特許第6730895号(P6730895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6730895高空間解像度でサンプル中の構造を局所的に画像化すること
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730895
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】高空間解像度でサンプル中の構造を局所的に画像化すること
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20200716BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20200716BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   G01N21/64 F
   G02B21/36
   G02B21/06
【請求項の数】26
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-184831(P2016-184831)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2017-72586(P2017-72586A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】10 2015 116 023.4
(32)【優先日】2015年9月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2016 104 100.9
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ダブリュー.ヘル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ゴットフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカー ウェストファル
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/171999(WO,A1)
【文献】 特開2015−072462(JP,A)
【文献】 特開2007−322417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G02B 21/00−21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
APS Journals
OSA Publishing
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の構造を高解像度画像化する方法であって、前記構造はルミネセンスマーカーでマークされ、前記方法は、
零点と少なくとも1つの方向において前記零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、前記ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光を前記サンプル上に導くことと;
前記零点で走査エリアを走査することであって、前記走査エリアが前記サンプルの一部である、ことと;
前記走査エリアを走査している間に、前記サンプル中に前記零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光を登録することと;
前記登録されたルミネセンス光を前記サンプル中の前記零点のそれぞれのロケーションに割り当てることと;
を含み、
前記強度最大値が前記サンプル中の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアの寸法は、前記少なくとも1つの方向において前記強度最大値の距離の75%よりも大きくない、
方法。
【請求項2】
前記強度最大値が前記サンプル中の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアの前記寸法は、前記少なくとも1つの方向において前記強度最大値の前記距離の25%よりも大きくない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強度最大値が前記サンプル中の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアの前記寸法は、前記少なくとも1つの方向における前記光の強度が、前記零点において開始して、それにわたって、前記近接する強度最大値における前記光の前記強度の25%まで増加する距離よりも大きくない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記走査エリアは、前記零点で繰り返し走査される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記走査エリアを走査することより前に、前記サンプル中の前記構造は、前記サンプル中の前記走査エリアの位置を決定するための別の方法における画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記走査エリアを走査することより前に、前記サンプルのより大きい部分エリアは、
前記光の少なくともより50%低い強度と、
少なくともより50%高い走査速度と
のうちの少なくとも1つにおいて前記零点で走査される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記走査エリアを走査するためにスキャナが使用され、前記サンプルの前記より大きいエリアを走査するために別のスキャナが使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
サンプルホルダーは、前記サンプルの前記より大きいエリアを走査するために前記光がそれによって前記サンプル上に導かれる対物レンズに対して移動され、
電気光学スキャナ、
音響光学ディフレクタ、
ガルボスキャナ、及び
ガルボミラー
のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの方向において前記走査エリアを走査するために使用される、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記光は、前記零点の外側で前記ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の前記放出を抑制するように波長が選択されるルミネセンス抑制光である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ルミネセンス抑制光は、誘導放出によって前記零点の外側で前記ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の前記放出を抑制するように波長が選択される誘導光であり、前記誘導光は、ルミネセンス光の放出のために前記ルミネセンスマーカーを励起するように波長が選択される励起光であって、前記ルミネセンス抑制光の前記零点の前記エリア中に最大値を含む強度分布を有する励起光とともに、前記サンプル上に導かれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記零点で前記走査エリアを走査することより前に、追加のスイッチオフ光は、前記スイッチオフ光が、近接するエリアにおいて、前記ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態に切り替えるような強度分布で前記サンプル上に導かれ、前記近接するエリアは、前記強度最大値が前記サンプル中の前記誘導光の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアに近接する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルは前記走査エリアで走査され、前記サンプル中の前記走査エリアのすべての位置又は選択された位置における前記走査エリアが前記零点で走査される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スイッチオフ光の前記強度分布は、前記走査エリア中の弱め合う干渉によって形成される局所強度最小値を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スイッチオフ光を前記サンプルに導くことより前に又はそれと一時的に重複して、スイッチオン光は、前記ルミネセンスマーカーをそれらのアクティブ状態に切り替える前記サンプルの前記走査エリア上に導かれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
スイッチオン又はスイッチオフされると前記切替え可能ルミネセンスマーカーによって放出されるルミネセンス光が登録され評価される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
評価する前記ステップの結果は:
前記近接するエリアによって画定される前記走査エリアが前記零点で走査されることになるかどうか;
前記励起光が、前記近接する部分エリアによって画定される前記走査エリア中の前記サンプル上に導かれることになるかどうか;及び
どんな条件下で、前記誘導光を、前記近接するエリアによって画定される前記走査エリア中の前記零点の各位置における前記サンプル上に導くことと、前記零点の前記エリアから放出される前記ルミネセンス光を登録することとが中断されることになるか
のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記零点の前記エリアから放出される前記ルミネセンス光は、前記走査エリアを走査している間に前記サンプルに対する位置が不変のままである点センサで登録される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルのいくつかの走査エリアが同時に走査される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
サンプル中の構造を高空間解像度画像化する方法であって、前記構造はルミネセンスマーカーでマークされ、前記方法は、
零点と少なくとも1つの方向において前記零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、前記ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光を前記サンプル上に導くことと;
前記零点で走査エリアを走査することであって、前記走査エリアが前記サンプルの一部である、ことと;
前記走査エリアを走査している間に、前記サンプル中に前記零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光を登録することと;
前記登録されたルミネセンス光を前記サンプル中の前記零点のそれぞれのロケーションに割り当てることと;
を含み、
前記走査エリアは、中心点において開始する前記零点で、及び前記少なくとも1つの方向における前記中心点までの距離の増加とともに走査される、
方法。
【請求項20】
前記走査エリアは、前記中心点の周りのスパイラルコースに沿って走査される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
走査型ルミネセンス光学顕微鏡であって、
光を提供するように構成された光源と;
零点と前記零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で前記光をサンプル上に導くように構成された光整形器と;
前記零点で走査エリアを走査するように構成されたスキャナであって、前記走査エリアが前記サンプルの部分エリアである、スキャナと;
前記零点の前記エリアから放出されるルミネセンス光を登録するように構成された検出器と;
サンプル中の構造を高解像度画像化する方法を実装するソフトウェアを用いてプログラムされたコントローラとであって、前記構造がルミネセンスマーカーでマークされる、コントローラと、を備え、前記方法は、
零点と少なくとも1つの方向において前記零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、前記ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光を前記サンプル上に導くことと;
前記零点で走査エリアを走査することであって、前記走査エリアが前記サンプルの一部である、ことと;
前記走査エリアを走査している間に、前記サンプル中に前記零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光を登録することと;
前記登録されたルミネセンス光を前記サンプル中の前記零点のそれぞれのロケーションに割り当てることと;
を含み、
前記強度最大値が前記サンプル中の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアの寸法は、前記少なくとも1つの方向において前記強度最大値の距離の75%よりも大きくないか、又は前記走査エリアは、中心点において開始する前記零点で、及び前記少なくとも1つの方向における前記中心点までの距離の増加とともに走査される、
走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【請求項22】
前記サンプルのより大きいエリアを走査するように構成されたさらなるスキャナをさらに備え、前記検出器は、前記走査エリアを走査している間に前記サンプルに対する位置が固定である点検出器である、請求項21に記載の走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【請求項23】
前記さらなるスキャナは、前記光整形器の対物レンズに対して移動可能なサンプルホルダーを備える、請求項22に記載の走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【請求項24】
前記スキャナは、電気光学スキャナ、音響光学ディフレクタ、ガルボスキャナ又はガルボミラーのうちの少なくとも1つを備える、請求項21に記載の走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【請求項25】
前記光源によって提供される前記光は誘導光であり、前記走査型ルミネセンス光学顕微鏡は:
励起光を提供するように構成されたさらなる光源であって、前記光整形器が、前記誘導光の前記零点の前記エリア中で最大値を有する強度分布で前記誘導光をサンプル上に導くように構成された、光源と、
スイッチオフ光を提供するように構成されたスイッチオフ光源であって、前記光整形器は、前記光整形器が、近接する部分エリア中の切替え可能ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態にスイッチオフするような強度分布で前記スイッチオフ光を前記サンプル上に導くように構成され、前記近接する部分エリアは、前記強度最大値が前記誘導光の前記零点に近接する前記少なくとも1つの方向における前記走査エリアに近接する、スイッチオフ光源と
をさらに備える、請求項22に記載の走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【請求項26】
前記切替え可能ルミネセンスマーカーをそれらのアクティブ状態に切り替えるスイッチオン光を提供するように構成されたスイッチオン光源をさらに備え、前記光整形器は、前記スイッチオフ光を前記サンプル上に導くことより前に又はそれと一時的に重複して、前記スイッチオン光を前記走査エリア上に導くように構成された、請求項25に記載の走査型ルミネセンス光学顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月22日に出願されたドイツ特許出願第10 2015 116 023.4号明細書、及び2016年3月7日に出願されたドイツ特許出願第10 2016 104 100.9号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、構造がルミネセンスマーカーでマークされた、サンプル中の構造を空間高解像度画像化する方法に関する。さらに、本開示は、この方法を行うための走査型ルミネセンス光学顕微鏡に関する。
【0003】
本発明は、高解像度走査型ルミネセンス光学顕微鏡法の分野に属し、ここでは、それぞれのサンプルから放出されるルミネセンス光の波長と、空間的に限られたエリアにおけるルミネセンス光の放出のためにルミネセンスマーカーがそれによって励起される何らかの励起光の波長とにおいて回折バリアよりも高い空間解像度で、ルミネセンス光をサンプル中のロケーションに割り当てることを可能にする手段が取られる。しばしば、ルミネセンスマーカーは、励起光による励起の後にルミネセンス光として蛍光光を放出する蛍光マーカーである。その場合、1つは蛍光顕微鏡法を参照する。
【背景技術】
【0004】
構造がルミネセンスマーカーでマークされた、サンプル中の構造を空間高解像度画像化するための知られている方法及び走査型ルミネセンス光学顕微鏡では、空間解像度を増加させるために、零点と零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光がサンプル上に導かれる。しばしば、この光は、零点の外側にあるすべてそれらのルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を抑制するルミネセンス抑制光である。サンプルから放出されるルミネセンス光は、そこに位置するルミネセンスマーカーのみがルミネセンス光を放出することが可能であるので、したがってサンプル中の零点のロケーションに割り当てられ得る。
【0005】
STED蛍光顕微鏡法では、例えば、励起光によって以前に励起された蛍光マーカーは、零点のエリア中にある蛍光マーカーのみが、その後に測定された蛍光光を放出していることがあるように、零点のエリア中の蛍光マーカー以外は、蛍光抑制光として誘導光によって再び逆励起される。この蛍光光は、したがって、サンプル中の零点のロケーションに割り当てられ得る。サンプル内の蛍光マーカーの空間分布は、零点でサンプルを走査することによって決定される。このようにして、蛍光マーカーでマークされる、サンプル中の構造の形状及び空間分布が画像化され得る。
【0006】
GSD蛍光顕微鏡法では、蛍光抑制光は、零点のエリア外の蛍光マーカーが励起光によって蛍光光の放出のためにもはや興奮性でなくなるように、それらの蛍光マーカーを電子的暗状態に移す。
【0007】
RESOLFT蛍光顕微鏡法では、零点のエリア中の蛍光マーカー以外は、フォトクロミック蛍光マーカーを蛍光状態から非蛍光状態に移す蛍光抑制光が使用される。蛍光マーカーがその後に励起光を受けたとき、蛍光抑制光の強度分布の零点のエリア中の蛍光マーカーのみが、励起光によって蛍光光の放出のために励起される。したがって、サンプル中の蛍光マーカーによって放出される蛍光光も、ここで、サンプル中の蛍光抑制光の強度分布の零点のロケーションに割り当てられ得る。
【0008】
ここまで説明された高空間解像度走査型ルミネセンス光学顕微鏡法のすべての方法では、それぞれのサンプル中のルミネセンスマーカーがルミネセンス光をもはや放出することができなくなるように、それらのルミネセンスマーカーを一時的に又は永続的にさえ漂白する、すなわち、それらのルミネセンスマーカーを非アクティブにする、本質的危険がある。この危険は、ルミネセンス光の放出から零点のエリア外のすべてのルミネセンスマーカーを停止するために、またルミネセンスマーカーが依然としてルミネセンス光をそこから放出し得る零点のエリアの寸法を強く空間的に画定するために、ルミネセンス抑制光の強度が極めて高い必要があることに起因する。この高い強度では、ルミネセンス抑制光の零点のエリアがルミネセンスマーカーにより近づくとき、すなわち、ルミネセンスマーカーが初めて零点のエリア中に入る前に、したがって、初めて登録されたルミネセンスマーカーによってルミネセンス光が放出されるより前にすでに、ルミネセンス抑制光は、サンプル中のルミネセンスマーカーにすでに応力を加えている。これは、漂白する傾向を有するルミネセンスマーカーが空間解像度を最大化するために望ましいので、それらのルミネセンスマーカーが、説明する方法においてまったく使用されないことがあるか、又は少なくともルミネセンス抑制光の高い強度とともに使用されないことがあるという結果を有し得る。
【0009】
高解像度走査型ルミネセンス光学顕微鏡法における一時的漂白及び特に永続的漂白の説明した問題を回避するために、いくつかの手法が追求された。同じパテントファミリーに属する、ドイツ特許出願公開第10 2005 027 896号明細書及び米国特許第7,719,679号明細書は、サンプルの同じエリアが、最適化された時間繰り返し間隔で、零点に近接する最大値における蛍光抑制光の高い強度のみを受けるように、比較的長い時間間隔で、又は誘導光の強度分布の零点でそれぞれのサンプルを極めて高速に走査しながら、パルス中でSTED蛍光顕微鏡法においてサンプルに誘導光を適用することを教示している。このようにして、蛍光マーカーが誘導光によるさらなる励起によって励起中間状態から永続的又は低速減衰のみの暗状態に入るレートがかなり低減されるので、サンプルから取得可能な蛍光強度光は増加される。言い換えれば、サンプルの各個々のエリアが蛍光抑制光の強度分布を受ける比較的長い繰り返し間隔によって、ある時間期間内にサンプル全体から取得可能な蛍光光の全体的な量が最大化される。この手順は、蛍光マーカーの光化学的破壊がそれから起こり得る励起状態のより高い分布が回避されるので、漂白する蛍光マーカーの傾向をも低減する。
【0010】
漂白する傾向がある蛍光マーカーでも高空間解像度蛍光顕微鏡法を行うために、同じパテントファミリーに属する、ドイツ特許出願公開第10 2011 051 086号明細書及び米国特許出願公開第2014/0097358号明細書は、個々に検出可能な光子として蛍光抑制光の強度分布の零点のエリアから蛍光光が放出されるような方法で、サンプルが走査される走査速度及び蛍光抑制光の強度分布の光強度のほかに、サンプル内の蛍光マーカーの特性及び濃度を含めて、互いに関して走査条件を調整することを教示している。蛍光マーカーでマークされた、サンプル中の構造の画像は、次いで、零点のロケーションから構成され、それらのロケーションには、零点でサンプルを走査するいくつかの反復中に、検出された光子が割り当てられる。このようにして、蛍光マーカーを漂白する確率は、蛍光マーカーが零点に達し、したがって初めて測定される前に、低減される。これは、漂白の確率が、個々の蛍光マーカーから取得される蛍光光の強度に相関することに起因する。蛍光光が個々の光子に最小化されるので、漂白の危険も最小化される。概して、しかしながら、ドイツ特許出願公開第10 2011 051 086号明細書及び米国特許出願公開第2014/0097358号明細書からの知られている方法では、蛍光抑制光の零点は、零点に近接する蛍光抑制光の強度最大値のエリア中で零点が高い強度を以前に受けた後に、依然として個々の蛍光マーカーに達するのみである。
【0011】
高空間解像度走査型ルミネセンス光学顕微鏡法において漂白が起こりやすい物質を使用することも可能になるために、同じパテントファミリーに属する、国際特許出願公開第2011/131591号明細書及び米国特許第9,024,279号明細書から、注目する構造がルミネセンスマーカーでマークされたサンプルにわたって測定フロントを移動することが知られている。測定フロントでは、光信号の強度は、ルミネセンス光を放出するルミネセンスマーカーの一部分が、最初にルミネセンスマーカーをルミネセンス状態に移し、次いでルミネセンスマーカーを非ルミネセンス状態に移すことによって、非存在から開始して増加され、次いで再び非存在に低減され戻されるような方法で、光信号の波長において回折バリアよりも小さい測定フロントの深さにわたって増加する。測定フロントのエリアからのルミネセンス光は登録され、サンプル中の測定フロントのそれぞれの位置に割り当てられる。測定フロントに沿ったあるロケーションへのルミネセンス光の割当ても、例えば、GSDIMとして知られる光学顕微鏡法の場合と同じ方法で、登録された光子を単一のルミネセンスマーカーに割り当てることによって、回折バリアを越える空間解像度で行われ得る。
【0012】
走査型ルミネセンス光学顕微鏡法においてサンプルの注目する構造を画像化する速度を増加させるオプションは、ルミネセンス抑制光の複数の零点でサンプルを並列に走査することである。ここで、サンプルから放出されるルミネセンス光は、ルミネセンス抑制光の個々の零点に別々に割り当てられる。同じパテントファミリーに属する、ドイツ特許第10 2006 009 833号明細書ならびに米国特許第7,903,247号明細書及び第7,646,481号明細書から、ルミネセンス抑制光の2つの直交ラインパターンがサンプル内に重畳されるという点で、零点のグリッドでルミネセンス抑制光の強度分布を形成することが知られている。2つのラインパターンの光の間の干渉は、それらのパターンの強度分布が単に加算されるように回避される。ルミネセンス抑制光の強度分布の所望の零点は、両方のライン格子のライン形の零点の交差点に残り、それらは、ルミネセンス抑制光の近接する強度最大値によって画定される。零点のグリッド形の配置のエリア中のサンプルを完全に走査するためには、2つのラインパターンの2つの方向において各零点をそれの最近傍までの距離にわたってシフトすれば十分である。この場合も、サンプル中のルミネセンスマーカーの大部分は、ルミネセンスマーカーが初めて登録されるように零点のうちの1つがルミネセンスマーカーに達する前に、ルミネセンス抑制光の高い光強度を受ける。したがって、ルミネセンスマーカーは、それらのルミネセンスマーカーが漂白なしにこれらの高い光強度に耐えるように選択されるべきである。
【0013】
Li Dら: Extended−resolution structured illumination imaging of endocytic and cytoskeletal dynamics、Science 2015 Aug 28; 349(6251)は、サンプル中の構造を空間高解像度画像化する方法を開示し、構造は、アクティブ化可能な蛍光マーカーでマークされ、サンプルは、異なる方向における蛍光アクティブ化光及び蛍光抑制光の光強度分布の一致するライン形又は平面形の零点で連続的に走査され、サンプルによって放出される蛍光光はカメラで登録される。登録された光強度を評価することによって、サンプル中の注目する構造の画像が再構成され得、その画像の空間解像度は、蛍光光がサンプルから放出されない、蛍光アクティブ化光及び蛍光励起光の一致する零点を絞ることに起因して増加される。さらに、この知られている方法では、蛍光アクティブ化光と、同時に蛍光非アクティブ化光として働く蛍光励起光との零点は、蛍光アクティブ化光及び蛍光励起光の強度最大値によって画定される。サンプル中のすべてのルミネセンスマーカーは、それらのルミネセンスマーカーが蛍光アクティブ化光及び蛍光励起光の一致する零点のエリアに入る前に、これらの強度最大値のエリア中の蛍光アクティブ化光及び蛍光励起光の高い強度を受ける。したがって、関係する測定信号に蛍光マーカーが寄与する前に、蛍光マーカーを漂白する危険は、この知られている方法でも極めて高い。
【0014】
同じパテントファミリーに属する、国際特許出願公開第2014/108455号明細書及び米国特許第9,267,888号明細書は、サンプル中の構造を高空間解像度画像化する方法を開示し、構造はルミネセンスマーカーでマークされ、サンプルは、STED蛍光顕微鏡法におけるように、励起光を受け、ルミネセンス抑制光として誘導光を受けて、サンプルのエリアが低減され、サンプルからそのエリアに放出され検出される蛍光光は、誘導光の零点のエリアに割り当てられ得る。零点に近接するそれの最大値のエリア中の誘導光の高い強度に対してルミネセンスマーカーを保護するために、サンプルは、誘導光の零点に一致する局所最小値を強度分布が有する励起抑制光をさらに受ける。この励起抑制光は、特に、励起抑制光の最小値の外側にある切替え可能ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態に切り替えるスイッチオフ光であり得、この非アクティブ状態では、それらのルミネセンスマーカーは、励起光によって蛍光光の放出のために興奮性でない。特に、ルミネセンスマーカーは、それらのルミネセンスマーカーが高空間解像度RESOLFT蛍光顕微鏡法において使用されるような切替え可能蛍光色素であり得る。国際特許出願公開第2014/108455号明細書及び米国特許第9,267,888号明細書からの知られている方法では、しかしながら、ルミネセンスマーカーの切替え可能性は、空間解像度を増加させるためにではなく、誘導光の高い強度に起因する漂白に対してルミネセンスマーカーを保護するために主に使用される。
【0015】
R A Hoebeら: Controlled light−exposure microscopy reduces photobleaching and phototoxicity in fluorescence live−cell imaging, Nature Biotechnology、Volume 25、No. 2、2007年2月、249〜253ページは、共焦点蛍光顕微鏡法の方法を開示し、サンプル中の構造を画像化するために合焦した励起光でサンプルは走査され、構造はルミネセンスマーカーでマークされる。ここで、サンプル中の励起ルミネセンスマーカーによって放出され検出器によって登録された光子の数が、所望の信号対雑音比に対応する上限しきい値に達するすぐに、励起光は、サンプル内の合焦した励起光の各位置においてオフに切り替えられる。放出され登録された光子の数が、最大ピクセル滞在時間の所定の部分内に下限しきい値に達しない場合、これは、合焦した励起光のそれぞれの位置においてサンプル中にルミネセンスマーカーの関係する濃度が見つからないことを示すので、励起光はやはりオフに切り替えられる。このようにして、励起光によるサンプルの負荷は、各位置において同じ量の光をサンプルにかけることと比較して、かなり低減される。
【0016】
T. Staudtら: Far−field optical nanoscopy with reduced number of state transition cycles、Optics Express Vol. 19、No. 6、2011年3月14日、5644〜5657ページは、共焦点蛍光顕微鏡法のためのR A Hoebeらによって説明された方法をSTED蛍光顕微鏡法に移す、RESCue−STEDと呼ばれる方法を開示する。ここで、サンプルは、必要又は好適である限り、誘導光の高い強度のみを受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10 2005 027 896号明細書
【特許文献2】米国特許第7,719,679号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第10 2011 051 086号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0097358号明細書
【特許文献5】国際特許出願公開第2011/131591号明細書
【特許文献6】米国特許第9,024,279号明細書
【特許文献7】ドイツ特許第10 2006 009 833号明細書
【特許文献8】米国特許第7,903,247号明細書
【特許文献9】米国特許第7,646,481号明細書
【特許文献10】国際特許出願公開第2014/108455号明細書
【特許文献11】米国特許第9,267,888号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Li Dら: Extended−resolution structured illumination imaging of endocytic and cytoskeletal dynamics、Science 2015 Aug 28; 349(6251)
【非特許文献2】R A Hoebeら: Controlled light−exposure microscopy reduces photobleaching and phototoxicity in fluorescence live−cell imaging, Nature Biotechnology、Volume 25、No. 2、2007年2月、249〜253ページ
【非特許文献3】T. Staudtら: Far−field optical nanoscopy with reduced number of state transition cycles、Optics Express Vol. 19、No. 6、2011年3月14日、5644〜5657ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
構造がルミネセンスマーカーでマークされた、サンプル中の構造を高空間解像度画像化する方法と、そのような方法を実行するための走査型ルミネセンス光学顕微鏡とが依然として必要であり、例えば、生物学的プロセスの過程中に構造の変化を監視するために、高い光強度に敏感であるルミネセンスマーカーさえ使用され得、及び/又はそれぞれのサンプル中の構造が繰り返し画像化され得るように、高い光強度によるサンプル中のルミネセンスマーカーへの負荷は概して低減される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、構造がルミネセンスマーカーでマークされた、サンプル中の構造を高解像度画像化する方法を提供する。本方法は、零点と少なくとも1つの方向において零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光をサンプル上に導くことと;零点で走査エリアを走査することであって、走査エリアがサンプルの一部である、ことと;走査エリアを走査している間に、サンプル中に零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光を登録することと;登録されたルミネセンス光をサンプル中の零点のそれぞれのロケーションに割り当てることとを含む。強度最大値がサンプル中の零点に近接する少なくとも1つの方向における走査エリアの寸法は、それらの寸法が少なくとも1つの方向において強度最大値の距離の75%よりも大きくならないように限定される。
【0021】
本発明はまた、構造がルミネセンスマーカーでマークされた、サンプル中の構造を高空間解像度画像化するさらなる方法を提供する。この方法は、零点と少なくとも1つの方向において零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光をサンプル上に導くことと;零点で走査エリアを走査することであって、走査エリアがサンプルの一部である、ことと;走査エリアを走査している間に、サンプル中に零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光を登録することと;登録されたルミネセンス光をサンプル中の零点のそれぞれのロケーションに割り当てることとを含む。ここで、走査エリアは、中心点において開始する零点で、及び少なくとも1つの方向における中心点までの距離の増加とともに走査される。
【0022】
さらに、本発明は、光を提供するように構成された光源と;零点と零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で光をサンプル上に導くように構成された光整形器と;零点で走査エリアを走査するように構成されたスキャナであって、走査エリアがサンプルの部分エリアである、スキャナと;零点のエリアから放出されるルミネセンス光を登録するように構成された検出器と;上記の方法のうちの少なくとも1つを実装するソフトウェアを用いてプログラムされたコントローラとを備える、走査型ルミネセンス光学顕微鏡を提供する。
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を考察すると当業者に明らかになろう。すべてのそのような追加の特徴及び利点は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で本明細書に含まれるものである。
【0024】
本発明は、以下の図面を参照するとより良く理解できよう。図面中の構成要素は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を明らかに示すことに強調が置かれる。図面において、同様の参照番号は、いくつかの図全体にわたって対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】サンプル中のルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の一例としての励起光及び蛍光抑制光の強度分布と、蛍光光の放出のためのサンプル中の蛍光マーカーの得られた実効励起とを概略的に示す。
図2図1による蛍光抑制光の強度分布について、本発明による方法における図1による強度分布で走査されるべきサンプルの走査エリアの寸法を示す。
図3】メアンダ形のコースに沿って走査が行われる、上面図で走査されるべきサンプルの走査エリアの概略図である。
図4】スパイラル形のコースに沿って走査が行われる、上面図で走査されるべきサンプルの走査エリアの概略図である。
図5】同じくスパイラル形のコースに沿って走査が行われる、本発明による別の方法で、上面図で走査されるべきサンプルの走査エリアの概略図である。
図6】本発明による走査型ルミネセンス光学顕微鏡の一例として蛍光顕微鏡を概略的に示す。
図7図7(a)はアップフロントに取られたサンプルの共焦点画像を示し、図7(b)はアップフロントに取られたサンプルの共焦点画像を示す。 共焦点画像に基づいてサンプルの個々の走査エリアが選択された後の、本発明に従って取られたサンプルの部分画像を示す。
図8】サンプルの走査エリアの連続的に取られ得る画像の数と、走査エリアの寸法との間の依存性を示す。
図9】本発明による走査型ルミネセンス顕微鏡のさらなる実施形態例として図6にない別の蛍光顕微鏡を概略的に示す。
図10図9の走査型蛍光顕微鏡によってスイッチオフ光がサンプル上に導かれる近接するエリアの追加の図とともに走査されるべきサンプルの走査エリアの概略図である。
図11】走査エリアでサンプルを走査するために、図10に従って走査されるべきである、サンプル中のいくつかの走査エリアの配置を示す。
図12】サンプル中の走査エリアの別の配置を示す。
図13】本発明による方法の一実施形態のブロック図である;
図14】本発明による方法の別の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
サンプル中の構造を空間高解像度画像化する本発明による方法では、構造はルミネセンスマーカーでマークされ、零点と零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で、ルミネセンスマーカーによって蛍光光の放出に影響を及ぼす光がサンプル上に導かれる。サンプルの部分エリアである走査エリアが零点で走査され、零点を含む局所エリアから放出されるルミネセンス光は、登録され、ルミネセンス光が登録されたとき、それにおいて零点がサンプル中にあったそれぞれのロケーションに割り当てられる。走査エリアの寸法は、強度最大値が零点に近接する少なくとも1つの方向で及び特にあらゆる方向で、それぞれの方向において強度最大値の距離のせいぜい75%に限定される。
【0027】
本明細書でルミネセンスマーカーが言及される限りでは、ルミネセンスマーカーは特に蛍光マーカーであり得る。しかしながら、ルミネセンス特性が、例えば、化学ルミネセンスかエレクトロルミネセンスに基づき得る、他のルミネセンスマーカーも使用され得る。これは、放出ルミネセンス光のためのルミネセンスマーカーの励起が、本発明による方法における特定の機構に限定されないことを含む。しかしながら、しばしば、ルミネセンス光の放出のためのルミネセンスマーカーの励起は励起光により得る。
【0028】
ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、ルミネセンス抑制光が、例えば、ルミネセンスマーカーを暗状態に移すか又は誘導放出によって励起したルミネセンスマーカーを逆励起し、このようにしてルミネセンスマーカーがルミネセンス光を放出するのを抑制するという点で、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を抑制するルミネセンス抑制光であり得る。さらに、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、ある非ルミネセンス状態からのルミネセンスマーカーを、漂白に対して特に良く保護されるさらなる非ルミネセンス状態に移す光であり得る。さらに、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、その光が他の光と組み合わされた場合、この放出が光の強度分布の零点のエリアからのみ生じるように、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼすだけの光であり得る。
【0029】
別の実施形態では、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、ルミネセンス可能光が、例えば、ルミネセンスのためにルミネセンスマーカーを励起するか又はルミネセンスマーカーを暗状態から興奮性状態に移すという点で、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を可能にするルミネセンス可能光である。
【0030】
ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度分布の零点は、少なくとも光の強度分布の局所強度最小値である。しばしば、零点は、光の強度が本質的に0にドロップする強度最小値になる。理想的な事例では、光の強度は、零点の中心において実際に0にドロップする。しかしながら、これは必須の要件ではない。例えば、光がルミネセンス抑制光である場合、ルミネセンス抑制光の強度が零点のエリア中で極めて低く、したがって、ルミネセンスマーカーのルミネセンスの抑制がないか、又は少なくとも本質的抑制がなければ、すなわち少なくとも優勢な抑制がなければ、十分である。零点は、その場合、ルミネセンス抑制光がルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を少なくとも本質的に抑制するエリアによって画定される。ルミネセンス抑制光がルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を少なくとも本質的に抑制するこれらのエリア間のあらゆるものは、本明細書では「零点」又は「零点のエリア」と呼ばれる。
【0031】
ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度分布の零点に近接する強度最大値が本明細書において複数形で言及された場合、これは、零点が、零点の周りのリングとして拡張している強度最大値によって囲まれる場合を除外するものではない。ルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度分布を介する各仮想セクションでは、そのようなリング形の強度最大値は、セクション中の両側において零点に近接する2つの強度最大値の形態で現れる。
【0032】
強度最大値は、1つ、2つ又は3つの方向で零点に近接していることがある。したがって、零点は平面形、ライン形又は点形であり得る。零点は、ライン形又は点形の零点でもサンプルの主要な拡張のすべての方向において強度最大値によって画定されるような方法で、2次元又は1次元サンプルと交差し得る。さらに、走査エリアは、サンプルの主要な拡張のすべての方向において画像化の空間解像度を最大化するために、零点の異なる配向をもつサンプルの主要な拡張のすべての方向において強度最大値によって画定されない零点で連続的に走査され得る。走査エリアの物理的寸法は、強度最大値がサンプル中の零点に近接している少なくとも1つの方向において、好ましくはすべての方向において限定される。
【0033】
サンプル中の零点に近接する強度最大値は、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度分布のエリアよりもしばしばはるかに高い光強度であり、それらのエリアは、零点のエリアを直接画定しており、光が、例えば、ルミネセンス光の放出を抑制するという点で、光がルミネセンスマーカーによってエリア中でこの放出に所望の影響をすでに及ぼしている。強度最大値の極めて高い強度は、光の全体的な高い強度の結果であり、それは一方で、光がルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に少なくとも本質的に影響をその中で及ぼさない零点のエリアが強く空間的に画定されることのための前提条件である。結果として、零点のエリアを直接画定する光強度分布のエリアと、強度分布の強度最大値のエリアとの間に中間エリアがあり、その中間エリア内で、光強度は、強度最大値内の光強度をはるかに下回ったままである。これらの中間エリアは、走査エリアの寸法がそれぞれの方向において強度最大値の距離の75%を超えないという点で、本発明による方法では意図的に使用される。走査エリアの寸法がそれぞれの方向において強度最大値の距離の50%よりも小さいままである場合、走査エリアの点は光強度最大値のフル強度を受けない。しかし、距離の75%の限界の場合でも、走査エリアが受けるルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の平均的強度に有意な限定がある。走査エリアの寸法がそれぞれの方向において強度最大値の距離よりも小さいままになるほど、走査エリアが受ける光の平均的強度はより小さくなることを理解されたい。絶対的観点から、強度最大値の間のそれぞれの方向における走査エリアの寸法は、最大で300nmであり得る。好ましくは、それぞれの方向における寸法は最大で200nmであり、より好ましくは、寸法は約100nmである。これらの絶対的数字は、すべて可視範囲内にある、ルミネセンス光の波長、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の波長、及び/又は可能な励起光の波長に関係する。
【0034】
走査エリアは、本発明による方法を実行するときに走査されるサンプルの部分エリアのみであり、対応して、サンプル中の注目するエリアに、すなわちサンプル中のルミネセンスマーカーでマークされた構造の注目する細部に導かれるべきである、サンプルの部分エリアであり得る。
【0035】
本発明は、サンプルの走査されしたがって画像化される部分エリアが小さいままであることを意図的に許容する。しばしば、走査エリアは、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の波長において回折バリアの大きさの距離にわたって延びる。一方、走査エリアが受ける平均的光強度の本質的低減により、漂白する傾向が強いルミネセンスマーカーさえ首尾よく使用すること、又は光強度分布の零点でサンプル中の走査エリアを繰り返し走査することが可能である。
【0036】
強度分布の零点で高い繰返しレートにおいてサンプル中の走査エリアを繰り返し走査するオプションはまた、サンプル中の注目する構造における動的プロセスを時間的に解決することを可能にする。サンプル中のルミネセンスマーカーは、本発明による方法により、特定の高い数の光子が走査エリア中の各個々の蛍光マーカーから取得されるように、特に低い漂白する傾向を有するので、特にサンプルの走査エリアの多くの画像が取られ得、したがって、サンプル中の注目する構造の長時間変動さえ観測され得る。概して、走査エリアは、100×100=10,000個以下の画像点において走査される。これは数ミリ秒内で可能である。したがって、100Hz以上の画像周波数が実現され得る。
【0037】
有利には、強度最大値がサンプル中の零点に近接する各方向において、走査エリアの寸法は、それぞれの方向において強度最大値の距離の45%、25%又は10%さえよりも大きくない。ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度に関して、強度最大値がサンプル中の零点に近接する各方向における、サンプルの部分エリアの寸法は、零点において開始する光の強度が、近接する強度最大値において光の強度の50%、25%、10%又は5%までそれぞれの方向においてそれにわたって増加する距離よりも大きくない場合、有利である。対応して、走査エリア中のルミネセンスマーカーの最大負荷は、近接する強度最大値において光の強度の50%、25%、10%又は5%に限定される。
【0038】
ここまで説明された本発明の実施形態が基づく同じ所見はまた、サンプルの走査エリアが、中心点において開始して、及びこの中心点までの距離の増加とともに走査される、本発明による方法の別の実施形態において使用される。中心点までの距離が、同じ方向においてサンプル中の零点に近接する強度最大値の距離の75%よりも小さいままである限り、走査エリア上の蛍光マーカーによって蛍光光の放出に影響を及ぼす光による平均的負荷は、知られている走査型ルミネセンス光学顕微鏡検査方法と比較して小さいままになる。いずれの場合も、中心点に近い位置にあるルミネセンスマーカーは、ルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光のより高い強度を受けるより前に、サンプル中のルミネセンスマーカーのロケーションに関して登録される。したがって、漂白する傾向があるルミネセンスマーカーでは、登録されたルミネセンス光の相対的強度は、特に中心点までの距離がそれぞれの方向において強度最大値の距離まで及びそれを超えて増加する場合、中心点までのこの距離の増加とともに減少し得る。それにもかかわらず、中心点の直接周りにあるサンプルの部分エリアは走査され、ルミネセンス光の高い収量を伴って画像化される。
【0039】
最後に説明される本発明による方法の実施形態は、実際には、中心点の周りのスパイラルコースに沿って走査エリアが走査されるという点で実現され得る。
【0040】
本発明による方法のすべての実施形態では、走査されるべきサンプルの部分エリアを走査するより前に、走査されるべきサンプルの部分エリアを決定するために別の方法でルミネセンスマーカーでマークされた構造を画像化することがしばしば好適である。概して、走査されるべきサンプル又は走査エリアの部分エリアは、構造の特定の細部がその中に存在するか、又は生物学的プロセス中に構造の特定の発展がその中で生じる、サンプルの注目する部分エリアである。この1次画像化は、蛍光光の放出のためのルミネセンスマーカーの局所又は大きいエリア励起の下で、及びルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光を使用せずに行われ得る。
【0041】
走査エリアを走査するより前に、サンプルのより大きいエリアは、サンプル中の走査されるべき部分エリアの位置を決定するために、ルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の少なくとも50%だけ低減した強度で、及び/又は少なくとも50%だけ増加した走査速度で走査され得る。この1次走査では、サンプルのより大きいエリアのすべての点は、強度最大値のエリア中の光の高い強度を受ける。しかしながら、この強度は、意図的に低減され、及び/又はより短い時間期間にわたってルミネセンスマーカーのみに作用する。
【0042】
一実施形態では、走査エリアを走査する場合よりもサンプルのより大きいエリアを走査するために別のスキャナが使用される。
【0043】
サンプルのより大きいエリアを走査して走査エリアを決定するために、及びその後に走査エリアを走査するために異なるスキャナを使用する際に、強く限定された、すなわち小さい走査エリアを走査するのに特に適したスキャナが使用され得る。走査エリアの小さい寸法により、これらのスキャナは、サンプルに対して零点をもつ光強度分布のより大きい移動を可能にしないが、可能な移動を極めて高速及び/又は正確に実現するスキャナであり得る。したがって、走査エリアは、例えば、走査エリア中でサンプルの注目する構造の高速な変化を監視するために、高い繰返しレートで走査され得る。
【0044】
特に、サンプル用のサンプルステージ又はサンプルホルダーは、光がそれによってサンプル上に導かれる対物レンズに対して少なくとも1つの方向に移動され得るが、少なくとも1つの方向において走査エリアを走査するためには、電気光学スキャナ、音響光学ディフレクタ又はガルボスキャナもしくはガルボミラー、すなわちガルボメトリックドライブをもつ偏向ミラーが使用される。走査エリアのためのスキャナは、光強度分布の零点をシフトするための位相シフタとして追加の電気光学又は音響光学変調器と組み合わされ得る。
【0045】
すでに説明したように、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、特に、零点の外側でルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を抑制するルミネセンス抑制光であり得る。例えば、ルミネセンス抑制光は、切替え可能タンパク質の形態のルミネセンスマーカーを、ルミネセンスマーカーがルミネセンス光の放出のために興奮性でない暗状態に移すか又は切り替える。ルミネセンス抑制光は、ルミネセンス光の放出のためにルミネセンスマーカーを励起し、ルミネセンス抑制光の零点のエリア中で強度最大値をもつ強度分布を有する励起光との組合せで、サンプル上に特に導かれ得る。走査エリアまでの密な限界を除いて、又は走査エリアの中心点までの距離の増加を伴う走査を除いて、これは、STED、RESOLFT又はGSD蛍光光学顕微鏡法における通常の手順に対応する。
【0046】
本発明による方法の一実施形態では、国際特許出願公開第2014/108455号から知られている概念、すなわち、ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態に切り替えることによって誘導光の強度最大値のエリア中の高い強度に対してルミネセンスマーカーを保護するために切替え可能ルミネセンスマーカーを用いてSTED蛍光顕微鏡法を行うことは、修正形態で適用される。特に、零点で走査エリアを走査するより前に、追加のスイッチングオフ光が、走査エリアに近接するサンプルの部分エリアにおいて切替え可能ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態に切り替えるような強度分布で、追加のスイッチングオフ光がサンプル上に導かれる。この近接するエリアは、強度最大値がサンプル中の誘導光の零点に近接する少なくとも1つの方向において走査エリアに近接する。このようにして、ルミネセンスマーカーは、そこで非アクティブ状態に切り替えられ、ここに誘導光の強度最大値があり、及びここで、この保護手段なしでは、ルミネセンスマーカーは、走査エリアを走査する際に誘導光の高い強度によって漂白されるであろう。本発明による方法のこの実施形態では走査エリアの外側でルミネセンスマーカーの漂白が抑制されるという点で、それは、直接近接しているか又は重複さえしている走査エリアについて連続的に行われ得る。言い換えれば、サンプルは走査エリアで走査され得、ここにおいて、走査エリアは、サンプル中のすべての位置又は少なくとも選択された位置において、零点で走査される。
【0047】
その後に走査されるべきそれぞれの近接するエリア中のスイッチオフ光の強度分布は、弱め合う干渉によって形成される走査エリア中に局所強度最小値を備え得、この弱め合う干渉において、それは、ルミネセンスマーカーを少なくとも本質的にオフに切り替えず、すなわち、それは、ルミネセンスマーカーを、少なくとも本質的に、ルミネセンスマーカーが励起光によって興奮性であるそれらのアクティブ状態のままにする。切替え可能ルミネセンスマーカーの選択に応じて、このアクティブ状態は、光をサンプルに導くことより前に又はそれと一時的に重複して、走査されるべきサンプルのそれぞれの部分エリア上にスイッチオン光が導かれ、それにより、切替え可能ルミネセンスマーカーがそれらのアクティブ状態にスイッチオンされることを必要とするか、又は少なくともそれを好適にし得る。
【0048】
オン及び/又はオフに切り替えられるとき、切替え可能ルミネセンスマーカーはしばしばルミネセンス光を放出する。このルミネセンス光は登録され、評価され得る。この評価の目的は、例えば、それぞれの近接するエリアによって画定された走査エリアが少しでも零点で走査されるかどうかの判定、あるいは、次いで放出されるルミネセンス光が共焦点的に登録されている間に、走査エリアが全体として励起光のみを受けるかどうかの判定、あるいは、オン及び/又はオフに切り替えることが、ルミネセンスマーカーの関係する濃度がないことを示す間に、走査エリアが、登録されるルミネセンス光の低い強度としてまったく励起光を受けないかどうかの判定であり得る。さらに、評価は、どんな条件下で、誘導光を、近接する部分エリアによって画定される走査エリア中の零点の各位置におけるサンプル上に導くことと、零点のエリアから放出されるルミネセンス光の登録とが適切に停止され得るかを判定する目的を有し得る。例えば、それぞれの走査エリアにおいてRESCue方法を行うための上限及び/又は下限しきい値が、評価の結果に応じて設定され得る。
【0049】
本発明による方法の一実施形態では、零点のエリアから放出されるルミネセンス光は、走査エリア中にサンプルに対する位置が変化しない点検出器で登録される。これは、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の光強度分布の零点の移動が、点検出器でルミネセンス光を登録する際に考慮されないことを意味する。走査エリアの寸法は、概して、サンプルに対する点検出器の検出エリアよりも明らかに小さいので、これは可能である。これは、走査エリアの中心点に対して共焦点的に配置された点検出器にさえ、特に当てはまる。走査エリアの寸法は、概して、ルミネセンス光の波長における回折バリアよりも小さいので、走査エリア全体からのルミネセンス光はそのような点検出器に達することになる。空間的に固定された点センサは、走査エリアを走査するための零点が、蛍光マーカーによって蛍光光の放出に影響を及ぼす光を偏向させることによってのみ移動されることを意味する。どんな励起光さえ、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光とともにシフトされることは、それの強度最大値が典型的には走査エリア全体をもカバーするので、不要である。
【0050】
またすでに説明したように、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光は、代替的に、零点の外側でルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出を可能するルミネセンス可能光であり得る。これは、この光がルミネセンス励起光であり、サンプル上に導かれる唯一の光であるというオプションを含む。これはまた、光が、ルミネセンスマーカーを暗状態からルミネセンスのための興奮性状態に移す、すなわち、ルミネセンスマーカーをアクティブにするルミネセンスアクティブ化光であるというオプションを含む。ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光はまた、両方の機能、すなわちアクティブ化と励起を有し得、この目的のために異なる波長の2つの成分を有し得る。次いで、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の強度分布の零点でサンプルの部分エリアが走査される場合、部分エリア中にあるルミネセンスマーカーを、零点に近接する強度最大値のエリア中の高い光強度にまったくかけないか、又は少なくともできる限り少なくかけるために、この走査エリアは小さく保たれる。本方法のこの実施形態においてサンプル中のルミネセンスマーカーによって放出されるルミネセンス光を登録することはカメラで行われ得、評価は、典型的には、サンプル中の零点の実際の位置と、サンプルから放出されカメラで登録されるルミネセンス光の強度分布の関連する変動とに関して、登録された強度分布を解析することを含む。
【0051】
サンプルのそれぞれ走査されしたがって画像化される部分エリアが極めて小さいままであるという、本発明による方法の欠点は、サンプルがいくつかの部分エリアにおいて同時に走査されるという点で、少なくとも部分的に補償され得る。ここで、特に、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光の零点のグリッドが使用され得る。その場合でも、零点のグリッドは、サンプル全体が画像化されるように、すなわちグリッドにおける零点の全距離にわたって画像化されるようにシフトされない。代わりに、サンプルがその中で走査される個々の部分エリアは、本発明による方法のこの実施形態でさえ、互いに分離されたままになる。この場合にのみ、走査される部分エリアにおけるルミネセンスマーカーを漂白する危険の低減は、高い光強度の漂白効果に対してルミネセンスマーカーを保護するために、サンプル中のルミネセンスマーカーの実際に走査されない部分をオフに切り替えるようなさらなる手段なしに達成される。本発明のこの実施形態において使用される切替え可能ルミネセンスマーカーの場合、切替え可能ルミネセンスマーカーは、それぞれの走査エリアにおいてそれらの蛍光状態のみになること、及びサンプルは、さらに走査エリアで走査され、したがって完全に画像化され得ることが、当業者には明らかであろう。
【0052】
注目する物体のいくつかのコピーが、1つ又は複数の走査エリアとそれぞれ重複して配置された場合、この物体の部分画像は、各走査エリアを走査することによって取得される。これらの部分画像が物体にわたって統計的に分布される場合、及びそれらの数が十分に高い場合、注目する物体全体の完全な画像が部分画像から再構成され得る。この再構成では、注目する物体のいくつかのコピーが少なくとも本質的に同等である必要があることが明らかである。部分画像を注目する物体の特定の点に割り当てるために、サンプル中の注目する物体のコピーは、走査エリアに対するそれらの位置及び配向を決定するために別の方法でさらに画像化され得る。サンプル中のいくつかのコピーにおいて配置された注目する物体は、例えば、分子又はウイルスなどであり得る。さらに、本発明による方法のこの実施形態では、注目する物体の複数のコピーは、変動する周囲条件を受けて、これらの変動する条件に対する注目する物体の反応を登録し得る。この目的のために、個々の走査エリアは、周囲条件の変化中に及び/又はそれの前及び後にそれぞれの零点で走査される。それぞれの零点での走査エリアの連続的走査のシーケンスは、注目する物体の高速な変化でも登録され得るように極めて高くなり得る。
【0053】
本発明による走査型ルミネセンス光学顕微鏡は、ルミネセンスマーカーによってルミネセンス光の放出に影響を及ぼす光のための光源と、零点と零点に近接する強度最大値とを有する強度分布で光をサンプル上に導く光整形器と、零点で走査されるべきサンプルの部分エリアを走査するためのスキャナと、零点のエリアから放出されるルミネセンス光を登録する検出器と、本発明による方法のうちの1つを行うためのコントローラとを備える。
【0054】
検出器は点検出器であり得、点検出器の位置は、走査エリアを走査する間にサンプルに対して固定であり得る。これは、走査エリアが、概して、回折バリアを十分に下回る寸法を有するので、検出器が、ルミネセンス光をデスキャンすることなしにサンプルから放出されるルミネセンス光を検出し得ることを意味する。その場合、零点で走査エリアを走査するためのスキャナとは異なり、少なくとも1つの方向でサンプルのより大きいエリアを走査するように構成されたさらなるスキャナが提供され得る。
【0055】
少なくとも1つの方向でサンプルのより大きいエリアを走査するためのスキャナは、光整形器の対物レンズに対して移動可能であるサンプルホルダー又はステージを含み得るが、少なくとも1つの方向で走査されるべきサンプルの部分エリアを走査するためのスキャナは、電気光学スキャナ、音響光学ディフレクタ、ガルボスキャナ又はガルボミラーを含み得る。
【0056】
検出器は、例えば、サンプルから放出されるデスキャンされたルミネセンス光を登録する点検出器であるか、又はサンプルに対して固定相対位置においてデスキャンされないルミネセンス光を登録するカメラのような2次元検出器であり得る。
【0057】
本発明に従ってSTED方法を行うための本発明による走査型ルミネセンス光学顕微鏡では、光源によって提供される光が誘導光であり、励起光を提供するさらなる光源があり、光整形器は、ルミネセンス抑制光の零点のエリア中で最大値を有する強度分布で励起光をサンプル上に導く。
【0058】
切替え可能ルミネセンスマーカーを利用する本発明による方法を行うために、スイッチオフ光のための追加のスイッチオフ光源が走査型ルミネセンス光学顕微鏡に提供されるべきであり、光整形器は、走査されるべき部分エリアに近接するサンプルの部分エリア中でそれが切替え可能ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態にスイッチオフするような強度分布で、スイッチオフ光をサンプル上に導く。この近接するエリアは、強度最大値がサンプル中の誘導光の零点に近接する少なくとも1つの方向において走査エリアに近接する。さらに、切替え可能ルミネセンスマーカーをそれらのアクティブ状態に切り替える、スイッチオン光のためのスイッチオン光源が提供され得、光整形器は、スイッチオフ光より前に又はそれと一時的に重複して、走査エリアを含む部分エリア中でスイッチオン光をサンプル上に導く。
【0059】
本発明による方法をテストするための実験では、サンプル中のルミネセンスマーカーからの光子の収量の>100倍の増加が達成された。これは、サンプル中の注目する構造の変化を記録するために、その変化する構造から100倍多くの画像が取られ得ることを意味する。さらに、サンプル中のルミネセンスマーカーによって時間単位ごとに連続的により多くの光子が放出されるようになるほど、各個々の画像のための必要とされる時間はより小さくなる。
【0060】
次に、図面を今度はより詳細に参照すると、図1は、それの上部に、励起光1の強度分布を介するセクションを示す。励起光1は、幾何学的焦点Fにおいて最大強度Iの強度最大値27を有する。しかしながら、強度Iは、すべての方向において焦点Fをはるかに越えて拡張している寸法をもつエリアにわたって分散される。このエリアの直径は、励起光1の波長λと、λ/NAに従って励起光1を焦点Fに合集するために使用される対物レンズの開口数NAとにおける回折バリアに対応する。サンプル中のルミネセンスマーカーの実効励起を、励起光1の強度分布がそれにわたって拡張するエリアよりも小さいエリアに限定するために、零点4と零点4に近接する強度最大値3とを有する蛍光抑制光2がサンプル上にさらに導かれる。ルミネセンス抑制光2は、蛍光マーカーが、例えば、誘導放出によって再び逆励起されるという点で、励起光1によって励起される蛍光マーカーによってルミネセンス光の放出を抑制する。蛍光抑制光2の零点4のエリア5外のどこでも、蛍光抑制光2の強度Iは極めて高いので、この逆励起は完全であり、すなわち、そこに位置するルミネセンスマーカーはどんな蛍光光も放出しない。その逆に、「零点4」という用語はエリア5全体を指し、このエリア5内で、蛍光抑制光2の強度Iは極めて小さいままであるので、それは、ここに位置する蛍光マーカーによって蛍光光の放出を少なくとも完全には抑制しない。下部において、図1は、実効蛍光励起6の空間分布を示す。この実効蛍光励起6は零点4のエリア5に限定される。サンプルが零点4で走査される場合、サンプルから放出される蛍光光は、常にエリア5から来て、したがって、サンプル中のエリア5のロケーションに割り当てられ得る。
【0061】
サンプルを走査している間の零点4が、蛍光色素で、すなわち蛍光マーカーでマークされた注目する構造により近づくとき、蛍光マーカーは、蛍光マーカーが零点4のエリア5に入る前に、最初に強度最大値3と励起光1の重畳された強度とのエリアに入る。特にサンプルをラインごとに走査している間に、蛍光マーカーは、蛍光マーカーがエリア5に入り、蛍光マーカーによって放出される蛍光光が初めて登録される前に、高い光強度を繰り返し受ける。これにより、蛍光マーカーがエリア5に初めて入る前に、蛍光マーカーはすでに漂白されていることになり得る。この影響により、例えば、サンプル中の蛍光マーカーでマークされた注目する構造の時間的変化を監視するために、同じサンプルを繰り返し走査することは、しばしば不可能である。
【0062】
しかしながら、図2に示されているように、零点4で走査されるサンプルの走査エリアが強度最大値3の距離Dのせいぜい3/4又は75%に画定される場合、特に図1による励起光1の強度との組合せで、強度最大値のエリア中の蛍光抑制光2の高い強度によって引き起こされる走査エリア中の蛍光マーカーの平均応力は、すでに低減されている。走査エリアの寸法が強度最大値3の距離Dの半分以下に限定される場合、この応力はさらに低減される。寸法をD/2未満に限定すると、走査エリアを走査するとき、走査エリアの点は強度最大値3のピーク領域に入らない。走査エリアの寸法がD/4に限定される場合、サンプルが走査エリア内で受ける蛍光抑制光2の最大強度は約I/2に低減され、ただし、Iは、強度最大値3における蛍光抑制光2の最大強度である。
【0063】
図3は、ここではメアンダ形であるコース8に沿ってここでは零点4のエリア5で部分的にのみ示された走査サンプル3の走査エリア7を示す。走査されるべき部分エリア7は強度最大値3内に示され、これらの強度最大値3の位置は、走査エリア7の中心点10への零点4の整合に対応する。対応して、強度最大値、又はより正確には、図3においてハイライトされ、破線11で示された零点4の位置の周りに拡張している、ここではリング形の強度最大値3は、依然として走査エリア7と重複する。しかしながら、この重複は、走査エリア7の寸法をD/2未満にさらに限定することによって回避され得る。しかしながら、ここで示されているように部分エリア7の寸法を約2D/3に限定することによっても、蛍光抑制光2による走査エリア7中の蛍光マーカーの平均負荷のかなりの低減が達成される。
【0064】
図4は、D/2に低減されたサンプル8の走査エリア7を示す。ここで、破線11で示されたリング形の強度最大値3のコースは、走査エリア7内の零点4のどの位置でも部分エリア7にもはや達しない。さらに、図4は、走査エリア7が中心点10から開始してそれに沿って走査されるスパイラルコース12を示す。走査エリア7を走査するとき、零点4がそれに沿って移動されるコースの形状とは無関係に、サンプル8から放出され登録される蛍光光は、サンプル3内の零点4のそれぞれのロケーションに割り当てられる。
【0065】
図5に示された本発明の実施形態は、走査エリア7が、中心点10の周りのリング形の最大値3によって囲まれるものの断片にもはや限定されないという点で、図3及び図4に示された実施形態とは異なる。代わりに、スパイラルコース12に沿ってサンプルの部分エリア8が走査され、その直径は、中心点10の周りのリング形の最大値3の直径よりも大きい。ここで、スパイラルコース12によって後でのみ横断される走査エリア7の部分の蛍光抑制光2への前の暴露が着実に増加する。中心点10に近接する部分では、蛍光抑制光2による前の負荷は、しかしながら、最小である。走査エリア7の中心点2がサンプル8の特に興味深い点に導かれる場合、サンプル8からの蛍光光の最大収量がここで達成され、この最大収量は、中心点10までの距離の増加とともに減少するが、サンプル8の特に興味深い点の周囲を画像化するのには十分なままである。
【0066】
図6は、本発明による方法を行うのに特に適した走査型蛍光光学顕微鏡13を示す。走査型蛍光光学顕微鏡13は、蛍光抑制光2を提供する光源14を備え、蛍光抑制光2の断面は拡大光学部品15によって広げられ、それの断面を横切る蛍光抑制光2の波面は、蛍光抑制光2が対物レンズ45によってサンプル8に合焦されたとき、図1及び図2による零点4及び近接する強度最大値3がそれぞれの焦点ポイントFの周りに形成されるような方法で、位相プレート16によって変調される。さらなる拡大光学部品18をもつさらなる光源17は励起光1を提供している。2色性ミラー19によって、励起光1と蛍光抑制光2は、励起光1が図1に従って蛍光抑制光2の零点4のエリア5中にそれの強度最大値27を有するように、組み合わされる。蛍光抑制光2の零点のエリアから放出された蛍光光20は、2色性ミラー26によって分離され、点検出器21で登録され、サンプル8内の零点4のそれぞれのロケーションに割り当てられる。スキャナ22及び23は2つの直交走査方向のために提供され、スキャナ22及び23は、蛍光抑制光2の零点でサンプル8中のそれぞれの走査エリアを走査するために組合せで動作される。スキャナ22及び23は、励起光1及び蛍光抑制光2の方向のみに影響を及ぼし;スキャナ22及び23は、蛍光抑制光2のビーム経路において配置のみさえされ得る。サンプル8の走査エリア7が回折バリアを下回る寸法を有するとき、サンプル8中の走査エリア内の蛍光抑制光2の零点のエリアから放出される蛍光光20は、サンプル3に対して点検出器21が空間的に固定された配置の場合でも、すなわち、スキャナ22及び23による零点のシフトにもかかわらず、常に点検出器21に入る。これは、走査エリア7が回折バリアを下回る寸法を有するからである。例えば、好適な走査エリアの位置を初めに決定するために、走査エリア7を越えてサンプル8を走査するために、対応するシフトシンボル25によって単にここで示されているさらなるスキャナが、サンプルホルダー24のエリア中に提供される。
【0067】
ここまで、蛍光抑制光2の強度分布の零点4が、z方向において近接する強度最大値3によっても画定され得ることはまだ明示的に述べられてなく、ここで、蛍光抑制光2は、このz方向においてもサンプル8中の注目する構造を画像化する際の空間解像度を増加させるために、サンプル上に導かれる。対応して、走査エリア7はまた、次いで、z方向における光の強度最大値の距離のせいぜい75%、好ましくは50%未満にこのz方向において限定されることになるか、又はまた、それの中心点10において開始して、及び中心点10までの距離の増加とともにz方向に走査されることになる。z方向においてサンプルを画像化する際の空間解像度の増加は、例えば、蛍光光を放出するための蛍光マーカーの4PI配置もしくは2光子励起のような他の手段、又は蛍光顕微鏡法の分野において知られている他の手段によっても達成され得る。また、ここで説明する方法は、蛍光顕微鏡法の分野において知られている他の手段で補足され得ることが、概して当てはまる。蛍光抑制光2及び/又は励起光1をパルスで適用すること、励起光1又は蛍光抑制光2の同時連続適用、それぞれのパルス後の定義された時間ゲートにおける蛍光光のゲート登録などが、これらの手段に属する。
【0068】
サンプルについて、図7(a)による共焦点画像が取られており、注目する構造はルミネセンスマーカーヌクレオポリンgp210でマークされている。共焦点画像は、注目する構造の概観を提供する。この概観から、別個の走査エリアが選択されており、これらの走査エリアでは、本発明の本方法に従ってSTED画像が取られている。これらの走査エリアは励起光の焦点エリアよりも小さい。走査エリアにおいて、注目する構造は、高い空間解像度と、蛍光光の高い収量の両方で画像化される。図7(b)に示されたサンプルの部分画像を画像化し、走査エリアを提示するために、635nmの波長及び5μWの電力における励起光が、20MHzの繰返しレートにおいてパルスでサンプルに導かれている。775nmの波長におけるSTED光が、150mWの電力における1.2nsのパルス長における同期パルスでサンプルに導かれている。励起光及びSTED光は、1.4NA油反転対物レンズによってサンプルに合焦されている。蛍光光は、油反転対物レンズ及びさらなるレンズによって点検出器上に合焦されている。
【0069】
図8は、STED走査蛍光光学顕微鏡法における走査エリアの寸法に応じた、染色された核孔タンパク質複合体の漂白挙動を示す。τ1/2は、蛍光信号が漂白により開始値の半分にドロップする前に取られ得る画像の数を示す。τ1/2は、走査エリアの寸法にわたってナノメートルでプロットされている。STED電力は160mWであり、励起電力は2μWであった。それ以外は、STED条件は、図7による条件に対応した。100×100nmの走査エリアの寸法では、漂白は、800×800nmの寸法と比較して100分の1に低減される。対応して、例えば、サンプル中の動的プロセスを監視するために、同じ走査エリアから100倍多くの画像が取られ得る。
【0070】
図9による走査型蛍光顕微鏡13は、図6に示された走査型蛍光顕微鏡に対して以下の差異を備える。サンプル8から見られると、点検出器21は、サンプル3から検出器21のほうへ来ている蛍光光20をスキャナがデスキャンするように、スキャナ22及び23の背後に配置される。ここで、スキャナ22及び23は、蛍光抑制光2の零点で走査されるべき走査エリアを走査することと、サンプル8中で走査エリアを全体的に配置及びシフトすることの両方のために提供される。図9はまた、サンプル8から見られるとスキャナ22及び23の上流に配置された蛍光光のための検出器28を示している。しかしながら、これは点検出器ではなく、カメラ29、すなわち2次元検出器である。この検出器28は、点検出器21に加えて又は点検出器21の代わりに提供され得、蛍光光20を検出器28のほうへ偏向させる2色性ミラー30が、対物レンズ45とスキャナ22及び23との間に一時的あるいは永続的に配置される。
【0071】
さらに、図9による走査型蛍光顕微鏡13にはスイッチオフ光源31があり、このスイッチオフ光源31には、蛍光抑制光2の零点でそれぞれの走査エリアを走査するより前にスイッチオフ光34を提供するために拡大光学部品32が割り当てられる。スイッチオフ光34は2色性ミラー43によって中に結合され、サンプル8におけるそれの強度分布は、ビーム整形器33が、走査されるべき部分エリアに近接するサンプル8の部分エリアにおいて、サンプル8中にある切替え可能ルミネセンスマーカーを非アクティブ状態に切り替えるように、ビーム整形器33によって形成される。この非アクティブ状態では、サンプル8中の切替え可能ルミネセンスマーカーは、励起光1によって蛍光光20の放出のために興奮性でない。対応して、走査エリアに近接するエリアにおけるルミネセンスマーカーのための誘導光の形態の蛍光抑制光2により、漂白の関連する危険はなくなる。したがって、図9による走査型蛍光顕微鏡13では、蛍光抑制光2の零点でサンプル8のすでに走査された走査エリアに近接するサンプル8のさらなる走査エリアを走査することと、サンプル3から放出される蛍光光20を登録することとが可能であり、なぜならば、さらなる走査エリア中にあるルミネセンスマーカーは、漂白に対してそれらのルミネセンスマーカーを保護する非アクティブ状態であったため、近接する走査エリアを以前に走査することによって漂白されていないからである。
【0072】
蛍光光20の放出のために励起光1で近接する走査エリアにおいてルミネセンスマーカーを励起することが可能であるためには、ルミネセンスマーカーはアクティブ状態である必要がある。これを達成するために、ルミネセンスマーカーの非アクティブ状態からアクティブ状態へのルミネセンスマーカーの自発的復帰を待ってもよい。しかしながら、図9による走査型蛍光顕微鏡13は、スイッチオン光37を提供し、2色性ミラー44を介してスイッチオン光37をサンプル8上に導く、拡大光学部品36をもつ追加のスイッチオン光源35をも備える。スイッチオン光によって、次の走査エリア中のルミネセンスマーカーは初めにそれらのアクティブ状態に切り替えられる。スイッチオン光37によってカバーされるサンプル8の部分エリアは、その後に、スイッチオフ光34によって、次に走査されるべき走査エリアの外側のルミネセンスマーカーがそれらの非アクティブ状態に移されるので、次に走査されるべき走査エリアよりも大きくなり得る。したがって、サンプル8は、走査型蛍光顕微鏡13を用いて2つのステップで、すなわち、走査エリアを用いる大きいステップで、及び走査エリアの各ロケーション内で蛍光抑制光2の零点を用いる小さいステップで走査され得る。
【0073】
スイッチオン光37又はスイッチオフ光34でサンプル8中のルミネセンスマーカーをオンに切り替える及び/又はオフに切り替える際に、蛍光光20の放出のために様々な切替え可能ルミネセンスマーカーも励起される。この蛍光光20は、したがって、サンプル8のそれぞれの部分エリア中のルミネセンスマーカーの濃度に関する情報をすでに提供している。この情報は、対応して、蛍光抑制光2の零点で次の走査エリアを走査することにおいて何らかの値があるか否かに関する判定のために評価及び使用され得る。どんな値もない場合、不必要にサンプル8を蛍光抑制光2にかけないように、そのような走査は実行もされなくなる。さらに、ルミネセンスマーカーをオンに切り替え及びオフに切り替えている間に登録される蛍光光は、RESCue方法に従って好適なようにできる限り早く蛍光抑制光2及び励起光1へのサンプル8の暴露を限定するために、走査エリア中の蛍光抑制光2の零点のそれぞれのロケーションにおいて登録される蛍光光の上限及び/又は下限しきい値を設定するために使用され得る。
【0074】
大事なことを言い忘れていたが、図9は、走査型蛍光顕微鏡13の光源14及び17、スイッチオン光源35、スイッチオフ光源31ならびにスキャナ22及び23のためのコントローラ38を示しており、このコントローラ38は、本発明による方法を行うためにそれらを制御する。
【0075】
図10は、走査エリア7と、この部分エリア7を囲んでいる蛍光抑制光の強度最大値3とを示し、蛍光抑制光の零点は走査エリア7の中心点10にある。さらに、図10にはリング形の近接する部分エリア39が示され、部分エリア39内では、サンプル8は、走査エリア7を走査するより前に、スイッチオフ光34を受けて、それにより、ここに位置する切替え可能蛍光マーカーがそれらの非アクティブ状態に移る。部分エリア39は走査エリア7を除外し、すなわち、光オフスイッチ34の強度は走査エリア7中で0であるか又は少なくとも極めて小さいので、スイッチオフ光34がその間にサンプル8に導かれる時間期間内にルミネセンスマーカーをオフに切り替えるのには不十分である。切替え可能ルミネセンスマーカーが、少なくとも走査エリア7中では、それらのアクティブ状態であることを保証するために、スイッチオン光37は、スイッチオフ光34より前に又はそれと一時的に重複して、走査エリア7を含む円形の部分エリア40中でサンプル8上に導かれる。
【0076】
図11は、サンプル8がどのように走査エリア7で走査され得るかを示す。ここで、図11(a)は、サンプル8中の図10による円形走査エリア7のいくつかの連続位置を示し;走査エリア7のこれらの位置のうちの1つについて、サンプル8の正方形エリアがそれに沿って走査されるコース9が部分エリア7内に示されている。図11(b)は、サンプル8がどのようにそのような正方形部分エリア41で完全にカバーされ、したがって完全に画像化され得るかを示す。
【0077】
図12は、走査エリア7でサンプル8を走査する別の方法を示す。ここで、円形走査エリア7の連続位置は、サンプル8内の六角形配置で配置される。部分エリア7がそれの位置の各々においてルミネセンス抑制光の零点でそれに沿って走査されるコース9は、正六角形にわたって延びる。図12(b)は、これらの正六角形42を用いてサンプル8全体がどのようにカバーされ、したがって画像化され得るかを示す。
【0078】
図13は、本発明による方法のブロック図であり、サンプル8中の走査エリア7の寸法と走査エリア7のロケーションの両方に関して走査エリア7を決定するステップ46で開始される。次のステップ47において、走査エリア7は、蛍光抑制光2の強度分布の零点4で走査される。並列ステップ48において、サンプルから放出される蛍光光が登録される。ステップ49において、ステップ48において登録された蛍光光が、ステップ47における零点4の現在ロケーションに割り当てられる。これは、ステップ48において、サンプル8から放出された蛍光光が時間解像度で登録されることと、ステップ47において、走査エリア7が時間解像度において零点4で走査されることとを暗示し、したがって、ステップ48において登録された蛍光光の特定の量は、走査エリア7中の零点4の特定の位置に割り当てられ得る。ステップ47〜49によって、走査エリア7は走査され、1回画像化される。この画像化は、例えば、走査エリア7中の蛍光マーカーでマークされた注目する構造の変化を監視するために繰り返され得る。
【0079】
図14に示された本発明の方法の実施形態は、走査エリア7を決定するステップ46で開始する。後続のステップ50において、走査エリア7を含むエリア中の蛍光マーカーがアクティブ状態にスイッチオンされる。これは、例えば、蛍光マーカーが、スイッチオン光37によってオンに切り替えられ得る切替え可能マーカーであることを暗示する。次のステップ51において、走査エリア7の外側の蛍光マーカーが非アクティブ状態にスイッチオフされる。これはスイッチオフ光34によって行われ得る。非アクティブ状態では、蛍光マーカーは、蛍光抑制光2の高い光強度による漂白に対して保護される。次に、ステップ47において、走査エリア7は、蛍光抑制光の強度分布の零点4で走査される。その後、ステップ46が繰り返される。ステップ46のこの繰り返しにおいて、走査エリア7は、走査エリア7の前の位置に近接する位置に置かれ得る。蛍光マーカーはここで蛍光抑制光の高い強度を受けているが、蛍光マーカーが非アクティブ状態であったので、蛍光マーカーはここで漂白されない。したがって、蛍光マーカーは今や測定され得る。次いで、サンプル中の注目するすべてのエリアが走査エリア7で走査され、したがって画像化されるまで、ステップ46、50、51及び47を含むループが繰り返される。
【0080】
本発明の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなしに、多くの変更及び修正が本発明の好ましい実施形態に行われ得る。すべてのそのような修正及び変更は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内で本明細書に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14