特許第6730810号(P6730810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6730810自動車用手動変速機のための伝達装置、この伝達装置、変速シャフト及び変速ギアを備えたアッセンブリ及び変速機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730810
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】自動車用手動変速機のための伝達装置、この伝達装置、変速シャフト及び変速ギアを備えたアッセンブリ及び変速機
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/06 20060101AFI20200716BHJP
   F16D 23/12 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   F16D23/06 Z
   F16D23/12 Z
   F16D23/06 D
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-13975(P2016-13975)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-148450(P2016-148450A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年12月12日
(31)【優先権主張番号】10 2015 102 141.2
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515314177
【氏名又は名称】ヘルビガー・アントリーブシュテクニク・ホールディング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HOERBIGER Antriebstechnik Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】オットマー・バック
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・エヒトラー
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0301243(US,A1)
【文献】 特開2005−331069(JP,A)
【文献】 実開昭55−034550(JP,U)
【文献】 実開昭61−084069(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速シャフト(10)及び該変速シャフトに回転可能に取り付けられた変速ギア(12、14)の間で回転方向における接続を形成するための伝達装置であって、
伝達ディスク(20)と、伝達ディスク(20)に連結したクラッチ歯(24)とを備え、
伝達ディスク(20)は、その外側に伝達歯(25)を備え
クラッチ歯(24)は、伝達ディスク(20)に連結されたクラッチディスク(22)に備えられ、
クラッチディスク(22)は伝達ディスク(20)の前側に配置され、軸方向において該伝達ディスクに接続されていることを特徴とする伝達装置。
【請求項2】
伝達歯(25)が伝達ディスク(20)の外周に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の伝達装置。
【請求項3】
2つの同期リング(30)が伝達ディスク(20)に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の伝達装置。
【請求項4】
作動要素(70)が、軸方向において伝達ディスク(20)に連結されていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の伝達装置。
【請求項5】
変速シャフト(10)と、該変速シャフト(10)に回転可能に取り付けられた少なくとも1つの変速ギア(12、14)と、該変速シャフト(10)及び該変速ギア(12、14)の間で回転方向における接続を形成するための伝達装置と、を備えたアッセンブリであって、
伝達装置は、伝達ディスク(20)と、伝達ディスク(20)に連結したクラッチ歯(24)とを備えており、
伝達ディスク(20)は、その外側に伝達歯(25)を備えており、
作動要素(70)が伝達ディスク(20)に係合し、作動要素(70)が伝達ディスク(20)から続いて軸方向に伸びており、
作動要素(70)が、スリーブの態様で変速シャフト(10)の周りに配置されていることを特徴とするアッセンブリ。
【請求項6】
変速ギア(12)が、伝達歯(25)が係合可能な変速ギア歯(60)を備えていることを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項7】
変速ギア歯(60)が、変速ギア(12)と一体的に設計されていることを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項8】
変速ギア歯(60)が、回転しないように変速ギア(12)に接続された変速ギア歯ワッシャ(62)の内周に備えられていることを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項9】
変速ギア(12)が、同期リング(31)と協働できる摩擦面(33)を備えていることを特徴とする請求項からの何れか1項に記載のアッセンブリ。
【請求項10】
摩擦面(33)が、直接、変速ギア(12)に備えられることを特徴とする請求項に記載のアッセンブリ。
【請求項11】
摩擦面(33)が、半径方向で外側に向いていることを特徴とする請求項または10に記載のアッセンブリ。
【請求項12】
摩擦面(33)が、半径方向で内側に向いていることを特徴とする請求項または10に記載のアッセンブリ。
【請求項13】
摩擦面(33)が、半径方向において、変速ギア歯(60)の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項から12の何れか1項に記載のアッセンブリ。
【請求項14】
請求項から13の何れか1項に記載のアッセンブリを備えた変速機であって、伝達歯(25)が係合可能なブロック歯(80)が備えられたハウジングを有することを特徴とする変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用手動変速機のための伝達装置に関し、特に、伝達装置、変速シャフト及び変速ギアを備えたアッセンブリ及び変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
手動変速機において、特に自動車に用いられる場合において、同期アセンブリが、変速シャフトと、変速ギアまたはアイドルギアとして変速シャフトに配置されたギアホイールとの間の回転方向における接続を形成するように働く。変速動作の第1ステップでは、同期アッセンブリが、シフトされる変速ギアが変速シャフトの速度に確実に適応するようにする。第2のステップでは、次に、変速シャフト及び変速ギアの間の回転方向における接続が行われる。そして、対応するギアが係合する。
【0003】
一般的に知られていることとして、同期アッセンブリは、主要部材として、同期ハブ、それに収容されたスラストピース、同期リング、及びセレクタスリーブを含む。セレクタスリーブが動作するとき、シフトされる変速ギアに連結された同期リングの1つが、スラストピース及び/またはブロッキングベベルを介して、摩擦面に押しつけられる。変速ギアの速度が変速シャフトの速度に同期されたとき、セレクタスリーブが完全にシフトされ、変速ギアに連結された歯に係合する。このようにして、同期ハブから変速ギアに対して、回転方向における接続が形成される。
【0004】
一般的に知られていることとして、同期ハブの代わりに、同期アッセンブリが、一般的に言って、同期ハブ、スラストピース及びセレクタスリーブを組み合わせた所謂伝達装置を採用する場合がある。このような同期アッセンブリを備えた変速機の基本構造を、図1から8を参照しながら以下に説明する。
【0005】
変速機は、2つの変速ギア12、14が配置された変速シャフト10を含む。2つの変速ギア12、14は、例えば、アイドラギアとして、変速シャフトに対して回転可能に設計されている。各々の変速ギア12、14に対して、変速ギア歯16が回転しないように連結されている。対応する変速ギア12、14に接続する個別の部材17上の内歯についても、同様な構造が適用される。
【0006】
2つの変速ギア12、14の間で、伝達ディスク20及び2つのクラッチディスク22により形成された伝達装置18が配置される。2つのクラッチディスク22は、伝達ディスク29の一方の側及び他方の側に配置され、クラッチディスク外歯24及びクラッチディスク内歯26を含む。外歯24は、変速ギア歯16と組み合わされるように設計され、内歯26は、変速シャフト歯28と係合する。よって、クラッチディスク22は、円周方向において、変速シャフト10と回転しないように係合するが、軸方向において、変速シャフト上をシフトできるようになっている。
【0007】
伝達ディスク20の一方の側及び他方の側において、各々に同期リング30が配置され、対応する変速ギア12、14に連結した摩擦面32と共働可能になっている。2つの同期リングは、伝達ディスク20の溝36内に伸びる幾つかのキャリア34と、伝達ディスク20の接続開口40を介して伸びる、180度反対側に配置された2つの接続タブ38とを含む(特に図3参照)。接続タブ38は、2つの同期リングを軸方向で互いに連結するように働く。連結した状態では、2つの同期リング30のキャリア34の自由端が、互いに近接して対向する(図4参照)。
【0008】
溝36の各々において、それぞれバネ44により半径方向で外側に付勢されたスラストピース42が配置されている(特に図5及び6参照)。各々のスラストピースの半径方向における外端において、プレ同期面46が形成される。プレ同期面46は、キャリア34の自由端において、半径方向で内面側に形成されたプレ同期ベベル48に当たるようになっている(図7参照)。対向するキャリア34のプレ同期ベベル48が並んで、頂点が半径方向で外側に向いた大きな開口角度のV字が形成される。
【0009】
キャリア34において、ブロック面50が形成される。ブロック面50は、円周方向に示されるように、斜め方向のアライメントにおいて、溝36の端部に対向している。ここでも、ブロック面50が、対向するキャリア34においてV字を形成し、対向するキャリアの2つのV字の頂点が、溝36の中心に向けて方向付けられている。
【0010】
記載された同期アッセッンブリは、下記のように作動する。ギア、例えば、変速ギア14を含む1つが係合しようとするとき、伝達装置18は、シフトフォ−ク(図示せず)により、軸方向に図1の矢印Pの向きにシフトされる。プレ同期と称される第1のステップでは、2つの同期リング30が、スラストピース42によって左へ運ばれる。より正確に言えば、左の同期リング30の左プレ同期ベベル48と係合したスラストピース42のプレ同期面46によって左へ運ばれ、同期リング30は、摩擦面32と摩擦係合の状態になる。
【0011】
変速シャフト10の速度は、通常、変速ギアの速度に対応せず、同期リング30及び摩擦面32の間に速度差がある。この結果、同期リングが円周方向に沿って運ばれ(図8の矢印U参照)、これにより、図8に示すように、ブロック面50が溝36の上側端に接触する。ブロック面50の斜めのアライメントにより、速度差が存在する限り、伝達ディスク20がキャリア34に対してシフトするのを妨げる力成分が形成される。結果としての摩擦モーメントにより、ブロック面50が溝36の端部に押しつけられる状態が維持される。同期リングが摩擦面上で支持をして、軸方向に更にシフトはできない。
【0012】
速度差が小さくなると、ブロック面50により生じるブロック力のみが減少し、伝達ディスク20の溝36の端部が、斜めのアライメントにより、円周方向における矢印Uと反対の向きに、ブロック面50をシフトでき、これにより伝達装置を介したシフトを提供する。同時に、斜めに取り付けられた、プレ同期ベベル48によりバネ44の動作に抗して、スラストピース42は下側に圧縮される。これにより、クラッチディスク22の外歯24が変速ギア14に連結した変速ギア歯16と係合するような範囲において、伝達装置が軸方向にシフトできる。このようにして、変速シャフト10及び係合した変速ギア14の間の回転方向での接続が形成される。
【0013】
図示された実施形態だけでなく、例えば、長さ及び角度で正確に規定されたブロック面取りが1つの部材のみに存在する場合でも充分である。伝達装置のような対向する部材における補完的な面取りは、ブロック面取りを伴う全接触において有利である。主に、例えば、2つの面取りの1つを省略することもできるし、クラウン状に形成されることもできる。
【0014】
シフトされたギアを解放するため、伝達装置18が反対方向のニュートラル位置に戻され、これにより、2つ同期リング30もニュートラル位置に再び戻る。この位置では、摩擦面32を伴う摩擦係合は除かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
既知の同期アッセンブリをより小型な構造が得られる効果を有するように開発することが、本発明の根底にある目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本目的を解決するため、変速シャフト及び該変速シャフトに回転可能に取り付けられた変速ギアの間で回転方向における接続を形成するため、本発明に係る伝達装置が提供される。伝達装置は、伝達ディスクと、伝達ディスクに連結したクラッチディスクとを備え、クラッチディスクは、クラッチディスク外歯を含む。伝達ディスクは、その外側に伝達歯を備えていることを特徴とする。本発明は、これまでクラッチディスクに備えられていた歯の1つを、直接、伝達ディスクに備える原則に基づく。よって、伝達歯は同期リングの外側に位置するので、軸方向における設置空間をより縮めることができる。
【0017】
本発明の1つの実施態様では、伝達歯が伝達ディスクの外周に配置されることが提供される。この結果、軸方向において、伝達歯及び伝達ディスクの位置が一致するので、軸方向において、可能な限り最も短い構造が得られる。
【0018】
更に、2つの同期リングが伝達ディスクに取り付けられていることを提供できる。同期リングを取り付けること、及び伝達ディスクの必要な設計に変わりはないが、これにより、これまで知られた伝達装置の構造に比べて小さな構造が得られる。
【0019】
好ましくは、作動要素が、軸方向において伝達ディスクに連結されていることが提供される。これまで必要だったが、作動要素は、伝達ディスクの外周に係合する必要なく、伝達ディスクを軸方向にシフトする。
【0020】
1つの実施態様では、クラッチ歯が、伝達ディスクに連結されたクラッチディスクに備えられていることが提供される。これにより、クラッチ歯が他の部材に備えられるので、伝達ディスクを平坦な部材として形成でき、特に、打ち抜きによる金属板部材として形成できる。
【0021】
好ましくは、クラッチディスクが伝達ディスクの前側に配置され、軸方向において該伝達ディスクに接続されていることが提供される。変速シャフト及び係合した変速ギアの間でトルクを、クラッチディスク及び伝達ディスクを介して伝達するように、クラッチディスクを、回転しないように伝達ディスクに接続する必要はなく、クラッチディスクが伝達ディスクの軸方向の動きに追従すれば充分である。クラッチディスクは、変速シャフトの補完的な歯と係合する内歯を備えるので、トルクは、直接、クラッチ歯から変速シャフトに伝達される。
【0022】
上記の目的は、本発明において、変速シャフトと、該変速シャフトに回転可能に取り付けられた少なくとも1つの変速ギアと、上記の伝達装置と、を備えたアッセンブリによっても達成される。変速ギアは、伝達歯が係合可能な変速ギア歯を備える。本発明に係る伝達装置によれば、更に、2つの変速ギアが変速シャフトに連結可能であって、トルクは、クラッチディスクを介して、変速シャフトから1つの変速ギアへ伝達され、伝達ディスクを介して、変速シャフトから他の変速ギアへ伝達される。これにより、変速ギアを、軸方向において互いにより近接して配置することができる。
【0023】
本発明の1つの実施態様では、作動要素が伝達ディスクに係合し、作動要素が伝達ディスクから続いて軸方向に伸びていることが提供される。この作動要素は、伝達歯の周りの設置空間を空いた状態にできるので、伝達ディスクの作動のための設置空間について、余裕をとる必要がない。
【0024】
作動要素は、スリーブの態様で変速シャフトの周りに伸びることができる。この結果、小さな構造が得られる。
【0025】
その他として、作動要素が、変速シャフトの内部に配置されることを提供できる。このことは、軸方向において外でのアクセスが困難な場合、例えば、幾つかの変速ギアの対の間に配置されている場合に、伝達装置を作動させるのに提供される。
【0026】
好ましくは、作動要素が、変速シャフトの開口を介して、伝達ディスクに連結されことが提供される。この目的においては、小さな開口で充分であり、これにより、変速シャフトが実質的に弱められることがない。
【0027】
本発明の1つの実施態様によれば、変速ギアが、伝達歯が係合可能な変速ギア歯を備えていることが提供される。この結果、伝達ディスクから対応する変速ギアへ直接トルクを伝達できる。
【0028】
変速ギア歯は、変速ギアと一体的に設計することができる。これにより、個別の部材を組み立てるコストを回避できる。
【0029】
その他として、変速ギア歯が、回転しないように変速ギアに接続された変速ギア歯ワッシャの内周に備えられていることを提供できる。これにより、変速ギア歯を金属板部材を用いて、例えば打ち抜き加工で、低いコストで製造でき、その後(たぶん硬化処理の後)、変速ギアに接続する。
【0030】
1つの実施態様では、変速ギアが、同期リングと協働できる摩擦面を備えていることが提供される。これにより、これまでに知られた構造をできる限り維持して、必要な修正を最小限にできる。
【0031】
好ましくは、摩擦面が、直接、変速ギアに備えられることが提供される。これにより、組み立てに必要な部材の数を少なくすることができる。
【0032】
摩擦面が、半径方向で外側に向いくようにすることができる。摩擦面が、半径方向で内側に向くようにすることもできる。このことは、それぞれの周辺の条件に応じて、好ましいものを選択できる。
【0033】
本発明の1つの実施態様によれば、摩擦面が、半径方向において、変速ギア歯の範囲内に配置されていることが提供される。この結果、軸方向における小型な構造が得られる。
【0034】
上記の目的は、更に本発明において、上記のアッセンブリを備えた変速機により実現できる。変速機は、伝達歯が係合可能なブロック歯が備えられたハウジングを含む。本実施態様では、変速シャフト及び変速機のハウジングの間での回転方向の接続を形成するため、伝達ディスクが用いられ。これにより、変速機は、例えば、パーキング位置でブロックされる。同期で使われる実施形態のほかに、パーキングブレーキとして機能するため、伝達ディスクの変速機ハウジングとの係合が有効となる側では、同期リングが不要となる。
【0035】
以下においては、添付した図面に示された様々な実施形態を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】先行技術から既知の同期アッセンブリを模式的に示す断面図である。
図2図1の同期アッセンブリを示す分解図である。
図3】同期リングが取り付けられた伝達装置を示す斜視図である。
図4図3の同期リングを示す斜視図である。
図5図3の伝達装置を示す斜視図である。
図6図1のVI−VI平面に沿った断面図である。
図7図6のVII平面に沿った断面図である。
図8図6のVIII平面に沿った断面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る変速機の一部を模式的に示す断面図である。
図10図9に対応する図であって、本発明の第2の実施形態示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図9を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る変速機についてこれから説明を行う。図1から8から既に知られた部材については、同じ参照番号が用いられ、その限りにおいて、上記の説明が参照される。
【0038】
図9に示すアッセンブリと、図1から図9により既知のアッセンブリとの間の基本的な差は、伝達ディスク20及び変速ギアの1つ(ここでは変速ギア12)の間のトルク伝達が、クラッチディスク歯を備えたクラッチディスクを介して達成されるのではなく、伝達ディスク20に形成された伝達歯25によることである。
【0039】
ここで、伝達歯25は、伝達ディスク20上に直接備えられ、すなわち伝達ディスクの外周上に歯の形式で備えられる。
【0040】
伝達歯25を備えた伝達ディスク20は、例えば、押し抜きによる金属板による平坦な部材として形成可能である。
【0041】
図9に示される実施形態で用いられる伝達ディスク20及び図1から図8により既知の伝達ディスクの間における更なる差は、図9に示す実施形態においては、伝達ディスクが、伝達ディスク内歯21を備えることである。伝達ディスク内歯21は、クラッチディスク内歯26と同様に、回転しないが軸方向にシフト可能な状態で変速シャフト歯28に係合する。
【0042】
伝達歯25が係合可能な変速ギア歯60が、変速ギア12に備えられる。ここで、変速ギア歯60は、例えば溶接によって、変速ギア12に回転しないように接続された変速ギア歯ワッシャ62上に備えられる。
【0043】
変速ギア歯ワッシャ62は、打ち抜きによる金属板部材であり、少なくとも変速ギア歯60の領域で硬化させることができる。
【0044】
その他、変速ギア歯60を変速ギア12と一体的に形成することもできる。
【0045】
図9に示す実施形態では、伝達ディスク20が、2つの同期リング30、31も備えている。しかし、図1図8に示される場合に反して、2つの同期リングは、異なる形状を有する。同期リング30は、伝達ヂスク20から続いて、僅かに外側に円錐状に広がり、これにより、部材17に備えられた、外側に向いた円錐状の摩擦面32を押すことができる。一方、同期リング31は、伝達ディスク20から離れるにつれて、軸方向にテーパが付いており、これにより、変速ギア12に備えられた、半径方向で内側に向いた円錐状の摩擦面33を押すことができる。
【0046】
ここで、摩擦面33は、変速ギア12の肩部分として形成され、例えば一体的に形成される。しかし、原則として、変速ギア12上の個別の部材として形成することもでき、そして摩擦面が提供される。
【0047】
伝達ディスク20は、伝達ディスク20が変速シャフト10上を軸方向にシフト可能な作動要素70により係合する。作動要素70は、図1から図8に示される場合に、伝達ディスク20を軸方向にシフトとするため、伝達ディスク20の外側に係合したシフトフォークの機能を果たす。
【0048】
図9に示す実施形態では、作動要素70が、変速シャフト10を囲むスリーブのように設計されている。作動要素70は、フランジ72で伝達ディスク20と係合する。フランジ72は、図1から図8に示す場合に第2クラッチディスク22が配置された位置に配置される。
【0049】
同期させ及びギアシフトの間の作動モードに関して、図9に示す実施形態は、図1から図8に示す場合と異ならない。伝達ディスク20がニュートラル位置から1つの方向に進むとき(矢印S参照)、2つの同期リング30、31が対応する方向に沿って運ばれる。シフト方向で前に位置する同期リングは、対応する摩擦面32、33に係合し、同期の工程が開始する。変速シャフト及び対応する変速ギア12、14の速度が互いに適合するとき、伝達ディスク20がシフト可能となる。これにより、変速ギア12がシフトされたとき、トルクが、伝達ディスク内歯21、伝達ディスク20、伝達歯25及び変速ギア歯60を介して、変速シャフト10から変速ギア12に伝達されるか、または変速ギア14の場合には、トルクが、クラッチディスク22及びクラッチ歯24を介して、クラッチディスク内歯26から部材17へ伝達され、変速軸から変速ギア14へ伝達される。
【0050】
図1から図8に示す場合に比べて、図9示す実施形態が有利な点は、特に、軸方向においてより小型な構造が可能となる、図9に示されるように、軸方向において、変速ギア12の歯が、伝達ディスク20に非常に近接して配置可能である。図示された実施形態では、変速ギア12の稼働歯は、伝達ディスク20を超えて突き出ている。このことは、変速ギア歯及び変速ギアの摩擦面の配置を、図1から図8に示す場合に比べて置き換えることができるので可能になる。変速ギア12の摩擦面33は、半径方向で、変速ギア歯60の範囲内に配置され、変速ギア歯60が摩擦面33よりも、伝達ディスクに近接して配置される。
【0051】
作動要素70を横方向において、同期リング30、31の範囲内で連結することは、絶対必要なものではない。変速ギア14の側において、半径方向で同期リング30、31の外側において、伝達ディスク20に追加部品が備えられ、伝達歯25の横方向に、スライドブロックやシフトフォークがそこで係合するように、溝または周方向の端部が形成されことも提供できる。
【0052】
図10に、更なる実施形態を示す。上述の実施形態から知られた部材については、同じ参照番号が用いられ、その限りにおいて、上記の説明が参照される。
【0053】
図10に示す実施形態及び図9に示す実施形態の間の差は、図10に示す実施形態では、伝達装置がただ1つの変速ギア(ここでは変速ギア14)だけと係合している点である。伝達ディスク20が、図10に示すニュートラル位置から進んで右にシフトするとき、変速シャフト10が取り付けられた変速機のハウジング82に備えられたブロック歯80と係合する。
【0054】
ここでは、ブロック歯80は、ハウジング82と一体的に設計されている。図9に示す実施形態の変速ギア歯60と同様に、ブロック歯80を、ハウジング82に取り付けられた個別の部材上に備えることもできる。
【0055】
図10に示す実施形態及び図9に示す実施形態の間の更なる差は、図10に示す実施形態では、作動要素70が、変速シャフト10の内部に配置されている点である。作動要素70は、軸方向に変速シャフト10の開口76を通して外側に伸び、伝達ディスク20に接続された作動タブ74を備える。
【0056】
図10に示す実施形態では、摩擦面32がハウジング上に備えられ、部材17上の摩擦面32と同様に、半径方向で外側に向けられている。よって、同じ形状の2つの同期リング30が、伝達ディスク上に配置可能である。
【0057】
図10に示す実施形態の伝達ディスク20が、図示されたニュートラル位置から開始して、左側へシフトされたとき、変速ギア14を伴う既知の方法で、シフト動作が実効される。しかし、伝達ディスク20が右側にシフトされたとき、ある同期動作が実効され、最終的に伝達ディスク20がシフトされきるまで、変速シャフト10の速度がゼロとなるように導かれる。これにより、変速シャフト10は、変速シャフト歯28、伝達ディスク内歯21、伝達歯25及びブロック歯80を介して、ハウジング82内で回転しないようにブロックされる。
【0058】
図示しない展開として、作動要素70は、2つの変速ギアが伝達ディスクを伴ってシフトされる図9に示す実施形態でも用いることができる。逆に、図9に示す実施形態で知られたスリーブ状の作動要素70を、伝達ディスクがブロック歯80に係合可能な図10に示す実施形態で用いることもできる。
【0059】
更に、図9に示す実施形態において、図10に示す実施形態のように、半径方向で外側に向いた摩擦面32を用いることもできる。逆に、図10に示す実施形態において、図9に示す実施形態から知られるように、ハウジング82の1つの側で、半径方向の内側に向いた摩擦面33を用いることもできる。
図1
図2
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図7
図8
図9
図10