(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セパレータの前記電極への固定では、前記セパレータが前記電極に固定される位置において金属部材の凸部が前記電極体に入り込んだ状態を形成する、請求項6に記載の蓄電素子の製造方法。
前記セパレータの前記電極への固定では、積層された前記電極及び前記セパレータに前記金属部材を重ね合わせた状態でメカニカルクリンチすることによって前記凸部を形成する、請求項7に記載の蓄電素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、電極体において電極の積層方向に重なる活物質層間からはみ出しているセパレータのはみ出し量の減少を抑えることができる蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄電素子は、
活物質層を含む電極と、セパレータと、を有し、且つ前記電極と前記セパレータとが積層される電極体を備え、
前記セパレータは、前記電極及び前記セパレータの積層方向において前記活物質層同士が重なる領域の積層方向と直交する方向の外側において前記電極に固定されている。
【0008】
かかる構成によれば、電極体における活物質層同士が重なる領域の外側において、セパレータが熱等によって縮み難い電極に固定されているため、セパレータが熱等によって縮もうとしたときに、活物質層間からはみ出しているセパレータの部位の該活物質層間への入り込みが抑えられ、これにより、セパレータの活物質層間からのはみ出し量の減少が抑えられる。
【0009】
前記蓄電素子は、
前記セパレータが前記電極に固定されている位置において前記電極体に入り込む凸部を有する金属部材を備えてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、セパレータの電極への固定が金属部材の凸部によって強固に維持される。
【0011】
また、前記蓄電素子では、
前記電極における前記活物質層が配置された領域と異なる領域に接続される集電部材を備え、
前記金属部材は、前記集電部材と間隔をおいて配置されてもよい。
【0012】
集電部材は、蓄電素子の充放電時に電流が流れることによって温度が上昇し易いが、かかる構成によれば、集電部材で生じた熱が金属部材を介してセパレータに伝わるのを防ぐことができる。
【0013】
また、前記蓄電素子は、
電解液と、
前記電解液及び前記電極体を収容するケースと、を備え、
前記電極体では、前記積層された電極及びセパレータが巻回され、
前記セパレータは、前記電極体の巻回中心軸方向の端部において前記電極に固定されてもよい。
【0014】
このような電極体(いわゆる巻回型の電極体)では、電極体の巻回中心軸方向の端部においてセパレータのはみ出し量を確保することで、ケース内における電極体の巻回中心軸方向の端部でのセパレータと電解液との接触が確保され、これにより、電解液が巻回型の電極体の巻回中心部へ好適に供給される。
【0015】
この場合、
前記電極体の巻回中心軸方向の両端部において、前記セパレータが前記電極に固定されることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、電極体の巻回中心軸方向の両端部において、セパレータと電解液との接触が確保されるため、電解液が巻回型の電極体の巻回中心部へより好適に供給される。
【0017】
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
活物質層を含む電極と、セパレータと、を積層して、電極体を形成することと、
前記電極体において、前記電極及び前記セパレータの積層方向における前記活物質層同士が重なる領域の積層方向と直交する方向の外側で前記セパレータを前記電極に固定することと、を備える。
【0018】
かかる構成によれば、製造された蓄電素子において、電極体における活物質層同士が重なる領域の外側においてセパレータが熱等によって縮み難い電極に固定されているため、セパレータが熱等によって縮もうとしたときに、活物質層間からはみ出しているセパレータの部位の該活物質層間への入り込みが抑えられ、これにより、セパレータの活物質層間からのはみ出し量の減少が抑えられる。
【0019】
前記蓄電素子の製造方法では、
前記セパレータの前記電極への固定では、前記セパレータが前記電極に固定される位置において金属部材の凸部が前記電極体に入り込んだ状態を形成してもよい。
【0020】
かかる構成によれば、製造された蓄電素子において、セパレータの電極への固定が金属部材の凸部によって強固に維持される。
【0021】
また、前記蓄電素子の製造方法において、
前記セパレータの前記電極への固定では、積層された前記電極及び前記セパレータに前記金属部材を重ね合わせた状態でメカニカルクリンチすることによって前記凸部を形成してもよい。
【0022】
かかる構成によれば、セパレータの電極への固定が金属部材の塑性変形によって好適に維持される。即ち、金属部材の塑性変形(メカニカルクリンチ)を利用した固定(接合)構造によって、セパレータの電極への強固な固定が十分に維持される。
【0023】
前記蓄電素子の製造方法は、
前記電極に集電部材を接続すること、を備え、
前記集電部材と前記金属部材とは、一体であってもよい。
【0024】
かかる構成によれば、電極と集電部材とを接続する(又は、セパレータを電極に固定する)ことで金属部材(又は集電部材)が位置決めされ、これにより、メカニカルクリンチし易くなる(又は接続し易くなる)。
【発明の効果】
【0025】
以上より、本発明によれば、電極体において電極の積層方向に重なる活物質層間からはみ出しているセパレータのはみ出し量の減少を抑えることができる蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1〜
図7を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0028】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0029】
蓄電素子は、
図1〜
図4に示すように、活物質層232、242を含む電極23、24と、セパレータ25と、を有し、且つ、電極23、24とセパレータ25とが積層される電極体2を備える。また、蓄電素子1は、電極体2を収容するケース3と、少なくとも一部がケース3の外側に配置される外部端子4と、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5と、電極体2とケース3との間を絶縁する絶縁部材6と、を備える。本実施形態の蓄電素子1では、活物質層は、正極活物質層232と負極活物質層242とを有し、電極は、正極23と負極24とを有する。
【0030】
電極体2は、巻芯21と、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層された積層体22であって、巻芯21の周囲に巻回された積層体22と、を備える(
図3及び
図4参照)。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0031】
巻芯21は、通常、絶縁材料によって形成される。本実施形態の巻芯21は、筒状、より詳しくは、偏平な筒状である。この巻芯21は、可撓性又は熱可塑性を有するシートを巻回することによって形成される。本実施形態の前記シートは、合成樹脂によって形成されている。
【0032】
正極23は、
図5にも示されるように、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向(短手方向:
図5における左右方向)の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔であり、正極23では、正極活物質層232が金属箔231の両面にそれぞれ配置されている、即ち、正極23では、厚さ方向において、金属箔231が正極活物質層232によって挟まれている。
【0033】
正極活物質層232は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
【0034】
前記正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、Li
aMe
bO
c(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(Li
aCo
yO
2、Li
aNi
xO
2、Li
aMn
zO
4、Li
aNi
xCo
yMn
zO
2等)、Li
aMe
b(XO
c)
d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(Li
aFe
bPO
4、Li
aMn
bPO
4、Li
aMn
bSiO
4、Li
aCo
bPO
4F等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2である。
【0035】
正極活物質層232に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0036】
正極活物質層232は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層232は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0037】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向(短手方向:
図5における左右方向)の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔であり、負極24では、負極活物質層242が金属箔241の両面にそれぞれ配置されている、即ち、負極24では、厚さ方向において、金属箔241が負極活物質層242によって挟まれている。本実施形態の負極活物質層242の幅方向の寸法は、正極活物質層232の幅方向の寸法より大きい。
【0038】
負極活物質層242は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
【0039】
前記負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、難黒鉛化炭素である。
【0040】
負極活物質層242に用いられるバインダーは、正極活物質層232に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0041】
負極活物質層242は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層242は、導電助剤を有していない。
【0042】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25の積層体22が巻回されている。
【0043】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0044】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO
2粒子、Al
2O
3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0045】
セパレータ25の幅方向(
図5における左右方向)の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向:
図5における上下方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の金属箔231が露出した部位(正極活物質層232が重なっていない部位:露出部位)と、負極24の金属箔241が露出した部位(負極活物質層242が重なっていない部位:露出部位)とは重なっていない。即ち、正極23の露出部位が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の露出部位が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の露出部位の突出方向と反対の方向)に突出する。このような状態で積層された正極23、負極24、及びセパレータ25(即ち、積層体22)が巻回されることによって、電極体2が形成される。この巻回された状態において、セパレータ25は、活物質層同士(本実施形態の例では、正極活物質層232と負極活物質層242と)が重なっている領域の外側において電極(本実施形態の例では、正極23及び負極24の両方)に固定されている(
図6参照)。このため、本実施形態のセパレータ25は、このセパレータ25の電極23、24への固定構造が形成される領域の分(
図5におけるα参照)だけ、正極活物質層232と負極活物質層242とが積層方向に重なっている領域(
図5におけるβ参照)から積層方向と直交する方向に突出している。前記セパレータ25の電極23、24への固定構造の詳細については、後述する。また、本実施形態の電極体2では、正極23の露出部位又は負極24の露出部位のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0046】
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。本実施形態の非被覆積層部26は、巻回された正極23、負極24、及びセパレータ25の巻回中心軸方向から見て、中空部27(
図2及び
図4参照)を挟んで二つの部位(二分された非被覆積層部)261に区分けされる。
【0047】
以上のように構成される非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の露出部位のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の露出部位のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0048】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33(
図3参照)に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0049】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO
4、LiBF
4、及びLiPF
6等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF
6を溶解させたものである。
【0050】
ケース3は、
図1〜
図3に示すように、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間33が画定されている。本実施形態のケース3では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とが溶接によって接合されている。
【0051】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部312と、を備える。
【0052】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0053】
以下では、閉塞部311の長辺方向をX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向をY軸方向とし、閉塞部311の法線方向をZ軸方向とする。
【0054】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0055】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0056】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、Z軸方向から見て、ケース本体31の開口周縁部34に対応した輪郭形状を有する。即ち、蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように該ケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0057】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、バスバ等が溶接可能な面41を有する。
【0058】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と導通可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、
図2、
図3及び
図6に示すように、クリップ部材55を介して電極体2と導通可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを導通可能に接続するクリップ部材55を備える。このクリップ部材55は、電極体2の非被覆積層部26(詳しくは、二分された非被覆積層部261)において積層された正極23又は負極24を束ねるように挟む。これにより、クリップ部材55は、非被覆積層部26において積層される正極23(詳しくは、正極23の露出部位におけるセパレータ25と重なっていない部位)同士、又は負極24(詳しくは、負極24の露出部位におけるセパレータ25と重なっていない部位)同士を導通させる。本実施形態のクリップ部材55は、板状の金属材料をX−Y面(X軸とY軸とを含む面)に沿った断面がU字状となるように曲げ加工することによって形成される。本実施形態では、電極体2の正極に二つのクリップ部材55が配置されると共に、負極に二つのクリップ部材55が配置される。
【0059】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成され、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4とクリップ部材55とを導通させる。具体的に、集電体5は、外部端子4と導通可能に接続される第一接続部51、及び電極体2と通電可能に接続される第二接続部52を含む集電体本体(集電部材)50と、セパレータ25を電極23、24に固定するのに用いられる片部(金属部材)53と、を有する。この集電体5では、第一接続部51がケース3内において蓋板32と短壁部314との境界近傍から蓋板32に沿ってX軸方向に延びると共に、第二接続部52が第一接続部51の前記境界側の端部から長壁部313(詳しくは、長壁部313における短壁部314との境界近傍の部位)に沿ってZ軸方向に延びる。また、片部53は、第二接続部52から長壁部313に沿ってX軸方向に延びる。詳しくは、以下の通りである。
【0060】
第一接続部51は、外部端子4に通電可能に接続される。具体的に、第一接続部51は、ケース3(詳しくは蓋板32)と絶縁された状態でケース3(蓋板32)の内面に沿ってX軸方向に延びる板状の部位である。即ち、第一接続部51は、蓋板32と電極体2との間において、蓋板32に沿ってX軸方向に延びる。第一接続部51の先端部(蓋板32と短壁部314との境界位置と反対側の端部)には、外部端子4が接続される(
図3参照)。
【0061】
第二接続部52は、電極体2(本実施形態の例では、クリップ部材55を介して電極体2の非被覆積層部26)に導通可能に接続される。この第二接続部52は、ケース3(詳しくは長壁部313)と絶縁された状態でケース3(長壁部313)の内面に沿って第一接続部51からZ軸方向に延びる。具体的に、第二接続部52は、第一接続部51の前記境界近傍の部位(蓋板32と短壁部314との境界近傍の部位)のY軸方向の両端部から、電極体2の非被覆積層部26をY軸方向に挟むように該非被覆積層部26に沿ってZ軸方向にそれぞれ延びる板状の部位である。即ち、第二接続部52は、第一接続部51から、電極体2のY軸方向の一方側における長壁部313と電極体2(非被覆積層部26)との間において電極体2(非被覆積層部26)に沿ってZ軸方向に延びると共に、電極体2のY軸方向の他方側における長壁部313と電極体2(非被覆積層部26)との間において電極体2(非被覆積層部26)に沿ってZ軸方向に延びる。この第二接続部52は、クリップ部材55と接合することで、電極体2(非被覆積層部26)と導通する。本実施形態の第二接続部52は、非被覆積層部26を挟み込んだ状態のクリップ部材55と重ねられた状態で、且つZ軸方向に間隔をあけた複数箇所においてメカニカルクリンチされている(
図6におけるクリンチ接合部位521参照)。これにより、集電体5が電極体2に接続(固着)される。尚、第二接続部52とクリップ部材55との接合は、メカニカルクリンチに限定されず、超音波接合や溶接等でもよい。また、
図2の集電体5は、メカニカルクリンチ(クリンチ接合)される前の状態である。
【0062】
片部53は、電極体2と長壁部313との間において、第二接続部52から電極体2の表面に沿ってX軸方向に延びている板状の部位である。この片部53は、先端がセパレータ25の幅方向(X軸方向)の端部と重なる位置まで延びている。そして、片部53は、電極23、24の積層方向(Y軸方向)において活物質層232、242同士が重なった領域のX軸方向の外側の領域であって、セパレータ25と電極23、24の露出部位とがY軸方向に重なった領域において、これら電極23、24(露出部位)及びセパレータ25と共にメカニカルクリンチ(クリンチ接合)されている(
図6においてクリンチ接合部位530参照)。このメカニカルクリンチによって平板状の片部53が塑性変形し、
図7に示すように、該片部53において電極体2に入り込む凸部531が形成される。これにより、セパレータ25が電極23、24に固定される。このとき、凸部531に対して、積層された電極23、24の露出部位とセパレータ25とを挟んだ位置に、該凸部531と対応する形状の凹部541を有する板状部材54が配置されている。本実施家形態の蓄電素子1では、セパレータ25は、電極体2の巻回中心軸方向(X軸方向)の端部において電極23、24に固定されている。より詳しくは、正極側に配置された集電体5と、負極側に配置された集電体5とのそれぞれに複数の片部53が設けられ(本実施形態に示す例では、各第二接続部52において二つの片部53が設けられ、)、各片部53がセパレータ25を電極23、24に固定するのに用いられている。このため、電極体2の巻回中心軸方向の両端部において、セパレータ25が電極23、24に複数箇所で固定されている。
【0063】
以上のように構成される集電体5は、上記のように、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3内において、電極体2の正極非被覆積層部26と、負極非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。
【0064】
正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0065】
絶縁部材6は、
図2及び
図3に示すように、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。本実施形態の絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。
【0066】
次に、蓄電素子1の製造方法について
図8も参照しつつ説明する。
【0067】
先ず、活物質層232、242を含む電極23、24が、セパレータ25を介して積層されることによって電極体2が形成される(ステップS1)。詳しくは、正極23と負極24とがセパレータ25を介して積層された積層体22が巻芯21の周囲に巻回され、これにより、電極体2が形成される。
【0068】
次に、蓋板32に対し、集電体5及び外部端子4等が組み付けられる(ステップS2)。続いて、電極体2が集電体5に接続される。この集電体5の電極体2への接続では、セパレータ25を電極23、24に固定する工程(ステップS3)と、集電体本体50を電極体2(詳しくは、正極23の非被覆積層部26又は負極24の非被覆積層部26)に導通させる工程(ステップS4)と、を含む。
【0069】
具体的に、セパレータ25を電極23、24に固定する工程では、電極体2において、電極23、24の積層方向における活物質層232、242同士が重なる領域の外側でセパレータ25が電極23、24に固定される。詳しくは、以下の通りである。
【0070】
電極体2の巻回中心軸方向の端部において積層されている電極23、24の露出部位の束(即ち、電極体2の二分された非被覆積層部261)が、クリップ部材55によって挟み込まれる。この状態で、積層方向において電極23、24の露出部位とセパレータ25とが重なっている部位であって活物質層232、242の配置されてない部位に、集電体5の片部53が重ねられる。また、片部53との間に、前記電極23、24の露出部位とセパレータ25とが重なっている部位を挟み込むように、電極体2の中空部27内に板状の部材54が配置される(
図9参照)。続いて、重なっている電極23、24の露出部位とセパレータ25と片部53と板状の部材54とがメカニカルクリンチによって接合される。このメカニカルクリンチによる接合は、
図9及び
図10に示すように、重ね合わされた非被覆積層部261(電極23、24の露出部位とセパレータ25とが重なっている部位であって活物質層232、242の配置されてない部位)と片部53と板状の部材54との一部を、雄金型(パンチ)80によって雌金型(ダイ)81内に押し込み、これにより、片部53を局所的に折り曲げ(凸部531を形成し)、押し込まれた側の部材(本実施形態の例では、板状の部材54の凹部541)と、前記折り曲げによって形成されたインターロック部(凸部531における拡径された部位:
図11参照)532を二分された非被覆積層部261を介して係止させることによって接合する(凹凸嵌合させる)。本実施形態の例では、一つの非被覆積層部261に対して、二箇所のメカニカルクリンチによる接合が行われる(
図6の符号530参照)。また、本実施形態では、中空部27内に雌金型81が配置され、外側に雄金型80が配置された状態でメカニカルクリンチによる接合が行われる。このセパレータ25と電極23、24との接合部位(固定部位)では、集電体5の一部である片部53と電極23、24との間にセパレータ25があるため、集電体5と電極体2との間の導通が得られない(又は十分な導通が得られない)。
【0071】
次に、集電体本体50を電極体2に導通させる工程では、第二接続部52と、非被覆積層部261を挟み込んだ状態のクリップ部材55と、がメカニカルクリンチによって接合される。このメカニカルクリンチは、上記のセパレータ25を電極23、24に固定する工程で行われるメカニカルクリンチと同じである。本実施形態の例では、一つの第二接続部52に対して、三箇所のメカニカルクリンチによる接合が行われる(
図6の符号521参照)。この第二接続部52(集電体本体50)と電極23、24との接合部位(固定部位)では、集電体5の一部である第二接続部52と電極23、24とが接しているため、集電体5と電極体2との間の十分な導通が得られる。
【0072】
以上のように二つの集電体5が電極体2に接続されると、蓋板32に組み付けられた状態の電極体2及び集電体5等が絶縁部材6によって覆われ、この絶縁部材6に覆われた状態の電極体2及び集電体5等がケース本体31内に挿入される。そして、ケース本体31の開口が蓋板32によって塞がれた状態で、ケース本体31と蓋板32との境界部が溶接(例えばレーザ溶接)される(ステップS5)ことで、蓄電素子1が完成する。
【0073】
以上の蓄電素子1によれば、電極体2における活物質層232、242同士が重なる領域の外側においてセパレータ25が熱等によって縮み難い電極23、24に固定されているため、セパレータ25が熱等によって縮もうとしたときに、活物質層232、242間からはみ出しているセパレータ25の部位の該活物質層232、242間への入り込みが抑えられる。これにより、セパレータ25の活物質層232、242間からのはみ出し量の減少が抑えられる。
【0074】
また、本実施形態の蓄電素子1では、セパレータ25が電極23、24に固定されている位置において、金属製の凸部531が電極体2に入り込んでいる。このため、蓄電素子1において、セパレータ25の電極23、24への固定が強固に維持される。
【0075】
また、本実施形態の蓄電素子1では、セパレータ25が、電極体2の巻回中心軸方向の端部において電極23、24に固定されている。このような電極体2(いわゆる巻回型の電極体2)では、電極体2の巻回中心軸方向の端部においてセパレータ25のはみ出し量を確保することで、ケース3内における電極体2の巻回中心軸方向の端部でのセパレータ25と電解液(セパレータ25に保持されずにケース3内に溜まっている、いわゆる余剰電解液)との接触が確保される。これにより、蓄電素子1では、電解液が巻回型の電極体2の巻回中心部へ好適に供給される。
【0076】
本実施形態の蓄電素子1の製造方法では、セパレータ25の電極23、24への固定が、メカニカルクリンチによって行われている。これにより、蓄電素子1では、セパレータ25の電極23、24への固定が片部53の塑性変形によって好適に維持される。即ち、金属製の片部53の塑性変形(メカニカルクリンチ)を利用した固定(接合)構造によって、セパレータ25の電極23、24への強固な固定が十分に維持される。
【0077】
本実施形態の蓄電素子1では、集電体本体50と片部53とは、一体である。このため、蓄電素子1の製造時において、セパレータ25を電極23、24に固定することで集電体本体50が電極体2に対して位置決めされる。これにより、前記製造時において、電極体2と集電体本体50との接続時に互いの相対位置を調整しなくてもよくなり、その結果、電極体2と集電体本体50との接続が容易になる。
【0078】
尚、本発明の蓄電素子、及び蓄電素子の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0079】
上記実施形態の蓄電素子1では、メカニカルクリンチ(クリンチ接合)によってセパレータ25が電極23、24に固定されているが、この構成に限定されず、接着等の他の接合方法によって活物質層232、242の外側で電極23、24に固定されていてもよい。
【0080】
上記実施形態の蓄電素子1では、メカニカルクリンチ(クリンチ接合)によって形成された凸部531によってセパレータ25を電極23、24に固定しているが、この構成に限定されない。セパレータ25は、金属製のリベット等によって電極23、24に固定されてもよい。即ち、セパレータ25は、電極体2に対して電極23、24の積層方向に入り込む金属製の凸部によって電極23、24に固定されていればよい。
【0081】
上記実施形態の蓄電素子1では、電極体2の巻回中心軸方向の両端部において、メカニカルクリンチによってセパレータ25が電極23、24に固定されているが、この構成に限定されない。電極体2の巻回中心軸方向の一方の端部においてのみ、メカニカルクリンチによってセパレータ25が電極23、24に固定され、他方の端部では、他の固定手段によってセパレータ25が電極23、24に固定されてもよい。
【0082】
上記実施形態の蓄電素子1では、電極体2は、積層された帯状の電極23、24を巻回した、いわゆる巻回型であるが、この構成に限定されない。電極体2は、枚葉状の電極が積層された、いわゆる積層型であってもよい。この場合、セパレータ25の電極23、24への固定は、枚葉状の電極の周縁部における周方向のいずれの位置で行われてもよい。例えば、枚葉状の電極が四角形状であれば、セパレータ25の電極23、24への固定は、前記四角形状の各辺に対応する位置で行われてもよく、前記四角形状のいずれかの辺に対応する位置で行われてもよい。
【0083】
上記実施形態の蓄電素子1では、集電体本体50と、片部53と、が一体であるが、この構成に限定されない。例えば、
図12及び
図13に示すように、集電体本体50と片部53とが、別体であり、互いに間隔をおいて配置さてもよい。集電体本体(外部端子4と電極体2とを導通させる部材又は部位)50は、蓄電素子1の充放電時に電流が流れることによって温度が上昇し易いが、この構成によれば、集電体本体50で生じた熱が片部(電極23、24へのセパレータ25の固定に用いられる金属部材)53を介してセパレータ25に伝わるのを防ぐことができる。
【0084】
上記実施形態のセパレータ25では、多孔質膜によって形成された基材の上に無機層が設けられているが、この構成に限定されない。例えば、セパレータ25は、多孔質膜によって形成された基材のみによって構成されていてもよい。無機層の無いセパレータ25の場合には、熱によるセパレータ25の縮みが無機層を備えたセパレータより大きくなるため、セパレータ25を電極23、24に固定することで、電極体2におい電極23、24の積層方向に重なる活物質層232、242間からはみ出しているセパレータ25のはみ出し量の減少が抑えられるといった効果がより顕著となる。
【0085】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0086】
蓄電素子(例えば電池)1は、
図14に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。