、より低い濃度の合体剤506が供給された構築材料の部分は、合体しない又は最小限に合体することができる。例えば、層502bの一部または全ての温度は、約220℃に達成することができる。冷却時、合体剤504を有する部分は、図5d及び図6dに示されるように、合体することができ、固体になって、生成されている3次元物体の部分を形成することができる。
【0065】
前述したように、1つの係る固形化された部分508は、以前の繰り返しで生成されたかもしれない。エネルギーの印加中に吸収された熱は、以前に固形化された部分508に伝播して、部分508の一部がその融点より上に加熱されるかもしれない。この影響は、図5dに示されるように、固形化された構築材料の隣接する層間で結合する強い中間層を有する部分510を作成することに役立つ。また、少なくとも一部の熱が合体剤504を有する部分から流出することを防止するように働く合体剤506を有する部分の結果として、合体剤504を有する部分は、良好な強度表面特性、良好な精度、良好な強度および中間層の良好な結合のような良好な物体特性も達成することができる。
【0066】
構築材料の層が上述したように310〜314において処理された後、構築材料の新たな層が、構築材料の以前に処理された層の上に提供され得る。このように、構築材料の以前に処理された層は、構築材料の後続の層に対する支持体の役割を果たす。次いで、310〜314のプロセスが繰り返されて3次元物体を層毎に生成することができる。
【0067】
本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又は開示されたようなあらゆる方法またはプロセスの要素の全ては、係る特徴および/または要素の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0068】
上記の説明において、本明細書で開示された主題の理解を提供するために、多くの細部が記載された。しかしながら、例は、これら細部の一部または全てを用いずに実施され得る。他の例は、上述した細部からの変更および変形を含むことができる。添付の特許請求の範囲は、係る変更および変形を網羅することが意図されている。
【0069】
以下においては、本発明の種々の構成要件の組み合わせからなる例示的な実施形態を示す。
1.3次元物体を生成するためのシステムであって、
構築材料の層の部分上へ、第1の濃度で及び前記第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤を選択的に供給するための少なくとも1つの薬剤分配器と、
生成されるべき前記3次元物体を表すデータから導出された個々の第1及び第2のパターンで前記層の個々の第1及び第2の部分上へ前記第1及び第2の濃度で前記合体剤を選択的に供給するように前記少なくとも1つの薬剤分配器を制御するためのコントローラとを含み、エネルギーが前記層に印加された際に、前記構築材料が前記第1のパターンに従って前記3次元物体のスライスを形成するために合体および凝固することができるようになっており、前記第2の部分が前記第1の部分の境界に近接しており、前記第2の部分における前記合体剤の存在により、前記エネルギーが印加された際に、少なくとも一部の熱が前記第1の部分から流出することを防止することができる、システム。
2.前記第2の濃度は、前記エネルギーが印加された際に前記第2の部分で完全な固形化を達成するのに不十分である、上記1に記載のシステム。
3.前記第2の濃度が、前記第1の部分の厚さに基づいて選択される、上記1に記載のシステム。
4.前記第2の部分の厚さが、前記第1の部分の厚さに基づいて選択される、上記1に記載のシステム。
5.前記第2の濃度が、前記第1の濃度より少なくとも1桁低い、上記1に記載のシステム。
6.前記第1の濃度が1/360000平方インチ当たり合体剤の約0.5滴〜2滴の間であり、前記第2の濃度が1/360000平方インチ当たり合体剤の約1/128滴〜1/32滴の間である、上記1に記載のシステム。
7.前記第2の部分が前記第1の部分の境界の周りに配置される、上記1に記載のシステム。
8.前記第1の部分が閾値厚さより小さい薄い部分、及び前記閾値厚さより大きい厚い部分を含み、前記境界は、前記第2の部分が前記薄い部分の前記境界の周りに配置されることができるように前記薄い部分からなる、上記7に記載のシステム。
9.前記第2の部分が、前記厚い部分の第2の境界の周りに配置されることができない、上記8に記載のシステム。
10.前記境界は、前記第2の部分が前記第1の部分を完全に取り囲むことができるように、前記第1の部分の全周囲境界である、上記7に記載のシステム。
11.前記構築材料の層の部分上へ合体改質剤を選択的に供給するための合体改質剤分配器を更に含み、前記コントローラは、生成されるべき前記物体を表すデータから導出された第3のパターンで前記層の第3の部分上へ前記合体改質剤を選択的に供給するように前記合体改質剤分配器を制御することができ、エネルギーが前記層に印加された際に前記第3の部分における合体が低減または阻止されるように、前記第3の部分が前記第2の部分の境界の周りに配置される、上記1に記載のシステム。
12.前記コントローラは、前記第2の部分を含めるように前記3次元物体を表すデータを変更することができ、その結果として、変更された際のデータから導出された第2のパターンで前記第2の部分上へ前記合体剤を選択的に供給するように前記少なくとも1つの薬剤分配器を制御することができる、上記1に記載のシステム。
13.前記コントローラは、以下のこと、即ち
前記物体を表すデータにおいて前記第1の部分を浸食して、浸食データを生成し、
前記物体を表すデータを前記浸食データと比較して、前記浸食データにおいて除去された前記第1の部分の薄い部分を識別し、
前記データに前記第2の部分を含めるために前記物体を表すデータを拡張することにより、前記データを変更することができる、上記12に記載のシステム。
14.構築材料の層を供給し、
第1の濃度で合体剤を前記層の第1の部分に選択的に付着し、
前記第1の濃度より低い第2の濃度で合体剤を前記層の第2の部分に選択的に付着し、前記第2の部分が前記第1の部分の境界の周りに配置され、
前記第1の部分が3次元物体のスライスを形成するように合体および凝固するように前記層にエネルギーを印加することを含み、前記第2の部分における前記合体剤の存在により、前記エネルギーが印加された際に、少なくとも一部の熱が前記第1の部分から流出することを防止する、方法。
15.プロセッサにより実行された際に、前記プロセッサに以下のこと、即ち、
生成されるべき3次元物体を表すデータを取得し、前記データは、合体剤が第1の濃度で供給されるべき場所を画定する第1の部分を含み、
合体剤が前記第1の濃度より低い第2の濃度で供給されるべき第2の部分を含めるように前記データを変更し、前記第2の部分が前記第1の部分の少なくとも一部を取り囲み、
変更データを用いて、エネルギーが印加された際に前記第1の部分が合体および凝固することができるように、第1の濃度で前記合体剤を前記第1の部分に供給し第2の濃度で前記合体剤を前記第2の部分に供給するように少なくとも1つの薬剤分配器を制御し、前記第2の濃度は、エネルギーが印加された際に前記第2の部分における完全な固形化を達成するのに不十分であり、前記第2の部分における前記合体剤の存在により、前記エネルギーが印加された際に、熱が前記第1の部分から流出することを防止することをさせる実行可能命令を含む持続性コンピュータ可読記憶媒体。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d