特許第6730898号(P6730898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6730898電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730898
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20200716BHJP
   B01D 61/48 20060101ALI20200716BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20200716BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20200716BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20200716BHJP
【FI】
   C02F1/469
   B01D61/48
   A61L2/18
   A61L2/24
   A61L101:06
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-188464(P2016-188464)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-51453(P2018-51453A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 賢治
(72)【発明者】
【氏名】日高 真生
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−117557(JP,A)
【文献】 特開2004−008851(JP,A)
【文献】 特開2011−045824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0067125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
1/46− 1/48
B01D 53/22
61/00−71/82
A61L 2/00− 2/28
11/00−12/14
101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に位置し、前記陽極側のアニオン交換膜と前記陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、前記アニオン交換膜および前記カチオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置であって、
前記濃縮室に供給される濃縮水に酸化性殺菌剤を注入する殺菌剤注入手段と、
前記殺菌剤注入手段が前記酸化性殺菌剤を注入するタイミングを制御するとともに、該タイミングに応じて電気式脱イオン水製造装置の運転を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記酸化性殺菌剤の注入を実行している間、前記濃縮室を流出した前記濃縮水を外部に排出するか、または前記濃縮室の上流側に還流させながら、前記陽極と前記陰極との間に流す電流値を通常運転時よりも小さくするか、または前記陽極と前記陰極との間の通電を停止する、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
前記一対の濃縮室には、それぞれイオン交換体が充填されている、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記酸化性殺菌剤の注入を実行している間、被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を前記脱塩室に還流させて循環させるか、または前記処理水を外部に排出する、請求項またはに記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記酸化性殺菌剤の注入を定期的に一定時間実行する、請求項からのいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項5】
前記殺菌剤注入手段は、前記濃縮水中の前記酸化性殺菌剤の濃度が所定の濃度範囲になるように、前記濃縮水に前記酸化性殺菌剤を注入するように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項6】
前記酸化性殺菌剤は、DPD法で測定したときの前記濃縮水中の全塩素濃度が0.〜2mg/Lの範囲にある、請求項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【請求項7】
陽極と陰極との間に位置し、前記陽極側のアニオン交換膜と前記陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、前記アニオン交換膜および前記カチオン交換膜を介して前記脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室と備えた電気式脱イオン水製造装置の運転方法であって、
前記濃縮室を流出した前記濃縮水を外部に排出するか、または前記濃縮室の上流側に還流させながら、かつ、前記陽極と前記陰極との間に流す電流値を通常運転時よりも小さくした状態、または前記陽極と前記陰極との間の通電を停止した状態で、前記濃縮室に供給される濃縮水に酸化性殺菌剤を注入する工程を含む、電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【請求項8】
前記一対の濃縮室には、それぞれイオン交換体が充填されている、請求項に記載の電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【請求項9】
前記酸化性殺菌剤を注入する工程が、被処理水を前記脱塩室に通水して得られた処理水を前記脱塩室に還流させて循環させながら、または前記処理水を外部に排出しながら、前記酸化性殺菌剤を注入することを含む、請求項または記載の電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【請求項10】
前記酸化性殺菌剤を注入する工程が、前記酸化性殺菌剤を定期的に一定時間注入することを含む、請求項からのいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【請求項11】
前記酸化性殺菌剤を注入する工程が、前記濃縮水中の前記酸化性殺菌剤の濃度が所定の濃度範囲になるように、前記濃縮水に前記酸化性殺菌剤を所定のタイミングで注入することを含む、請求項から10のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【請求項12】
前記酸化性殺菌剤を注入する工程が、DPD法で測定したときの前記濃縮水中の全塩素濃度が0.〜2mg/Lの範囲にある前記酸化性殺菌剤を注入することを含む、請求項11に記載の電気式脱イオン水製造装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式脱イオン水製造装置は、カチオン(陽イオン)のみを透過させるカチオン交換膜とアニオン(陰イオン)のみを透過させるアニオン交換膜との間に配置され、イオン交換体(アニオン交換体とカチオン交換体との少なくとも一方)が充填された脱塩室と、脱塩室の両側でカチオン交換膜およびアニオン交換膜の外側にそれぞれ配置された濃縮室とを基本構成として備えた装置である。脱塩室は、脱塩室と陽極との間にアニオン交換膜が位置し、脱塩室と陰極との間にカチオン交換膜が位置するように、陽極と陰極との間に配置されている。
【0003】
このような電気式脱イオン水製造装置において、陽極と陰極との間に直流電圧を印加した状態で脱塩室に被処理水を通水すると、被処理水中のイオン成分は脱塩室内のイオン交換体に捕捉される。それと同時に、脱塩室内では、イオン交換膜とイオン交換体との界面またはイオン交換体同士の界面で生じる電位差により、水の解離反応が進行し、水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)が生成される。そして、先にイオン交換体に補足されていたイオン成分は、この生成された水素イオンと水酸化物イオンとによってイオン交換され、イオン交換体から遊離する。遊離したイオン成分のうちカチオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにカチオン交換膜を通過して陰極側の濃縮室に移動する。同様に、遊離したイオン成分のうちアニオンは、直流電流によって駆動されてイオン交換体内を移動し、さらにアニオン交換膜を通過して陽極側の濃縮室に移動する。こうして、脱塩室に供給された被処理水中のイオン成分が濃縮室に移動し、脱塩室から脱イオン水が得られるとともに、脱塩室のイオン交換体も再生される。一方で、イオン成分が移動してきた濃縮室には水を流すことで、そのイオン成分を濃縮水として外部に排出することができる。
【0004】
ところで、電気式脱イオン水製造装置の濃縮室では、上述したように、脱塩室から移動してきたイオン成分によってイオン(塩)濃度が高くなるため、生菌由来のスライムが発生しやすく、通水差圧が上昇しやすいという問題が多く発生することが知られている。この問題は、被処理水として水温が30℃を超えるような水を処理する場合に特に顕著であることが確認されている。
【0005】
これに対し、通水差圧が上昇した際には、多くの場合、酸やアルカリなどの薬液による洗浄を行うことでスライムを除去することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−113973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸やアルカリなどの薬液による洗浄によってスライムを除去する場合、洗浄工程そのものに長時間(例えば数日間)を要するため、その間に装置が使用できないことは問題である。また、スライムで閉塞された濃縮室には薬液が流れにくく、洗浄によってスライムを完全に取り除くことは困難である。そのため、この状態で再度運転を行うと、スライムが完全に除去されていない濃縮室には通水しにくくなり、その結果、濃縮水流量が低下し、濃縮倍率の上昇によって塩濃度が上昇することで、さらにスライムが発生するという悪循環に陥ってしまう。したがって、運転を継続するにつれて差圧上昇の頻度が高くなり、それに応じて洗浄の頻度が高くなることも問題である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、濃縮室内にスライムが発生することを抑制することで、長期にわたり安定した運転が可能になる電気式脱イオン水製造装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の電気式脱イオン水製造装置は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、アニオン交換膜およびカチオン交換膜を介して脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置であって、濃縮室に供給される濃縮水に酸化性殺菌剤を注入する殺菌剤注入手段と、殺菌剤注入手段が酸化性殺菌剤を注入するタイミングを制御するとともに、そのタイミングに応じて電気式脱イオン水製造装置の運転を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、酸化性殺菌剤の注入を実行している間、濃縮室を流出した濃縮水を外部に排出するか、または濃縮室の上流側に還流させながら、陽極と陰極との間に流す電流値を通常運転時よりも小さくするか、または陽極と陰極との間の通電を停止する
【0010】
また、本発明の電気式脱イオン水製造装置の運転方法は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、アニオン交換膜およびカチオン交換膜を介して脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを備えた電気式脱イオン水製造装置の運転方法であって、濃縮室を流出した濃縮水を外部に排出するか、または濃縮室の上流側に還流させながら、かつ、陽極と陰極との間に流す電流値を通常運転時よりも小さくした状態、または陽極と陰極との間の通電を停止した状態で、濃縮室に供給される濃縮水に酸化性殺菌剤を注入する工程を含んでいる。
【0011】
このような電気式脱イオン水製造装置によれば、濃縮室に酸化性殺菌剤を定期的に注入することが可能になり、その結果、濃縮室内にスライムが発生することを事前に抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、濃縮室内にスライムが発生することを抑制することで、長期にわたり安定した運転が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の要部構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の全体構成を示す概略図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の全体構成を示す概略図である。
図4】実施例1および比較例1における濃縮室の通水差圧の時間変化を示すグラフである。
図5】実施例2,3および比較例2における濃縮室の通水差圧の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明を説明するための例示的なものであり、本発明を制限するものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の全体構成を説明する前に、図1を参照して、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の要部構成について説明する。図1は、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の要部構成を示す概略図である。なお、図示した構成は、あくまで一例であって、例えば、各室の構成(数、配置など)を変更したり、流路の構成を変更したりするなど、装置の使用目的や用途、要求性能に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0016】
電気式脱イオン水製造装置10は、電気泳動と電気透析とを組み合わせた装置であり、イオン交換体による被処理水の脱イオン化(脱塩)処理と、イオン交換体の再生処理とを同時に行う装置である。電気式脱イオン水製造装置10は、陽極11を備えた陽極室E1と、陰極12を備えた陰極室E2と、陽極室E1と陰極室E2との間に設けられた脱塩室Dと、脱塩室Dの両側に配置された一対の濃縮室C1,C2であって、脱塩室Dの陽極11側で、アニオン交換膜a1を介して脱塩室Dと隣接する陽極側濃縮室C1と、脱塩室Dの陰極12側で、カチオン交換膜c1を介して脱塩室Dと隣接する陰極側濃縮室C2とを含む一対の濃縮室C1,C2と、を有している。陽極側濃縮室C1は、カチオン交換膜c2を介して陽極室E1と隣接し、陰極側濃縮室C2は、アニオン交換膜a2を介して陰極室E2と隣接している。
【0017】
脱塩室Dには、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填され、好ましくは、カチオン交換体とアニオン交換体との混合物が充填されている。すなわち、カチオン交換体とアニオン交換体とがいわゆる混床形態で充填されていることが好ましい。カチオン交換体としては、カチオン交換樹脂、カチオン交換繊維、モノリス状多孔質カチオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なカチオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換体の種類としては、弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等が挙げられる。アニオン交換体としては、アニオン交換樹脂、アニオン交換繊維、モノリス状多孔質アニオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なアニオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換体の種類としては、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等が挙げられる。脱塩室Dには、後述するように、被処理水として逆浸透(RO)膜分離装置で分離された透過水(例えば、導電率が0.1〜100μS/cm)が流入するようになっている。
【0018】
陽極側濃縮室C1および陰極側濃縮室C2は、脱塩室Dから排出されるアニオン成分およびカチオン成分をそれぞれ取り込み、それらを濃縮水によって外部に排出するために設けられている。各濃縮室C1,C2には、後述するように、濃縮水として上記透過水の一部が流入するようになっている。電気式脱イオン水製造装置10の電気抵抗を抑えるために、各濃縮室C1,C2にはイオン交換体が充填されていることが好ましい。
【0019】
陽極室E1には、金属の網状体あるいは板状体からなる陽極11が収容されている。陰極室E2には、金属の網状体あるいは板状体からなる陰極12が収容されている。陽極室E1および陰極室E2には、電極水として上記透過水の一部が流入するようになっている。電気式脱イオン水製造装置1の電気抵抗を抑えるために、陽極室E1および陰極室E2にはイオン交換体が充填されていることが好ましい。
【0020】
次に、図2を参照して、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の全体構成について説明する。図2は、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の全体構成を示す概略図である。なお、図2では、装置の全体構成を理解しやすくするために、図1に示した要部構成の一部が省略または簡略化されている。
【0021】
図2を参照すると、電気式脱イオン水製造装置10には、電気式脱イオン水製造装置10に被処理水を供給するRO膜分離装置1と、電気式脱イオン水製造装置10で製造された処理水(脱イオン水)を貯留する処理水タンク2とが接続されている。具体的には、RO膜分離装置1は、流路f1を介して脱塩室Dに接続され、流路f1から分岐した流路f2を介して濃縮室C1,C2に接続されている。また、脱塩室Dは、流路f3を介して処理水タンク2に接続され、流路f3には、脱塩室Dから流出した処理水を必要に応じて外部に排出するための流路f4が接続されている。一方、濃縮室C1,C2は、流路f5を介して、RO膜分離装置1に原水を供給する流路f6に接続されている。流路f5には、三方バルブ14を介して、濃縮室C1,C2から流出した濃縮水を必要に応じて外部に排出するための流路f7が接続されている。
【0022】
なお、図示されていないが、流路f6には、RO膜分離装置1に原水を供給するためのポンプが設けられ、RO膜分離装置1は、電気式脱イオン水製造装置10の陽極室E1および陰極室E2(図1参照)にも接続されている。また、流路f1の、流路f2との分岐点よりも上流側には、電気式脱イオン水製造装置10に供給される被処理水(透過水)を貯留するタンクや、その被処理水を送出するためのポンプが設けられていてもよい。さらに、流路f6には、RO膜分離装置1に供給される原水を貯留するタンクが設けられていてもよく、流路f5は、そのタンクに接続されていてもよい。
【0023】
さらに、図2を参照すると、電気式脱イオン水製造装置10は、殺菌剤注入手段3と、制御手段4とを有している。
【0024】
殺菌剤注入手段3は、濃縮室C1,C2内を殺菌するために、濃縮室C1,C2に供給される濃縮水(本実施形態ではRO膜分離装置1で分離された透過水)に酸化性殺菌剤を注入するものであり、より具体的には、濃縮室C1,C2に供給される濃縮水中の酸化性殺菌剤の濃度が所定の濃度範囲になるように、当該濃縮水に酸化性殺菌剤を注入するものである。殺菌剤注入手段3としては、濃縮水に酸化性殺菌剤を注入できるものであれば、その方法は特に限定されるものではない。例えば、一定濃度に調整された液体の酸化性殺菌剤を定量ポンプで注入する方法や、固体の酸化性殺菌剤(錠剤など)を必要量添加する方法などを用いることができる。また、酸化性殺菌剤としては、有機系のものと無機系のものとに広く分類されるが、有機系のものは、電気式脱イオン水製造装置を構成するイオン交換膜やイオン交換樹脂を汚染してしまう可能性があるため、無機系の酸化性殺菌剤を用いることが好ましい、無機系の酸化性殺菌剤としては、ハロゲン系の酸化剤、例えば、次亜塩素酸化合物、次亜臭素酸化合物、クロラミン、クロロスルファミン酸、安定化次亜臭素酸化合物(次亜臭素酸とスルファミン酸の混合物)などが挙げられる。
【0025】
制御手段4は、殺菌剤注入手段3が酸化性殺菌剤を注入するタイミングを制御するとともに、そのタイミングに応じて電気式脱イオン水製造装置10の運転を制御するものである。具体的には、制御手段4は、通常運転時に行われる採水工程の合間に、上述の殺菌剤注入手段3を用いた濃縮室C1,C2の殺菌工程を、好ましくは定期的に一定時間実行するものである。以下、図1および図2を参照して、この2つの工程について説明する。
【0026】
採水工程では、電気式脱イオン水製造装置10において定電流運転が行われ、被処理水を脱塩室Dに通水して得られた処理水が処理水タンク2に貯留される。すなわち、陽極11、陰極12間には、両極11,12間に流れる電流値が所定の値になるように直流電圧が印加され、脱塩室Dには、流路f1を通じてRO膜分離装置1からの透過水が被処理水として供給される。このとき、陽極側濃縮室C1および陰極側濃縮室C2には、流路f2を通じて被処理水の一部が濃縮水として供給され、同様に、陽極室E1および陰極室E2には、被処理水の一部が電極水として供給されている。被処理水中のカチオン成分およびアニオン成分は、被処理水が脱塩室Dを通過する際に、脱塩室Dに充填されたカチオン交換体およびアニオン交換体にそれぞれ吸着されて除去される。こうして、カチオン成分およびアニオン成分が除去された被処理水は、処理水(脱イオン水)として、脱塩室Dから流出して流路f3を通じて処理水タンク2に貯留される。なお、処理水タンク2が満水の場合には、処理水を脱塩室Dの上流側(例えば、流路f1または流路f6にタンクが設けられている場合には、そのタンク)に還流させるようになっていてもよい。
【0027】
一方で、脱塩室Dでは、水が水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)とに解離する水解離反応が、連続的に進行している。Hはカチオン交換体に吸着したカチオン成分と交換され、OHはアニオン交換体に吸着したアニオン成分と交換される。こうして、脱塩室Dに充填されたカチオン交換体およびアニオン交換体がそれぞれ再生される。
【0028】
脱塩室Dのカチオン交換体から遊離したカチオン成分は、陽極11、陰極12間の電位差によって、陰極12側に引き寄せられ、カチオン交換膜c1を通過して陰極側濃縮室C2に移動する。陰極側濃縮室C2に移動したカチオン成分は、陰極側濃縮室C2に供給される濃縮水に取り込まれ、濃縮水と共に流路f5を介してRO膜分離装置1の上流側に還流される。脱塩室Dのアニオン交換体から遊離したアニオン成分は、陽極11、陰極12間の電位差によって、陽極側11に引き寄せられ、アニオン交換膜a1を通過して陽極側濃縮室C1に移動する。陽極側濃縮室C1に移動したアニオン成分は、陽極側濃縮室C1に供給される濃縮水に取り込まれ、濃縮水と共に流路f5を介してRO膜分離装置1の上流側に還流される。なお、濃縮水は、流路f5を介して還流されずに、流路f7を通じて外部に排出されるようになっていてもよい。
【0029】
殺菌工程では、濃縮室C1,C2に供給される濃縮水に酸化性殺菌剤が注入され、その間、処理水の処理水タンク2への貯留が一時的に停止される。すなわち、殺菌工程が開始されると、流路f3に設けられた三方バルブ13が切り替えられ、脱塩室Dから流出した処理水が流路f4を介して外部に排出される。それと同時に、RO膜分離装置1から流路f2を通じて濃縮室C1,C2に供給される濃縮水に、殺菌剤注入手段3から酸化性殺菌剤が注入される。このとき、流路f5に設けられた三方バルブ14が切り替えられ、濃縮室C1,C2を流出した酸化性殺菌剤を含む濃縮水は、流路f7を通じて外部に排出される。殺菌工程が終了すると、塩素濃度計などにより酸化性殺菌剤の濃度を検出することで、濃縮水に注入された酸化性殺菌剤が十分に系外に排出されたことを確認した後、採水工程が再開される。
【0030】
なお、脱塩室Dと濃縮室C1,C2とはイオン交換膜で区画されているため、濃縮水に含まれる酸化性殺菌剤が処理水に混入することはなく、したがって、処理水を外部に排出する必要がないとも考えられる。しかしながら、イオン交換膜の経年劣化などにより、万が一、酸化性殺菌剤が処理水に混入する可能性も考慮すると、殺菌工程では、上述したように、脱塩室Dから流出した処理水を外部に排出することが好ましい。あるいは、処理水を脱塩室Dの上流側(例えば、流路f1または流路f6に設けられたタンク)に還流させるようになっていてもよい。
【0031】
ところで、酸化性殺菌剤は、一般に、イオン交換樹脂(例えば、スチレン−ジビニルベンゼンの共重合体を母体とするイオン交換樹脂など)に接触すると、その酸化劣化を引き起こすことが知られている。したがって、イオン交換樹脂が充填されている濃縮室に酸化性殺菌剤を導入すると、イオン交換樹脂の母体の架橋構造が損傷を受け、イオン交換樹脂の強度が著しく低下することともに膨潤が進行し、濃縮室が閉塞されて通水差圧の上昇が引き起こされてしまう。同様のことは、濃縮室と脱塩室とを区画するイオン交換膜に関しても発生すると考えられる。そのため、電気式脱イオン水製造装置においては、濃縮室内のスライム発生を抑制するために、酸化性殺菌剤は用いられていないのが実情である。
【0032】
しかしながら、本発明者らの検証により、酸化性殺菌剤を用いて濃縮室の殺菌工程を行った場合にも、それを一定の条件下で行うことで、電気式脱イオン水製造装置を構成するイオン交換膜やイオン交換樹脂の劣化が抑制されることが見出されている。具体的には、使用するイオン交換膜やイオン交換樹脂ごとにCT値(殺菌剤の濃度と接触時間との積)の上限値を確認し、その上限値を上回らないような条件(酸化性殺菌剤の濃度、注入周期、および注入時間)で酸化性殺菌剤による殺菌工程を行った場合には、イオン交換膜やイオン交換樹脂の劣化が抑制されることが見出されている。
【0033】
換言すると、具体的な酸化性殺菌剤の濃度、注入周期、および注入時間は、上述のCT値の上限値を考慮するとともに、装置の運用期間も考慮した上で決定される。例えば、CT値の上限値が4000h・mg/Lであるとすると、装置の運用期間を5年間とし、1日に4回、DPD法で測定したときの全塩素濃度(濃縮室に供給される濃縮水中の全塩素濃度)が2mg/Lの酸化性殺菌剤を15分間注入した場合には、CT値は3650h・mg/Lとなり、イオン交換膜やイオン交換樹脂の劣化を抑制できることになる。
【0034】
以上を踏まえると、使用する酸化性殺菌剤は、DPD法で測定したときの全塩素濃度が0.01〜10mg/Lの範囲にあることが好ましく、0.1〜5mg/Lの範囲にあることがより好ましく、0.5〜2mg/Lの範囲にあることがさらに好ましい。また、酸化性殺菌剤の注入は、最低でも1ヶ月に1回、好ましくは1日に1回以上の頻度で実行し、1回の注入時間は5〜15分程度であることが好ましい。
【0035】
なお、殺菌工程を行っている間は、陽極と陰極との間に流す電流値を通常運転時(採水工程時)よりも小さくするか、または陽極と陰極との間の通電を停止することが好ましい。これにより、イオン交換膜の劣化を抑制することができる。また、このことは、後述する実施例で示すように、濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている場合に、そのイオン交換樹脂の劣化をより抑制できる点で特に有利である。
【0036】
このように、本実施形態では、濃縮水に酸化性殺菌剤を注入する殺菌剤注入手段によって、通常運転時の採水工程の合間に濃縮室の殺菌工程を定期的に実行することが可能になり、その結果、濃縮室内にスライムが発生することを事前に抑制することが可能になる。これにより、従来は濃縮室にスライムが発生した場合に必要であった洗浄工程(スライム除去工程)が行う必要がなくなり、ひいては長時間にわたる洗浄工程のために装置を停止する必要もなくなる。こうして、電気式脱イオン水製造装置の長期間にわたる安定した運転が可能になる。
【0037】
上述した実施形態では、脱塩室は1つだけ設けられているが、脱塩室は2つ以上設けられていてもよい。この場合、脱塩室と濃縮室とは、カチオン交換膜またはアニオン交換膜を介して交互に設けられ、最も陽極側に位置する濃縮室が陽極室と隣接し、最も陰極側に位置する濃縮室が陰極室と隣接することになる。一方で、陽極室に隣接する濃縮室を省略して、陽極室と脱塩室とを隣接させたり、陰極室に隣接する濃縮室を省略して、陰極室と脱塩室とを隣接させたりすることもできる。この場合、陽極室および陰極室が濃縮室を兼ねることになり、すなわち、陽極室または陰極室に隣接する脱塩室で除去された被処理水中のイオン成分が、陽極室または陰極室に移動して、電極水と共に外部に排出されるようになる。このような構成は、脱塩室の数にかかわらず適用可能であり、上述した脱塩室が1つだけ設けられている場合にも適用可能である。いずれの場合であっても、各脱塩室は、陽極と陰極との間に位置し、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とで区画されている。
【0038】
また、脱塩室は、中間イオン交換膜によって直流電流の通電方向に2つに分割されていてもよい。この場合、それら2つの小脱塩室は、直列流路を形成し、アニオン交換膜と隣接する陽極側の小脱塩室には、少なくともアニオン交換体が充填され、カチオン交換膜と隣接する陰極側の小脱塩室には、少なくともカチオン交換体が充填されている。中間イオン交換膜は、被処理水の水質や処理水(脱イオン水)に求められる水質、各小脱塩室に充填されるイオン交換体の種類などを考慮して選択することができ、例えば、アニオン交換膜またはカチオン交換膜の単一膜であってもよく、あるいはバイポーラ膜であってもよい。
【0039】
流路の構成についても、図示したものに限定されず、例えば、各濃縮室には、濃縮水として、脱塩室Dから流出した処理水の一部が流入するようになっていてもよい。また、陽極室および陰極室には、電極水として上記処理水の一部が流入するようになっていてもよく、あるいは、濃縮室から流出した濃縮水が流入するようになっていてもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電気式脱イオン水製造装置の全体構成を示す概略図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、本実施形態の電気式脱イオン水製造装置の要部構成は、図1に示したものと同様であり、図3では、図2と同様に、図1に示した要部構成の一部が省略または簡略化されている。
【0041】
本実施形態は、濃縮水の循環経路が追加されている点で、第1の実施形態と異なっている。具体的には、流路f5と流路f2との間に、流路f5から分岐して流路f2に合流する流路f8が新たに設けられている。これに応じて、流路f2の、流路f8との合流点よりも下流側には、濃縮水を循環させるためのポンプ15が新たに設けられている。
【0042】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の採水工程が行われるが、このとき、濃縮室C1,C2を流出した濃縮水の一部は、ポンプ15の作動により、流路f8を通じて流路f2に還流して再び濃縮室C1,C2に流入し、こうして、濃縮水の循環運転が行われる。これにより、濃縮倍率を高めて濃縮水の導電率を高くすることができ、その結果、装置の運転電圧を低下させることができる。したがって、本実施形態は、濃縮室C1,C2にイオン交換体が充填されておらず、装置全体の電気抵抗の増加により運転電圧の増加が懸念される場合に特に有効である。
【0043】
なお、本実施形態の殺菌工程では、第1の実施形態と同様に、流路f5の三方バルブ14が切り替えられ、濃縮室C1,C2を流出した濃縮水が流路f7を通じて外部に排出されるため、濃縮水の循環運転は行われない。ただし、殺菌工程時に濃縮水の循環運転が行われないと、塩濃度の高い水が流れる流路f8内が殺菌されないまま残されてしまい、場合によっては、濃縮室C1,C2の入口側でスライムが発生する可能性もある。そのため、殺菌工程時にも濃縮水の循環運転が行われるようになっていてもよい。その場合、流路f5の三方バルブ14が、流路f8との分岐点よりも下流側に設けられ、採水工程でRO膜分離装置1の上流側に還流されていた濃縮水の一部が外部に排出されるようになっていることが好ましい。
【0044】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0045】
(実施例1)
本実施例では、図2に示す電気式脱イオン水製造装置において濃縮室にポリプロピレン(PP)製のメッシュ部材(12メッシュ)を充填したものを用いて、1日に1回、10分間の殺菌工程を行いながら、採水工程を16ヶ月間行い、1ヶ月ごとに濃縮室の通水差圧(入口圧力と出口圧力との差)を測定した。被処理水として、導電率が9〜12μS/cm、水温が30〜35℃の透過水(一段RO透過水)を用い、処理流量(脱塩室に流入させる被処理水の流量)、濃縮水流量、および電極水流量を、それぞれ500L/h、125L/h、および20L/hとした。したがって、濃縮倍率、すなわち、処理流量と濃縮水流量との和を濃縮水流量で除した値は5倍である。運転電流(電極間に流す電流値)は、採水工程および殺菌工程共に、2.5Aとした。酸化性殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用い、殺菌工程は、DPD法で測定したときの全塩素濃度が1mg/Lになるように次亜塩素酸ナトリウム溶液を注入しながら、陽極と陰極との間に電流を流した状態で行った。
【0046】
(実施例2)
濃縮室にイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂)を充填し、それに応じて濃縮室の寸法を変更した以外、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0047】
(実施例3)
殺菌工程時(実際には、工程終了後、系内で塩素が検出されなくなるまで)に陽極と陰極との間の通電を停止した以外、実施例2と同じ条件で測定を行った。
【0048】
(比較例1)
定期的に殺菌工程を行う代わりに、濃縮室の通水差圧が0.4MPaに到達した時点で以下に示す洗浄工程を行った以外、実施例1と同じ条件で測定を行った。
【0049】
本比較例の洗浄工程では、まず、0.5mol/Lの塩酸を60L/hの流量で濃縮室に1時間通水して循環させた後、純水(比抵抗値が1MΩ・cm以上の処理水)を60L/hの流量で濃縮室に30分通水して循環させる。その後、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を60L/hの流量で濃縮室に1時間通水して循環させた後、一昼夜、この水酸化ナトリウム水溶液に濃縮室を浸漬させる。そして、再び0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を60L/hの流量で濃縮室に1時間通水して循環させた後、純水を60L/hの流量で濃縮室に30分通水して循環させて、濃縮室の洗浄は完了する。
【0050】
(比較例2)
濃縮室の通水差圧が0.2MPaに到達した時点で上述した洗浄工程を行った以外、比較例1と同じ条件で測定を行った。
【0051】
なお、実際には、実施例1〜3および比較例1,2において、脱塩室が5室設けられた(すなわち、濃縮室が6室設けられた)電気式脱イオン水製造装置を用いて測定を行った。各実施例および各比較例に共通する各室の仕様は、以下の通りである。ここで、CERはカチオン交換樹脂、AERはアニオン交換樹脂の略である。
・陽極室:寸法160×280×8mm CER充填
・陰極室:寸法160×280×8mm AER充填
・脱塩室:寸法160×280×8mm(全室) AER/CER充填
・濃縮室:(実施例1)寸法160×280×1mm(全室) メッシュ部材
(実施例2,3)寸法160×280×8mm(全室) AER/CER充填
(比較例1,2)寸法160×280×1mm(全室) メッシュ部材
【0052】
図4は、実施例1および比較例1における測定結果を示すグラフ、図5は、実施例2,3および比較例2における測定結果を示すグラフであり、それぞれ、横軸が経過時間(月)を示し、縦軸が濃縮室の通水差圧を示している。
【0053】
図4および図5から分かるように、実施例1〜3ではいずれも、比較例1,2と比べて、運転期間中の濃縮室の通水差圧が低いレベルで安定して推移していることが確認された。これは、定期的な殺菌工程の実施により、濃縮室内のスライムの発生が抑制されたためであると考えられる。一方で、共に濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている実施例2と実施例3を比較すると、図5に示すように、実施例2では、運転時間と共に通水差圧が徐々に上昇する傾向が見られており、この点で実施例3がより良好である。
【0054】
この差圧上昇の原因に関し、実施例2と実施例3において、運転終了後に装置を解体し、濃縮室の最上流部と最下流部に充填されていたイオン交換樹脂のうち、アニオン交換樹脂を分離して取り出し、その強度を測定した。強度は、押しつぶし強度試験機を用い、アニオン交換樹脂1粒ずつ25回の強度測定を行い、得られた強度の平均値から、未使用のアニオン交換樹脂の強度に対する相対値として算出した。表1に、その結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2では、実施例3と比べて、上流側および下流側の両方で樹脂の強度低下がより進行していることが確認された。このような強度低下が進行すると、上述したように、イオン交換樹脂の母体構造が崩れ、イオン交換樹脂が膨潤して流路を閉塞することから、実施例2では、樹脂の強度低下によって差圧上昇が進行したものと考えられる。
【0057】
なお、最上流部と最下流部を比較すると、実施例2,3で共に、最上流部における樹脂の強度低下がより進行しており、このことは、樹脂の強度低下が濃縮室への酸化性殺菌剤の導入による影響であることを示している。したがって、実施例2における差圧上昇は、実施例3と比べて、酸化性殺菌剤の導入による影響が大きいことを示している。換言すると、実施例3で差圧上昇が抑えられていることは、殺菌工程において陽極と陰極との間の通電を停止したことで、イオン交換樹脂に対する酸化性殺菌剤の導入による影響が軽減されたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 RO膜分離装置
2 処理水タンク
3 殺菌剤注入手段
4 制御手段
10 電気式脱イオン水製造装置
11 陽極
12 陰極
13,14 三方バルブ
15 ポンプ
D 脱塩室
C1 陽極側濃縮室
C2 陰極側濃縮室
E1 陽極室
E2 陰極室
a1,a2 アニオン交換膜
c1,c2 カチオン交換膜
f1〜f8 流路
図1
図2
図3
図4
図5