(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不織布を、温度120℃中でMD/CD二軸両方向へ同時に、面積倍率6.25倍に延伸した延伸シートの2.5cm角目付に関して、R/Aveの値が1.0以内である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生分解性不織布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の生分解性不織布は、熱環境下での伸度及び寸法変化率を適切にし、高い成型加工特性を発現することができる。
本実施形態の生分解性不織布は、成型加工特性を有する。従来、成型加工特性を有する生分解性不織布の製造においては、紡糸直後の糸の特性に着目し、伸度を発現させ、不織布の熱圧着加工等の問題を改善するものであった。これに反し、本実施形態の生分解性不織布では、成型に用いる不織布そのものの特性、及び成型体そのものの特性に着目し、高い成型加工特性を有する不織布、及び熱安定性に優れた抽出容器(成型体)を得ている。
【0012】
[ポリ乳酸系重合体]
本実施形態の生分解性不織布の繊維を構成するポリ乳酸系重合体(以下、PLAともいう。)としては、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、及びD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる重合体、又は該重合体の2種以上のブレンド体が挙げられる。ポリ乳酸重合体のD/L比は、紡糸性、不織布特性を阻害しない範囲で設定できるが、全ポリ乳酸重量中のD体比率は、好ましくは0〜15%、より好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.1〜6%である。D体比率がこれらの範囲内であると、紡糸性がよく、安定して不織布を得ることができ、また、融点、結晶性等が適当な範囲となり、所望の特性の不織布を得やすい。
本実施形態のポリ乳酸系重合体のMFRは、20〜120g/10分であることが好ましく、より好ましくは30〜70g/10分である。MFRが20g/10分以上であれば、溶融粘性が適切であり、紡糸工程において繊維の細化が起こり易いため紡糸性が良好となる。他方、MFRが120g/10分以下であると、溶融粘性が適切なため、紡糸工程において単糸切れが発生することが少なく、紡糸性が良好となる。
【0013】
[脂肪族ポリエステル共重合体]
脂肪族ポリエステル共重合体としては、例えば、ポリ(α-ヒドロキシ酸)又はこれらを主たる繰り返し単位要素とする共重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)の如きポリ(ω-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネート、ポリ-3-ヒドロキシヘプタノエート、ポリ-3-ヒドロキシオクタノエートの如きポリ(β-ポリヒドロキシアルカノエート)、あるいはこれらを構成する繰り返し単位要素とポリ-3-ヒドロキシバリレートやポリ-4-ヒドロキシブチレートを構成する繰り返し単位要素との共重合体が挙げられる。また、グリコールとジカルボン酸との縮重合体からなるポリアルキレンジカルボキシレート、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレート、又はこれらを構成する繰り返し単位要素とするポリアルキレンジカルボキシレート共重合体が挙げられる。さらに、これらの生分解性を有する個々の重合体を複数種選択し、これらをブレンドしたものが挙げられる。脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸との相溶性、紡糸性の観点から、ポリブチレンサクシネート(以下、PBSともいう。)が好ましい。
【0014】
脂肪族エステル共重合体のMFRは、紡糸工程の延伸性が良好となる100g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは20〜80g/10分、さらに好ましくは30〜70g/10分である。また、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル共重合体との溶融流量比は、0.2〜1.5の範囲であることが必要である。すなわち、0.2≦[脂肪族ポリエステル共重合体の溶融流量/ポリ乳酸系重合体の溶融流量]≦1.5であり、好ましくは0.3〜1.4である。溶融流量比がこれらの範囲内であると紡糸性が良好であり、かつ、脂肪族ポリエステル共重合体の分散性が良好となるために安定した熱接着性が得られる。
【0015】
前記繊維は、前記ポリ乳酸系重合体に加え、脂肪族エステル共重合体を、全樹脂重量を基準として、0.5〜30重量%さらに含むものであることができる。脂肪族ポリエステル共重合体の添加量は、樹脂の総量を100重量%としたとき、0.5〜30重量%であり、好ましくは3〜27重量%、より好ましくは5〜25重量%である。添加量が0.5重量%以上であれば、不織布の結晶性を調整しやすく、熱特性が良好となる。他方、添加量が30重量%以下であれば結晶化が速くなり、紡糸時に繊維同士が又は繊維が設備に接着密着することがないため、安定生産が可能となる。
【0016】
本実施形態の不織布の製造方法は限定されないが、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法、カード法、抄造法などで得られる。不織布の接着方法としては、エンボス加工、サーマルボンド、柱状流交絡、機械交絡、ニードルパンチ等を用いることができる。効率よく生産でき、成型した後の毛羽立ち等も抑制できることから、長繊維不織布、更にはスパンボンド法にて製造することが好ましい。
【0017】
スパンボンド法を用いる場合、樹脂を加熱溶融して紡糸口金から吐出させ、得られた紡出糸条を公知の冷却装置を用いて冷却し、エアーサッカー等の吸引装置にて牽引細化する。引き続き、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、コンベア上に堆積させてウェブとする。次いで、このコンベア上に形成されたウェブに加熱されたエンボスロール等の部分熱圧着装置を用いて部分的に熱圧着を施すことにより、長繊維スパンボンド不織布が得られる。
【0018】
スパンボンド法を用いる場合、特に限定されないが、ウェブの均一性を向上させるために、例えば、特開平11−131355に開示されているようなコロナ設備等により繊維を帯電させる方法や、平板状の分散板等のような気流を制御する装置を用いてエジェクターの噴出し部分の気流の速度分布を調整する等をして繊維を開繊させた後にウェブを吹き付け、ウェブの飛散を抑制しながら捕集面に積層する方法を用いることで更に好ましい製法となる。
スパンボンド法で得られる不織布は、布強度が強く、かつ、ボンディング部の破損による短繊維の脱落がない等の物性上の特徴を有しており、また、低コストで生産性が高いため、衛生、土木、建築、農業・園芸、生活資材を中心に広範な用途で使用されている。
【0019】
本実施形態の生分解性不織布は、熱機械分析による80℃〜140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下であることを特徴とする。
本実施形態の生分解性不織布は、熱機械分析による80℃〜140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下であり、好ましくは±2%以下である。寸法変化率が高すぎない場合、成型温度付近において、適度な柔軟性があり、複雑な形状の成型にも不織布が追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、寸法変化率がマイナス4%を下回る場合、すなわち、収縮が大きすぎる場合、成型時の予熱による熱や金型の放射熱により布が安定せず、得られる成型体の形状が悪く、容量の大きな成型体を得ることができない。他方、寸法変化率がプラス4%を超える場合、すなわち、伸びが大きすぎる場合、成型時の予熱による熱や金型の放射熱により布が安定せず、得られた成型体の形が悪くなる。
【0020】
寸法変化率を範囲内にする具体的な方法としては、例えば、生分解性不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等を調整することによるものであることができる。具体的に、例えば、紡糸速度を速く、雰囲気温度を低く、冷却条件を高めること、高温で熱圧着を行うこと、仮圧着を行った不織布ウェブを高すぎない温度で定長熱セットすること、等により寸法変化が少ない布を得ることができる。
【0021】
本実施形態の生分解性不織布は、120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上であることを特徴とする。
本実施形態の生分解性不織布は、成形加工の際、加熱時伸長性を有することが必要である。そこで、例えば、不織布は低延伸糸からなり、繊維が加熱時に伸びるか、又は不織布の構成繊維がズレを起こすことが必要である。従って、本発明の生分解性不織布の加熱時伸長性は、温度120℃における伸度が50%以上、好ましくは50%〜500%、より好ましくは100%〜400%、さらに好ましくは、180%〜350%である。伸度が範囲内であれば、成型性が良好であり、伸度が大きいほど、成型深さの深い深絞り成型も容易になる。
【0022】
120℃における伸度を範囲内にする具体的な方法としては、例えば、生分解性不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等で調整することよるものであることができる。具体的に、例えば、紡糸時の紡糸速度を高くしすぎず、高すぎない温度で熱圧着を行うこと、紡糸時の雰囲気温度を低くしすぎない状態で不織布ウェブを得て熱圧着を行うこと、等によって、不織布に適度な接着点を持たせつつ高い伸度を有する不織布を得ることができる。
【0023】
本実施形態の生分解性不織布は、タテ引裂き強度を目付で除した値が好ましくは0.002〜0.5N/(g/m
2)であり、より好ましくは0.005〜0.2N/(g/m
2)である。タテ引裂き強度は、繊維の強伸度と繊維同士の接着強度と大きく相関する。タテ引裂き強度が小さすぎる場合、繊維の強度が小さいか、繊維同士の接着が強すぎることがある。他方、タテ引裂き強度が大きすぎる場合、繊維の強伸度が大きいか、繊維同士の接着が弱すぎることがある。引裂き強度に影響する繊維の強度や繊維同士の接着力は、紡糸速度や樹脂温度等の紡糸条件、エンボス加工、カレンダー加工等、熱圧着加工時の加工温度、加工速度、エージング条件等により、適切な範囲とすることができる。
【0024】
タテ引裂き強度を目付で除した値が大きすぎない場合、生分解性不織布を構成する繊維同士が適度に接着されており、成型後も繊維同士が適度に接着性を有するので、成型した後でも繊維が浮きにくく、ケバが生じにくい。さらに、タテ引裂き強度を目付で除した値が大きすぎない場合、適度な剛性を有し、工程張力下でも適度な張りを有し、不織布を工程に通すことが容易となり好適である。他方、タテ引裂き強度を目付で除した値が低すぎない場合、繊維同士が適度に接着しており、繊維強度も低すぎず、生分解性不織布が適度な伸度及び強度を有し、取扱いが容易となる。
また、ヨコ引裂き強度についても、生分解性不織布を構成する繊維同士が適度に接着されている範囲で設定すること、タテ引裂き強度とともに、適度な剛性を有し、不織布を工程に通すことができる範囲で設定することが好ましい。
【0025】
本実施形態の生分解性不織布(不織布からサンプリングした生分解性不織布を構成する長繊維)の複屈折率(すなわち、不織布を構成する長繊維の紡糸直後の複屈折率ではない)は、好ましくは0.002〜0.10であり、より好ましくは0.005〜0.10であり、さらに好ましくは0.010〜0.025である。複屈折率が高すぎない場合、高伸度の生分解性不織布を得ることができ、複屈折率が低すぎない場合、熱環境下での安定性を有することができる。本実施形態の生分解性不織布(不織布からサンプリングした生分解性不織布を構成する繊維)の複屈折率は、生分解性不織布の特性であり、生分解性不織布を構成する熱圧着前、紡糸直後の長繊維の複屈折率は、紡糸性、熱圧着性、不織布の伸度発現、等を阻害しない範囲であれば、特に限定しない。
【0026】
本実施形態の生分解性不織布(不織布からサンプリングした生分解性不織布を構成する繊維)の結晶化度は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜62%、さらに好ましくは38〜57%である。結晶化度が低すぎない場合、成型加工時に成型型から布が外れた際に収縮して成型体の形が歪にならず、他方、結晶化度が高すぎない場合、成型加工時に破袋せずに加工できる。
【0027】
本実施形態の不織布の目付は、20〜300g/m
2であり、好ましくは20〜250g/m
2である。目付が20g/m
2以上であれば、強度が十分となり、他方、300g/m
2以下であれば、成型加工時に成型加工設備に大きな負担をかけずに加工できる。
【0028】
本実施形態の生分解性不織布(不織布からサンプリングした生分解性不織布を構成する繊維)の平均繊維径は、1〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。目付と平均繊維径によって、通液性と内容物保持性を適宜選定でき、平均繊維径が小さすぎない場合、容器として内容物を保持することができ(粉漏れ性が良好であり)、平均繊維径が大きすぎない場合、通液速度が遅すぎない。
【0029】
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維の形状は、特に限定しないが、丸型、扁平型、C型、Y型、V型などの異形断面などが用いられ、好ましくは丸型断面であり、さらに、海島構造や芯鞘構造、割繊構造であってもよい。
【0030】
本実施形態の生分解性不織布の形状としては、例えば、SS、SMS、SMMS、SMSMなどの多層積層不織布の内の一層であってもよい。ここで、Sは、スパンボンド法の長繊維不織布、Mは、メルトブロー法の極細不織布を意味する。また、生分解性不織布を基材として、短繊維不織布層を積層してもよい。
【0031】
本実施形態の生分解性不織布は、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ法、サーマルボンド法、エアーレイ法、柱状流交絡、機械交絡などで得られる。不織布の強度の観点から、スパンボンド法で得られる長繊維不織布であることが好ましい。
【0032】
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維は、少なくともポリ乳酸系重合体を含み、好ましくは、脂肪族ポリエステル共重合体をさらに含む低延伸複合繊維であることができる。ポリ乳酸系重合体繊維と脂肪族ポリエステル共重合体との低延伸複合繊維は、紡糸工程の結晶配向度が低く押さえられており、結晶化度が低く、延伸性が良好であり、高伸度、高延伸が可能である。紡糸速度500〜3000m/分の低紡糸速度で得られた繊維が好ましく用いられ、より好ましくは紡糸速度700〜2700m/分、さらに好ましくは900〜2500m/分が用いられる。一般に、紡糸速度が速い場合、紡糸直後の糸は、結晶性、配向性が高いものとなり、紡糸速度が遅い場合、結晶性が低く、配向性が低いものとなる。
【0033】
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維の製造においては、目的に応じて、不織布を構成する繊維に、他の樹脂、脂肪族ポリエステル共重合体以外の共重合体、難燃剤、無機充填剤、柔軟剤、可塑剤、顔料、耐電防止剤などを、さらに1種又は2種以上添加してもよい。
【0034】
本実施形態の生分解性不織布の製造における熱圧着は、エンボス加工を行ってもよいが、熱延伸性を大きくし易いため、仮熱圧着をした不織布ウェッブの繊維の表面で点接着により一体化されていることが好ましい。仮熱圧着の方法に特に制限はされないが、好ましくは、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いる方法、表面が平坦な一対のフラットロールを用いる方法等が挙げられ、また、ニードルパンチ法やスパンレース法等、不織布を接合させる方法を用いることもできる。
【0035】
点接着により一体化された不織布を得る場合、2段階で仮熱圧着と熱接着を行うことにより、生分解性不織布における繊維結合は、軽度な熱接着に留まり、繊維表面での点状接着が主体となり、仮熱圧着でエンボス柄が付いたとしても、2段階目の面的に抑制された熱接着により、エンボス柄の周辺でミクロに熱収縮が発現し、エンボス柄がはずれるか又は弱くなるとともに、生分解性不織布全体の目付けムラが軽減される。
仮圧着におけるエンボス加工と熱圧着を組みわせる場合、エンボス加工による圧着は、熱延伸時に応力が集中しすぎないため、強すぎないことが好ましい。エンボス加工における圧着面積比率は、特に制限されないが、高頻度で弱い接着であることが好ましい。圧着面積比率は、不織布全面積に対して3〜50%が好ましく、より好ましくは5〜40%である。
【0036】
2段階目の熱接着は、不織布を面的に抑制する熱接着方法であれば、特に制限されないが、好ましくはフェルトカレンダー加工、エアスルー加工を用いる。
また、不織布の熱接着に用いられる一般的な加工方法としてのエンボス加工を行った場合、繊維同士が、熱圧着で強固に圧着されているため、圧着部では、繊維形状は維持されておらず、繊維は潰された形状であり、繊維同士が互いに融着してフィルム状を呈し、エンボス柄を形成している状態である。結晶化が進み過ぎ、フィルム化した部分を含む不織布を熱環境下で延伸しようとした場合は、高い伸度が出にくい場合がある。また、エンボス加工によって作製された不織布を用いた成型体においては、フィルム化した部分を含むため、通液性が必要な用途において通液性が悪くなり、不都合となる場合がある。
【0037】
本実施形態の生分解性不織布を仮接着する場合においては、まず、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、ロール温度25〜100℃、好ましくは35〜80℃の温度にて線圧50〜1000N/cm、好ましくは200〜700N/cmの下で熱接着することにより仮熱圧着された生分解性不織布を得る。次いで、仮熱圧着された生分解性不織布を、フェルトカレンダーロールを用いて、ロール温度50〜160℃、好ましくは80〜150℃の温度にて熱接着することにより、繊維同士の交絡点において繊維の表面が溶融して、互いに点状で接着し、その接着部の存在する頻度を大きくすることができる。さらに、この点状の接着は、通常の熱接着と比べて、弱い接合であるため、小さな応力で、均一に延伸加工ができるので、大きな延伸を伴う熱成形に適する。
【0038】
本実施形態の生分解性不織布を得る方法としては、定長熱セットを行うことが好ましい。紡糸直後の不織布ウェブは、熱圧着の際、張力を加えた状態で熱を加えることで、不織布の表面性が良く、熱伸長性のある不織布を得て、成型加工時も破れ、形がきれいな成型体を得るために好ましい。定長熱セットを行う方法としては、一般的な方法を用いてよく、熱風乾燥、ピンテンター乾燥、熱板、カレンダー加工、フェルトカレンダー加工、エアスルー加工、熱プレス等を用いてよい。定長熱セットを行う温度範囲としては、不織布を構成する樹脂が装置に付着することなく、不織布の繊維が適度に接着された状態を得られる温度であれば、特に限定しないが、好ましくは50℃〜160℃、より好ましくは70℃〜160℃、さらに好ましくは80℃〜150℃である。定長熱セットを行う温度が高すぎない場合、装置に不織布由来の汚れが付きにくく、取扱い性、生産性良く不織布を得ることができる。他方、低すぎない場合、不織布の繊維が適度に接着された状態を得ることができる。
【0039】
従来、熱成型性を有する不織布としては、紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低くすることで熱時伸度を得ていた。しかしながら、紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低い状態とすることは、熱に対する不安定性を残した状態であり、不織布を形成する際、熱圧着の状態を適切にすることが難しかった。例えば、エンボスによる熱圧着を行った場合、エンボス部では結晶部分が多い状態となり、他方、非エンボス部では非結晶部が多い状態となり、熱成型時、エンボス部と非エンボスの境界部やエンボス部が破壊されやすく、熱成型時に破れず、形のきれいな成型体を得ることが難しいことがあった。また、結晶化度、配向度を低く設定する方法としては、紡糸条件を調整することも行われるが、紡糸速度を低くし繊維に延伸がかからないようにした場合、結晶化度、配向度が低い不織布ウェブとなるが、結晶化度、配向度が低い状態で熱圧着を行うと、結晶化が進み過ぎて、成型性に優れる不織布を得ることができないことがあった。したがって、本実施形態においては、不安定な不織布の状態での加工をより安定化させるために、熱圧着、フェルトカレンダー加工、エアスルー加工、エージング、等を行うことが好ましい。
【0040】
従来から、熱成型性を得るための方法としては、特許文献1〜3や特公平01−047581号公報に記載されるように、紡糸時に配向結晶を抑える必要あり、紡速を遅くし、非結晶部を多くもつ構造とすることが行われてきた。しかしながら、非結晶部を多くもつ不織布は、熱の影響を受けやすい状態であり、熱環境下で寸法安定性のないことが多かった。ここで、ポリ乳酸の樹脂特性をポリエステルと比較して考えると、ポリ乳酸は、融点が低く、融点とガラス転移温度との差が小さく、結晶化時間が遅いため、熱成型時に、十分な時間・熱をかける必要がある。しかしながら、不織布の熱安定性を高めるため、エンボス加工等を行おうとすると、収縮を起こし不織布を作製することが難しい状態にあった。それゆえ、寸法安定性のある本実施形態の生分解性不織布は、張力のある状態で熱を加えることができる定長熱セットを行うことが好ましい。
【0041】
さらに、本実施形態においては、成型不織布の熱特性評価として、動的粘弾性の温度依存性評価における貯蔵弾性率及び、損失正接に着目し、このパラメータを最適化することで、成型用不織布としての良好な延展性、耐熱安定性を得るに至った。
延展性に優れる不織布を得るためには、樹脂の非晶部分の運動性や配向を制御することが重要とされてきたため、従来は、紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低くするなどの手法がとられてきた。しかしながら、実際の成型時には、常温での搬送や、予熱時や熱成型による加熱など、温度環境で不織布が使われており、これらの物性値で適性を一義に評価することは難しかった。そこで、温度変化に対する樹脂の剛軟性を評価する動的粘弾性の温度依存評価における貯蔵弾性率、及び損失正接を用いて成型工程での適性を評価し、不織布の製造条件を最適化することで、延展性、熱安定性に優れた不織布を得るに至った。
【0042】
本実施形態の不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価おける、90℃〜150℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に15〜500MPaであり、好ましくは20〜300MPa、より好ましくは20〜200Mpa、特に好ましくは25〜150MPaである。90℃〜150℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を下回る場合、成型時の熱により不織布の機械的強度が低くなりすぎているため、金型の形状や加熱の温度斑などによる延伸斑が発生しやすくなる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を上回る場合、成型時に熱を与えてもなお機械的強度が高いため、金型で延伸した際に布帛が破断しやすくなる。
【0043】
本実施形態の不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価における、10℃〜70℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に200MPaであり、好ましくは250MPa以上、より好ましくは300MPa以上である。10℃〜70℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、成型工程において、不織布が破断や変形をすることなく、良好に不織布を搬送することができる。
【0044】
本実施形態の不織布は、動的粘弾性評価の温度依存性試験における損失正接(tanδ)の極大値は0.5以下であり、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下である。動的粘弾性の温度依存性試験で得られるtanδの極大値の大きさは、分子の自由度を示しており、値が大きい程分子の可動領域が広い。即ち、任意温度でのtanδが1以上となると、その温度での分子の自由度が大きく、布帛が熱的に不安定となり、熱収縮などを誘発する。
【0045】
本実施形態の不織布は、動的粘弾性評価の温度依存性試験における貯蔵弾性率の温度に対する変化率が3〜50MPaであることが好ましく、より好ましくは5〜35MPa、更に好ましくは10〜25MPaである。貯蔵弾性率の温度に対する変化率が上記範囲内であれば、熱成型時に成型型に対する追従性が適度となり、成型斑や破袋が無く成型することができる。貯蔵弾性率の温度に対する変化率が上記範囲より小さい場合、成型時にシートの剛性が高いため成型型への追従性が悪く、シート割れによる破袋が発生する。他方、貯蔵弾性率の温度に対する変化率が上記範囲より大きい場合、成型時の変形に対して追従性が良くなり過ぎ、過延伸による目開きや破袋が発生する。
尚、貯蔵弾性率の温度に対する変化率は動的粘弾性の温度依存性試験を行った際の貯蔵弾性率の変化を温度変化の値で除した下記式:
動的粘弾性の温度依存性試験=-Δ貯蔵弾性率/Δ温度
により算出することができる。
【0046】
特に、成型工程においては、生産性向上を目的として成型を多列で行うため、設備的に列方向での加熱斑等の精度斑が生じやすい。このため、不織布の動的粘弾性の温度依存性評価における貯蔵弾性率、損失正接、貯蔵弾性率の温度に対する変化率を上記記載の範囲内とすることで、成型時の破袋や成型斑の抑制が可能となり、品質的に安定した生産を行うことが可能となる。
【0047】
動的粘弾性評価における貯蔵弾性率、損失正接を上記範囲内にするための具体的な方法に特に制約はないが、発明者らは紡糸して得られた布帛の熱圧着方法、及び熱圧着にて得られた不織布中の繊維の複屈折率を最適な値とすることで、本発明を完成するに至った。具体的な方法としては、例えば、不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等で調整することよるものであることができる。具体的に、例えば、紡糸時の紡糸速度を高くしすぎず、高すぎない温度で熱圧着を行うこと、紡糸時の雰囲気温度を低くしすぎない状態で不織布ウェブを得て熱圧着を行うこと、等によって、不織布に適度な接着点を持たせつつ高い伸度を有する不織布を得ることができる。
【0048】
成型を行う際、不織布は金型により、不織布の流れ方向、幅方向の両軸に同時に延伸される。そこで本発明者らは、熱成型における成型後の均一性を評価する指標として、従来から用いられている単軸方向での引張試験に加え、二軸両軸方向に同時延伸し、目付斑を評価することで不織布の均一成型性を評価した。
【0049】
本実施形態の生分解性不織布は、温度120℃中でMD/CD二軸両方向へ同時に、面積倍率6.25倍に延伸した延伸シートの2.5cm角目付に関して、R/Aveの値が1.0以下であることを特徴とする。本実施形態の生分解性長繊維不織布は、120℃雰囲気中でMD/CDの二軸両方向へ同時に、面積倍率6.25倍に延伸した延伸シートの2.5cm角目付に関して、R/Aveの値が1.0以下であり、好ましくは0.7以下である。R/Aveの値が高すぎない場合、不織布を成形した際の延伸が均一になり、内容粉末の保持性、及び通液性も均一になる。
【0050】
MD/CD二軸延伸シートのR/Aveを範囲内にする具体的な方法としては、例えば、生分解性不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等を調整することによるものであることができる。具体的に、例えば、紡糸速度を遅く、雰囲気温度を高く、冷却条件を低くし、高温で熱圧着を行うこと、仮圧着を行った不織布ウェブを十分に高い温度で定長熱セットすること、等によりMD/CD二軸延伸シートのR/Aveが小さくなるような不織布を得ることができる。
【0051】
本実施形態の生分解性不織布は、熱成形で一体加工して、成形体とすることができる。成形体の形状について特に制限はなく、半円形、円柱形、楕円、三角形、四角形など使用目的に応じて選択することが好ましい。成型に使う元の不織布の面積に対し、より容量の大きな成型体を得たい場合、成型前後の不織布の表面積の増加がより大きくなるような成型金型を適宜選定すればよい。
【0052】
本実施形態の成型不織布の成型方法は熱成型工程を含んでおれば、その方法は特に限定はされないが、熱成型前に予熱工程、熱成型後に容量を維持する保形工程を含んでいてもよい。
予熱工程を熱成型前に含むことで、成型直前の不織布の温度を制御することができ、貯蔵弾性率など不織布の特性値を成型に適した値とすることができる。成型直前の不織布の温度の好ましい範囲は、55〜160℃、更に好ましい範囲は60〜130℃、特に好ましい範囲は70〜120℃である。成型直前の不織布温度は50℃以下となると、貯蔵弾性率が高く成型時に成型型に対する追従性が悪くなるため、破袋や成型斑等、成型不良が発生しやすくなる一方で、成型直前の温度が140℃以上となると、貯蔵弾性率が低くなり過ぎ、成型時に布帛にかかる応力に耐え切れず、破袋などの成型不良が起こる。
【0053】
本実施形態で用いる不織布がポリ乳酸で構成されている場合、結晶化速度が非常に遅いため、成型時にシートを延伸した際の残留応力による成型体の収縮がシートの結晶化よりも先に起こり、容量の小さい成型体となりやすい。このため、成型体を急冷固化させ、保形する効果を得るため、成型後に保形工程を含ませることで容量の大きい成型体を得ることができる。
【0054】
これらの予熱、保形工程を併せて熱成型加工を行うことで、連続して均一な成型が可能なプロセスとすることができ、本実施形態の不織布をこれらの成型プロセスにて成型することで、均一な成型体を提供可能となる。たとえば、市販されている10個以上の成型体が同封された商品の、成型体の底部同位置から採取した布の目付のR/AVEの値を0.5以内とすることができ、食品用フィルター等に用いた際、内容物の漏出なく、意匠性に問題なく製品を提供可能となる。
【0055】
本実施形態の生分解性不織布の成型の程度は、成型指数で表す。成型指数とは、成型体の表面積を、成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部面積)で割って求められる次式(1):
成型指数=(成型体の表面積cm
2)/(成型前の不織布の面積cm
2)
で定義される値である。
本実施形態の生分解性不織布から構成される成型体の成型指数は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.1〜20、さらに好ましくは1.5〜10、最も好ましくは2.5〜6である。成型指数が大きい場合、不織布が大きく伸ばされていることを示す。他方、成型指数が小さい場合、不織布の伸びが少ないことを示す。実施形態の生分解性不織布は、不織布が高伸度を有するため、高伸度成型指数の大きな成型品を作製することができる。成型指数が大きすぎない場合、破袋することなく成型でき、成型指数が小さすぎない場合、容器に内容物を充填する際に適度な大きさを有することができる。
【0056】
熱成型において、ポリ乳酸の樹脂特性の観点から、ポリエステル樹脂と比較して考えると、ポリエステルは、融点が高く、融点とガラス転移温度との差が大きく、結晶化速度が速いため、成型時の金型温度を高くし成型体を得ることができるが、ポリ乳酸は、融点が低く、融点とガラス転移温度との差が小さく、結晶化速度が遅いため、成型用不織布に十分熱を与えにくく、成型温度を高くできないことがある。よって、本実施形態の生分解性不織布は、成型前の不織布の形状をかためるために、定長熱セットすることが好ましい。
尚、ポリ乳酸とポリエステルの一般的な樹脂特性は以下の通りである。ポリ乳酸、ポリエステルの順に、融点:170℃、260℃、再結晶化温度:70℃、120℃、ガラス転移温度55〜60℃、70〜80℃、比熱:1.38J/g・K、1.00〜1.15J/g・K、熱伝導率0.13W/m・K、0.2〜0.33W/m・K、半結晶化時間:500〜900秒、50〜100秒。
【0057】
本実施形態の不織布は、成型条件を調整し、成型体の特性を制御することで、飲料抽出用容器として、さらに適した実施形態となる。以下、かかる他の実施形態の詳細を説明する。
【0058】
[背景技術]
従来、紅茶、緑茶、コーヒー粉末、薬剤、漢方薬などの被抽出物を簡便に抽出する方法として、飲料抽出用容器に被抽出物を封入して、抽出機にて、容器内にお湯を注ぐことで飲料を抽出する方法、例えば、シングルサーブ方式が知られている。飲料抽出用容器としては、プリーツ形状の紙を樹脂容器内部に備えたもの、容器状に成型した不織布を樹脂容器内部に備えたもの、不織布を容器状に成型した成型体を使用したもの等がある。
樹脂容器を有する飲料抽出用容器は、湯の出口を確保するため、容器底部に穴を開ける必要がある。抽出機の容器設置部の底には針が設置されている。
特開2015−85086号公報には、上記抽出機で用いる飲料抽出用容器が開示されている。このような容器状に成型した成型体を樹脂容器内部に備えた飲料抽出容器では、成型体に針が刺さらないように樹脂容器の底に空間を設ける必要があり、容器が大きくなり、運搬、陳列、保管時等においてかさばり、取扱い性に問題があった。
一般に、被抽出物を抽出する際、湯を注ぐと被抽出物が膨張する。容器状に成型した成型体を用いる飲料抽出用容器では、抽出時に内容物が膨張し、容器が膨らみ、抽出機に設けられた針に接触し、不織布が破れ、内容物が漏れる問題があった。
【0059】
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明(他の実施形態)では、熱環境下での形状安定性、飲料抽出性に優れた飲料抽出用容器とすべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、容器に破れが無く、内容物保持性(粉漏れが少なく)、形のきれいな、熱環境下での形状安定性が良好である飲料用抽出容器を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0060】
[特許請求の範囲]
具体的には、成型後の不織布の特性を以下の通り制御することでそれを達成している。
(i)熱機械分析(TMA)にて、30〜100℃において、容器を構成する成型体片に荷重0.05N/2mmを加えた際のMD方向の伸長変化率が4%以下とする;
(ii)沸水浸漬時の容量変化が20%〜90%とする;
(iii)構成する不織布成型体の配向度が0.010以上とする;
(iv)構成する不織布成型体の結晶化度が30〜70%とする。
【0061】
[発明の効果]
生分解不織布を用い、上記の特性を満たした飲料抽出用容器とすることで、熱環境下での形状安定性、飲料抽出性に優れる為、紅茶、緑茶、コーヒー粉末、薬剤、漢方薬などを抽出する際の容器に好適に用いることができる。
【0062】
[図面の簡単な説明]
[
図1]本発明の他の実施形態の飲料用抽出容器の構成の代表例の模式図である。
[
図2]本発明の他の実施形態の蓋付きの飲料用抽出容器の代表例を説明する模式図である。
[
図3]実施例10、比較例1での貯蔵弾性率の温度依存性評価を示すグラフである。
[
図4]実施例10、比較例1での損失正接の温度依存性評価を示すグラフである。
【0063】
[発明を実施するための形態]
以下、本願発明の実施形態(他の実施形態)について詳細に説明する。
本実施形態の飲料抽出用容器は、容器を構成する不織布の構成、成型条件を適切にし、飲料抽出時の形状安定性、飲料抽出性を発現することができる。
【0064】
[用語の説明]
本実施形態の飲料抽出用容器は、成型加工した不織布成型体を示す。飲料を充填し、封止する為に、蓋材を設けてもよい。
【0065】
[容器の素材]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布の素材としては、生分解性樹脂、特に、ポリ乳酸系重合体を用いることができる(以下、PLAとも言う。)。ポリ乳酸系重合体としては、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、及びD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる重合体、又は該重合体の2種以上のブレンド体が挙げられる。ポリ乳酸重合体のD/L比は、不織布の生産性、不織布特性を阻害しない範囲で設定できるが、全ポリ乳酸重量中のD体比率は、好ましくは0〜15%、より好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.1〜6%である。D体比率がこれらの範囲内であると、飲料抽出用容器を構成する不織布の結晶性、融点等が適当な範囲となり、所望の飲料抽出用容器としての特性を得やすい。
さらに、生分解性を阻害しない範囲で、他の素材、例えば、脂肪族ポリエステル共重合体を用いることができる。脂肪族ポリエステル共重合体としては、例えば、ポリ(α-ヒドロキシ酸)又はこれらを主たる繰り返し単位要素とする共重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)の如きポリ(ω-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネート、ポリ-3-ヒドロキシヘプタノエート、ポリ-3-ヒドロキシオクタノエートの如きポリ(β-ポリヒドロキシアルカノエート)、あるいはこれらを構成する繰り返し単位要素とポリ-3-ヒドロキシバリレートやポリ-4-ヒドロキシブチレートを構成する繰り返し単位要素との共重合体が挙げられる。また、グリコールとジカルボン酸との縮重合体からなるポリアルキレンジカルボキシレート、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレート、又はこれらを構成する繰り返し単位要素とするポリアルキレンジカルボキシレート共重合体が挙げられる。さらに、これらの生分解性を有する個々の重合体を複数種選択し、これらをブレンドしたものが挙げられる。脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸との相溶性の観点から、ポリブチレンサクシネート(以下、PBSともいう。)が好ましい。脂肪族ポリエステル共重合体は、成型時の不織布の延伸性、接着性を向上させることができ、所望の形状、容量、表面毛羽防止、等良好な特性を得やすい。
【0066】
[脂肪族エステル共重合体の添加割合]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布に添加される脂肪族ポリエステル共重合体は、前記ポリ乳酸系重合体に加え、脂肪族エステル共重合体を、全樹脂重量を基準として、0.5〜30重量%さらに含むものであることができる。脂肪族ポリエステル共重合体の添加量は、樹脂の総量を100重量%としたとき、0.5〜30重量%であり、好ましくは3〜27重量%、より好ましくは5〜25重量%である。添加量が範囲内であれば、結晶性を調整しやすく、熱特性に優れた飲料抽出用容器を得ることができる。
【0067】
[その他の添加物]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布は、目的に応じて、不織布を構成する繊維に、他の樹脂、脂肪族ポリエステル共重合体以外の共重合体、難燃剤、無機充填剤、柔軟剤、可塑剤、顔料、耐電防止剤、透水剤などを、さらに1種又は2種以上添加してもよい。
【0068】
[長繊維(不織布製法込み)、短繊維]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布は、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法、カード法、抄造法などで得られる。不織布の接着方法としては、エンボス加工、サーマルボンド、柱状流交絡、機械交絡、ニードルパンチ等を用いることができる。飲料抽出容器の強度、飲料抽出時に繊維の脱落が少ない観点から、スパンボンド法で得られる連続長繊維不織布であることが好ましい。
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布は、成型体形状を得ることができる延伸性を有していれば特に限定しないが、スパンボンド法にて、紡糸速度500〜3000m/分の低紡糸速度で得られた繊維が好ましく用いられ、より好ましくは紡糸速度600〜2700m/分、さらに好ましくは700〜2500m/分が用いられる。一般に、紡糸速度が速い場合、紡糸直後の糸は、結晶性、配向性が高いものとなり、紡糸速度が遅い場合、結晶性が低く、配向性が低いものとなる。結晶性、配向性が適切な不織布を用いて成型された成型体の飲料用抽出容器は、破れが無く(成型時に破袋すること無く)、内容物保持性に優れる。
一般に、短繊維不織布は成型の際、糸同士の接着が外れ、飲料抽出容器の表面から糸が浮き、毛羽が多くなる、あるいは繊維脱落の可能性があり、本願実施形態の飲料用抽出容器としては長繊維不織布が好ましい。
【0069】
[長繊維の形態]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する長繊維不織布の形状としては、例えば、SS、SMS、SMMS、SMSMなどの多層積層不織布の内の一層であってもよい。なお、Sは、スパンボンド法の長繊維不織布、Mは、メルトブロー法の極細不織布を意味する。SMS、SMMS,SMSMなどの多層積層不織布を用いた場合、繊維の分散斑を低減し、内容物保持性、粉漏れ性に優れる飲料用抽出容器を得ることができる。
【0070】
[不織布の積層方法]
本願実施形態の飲料用抽出容器を構成する不織布は、1層、2層、3層以上を積層することによって、例えば、多層のうち、少なくとも1層以上に低融点樹脂を用いる、あるいは融点差を有する鞘芯繊維を用いることで、繊維の接着性を付与、高めることができ、飲料用抽出容器における表面毛羽の発生、蓋材とのシール性を良好にすることができる。
【0071】
[繊維形状]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布繊維の形状は、特に限定しないが、丸型、扁平型、C型、Y型、V型などの異形断面などが用いられ、好ましくは丸型断面であり、さらに、海島構造や芯鞘構造、割繊構造であってもよい。
【0072】
[エンボス有無]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布は、エンボス加工を行ってもよいが、不織布の繊維の表面で点接着されていても良い。点圧着の方法に特に制限はされないが、好ましくは、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いる方法、表面が平坦な一対のフラットロールを用いる方法等が挙げられる。また、ニードルパンチ加工やスパンレース加工、フェルトカレンダー加工等の加工を行っていても良い。点接着とは、軽度な熱接着に留まり、繊維表面での点状接着が主体となり、仮熱圧着でエンボス柄が付いたとしても、2段階目の面的に抑制された熱接着により、エンボス柄の周辺でミクロに熱収縮が発現し、エンボス柄がはずれるか又は弱くなるとともに、不織布全体の目付けムラが軽減される状態の接着を言う。
エンボス加工及び点接着による圧着面積比率は、特に制限されないが、不織布全面積に対して3〜50%が好ましく、より好ましくは5〜40%である。圧着面積比率は、飲料用抽出容器を構成する不織布の表面をマイクロスコープを用いて計測することができる。
【0073】
[一般的な成型加工方法]
本願実施形態の飲料抽出用容器は、生分解樹脂からなる不織布を立体的に成型加工することで得ることができる。成型加工方法としては、例えば、真空成型、圧空成型、プレス成型等を用いることができる。不織布の通気性の影響を受けにくい点から、プレス成型を用いることが好ましい。成型金型としては、目的に応じて適宜選定することができ、金属製、木製、プラスチック製等の凹凸金型、凸金型、凹金型等の金型を常温あるいは熱金型を用いることができるが、金型との追随性を向上させ、破袋なく、形状の良い不織布成型体を得る為に、熱金型を使用することが好ましい。
【0074】
[ポリマー特性を考慮した成型の説明、予熱]
ポリ乳酸の樹脂特性の観点から、ポリエステル樹脂と比較して考えると、ポリエステルは、融点が高く、融点とガラス転移温度との差が大きく、結晶化速度が速いため、成型時の金型温度を高くし成型体を得ることができるが、ポリ乳酸は、融点が低く、融点とガラス転移温度との差が小さく、結晶化速度が遅いため、成型用不織布に十分熱を与えにくく、成型温度を高くできないことがある。よって、本願実施形態の飲料抽出用容器は、成型加工を行う際、ガラス転移点以上、融点以下に、成型前の不織布を予熱することが好ましい。不織布を予熱することにより、金型との追随性を向上させ、破袋なく、延伸斑の少ない、形状の良い不織布成型体を得ることができる。
尚、ポリ乳酸とポリエステルの一般的な樹脂特性は以下の通りである。ポリ乳酸、ポリエステルの順に、融点:170℃、260℃、再結晶化温度:70℃、120℃、ガラス転移温度55〜60℃、70〜80℃、比熱:1.38J/g・K、1.00〜1.15J/g・K、熱伝導率0.13W/m・K、0.2〜0.33W/m・K、半結晶化時間:500〜900秒、50〜100秒。
不織布の加熱、予熱の方法としては、赤外線、熱風、電熱線等を用いた加熱炉、赤外線ヒーター、熱風ヒーター、伝熱線ヒーター等を用いて不織布を加熱する方法等を用いることができる。
【0075】
[成型前の不織布の温度]
成型前の不織布の温度は、好ましくは55℃〜160℃、より好ましくは60℃〜150℃、さらに好ましくは75℃〜140℃である。成型前の不織布の温度が範囲内であると、所望の容器形状を得ることができる。成型前の不織布の温度が高すぎると、容器製造時に熱収縮を起こし、得られる飲料用抽出容器の形状が歪になったり、厚みが不均一になったり、延伸斑等が発生し、飲料用抽出容器として、保形性や抽出性、内容物保持性等が不足する場合がある。成型前の不織布の温度が低すぎると、成型時に破袋し、容器形状が得られないことがある。
【0076】
[成型時の金型温度]
成型金型の温度は、成型時に不織布が破れない、成型型に貼り付かない程度であれば適宜選定することができ、好ましくは30℃〜160℃、より好ましくは80℃〜150℃、さらに好ましくは100℃〜140℃である。
成型前の不織布の温度、成型金型の温度は、両者のバランスを考慮し、選定することが好ましい。成型前の不織布の温度と成型金型の温度の差は小さいほうが、不織布の延伸斑を少なくすることができ、得られる飲料用抽出容器の保形性や抽出性、内容物保持性の点において好ましい。
【0077】
[予熱と金型の組み合わせ両者の組み合わせ]
成型加工時の布温度と金型の温度は、適宜選定できるが、常温での形状が良好な飲料抽出用容器を得る為には、凹凸金型による熱成型や不織布を予熱してから熱成型し、不織布への熱伝導性を高め、金型を抜いた際の収縮を抑えることが好ましい。
【0078】
[熱セット、冷却]
本願実施形態の飲料抽出用容器は、形の良い容器を得る為に、成型時に、熱風を当てる、成型後熱金型を一定時間当てたままにする等十分熱セット時間を設ける、十分冷却してから型から取り外す、熱成型後に熱した金型、冷却型をさらに当てる等の方法を用いたものであっても良い。熱セットの時間としては、生産性を考慮し、適宜選定可能であるが、好ましくは0.01秒以上、より好ましくは0.2秒以上、0.2秒〜300秒、であることが好ましい。熱セット時間を長くすることで、成型後の収縮、沸水浸漬時の収縮を抑えることができる。成型後の冷却は、成型後に冷風を当てる、冷却した金型、常温金型を使用する等により実施することができ、成型後の不織布を構成する素材のガラス転移温度以下まで下げることが有効である。これにより、成型直後の収縮を抑えることができ、成型後に形のきれいな成型体を得ることが可能である。
【0079】
[容器の形状]
本願実施形態の飲料抽出用容器の形状としては、容器形状であれば特に限定されないが、例えば、底が湾曲した形状、円柱形、円錐台形、ドーム形、半球形およびお椀形等が好ましい。これらは、成型時に使用する型の形状を、底が湾曲した形状、円柱形、円錐台形、ドーム形、半球形およびお椀形等にすることで得ることができる。飲料抽出用容器となる不織布成型体は、樹脂容器に封入、あるいは封入せずに使用することも可能である。樹脂容器に封入しない場合、容器がかさばらず、取扱い性、製造コストの観点からも優れる。
【0080】
[成型指数]
本願実施形態の飲料抽出用容器の不織布の成型の程度は、成型指数で表す。成型指数とは、成型体の表面積を、成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部面積)で割って求められる次式(1):
成型指数=(成型体の表面積cm
2)/(成型前の不織布の面積cm
2)
で定義される値である。
本願実施形態の飲料抽出用容器の不織布から構成される成型体の成型指数は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.1〜20、さらに好ましくは1.5〜10、さらにより好ましくは2.0〜6、最も好ましくは2.5〜6.0である。成型指数が大きい場合、不織布が大きく伸ばされていることを示す。他方、成型指数が小さい場合、不織布の伸びが少ないことを示す。成型指数が大きすぎない場合、破袋することなく成型でき、得られた成型体が内容物保持性が良く、成型指数が小さすぎない場合、容器に内容物を充填する際に適度な大きさを有することができる。
【0081】
[他素材との張り合わせ]
本願実施形態の飲料抽出用容器は、未延伸の紙や不織布との組み合わせを否定するものでないが、容器形状を作製する為に、張り合わせや接着等の工程が入ることになり製造面で困難な場合がある。
【0082】
[一般的な抽出方法の説明]
飲料抽出用容器を、抽出機を用いて(例えば、シングルサーブ方式)抽出する際、装置に設置した被抽出物を充填した飲料抽出用容器にお湯を注ぎ使用する。飲料抽出用容器として、熱安定性や被抽出物が膨潤することによる応力変化に対する安定性が必要である。
【0083】
[抽出時の収縮、成型体のTMA収縮]
本願実施形態の飲料抽出用容器は、熱機械分析(TMA)にて、30〜100℃において、容器を構成する不織布成型体片に荷重0.05N/2mmを加えた際のMD方向の寸法変化率の最大値が好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下であることが好ましい。寸法変化率の最大値が範囲内であると、飲料抽出の際に、熱や抽出時に被抽出物が膨張することにより応力が加わることにより、繊維が伸びたり、切れたり、繊維同士の交点が外れたり、ずれたりすることが少ない為、飲料抽出容器が膨張しにくく、抽出機の針に接触することなく、不織布が破れにくい。寸法変化率は、実施例の通り測定することができる。
本願実施形態の飲料抽出用容器において、MD方向とは、同方向に並んでいる繊維の本数が多い方向を言い、不織布の製造においては、機械の流れ方向である。
【0084】
[沸水浸漬時の容量変化]
本願実施形態の抽出用容器は、沸水浸漬時の容量変化が好ましくは20〜90%、より好ましくは30〜85%、さらに好ましくは30〜80%、最も好ましくは45〜75%である。容量変化が範囲内であると、飲料抽出時に被抽出物と飲料用抽出容器の寸法変化のつり合いを図ることができ、不織布成型体のそのもの強度、伸度不足による破袋や抽出機部品(例えば、飲料用抽出容器の設置下部に設置されたた針)に接触し破袋を起すことなく使用することができる。一般に、飲料抽出用装置にて、容器内にお湯を注ぐことで飲料を抽出する方法、例えば、シングルサーブ方式において、飲料用抽出容器が使用される場合、形状安定性、蓋剥がれ防止の観点から熱収縮は小さいことが好まれる。
他方、本願技術は、湯が注がれることによる紅茶、緑茶、コーヒー粉末、薬剤、漢方薬などの被抽出物の膨張と飲料用抽出容器の寸法変化のつり合いを図ることにより、抽出時の安定性に優れる飲料用抽出容器を得ることができる。
【0085】
[複屈折率]
本願実施形態の抽出用容器を構成する不織布成型体の複屈折率は、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.012〜0.050であり、さらに好ましくは0.012〜0.030である。複屈折率が高すぎない場合、成型時に過度に繊維が配向することが無く成型できており、適度に繊維同士の接着を維持した状態となり、抽出用容器の表面に繊維が浮くことを抑えることができる。複屈折率が低すぎない場合、配向性が低くなりすぎず、成型時に不織布が成型型に付着することが少なくなり、得られる容器の表面性が良好となる。さらに、複屈折率が範囲内であると熱環境下、飲料抽出時における抽出容器の保形性を高めることができる。複屈折率が高すぎると、繊維の糸同士の接着性が悪く、抽出用容器の表面に毛羽が生じやすい。
【0086】
[結晶化度]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布成型体の結晶化度は、好ましくは30〜70%、より好ましくは30〜60%、さらに好ましくは40〜50%である。結晶化度が範囲内である場合、熱環境下で飲料抽出容器の形が歪にならず、熱環境下、飲料抽出時における抽出容器の保形性を高めることができる。
【0087】
[飲料抽出用容器を構成する不織布の換算目付]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布成型体の総目付は、20〜350g/m
2であり、好ましくは20〜300g/m
2であり、より好ましくは30〜300g/m
2、最も好ましくは50〜250g/m
2である。総目付が20g/m
2以上であれば、飲料抽出用容器の強度が十分となり、他方、350g/m
2以下であれば、飲料用抽出容器を得る際に成型加工設備に大きな負担をかけずに加工できる。なお、飲料用抽出容器に使用されている不織布の総目付は、成型前の不織布の面積(m
2)、飲料用容器に使用されている不織布の重量(g)から算出することができる。
【0088】
[飲料抽出用容器を構成する不織布の平均繊維径]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布成型体の平均繊維径は、好ましくは8〜50μm、より好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜30μmである。平均繊維径が小さすぎない場合、容器として内容物を保持することができ(粉漏れ性が良好であり)、平均繊維径が大きすぎない場合、通液速度が遅すぎない。
【0089】
[飲料抽出用容器を構成する不織布の目付]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布成型体の目付は、好ましくは12〜200g/m
2、より好ましくは18〜100g/m
2、さらに好ましくは30〜80g/m
2、最も好ましくは30〜60g/m
2である。不織布の目付が範囲内であると容器として内容物を保持することができ(粉漏れ性が良好であり)、通液速度が遅すぎない。
【0090】
[粉漏れ性]
本願実施形態の抽出用抽出容器を使用して紅茶、緑茶、コーヒー粉末、薬剤、漢方薬などの被抽出物を抽出機にて抽出した際、抽出液中に含まれる粉量は、不織布成型体の繊維径、総目付、目付、成型条件等を適宜選定することで所望の粉量にすることができる。粉量は0.25g以下、さらには0.20g以下であることができる。飲料中の被抽出物の茶葉や粉を少なくしたい場合、繊維径を小さく、総目付を小さく、目付を小さく、成型時の不織布中での温度斑を少なくし成型斑を無くす等の成型条件を適宜選定すれば良い。他方で、飲料中に茶葉等の被抽出物を残したい場合、繊維径を大きく、総目付を大きく、目付を大きく、成型時の不織布中での温度斑を大きくする等の成型条件を適宜選定すればよい。
【0091】
[抽出前後の容量変化]
本願実施形態の抽出用容器は、抽出前後時の容量変化が−30〜30%、−20〜20%、−10%〜10%であることができる。抽出前後の容量変化が範囲内であると、飲料抽出時に被抽出物と飲料用抽出容器の寸法変化のつり合いを図ることができ、不織布成型体のそのもの強度、伸度不足による破袋や抽出機部品(例えば、飲料用抽出容器の設置下部に設置された針)に接触による破袋を起すことなく使用することができる。
【0092】
[表面毛羽について]
本願実施形態の抽出用抽出容器を構成する不織布の毛羽本数は、好ましくは10本以下、より好ましくは0〜9本、さらに好ましくは0〜3本であることが好ましい。毛羽本数が範囲内であると、商品としての見栄えが良く、輸送時の振動等により飲料用抽出容器同士がこすれることによる表面性の悪や抽出機の容器設置部の凹凸への繊維の引っ掛かり等が無く、取扱い性に優れる。
【0093】
[蓋]
本願実施形態の抽出用抽出容器は、内容物を充填した後、フィルム、不織布等の蓋で覆うことができる。蓋シールの方法は特に限定しないが、接着剤、熱可塑性樹脂を塗布、蓋材に接着剤を塗布、蓋材に熱可塑性樹脂を添加、ブレンド、あるいは不織布の場合、鞘に芯よりも融点の低い樹脂を使用した不織布を使用する等の方法が使用できる。蓋は、抽出機で使用した際に、蓋がはがれ内容物が溢れない程度に取り付けられていればよい。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、測定法、評価法等を説明する。
【0095】
(不織布の特性評価)
(1)平均繊維径(μm)
繊維ウェブ、不織布等の試料の両端部5cmを除いて、布帛の幅10cm毎の区域からそれぞれ適当な本数の繊維を採取し、マイクロスコープで繊維の直径を各30点測定して、該測定値の平均値を算出した。
【0096】
(2)目付(g/m
2)
JIS L−1913に従って、総面積が1500cm
2(例えば、幅20cmx長さ25cm 3枚)となるように試料を切り取り、単位当たりの質量に換算して求めた。
【0097】
(3)複屈折率(Δn)
OLYMPUS社製のBX53を使用して、干渉縞法によって繊維の側面から観察した平均屈折率の分布を測定することができる。この方法は円形断面を有する繊維に適用できる。繊維の屈折率は繊維軸に対して平行な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n||と、繊維軸に対し垂直な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n⊥によって特徴づけられ、複屈折率はΔn=(n||−n⊥)で表わされる。
繊維に偏光を照射すると、互いに直角に振動する2つの偏光に分かれる。繊維は軸の方向によって屈折率が異なるため2つの光の進む距離に差が生じる。これがレタデーションであり、Rで表わされ、繊維断面の直径をd0とすると、複屈折率と、次式: R=d0(n||−n⊥)=d0Δn
の関係がある。
光学的にフラットなスライドガラス及びカバーガラスを使用し、試料から採取した繊維を、繊維に不活性な封入剤中に浸漬する。測定部で繊維同士が重なりあわない繊維部分を、その繊維軸が偏光顕微鏡の光軸及び干渉縞に対して垂直となるようにする。この干渉縞のパターンを測定し、レタデーションを求め、繊維の複屈折率を測定し、10点の平均値を測定した。
【0098】
(4)120℃における伸度(%)
試料の両端5cmを除き、幅3cm、長さ10cm試料を切り取り、引張試験機で、つかみ間隔2cm、引張速度200mm/分、120℃の温度で各5点タテ方向を測定し、平均値を算出した。なお、恒温槽内に試料を設置1分経過後、チャンバー温度が120℃になっていることを確認して計測を開始した。
【0099】
(5)タテ引裂き強度を目付で除した値(−)
試料の両端5cmを除き、幅10cm、長さ6.5cm試料を3枚切り出し、エルメンドルフ形引裂度試験機を用いて、タテ引裂き強度(N)を測定し、平均値を求めた。これを目付で除して算出した。
【0100】
(6)機械熱分析によるMD方向の寸法変化率(%)
試料の両端5cmを除き、(2)で測定した目付が±10%となるような幅2mm、長さ25mmの試料を切り出し、ティ・エイ・インスツルメント社製TMAQ400を用いて、クランプ上部にフィルム/ファイバー用クランプ、下部にティ・エイ・インスルメント製アルミボールを使用し、初期荷重0.005N、30℃〜160℃まで、昇温速度10℃/分、把握長15mmにて測定を行った。80℃〜140℃において、寸法変化(μm)/{把握長(mm)x1000}x100により、寸法変化率(%)を求めた。N=3測定し、その平均値を算出した。
【0101】
(7)貯蔵弾性率の温度依存性評価
幅5mm、長さ25mmの試料を切り出し、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社製DMA2980を用いて、フィルム/ファイバー用クランプを使用し、初期荷重0.010N、周波数1Hz、歪み1%、30℃〜150℃まで、昇温速度3℃/分、把握長10mmにて測定を行った。
尚、貯蔵弾性率の温度に対する変化率は動的粘弾性の温度依存性試験を行った際の貯蔵弾性率の変化を温度変化の値で除した下記式:
動的粘弾性の温度依存性試験=-Δ貯蔵弾性率/Δ温度
により算出することができる。
【0102】
(8)毛羽等級(級)
MD方向に25mm×300mmの試験片を採取し、日本学術振興会堅牢度試験機を用いて、摩擦子の荷重が250g、摩擦子側には同布を使用し、50回動作をさせて、以下の評価基準で判定した。尚、試料の表裏両方測定し、級数が小さいものを採用した。
5.0級:毛羽立ちがない。
4.0級:繊維が1〜2本程度、又は一ヶ所に小さな毛玉ができ始める程度に毛羽立っている。
3.5級:繊維が3〜5本程度、又は数ヶ所に小さな毛玉ができ始める程度に毛羽立っている。
3.0級:はっきりとした毛玉ができ始め、又は小さな毛玉が複数見られる。
2.5級:毛玉が大きくはっきりと見られ、複数個所で繊維が浮き上がり始める。
2.0級:試験片が薄くなるほど甚だしく繊維が剥ぎ取られる。
1.0級:試験片が破損するほど繊維が剥ぎ取られる。
【0103】
(9)二軸延伸シートの2.5cm角目付分布のR/Ave値
12.5cm角に試料を切り取り、二軸延伸装置で、つかみ間隔8cm、引張速度200mm/分、120℃の温度でMD/CD二軸方向へ20cmまで同時延伸して延伸シートを作成した。この時の延伸倍率はMD/CD各方向へ長さ2.5倍、面積倍率で6.25倍となる。なお、恒温槽内に試料を設置1分経過後、チャンバー温度が120℃になっていることを確認して延伸を開始した。
作製した延伸シートの中心に10cm四方の正方形を描き、その中に2.5cm角×16マスの格子を描いた。描いた2.5cm角のマスを16枚切り抜き、重量測定した。
R/Aveの値は次式:
R(16枚の重量の最大値-最小値の値)/Ave(16枚の重量の平均値)
で定義される値である。
【0104】
(10)成型性
生分解性不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で1分間予熱し、不織布温度を60℃として、120℃の円筒成形金型(直径4.4cm、高さ1.3cm及び3.2cm)を用いて2秒間でプレス成形を実施した時の成型体の様子を観察し、以下の評価基準で評価した。尚、成型指数は、成型体の表面積を成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部の面積)で割って求められる次式で定義される値である。
成型指数=(成型体の表面積cm
2)/(成型前の不織布の面積cm
2)
○:破れがなく、成形性良好、高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られた。
△:破れは無いが、成型体の表面に斑がある、延伸斑がある、糸ケバが目立つ等の問題がある。
×:破れが発生し、成形性不良、高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られなかった等の問題がある。
【0105】
(11)コンポスト処理試験
コンポスト処理試験機を用いて、60℃の一定環境下で4週間後の試料片の状態を目視で観察し、下記の評価基準で判定した:
○:試料片が小片化した。
×:試料の外観変化が見られなかった。
【0106】
(12)成型性(均一成型性)
幅方向10列の成型金型を有する成型機に長繊維不織布をセットし、熱風で不織布温度を100℃として、120℃の円筒成型金型(直径4.4cm、高さ3.2cm)を用いて2秒間でプレス成型を実施し、粒子径100μmのモデル粒子を11g充填し、PLAシートを蓋材としてヒートシールして封止し、成型体を100個作製した。
得られた成型体の底部を1cm各に切り抜き、重量測定した。
R/Aveの値は次式:
R(100枚の重量の最大値-最小値の値)/Ave(100枚の重量の平均値)
で定義される値である。
【0107】
(成型体の特性評価)
(1)平均繊維径(μm)
飲料用抽出容器に使用されている不織布成型体の側面部(不織布が延伸されている部分)から、それぞれ適当な本数の繊維を採取し、マイクロスコープで繊維の直径を各30点測定して、該測定値の平均値を算出した。
【0108】
(2)不織布の換算目付(g/m
2)
飲料用抽出容器に使用されている不織布成型体の重量(g)、不織布成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(=容器形状の場合は開口部面積)(m
2)から、単位当たりの質量に換算して求めた。
不織布の換算目付(g/m
2)=不織布の重量(g)/成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(m
2)
【0109】
(3)成型体の目付(g/m
2)
飲料用抽出容器に使用されている不織布成型体から採取した不織布の重量(g)、不織布の面積(m
2)から、単位当たりの質量に換算して求めた。不織布が曲率を有する場合、不織布を細幅に裁断し、平滑化した後、マイクロスコープにて不織布の面積を測定した。
成型体の目付(g/m
2)=不織布の重量(g)/成型前の面積(m
2)
【0110】
(4)複屈折率(Δn)
OLYMPUS社製のBX53を使用して、干渉縞法によって不織布の複屈折率同様の測定を行った。試験片は、不織布成型体の側面(伸長率が高くなる点)から採取した。
【0111】
(5)結晶化度(%)
PerkinElmer社製の示差走査熱量計DSC6000を用い、不織布の結晶化度と同様の測定方法で結晶化度を測定した。
【0112】
(6)MD方向の寸法変化率
飲料用抽出容器に使用されている不織布成型体の側面(=容器中で伸長変化が大きい部分)より、不織布のMD方向に幅2mm、長さ25mmの試料を切り出し、ティ・エイ・インスツルメント社製TMAQ400(熱機械分析(TMA))を用いて、クランプ上部にフィルム/ファイバー用クランプ、下部にティ・エイ・インスルメント製アルミボールを使用し、初期荷重0.05N、30℃〜100℃まで、昇温速度10℃/分、把握長15mmにて測定を行った。30℃〜100℃において、寸法変化(μm)/{把握長(mm)x1000}x100により、寸法変化率(%)を求め、30℃〜100℃中の最大値を求めた。N=5測定し、その平均値を算出した。寸法変化率のプラスは伸びを表す。
【0113】
(7)沸水浸漬時の容量変化
飲料抽出用容器(内容物無し)を沸水に1分間浸漬後、風乾させ、沸水浸漬前後の容量変化を求め、N=5個の平均値を求めた。容器の容量は、容器内に充填できる基準紛(ふるい試験にて150μmメッシュを通過する粉が0.05%以下)の重量で測定した。
容量変化(%)=(沸水浸漬前の基準紛充填量(g)−沸水浸漬後の基準紛充填量)×100/沸水浸漬前の基準粉充填量(g)
【0114】
(8)表面毛羽
目視にて、飲料用抽出容器の表面の毛羽本数を計測し、N=10の平均値を求めた。
【0115】
(9)抽出性:粉漏れ性
キューリグ製の抽出機にコーヒー粉末(ふるい試験にて150μmメッシュを通過する粉が0.05%以下、充填量11g(容器が小さく入らない場合は最大量を充填した。))を充填した飲料用抽出容器を設置し、湯量170mlで抽出したコーヒーを、アドバンテック製ろ紙No2を用いて濾過し、乾燥機にて6時間乾燥させ、ろ紙上に残る粉量を測定した。N=10測定し、その平均値を粉漏れ量とした。
【0116】
(10)抽出性:抽出後の容量変化
前記(9)で抽出した後の飲料抽出用容器を、抽出前後の容量変化を求め、N=5個の平均値を求めた。容器の容量は、容器内に充填できる基準紛(ふるい試験にて150μmメッシュを通過する粉が0.05%以下)の重量で測定した。
抽出時の容量変化(%)=(抽出前の基準紛充填量(g)−抽出後の基準紛充填量)×100/抽出前の基準粉充填量(g)
【0117】
(11)抽出性:蓋のシール性
基準粉(ふるい試験にて150μmメッシュを通過する粉が0.05%以下、充填量11g)を封入した飲料用抽出容器を沸水に1分間浸漬させ、蓋剥離の有無を目視にて以下の評価基準に従って判定した。
〇:剥離なし(シール性良好)
×:剥離あり(シール性不良)
【0118】
(12)成型性
不織布成型体の様子を観察し、以下の評価基準で評価した。尚、成型指数は、成型体の表面積を成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部の面積)で割って求められる次式:
成型指数=(成型体の表面積cm
2)/(成型前の不織布の面積cm
2)
で定義される値である。
4:成型指数2.0以上であり、破れがない。
3:成型指数2.0以上であり、破れは無いが、成型体の表面に斑がある、延伸斑がある、糸ケバが目立つ等の様子が見られる。
2:破れは無いが、成型指数2.0未満である。
1:破れがある。
【0119】
(13)生分解性(コンポスト処理試験)
コンポスト処理試験機を用いて、60℃の一定環境下で4週間後の試料片の状態を目視で観察し、下記の評価基準で判定した:
○:試料片が小片化した。
×:試料の外観変化が見られなかった。
【0120】
以下、不織布の特性評価を行った内容を説明する。
〔実施例1〕
温度230℃でMFR値が44g/10分のポリ乳酸に、ポリブチレンサクシネート(融点110℃)を10重量%添加し単軸押出機にて溶融、混練させ、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃、紡速1011m/分で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、生分解性長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、仮圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率が14%であり、上・下ロール温度45℃の条件下でロール線圧300N/cmで仮圧着した。
次いで、この仮圧着ウェブを、30℃で保管後72時間後、フェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度135℃、加工速度10m/分)で熱処理を行い、生分解性長繊維不織布を得た(目付250g/m
2、繊維径30μm)。
生分解性長繊維不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で予熱して、120℃の円筒成形金型(直径4.4cm、高さ1.3cm及び3.2cm)を用いて2秒間でプレス成形を実施し、成型体を製造した。
【0121】
〔実施例2、3〕
生分解性長繊維不織布の目付を、それぞれ、90、25g/m
2としたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0122】
〔実施例4〕
生分解性長繊維不織布の目付を15g/m
2、繊維径を12μm、吐出量を0.7g/分・Holeとしたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0123】
〔実施例5〕
生分解性長繊維不織布の目付を150g/m
2、吐出量を0.7g/分・Holeとしたこと以外は、実施例4と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0124】
〔実施例6〕
フェルトカレンダー温度を125℃、生分解性長繊維不織布の目付を310g/m
2、繊維径を38μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0125】
〔実施例7、8〕
ポリブチレンサクシネートの添加を5重量%、25重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0126】
〔実施例9〕
ポリブチレンサクシネートの添加を35重量%、生分解性長繊維不織布の目付を150g/m
2としたこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0127】
〔実施例10〕
生分解性長繊維不織布の目付を150g/m
2としたこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0128】
〔実施例11〕
紡速を805m/分、繊維径を34μmとしたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0129】
〔実施例12〕
紡速を1160m/分、繊維径を28μmとしたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0130】
〔実施例13〕
紡速を2519m/分としたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0131】
〔実施例14〕
紡糸温度を210℃、紡速を1345m/分、30℃で保管1時間後にフェルトカレンダーで熱処理、繊維径を26μmとしたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0132】
〔実施例15〕
フェルトカレンダー温度を90℃としたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0133】
〔実施例16〕
フェルトカレンダー温度を160℃としたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0134】
〔実施例17〕
50℃保管720時間後にフェルトカレンダーで熱処理したこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0135】
〔実施例18〕
目付を15g/m
2としたこと以外は、実施例1と同様にして長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0136】
〔実施例19〕
ポリブチレンサクシネートの添加を2.5重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0137】
〔実施例20〕
フェルトカレンダー温度を110℃としたこと以外は、実施例10と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0138】
〔実施例21〕
目付を50g/m
2としたこと以外は、実施例20と同様にして、生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0139】
〔比較例1〕
フェルトカレンダーで熱処理しなかったこと以外は、実施例10と同様にして生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。寸法変化率が大きく、成型性が悪かった。
【0140】
〔比較例2〕
30℃で保管1時間後にフェルトカレンダーで熱処理したこと以外は、実施例10と同様にして生分解性長繊維不織布及び成型体を製造した。寸法変化率が大きく、成型性が悪かった。
【0141】
〔比較例3〕
公知のスパンボンド法を用い、温度230℃でMFR値が44g/10分のポリ乳酸を、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃で紡糸をして得られた、ポリ乳酸を主成分とする目付135g/m
2、厚み0.49mm(JIS L−1913に規定の方法で荷重100g/cm
2の厚みを測定)、繊維径28μm、圧着面積比率18%の不織布(Tm:172℃、Tc:83℃、Tg:63℃)を用いて、実施例1と同様に、成型体を製造した。寸法変化率が大きく、成型性が悪かった。
【0142】
〔比較例4〕
公知のスパンボンド法を用い、温度230℃でMFR値が44g/10分のポリ乳酸を、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃で紡糸をして得られた、ポリ乳酸を主成分とする目付17.3g/m
2、厚み0.09mm(JIS L−1913に規定の方法で荷重100g/cm
2の厚みを測定)、繊維径15μm、圧着面積比率21%の不織布を用いて、実施例1と同様に、成型体を製造した。伸度が低く、成型性が悪かった。
【0143】
〔比較例5〕
温度300℃下のMFR値が25g/10分のポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度290℃で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、目付100g/m
2のポリエチレンテレフタレート繊維ウェブ(融点260℃、紡糸速度1716m/分、平均繊維径22μm、円形断面)を調製した。
次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、部分熱圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率が14%であり、上・下ロール温度65℃の条件下でロール線圧400N/cmにて部分圧着した。
次いで、この部分圧着ウェブを30℃で保管1時間後にフェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度130℃、加工速度15m/分)で熱処理を行い、ポリエチレンテレフタレート長繊維不織布を得た。
生分解性長繊維不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で予熱して、120℃の円筒成形金型(直径4.4cm、高さ1.3cm及び3.2cm)を用いて2秒間でプレス成形を実施し、成型体を製造した。
得られたポリエチレンテレフタレート不織布をコンポスト処理したが、外観変化は観測することができなかった。
【0144】
〔比較例6〕
目付を70g/m
2としたこと以外は、比較例4と同様にして長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0145】
〔比較例7〕
紡速を1455m/minとしたこと以外は、比較例1と同様にして長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0146】
〔比較例8〕
紡速を1455m/minとしたこと以外は、比較例6と同様にして長繊維不織布及び成型体を製造した。
【0147】
実施例1〜21、比較例1〜8の結果を以下の表1(表1−1、表1−2)に示す。
【表1-1】
【0148】
【表1-2】
【0149】
実施例10、比較例1で動的粘弾性の測定を行った結果を
図3に示す。
【0150】
以下、成型体の特性評価を行った結果を説明する。
〔実施例22〕
実施例10と同様の方法で、生分解不織布を得た。得られた不織布を成形機にセットし、熱風を用いて不織布を75℃に予熱して、80℃の円筒成型金型(直径4.4cm、高さ3.2cm)を用いて2秒間(うち熱セット時間0.2秒)でプレス成型を実施し、常温金型を利用しポリ乳酸のTg以下まで冷却し、飲料用抽出容器を得た(総目付150g/m
2、延伸部の繊維径25μm)。容器の蓋にはポリ乳酸製樹脂フィルムをヒートシールして使用した。飲料用抽出容器を30〜100℃にて、容器を構成する不織布に荷重0.05N/2mmを加えた際のMD方向の寸法変化率の最大値、沸水浸漬時の容量変化、粉量、抽出前後の容量変化、表面毛羽、蓋のシール性、抽出時の保形性、生分解性試験の結果を、以下の表2に示す。
【0151】
〔実施例23、24、25〕
成型時の金型温度を、それぞれ、105、125、145℃としたこと以外は、実施例22と同様にして、不織布成型体を得た。
【0152】
〔実施例26〕
成型時の不織布の布温度を105℃としたこと以外は、実施例23と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0153】
〔実施例27〕
成型時の不織布の布温度を125℃としたこと以外は、実施例24と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0154】
〔実施例28〕
成型時の金型温度を90℃、不織布の布温度を150℃としたこと以外は、実施例22と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0155】
〔実施例29、30〕
成型時の熱セット時間を60秒、300秒としたこと以外は、実施例24と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0156】
〔実施例31〕
成型時に常温金型を利用しなかったこと以外は、実施例23と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0157】
〔実施例32〕
使用するポリ乳酸製長繊維不織布を実施例2と同様とし、成型方法を実施例26と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0158】
〔実施例33〕
使用するポリ乳酸製長繊維不織布を実施例1と同様とし、成型方法を実施例26と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0159】
〔実施例34〕
使用するポリ乳酸製長繊維不織布を実施例13と同様とし、成型方法を実施例24と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0160】
〔実施例35〕
使用するポリ乳酸製長繊維不織布を実施例6と同様とし、成型方法を実施例24と同様の方法で熱成型を行うことで、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0161】
〔実施例36、37〕
比較例1と同様の方法でポリ乳酸製長繊維不織布を作製し、成型時の金型温度をそれぞれ、120℃、140℃、成型時に常温金型を利用しなかったこと以外は、実施例22と同様の方法で熱成型を行うことで、不織布成型体、飲料抽出用容器を得た。
【0162】
〔実施例38〕
公知の溶融紡糸法で得られた、紡速1150m/min、繊維径30μmのポリ乳酸繊維を裁断し、繊維長10cmの短繊維を得た。得られた短繊維をニードルパンチ法にて一体化し、短繊維不織布(目付150g/m
2)として、実施例23と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。
【0163】
〔比較例9〕
成型時の金型温度を30℃としたこと以外は、実施例22と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。成型時に破袋し、飲料用抽出容器として使用できなかった。
【0164】
〔比較例10〕
成型前の不織布の温度を40℃としたこと以外は、実施例24と同様の方法で熱成型を行うことで、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。成型時に破袋し、飲料用抽出容器として使用できなかった。
【0165】
〔比較例11〕
実施例15と同様の方法で不織布を作製し、実施例22と同様の方法で熱成型を行うことで不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。配向結晶化も進みにくく、抽出時の熱安定性に劣るものであった。
【0166】
〔比較例12〕
実施例3と同様の方法で不織布を作製し、実施例26と同様と同様の方法で熱成型を行うことで、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。飲料抽出用容器の延伸された部分の目付が低く、飲料抽出時の形状安定性に劣るものであった。
【0167】
〔比較例13〕
用いる不織布の目付を500g/m
2としたこと以外は、実施例26と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。
【0168】
〔比較例14〕
比較例5と同様の方法でPET不織布を作製し、成型時の金型温度を150℃としたこと以外は、実施例22と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。得られた飲料用抽出容器は、生分解性を有しなかった。
【0169】
〔比較例15〕
比較例3と同様の方法で生分解性不織布を作製し、実施例22と同様の方法で成型し、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。抽出時の保形性が悪かった。
【0170】
〔比較例16〕
公知の溶融紡糸法で得られた、紡速1500m/min、繊維径25μmのポリ乳酸繊維を裁断し、繊維長10cmの短繊維を得た。得られた短繊維をニードルパンチ法にて一体化し、短繊維不織布(目付150g/m
2)として、実施例23と同様にして、不織布成型体、飲料抽出用容器を作製した。容器表面に毛羽が多く、品位が悪かった。
【0171】
実施例22〜38、比較例9〜16の結果を以下の表2に示す。
【表2】