(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1乃至
図9に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係るシート貼合装置1について説明する。
なお、本実施形態に係るシート貼合装置1は、住宅等の建築物における室内側の壁や天井に防湿シートを貼るための装置である。
【0011】
[第1の実施形態]
まず、
図1乃至
図6を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係るシート貼合装置1について説明する。
【0012】
図1には、第1の実施形態に係るシート貼合装置1の斜視図を示した。
図1に示されるように、シート貼合装置1は、ローラー10、タッカー20及び棒部材30を主な構成要素とする。
【0013】
ローラー10は、防湿シートSを巻回して構成したものであり、ローラー10の中心軸には、ローラー10と共に回転するギア2が取り付けられている。
【0014】
タッカー20は、ローラー10から引き出された防湿シートSに固定針を打ち込む装置である。本実施形態では、タッカー20は、複数のギア(ギア2、ギア3、ギア22)を介して入力されるローラー10の回転力を利用して固定針を打ち込む機構を有する。なお、タッカー20の機構の詳細については後述する。
【0015】
ローラー10及びタッカー20は、ローラー10の軸方向の端部に配される一対の棒部材30により保持される。
具体的には、棒部材30の端部に設けられた取付部30Bにおいて、ローラー10は棒部材30に対し中心軸周りに回転可能に取り付けられている。
また、タッカー20は、棒部材30の取付部30Cに取り付けられた支持部材32を介して棒部材30に対し固定されている。
そして、本実施形態では、支持部材32はL字状の部材であり、棒部材30の延出方向と、タッカー20からの固定針の打込み方向とが同じ方向(
図1では上側)を向いている。
また、棒部材30には、ローラー10及びタッカー20が取り付けられる側の端部とは反対側の端部において、作業者により把持される把持部30Aが設けられる。
また、棒部材30には、ギア2と噛み合うギア3が取付部30Dを中心軸として回転可能に取り付けられている。
また、棒部材30における把持部30Aと取付部30Bとの間の中間部には、左右の棒部材30を連結する連結部材31が設けられる。このように、連結部材31を設けることにより、棒部材30の剛性を強化し、シート貼合装置1による作業の安定性を向上させている。
【0016】
次に、
図2乃至
図4を参照しながら、シート貼合装置1のローラー10の回転を利用したタッカー20の固定針の打込み機構について説明する。
図2乃至
図4では、ローラー10から防湿シートSが天井Cに沿って引き出され、天井Cに向けて固定針を打ち込むこととする。なお、タッカー20の固定針の打込み機構は、左右(ローラー10の軸方向端部の近傍)にそれぞれ1つずつ設けられることとするが、左右とも同一の機構とし、以下では片側の打込み機構の構成について説明する。
【0017】
図2に示されるように、タッカー20は、ケース20A、それぞれケース20Aに収められたピニオン21、ギア22、可動部23、弾性体24、弾性体25、仕切部26、固定針27、及び支持板28を主な構成要素とする。
【0018】
ギア22は、ケース20Aから一部露出し、露出部分がギア3と噛み合っている。また、ギア22にはギア22と軸を同一とするピニオン21が取り付けられており、ギア22の回転に連動してピニオン21が回転するようになっている。
【0019】
ピニオン21は、外周の一部に歯が設けられた第1部分21Aと、歯が設けられていない第2部分21Bと有し、第1部分21Aは可動部23のラック部23Aと噛み合うようになっている。
【0020】
可動部23の下端とケース20Aとは弾性体24により連結されており、可動部23が下側に移動することで、弾性体24が圧縮される。なお、弾性体24は金属製のバネとしてよい。
【0021】
また、可動部23の上端には、固定針27を打ち込む打込部23Bが設けられている。なお、ラック部23Aにおける打込部23Bの上方には開口部20Bが設けられており、打込部23Bによる打込みにより上方に押し出される固定針27が、開口部20Bを通じて防湿シートS側に飛び出すようになっている。
【0022】
また、ケース20Aの上部には、支持板28が設けられている。そして、支持板28の上には、弾性体25と連結し左右(防湿シートSが引き出される方向に沿った向き)に摺動する仕切部26が設けられている。また、支持板28の上であって、仕切部26より図面上の右側(すなわち、弾性体25が設けられていない側、換言すれば開口部20Bに近い側)には固定針27が収容されている。
上記機構によれば、打込部23Bが下方に下がっている場合には、弾性体25により固定針27が右側に押し込まれて、最右端の固定針27が開口部20Bの下方の位置に移動することとなる。
【0023】
次に、ローラー10の回転に伴って、タッカー20が固定針27を防湿シートSに対して打ち込む際の動作について説明する。
【0024】
まず、ローラー10から防湿シートSが引き出される方向に回転すると、その回転に連動してギア2が時計回りに回転する。これにより、ギア2と噛み合うギア3が反時計回りに回転し、更にギア3と噛み合うギア22が時計回りに回転する。
その結果、ギア22に取り付けられたピニオン21が時計回りに回転して、ピニオン21の第1部分21Aがラック部23Aと対向する位置となる。そして、ピニオン21の第1部分21Aがラック部23Aと噛み合うようになると、ピニオン21の回転に伴って可動部23を下側に移動させる。
【0025】
図3には、ピニオン21の第1部分21Aがラック部23Aと噛み合った状態で回転することで、可動部23が下限まで押し下げられた状態を示している。
ここで、ピニオン21が時計回りの回転を継続し、ピニオン21の第2部分21Bとラック部23Aとが対向する位置となると、ピニオン21とラック部23Aとの噛合が解消される。これにより、弾性体24の圧縮が開放されて、弾性体24の復元力により可動部23が上方に向けて押し出される。
この結果、
図4に示されるように、可動部23の打込部23Bが、上部にある固定針27を上方に強く押し出して、開口部20Bから固定針27を防湿シートS及び天井Cに打ち込むことができる。
【0026】
なお、シート貼合装置1では、ローラー10を天井Cに沿って回転させると、ローラー10の回転に連動するピニオン21の一定の回転数毎に、上記のタッカー20による固定針27の打込みが繰り返される。
【0027】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、シート貼合装置1を用いて防湿シートSを天井Cに貼る作業について説明する。
まず、
図5に示すように、作業者Uは、シート貼合装置1の棒部材30の下端(把持部30A)を把持し、天井Cの端に、ローラー10に巻き付いた防湿シートSの端部を合わせる。なお、天井Cの端に貼り合わせる防湿シートSの端部については、両面テープやシート貼合装置1とは別体のタッカーにより天井Cに留めることとしてもよい。
作業者Uは、棒部材30を鉛直方向に立てて保持し、タッカー20による固定針27の打込み方向が天井Cに垂直となるようにする。
【0028】
次に、作業者Uは、
図6に示すように、棒部材30を鉛直方向に立てた状態で保持したまま、防湿シートSを貼り合わせる方向に向けて移動する。
これにより、シート貼合装置1のローラー10からは天井Cに沿って防湿シートSが引き出されると共に、シート貼合装置1のタッカー20は、ローラー10の回転に連動するピニオン21の一定の回転数毎に天井Cに向けて固定針27を打ち込むこととなる。これにより、天井Cには防湿シートSが貼り付けられる。
【0029】
[第2の実施形態]
次に、
図7乃至
図9を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係るシート貼合装置1について説明する。
図2乃至
図4では、ローラー10から防湿シートSが天井Cに沿って引き出され、天井Cに向けて固定針を打ち込むこととする。
【0030】
なお、第2の実施形態に係るシート貼合装置1に備えられるタッカー120の構成は、第1の実施形態に係るシート貼合装置1に備えられるタッカー20と相違し、他の点については同様のため、以下ではタッカー120の構成を中心に説明し、共通点についての説明は省略する。
【0031】
図7に示されるように、タッカー120は、ケース120A、それぞれケース120Aに収められたギア121、ギア122、カム123、当接部124、可動部125、弾性体126、弾性体25、仕切部26、固定針27、及び支持板28を主な構成要素とする。
なお、弾性体25、仕切部26、固定針27、支持板28に基づく固定針27の収容、送り出し機構は第1の実施形態のタッカー20と同様であるため説明を省略する。
【0032】
ギア121は、ケース120Aから一部露出し、露出部分がギア3と噛み合っている。また、ギア121は、ギア122と噛み合っており、ギア122にはギア122と回転軸を同一とするカム123が取り付けられており、ギア122の回転に連動してカム123が回転するようになっている。
【0033】
カム123は、中心軸からの外周までの長さが各部で異なっている。カム123では、最小の径からと最大の径までは径が徐々に大きくなっているものの、最大の径の部分と最小の径の部分とは非連続的に接続されている。すなわち、カム123には、最小の径と、最大の径の部分を段差構造で接続した段差部123Aが設けられている。
【0034】
当接部124は、可動部125の内部に収容され、カム123と当接する部材である。また、当接部124は、可動部125の上部と弾性体126により連結されている。なお、弾性体126は金属製のバネとしてよい。
【0035】
可動部125は、内部にカム123、当接部124及び弾性体126を収容し、カム123の回転に応じて上下に移動(直線運動)する部材である。
図7は、可動部125が最上位置にある場合を示しており、この場合には、カム123の段差部123Aと、可動部125の段差部125Bとが対向する位置にあり、段差部123Aの凹みに、段差部125Bの角が嵌った状態となっている。
【0036】
また、可動部125の上端には、固定針27を打ち込む打込部125Aが設けられている。なお、打込部125Aの上方には開口部120Bが設けられており、打込部125Aによる打込みにより上方に打ち出される固定針27が、開口部120Bを通じて防湿シートS側に飛び出すようになっている。
【0037】
次に、ローラー10の回転に伴って、タッカー120が固定針27を防湿シートSに対して打ち込む際の動作について説明する。
【0038】
まず、ローラー10から防湿シートSが引き出される方向に回転すると、その回転に連動してギア2が時計回りに回転する。これにより、ギア2と噛み合うギア3が反時計回りに回転し、更にギア3と噛み合うギア121が時計回りに回転する。
次に、ギア121と噛み合うギア122が反時計回りに回転し、その結果、ギア122に取り付けられたカム123が反時計回りに回転して、段差部125Bと当接するカム123の外周の位置が徐々に変化する。すなわち、カム123と段差部125Bが当接する外周の径が徐々に大きくなることで、可動部125が下向きに徐々に押し下げられることとなる。
一方で、当接部124は、カム123の上部と当接しているため、カム123により位置が規制されており、可動部125と当接部124の距離が徐々に近接することとなる。すなわち、カム123の回転に伴い、可動部125が下に移動し、それにより可動部125と当接部124の距離が縮まって弾性体126が圧縮される。
【0039】
図8には、カム123が一回転する直前の状態を示した。すなわち、カム123の径が最大の部分が段差部125Bと当接して、可動部125が下限まで押し下げられた状態となっている。
ここでギア122が反時計回りの回転を継続し、カム123の径が最大の部分と段差部125Bとの当接が外れると、弾性体126の圧縮が開放されて、弾性体126の復元力により可動部125が上方に向けて押し出される。
この結果、
図9に示されるように、可動部125の打込部125Aが、上部にある固定針27を上方に強く押し出して、開口部120Bから固定針27を防湿シートS及び天井Cに打ち込むことができる。
【0040】
なお、第2の実施形態に係るシート貼合装置1においても、ローラー10を天井Cに沿って回転させると、ローラー10の回転に連動するギア122の一定の回転数毎に、上記のタッカー120による固定針27の打込みが繰り返される。
なお、第2の実施形態に係るシート貼合装置1についても第1の実施形態に係るシート貼合装置1と使用方法は同一であり、使用方法の説明については省略する。
【0041】
以上説明した第1及び第2の実施形態に係るシート貼合装置1によれば、防湿シートSを貼り合わせる面に沿って防湿シートSを巻回したローラー10を回転させることで、タッカー20が防湿シートSトに対して固定針27を打ち込むことができる。このように、ローラー10の回転により引き出された防湿シートSに対しては、ローラー10の回転に連動して自動で固定針27が打ち込まれるようになるため、防湿シートSを貼る作業の負荷を軽減できる。
【0042】
また、第1及び第2の実施形態に係るシート貼合装置1によれば、一端にローラー10とタッカー20が取り付けられた棒部材30の他端を把持した状態で防湿シートSを貼る作業を実施できる。これにより、作業者と離れた箇所に対しても防湿シートSを容易に貼ることができる。
【0043】
また、第1及び第2の実施形態に係るシート貼合装置1によれば、棒部材30の延出方向と、タッカー20による固定針27の打込み方向が同じ向きであることで、天井に防湿シートSを貼る作業が容易となる。
【0044】
また、第1の実施形態に係るシート貼合装置1によれば、ラックアンドピニオンを用いて、ローラー10の回転を直線運動に変換する機構を実現することができる。また、ピニオンの一部に歯を設けない機構を採用したことにより、弾性体24の圧縮をローラー10の一定の回転数毎に開放することができる。これにより、ラックアンドピニオンを用いた簡単な機構により、ローラー10の回転力を利用してタッカー20により固定針を防湿シートSに打込むことができる。
【0045】
また、第2の実施形態に係るシート貼合装置1によれば、カム機構を用いて、ローラー10の回転を直線運動に変換する機構を実現することができる。また、カム123と可動部125の押し下げ量が瞬時に切り替わる機構を採用したことにより、弾性体126の圧縮をローラー10の一定の回転数毎に開放することができる。これにより、カムを用いた簡単な機構により、ローラー10の回転力を利用してタッカー20により固定針を防湿シートSに打込むことができる。
【0046】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、シート貼合装置1は、天井Cだけでなく、壁面にシートを貼る作業に対しても適用することができる。この際、支持部材32の取り付け角度を変更させて、タッカー20が壁面に直交する向きとなるようにしてもよい。
【0047】
また、上記の実施形態では、防湿シートSを貼る作業についてシート貼合装置1を適用した例について説明したが、防湿シートに限らず他のシートについてもシート貼合装置1を利用することができる。
【0048】
[付記]
本発明の代表的な態様は以下の通りである。
【0049】
本発明に係るシート貼合装置は、シートを被貼合体に貼合するためのシート貼合装置であって、前記シートが巻回されたローラーと、前記ローラーの回転に応じて前記被貼合体に沿って引き出された前記シートに固定針を打ち込むタッカーと、を備え、前記タッカーは、前記ローラーの回転に連動して回転する回転部と、前記回転部の回転運動を変換した直線運動により移動する可動部と、前記可動部と連結し、前記可動部の移動に応じて圧縮される弾性体と、前記回転部の一定の回転数毎に、圧縮した状態から開放される前記弾性体の復元力を用いて、前記シートと前記被貼合体に前記固定針を打ち込む打込部と、を備える。
上記のシート貼合装置によれば、被貼合体に沿ってシートを巻回したローラーを回転させることで、タッカーが被貼合体とシートに対して固定針を打ち込むことができる。これにより、シートを被貼合体に貼る作業の負荷を軽減できる。
【0050】
また、上記のシート貼合装置において、一端が作業者により把持され、他端に前記ローラーと前記タッカーとが取り付けられた一対の棒部材を備えることとしてもよい。
こうすることで、棒部材を把持してシートの貼合作業を行うことができる。これにより、作業者と離れた箇所にシートを貼る作業が容易となる。
【0051】
また、上記のシート貼合装置において、前記棒部材の延出方向と、前記打込部による前記固定針の打ち込み方向とが同じ向きであることとしてもよい。
こうすることで、天井面にシートを貼る作業が容易となる。
【0052】
また、上記のシート貼合装置において、前記回転部は、歯を設けた第1部分と、歯を設けない第2部分を有するピニオンであり、前記可動部は、前記ピニオンの前記第1部分と噛み合うラックであり、前記弾性体は、前記ピニオンの回転に応じて前記第2部分と前記ラックが対向した際に、前記ピニオンと前記ラックの噛み合いが解消されることにより圧縮した状態から開放され、前記打込部は、前記可動部の端部に設けられることとしてもよい。
こうすることで、簡単な機構により、ローラーの回転力を利用してタッカーの固定針をシートに打込むことができる。
【0053】
また、上記のシート貼合装置において、前記タッカーは、前記回転部と共に回転し、最小の径と最大の径とが非連続的に接続されたカムを備え、前記可動部は、前記カムと当接し、前記カムの当接位置に応じて移動し、前記弾性体は、前記カムと前記可動部とが前記最大の径で当接した状態から、前記最小の径で当接した状態に瞬時に切り替わることにより圧縮した状態から開放され、前記打込部は、前記可動部の端部に設けられることとしてもよい。
こうすることで、簡単な機構により、ローラーの回転力を利用してタッカーの固定針をシートに打込むことができる。