(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3大径軸部の前端に形成した押圧面が前記キャビティの内表面と面一にあるとき、前記スライドブッシュと該スライドブッシュに挿通されている前記押出部材の前記小径軸部との間が第1圧縮シール部材を介して軸方向の面圧で圧接され、且つ前記ブッシュ挿通孔の内周と該ブッシュ挿通孔に挿通されている前記スライドブッシュの外周との間が第2圧縮シール部材を介して軸方向の面圧で圧接されている
ことを特徴とする請求項5記載の真空ダイカスト装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1〜
図5に本発明の第1実施形態を示す。
図1には真空ダイカスト装置1(
図2参照)による鋳造直後の製品(粗材)Wが示されている。この製品Wには製品部Wa以外に、湯口部内等で凝固した鋳造方案部Wbが一体に形成される。又、符号Pは被押圧位置であり、真空ダイカスト装置1から製品Wを取り出す際に、押出ピン14の押圧面14dにて押圧されて金型から離型される。この被押圧位置は製品部Wa全体に複数配設され、特に、製品Wを金型から離型させ難い部位には比較的短い間隔で配設される。
【0014】
図2に示すように、真空ダイカスト装置1に取付けられている金型2は、固定型3と可動型4とを有し、この固定型3が真空ダイカスト装置1に固定されており、可動型4を保持する可動型保持盤5が図示しない油圧シリンダにトグル機構等を介して、固定型3に対し型締め、型開き自在にされている。この固定型3と可動型4との対向面にキャビティ形成面3a,4aが形成されている。このキャビティ形成面3a,4aは、固定型3と可動型4とが型締めされて内部に形成されるキャビティ6の内表面をなすものであり、このキャビティ6によって、
図1に示すような製品Wの表面形状が形成される。
【0015】
又、固定型3の一側(
図2においては下部)に射出スリーブ7の先端が、固定型3の背面から嵌合されており、更に、この射出スリーブ7に射出機構9が設けられている。この射出機構9は、射出スリーブ7の後端に連結された射出シリンダ9aと、この射出シリンダ9aから射出スリーブ7内に延出されたロッド9bと、このロッド9bの先端に固設されて、射出スリーブ7内を摺動する射出プランジャ9cとを有している。又、射出スリーブ7の中途に給湯口7aが開口されている。射出機構9は射出スリーブ7に給湯されたアルミニュウム、或いはアルミニュウム合金等からなる金属溶湯Mを加圧してキャビティ6に注湯する。尚、符号Laは溶湯を汲み上げ、給湯口7aから射出スリーブ7内に給湯するラドル(レードル)である。
【0016】
又、可動型4のキャビティ形成面4aの所定位置(
図2においては上部)に、型締めされて形成されるキャビティ6内の空気を排出する排気口4cが開口されている。この排気口4cは可動型4内に形成された排気通路4dに連通されており、この排気通路4dが外部に備えられている真空排気装置の一例である真空ポンプ10に連通されている。
【0017】
又、この排気口4cに第2真空バルブ11が設けられている。
図3に示すように、第2真空バルブ11は、例えば電磁バルブであり、可動型4に固設されたバルブ本体11aと、このバルブ本体11aにて開閉動作される弁体11bとを有している。バルブ本体11aがOFF状態では弁体11bが排気口4cに密着されて閉弁され((a)の状態)、又、ON状態では、同図(b)に示すように弁体11bが突出動作して開弁される((b)の状態)。
【0018】
更に、可動型4に真空空洞部12が形成されている。この真空空洞部12は可動型4の背面にほぼ沿って形成されており、キャビティ形成面4aとは隔壁部4bを介して区画されている。この真空空洞部12が真空ポンプ10に連通されている。尚、この真空ポンプ10は、鋳造時は常時駆動しており、この真空ポンプ10の駆動により真空空洞部12内には負圧が常時蓄圧されている。
【0019】
又、可動型4には、キャビティ形成面4aから可動型保持盤5の方向へ貫通する貫通孔4eが穿設されており、この貫通孔4eに押出機構13に設けられた、押出部材としての棒状の押出ピン14が摺動自在に挿通されている。この押出ピン14は、主に、型開きした可動型4のキャビティ形成面4aに貼り付いている製品Wを、その突出動作により離型させるものであり、上述したように、製品Wの被押圧位置P上に配設されている。この押出ピン14が挿通される貫通孔4eは、押出ピン14の突出動作により製品Wの各部位がキャビティ形成面4aからほぼ同時に離型するよう予め決められた位置に複数穿設されている。
【0020】
各押出ピン14の基端は可動型4の背面から突出されて、ピン保持盤15に連結されており、このピン保持盤15が、可動型保持盤5に固設されている油圧シリンダ等からなるピン駆動アクチュエータ16に連結されている。尚、ピン保持盤15とピン駆動アクチュエータ16とで本発明の駆動機構が構成されている。
【0021】
又、真空空洞部12内に柱状支持部17が形成されている。この柱状支持部17内は上述した貫通孔4eが貫通する中空状に形成されている。更に、この柱状支持部17にて真空空洞部12の隔壁部4b側とそれに対向する対向面4fとの間が支持されており、これにより真空空洞部12内が高い真空度に耐え得る構造に補強されている。
【0022】
又、貫通孔4eには柱状支持部17の中途からキャビティ形成面4aにかけて、押出機構13の構成要素をなすブッシュ18の本体軸部18aが装着されるブッシュ挿通孔4gが形成されている。
【0023】
このブッシュ18は可動型4とほぼ同じ材質を有しており、本体軸部18aの一端に大径部18bが一体形成され、この大径部18bの一側に開口孔18cが穿設されている。一方、柱状支持部17には開口孔18cを真空空洞部12に露呈させる連通口17aが開口されている。又、ブッシュ18の本体軸部18aの他端はキャビティ形成面4aと面一に形成されている。尚、ブッシュ18は大径部18bによって貫通孔4e内に抜け止めされている。
【0024】
押出ピン14に形成されている基部側の軸部14aは貫通孔4eに摺動自在に挿通されている。一方、ブッシュ18に挿通されている押出ピン14の先端側は、小径軸部14bを有する棒状の杵形に形成され、第1大径軸部としてのピンヘッド14cの先端面に押圧面14dが形成されている。又、ブッシュ18の大径部18bに、開口孔18cに連通する、第2大径孔部としての第1排気室18dが形成され、先端部側に、第1大径孔部としての第2排気室18eが形成されている。更に、この両排気室18d,18e間に、第2小径孔部としての第1排気通路18fが形成され、第2排気室18eの先端側にキャビティ形成面4aに開口する、第1小径孔部としての第2排気通路18gが形成されて、これら各部位18c〜18gが直列状に連通されている。尚、この各部位18c〜18gで本発明の連通孔が構成されている。
【0025】
図4に押出機構13の要部拡大図を示す。尚、この押出機構13は、全ての押出ピン14において同様な構成を有している。各押出ピン14はピン駆動アクチュエータ16の動作によって、(a)に示す押圧面14dがキャビティ形成面4aと面一となり真空空洞部12とキャビティ6とを閉塞する第1位置と、(b)に示すピンヘッド14cが第2排気室18eに没入されて真空空洞部12とキャビティ6とを連通させる第2位置と、(c)に示すピンヘッド14cがキャビティ形成面4aから突出された第3位置との3位置に進退動作される。
【0026】
又、押出ピン14の基部側の軸部14aは可動型4に穿設された貫通孔4eに対して摺動自在に挿通され、この軸部14aと貫通孔4eとの間に第1シールリング19が介装されて、両者間がシールされている。更に、第2大径軸部としての軸部14aがブッシュ18に形成した第1排気通路18fに摺動自在に挿通されている。又、この第1排気通路18fの内周に第2シールリング20が装着されており、この第2シールリング20にて軸部14aと第1排気通路18fとの間が摺接されてシールされる。又、ブッシュ18の本体軸部18aとブッシュ挿通孔4gとの間に第3シールリング21が介装されており、この第3シールリング21にて本体軸部18aとブッシュ挿通孔4gとの間が接合されてシールされている。
【0027】
図4(a)に示す第1位置に押出ピン14があるときは、第2排気通路18gにピンヘッド14cが支持され、第1排気通路18fに軸部14aが支持されていると共に、この軸部14aが第2シールリング20によって接合されてシールされ、更に、ピンヘッド14cによって第2排気通路18gが閉塞される。尚、押出ピン14の先端部側の軸部14a、小径軸部14b、ピンヘッド14cで本発明の第1真空バルブが構成されている。
【0028】
一方、
図4(b)に示す第2位置に押出ピン14があるときは、ピンヘッド14cがブッシュ18の第2排気室18e内に没入され、小径軸部14bが第1排気通路18fに臨まされるため、第2排気通路18gと真空空洞部12とが連通される。
【0029】
又、
図4(c)に示す第3位置に押出ピン14があるときは、軸部14aが貫通孔4e、各排気通路18f,18gに支持されて、ピンヘッド14cが突出される。
【0030】
この真空ダイカスト装置1の動作は図示しないコントローラによって制御される。コントローラはCPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を備えるコンピュータを含んで構成されており、CPUはROMに書込まれているプログラムに従い、
図5に示す工程に沿って真空ダイカスト装置1を動作させる。
【0031】
鋳造開始時、真空ダイカスト装置1の固定型3と可動型4とは型開きされている。又、押出機構13を構成する各押出ピン14の先端側に形成されている小径軸部14b、及びピンヘッド14cは、この押出ピン14の基端を支持するピン保持盤15がピン駆動アクチュエータ16の動作により可動型4の背面方向へ押し出されることで、
図4(c)に示すようにキャビティ形成面4aから突出された第3位置にある。
【0032】
そして、先ず、型開きされている固定型3と可動型4との間にスプレーカセットを進入させ(ステップS1)、このスプレーカセットから離型剤を噴射させて、固定型3と可動型4との合せ面、キャビティ形成面3a,4a、キャビティ形成面4aから吐出されている押出ピン14の小径軸部14b、及びピンヘッド14cに離型剤を塗布する(ステップS2)。
【0033】
次いで、エアブローを、固定型3と可動型4との合せ面、キャビティ形成面3a,4a、及びキャビティ形成面4aから吐出されている押出ピン14の先端部に吹き付けて、余剰の離型剤、及び付着している鋳バリ等を吹き払うと共に水分を蒸発させる(ステップS3)。
【0034】
その後、第2真空バルブ11のバルブ本体11aをON動作させて、弁体11bを、
図3(b)に示すように開動作させる(ステップS4)。又、ピン駆動アクチュエータ16の動作によりピン保持盤15を可動型4の背面から離間する方向へ移動させ、各押出ピン14を後退させて、
図4(b)に示すように、先端部に形成したピンヘッド14cをブッシュ18に形成されている第2排気室18e内に没入させる第2位置へ移動させる(ステップS5)。
【0035】
その後、
図2に示すように、固定型3と可動型4とを型締めする(ステップS6)。すると、キャビティ形成面3a,4aによって金型2内に密閉されたキャビティ6が形成され、このキャビティ6内が真空ポンプ10の駆動によって真空引きされる。すなわち、キャビティ6内の空気は、先ず、
図4(b)に示すように、各押出ピン14の後退により開口されている、ブッシュ18に形成された第2排気通路18gから第2排気室18e、第1排気通路18f、第1排気室18d、開口孔18cを経て、可動型4に形成されている真空空洞部12内に流入し、この真空空洞部12から真空ポンプ10を経て排気される。
【0036】
一方、第2真空バルブ11の弁体11bが開弁しているため、キャビティ6内の空気は、排気口4c、排気通路4dからも真空ポンプ10を経て排気される。
【0037】
その結果、本実施形態では、第2真空バルブ11のみならず、各押出ピン14の配設されている位置、すなわち、
図1に示す製品Wの被押圧位置Pに対応する位置からもキャビティ6内が真空引きされるため、このキャビティ6によって形成される製品Wの肉厚が薄く、且つ、形状が複雑であっても、後述するステップS8で金属溶湯Mを加圧注湯する際には一気にキャビティ6内を減圧させることができる。又、真空空洞部12に負圧が常時蓄圧されているため真空引きを安定的に確保することができ、キャビティ6内の末端であっても真空度を高い状態で保持することができる。
【0038】
その後、ラドルLaによって汲み取られた金属溶湯Mを、射出スリーブ7に開口されている給湯口7aから給湯する(ステップS7)。次いで、射出機構9に設けた射出シリンダ9aの動作により、ロッド9bの先端に固設されている射出プランジャ9cを突出動作させて、射出スリーブ7内の金属溶湯Mをキャビティ6に加圧注湯する(ステップS8)。その際、上述したようにキャビティ6内の空気が一気に減圧される。
【0039】
そして、加圧注湯された金属溶湯Mが、最も近い位置にある押出ピン14に湯上がり(到達)するまでの時間より若干早いタイミングで、ピン駆動アクチュエータ16を動作させてピン保持盤15を可動型4の方向へ所定量だけ移動させる。すると、
図4(a)に示すように、押出ピン14の先端に形成されているピンヘッド14cがブッシュ18に形成した第2排気通路18gに挿入され、先端に形成した押圧面14dがキャビティ形成面4aと面一の第1位置となり、第2排気通路18gが閉塞される。同時に、軸部14aが第1排気通路18fに挿入されて、この第1排気通路18fが閉塞される(ステップS9)。尚、押出ピン14を第1位置に移動させるタイミングは、予めセットしたタイマによる経時、湯面センサ、真空度計測値等の何れか、或いはそれらの組み合わせで判断する。
【0040】
その結果、第1位置では、キャビティ6と真空空洞部12との間がブッシュ18に形成した第1、第2排気通路18f,18gにて遮断される。又、押出ピン14の軸部14aと貫通孔4e及び第1排気通路18fとの間は第1、第2シールリング19,20にて接合されてシールされている。又、ブッシュ18の本体軸部18aとブッシュ挿通孔4gとの間は第3シールリング21にて接合されてシールされている。従って、キャビティ形成面4aに露呈されている本体軸部18aとブッシュ挿通孔4gとの間、及び、押出ピン14のピンヘッド14cと第2排気通路18gとの間から金属溶湯Mが吸い込まれ難くなり、鋳バリの発生を抑制することができる。
【0041】
次いで、第2真空バルブ11のバルブ本体11aを動作させて弁体11bを閉弁動作させ、排気口4cを閉塞する(ステップS10)。この状態でのキャビティ6内は高い真空度が確保されているため、空気の巻込みによる鋳造欠陥を有効に防止することができる。
【0042】
そして、射出プランジャ9cによる加圧状態を維持したまま、キャビティ6に注湯された金属溶湯Mが冷却固化されるまで保圧させる(ステップS11)。その後、キャビティ6に注湯した金属溶湯Mが固化することで製品Wが形成される。次いで、可動型4を固定型3から離間させて、型開きを行う(ステップS12)。尚、本実施形態では、固化された製品Wが固定型3のキャビティ形成面3aから離型し、可動型4のキャビティ形成面4aに嵌合された状態で型開きされるように設計されている。
【0043】
その後、ピン駆動アクチュエータ16を動作させて、ピン保持盤15を更に可動型4の背面方向へ所定ストロークだけスライドさせて、押出ピン14を
図4(c)に示す第3位置へ移動させる(ステップS13)。すると、押出ピン14の先端に形成した押圧面14dがキャビティ形成面4aに嵌合されている製品Wを押出し、製品部Waと鋳造方案部Wbとが一体に形成されている製品Wをキャビティ形成面4aから取り出す(ステップS14)。これにより、今回の鋳造が完了し、真空ダイカスト装置1は次の鋳造作業に備える。
【0044】
このように、本実施形態では、各押出機構13に押出ピン14を進退自在に挿通支持するブッシュ18を設け、又、可動型4に真空ポンプ10に連通する真空空洞部12を形成し、この真空空洞部12を、ブッシュ18を介してキャビティ6に連通するようにしたので、この真空空洞部12が負圧を常時蓄圧する負圧チャンバとして機能し、高い真空度を安定して得ることができる。従って、キャビティ6全体を素早く真空引きすることができ、肉厚が薄く、形状が複雑で、加圧注湯の際の通路抵抗が大きくても高い真空度を確保することができる。その結果、キャビティ6内での空気の巻込みが防止され、鋳造欠陥の発生を抑制することができる。
【0045】
更に、真空空洞部12が負圧を常時蓄圧する負圧チャンバとして機能しているため、容量の大きな真空ポンプを増設する必要がなく、既存の真空ポンプ10を共用することが可能となり、その上、負圧チャンバも別途設ける必要がないため、設備費の低減、及び省スペース化を図ることができる。
【0046】
又、キャビティ6内の空気を一気に真空引きすることができるため、キャビティ6内の真空度を所定値まで低下させる時間が短縮化され、鋳造サイクルタイムの短縮化による生産性の向上を実現することができる。更に、可動型4に形成した真空空洞部12は押出ピン14を挿通支持する柱状支持部17で支持されているため、真空空洞部12内の真空度が高い場合であっても充分な補強強度を得ることができる。
【0047】
[第2実施形態]
図6に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、ブッシュ18に形成した第1排気通路18fと押出ピン14の軸部14aとの間、及び、ブッシュ18の本体軸部18aとブッシュ挿通孔4gとの間を、第2、第3シールリング20,21を用いてシールしているが、本実施形態で採用する押出機構13では、第1、第2圧縮シールリング33,34を用いてシールするようにしたものである。尚、第1実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を省略し、或いは簡略化する。
【0048】
貫通孔4eのキャビティ形成面4a側に連通孔としてのブッシュ挿通孔4gが穿設されており、このブッシュ挿通孔4gにスライドブッシュ31が摺動自在に装着されている。このスライドブッシュ31は後端部に細径部31bが形成され、この細径部31bがブッシュ挿通孔4gの後部に形成した細径孔部4hに挿通される。更に、この細径孔部4hが、真空空洞部12に開口する連通口17aに連通されている。
【0049】
又、このスライドブッシュ31に穿設されている軸挿通孔部としてのピン挿通孔31eに押出ピン14に形成した小径軸部14bが摺動自在に挿通されている。この小径軸部14bの先端に一体形成されている、第3大径軸部としてのピンヘッド14cはスライドブッシュ31と同一外径を有しており、
図6(a),(b)に示すように、ブッシュ挿通孔4g内を摺動自在にされている。このピンヘッド14cとスライドブッシュ31の先端面との間に、圧縮ばね部材としての圧縮スプリング32が介装されている。
【0050】
又、ブッシュ挿通孔4gの内周一側に第1排気溝4jが軸方向に沿って形成されている。一方、スライドブッシュ31の第1排気溝4jに対向する位置に排気開口孔31dが穿設されている。更に、押出ピン14の小径軸部14bの第1排気溝4jに対向する位置に第2排気溝14eが軸方向に沿って形成されている。尚、押出ピン14の小径軸部14b及びピンヘッド14c、スライドブッシュ31、圧縮スプリング32で本発明の第1真空バルブが構成されている。
【0051】
又、スライドブッシュ31の後端面31a側に露呈する押出ピン14の小径軸部14bに第1圧縮シール部材としての第1圧縮シールリング33が装着されている。更に、このスライドブッシュ31の後部に形成された細径部31bに第2圧縮シール部材としての第2圧縮シールリング34が装着されている。
【0052】
又、
図6(b)に示す第2位置、すなわち、ピン駆動アクチュエータ16の動作により、各押出ピン14を後退させてピンヘッド14cをブッシュ挿通孔4gに没入させる、第1実施形態のステップS5で実行される動作では、押出ピン14の後退に伴い、スライドブッシュ31の細径部31bがブッシュ挿通孔4gに形成した細径孔部4hに挿通される。又、この細径部31bの前端に形成した肩部31cが、細径孔部4hの前端に形成したストッパ段部4iに第2圧縮シールリング34を介して圧接されて後方へのスライドが規制される。
【0053】
一方、押出ピン14は圧縮スプリング32の付勢力に抗して後退し、ピン駆動アクチュエータ16により、予め設定されたストロークで停止される。すると、押圧面14dの前方でブッシュ挿通孔4gと第1排気溝4jとが連通される。又、この第1排気溝4jと小径軸部14bに形成した第2排気溝14eとが、スライドブッシュ31に穿設されている排気開口孔31dを介して連通される。更に、第2排気溝14eがスライドブッシュ31の後端面31aから露呈し、真空空洞部12に開口する連通口17aに連通される。
【0054】
その結果、キャビティ6内の空気がキャビティ形成面4aに開口されているブッシュ挿通孔4gから第1排気溝4jを通り、排気開口孔31dを経て、押出ピン14に形成した第2排気溝14eから連通口17aを通り、真空空洞部12に排出される。従って、前述した第1実施形態と同様、本実施形態においても、金属溶湯Mをキャビティ6内に加圧注湯する工程(ステップS8)では、キャビティ6全体の空気が素早く排気されており、キャビティ6内全体を均一でしかも高い真空度に保持することができる。
【0055】
尚、ピンヘッド14cの第1位置から第2位置までの移動距離と、スライドブッシュ31の後端面31aから押出ピン14の細径部31b基端側に形成されている段部14fとの間の幅は同一に設定されている。
【0056】
又、
図6(a)に示す第1位置、すなわち、ピン駆動アクチュエータ16の動作により、各押出ピン14の先端に形成されているピンヘッド14cの押圧面14dをキャビティ形成面4aと面一とする、第1実施形態のステップS9で実行される動作では、ピンヘッド14cがブッシュ挿通孔4gを閉塞する。更に、圧縮スプリング32の付勢力を受けてスライドブッシュ31が可動型4の背面方向へ押圧される。
【0057】
すると、スライドブッシュ31の肩部31cがブッシュ挿通孔4gに形成したストッパ段部4iに第2圧縮シールリング34を介して圧接され、スライドブッシュ31の外周とブッシュ挿通孔4gの内周がシールされる。一方、上述したように、ピンヘッド14cの第1位置から第2位置までの移動距離と、第2位置にあるときのスライドブッシュ31の後端面31aから押出ピン14の段部14fまでの幅は同一であるため、押圧面14dをキャビティ形成面4aと面一にした状態で、押出ピン14の段部14fがスライドブッシュ31の後端面31aに第1圧縮シールリング33を介して圧接される。
【0058】
これにより、第1位置では、スライドブッシュ31の外周とそれを摺動自在に支持するブッシュ挿通孔4gとの間が第2圧縮シールリング34でシールされると共に、小径軸部14bの外周とそれを摺動自在に支持するピン挿通孔31eの内周との間が第1圧縮シールリング33でシールされる。その結果、真空空洞部12内が高い真空度を有していても、キャビティ形成面4aに露呈されている押出ピン14のピンヘッド14cとブッシュ挿通孔4gとの間から金属溶湯Mが吸い込まれ難くなり、鋳バリの発生を抑制することができる。
【0059】
又、第1、第2圧縮シールリング33,34は軸方向の面圧にてシールされるため、第1実施形態の第2、第3シールリング20,21に比し、摺動摩耗が少なく、高い耐久性を得ることができる。
【0060】
又、
図6(c)に示す第3位置、すなわち、ピン駆動アクチュエータ16の動作により、各押出ピン14のピンヘッド14cをキャビティ形成面4aから突出させる、第1実施形態のステップS13で実行する動作では、押出ピン14の突出動作により、ピンヘッド14cの押圧面14dが製品Wを押圧してキャビティ形成面4aから離型させる。
【0061】
又、この押出ピン14の突出動作に伴い、スライドブッシュ31は圧縮スプリング32の付勢力を受けて押出ピン14の段部14fの方向へ相対移動し、後端面31aが第1圧縮シールリング33を介して押出ピン14の段部14fに押圧される。その結果、スライドブッシュ31の移動が規制され、このスライドブッシュ31の先端部にて、キャビティ形成面4aに開口するブッシュ挿通孔4gが閉塞される。従って、この状態でキャビティ形成面4aに離型剤を塗布する、第1実施形態のステップS2での工程が実行されても、ブッシュ挿通孔4gから真空空洞部12内に離型剤が入り込むことはない。又、その後のステップS3で実行されるエアブローにより、ピンヘッド14cに付着されている鋳バリは、第1実施形態と同様に吹き払われる。
【0062】
このように、本実施形態では、ピンヘッド14cがブッシュ挿通孔4gの開口部を閉塞する、
図6(a)に示す第1位置においては、第1圧縮シールリング33にて押出ピン14の小径軸部14bとそれが挿通されているピン挿通孔31eとの間をシールし、更に、第2圧縮シールリング34にてスライドブッシュ31とそれが挿通されているブッシュ挿通孔4gとの間をシールするようにしたので、キャビティ6内の真空度が真空空洞部12の真空度よりも低い場合であっても、押出ピン14のピンヘッド14cとブッシュ挿通孔4gとの間から金属溶湯Mが吸い込まれ難くなり、鋳バリの発生を抑制することができる。
【0063】
又、圧縮シールリング33,34による面圧でシールしているため押出ピン14及びスライドブッシュ31が両圧縮シールリング33,34に対して相対的にスライドしても摺動摩耗が少なく、高い耐久性を得ることができる。
【0064】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限るものではなく、例えば押出機構13はキャビティ6内の減圧し難い部位に個別に増設しても良く、又、ピンヘッド14cの径も一律である必要はなく、減圧し難い部位の径は大きくして流通抵抗を減少させるようにしても良い。
【0065】
更に、押出機構13に設けられている押出ピン14の
図4(b)、
図6(b)に示す第2位置への動作は、各押出ピン14に個別に取付けたアクチュエータにて個別に動作させるようにしても良い。従って、この場合、このアクチュエータが本発明の駆動機構となる。この態様によれば、第2位置へ動作させる押出ピン14を個別に動作させることができるため、各押出ピン14をキャビティ6内に流入する金属溶湯Mの位置(湯上がり)に合わせて動作させることが可能となる。