特許第6730897号(P6730897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730897
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】ロタキサン
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/06 20060101AFI20200716BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20200716BHJP
   C08G 63/66 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   C08F20/06
   C08G65/333
   C08G63/66
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-186434(P2016-186434)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-52999(P2018-52999A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金子 尚史
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101186604(CN,A)
【文献】 特開2006−233007(JP,A)
【文献】 特開2009−013253(JP,A)
【文献】 特開2016−175898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00〜521/00
C08F 20/06
C08G 63/00〜63/91
C08G 65/00〜65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)からなる環成分を軸成分である高分子化合物(B)が貫通した構造を有し、
高分子化合物(B)がポリアクリル酸又はポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物であるロタキサン。
【化1】

[式中、R炭素数3〜16の直鎖または分岐アルキレン基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは1〜3の整数であり、nは〜30の整数であり、m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるRは同じであっても異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロタキサンに関する。少なくとも1つの環状ポリエーテルエステル(A)からなる環成分を軸成分である高分子化合物(B)が貫通した構造を有するロタキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
新規な刺激応答性材料や粘弾性材料として、シクロデキストリン等の環状分子に鎖状高分子がくし刺し状に包接された構造を有する(ポリ)ロタキサンは新規な高分子材料として注目されている(特許文献1等)。
【0003】
しかしながら、特許文献1等に記載のβ−シクロデキストリンを環状成分に用いたロタキサン化合物は、シクロデキストリンの分子内水素結合の作用のために溶媒や鎖状高分子に対する溶解度が低いため、鎖状高分子が貫通するβ−シクロデキストリンの割合を増やすことが困難であり、生成した(ポリ)ロタキサンの弾性率が十分でなく、十分な自己修復作用が得られないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自己修復性に優れたロタキサンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の目的を達成すべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、少なくとも1つの一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)からなる環成分を軸成分である高分子化合物(B)が貫通した構造を有するロタキサンである。
【0007】
【化1】
【0008】
一般式(1)中、Rは水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていてもよい炭素数2〜21の2価の炭化水素基であり、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基であり、mは1〜3の整数であり、nは1〜30の整数であり、m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、m×n個あるRは同じであっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロタキサンは、自己修復性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のロタキサンは、少なくとも1つの上記の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)からなる環成分を軸成分である高分子化合物(B)が貫通した構造を有する。
【0011】
一般式(1)において、Rは水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されていてもよい炭素数2〜21の炭化水素基である。
【0012】
炭素数2〜21の炭化水素基としては、炭素数2〜21のアルキレン基、炭素数2〜21のアルケニレン基、炭素数6〜21のアリーレン基及び炭素数7〜21のアラルキレン基等が挙げられる。
【0013】
炭素数2〜21のアルキレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルキレン基(エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基及びn−ヘンイコサニレン基)及び炭素数3〜21の分岐アルキレン基(1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルトリメチレン基、1−n−ブチルトリメチレン基、1−n−ヘキシルトリメチレン基、1−n−プロピルトリメチレン基、1−n−ヘプチルトリメチレン基、1−n−オクチルトリメチレン基、1−n−ヘプチルテトラメチレン基及び1−n−オクチルエチレン基等)及び炭素数4〜21のシクロアルキレン基(シクロブチレン基、シクロペンチレン基、2−メチルシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,3−ジメチルシクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、1−エチルシクロペンチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロヘキサデシレン基、シクロヘプタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロノナデシレン基、シクロエイコシレン基、ノルボルニレン基、ジシクロペンチレン基、イソプロピリデンジシクロヘキシレン基及びシクロヘキサンジメチレン基等)等が挙げられる。
【0014】
炭素数2〜21のアルケニレン基としては、炭素数2〜21の直鎖アルケニレン基(エテニレン基、プロペニレン基及びヘンイコセニレン基等)及び炭素数3〜21の分岐アルケニレン基(1−エチルエテニレン基、1,2−ジメチルエテニレン基、1−ブチルエテニレン基、1−ヘキシルエテニレン基及び1−オクチルエテニレン基等)等が挙げられる。
【0015】
炭素数6〜21のアリーレン基としては、o−、p−又はm−フェニレン基、2,4−ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、ピレニレン基及び基等が挙げられる。
【0016】
炭素数7〜21のアラルキレン基としては、フェニルメチレン基、ジフェニルメチン基、1−フェニルエチレン基、o−フェニレンエチル基及びナフチルメチレン基等が挙げられる。
【0017】
これらの基の有する水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換された基としては、1−ブロモ−トリメチレン基、1−アセチル−トリメチレン基、1−メトキシ−トリメチレン基及び1−フェノキシ−トリメチレン基等が挙げられる。
【0018】
これらのうち、Rとしては、好ましくは炭素数3〜16の直鎖又は分岐アルキレン基であり、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、テトラデカメチレン基、メチルエチレン基、1−n−プロピルトリメチレン基、1−n−ヘプチルトリメチレン基、1−n−オクチルトリメチレン基、1−n−ヘプチルテトラメチレン基、1−n−ヘキシルトリメチレン基、1−n−ヘキシルテトラメチレン基、1−n−ウンデシルトリメチレン基及び1−n−ウンデシルテトラメチレン基が更に好ましい。
【0019】
一般式(1)において、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基である。炭素数2〜8の2価の炭化水素基のうち好ましいものとしては、フェニルエチレン基、炭素数2〜4のアルキレン基が挙げられ、更に好ましくは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基(エチレン基、プロピレン基及びブチレン基等)及び炭素数3又は4の分岐アルキレン基(メチルエチレン基、エチルエチレン基、メチルプロピレン基及び2−メチルプロピレン等)が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基及び炭素数3〜4の分岐アルキレン基であり、最も好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。
【0020】
上記一般式(1)において、mは[RCO(ORO]で表される単位の繰り返し数を意味し、nは(OR)で表されるオキシアルキレン基の付加モル数を意味する。
【0021】
mは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
nは1〜30の整数であり、環状ポリエーテルエステル(A)のオキシアルキレン基の付加モル数(n)は、高分子化合物(B)の貫通し易さ等の観点から、好ましくは5〜20の整数である。
なお、mが2又は3である場合、m個あるRは同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。また、mが2若しくは3、及び/又はnが2以上の整数である場合、m×n個あるRは同じであっても異なっていてもよく、高分子化合物(B)の貫通し易さ等の観点から、同じであることが好ましい。
【0022】
m×n個あるRが異なっている場合、m×n個あるRの組成は、Polym. Chem., 2014, 5, 6905.に記載のマトリックス支援レーザー脱離イオン化法による飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MSともいう)により測定分析することができる。
【0023】
本発明のロタキサンに含まれる環状ポリエーテルエステル(A)としては、一般式(1)においてm及び/又はnが特定の値である環状ポリエーテルエステル(A)を単独で用いてもよく、m及び/又はnの値が異なる複数の環状ポリエーテルエステル(A)を併用してもよい。
一般式(1)においてm及び/又はnが異なる複数の環状ポリエーテルエステル(A)を併用する場合、使用する環状ポリエーテルエステル(A)の種類とその比率は、高分子化合物(B)の組成、分子量及び分子量分布等に応じて調整、選択することができる。
【0024】
一般式(1)中のm及びnの値の調整及び特定の範囲のnを有する環状ポリエーテルエステル(A)の含有量の調整は、後述のアルコキシル化反応において用いる活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとの比率の調整及びアルキレンオキサイドの付加方法を変えること等で行うことができ、例えば活性水素含有基を有さないラクトンに反応するアルキレンオキサイドを段階的に反応すると特定の値のnを有する環状ポリエーテルエステル(A)の含有量を多くすることができ、nが一定範囲の値をとる環状ポリエーテルエステル(A)の合計割合を増やすことができる。
なお、環状ポリエーテルエステル(A)のmの値、及びnの値は、Polym. Chem., 2014, 5, 6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分析し、確認することが出来る。
【0025】
本発明のロタキサンに含まれる環状ポリエーテルエステル(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、高分子化合物(B)の分子量等に応じて調整することができるが、ロタキサンの合成の容易さ等の観点から200〜4000が好ましい。
環状ポリエーテルエステル(A)のMnはオキシアルキレン基の付加モル数を調整すること等によって好ましい範囲にすることができる。
【0026】
環状ポリエーテルエステル(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0027】
本発明のロタキサンに用いる環状ポリエーテルエステル(A)として、好ましいものとしては、Rがテトラデカメチレン基であり、Rがエチレン基及びプロピレン基であり、mが1〜3、nが5〜30である環状ポリエーテルエステルが挙げられる。
【0028】
本発明のロタキサンに用いる環状ポリエーテルエステル(A)は、活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとを用いて、前記の活性水素含有基を有さないラクトンのオキシカルボニル基が有するカルボニルと酸素原子との間にオキシアルキレン基を挿入する反応(アルコキシル化反応ともいう)を行うことで得ることができる。前記のアルコキシル化反応は、活性水素含有基を有さないラクトンと炭素数2〜8のアルキレンオキサイドとを、アルキレンオキサイドの開環付加反応及びアルコキシル化反応等に用いられる触媒をアルコキシル化反応の触媒として用いて行ってもよい。
なお、前記活性水素含有基はアルキレンオキサイドが開環付加し得る官能基を意味し、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基及びアミノ基等が挙げられる。
【0029】
前記のアルコキシル化反応では、アルコキシル化反応で生成した一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A)に対して、更に他の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルが挿入付加する副反応がおこる。
そのため、前記のアルコキシル化反応で得られた反応生成物には、一般式(1)においてm=1である環状ポリエーテルエステル(A)の他に、一般式(1)において[RCO(ORO]で表される単位を一分子中に2個有する環状ポリエーテルエステル(すなわちm=2)及び/又は3個有する環状ポリエーテルエステル(すなわちm=3)を含み、反応生成物は、一般式(1)において[RCO(ORO]で表される単位を1〜3個有する環状ポリエーテルエステルを主成分とするポリエーテル組成物となり、そのうち、mが1である環状ポリエーテルエステル(A)とmが2である環状ポリエーテルエステル(A)とmが3である環状ポリエーテルエステル(A)の重量比率は、概ね6:3:1である。
なお、反応生成物に含まれる環状ポリエーテルの組成は、Polym. Chem., 2014, 5, 6905.に記載のMALDI−TOF MSにより分析し、確認することが出来る。
【0030】
前記のアルコキシル化反応の反応生成物[すなわち、環状ポリエーテルエステル(A)を含む混合物]を、更にゲル透過法及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の方法により分画、精製を行うことで特定のmとnを有する環状ポリエーテルエステル(A)を得ることができる。なお、本発明のロタキサンに含まれる環状ポリエーテルエステル(A)としては、前記のアルコキシル化反応の反応生成物をそのまま用いても、反応生成物を分画、精製して得られたm及びnが特定の値である環状ポリエーテルエステル(A)を用いてもよい。
【0031】
環状ポリエーテルエステル(A)を得るために用いる活性水素含有基を有さないラクトンとしては、1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを有し、前記の1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを除く他の活性水素含有基を有していない炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸について水酸基とカルボキシル基とを分子内脱水することで得られる環状エステルを用いることができる。分子内脱水してラクトンを合成する方法としては、公知の方法で加熱脱水する方法、J.S.Nimitz,R.H.Wollemberg,Terahedron Lett.1978,19,3523に記載方法、及びリパーゼ等の酵素を用いる方法の公知の合成方法を用いることができる。
【0032】
1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを除く他の活性水素含有基を有していない炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸としては、炭素数4〜22の直鎖ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、15−ヒドロキシペンタデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸及び4−ヒドロキシ−2−ブテン酸等)及び炭素数3〜22の分岐ヒドロキシカルボン酸(3−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシトリデカン酸、2−メチレン−4−ヒドロキシ酪酸、4−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシ酪酸、4−ヘキシル−4−ヒドロキシ酪酸及び4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ブテン酸等)等が挙げられる。
【0033】
活性水素含有基を有さないラクトンとしては、前記の炭素数4〜22のヒドロキシカルボン酸の炭素原子に結合した水素原子のうち、少なくとも1つの水素原子がハロゲノ基、アセチル基、アルコキシ基又はフェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸が分子内脱水した構造を有するラクトンも用いることもできる。
前記の炭素数4〜22のモノヒドロキシカルボン酸のうち、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲノ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−ブロモ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、アセチル基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−アセチル−4−ヒドロキシブタン酸等が挙げられ、アルコキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−メトキシ−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、フェノキシ基で置換されたヒドロキシカルボン酸としては、2−フェニル−4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
【0034】
活性水素含有基を有さないラクトンとして、好ましいものとしては、β−ラクトン(β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン等)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトン等)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトン等)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトン等)、長鎖アルキル基を有するラクトン(γ−エナントラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−ドデカラクトン及びδ-ドデカノラクトン等)、大環状ラクトン(15−ペンタデカノラクトン)及び芳香族ラクトン(3,4−ジヒドロクマリン)等が挙げられる。
これらのラクトンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
アルコキシル化反応に用いる炭素数2〜8のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する場合がある)としては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、オキセタン、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド及びスチレンオキサイド等が挙げられ、炭素数2〜3のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド及びオキセタン)が好ましく、エチレンオキサイド及び1,2−プロピレンオキサイドが更に好ましい。
アルキレンオキサイドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その結合形式はランダムであっても、ブロックであっても、その両方であってもよい。
アルキレンオキサイドとして2種以上を併用する場合、得られる環状ポリエーテルエステル(A)は、一般式(1)においてn個あるRとして、使用したアルキレンオキサイドの種類に対応した異なる種類のRを有する環状ポリエーテルエステルである。
【0036】
前記のアルコキシル化反応は、金属(ホウ素、錫、ニッケル、亜鉛及びアルミニウム等)のハロゲン化物、無機酸(硫酸及びリン酸等)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物、アミン化合物(ジエチルアミン及びトリエチルアミン等)、特開2000−354763号公報に記載された酸化物複合体及びその焼成物並びに層状複水酸化物等を用いて行うことができる。
なお、層状複水酸化物とは、2価の金属(Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co及びCu等)と3価の金属(Al、Fe及びMn等)の水酸化物とが複合して積層構造を形成した無機の層状化合物を意味し、一般式が[M2+1−a3+(OH)][(An−a/n・mHO][ここで、M2+は2価の金属、M3+は3価の金属、An−はn価の陰イオン(HCO3−、PO3−、SO2−、Cl、NO及びNO等)、m>0である。]で表さる化合物であり、ハイドロタルサイト、モツコレアイト、マナセイト、スティッヒタイト、パイロアウライト、タコバイト、イヤードライト及びメイキセネライト等が含まれる。これらの層状複水酸化物は、粘土鉱物として知られており、天然に産する鉱物に含まれたものであっても、合成によって得られたものであってもよく、そのまま用いてもこれを400〜950℃(好ましくは400〜700℃)で焼成したものを用いてよい。
【0037】
アルコキシル化反応に用いることができる層状複水酸化物として市場から入手できるものとしては、一般式(2)で示される層状複水酸化物が挙げられ、キョーワード500(Mgl2(OH)16CO・4HO)(協和化学工業株式会社製、「キョーワード」は同社の登録商標である。以下、「キョーワード」を含む名称の製品について同じ。)、キョーワード1000(Mg4.5l2(OH)13CO・3.5HO)等が挙げられる。
【0038】
【化2】
【0039】
一般式(2)中、x及びyは0<x≦0.5、0<y≦1.0である。
【0040】
本発明のロタキサンにおいて軸成分である高分子化合物(B)としては、親水性高分子化合物が好ましく、ポリアクリル酸及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物が好ましく、更に好ましい高分子としては、ポリアクリル酸及びポリオキシアルキレン(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラヒドロフラン及びこれらの共重合体等)等を挙げることができる。
これらの中でも、ポリオキシアルキレンが好ましく、ポリエチレングリコールが更に好ましい。これらの高分子は、単独であっても、2種以上が混在していてもよい。
なお、高分子化合物(B)としては、前記のポリオキシアルキレンとポリイソシアネート化合物とのポリウレタン及びオキシアルキレン鎖と類似の性質を有するポリシロキサン(ポリジメチルシロキサン等)も好ましく用いることができる。
【0041】
また、高分子化合物(B)は、反応性官能基を導入した高分子であってもよく、導入する反応性官能基としては、アミノ基、チオ基、水酸基及びマレイミド基等があげられる。これらの反応性官能基を導入した高分子化合物(B)としては、末端アミン変性ポリエチレングリコール、末端チオール変性ポリエチレングリコール及び末端マレイミド変性ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらはSUNBRITEシリーズ(SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)として日油株式会社から入手可能である。また、高分子化合物(B)がポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸モノエステルを必須構成モノマーとする(共)重合体である場合には、これらの反応性官能基を有する共重合性単量体をポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸モノエステルと公知の方法で共重合する方法及びこれらの反応性官能基を有するラジカル重合開始剤を用いて公知の方法で重合する方法等が挙げられる。
【0042】
高分子化合物(B)の数平均分子量は、ロタキサンの合成し易さ等の観点から、1,000〜100,000であることが好ましい。
高分子化合物(B)の数平均分子量は、以下のGPCを用いて以下の条件で測定することができる。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μL
・流量:0.6mL/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0043】
本発明のロタキサンは、環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)とを混合する方法及び環状ポリエーテルエステル(A)の存在下で高分子化合物(B)を公知の方法で重合する方法等により製造することができるが、ロタキサンの合成の容易さ等の観点から、環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)を混合する方法が好ましい。
【0044】
環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)とを混合する方法としては、水性媒体中で環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)を攪拌・混合する方法があげられ、攪拌・混合する際の温度は、0〜100℃、好ましくは4〜80℃であり、混合時間は、1秒〜1週間、好ましくは10秒〜3日である。高分子化合物(B)が環状ポリエーテルエステル(A)を貫通したロタキサンは、撹拌混合後の溶液を再沈殿、濾過、遠心分離、膜分離及びカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法によって単離できる。
【0045】
環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)とを混合して得られた複合体がロタキサンを含むことは、公知の粉末X線回折及びNMRスペクトルの測定並びに原子間力顕微鏡による観察等を行うことで確認することができる。また、ロタキサンは水性媒体中で沈殿物として得られることも多いため、肉眼観察により生成を確認することもできる。 粉末X線回折の測定においては、既知のロタキサンが示す回折ピークと比較の比較をすることでロタキサン生成の有無を確認することができ、NMRスペクトルにより、高分子化合物(B)1分子に対して貫通する環状ポリエーテルエステル(A)の数を算出することができる。
【0046】
環状ポリエーテルエステル(A)と高分子化合物(B)とを混合する場合、高分子化合物(B)100部に対して環状ポリエーテルエステル(A)を1〜10部用いることが好ましく、1〜5部用いることが更に好ましい。
【0047】
環状ポリエーテルエステル(A)が有する空洞部分を高分子化合物(B)が貫通したロタキサン(a)を得た後、更に高分子化合物(B)から環状ポリエーテルエステル(A)が脱離できなくするために、高分子化合物(B)の両末端に嵩高い官能基を有すること、又はロタキサン(a)同士が3次元架橋していることが好ましい。
【0048】
ロタキサン(a)の末端に付加する嵩高い官能基としては、環状ポリエーテルエステル(A)のm及びnの大きさ及び高分子化合物(B)の種類に応じて選択することができ、高分子化合物(B)から環状ポリエーテルエステル(A)が脱離しなければ如何なる官能基であっても良く、特開2012−172083号公報に記載のN−置換アミノ基、特開2009−013253号公報に記載のキャッピング剤を用いて導入した官能基、及び特開2006−233007号公報に記載の嵩高い基等を用いることができる。
【0049】
ロタキサン(a)同士が3次元架橋したロタキサンとしては、高分子化合物(B)が有する反応性官能基と反応する官能基を1分子中に3個以上有する化合物とロタキサン(a)との反応物が挙げられる。高分子化合物(B)が水酸基及び/又はアミノ基を有する場合には、3官能以上のポリカルボン酸(1,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸及びアコニット酸等)及び/又は3官能以上のポリイソシアネート(イソシアヌレートポリイソシアネート等)とロタキサン(a)との反応物が挙げられる。ロタキサン(a)と3官能以上のポリカルボン酸と反応物は、公知の方法で脱水反応を行うことで得ることができ、タキサン(a)と3官能以上のポリイソシアネートとの反応物は公知の方法で付加反応を行うことで得ることができる。
【0050】
本発明のロタキサンは、従来のロタキサンと同様に、コーティング剤等に添加して自己修復性成分として用いることができる。また、水等の溶媒を吸収させたゲルを衝撃吸収性材料及び医療材料等用の機能性材料として用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は重量部を示す。
【0052】
<製造例1>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:MgAl (OH)16 CO ・4H O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm の範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、更にEO176部(4モル)を180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm となるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A1)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A1)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A1)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A1−1)を合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル(A1−1)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は6であり、環状ポリエーテルエステル(A1−1)のうち、nが5〜10である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A1−1)の合計重量に対して85重量%であり、環状ポリエーテルエステル(A1−1)のうち、mが1の環状ポリエーテルエステルは60重量%であった。
【0053】
<製造例2>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」24.2部(0.04モル)、及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで150℃に温調し、150℃でゲージ圧が1〜3kgf/cmGとなるように調整しながらプロピレンオキサイド(以下、POと略記する)61部(1.05モル)をオートクレーブ内に導入した。PO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとPOとの反応を行った。POの付加反応に要した時間は12時間であった。次いで180℃に温調し、180℃でゲージ圧が1〜3kgf/cm となるように調整しながらEO220部(5モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、更に圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続してEOの反応を行った。EOの付加反応に要した時間は7時間であった。EOの付加反応を終えて得られた反応混合物から触媒をろ別し、環状ポリエーテルエステル組成物(A2)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A1)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A2)は、mが1〜3であり、nがそれぞれ1〜30である前記の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A2−1)を合計して90重量%含む混合物であり、環状ポリエーテルエステル組成物(A2)に含まれる環状ポリエーテルエステル(A2)のnの平均値は6であり、そのうちPOの平均付加モル数は1であり、EOの平均付加モル数は5であり、環状ポリエーテルエステル(A2−1)のうち、nが5〜10である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A2−1)の合計重量に対して90重量%であり、環状ポリエーテルエステル(A2−1)のうち、mが1の環状ポリエーテルエステルは60重量%であった。
【0054】
<製造例3>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、及び「キョーワード500」〔協和化学工業(株)製:MgAl (OH)16 CO ・4H O〕24.2部(0.04モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃に温調し、180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm の範囲に入るように調整しながらEO264部(6モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を投入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した時間は10時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A3)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A3)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A3)は、mが1〜3であり、nがそれぞれ1〜30である前記の一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A3−1)を合計して85重量%含む混合物であり、環状ポリエーテルエステル(A3−1)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は6であり、環状ポリエーテルエステル(A3−1)のうち、nが5〜10である環状ポリエーテルエステルの合計重量は環状ポリエーテルエステル(A3−1)の合計重量に対して28重量%であり、環状ポリエーテルエステル(A3−1)のうち、mが1の環状ポリエーテルエステルは60重量%であった。
【0055】
<製造例4>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:MgAl (OH)16 CO ・4H O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm の範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、更にEO352部(8モル)を180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm となるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A4)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A4)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A4)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A4−1)を合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル(A4−1)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は10であり、環状ポリエーテルエステル(A4−1)のうち、nが8〜13である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A4−1)の合計重量に対して85重量%であった。
【0056】
<製造例5>
撹拌装置及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、15−ペンタデカノラクトン240部(1モル)、「キョーワード500」[協和化学工業(株)製:MgAl (OH)16 CO ・4H O]24.2部(0.04モル)及び過塩素酸アルミニウム九水和物1部(0.002モル)を入れて密閉した後、減圧下で160℃にて3時間加熱し、脱水処理した。次いで180℃まで昇温し、180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm の範囲に入るように調整しながらエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)88部(2モル)をオートクレーブ内に導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続した。その後、水酸化カリウム0.3部を追加して、さらにEO1232部(28モル)を180℃でゲージ圧が1〜5kgf/cm となるように導入した。EO全量を導入した後、圧力が0.13kgf/cmGになるまで撹拌を継続して15−ペンタデカノラクトンとEOとの反応を行った。EOの付加反応に要した合計時間は8時間であった。その後、EOの付加反応で得られた反応混合物から触媒をろ別して、環状ポリエーテルエステル組成物(A5)を得た。
得られた環状ポリエーテルエステル組成物(A5)についてMALDI−TOF MSによる分析を行った。
環状ポリエーテルエステル組成物(A5)は、mが1〜3であり、nが1〜30である一般式(1)で表される環状ポリエーテルエステル(A5−1)を合計して90重量%含む環状ポリエーテルエステルの混合物であり、環状ポリエーテルエステル(A5−1)のnの平均値(すなわちEOの平均付加モル数)は30であり、環状ポリエーテルエステル(A5−1)のうち、nが28〜33である環状ポリエーテルエステルの合計重量が、環状ポリエーテルエステル(A5−1)の合計重量に対して85重量%であった。
【0057】
<実施例1>
製造例1で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A1)23.7部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製、SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a1)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a1)を223.7部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R1)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0058】
<実施例2>
製造例1で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A1)11.85部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製、SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a2)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a2)を211.85部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R2)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0059】
<実施例3>
製造例1で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A1)2.37部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製、SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a3)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a3)を202.37部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R3)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0060】
<実施例4>
製造例2で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A2)11.85部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製、SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a4)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a4)を211.85部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R4)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0061】
<実施例5>
製造例3で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A3)11.85部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a5)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a5)を211.85部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R5)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0062】
<実施例6>
製造例4で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A4)11.85部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a6)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a6)を211.85部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R6)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0063】
<実施例7>
製造例5で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A5)11.85部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a7)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a7)を211.85部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン34部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R7)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0064】
<実施例8>
製造例1で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A1)11.12部とMn2000の両末端水酸基ポリエチレングリコール(PEG 2000、三洋化成工業株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(タケネート600、三井化学株式会社製)22部を90℃で24時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、組成物(a8)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a8)を部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド0.5部と、トリエチルアミン0.5部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R8)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0065】
<実施例9>
製造例2で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A2)11.12部とMn2000の両末端水酸基ポリエチレングリコール(PEG 2000、三洋化成工業株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(タケネート600、三井化学株式会社製)22部を90℃で24時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、組成物(a9)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a9)を部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド0.5部と、トリエチルアミン0.5部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R9)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0066】
<実施例10>
製造例3で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A3)11.12部とMn2000の両末端水酸基ポリエチレングリコール(PEG 2000、三洋化成工業株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(タケネート600、三井化学株式会社製)22部を90℃で24時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、組成物(a10)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a10)を部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド0.5部と、トリエチルアミン0.5部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R10)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0067】
<実施例11>
製造例4で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A4)11.12部とMn2000の両末端水酸基ポリエチレングリコール(PEG 2000、三洋化成工業株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(タケネート600、三井化学株式会社製)22部を90℃で24時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、組成物(a11)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a11)を部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド0.5部と、トリエチルアミン0.5部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R11)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0068】
<実施例12>
製造例5で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A5)11.12部とMn2000の両末端水酸基ポリエチレングリコール(PEG 2000、三洋化成工業株式会社製)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した後、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(タケネート600、三井化学株式会社製)22部を90℃で24時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、組成物(a12)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a12)を部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド0.5部と、トリエチルアミン0.5部とを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R12)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した
【0069】
<実施例13>
製造例1で得た環状ポリエーテルエステル組成物(A1)12.53部とMn25,000ポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製)250部、水1000部をガラス製容器に入れ、60℃で1時間混合し、次いでエチレンジアミン(和光純薬工業株式会社製)0.6部を60℃で1時間混合し、100℃で水を除去し、さらに110℃で1時間加熱した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥し、本発明のロタキサン(R13)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリアクリレート鎖が貫通していることを確認した。
【0070】
<比較例1>
特開2006−233007号公報の合成例1と同様に両末端にアルケニル基を有する分子量10,000のポリプロピレングリコール12gをガラス製容器に入れ、水30mLを加えた。ここへβ−シクロデキストリン(A’1)16gを添加し、室温で6時間攪拌した。得られた沈殿物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して、環状化合物(A’1)を得た。環状化合物(A’1)10部とMn2000の両末端アミノ基変性ポリエチレングリコール(SUNBRIGHT DE−020PA、日油株式会社株式会社製、SUNBRITEは日油株式会社の登録商標)200部をガラス製容器に入れ、室温で1時間攪拌した。得られた組成物を水及びn−ヘキサンで洗浄し、90℃で4時間真空乾燥して組成物(a’1)を得た。
特開2009−013253号公報の実施例1と同様に、3,5−ジメチル安息香酸(Aldrich社製)を、塩化チオニル中で触媒量のジメチルホルムアミドと共に沸点還流して、3,5−ジメチル安息香酸クロリドを合成し、前記の組成物(a1)を11部含むジメチルホルムアミド分散液に前記の3,5−ジメチル安息香酸クロリド34部と、トリエチルアミン77mgとを添加し、0℃で2時間反応させた。得られた反応溶液をジエチルエーテルに注ぎ再沈澱させ、沈殿物を回収し、水およびメタノールで洗浄した後、乾燥させて本発明のロタキサン(R’1)を得た。
得られたロタキサンのH−NMRを測定し、環状ポリエーテルエステルをポリエチレングリコール鎖が貫通しており、ポリエチレングリコールの両末端に3,5−ジメチル安息香酸が結合していることを確認した。
【0071】
<環状組成物の導入効率>
実施例1〜13及び比較例1で得られたロタキサン(R1)〜(R13)、及び(R’1)のそれぞれについてH−NMRを測定し、ロタキサン(R1)〜(R12)、及び(R’1)のそれぞれについて、高分子化合物が貫通したロタキサン構造をとる環状化合物の数を測定し、ロタキサン(R1)〜(R13)、及び(R’1)を得るために実施例1〜13及び比較例1のそれぞれで投入した環状化合物のうち、高分子化合物が貫通したロタキサン構造をとる環状化合物の比率(環状組成物の導入効率)を計算して表1に記載した。この値が大きい程、環状化合物がロタキサンとなりやすいことを意味する。
さらに、高分子化合物が貫通した環状化合物の数と高分子化合物のMnとから、軸成分である高分子化合物のMnが1000とした場合にロタキサン中に含まれる環状化合物の含有数(高分子化合物のMn1000あたりの環成分数)を計算し、表1に記載した。この値が大きいほど、ロタキサンとなりやすい環成分と軸成分の組み合わせであることを意味する。
【0072】
<自己修復性試験>
実施例1〜13及び比較例1で得られたロタキサン(R1)〜(R13)及び(R’1)をそれぞれ水に溶解又は膨潤させ、それぞれ平面硝子板上に塗工、100℃で1時間乾燥することで100μmの厚さを有するフィルムを製造した。
各フィルムの表面を500gの荷重で真鍮製ブラシ(毛材行数3行、線径0.15mm)で擦った後、スクラッチの回復にかかる時間を測定し、結果を表1に記載した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1〜13で得たロタキサンは、比較例1に比べて環状化合物が効率よく高分子を貫通しており、自己修復性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリロタキサンは、自己修復性材料及び衝撃吸収性材料等に用いられる粘弾性材料、並びに医療材料等に用いられる機能性材料として有用である。