特許第6730902号(P6730902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6730902
(24)【登録日】2020年7月7日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】多気筒エンジン冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20200716BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   F01P7/16 505Z
   F01P3/20 J
   F01P7/16 504D
   F01P7/16 A
   F01P7/16 502L
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-193441(P2016-193441)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-53868(P2018-53868A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨士 啓
(72)【発明者】
【氏名】田村 芳規
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】仁科 宏健
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−159665(JP,A)
【文献】 特開2011−021495(JP,A)
【文献】 特開2016−132986(JP,A)
【文献】 特開昭60−125716(JP,A)
【文献】 特開平05−272401(JP,A)
【文献】 特開2016−217177(JP,A)
【文献】 特開2014−098334(JP,A)
【文献】 特表2006−528297(JP,A)
【文献】 特開2004−225556(JP,A)
【文献】 特開平05−033646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダを有するエンジン本体を冷却する多気筒エンジン冷却装置であって、
前記エンジン本体において、前記シリンダ毎に独立して、前記シリンダの吸気側から排気側へ向かう方向に沿って設けられる冷却路を含む冷却水の循環経路と、
前記冷却路での冷却水の流れ方向を、排気側から吸気側へ向かう順方向とその逆方向との間で切り替える制御部と、
を有する多気筒エンジン冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、
車両の走行状態、またはエンジンの状態に応じて冷却水の流れ方向を切り替える、
請求項1記載の多気筒エンジン冷却装置。
【請求項3】
逆方向における前記循環経路の下流側に設けられ、前記エンジン本体を通過することにより暖められた冷却水から熱を回収する熱交換器、を有する、
請求項1または2記載の多気筒エンジン冷却装置。
【請求項4】
前記熱交換器の温度または前記熱交換器を流れた後の冷却水の温度を検出する温度センサ、を有し、
前記制御部は、
前記熱交換器が熱を必要とする場合、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、
前記熱交換器が所定の高い温度を超えた場合には、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、
請求項3記載の多気筒エンジン冷却装置。
【請求項5】
前記冷却路の温度または前記冷却路を流れた後の前記冷却水の温度を検出する温度センサ、を有し、
前記制御部は、
前記冷却路の温度または前記冷却路を流れた後の前記冷却水の温度が低い場合、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、
該温度が所定の暖気温度を超えた場合には、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、
請求項1から4のいずれか一項記載の多気筒エンジン冷却装置。
【請求項6】
前記エンジン本体を始動してからの経過期間を計測するタイマ、を有し、
前記制御部は、
前記タイマが前記経過期間を計測するまでは、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、
前記経過期間を計測した後は、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、
請求項1から5のいずれか一項記載の多気筒エンジン冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンを冷却する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒エンジンは、複数のシリンダが形成されたエンジン本体を有する。そして、たとえば自動車といった車両において動力源として用いられる。多気筒エンジンでは、シリンダに燃料および空気を供給し、この混合気を圧縮燃焼させることによりピストンを押し下げ、動力を得る。シリンダに供給する燃料(または混合気)の量を増減することにより、エンジン出力を増減することができる。
ところで、近年、燃費性能の向上などを目的として、多気筒エンジンにおいて、複数のシリンダの中の一部を休止させて動作させる気筒停止技術が研究されている(特許文献1)。
また、特許文献1では、複数のシリンダを、休止可能気筒と連続作動気筒とに分けて、休止している休止可能気筒に対して冷却水を循環させないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−087758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように予め複数のシリンダを休止可能気筒と連続作動気筒とに分け、休止可能気筒のみを必要に応じて停止させたとしても、エンジンの熱の利用効率を向上させることにはならない。
このように一部のシリンダを休止させることができるような複数のシリンダを有する多気筒エンジンの冷却装置では、エンジンの熱の利用効率を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る多気筒エンジン冷却装置は、複数のシリンダを有するエンジン本体を冷却する多気筒エンジン冷却装置であって、前記エンジン本体において、前記シリンダ毎に独立して、前記シリンダの吸気側から排気側へ向かう方向に沿って設けられる冷却路を含む冷却水の循環経路と、前記冷却路での冷却水の流れ方向を、排気側から吸気側へ向かう順方向とその逆方向との間で切り替える制御部と、を有する。
【0006】
好適には、前記制御部は、車両の走行状態、またはエンジンの状態に応じて冷却水の流れ方向を切り替える、とよい。
【0007】
好適には、逆方向における前記循環経路の下流側に設けられ、前記エンジン本体を通過することにより暖められた冷却水から熱を回収する熱交換器、を有する、とよい。
【0008】
好適には、前記熱交換器の温度または前記熱交換器を流れた後の冷却水の温度を検出する温度センサ、を有し、前記制御部は、前記熱交換器が熱を必要とする場合、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、前記熱交換器が所定の高い温度を超えた場合には、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、とよい。
【0009】
好適には、前記冷却路の温度または前記冷却路を流れた後の前記冷却水の温度を検出する温度センサ、を有し、前記制御部は、前記冷却路の温度または前記冷却路を流れた後の前記冷却水の温度が低い場合、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、該温度が所定の暖気温度を超えた場合には、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、とよい。
【0010】
好適には、前記エンジン本体を始動してからの経過期間を計測するタイマ、を有し、前記制御部は、前記タイマが前記経過期間を計測するまでは、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記順方向に切り替え、前記経過期間を計測した後は、前記冷却路での冷却水の流れ方向を前記逆方向に切り替える、とよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、複数のシリンダを有するエンジン本体において、冷却水の循環経路を構成する冷却路が、シリンダ毎に独立して、シリンダの吸気側から排気側へ向かう方向に沿って設けられる。そして、制御部は、冷却路での冷却水の流れ方向を、排気側から吸気側へ向かう順方向と、その逆方向との間で切り替える。よって、たとえばエンジン冷却を優先する場合には、制御部は、順方向へ制御することにより、冷たい冷却水で排熱側である排気側を効率よく冷却することができる。しかも、逆方向へ制御することにより、循環経路から、排熱側で最大に暖められた冷却水を排出させることができる。このエンジン本体の排熱側から排出される冷却水を用いることで、エンジンの熱の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置を用いた自動車の説明図である。
図2図2は、図1の多気筒エンジンの模式的な縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置の構成図である。
図4図4は、多気筒エンジンの排熱の利用効率を向上させる一般的な制御内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20を用いた自動車1の説明図である。自動車1は、車両の一例である。
【0015】
図1の自動車1は、車体2を有する。車体2の車幅方向両側には、車輪3が配置される。また、車体2の前部には、多気筒エンジン4、ラジエタ21、などが配置される。
自動車1は、乗員室のシート6に着座した運転手による手動運転操作により、またはナビゲーション装置51の生成経路などに基づく自動運転装置52による自動運転制御により走行する。また、手動運手中には、自動運転装置52は、運転支援制御を実施する。
【0016】
図2は、図1の多気筒エンジン4の模式的な縦断面図である。
【0017】
図2の多気筒エンジン4は、エンジン本体11、エンジン本体11に一列に並べて形成される4つのシリンダ12、各シリンダ12内に配置される4つのピストン13、4つのフライホイール14を有する出力軸15、各ピストン13とフライホイール14とを連結する4つのコンロッド16、を有する。また、各シリンダ12の頭部の燃焼室には、インジェクタ17が配置される。各シリンダ12では、インジェクタ17が噴射した燃料と空気との混合気をピストン13の上昇で圧縮し、図示外のプラグで燃焼させ、燃焼気体の圧力によりピストン13を押し下げる。このピストン13を押し下げる力は、コンロッド16およびフライホイール14を通じて出力軸15を回転させる。そして、基本的には、インジェクタ17から噴射する燃料の量を増やすと出力軸15の回転トルクおよび回転速度が上昇し、減らすと出力軸15の回転トルクおよび回転速度が降下する。
【0018】
エンジン制御部18は、インジェクタ17から噴射する燃料の量を制御することにより、エンジン出力を制御する。
また、エンジン制御部18は、4つのインジェクタ17から同じ量の燃料を噴射させるのではなく、4つのインジェクタ17から異なる量の燃料を噴射させることもできる。具体的にはたとえば、4つのインジェクタ17の一部から燃料を噴射させるとともに、残りのインジェクタ17からの燃料噴射を休止させる。このように複数のシリンダ12の一部を休止状態にすることにより、燃料の総噴出量を抑えて、燃費を向上させることができる。燃料を噴出しないインジェクタ17が設けられたシリンダ12は、燃焼をしない休止状態となる。これに対し、燃料が噴出されるインジェクタ17が設けられたシリンダ12は、燃焼をする連続稼働状態となる。
しかしながら、このように予め複数のシリンダ12を休止可能気筒と連続作動気筒とに分け、休止可能気筒のみを必要に応じて停止させたとしても、エンジンの熱の利用効率を向上させることにはならない。
このように一部のシリンダ12を休止させることができる多気筒エンジン4では、エンジンの熱の利用効率を向上させることが求められている。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジン冷却装置20の構成図である。
【0020】
図3の多気筒エンジン冷却装置20は、複数のシリンダ12が形成されたエンジン本体11を冷却するものであり、ラジエタ21、ポンプ22、複数の個別バルブ23、複数の個別冷却路24、熱交換器25、冷却系制御部26、を有する。
【0021】
複数の個別冷却路24は、エンジン本体11においてシリンダ12毎に独立して分けて設けられる。各個別冷却路24は、エンジン本体11においてシリンダ12の吸気側から排気側へ向かう方向に沿って設けられる。
【0022】
複数の個別バルブ23は、複数の個別冷却路24と1対1対応で接続される。個別バルブ23は、個別冷却路24への冷却水の流入を全開と全閉との間で切り替えることができる。
【0023】
ラジエタ21は、図1に示すように、車体2の最前部に配置される。ラジエタ21は、外気により冷却水を冷却する。気化している冷却水は、ラジエタ21において液化する。
【0024】
熱交換器25は、複数の個別冷却路24を通過した冷却水が供給され、冷却水の熱を、たとえば空調装置の空気へ交換したり、バッテリ等の加熱媒体へ交換したりする。これにより、エンジン本体11を通過することにより暖められた冷却水から熱を回収することができる。
【0025】
ラジエタ21、ポンプ22、複数の個別バルブ23、複数の個別冷却路24、および熱交換器25は、冷却管によりその順番で接続される。冷却水は、ポンプ22の動作により、その循環経路内を循環する。
液化している冷却水は、ポンプ22の動力により、ラジエタ21から複数の個別バルブ23へ供給される。複数の個別バルブ23が開いている場合、冷却水は、個別冷却路24へ供給される。エンジン本体11のシリンダ12は、液化している冷却水により冷却される。
エンジン本体11を冷却した冷却水は、エンジンの熱を吸収して気化する。気化した冷却水は、循環経路を通じて熱交換器25へ供給される。気化した冷却水の熱の一部は、熱交換器25により回収して利用される。熱交換器25を通過した冷却水は、ラジエタ21へ供給される。これにより、冷却水は再び液化する。
【0026】
また、図3の多気筒エンジン冷却装置20は、複数の個別冷却路24での冷却水の流れ方向を、排気側から吸気側へ向かう順方向とその逆方向との間で切り替えるために、第一切替バルブ31、第二切替バルブ32、第三切替バルブ33、第一切替路34、第二切替路35、を有する。
【0027】
第一切替バルブ31は、ポンプ22と複数の個別冷却路24との間に設けられる。また、第一切替バルブ31には、第一切替路34の一端が接続される。第一切替バルブ31は、ポンプ22から供給される冷却水を、複数の個別冷却路24へ供給する状態と、第一切替路34へ供給する状態との間で切り替える。
【0028】
第二切替バルブ32は、第一切替バルブ31と複数の個別冷却路24との間に設けられる。また、第二切替バルブ32には、第二切替路35の一端が接続される。第二切替バルブ32は、ポンプ22から供給される冷却水を複数の個別冷却路24へ供給する状態と、複数の個別冷却路24から供給される冷却水を第二切替路35へ供給する状態との間で切り替える。
【0029】
第三切替バルブ33は、複数の個別冷却路24と熱交換器25との間に設けられる。また、第三切替バルブ33と複数の個別冷却路24との間には、第一切替路34の他端が接続される。第三切替バルブ33と熱交換器25との間には、第二切替路35の他端が接続される。第三切替バルブ33は、複数の個別冷却路24から供給される冷却水を熱交換器25へ供給する状態と、これらの間を遮断して第一切替路34の冷却水を複数の個別冷却路24へ供給するとともに第二切替路35の冷却水を熱交換器25へ供給する状態との間で切り替える。
【0030】
冷却系制御部26は、エンジン制御部18、ナビゲーション装置51、自動運転装置52、シリンダ別温度センサ53、冷却路別温度センサ54、熱交換器温度センサ55、タイマ56が接続される。そして、冷却系制御部26は、これら各部からの情報に基づいて、エンジン本体11の冷却と、エンジンの排熱の利用効率とを制御する。
【0031】
シリンダ別温度センサ53は、多気筒エンジン4のエンジン本体11において、各シリンダ12の近くに配置される。これにより、シリンダ別温度センサ53は、シリンダ12毎の温度を検出する。
【0032】
冷却路別温度センサ54は、個別冷却路24に設けられる。これにより、冷却路別温度センサ54は、個別冷却路24の温度または個別冷却路24を流れた後の冷却水の温度を検出する。
【0033】
熱交換器温度センサ55は、熱交換器25に設けられる。これにより、熱交換器温度センサ55は、熱交換器25のたとえば触媒の温度または熱交換器25を流れた後の冷却水の温度を検出する。
【0034】
タイマ56は、たとえばエンジン本体11を始動してからの経過期間などの時間を計測する。
【0035】
図4は、多気筒エンジン4の排熱の利用効率を向上させる一般的な制御内容を説明する図である。
【0036】
図4(A)は、複数の個別冷却路24において、冷却水は、エンジン本体11のシリンダ12の排気側から吸気側へ流れる。冷却系制御部26が、第一切替バルブ31を、ポンプ22から供給される冷却水を複数の個別冷却路24へ供給する状態に制御し、第二切替バルブ32を、ポンプ22から供給される冷却水を複数の個別冷却路24へ供給する状態に制御し、第三切替バルブ33を、複数の個別冷却路24から供給される冷却水を熱交換器25へ供給する状態に制御することにより、冷却水を、エンジン本体11のシリンダ12の排気側から吸気側へ流すことができる。
【0037】
図4(B)は、複数の個別冷却路24において、冷却水は、エンジン本体11のシリンダ12の吸気側から排気側へ流れる。冷却系制御部26が、第一切替バルブ31を、ポンプ22から供給される冷却水を第一切替路34へ供給する状態に制御し、第二切替バルブ32を、複数の個別冷却路24から供給される冷却水を第二切替路35へ供給する状態に制御し、第三切替バルブ33を、遮断状態として第一切替路34の冷却水を複数の個別冷却路24へ供給するとともに第二切替路35の冷却水を熱交換器25へ供給する状態に制御することにより、冷却水を、エンジン本体11のシリンダ12の吸気側から排気側へ流すことができる。
【0038】
エンジンの排熱の利用効率を向上させる場合、冷却系制御部26は、個別冷却路24での冷却水の流れ方向を、順方向と逆方向との間で切り替える。
【0039】
たとえば、冷却系制御部26は、熱交換器25が熱を必要とする場合、熱交換器温度センサ55により検出される温度が所定の高い温度に到達するまで、図4(A)に示すように冷却路での冷却水の流れ方向を順方向に切り替え、熱交換器25が所定の高い温度を超えた場合には、図4(B)に示すように冷却路での冷却水の流れ方向を逆方向に切り替える。
これにより、熱交換器25が所定の高い温度を超えた後は、熱交換器25に対して、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水を供給して、熱交換器25を効率よく加熱することができる。また、一部のシリンダ12が休止状態にあっても、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水により、交換器を効率よく加熱することができる。
【0040】
また、冷却系制御部26は、冷却路別温度センサ54により検出される冷却路の温度または冷却路を流れた後の冷却水の温度が低い場合、該温度が所定の暖気温度に到達するまで、冷却路での冷却水の流れ方向を順方向に切り替え、該温度が所定の暖気温度を超えた場合には、冷却路での冷却水の流れ方向を逆方向に切り替える。
これにより、冷却路または冷却路を流れた後の冷却水が所定の高い温度を超えた後は、熱交換器25に対して、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水を供給することができる。エンジンの熱の利用効率を向上させることができる。また、一部のシリンダ12が休止状態にあっても、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水により、交換器を効率よく加熱することができる。
【0041】
また、冷却系制御部26は、タイマ56が経過期間を計測するまでは、冷却路での冷却水の流れ方向を順方向に切り替え、経過期間を計測した後は、冷却路での冷却水の流れ方向を逆方向に切り替える、
これにより、エンジン本体11の始動後に経過期間が経過すると、エンジン本体11から高い温度の冷却水を排出し、エンジンの熱の利用効率を向上させることができる。また、一部のシリンダ12が休止状態にあっても、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水により、交換器を効率よく加熱することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態では、複数のシリンダ12を有するエンジン本体11において、冷却水の循環経路を構成する冷却路が、シリンダ12の吸気側から排気側へ向かう方向に沿って設けられる。そして、冷却系制御部26は、冷却路での冷却水の流れ方向を、排気側から吸気側へ向かう順方向と、その逆方向との間で切り替える。よって、たとえばエンジン冷却を優先する場合には、冷却系制御部26は、順方向へ制御することにより、冷たい冷却水で排熱側である排気側を効率よく冷却することができる。しかも、逆方向へ制御することにより、循環経路から、排熱側で最大に暖められた冷却水を排出させることができる。このエンジン本体11の排熱側から排出される冷却水を用いることで、エンジンの熱の利用効率を向上させることができる。
【0043】
たとえば、逆方向における循環経路の下流側に熱交換器25を設けることにより、エンジン本体11の排熱側から排出される高い温度の冷却水を用いて、熱交換器25を効率よく加熱することができる。
【0044】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…自動車(車両)
2…車体
3…車輪
4…多気筒エンジン
6…シート
11…エンジン本体
12…シリンダ
13…ピストン
14…フライホイール
15…出力軸
16…コンロッド
17…インジェクタ
18…エンジン制御部
20…多気筒エンジン冷却装置
21…ラジエタ
22…ポンプ
23…個別バルブ
24…個別冷却路
25…熱交換器
26…冷却系制御部
31…第一切替バルブ
32…第二切替バルブ
33…第三切替バルブ
34…第一切替路
35…第二切替路
51…ナビゲーション装置
52…自動運転装置
53…シリンダ別温度センサ
54…冷却路別温度センサ
55…熱交換器温度センサ
56…タイマ
図1
図2
図3
図4