特許第6730799号(P6730799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6730799-乳化化粧料の製造法 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730799
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】乳化化粧料の製造法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20200716BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200716BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200716BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61K8/34
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/06
   A61Q19/00
   A61Q5/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-227883(P2015-227883)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-95384(P2017-95384A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】西村 有加
(72)【発明者】
【氏名】島田 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】赤荻 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−051610(JP,A)
【文献】 特開平09−249900(JP,A)
【文献】 特開2000−202268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−99
A61Q 1/00−90/00
B01F 1/00−5/26、17/00−56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性カミツレ抽出物を乾燥固形分量として0.001〜5質量%、両親媒性固体脂を含む油剤及び水を含有する乳化化粧料組成物の製造法であって、
撹拌翼を有する撹拌槽に、油溶性カミツレ抽出物と両親媒性固体脂を含む油剤とを含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌槽内径に対して50〜110%の液深さになる量添加し、前記両親媒性固体脂の融点(T1)〜T1+30℃の温度下、前記液深さに対して58〜90%の撹拌翼径を有する撹拌手段により撹拌する工程(工程1)、並びに
工程1で得られた組成物を25±5℃まで冷却する工程(工程2)を有する乳化化粧料の製造法。
【請求項2】
有効撹拌翼径が、前記液深さに対し35〜70%である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
撹拌翼の少なくとも一個が、前記液深さに対して底面から20〜70%の位置にある請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
撹拌工程の前、同時又は後のいずれかにせん断工程を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の製造法。
【請求項5】
撹拌槽の容積が0.5〜3m3である請求項1〜4のいずれか1項記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化化粧料の工業的な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カミツレ抽出物は、美白作用の他、光老化抑制作用、コラーゲン産生促進作用、養毛作用、ATP産生促進作用、皮膚バリア機能改善作用、細胞分化促進作用、コラーゲンゲル収縮促進作用、毛穴収縮作用等の多くの生理作用を有することから、皮膚化粧料、毛髪化粧料、入浴剤等に配合されている(特許文献1〜5等)。
さらに、カミツレ抽出物と種々の油剤とを配合した乳化化粧料も報告されており(特許文献6〜8)、その製造法は、通常油相成分を必要に応じて加熱溶解し、撹拌しながら水相を添加して乳化するという手段である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−25742号公報
【特許文献2】特開平8−73324号公報
【特許文献3】特開平8−92056号公報
【特許文献4】特開平10−72336号公報
【特許文献5】特開2007−161666号公報
【特許文献6】特開2011−207819号公報
【特許文献7】特開2013−155163号公報
【特許文献8】特開2015−117196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カミツレ抽出物と固体脂とを含有する乳化化粧料の製造においては、少量の実験スケールでは問題なく製造できる処方であっても、そのままスケールアップすると、乳化粒子径が均一で良好な乳化化粧料を得ることが困難であることが判明した。
従って、本発明の課題は、大量スケールにおいても、均一で良好な乳化系が得られる、カミツレ抽出物含有乳化化粧料の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、カミツレ抽出物と固体脂とを含有する化粧料を撹拌装置で製造する際の条件について種々検討した結果、撹拌槽への原料の添加量、さらに原料の液深さと撹拌翼径とを一定の関係にすることにより、乳化粒子径が均一で良好な安定性を有する乳化化粧料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、油溶性カミツレ抽出物を乾燥固形分量として0.001〜5質量%、両親媒性固体脂を含む油剤及び水を含有する乳化化粧料組成物の製造法であって、
撹拌翼を有する撹拌槽に、油溶性カミツレ抽出物と両親媒性固体脂を含む油剤とを含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌槽内径に対して50〜110%の液深さになる量添加し、前記両親媒性固体脂の融点(T1)〜T1+30℃の温度下、前記液深さの58〜90%の撹拌翼径を有する撹拌翼を有する撹拌手段により撹拌する工程(工程1)、並びに工程1で得られた組成物を25±5℃まで冷却する工程(工程2)を有する乳化化粧料の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造法によれば、大量のスケールの製造においても、カミツレ抽出物、固体脂及び水から、均一な乳化粒子径を有する乳化系を有し、保存しても乳化系が安定に維持された乳化化粧料が安定して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造法に用いる撹拌槽の概略図の例を示す。
図2】撹拌翼径、駆動軸径及び有効撹拌翼径の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造法は、(A)油溶性カミツレ抽出物を乾燥固形分量として0.001〜5質量%、(B)両親媒性固体脂を含む油剤及び(C)水を含有する乳化化粧料組成物の製造法であって、前記工程1及び工程2を有することを特徴とする。
まず、乳化化粧料組成物について説明する。
【0010】
本発明で用いる(A)油溶性カミツレ抽出物は、カミツレの油溶性溶媒による抽出物であり、油溶性溶媒による抽出液及び当該抽出液を乾燥して乾燥粉末の形態としたもののいずれも含むが、種々の生理効果を向上させる観点から、油溶性溶媒による抽出液として使用することが好ましい。
【0011】
カミツレとは、キク科(Asteraceae(Compositae))シカギク属の一年草カモミール(学名:Matricaria recutita又はMatricaria chamomilla)の和名である。カミツレとしては、種々の近縁種があるが、生理作用の点からジャーマン・カモミール(German chamomile)が好ましい。カミツレの抽出部位としては、全草、茎、葉及び花のいずれでもよいが、生理作用、香りの点から花がより好ましい。
【0012】
油溶性カミツレ抽出物の抽出に用いられる溶媒は、油溶性であればよいが、生理作用の優れた抽出物を得る点から、親油性有機溶剤が好ましい。
親油性有機溶剤としては、溶解度パラメータ(SP値)が15〜21の範囲にある油剤が好ましく、例えば、ミリスチン酸イソプロピル(SP値17.0)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値17.7)、流動パラフィン(SP値16.4)、スクワラン(SP値16.2)及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらは、ヒマシ油、パーシック油、大豆油、ヒマワリ油等の植物由来の油であってもよい。一般に、抽出に用いる親油性有機溶剤によって、抽出物に含まれる成分の種類と量が異なる。本発明において、親油性有機溶剤としてスクワランを用いた抽出物が、特に優れた生理効果を与えるので好ましい。なお、SP値とは物質間の相溶性の尺度をいい、特開平10−194920号公報に記載の方法に基づき、Hansenの3次元溶解度パラメーターを計算することにより求められる。
【0013】
油溶性カミツレ抽出物は、例えば、特開平10−194920号公報記載の方法により、カミツレから親油性有機溶剤を用いて抽出することにより製造できる。具体的には、粉砕した乾燥カミツレ花に、カミツレ花に対して1〜100質量倍の親油性有機溶剤を加え、10〜90℃で1〜96時間攪拌抽出を行うのが好ましい。温度は、親油性有機溶剤の種類により適宜設定することができる。
【0014】
本発明で用いる油溶性カミツレ抽出物には、カマズレン、ウンベリフェロン、7−メトキシクマリン、マトリシン、マトリカリン、タラキサステロール、ウペオール、アピイン、下記式(1)で表されるスピロエーテル化合物等の成分が含まれている。
【0015】
【化1】
【0016】
(Z体、E体の両異性体を含む)
【0017】
これら成分のうち、有効な美白効果等の生理効果を得る観点から、スピロエーテル化合物(1)を含有するのが好ましい。
本発明において、油溶性カミツレ抽出物中のスピロエーテル化合物(1)の含有量は、10〜500ppmが好ましい。10ppm以上とすることで、確実に生理効果を得ることができ、500ppm以下とすることで、乳化化粧料中での保存安定性の確保という効果がある。油溶性カミツレ抽出物中のスピロエーテル化合物(1)の含有量は、100〜480ppmがより好ましく、200〜450ppmがさらに好ましく、300〜440ppmがさらに好ましく、360〜420ppmがさらに好ましい。
【0018】
本発明乳化化粧料中の(A)油溶性カミツレ抽出物の含有量は、生理効果、香り及び使用感を向上させる観点から、乾燥固形分量として0.001質量%以上が好ましく、0.0015質量%以上がより好ましく、また5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。具体的には、乾燥固形分量として、0.001〜5質量%が好ましく、0.0015〜4質量%がより好ましく、0.0015〜2質量%がさらに好ましい。
ここで乾燥固形分量とは、抽出物を乾燥して溶媒を除去した固形分量であり、溶媒量が判明している場合は溶媒量を除いた残量である。
【0019】
また、前記のように、(A)油溶性カミツレ抽出物の中には、好ましくは、スピロエーテル化合物(1)が10〜500ppm含まれており、本発明の乳化化粧料中には、生理効果、香り及び使用感を向上させる観点から、スピロエーテル化合物(1)が、0.01ppm以上含まれているのが好ましく、0.02ppm以上含まれているのがより好ましく、0.05ppm以上含まれているのがさらに好ましく、また30ppm以下含まれているのが好ましく、20ppm以下含まれているのがより好ましく、10ppm以下含まれているのがさらに好ましい。具体的には、スピロエーテル化合物(1)の含有量は、本発明乳化化粧料中に0.01〜30ppmが好ましく、0.02〜20ppmがより好ましく、0.05〜10ppmがさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いられる(B)油剤中の両親媒性固体脂とは、親水性及び親油性を有する常温(5〜35℃)で固体の脂質類であり、具体的には、セラミド類、炭素数12〜24の脂肪族アルコール、炭素数12〜24のモノ脂肪酸グリセリンエステル、炭素数12〜24のモノアルキルグリセリルエーテル、炭素数12〜22のモノ脂肪酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0021】
セラミド類としては、天然セラミド及び擬似セラミドから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。乳化化粧料の保存安定性の向上の観点ときしみ感を低減させる観点から、具体的には、特開2013−53146号公報記載のセラミド類が好ましい。
【0022】
天然型セラミドの具体的な例示として、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J.Lipid Res.,24:759(1983)の図2、及びJ.Lipid.Res.,35:2069(1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド)が挙げられる。
【0023】
更にこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も含まれる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。特にCERAMIDE1、CERAMIDE2、CERAMIDE3、CERAMIDE5、CERAMIDE6IIの化合物(以上、INCI、8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】
これらは天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。このような天然型セラミドの市販のものとしては、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社)、Ceramide TIC−001(高砂香料社)、CERAMIDE II(Quest International社)、DS−Ceramide VI、DS−CLA−Phytoceramide、C6−Phytoceramide、DS−ceramide Y3S(DOOSAN社)、CERAMIDE2(セダーマ社)が挙げられる。
【0026】
【化3】
【0027】
擬似型セラミドとしては、乳化化粧料の保存安定性の向上の観点ときしみ感を低減させる観点から、下記一般式(2)で表される擬似セラミドが好ましい。
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、R1は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X1は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R2はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R3は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
【0030】
これらの中でも、乳化化粧料の保存安定性の向上の観点ときしみ感を低減させる観点から、下記式で表される擬似セラミドがより好ましい。
【0031】
【化5】
【0032】
一般式(2)としては、R1がヘキサデシル基、X1が水素原子、R2がペンタデシル基、R3がヒドロキシエチル基のもの;R1がヘキサデシル基、X1が水素原子、R2がノニル基、R3がヒドロキシエチル基のものの擬似型セラミドが好ましく、一般式(2)のR1がヘキサデシル基、X1が水素原子、R2がペンタデシル基、R3がヒドロキシエチル基のもの(N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)が、更に好ましい。
【0033】
【化6】
【0034】
また、炭素数12〜24の脂肪族アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらのうち、直鎖アルキル基を有するものが好ましく、炭素数16〜18の脂肪族アルコールがより好ましく、セチルアルコール、ステアリルアルコールから選ばれる少なくとも1種又は2種以上がさらに好ましく、セチルアルコール及びステアリルアルコールを含むことがよりさらに好ましい。
【0035】
炭素数12〜24のモノ脂肪酸グリセリンエステルとしては、例えば、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノイソステアリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、グリセリンモノベヘン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上が好ましく、グリセリンモノベヘン酸エステルを含むことがより好ましい。
【0036】
炭素数12〜24のモノアルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、モノデシルグリセリルエーテル、モノラウリルグリセリルエーテル、モノミリスチルグリセリルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、モノステアリルグリセリルエーテル、モノベヘニルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0037】
炭素数12〜24のモノ脂肪酸ソルビタンエステルとしては、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノベヘン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0038】
これらのなかで、両親媒性固体脂としては、使用感及び乳化安定性を向上させる観点及び原料臭を低減させる観点より、炭素数14〜24の脂肪族アルコール、炭素数14〜24のモノ脂肪酸グリセリンエステル、炭素数12〜24のモノアルキルグリセリルエーテル及び炭素数14〜24のモノ脂肪酸ソルビタンエステルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上が好ましい。また、両親媒性固体脂としては、炭素数16〜24の脂肪族アルコール及び炭素数16〜24のモノ脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上がより好ましく、セチルアルコール、ステアリルアルコール及び親油性モノステアリン酸グリセリルから選ばれる少なくとも1種又は2種以上がさらに好ましい。
【0039】
(B)成分中の両親媒性固体脂は、1種又は2種以上を用いることができ、その含有量は、原料臭を低減させる観点から、乳化化粧料中に0.1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、乳化安定性と使用感を向上させる観点から、その含有量は、乳化化粧料中に24質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。また、(B)成分の両親媒性固体脂の含有量は、乳化化粧料中に0.1〜24質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、4〜16質量%がさらに好ましく、5〜8質量%がさらに好ましい。
【0040】
また、(B)成分には、前記の両親媒性固体脂以外の油剤を含有していてもよい。当該油剤としては、原料臭を低減させる観点及び使用感を向上させる観点から、極性油及び非極性油のいずれか一方あるいは両方を含有するが、両者を含有するのが好ましい。油剤が極性油及び非極性油を含む場合、非極性油に対する極性油の質量比(極性油/非極性油)は、原料臭を低減させる観点、使用感を向上させる観点から0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.04以上がさらに好ましく、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下がさらに好ましい。当該質量比は、具体的には、0.02〜30が好ましく、0.03〜25がより好ましく、0.04〜23がさらに好ましい。
【0041】
非極性油としては、炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン等が挙げられる。これらの炭化水素油のうち、伸びを向上させる観点から、流動パラフィン、流動イソパラフィンおよびスクワランから選ばれる少なくとも1種が好ましく、流動イソパラフィンおよびスクワランから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0042】
極性油としては、エステル油、エーテル油、シリコーン油、フッ素油、高級脂肪酸等が挙げられる。
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油及びテトラエステル油が挙げられる。モノエステル油としては、炭素数2〜24の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸のモノエステルが挙げられ、具体例としては、2−エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2−ヘキシルデシルステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソデシルベンゾエート、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、安息香酸アルキル(C12〜C15)等が挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピルおよびメトキシケイヒ酸オクチルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソノナン酸イソノニルおよびイソノナン酸イソトリデシルから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0043】
ジエステル油としては、炭素数3〜18のジカルボン酸のジエステル、多価アルコールのジ脂肪酸エステル等が挙げられ、具体例としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコールおよびジイソステアリン酸プロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリル酸プロピレングリコールおよびジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0044】
トリエステル油としては、3価以上の多価アルコールのトリ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリンが挙げられ、これらはオリーブ油、ホホバ油等の植物由来のものであってもよい。これらの中では、使用感を向上させる観点から、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリンおよびトリイソステアリン酸グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリンを含むことがより好ましい。
【0045】
テトラエステル油としては、4価以上の多価アルコールのテトラ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリットが挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトラオクタン酸ペンタエリスリットおよびテトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリットから選ばれる少なくとも1種が好ましく、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリットを含むことがより好ましい。
【0046】
エーテル油としては、ジアルキルエーテルが挙げられ、具体的には、ジヘキシルエーテル、ジカプリリルエーテル、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテル等が挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテルおよびジカプリリルエーテルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテルを含むことがより好ましい。
【0047】
シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、網状型メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、メチルポリシロキサンおよび、架橋型メチルポリシロキサン、網状型メチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、メチルポリシロキサンを含むことがより好ましい。
【0048】
フッ素油としては、フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等が挙げられる。
【0049】
高級脂肪酸としては、炭素数12〜24の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の直鎖脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セイコセン酸、エルカ酸等の直鎖不飽和脂肪酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等の分岐飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの中では、使用感を向上させる観点から、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リノレン酸、セイコセン酸およびイソステアリン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸およびイソステアリン酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0050】
本発明の乳化化粧料中の両親媒性固体脂を含む(B)油剤の合計含有量は、原料臭を低減させる観点、乳化安定性を向上させる観点、使用感を向上させる観点から0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。
(B)油剤の合計含有量は、原料臭の低減、乳化安定性及び使用感の向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.5〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、4〜20質量%がさらに好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。
【0051】
本発明の乳化化粧料は、(C)水を含有する。(C)水の含有量は、原料臭を低減させる観点、乳化安定性及び使用感を向上させる観点から77〜99質量%が好ましく、80〜97質量%がより好ましく、82〜95質量%がさらに好ましい。
【0052】
本発明の乳化化粧料には、前記成分の他、(D)界面活性剤、(E)水溶性有益剤、増粘剤、保湿剤、殺菌剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、粉体、香料、抗炎症剤、紫外線防御剤、紫外線散乱剤、美白剤、制汗剤、酸化防止剤、天然エキス等を適宜含有することができる。
なお、各成分は、上述した一の剤としての機能に加え、他の機能を有するものであってもよく、例えば、粉体が紫外線散乱剤としても機能してよい。
【0053】
(D)界面活性剤としては、両親媒性固体脂以外の界面活性剤である、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が使用できる。イオン性界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が使用できる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸アルギニン等の炭素数12〜22の脂肪酸又はその塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の炭素数12〜22のアルキル硫酸エステル又はその塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等の炭素数12〜22のアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−炭素数12〜22のアシルサルコシン又はその塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等の炭素数12〜22のアルキルリン酸又はその塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレン炭素数12〜22のアルキルエーテルリン酸又はその塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の炭素数12〜24のジアルキルスルホコハク酸又はその塩;N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等の炭素数12〜22のN−アルキロイルメチルタウリン又はその塩、ジラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸アルギニン、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−炭素数12〜22のアシルグルタミン酸又はその塩などが挙げられる。
【0054】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化トリアルキルメチルアンモニウム、アルキルアミン塩などが挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルアミドプロピルベタイン等が挙げられ、アルキルアミドプロピルベタインが好ましい。
【0056】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0057】
界面活性剤としては、乳化安定性を向上させる観点から、イオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤がより好ましい。
また、アニオン界面活性剤としては、脂肪酸又はその塩以外のものが好ましく、ポリオキシエチレン炭素数12〜22のアルキルエーテルリン酸又はその塩、炭素数12〜22のN−アルキロイルメチルタウリンナトリウム、N−炭素数12〜22のアシルグルタミン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、使用感の点から、炭素数12〜22のN−アルキロイルメチルタウリンナトリウムがより好ましい。炭素数12〜22のN−アルキロイルメチルタウリンナトリウムとしては、その炭素が12〜20であるのが好ましく、14〜20がより好ましく、具体的には、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウムがさらに好ましい。
【0058】
界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、対イオンを除いた化合物の含有量を示し、各成分を安定に分散でき、良好な使用感を得る点から、乳化化粧料中に0.01質量%以上が好ましく、0.047質量%以上がより好ましく、0.066質量%以上がさらに好ましく、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。また、界面活性剤の含有量は、対イオンを除いた化合物の含有量として、乳化化粧料中に0.01〜2.0質量%が好ましく、0.047〜1.0質量%がより好ましく、0.066〜0.8質量%がさらに好ましい。
【0059】
(E)水溶性有益剤としては、水溶性高分子、ポリオール等が挙げられる。
水溶性高分子としては、アクリル酸系ポリマーが好ましい。
アクリル酸系ポリマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、及びアクリルアミドから選ばれるモノマーを構成単位とするホモポリマー又はこれらモノマーを2種以上含むコポリマーであればよく、例えば、カルボキシビニルポリマー(シンタレンK、L;和光純薬工業社)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(PEMULEN TR−1、TR−2;ルーブリゾール社)、SEPPIC社から販売されているポリアクリルアミド(SEPIGEL 305)、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(SIMULGEL EG)、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー(SIMULGEL FL、SIMULGEL NS、SEPIPLUS S、SEPINOV EMT 10)、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー(SEPIPLUS 265)、ポリアクリレート−13(SEPIPLUS 400)等が挙げられる。
これらのうち、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーから選ばれる1種又は2種以上を用いた場合、少量でも製剤が安定し、且つ塗布時のよれ防止効果や使用感の向上の点から好ましい。
【0060】
アクリル酸系ポリマーは、塩基との中和によりアクリル酸系ポリマー塩として用いられる。塩基としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0061】
水溶性高分子は、1種又は2種以上を用いることができ、その含有量は、乳化化粧料の乳化安定性を向上させる観点から、乳化化粧料中に、すなわち、乳化化粧料の全質量を基準として、0.05質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、乳化化粧料中に0.05〜3質量%が好ましく、0.15〜2質量%がより好ましく、0.2〜1.5質量%がさらに好ましく、0.3〜1質量%がさらに好ましい。
なお、本発明において、水溶性高分子の乳化化粧料中の含有量は、酸としての含有量を意味する(すなわち、中和されている場合であっても、酸に換算してその含有量を定義する)。
【0062】
ポリオールとしては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、グリセリン、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、分子量10000以下のポリエチレングリコール、糖類、多価アルコール及びこれらの誘導体等が挙げられる。
これらのうち、乳化安定性と使用感を両立する点から、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリエチレングリコール及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種が好ましく、グリセリン、1,3−ブチレングリコール及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0063】
前記グリセリン誘導体としては、一般式(3)で表されるグリセリン誘導体が挙げられる。
Gly-[O-(PO)a-(EO)b-(BO)cH]3 (3)
(式中、Glyはグリセリンから水酸基を除いた基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、a及びbは、それぞれPO及びEOの平均付加モル数で、1〜50の値を示し、POとEOの質量比(PO/EO)は1/5〜5/1であり、BOは炭素数4のオキシアルキレン基を示し、cはBOの平均付加モル数で、1〜5の値を示す)
グリセリン誘導体としては、具体的には、(EO)の平均付加モル数が8、(PO)の平均付加モル数が5、(BO)の平均付加モル数が3であるものが挙げられ、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(3BO)(8EO)(5PO)が好ましく、その市販品としては、ウィルブライドS−753(日油社製)を使用することができる。
【0064】
糖類としては、トレハロース、グルコース等の単糖類、二糖類等が挙げられる。多価アルコールとしては、マンニトール、エリスリトール、イノシトール、キシリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0065】
ポリオールの含有量は、原料臭の低減、乳化安定性及び使用感の向上の観点から、乳化化粧料中、0.3質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましく、また6質量%以下が好ましく、5.5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.3〜6質量%が好ましく、0.4〜5.5質量%がより好ましく、0.6〜4質量%がさらに好ましく、0.7〜3.5質量%がさらに好ましい。
【0066】
本発明の乳化化粧料は、一般に皮膚に塗布する形の乳化化粧料であれば特に限定されず、通常の皮膚化粧料の他、下地化粧料としても利用可能である。剤型としては、一般に用いられるものであり、O/W型又はW/O型エマルション等が挙げられ、具体的には、乳液、クリーム、パック、ジェル等が挙げられる。
【0067】
本発明の乳化化粧料組成物の製造法は、次の(工程1)及び(工程2)を有する。
(工程1)撹拌翼を有する撹拌槽に、油溶性カミツレ抽出物と両親媒体性固体脂を含む油剤とを含有する油相と、水を含有する水相とを、撹拌槽内径に対して50〜110%の液深さになる量添加し、前記両親媒体性固体脂の融点(T1)〜T1+30℃の温度下、前記液深さの58〜90%の攪拌翼径を有する攪拌手段により撹拌する工程。
(工程2)工程1で得られた組成物を25±5℃まで冷却する工程。
【0068】
工程1に用いられる油相は、油溶性カミツレ抽出物及び両親媒体性固体脂を含む油剤、他の油成分等を、好ましくは加熱下で、より好ましくは前記両親媒体性固体脂の融点(T1)〜T1+30℃の温度下で、混合する方法により得られる。混合方法は、後述の油相と水相とを撹拌する工程に用いられる撹拌手段を用いることができる。混合の際、前述の界面活性剤を添加することが好ましい。
【0069】
工程1に用いられる水相は、水、その他の水溶性成分等を、混合する方法により得られる。混合方法は、後述の油相と水相とを撹拌する工程に用いられる撹拌手段を用いることができる。
【0070】
工程1では、まず、撹拌翼を有する撹拌槽に、前記油相と水相とを、撹拌槽内径に対しして50〜110%の液深さになる量を添加する。このような液深さにすることにより、良好な工業的生産性及び均一な乳化粒子径を有する乳化物が得られる。好ましい液深さは、60〜109%であり、より好ましくは70〜108%である。ここで、撹拌槽内径とは、撹拌槽の最大内径である。
【0071】
工程1では、次に、両親媒性固体脂の融点(T1)〜T1+30℃の温度下で、撹拌する。撹拌槽は、半楕円型、半球型、コーン型等公知のものが使える。撹拌槽の容積は、工業的スケールにおける課題の解決という観点から0.5〜3m3が好ましく、1〜3m3がより好ましい。
【0072】
撹拌槽に用いられる撹拌手段は、撹拌翼を有するものであり、油相と水相とを均一に撹拌する観点から、撹拌翼の形状が、プロペラ型、パドル型、リボン型及びスクリュー型から選ばれるすくなくとも1種であるのが好ましい。本発明においては、パドル型には、ピッチパドル等のパドルが駆動軸に対して傾きを持ったもの、フラットパドル等の駆動軸に平行なものを含み、後者においては、アンカーパドルのようにパドル形状がアンカー型のものも含む。
なお、撹拌翼は、駆動軸に対し同一垂直線上に複数枚付設したり、あるいは、駆動軸上の異なる位置に複数個付設することが、乳化粒子径が均一で良好な安定性を有する乳化化粧料を得る観点から、好ましい。ここで、駆動軸に対し同一垂直線上に複数枚付設するとは、個々の翼の両側又は片側が駆動軸に対し同一垂直線上にあることを意味する。
したがって、プロペラ型のように、駆動軸から斜めに螺旋上に伸びているものも、駆動軸に対し同一垂直線上にある撹拌翼である。
本発明において、撹拌翼駆動軸に対し同一垂直線上に複数撹拌翼を有する場合の、翼の数は、翼の単位として「枚」を用い、駆動軸上の異なる位置に複数付設する場合は、翼の単位として「個」を用いる。すなわち、前者は撹拌翼として一体の物として見なし、後者は別の撹拌翼と見なす。例えば、実施例1の製造条件は、撹拌翼駆動軸に対し同一垂直線上に3枚有する撹拌翼を2個有することになる。
【0073】
本発明において、撹拌翼径は、前記液深さの58〜90%であることが必要である。このような条件を満たす場合において、乳化粒子径の均一な乳化化粧料組成物が得られることを見出した。ここで、撹拌翼径とは、駆動軸に対し同一垂直線上にある最大長径である。検討の結果、撹拌翼径は、前記液深さに対して60〜90%が好ましく、60〜88%がより好ましい。図1に、撹拌槽の概略図を示す。図1は、撹拌翼を2個有する例である。
【0074】
また、撹拌翼は、駆動軸を中心部に備えているので、駆動軸の部分は撹拌には有効に作用しない。従って、前記撹拌翼径(撹拌翼の全最大長径)から駆動軸の直径(駆動軸径)を除いた長さが、撹拌翼の有効撹拌翼径となる(図2参照)。本発明では、かかる有効撹拌翼径は、乳化粒子径の均一な乳化化粧料を得る点から、前記液深さに対して35〜70%であるのが好ましく、40〜70%がより好ましく、40〜65%がさらに好ましい。
【0075】
また、撹拌翼は、駆動軸上に一個以上あればよいが、駆動軸の別の位置に複数個(二以上)有するのが好ましく、適度な撹拌を実現する観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。なお、個々の撹拌翼は、複数枚の撹拌翼を有することが好ましい。
【0076】
撹拌翼の少なくとも一個は、前記液深さに対して撹拌槽の底面から20〜70%の位置にあることが好ましく、他は70%超98%以下にあるのが好ましい(図1参照)。
なお、撹拌翼の位置とは、撹拌翼と駆動軸の接合部分の、駆動軸にそった中心位置である。
【0077】
なお、撹拌は撹拌翼を、駆動軸を中心に回転させて撹拌を行ってもよいし、別途掻取ミキサーや後述のせん断装置により、あるはこれと併せて撹拌をおこなってもよい。撹拌翼の回転数は、5〜40rpmが好ましく、10〜35rpmがより好ましい。撹拌時間は、1〜20分が好ましく、2〜15分がより好ましい。
【0078】
さらに、本発明では、前記撹拌手段に加えて、せん断工程を有することが好ましい。せん断工程は、ホモミキサー、ホモディスパー、フロージェットミキサー、ウルトラミキサー、コロイドミル及びホモジナイザーから選ばれるすくなくとも一種のせん断手段で行われることが好ましく、ホモミキサー、ホモディスパー及びホモジナイザーから選ばれるすくなくとも一種のせん断手段で行われることが好ましく、とくにホモミキサーが好ましい。
ホモミキサーによるせん断を行う場合の回転速度は、1000〜5000rpmが好ましく、1200〜4000rpmがより好ましい。
【0079】
せん断工程は、工程1の撹拌工程の撹拌工程の前、同時、後のいずれかで行うことができるが、安定性の良好な乳化化粧料組成物を得る観点から工程1の撹拌工程の撹拌工程と同時に行うことが好ましい。
【0080】
工程2は、工程1で得られた組成物を、25±5℃まで、冷却する工程である。冷却速度は0.1〜5℃/mが好ましく、0.5〜3℃/mがより好ましい。冷却中は、前記撹拌及びせん断を停止するのが好ましい。
【0081】
さらに、本発明では、冷却工程後、少なくも、12時間以上、より好ましくは24時間以上、得られた組成物を、25±5℃に保持する工程を有することが好ましい。冷却工程後、このような温度範囲に保持することで、乳化化粧料組成物の物性が安定し、ロットブレのない、均一な乳化粒子径を有する乳化化粧料を得ることができる。
【実施例】
【0082】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0083】
実施例1〜3、比較例1及び参考例1
(方法)
撹拌翼を有する撹拌槽として、300mLビーカー(撹拌層内径(8cm))と撹拌機を用意し、該撹拌槽内(にて、温度70℃下で予め、精製水(成分(C))中にアクリル酸・メタクリル酸共重合体(成分(D))を撹拌機にて分散させ、さらに、温度70℃下で、KOH、精製水(成分(C))を加えて混合して、水相を用意した。他の成分(成分(A)、(B)及び(E))を、温度70℃下で、混合して油相を用意した。
その後、水相と油相とを、撹拌翼を駆動して70℃、10分、500r/minで撹拌を行った。
その後、氷水で室温(25℃)まで、500r/minで撹拌を続けながら、冷却して乳化化粧料組成物を得た。得られた乳化化粧料組成物の液深さは、ビーカー底面から7cmであった。
【0084】
(評価)
ビーカー中に存在する乳化化粧料組成物の、ビーカー底面と上面の乳化物の粒径分布(個数分布に基づく幾何平均粒径、90μm以上の粒子の個数分布に基づく割合)をHoribaのレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950)で測定した。
【0085】
乳化化粧料組成物の処方を表1に示す。また、撹拌槽、撹拌翼、液深さ等の撹拌条件及び得られた乳化化粧料組成物の物性(平均粒径、乳化粒子径の分散性、均一性)を評価した結果を表2に示す。分散性は、大粒径(90μm以上の粒子の割合)で評価し、均一性は、ビーカー内の上部及び下部に在る乳化化粧料粒子の粒径差で評価した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表2より、本発明の工程1の条件(撹拌槽内径に対する液深さの比(50〜110%)、液深さに対する撹拌翼径の比(58〜90%)を満たす実施例1〜3は、撹拌槽上の上部及び下部の分散性も良好で、乳化粒子径の均一で小粒径な乳化化粧料が得られた。一方、液深さに対する撹拌翼径の比が57%の比較例1は、撹拌槽の上部及び下部全体の分散性が良好でなく、得られた乳化化粧料の乳化粒子径も大きく、均一でなかった。両親媒性固体脂を含有しない参考例1は、大粒径が粒子が比較例1に比べ少なく実使用可能な化粧料ではあるが、実施例に比べ分散性は悪く、平均粒子径も大きい。
【0089】
実施例4
実施例1の条件を参考に、乳化化粧料組成物を量産スケールで製造した。その撹拌条件を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
その後、25℃まで1℃/分で冷却し、さらに、25℃で24時間保持した。得られた乳化化粧料組成物は、撹拌槽内すべてにおいて、粒度分布がシャープで均一なものであった。撹拌槽が大きくなるにしたがい、分散力や系内の熱の伝わり方が不均一に成りやすいところ、本発明の製造法により、スケールアップ化しても乳化粒子径が均一で良好な安定性を有する乳化化粧料が得られることが確認された。
図1
図2