【実施例】
【0025】
[実施例1]
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=3000のシリコーンレジン12質量部、D50=0.7μmのZrO
2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=3000のシリコーンレジン45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
【0026】
プリント配線基板用の片面粗化処理銅箔(古河電気工業株式会社製 GTS−MP 35μm
t)にドクターブレード法により絶縁塗料(A)を厚み55μm
tになるように粗化処理面に塗工し、175℃/15分の乾燥を実施し、絶縁膜付銅箔(C)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μm
tになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
【0027】
1mm
tのAl板(A5052)を100℃の純水中で5分間煮沸処理を施し、Al板表面に−OH基を付与し、Al基板(E)を得た。
Al基板(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層(前記(A)(B)に由来の部分)のマトリックスであるシリコーンレジンが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、三次元網目構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
【0028】
得られた銅張積層基板の絶縁層の厚さは約50μmであり、絶縁層中のZrO
2フィラーの割合は約60体積%であった。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、AC80kV/mm、DC150kV/mmであり、劣化は認められなかった。銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたが、低分子シロキサンに相当するD3〜D12のいずれも検出されなかった。
【0029】
図3に、得られた銅張積層板の断面写真を示している。
図3より、絶縁層2が銅層1と基板2にそれぞれ直接接合されていることが確認された。また、絶縁層2と基板4との接合界面に注目すると、絶縁層2と基板4との接合界面の一部が無機フィラーを含まない絶縁層2aで構成されていた。
なお、前述した
図1の製造方法では絶縁層2上に接合層3を形成するが、前述のとおり加熱加圧接合により接合層3が絶縁層2に吸収されて混然一体となる。すなわち、
図3において絶縁層2と基板4との接合界面に表れている無機フィラーを含まない絶縁層2aは、前述の加熱加圧接合により接合層3と絶縁層2が混然一体となった絶縁層2’(
図1(b)参照)の一部であり、本発明において「直接接合されている」とは、無機フィラーを含まない絶縁層2aを有しない接合形態を含むことはもとより、
図3のように無機フィラーを含まない絶縁層2aを有する接合形態も含む概念であり、例えば、前記特許文献1のような接着層や接着剤の層を有さないということである。
【0030】
また、本実施形態において、「銅箔上」、「絶縁層上」、「基板上」とは、上下の位置関係を限定するものではない。すなわち、「銅箔上」、「絶縁層上」、「基板上」とは、言い換えれば「銅箔の一面側」、「絶縁層の一面側」、「基板の一面側」という意味であり、
図1および
図2を上下逆転した形態や、
図1および
図2を鉛直にした形態を含む概念である。
【0031】
[実施例2]
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンレジン12質量部、D50=0.7μmのZrO
2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンレジン45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
【0032】
プリント配線基板用の片面粗化処理銅箔(古河電気工業株式会社製 GTS−MP 35μm
t)にドクターブレード法により絶縁塗料(A)を厚み55μm
tになるように粗化処理面に塗工し、175℃/15分の乾燥を実施し、絶縁膜付銅箔(C)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μm
tになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
【0033】
1mm
tのAl板(A5052)を100℃の純水中で5分間煮沸処理を施し、Al板表面に−OH基を付与し、Al基板(E)を得た。
Al基材(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層のマトリックスであるシリコーンレジンが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、三次元網目構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
【0034】
得られた銅張積層基板の絶縁層の厚さは約50μmであり、絶縁層中のZrO
2フィラーの割合は約60体積%であった。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、AC80kV/mm、DC150kV/mmであり、劣化は認められなかった。銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたが、低分子シロキサンに相当するD3〜D12のいずれも検出されなかった。
【0035】
[比較例1]
室温で液体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンゴム12質量部、D50=0.7μmのZrO
2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で液体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーゴム45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
【0036】
プリント配線基板用の片面粗化処理銅箔(古河電気工業株式会社製 GTS−MP 35μm
t)にドクターブレード法により絶縁塗料(A)を厚み55μm
tになるように粗化処理面に塗工し、175℃/15分の乾燥を実施し、絶縁膜付銅箔(C)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μm
tになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
【0037】
1mm
tのAl板(A5052)を100℃の純水中で5分間煮沸処理を施し、Al板表面に−OH基を付与し、Al基板(E)を得た。
Al基板(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層のマトリックスであるシリコーンゴムが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、二次元鎖状構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
【0038】
得られた銅張積層基板の絶縁層の厚さは約50μmであり、絶縁層中のZrO
2フィラーの割合は約60体積%であった。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、その耐電圧はAC60kV/mm、DC110kV/mmであり、劣化が見られた。
また、銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたところ、低分子シロキサンに相当するD3〜D12が確認された。