【文献】
Biosci. Biotechnol. Biochem.,2001年,Vol. 65, No. 12,pp. 2638-2643
【文献】
Biosci. Biotechnol. Biochem.,,1999年,Vol. 63, No. 12,pp. 2252-2255
【文献】
日本農芸化学会誌,1985年,Vol. 59, No. 2,pp. 129-134
【文献】
日本農芸化学会誌,日本,2003年,Vol. 77, No. 5,pp. 510-511
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)カテキン類と(B)リン脂質との質量比[(B)/(A)]が2〜100であるカテキン類含有組成物と、アルコール水溶液及びアルコールから選択される少なくとも1種の溶媒とを、総固形分量に対する総溶媒量の質量比が2〜70となるように混合する工程Aと、
前記混合液中に生じるカテキン類に富む相を回収する工程Bを含む、
精製カテキン類含有組成物の製造方法。
前記カテキン類含有組成物中の(A)カテキン類と(C)カフェインとの質量比[(C)/(A)]が0.00001〜1である、請求項1又は2記載の精製カテキン類含有組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の精製カテキン類含有組成物の製造方法は、工程A及び工程Bを含むものである。以下、各工程について説明する。
【0011】
<工程A>
工程Aは、(A)カテキン類と(B)リン脂質との質量比[(B)/(A)]が2〜100であるカテキン類含有組成物と、有機溶媒水溶液及び有機溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒とを混合する工程である。
【0012】
ここで、本明細書において「カテキン類」とは、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなるガレート体と、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びカテキンからなる非ガレート体を併せての総称である。なお、カテキン類の含有量は、上記8種の合計量に基づいて定義され、本発明においては、上記8種のカテキン類のうち少なくとも1種を含有すればよい。
また、本明細書において「リン脂質」とは、構造中にリン酸エステル部位、ホスホン酸エステル部位をもつ脂質の総称をいう。
【0013】
(カテキン類含有組成物)
カテキン類含有組成物は、(A)カテキン類及び(B)リン脂質を含み、それらの質量比[(B)/(A))]が2〜100であるものであるが、カテキン類の収率及び純度の観点から、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、そして100以下が好ましく、50以下がより好ましく、25以下が更に好ましく、20以下がより更に好ましい。かかる質量比の範囲としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましく、6〜25が更に好ましく、6〜20がより更に好ましい。
【0014】
カテキン類含有組成物の固形分中の(A)カテキン類の含有量は、カテキン類の収率及び純度の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましく、そして35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。かかる(A)カテキン類の含有量の範囲としては、カテキン類含有組成物の固形分中に、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは2〜30質量%、更に好ましくは4〜25質量%である。ここで、本明細書において「固形分」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で6時間乾燥して揮発物質を除いた残分であり、次の式(I)で算出される。
【0015】
固形分(質量%)=試料乾燥後の質量(g)/試料乾燥前の質量(g)×100・・・(I)
【0016】
カテキン類含有組成物中の固形分中の(B)リン脂質の含有量は、分離操作のしやすさの観点から、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、またカテキン類の収率及び純度の観点から、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、96質量%以下が更に好ましい。かかる(B)リン脂質の含有量の範囲としては、カテキン類含有組成物中の固形分中に、好ましくは65〜99質量%、より好ましくは70〜98質量%、更に好ましくは75〜96質量%である。なお、カテキン類含有組成物中のリン脂質量は、例えば、リン脂質Cテストワコー(和光純薬社製)等のリン脂質定量キットや、HPLCを用いた分析等により定量することが可能である。
【0017】
カテキン類含有組成物は、(A)カテキン類と(C)カフェインとの質量比[(C)/(A)]が、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下が更に好ましく、0.05以下がより更に好ましい。なお、下限は特に限定されるものではく、0であっても良いが、例えば0.00001以上が好ましく、0.0001以上が更に好ましい。かかる質量比[(C)/(A)]の範囲としては、好ましくは0.00001〜1、より好ましくは0.00001〜0.5、更に好ましくは0.00001〜0.1、より更に好ましくは0.0001〜0.05である。
【0018】
(カテキン類含有組成物を調製するための一態様)
カテキン類含有組成物は、(A)カテキン類と(B)リン脂質との質量比[(B)/(A)]が2〜100、好ましくは上述の好適範囲を満たすものであれば良く、適宜の方法により調製することが可能であるが、例えば、(A’)茶抽出物とリン脂質とを混合し、混合液中からリン脂質相を回収する工程を含む方法に供することにより調製することができる。
【0019】
(A’)茶抽出物としては、茶抽出液、その濃縮物、又はそれらの精製物が挙げられ、その形態としては、固体、液体、溶液、スラリー等の種々のものがある。茶抽出物は1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。ここで、本明細書において「茶抽出液」とは、茶葉から熱水又は親水性有機溶媒を用いて抽出されたものであって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。抽出方法及び抽出条件は、公知の方法及び条件を採用することが可能であり、特に限定されない。茶葉としては、例えば、Camellia属、例えば、C. sinensis var.sinensis(やぶきた種を含む)、C. sinensis var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹(Camellia sinensis)が挙げられる。茶樹は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。
不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、カテキン類の含有量の点から、不発酵茶が好ましく、緑茶が更に好ましい。
【0020】
また、「茶抽出液の濃縮物」とは、茶抽出液から溶媒の一部を除去してカテキン類濃度を高めたものであり、例えば、濃縮方法として、常圧濃縮、減圧濃縮、膜濃縮等を挙げることができる。茶抽出液の濃縮物としては市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出液の濃縮物が挙げられる。更に、「茶抽出液の精製物」とは、茶抽出液又はその濃縮物を精製してカテキン類の純度を高めたものであり、例えば、特開2004−147508号公報、特開2004−149416号公報、特開2006−160656号公報、特開2007−282568号公報、特開2008−079609号公報等に記載の方法を採用することができる。その他、茶抽出物を逆相クロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ等の各種クロマトグラフィに供してカテキン類を分画したものを使用しても構わない。
【0021】
茶抽出物は水溶液の形態であることが好ましい。茶抽出物を溶解させた水溶液は、例えば、茶葉から水を用いて抽出された茶抽出液を、必要により水希釈又は濃縮して用いても、茶抽出液の濃縮物又はその精製物を水希釈して用いても、茶抽出液、その濃縮物又はそれらの精製物の乾燥物を再び水に溶解して用いてもよい。
【0022】
茶抽出物を溶解させた水溶液中のカテキン類の含有量は適宜選択可能であるが、精製効率の観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.06質量%以上が更に好ましく、そして10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。かかるカテキン類の含有量の範囲としては、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.05〜7質量%、更に好ましくは0.06〜5質量%である。
【0023】
また、本発明に用いる茶抽出物は、カテキン類中のガレート体の割合(以下、「ガレート体率」とも称する)が、生理効果の観点から、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、また風味の観点から、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。かかるガレート体率の範囲としては、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。ここで、本明細書において「ガレート体率」とは、カテキン類8種に対する上記ガレート体4種の質量比率である。
【0024】
(B)リン脂質は、卵黄、大豆その他の動植物材料に由来するものを特に限定されることなく用いることができ、それらの水素添加物、水酸化物の誘導体といった半合成のリン脂質、合成品等であってもよい。(B)リン脂質の構成脂肪酸も特に限定されず、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれでもよい。また、(B)リン脂質は、中性リン脂質の他に、アニオン性リン脂質、カチオン性リン脂質といった荷電リン脂質、更には重合性リン脂質を含んでもよい。リン脂質は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
(B)リン脂質としては、例えば、グリセロリン脂質、リゾグリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質が挙げられる。中でも、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質が好ましい。グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンが挙げられるが、中でもホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンが好ましい。スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリン、セラミドシリアチンが挙げられる。これらリン脂質を含む原料として、天然レシチン、又はそれを水素添加処理した精製品を利用することもできる。天然レシチンとしては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、イカレシチン等が挙げられ、水素添加リン脂質としては、例えば、水素添加大豆ホスファチジルコリン、水素添加卵黄レシチン等が挙げられる。
【0026】
茶抽出物と混合する際のリン脂質は、リン脂質膜やリポソームの形態であってもよい。リン脂質をリン脂質膜又はリポソームの形態とすることで、リン脂質膜内又はその内水相へのカテキン類の取り込みや、リン脂質膜へのカテキン類の吸着が容易になる。ここで、本明細書において「リポソーム」とは、リン脂質2分子膜により囲まれた内水相部分を有する閉鎖小胞をいい、そのサイズや脂質二分子の数によって多重相リポソーム(Multilamellar Vesicle:MLV)、大きな一枚膜リポソーム(Large Unilamellar Vesicle:LUV)、小さな一枚膜リポソーム(Small Unilamellar Vesicle:SUV)の3種類に分類される。本発明においてはいずれの種類のリポソームも使用可能である。
【0027】
リン脂質膜へカテキン類を吸着させる場合、例えば、茶抽出物とリン脂質とを混合し、震盪等により応力を与えてリン脂質膜の形成と、リン脂質膜への非重合体カテキン類の吸着とを略同時に行ってもよい。また、リン脂質に震盪等により応力を与えて予めリン脂質膜の形成した後、これに茶抽出物を混合することもできる。
リポソームの形成方法としては特に限定されず、Bangham法、脂質溶解法、メカノケミカル法、凍結乾燥リポソーム法等の方法を採用することができる。
【0028】
リポソームのメジアン径は、リン脂質相と液相との分離操作の観点から、好ましくは10〜20,000nm、より好ましくは30〜15,000nm、更に好ましくは50〜10,000nm、より更に好ましくは50〜5,000nm、より更に好ましくは50〜3,000nm、より更に好ましくは80〜1,000nm、殊更に好ましくは100〜500nmである。ここでいう「メジアン径」とは、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積基準の累積粒度分布において、累積値が50%(d
50)に相当する粒子径をいう。
【0029】
また、茶抽出物と混合する際のリン脂質は、相転移温度を有するものが好ましい。ここで、本明細書において「相転移温度」とは、リン脂質が取り得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度をいい、リン脂質に対して十分量の水が存在する場合の値である。相転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて示差熱分析により測定することができる。
示差走査熱量計として、例えばDSC7020(日立ハイテクサイエンス製)を用いることができる。具体的には、リン脂質の相転移温度は、下記の手順により測定できる。
(1)0℃を超える温度に相転移温度を有するリン脂質は、下記の手順により相転移温度を測定する。まず、リン脂質に対して十分量の水が存在するよう、リン脂質濃度が1〜10g/100gとなるように、リン脂質を水に十分分散させた試料を準備する。次いで、試料0.005gをアルミニウム製の試料容器に秤量し、アルミニウム製のカバーをした後、電動サンプルシーラーを用い、密封する。密封した試料容器を、電気炉内のホルダーユニットに乗せる。また、空気を密封したブランク容器を、ホルダーユニットのブランク側に乗せる。電気炉に蓋をし、窒素雰囲気下で1℃、5分間保持する。次いで、1℃から98℃まで、昇温速度0.5℃/分で加熱する(昇温工程)。この、昇温工程において、示差走査熱量計DSC7020(日立ハイテクサイエンス製)を用いて、DSC曲線を計測する。この際、昇温工程で吸熱ピークが見られた際の温度を、リン脂質の相転移温度とする。
(2)また、上記の測定条件により相転移温度が確認できないリン脂質においては、下記の手順により相転移温度を測定する。まず、リン脂質に対して50質量%のエチレングリコール水溶液を、リン脂質濃度が1〜10g/100gとなるように、リン脂質を水に十分分散させた試料を準備する。次いで、上記と同様の操作により、試料容器、ブランク容器を用意し、ホルダーユニットに乗せる。電気炉に蓋をし、窒素雰囲気下で25℃、5分間保持する。次いで、25℃から―40℃まで、降温速度0.5℃/分で冷却する(冷却工程)。この、冷却工程において、示差走査熱量計DSC7020(日立ハイテクサイエンス製)を用いて、DSC曲線を計測する。この際、冷却工程で発熱ピークが見られた際の温度を、リン脂質の相転移温度とする。
【0030】
リン脂質の相転移温度は、ハンドリングの観点から、−25℃以上が好ましく、−20℃以上がより好ましく、またカテキン類の取込み率、吸着率の観点から、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下が更に好ましく、30℃以下がより更に好ましい。かかる相転移温度の範囲としては、好ましくは−25℃〜60℃、より好ましくは−20℃〜50℃、更に好ましくは−20℃〜40℃、より更に好ましくは−20℃〜30℃である。
【0031】
相転移温度を有するリン脂質としては、例えば、大豆ホスファチジルコリン(本明細書における測定条件により測定した相転移温度約−10℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(本明細書における測定条件により測定した相転移温度約51℃)、ジミリストイルホスファチジルコリン(下記の参考文献1記載の相転移温度約23℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(下記の参考文献1記載の相転移温度約41℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(下記の参考文献1記載の相転移温度約54℃)、ジヘキサデシルホスファチジルコリン(下記の参考文献2記載の相転移温度約45℃)、ステアロイルパルイトミルホスファチジルコリン(下記の参考文献3記載の相転移温度約45℃)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(下記の参考文献2記載の相転移温度約63℃)等が挙げられる。中でも、コリン基を有するホスファチジルコリンが好ましい。本発明で使用するリン脂質は、市販品又は合成品を適宜選択して使用することができるが、リン脂質の含有量が60質量%以上であるものが好ましく、80質量%以上であるものが更に好ましい。
【0032】
参考文献1:金品ら, 高圧力下におけるリン脂質二重膜. 高圧力の科学と技術、vol9,No3,p.213-220(1999)
参考文献2:松木ら. 生体膜脂質の膜状態−圧力研究から見えてくる構造機能相関−,高圧力の科学と技術,vol23,No1,p.30-38(2013)
参考文献3:第32回物性物理化学研究会 講演要旨集
【0033】
茶抽出物とリン脂質との混合割合は、茶抽出物中の(A)カテキン類と(B)リン脂質との質量比[(A)/(B)]として、生産効率の観点から、0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましく、またカテキン類の収率及び純度の観点から、0.20以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.11以下が更に好ましく、0.09以下が殊更に好ましい。かかる質量比[(A)/(B)]の範囲としては、好ましくは0.001〜0.20、より好ましくは0.01〜0.18、更に好ましくは0.01〜0.11、殊更に好ましくは0.02〜0.09である。
【0034】
茶抽出物とリン脂質との混合温度は、使用するリン脂質の相転移温度よりも高い温度であることが好ましく、リン脂質の相転移温度よりも5℃以上高い温度であることがより好ましく、10℃以上高い温度であることがより好ましく、20℃以上高い温度であることがより更に好ましい。
茶抽出物とリン脂質との混合時間は、製造スケール等により一様ではないが、カテキン類の回収率、精製効率の観点から、好ましくは10〜360分、より好ましくは15〜120分、更に好ましくは20〜60分である。なお、混合液の温度が所定時間一定に保持されるように、液温制御手段を設けることができる。
【0035】
茶抽出物とリン脂質との混合する際のpH(25℃)は、設備腐食防止、カテキン類の安定性の観点から、好ましくは2.5〜9.0、より好ましくは4.0〜8.0、更に好ましくは6.0〜7.0である。
【0036】
茶抽出物とリン脂質との混合順序は特に限定されず、茶抽出物とリン脂質とを同時に投入して混合しても、一方を他方に投入して混合してもよい。また、茶抽出物とリン脂質とを混合する際には、撹拌、震盪、超音波照射等の処理を行ってもよい。
【0037】
茶抽出物とリン脂質との混合により、カテキン類がリン脂質膜内又はその内水相に取り込まれるか、あるいはリン脂質膜に吸着される一方、夾雑物はリン脂質膜外、あるいはリポソームの外水相にそのまま存在するため、カテキン類と夾雑物とが分離される。
【0038】
混合後、混合液中からリン脂質相を回収するが、回収方法としては、限外濾過、遠心分離、ゲルクロマトグラフィー、透析等の固液分離を挙げることができる。固液分離は、1種又は2種以上を組み合わせて行うことができる。中でも、遠心分離が好ましい。混合液を遠心分離することで、リン脂質相を沈殿相として簡便に回収することができる。
【0039】
遠心分離機としては、分離板型、円筒型、デカンター型等の一般的な機器を使用することができ、必要に応じて超遠心機を用いても良い。
遠心分離する際の温度は、リン脂質相の回収率の観点から、好ましくは1〜60℃、より好ましくは2〜50℃、更に好ましくは3〜40℃である。
遠心分離の時間は、リン脂質相の回収率の観点から、好ましくは3〜300分、より好ましくは5〜200分、更に好ましくは10〜100分、より更に好ましくは15〜60分である。
また、遠心分離の条件は、夾雑物除去、カテキン類の回収率、沈殿相としてリン脂質相を回収する観点から、相対遠心加速度として、例えば、300G以上が好ましく、500G以上がより好ましく、800G以上が更に好ましい。なお、上限は特に限定されるものではないが、例えば170000G以下が好ましい。かかる相対遠心加速度の範囲としては、好ましくは300〜170000G、より好ましくは500〜170000G、更に好ましくは800〜170000Gである。なお、遠心分離機の回転数と回転半径は、相対遠心加速度が上記範囲内となるように適宜選択することができる。ここで、本明細書において「相対遠心加速度」とは、次の式(II)により算出した値をいう。
【0040】
相対遠心加速度(G)=1188×r×N
2×10
−8・・・(II)
【0041】
〔式(II)中、rは遠心機の最大回転半径(cm)を示し、Nは一分間あたりの回転数(rpm)を示す。〕
【0042】
このようにして回収されるリン脂質相は、本工程Aにおけるカテキン類含有組成物として、そのまま用いることができる。
【0043】
(溶媒)
本工程においては、溶媒として有機溶媒水溶液及び有機溶媒から選択される少なくとも1種を使用する。
有機溶媒としては、親水性有機溶媒が好ましく、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステルを挙げることができる。中でも、アルコール、ケトンが好ましく、食品への使用を考慮すると、アルコールがより好ましく、エタノールが更に好ましい。
【0044】
有機溶媒水溶液中の有機溶媒濃度は、カテキン類の収率及び純度の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、40質量%以上がより更に好ましい。
【0045】
(混合)
カテキン類含有組成物と溶媒との混合方法は特に限定されず、カテキン類含有組成物と溶媒とを同時に投入して混合しても、一方を他方に投入して混合してもよい。また、カテキン類含有組成物と溶媒とを混合する際には、撹拌、震盪、超音波照射等の処理を行ってもよい。
【0046】
溶媒の使用量は、カテキン類の収率及び純度の観点から、カテキン類含有組成物中の総固形分量に対する総溶媒量の質量比として、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましく、また生産性の観点から、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。かかる質量比の範囲としては、好ましくは2〜70、より好ましくは4〜60、更に好ましくは6〜50である。ここでいう「総溶媒量」とは、カテキン類含有組成物に含まれる溶媒(例えば水)の量と、混合に使用した有機溶媒水溶液又は有機溶媒の量の総和である。
【0047】
混合液中の有機溶媒濃度は、カテキン類の収率の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましく、またカテキン類の純度の観点から、55質量%以下が好ましく、53質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。かかる有機溶媒濃度の範囲としては、好ましくは15〜55質量%、より好ましくは20〜53質量%、更に好ましくは25〜50質量%である。
なお、混合液中の有機溶媒濃度の調整方法としては、例えば、カテキン類含有組成物と有機溶媒水溶液とを混合し、有機溶媒濃度を上記範囲内に調整する方法、カテキン類含有組成物を水に溶解後、有機溶媒を添加して有機溶媒濃度を上記範囲内に調整する方法、カテキン類含有組成物を有機溶媒に分散又は溶解後、徐々に水を添加して有機溶媒濃度を上記範囲内に調整する方法等が挙げられる。なお、カテキン類含有組成物には溶媒が含まれていてもよく、カテキン類含有組成物中に溶媒が含まれる場合には、該溶媒の濃度を考慮して有機溶媒及び/又は水の添加量を適宜決定し、混合液中の有機溶媒濃度を調整すればよい。
【0048】
カテキン類含有組成物と溶媒の混合温度は、カテキン類の回収率及び純度の観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上更に好ましく、30℃以上より殊更に好ましく、またカテキン類の安定性の観点から、60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。かかる混合温度の範囲としては、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは20〜55℃、殊更に好ましくは30〜50℃である。
カテキン類含有組成物と溶媒との混合時間は、製造スケール等により一様ではないが、カテキン類の回収率及び純度、精製効率の観点から、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上が更に好ましく、そして360分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、60分以下が更に好ましい。かかる混合時間の範囲としては、好ましくは10〜360分、より好ましくは15〜120分、更に好ましくは20〜60分である。なお、混合液の温度が所定時間一定に保持されるように、液温制御手段を設けることができる。
【0049】
<工程B>
工程Bは、工程Aにより得られた混合液中に生じるカテキン類に富む相を回収する工程である。
本工程では、混合液を固液分離することにより生じる液相を、カテキン類に富む相として回収できる。固液分離としては、前述と同様に、限外濾過、遠心分離、ゲルクロマトグラフィー、透析等を挙げることができる。固液分離は、1種又は2種以上を組み合わせて行うことができる。中でも、遠心分離が好ましい。混合液を遠心分離することで、リン脂質及び夾雑物に富む相が沈殿するため、溶媒に溶解したカテキン類に富む液相を上澄みとして簡便に回収することができる。
【0050】
遠心分離機としては、分離板型、円筒型、デカンター型等の一般的な機器を使用することができ、必要に応じて超遠心機を用いても良い。
遠心分離する際の温度は、カテキン類の収率と分離しやすさの観点から、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましく、30℃以上より殊更に好ましく、またカテキン類の安定性の観点から、60℃以下が好ましく、55℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。かかる温度の範囲としては、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜55℃、更に好ましくは20〜55℃、殊更に好ましくは30〜50℃である。
遠心分離の時間は、カテキン類の回収率及び純度、分離しやすさの観点から、3分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が更に好ましく、15分以上がより更に好ましく、そして300分以下が好ましく、200分以下がより好ましく、100分以下が更に好ましく、60分以下がより更に好ましい。遠心分離の時間の範囲としては、好ましくは3〜300分、より好ましくは5〜200分、更に好ましくは10〜100分、より更に好ましくは15〜60分である。
また、遠心分離の条件は、カテキン類の回収率及び純度、分離しやすさの観点から、相対遠心加速度として、例えば、300G以上が好ましく、500G以上がより好ましく、800G以上が更に好ましい。なお、上限は特に限定されるものではないが、例えば170000G以下が好ましく、120000G以下がより好ましく、70000G以下が更に好ましい。かかる相対遠心加速度の範囲としては、好ましくは300〜170000G、より好ましくは500〜120000G、更に好ましくは800〜70000Gである。なお、遠心分離機の回転数と回転半径は、相対遠心加速度が上記範囲内となるように適宜選択することができる。
【0051】
本発明の製造方法は、下記の特性(i)〜(ii)を具備することができる。
(i)本発明の精製法方法は、カテキン類の収率が、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上である。
(ii)本発明の製造方法により得られた精製カテキン類含有組成物は、カテキン類の純度が、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。
【実施例】
【0052】
1.カテキン類及びカフェインの分析
精製茶抽出物を、0.1mol/Lの酢酸−ジメチルスルホオキシド溶液で適宜希釈し0.2μmのフィルターでろ過して試料を調製した。カテキン類、及びカフェインの測定は、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。カテキン類の標準品としては、三井農林製のものを使用し、検量線法で定量した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0053】
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0.0 97 3
5.0 97 3
37.0 80 20
43.0 80 20
43.5 0 100
48.5 0 100
49.0 97 3
60.0 97 3
【0054】
2.カテキン類の回収率
カテキン類の回収率は、下記式(1)により算出した。
【0055】
精製カテキン類含有組成物のカテキン類の回収率=(精製カテキン類含有組成物に含まれるカテキン類質量)/(カテキン類含有組成物に含まれるカテキン類質量)×100・・・(1)
【0056】
3.カテキン類の純度
カテキン類の純度は、下記式(2)により算出した。
精製カテキン類含有組成物のカテキン類の純度=(精製カテキン類含有組成物に含まれるカテキン類質量)/(精製カテキン類含有組成物に含まれる総固形分質量)×100・・・(2)
【0057】
調製例1
緑茶抽出物(カテキン類濃度32質量%)を0.12g、リン脂質として大豆ホスファチジルコリン(コートソームNC20、日油株式会社製)を0.21gを、10gのイオン交換水と混合した。混合物を25℃にて30分震盪しつつ、インキュベートした。次いで、分離操作として25℃、1000G(回転数3000rpm)、30分の条件にて遠心分離を行い、リン脂質相を沈殿させ、上澄みの液相を除去した。沈殿相の固形分を回収し、カテキン類含有組成物Xを得た。
【0058】
調製例2
緑茶抽出物(カテキン類濃度32質量%)を0.25g、リン脂質として大豆ホスファチジルコリン(コートソームNC20、日油株式会社製)を0.81gを、10gのイオン交換水と混合した。混合物を25℃にて30分震盪しつつ、インキュベートした。次いで、分離操作として25℃、1000G(回転数3000rpm)、30分の条件にて遠心分離を行い、リン脂質相を沈殿させ、上澄みの液相を除去した。沈殿相の固形分を回収し、カテキン類含有組成物Yを得た。
【0059】
調製例3
緑茶抽出物(カテキン類濃度32質量%)を0.12g、リン脂質として大豆ホスファチジルコリン(コートソームNC20、日油株式会社製)を0.20gを、10gのイオン交換水と混合した。混合物を25℃にて30分震盪しつつ、インキュベートした。次いで、分離操作として25℃、1000G(回転数3000rpm)、30分の条件にて遠心分離を行い、リン脂質相を沈殿させ、上澄みの液相を除去した。沈殿相の固形分を回収し、カテキン類含有組成物Zを得た。
【0060】
実施例1
調製例1で得られたカテキン類含有組成物X0.38gと、20質量%のエタノール水溶液10.02gとを25℃で混合した(混合後のエタノール濃度は、19.7質量%)。混合物を25℃にて30分震盪しつつ、インキュベートした。次いで、分離操作として25℃、1000G(回転数3000rpm)、30分の条件にて遠心分離を行い、リン脂質及び夾雑物に富む相を沈殿させ、上澄みのカテキン類に富む液相を回収し、精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
実施例2〜9
表1に示す濃度のエタノール水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
エタノール水溶液の代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例10
表2に示す量のエタノール水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作により精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を実施例5の結果とともに表2に示す。
【0065】
実施例11〜13
カテキン類含有組成物Xをカテキン類含有組成物Yに代え、表2に示す量のエタノール水溶液を用いたこと以外は、実施例5と同様の操作により精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を実施例5の結果とともに表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例14〜17
カテキン類含有組成物Xをカテキン類含有組成物Zに代え、エタノール水溶液の濃度を40質量%とし、表3に示す温度でカテキン類含有組成物とエタノール水溶液とを混合したこと以外は、実施例10と同様の操作により精製カテキン類含有組成物を得た。得られた精製カテキン類含有組成物について、分析を行った。その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表1〜3から、(A)カテキン類と(B)リン脂質との質量比[(B)/(A)]が2〜100であるカテキン類含有組成物と、有機溶媒水溶液及び有機溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒とを混合し、混合液中に生じるカテキン類に富む相を回収することで、カテキン類を純度よく回収できることがわかる。