【実施例】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0026】
[ミラーデバイスの構成]
図1及び
図2は、実施例に係るミラーデバイス1の構成を示す。具体的には、
図1は、ミラーデバイス1が車室内のルームミラー12に装着された状態(単に「装着状態」とも呼ぶ。)における正面図を示す。また、
図2は、装着状態におけるミラーデバイス1の背面図を示す。以後では、車両の進行方向を「X軸方向」、車両の左右方向を「Y軸方向」、路面と垂直な方向を「Z軸方向」とし、各正方向を図のように定める。なお、
図1及び
図2では、ルームミラー12は傾けられていない。
【0027】
ミラーデバイス1は、内蔵二次電池またはシガーチャージャーを介した外部からの電源供給により駆動され、主に、ミラー部13と、前方撮影カメラ4と、ミラー部13の背面に存在するディスプレイ(表示手段)10と、挟持部14A〜14Dとを有する。そして、ミラーデバイス1は、装着状態において、挟持部14A〜14Dがルームミラー12を挟持することでルームミラー12に対して固定される。そして、ミラーデバイス1の装着状態では、ルームミラー12の鏡面と、ミラーデバイス1の背面とが重なる。本実施例では、ミラーデバイス1は、急ブレーキなどの危険運転を検知する。ミラーデバイス1は、本発明における「挙動事故検知装置」の一例である。
【0028】
前方撮影カメラ4は、車両の前方を撮影した画像(前方画像)を生成するためのカメラであり、ミラーデバイス1の装着状態において、ルームミラー12と重ならないミラーデバイス1の背面部分に配置される。ミラー部13は、例えばハーフミラーであって、入射した一部の光を透過させ、その他の光を反射させる。これにより、ミラー部13は、背面にあるディスプレイ10が非発光状態では車両の後方風景を映す通常のミラーとして機能し、ディスプレイ10が発光状態では、ディスプレイ10から出射された光を透過させることで、運転者にディスプレイ10の表示内容を視認させる。ディスプレイ10は、前方画像から切り出された画像に、運転者を案内するための文字や図形などを表す画像を重畳させて表示する。
図1では、ディスプレイ10は、車速を表す案内画像と、点灯した信号灯を強調した四角枠の案内画像とを、前方画像から切り出した画像に重畳して表示している。
【0029】
図3は、ミラーデバイス1の機能ブロック図である。
図3に示すように、ミラーデバイス1は、前方撮影カメラ4と、加速度センサ6と、ジャイロセンサ7と、ディスプレイ10と、RAM11と、不揮発性メモリ15と、GPS受信機16と、ボタンやリモートコントローラなどの入力部17と、通信部18と、制御部19とを備える。
【0030】
RAM11は、制御部19により前方画像から切り出された画像を一時的に記憶する画像バッファ等として機能する記憶領域である。不揮発性メモリ15は、例えば内蔵フラッシュメモリやSDカードなどの記憶媒体である。不揮発性メモリ15は、制御部19が危険運転を検知した場合に、制御部19により、RAM11に記憶された危険運転検知前の所定時間分の画像が書き込まれる。
【0031】
加速度センサ6は、ルームミラー12及びミラー部13に対して垂直な方向(即ちミラーデバイス1の正面方向)の加速度を検出する。言い換えると、加速度センサ6は、ルームミラー12が傾いていない状態(即ちミラーデバイス1の短手方向がZ軸方向と一致する状態)でX軸方向の加速度を検知する。加速度センサ6は、検出した加速度の検出値(「加速度検出値Gx」とも呼ぶ。)を、制御部19に供給する。以後では、加速度センサ6が加速度を検出する方向を「加速度検出方向」とも呼ぶ。ジャイロセンサ7は、ミラーデバイス1のY軸回り(即ちピッチ方向)の角速度を検出し、その検出値(「ジャイロ検出値GY」とも呼ぶ。)を、制御部19に供給する。
【0032】
GPS受信機16は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置や車両の速度を検出するために用いられる。通信部18は、制御部19の制御に基づき、図示しない同一車両内に設置されたナビゲーション装置や車外のサーバ装置等とデータ通信を行い、制御部19が実行する処理に必要な情報を受信する。
【0033】
制御部19は、CPUなどであり、前方撮影カメラ4が生成する前方画像から一部を切り出した画像をディスプレイ10に表示させると共に、当該画像をRAM11に書き込むことで、所定時間分の画像をRAM11に記憶させる。また、制御部19は、加速度センサ6が出力する加速度検出値Gxに基づき、危険運転を検知する処理(「危険運転検知処理」とも呼ぶ。)を行う。このとき、制御部19は、危険運転とみなす加速度検出値Gxの範囲の境界となる閾値を、過去に検出した加速度検出値Gxに基づき動的に設定する。そして、制御部19は、危険運転を検知した場合に、RAM11に保存した所定時間分(概ね10〜100秒程度)の画像を不揮発性メモリ15に書き込む。制御部19は、本発明における「加速度取得部」、「設定部」、「検知部」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0034】
以後では、危険運転とみなすか否か判定するための加速度検出値Gxの上限の閾値を「閾値Tmax」、下限の閾値を「閾値Tmin」と表記する。また、ミラーデバイス1が傾いていない(即ち、短手方向がZ軸方向と一致する)状態、言い換えると、ミラーデバイス1の傾きに起因した加速度検出方向における重力加速度の影響がない状態において設定すべき閾値Tmax、閾値Tminをそれぞれ、「上限初期閾値」、「下限初期閾値」とも呼ぶ。以下の実施例では、一例として、上限初期閾値は「0.35」、下限初期閾値は「−0.35」に設定するものとする。さらに、上限初期閾値及び下限初期閾値を補正するための値を「補正値ΔT」とも呼ぶ。
【0035】
[危険運転検知処理]
加速度検出値Gxに基づく危険運転検知処理について説明する。本実施例では、制御部19は、車両の停車時と車両の走行時とでそれぞれ補正値ΔTを算出し、閾値Tmax、Tminを設定する。ここで、車両の停車時での閾値Tmax、Tminの設定処理(「停車時閾値設定処理」とも呼ぶ。)と、車両の走行時での閾値Tmax、Tminの設定処理(「走行時閾値設定処理」とも呼ぶ。)とについてそれぞれ説明する。
【0036】
(1)
停車時閾値設定処理
制御部19は、車両の停車時には、上限初期閾値及び下限初期閾値に対し、車両が停車した際の加速度検出値Gxに基づき算出した補正値ΔTの平均値(「平均補正値ΔTa1」とも呼ぶ。)を加えることで、閾値Tmax、Tminをそれぞれ設定する。ここで、車両の停車時には、車両の加減速に伴った加速度検出値Gxの増減が発生しない。よって、制御部19は、車両の停車時に取得した加速度検出値Gxに基づく補正値ΔTにより閾値Tmax、Tminを補正することで、重力加速度により増減する加速度検出値Gxの増減分(即ち重力加速度の加速度検出方向における分解成分)の影響を好適に排除する。
【0037】
まず、補正値Tの算出方法について
図4を参照して説明する。
図4は、ミラーデバイス1を側面から観察した図である。
図4において、傾き「θ」は、Z軸方向に対するミラーデバイス1の傾きを示す。
【0038】
この場合、重力加速度を「1G=9.81」とすると、
図4の関係から、
θ=ASIN(Gx/9.81)
が成立する(「ASIN」はアークサイン)。また、
図4によれば、重力加速度(1G)の加速度検出方向における分解成分は、角度θを用いると、以下の式により表される。
SIN(θ)×1G
【0039】
以上の2つの式と、ミラーデバイス1の振動等に起因した微小な角度変化を示すジャイロセンサ7の検出値GYとを勘案し、制御部19は、補正値ΔTを、以下の式(1)に基づき算出する。
ΔT=SIN(ASIN(Gx/9.81)+GY)×1G 式(1)
【0040】
ここで、車両停車時には、車両の進行に伴う加速度成分が存在しない。よって、式(1)を用いることで、制御部19は、重力加速度の加速度検出方向での分解成分を、補正値ΔTとして的確に算出することができる。この場合、補正値ΔTは、傾きθが大きいほど大きくなる。具体的には、傾きθが0の場合には約0となり、傾きθが90°の場合には約1Gとなる。
【0041】
また、本実施例では、制御部19は、車両が所定回数(ここでは3回とする)停車した際にそれぞれ算出された補正値ΔTの平均補正値ΔTa1に基づき、閾値Tmax、Tminをそれぞれ設定する。この場合、上限初期閾値を「0.35」、下限初期閾値を「−0.35」とすると、制御部19は、閾値Tmax、Tminを、それぞれ以下の式(2)、(3)により算出する。
Tmax=ΔTa1+0.35 式(2)
Tmin=ΔTa1−0.35 式(3)
これにより、制御部19は、重力加速度により増減する加速度検出値Gxの増減分をオフセットとした閾値Tmax、Tminを好適に設定することができる。
【0042】
ここで、所定回数分の補正値ΔTの平均を算出する効果について
図5を参照して補足説明する。
【0043】
図5は、車両の時系列での停車位置「P1」〜「P4」を概略的に示した図である。一般に、坂道で停車した場合、坂道の傾斜度合いに応じて車体が傾くため、重力加速度の方向とミラーデバイス1の加速度検出方向との相対角度が異なり、重力加速度の加速度検出方向での分解成分も異なるものになる。以上を勘案し、本実施例では、制御部19は、一時的に形成された坂道で停車した場合でもその影響を低減するために、所定回数分(本実施例では3回)の補正値ΔTの平均である平均補正値ΔTa1を用いて閾値Tmax、Tminを設定する。これにより、例えば
図5の傾斜がある位置P4で停車した場合であっても、平坦な位置P2、P3で算出した補正値ΔTも加味して閾値Tmax、Tminを設定するため、坂道での停車に起因した閾値Tmax、Tminの設定誤差を好適に低減することができる。
【0044】
図6は、制御部19が実行する閾値設定処理の手順を示すフローチャートである。制御部19は、
図6の処理を繰り返し実行する。
【0045】
まず、制御部19は、車両が停車中であるか否か判定する(ステップS101)。制御部19は、例えば、GPS受信機16の出力に基づき車両の速度を検出し、検出した速度が0であるか否か判定する。なお、制御部19は、GPS受信機16以外の他のセンサの出力(例えば車速パルス等)に基づき車両の停止の有無を判定してもよい。
【0046】
そして、制御部19は、車両が停車中である場合(ステップS101;Yes)、停車時閾値設定処理に相当するステップS102〜S105の処理を実行する。一方、制御部19は、車両が停車中でない場合(ステップS101;No)、後述する走行時閾値設定処理を実行する(ステップS106)。
【0047】
次に、制御部19は、加速度検出値Gx及びジャイロ検出値GYに基づき、補正値ΔTを算出し、不揮発性メモリ15等に記憶する(ステップS102)。具体的には、制御部19は、上述した式(1)に基づき、補正値ΔTを算出する。なお、ここでは、制御部19は、1回の停車につき補正値ΔTを一度のみ算出するものとする。そして、制御部19は、ステップS102での補正値ΔTでの算出回数は3回になったか否か判定する(ステップS103)。
【0048】
そして、制御部19は、補正値ΔTでの算出回数は3回になった場合(ステップS103;Yes)、直近の過去3回分の補正値ΔTの平均値である平均補正値ΔTa1を算出する(ステップS104)。そして、制御部19は、平均補正値ΔTa1に基づき閾値Tmax、Tminを設定する(ステップS105)。具体的には、制御部19は、式(2)に基づき閾値Tmaxを算出し、式(3)に基づき閾値Tminを算出する。一方、制御部19は、補正値ΔTでの算出回数は3回になっていない場合(ステップS103;No)、ステップS101へ処理を戻す。
【0049】
なお、
図6のフローチャートに代えて、制御部19は、補正値ΔTでの算出回数は3回に達していない場合であっても、2つ以下の補正値ΔTに基づき平均補正値ΔTa1を算出してもよい。この場合、制御部19は、ステップS102を最初に実行する場合には、平均補正値ΔTa1を当該ステップS102で算出した補正値ΔTとする。
【0050】
また、後述する走行時閾値設定処理により閾値Tmax、Tminを設定した場合、制御部19は、ステップS102で不揮発性メモリ15等に記憶した補正値ΔTを削除し、ステップS103でカウントした算出回数を0としてもよい。この場合、制御部19は、後述する走行時閾値設定処理で閾値Tmax、Tminを設定するのに用いた平均補正値を、平均補正値ΔTa1を算出する1つ目のサンプルとして記憶してもよい。ミラーデバイス1の電源がオフになった場合も同様に、制御部19は、ステップS102で不揮発性メモリ15等に記憶した補正値ΔTを削除し、ステップS103でカウントする算出回数を0としてもよい。
【0051】
(2)
走行時閾値設定処理
走行時閾値設定処理では、制御部19は、車両の走行中に式(1)に基づき補正値ΔTを算出し、直前に算出した所定時間長分の補正値ΔTの平均値(「平均補正値ΔTa2」とも呼ぶ。)を算出する。上述の所定時間長は、車両が一時的な減速や加速に起因した加速度検出値Gxの増減値が相殺又は低減されるような時間長に設定され、本実施例では一例として60秒に設定される。そして、制御部19は、平均補正値ΔTa2と車両が最後に停車した時に算出した平均補正値ΔTa1との差が所定差より大きい場合には、走行中に運転者によるルームミラー12の角度調整等によりミラーデバイス1の傾きθが変化したと判断し、平均補正値ΔTa2により閾値Tmax、Tminを算出する。
【0052】
ここで、一例として、上述の所定差を、10°分の傾きθの変化が生じた場合の重力加速度の加速度検出方向での分解成分の変化量に相当する「0.174」とした場合、制御部19は、以下の式(4)が成立したときに、平均補正値ΔTa2により閾値Tmax、Tminを算出する。
|ΔTa2−ΔTa1|>0.174 式(4)
【0053】
そして、式(4)を満たす場合、制御部19は、以下の式(5)、(6)に基づき平均補正値ΔTa2から閾値Tmax、Tminを算出する。
Tmax=ΔTa2+0.35 式(5)
Tmin=ΔTa2−0.35 式(6)
図7は、
図6のステップS106で制御部19が実行する走行時閾値設定処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、制御部19は、車両走行中での加速度検出値Gx及びジャイロ検出値GYを取得し、式(1)に基づき、所定秒(例えば1秒)間隔ごとに補正値ΔTを算出して不揮発性メモリ15等に記憶する(ステップS201)。そして、制御部19は、直前の60秒間に算出した所定個数分の補正値ΔTを不揮発性メモリ15から抽出し、これらの平均値である平均補正値ΔTa2を算出する(ステップS202)。
【0055】
次に、制御部19は、ステップS202で算出した平均補正値ΔTa2と、ステップS104を最後に実行したときに算出した平均補正値ΔTa1とを用いて、式(4)が成立するか否か判定する(ステップS203)。これにより、制御部19は、車両の走行中にミラーデバイス1の傾きθがルームミラー12の角度調整等に起因して変化したか否か判定する。
【0056】
そして、制御部19は、式(4)が成立したと判断した場合(ステップS203;Yes)、平均補正値ΔTa2に基づき閾値Tmax、Tminを設定する(ステップS204)。具体的には、制御部19は、式(5)及び式(6)に基づき、閾値Tmax、Tminを設定する。
【0057】
ここで、平均補正値ΔTa2は、60秒間の補正値ΔTの平均であることから、車両が一時的な減速や加速に起因した加速度検出値Gxの増減値が相殺又は低減されている。よって、制御部19は、走行時閾値設定処理により、車両の走行中にミラーデバイス1の傾きθが変化した場合であっても、現在のミラーデバイス1の傾きθに応じた重力加速度による加速度検出値Gxの増減分による影響を排除した閾値Tmax、Tminを好適に設定することができる。
【0058】
なお、制御部19は、
図7に示す走行時閾値設定処理を、走行時に加えて、停車時においても実行してもよい。この場合、制御部19は、車両の停車時には、停車時閾値設定処理と走行時閾値設定処理とを並行して実行し、車両の走行時には、走行時閾値設定処理のみを実行する。
【0059】
[本実施例による効果]
本実施例による効果について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0060】
図8(A)、(B)は、閾値Tmax、Tminをそれぞれ、上限初期閾値「0.35」と下限初期閾値「−0.35」とに設定した場合の閾値Tmax、Tminと加速度検出値Gxの時間変化との関係を示す。ここで、
図8(A)は、傾きθが0度の場合の加速度検出値Gxの時間変化を示し、
図8(B)は、傾きθが約15度の場合の加速度検出値Gxの時間変化を示す。
【0061】
図8(A)の例では、傾きθが0度であり、重力加速度の加速度検出方向での分解成分が0となることから、定常時の加速度検出値Gxが閾値Tmax、Tminのほぼ中間となっている。この場合、制御部19は、閾値Tmax、Tminと加速度検出値Gxとに基づき、危険運転を好適に検出することが可能である。
【0062】
一方、
図8(B)の例では、ミラーデバイス1が傾いていることにより重力加速度の加速度検出方向での分解成分が存在することから、定常時の加速度検出値Gxが閾値Tmaxに既に偏っている。よって、この場合、危険運転には該当しないわずかな加速度検出値Gxの変化であっても加速度検出値Gxが閾値Tmaxに達することになる(例えば破線枠90参照)。この場合、制御部19は、危険運転であると誤検知してしまうことになる。
【0063】
図9(A)、(B)は、本実施例の方法に基づき上限初期閾値「0.35」と下限初期閾値「−0.35」とを平均補正値ΔTa1又は平均補正値ΔTa2により補正して閾値Tmax、Tminを設定した場合の閾値Tmax、Tminと加速度検出値Gxの時間変化との関係を示す。ここで、
図9(A)は、
図8(B)と同じ加速度検出値Gxの時間変化を示し、
図9(B)は、危険運転が実際に発生した場合の加速度検出値Gxの時間変化を示す。
【0064】
図9(A)に示すように、本実施例の方法に基づき閾値Tmax、Tminを設定した場合には、
図8(B)の場合とは異なり、定常時の加速度検出値Gxが閾値Tmax、Tminのほぼ中間となっている。よって、この場合、
図8(B)の例では誤検出が発生した加速度検出値Gxの変化についても、制御部19は、危険運転と誤って判断するのを好適に防ぐことができる。一方、
図9(B)の例では、危険運転に伴う加速度検出値Gxの急激な変化が生じている(破線枠91、92参照)。この場合、加速度検出値Gxは閾値Tmax、Tminに達するため、制御部19は、実際に生じた危険運転について好適に検知することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施例に係るミラーデバイス1は、加速度センサ6と、制御部19とを備える。制御部19は、ミラーデバイス1が車両に設置された傾きθに応じた加速度である加速度検出値Gxを加速度センサ6から取得する。そして、制御部19は、車両の走行中に取得した加速度検出値Gxに基づき設定した閾値Tmax、Tminと、現在の加速度検出値Gxとに基づいて、危険運転となる車両の挙動を検知する。これにより、ミラーデバイス1は、加速度検出値Gxが傾きθに起因して増減する重力加速度の影響を好適に排除し、危険運転の有無を加速度検出値Gxから的確に判定することができる。
【0066】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0067】
(変形例1)
制御部19は、不揮発性メモリ15が記憶する地図データ又は通信部18により電気的に接続された図示しないナビゲーション装置が記憶する地図データに含まれる道路データに、道路の傾斜角度又は標高を示すデータ(「傾斜情報」とも呼ぶ。)が含まれている場合には、当該傾斜情報を参照し、加速度センサ6が出力する加速度検出値Gxを補正してもよい。この場合、制御部19は、傾斜情報に基づき補正した加速度検出値Gxを用いて、
図6及び
図7のフローチャートの処理を実行する。
【0068】
一般に、車両が傾斜のある道路に存在する場合、重力加速度の加速度検出方向での分解成分は、傾きθに依存すると共に、道路の傾斜角度にも依存する。即ち、傾斜のある道路では、仮に傾きθが0であっても、道路の傾斜角度分だけ車体が傾くため、重力加速度の加速度検出方向での分解成分が発生することになる。
【0069】
以上を勘案し、本変形例では、制御部19は、GPS受信機16等により特定した現在位置が存在する道路の傾斜情報を参照することで当該道路の傾斜角度を特定し、特定した傾斜角度に応じた補正値により加速度検出値Gxを補正する。この場合、例えば、不揮発性メモリ15は、道路の傾斜角度と、上述の補正値との関係を示す式又はマップを予め記憶しておき、制御部19は、上述の式又はマップを参照して加速度検出値Gxを補正する補正値を決定する。
【0070】
なお、例えば、道路データは、道路に相当するリンクと、道路の接続部分に相当するノードとにより表され、リンクごとに傾斜角度の情報が記録されている、又は、ノードごとに標高の情報が記録されている。よって、例えば、制御部19は、道路データに標高の情報が記憶されている場合、ノード間の距離とノード間の標高差とに基づき、道路の傾斜角度を算出する。
【0071】
このように、本変形例によれば、道路の傾斜(勾配)によらずに危険運転の有無を判定することができる。なお、本変形例では、制御部19は、本発明における「位置情報取得部」、不揮発性メモリ15等は本発明における「地図情報記憶部」の一例である。
【0072】
(変形例2)
制御部19は、変形例1と同様に道路の傾斜角度を勘案して閾値Tmax、Tminを設定する場合、道路の傾斜を予測・管理するサーバ装置から現在位置に対応する道路の傾斜角度の情報を受信してもよい。
【0073】
図10は、変形例2に係る危険運転検知システムの概略構成を示す。
図10に示す危険運転検知システムは、ミラーデバイス1と、ミラーデバイス1とは異なる車両に搭載された車載機1Aと、サーバ装置2とを有する。車載機1Aは、ミラーデバイス1と同一機能を有する装置であってもよく、ミラーデバイス1とは機能が異なるナビゲーション装置等であってもよい。サーバ装置2は、機能的には、位置ごとの加速度のデータベースである検出加速度DB210及び図示しない地図データを記憶する記憶部23と、通信部24と、サーバ装置2全体を制御する制御部25とを有する。
【0074】
ミラーデバイス1及びその他の車載機1A等は、現在位置情報と、車両の進行方向での加速度の検出値(即ち加速度検出値Gx)の情報とを含むアップロード情報「S1」を、定期的にサーバ装置2へ送信する。サーバ装置2は、通信部24によりアップロード情報S1を受信し、アップロード情報S1に含まれる加速度を、対応する現在位置情報が示す位置ごとに検出加速度DB210に登録する。
【0075】
また、ミラーデバイス1は、
図6及び
図7のフローチャートに基づき加速度検出値Gxを用いるタイミングで、GPS受信機16の出力等に基づき生成した現在位置情報を含む傾斜角度の要求信号「S2」をサーバ装置2へ送信する。サーバ装置2が要求信号S2を受信した場合、制御部25の傾斜予測部250は、要求信号S2の送信元のミラーデバイス1が存在する道路を地図データに基づき特定し、特定した道路上に該当する位置に関連付けられた検出加速度DB210の加速度を抽出する。そして、傾斜予測部250は、抽出した加速度から、特定した道路の傾斜角度を予測する。この場合、傾斜予測部250は、例えば、道路の傾斜角度と当該道路で検出される加速度との関係を示すマップ又は式を予め記憶部23に記憶しておき、当該マップ又は式を参照し、抽出した加速度の平均値等から、道路勾配を予測する。そして、傾斜予測部250は、予測した道路勾配を示す応答信号「S3」を、通信部24によりミラーデバイス1へ送信する。その後、ミラーデバイス1は、上述した変形例1と同様に、道路の傾斜角度による影響を除外するため、道路勾配に応じた補正値により加速度検出値Gxを補正する。
【0076】
この態様によっても、変形例1と同様に、ミラーデバイス1は、道路の傾斜を勘案して危険運転の有無を的確に判定することができる。なお、本変形例において、ミラーデバイス1の制御部19等は、本発明における「位置情報取得部」の一例、通信部18は「位置情報送信部」及び「受信部」の一例であり、サーバ装置2の制御部25は本発明における「傾斜予測部」の一例、通信部24は本発明における「受信部」及び「送信部」の一例である。また、車載機1Aは、本発明における「加速度を取得する端末」の一例である。
【0077】
(変形例3)
制御部19は、
図7の走行時閾値設定処理を、車両の走行時に限らず常時実行してもよい。これにより、制御部19は、例えば停車時であって
図6の停車時閾値設定処理の実行直後に傾きθが変化した場合等であっても、式(4)による平均補正値ΔTa1と平均補正値ΔTa2との比較により、的確に傾きθの変化を検知し、閾値Tmax,Tminを適切に設定することができる。
【0078】
(変形例4)
制御部19は、
図6の停車時閾値設定処理を実行することなく、
図7の走行時閾値設定処理のみを実行してもよい。
【0079】
この場合、制御部19は、
図7のフローチャートでは、ステップS202で平均補正値ΔTa2を算出後、ステップS203の判定処理を行うことなく、ステップS204で平均補正値ΔTa2に基づき閾値Tmax、Tminを設定する。これによっても、制御部19は、傾きθに応じて増減する重力加速度の影響分がオフセットされた閾値Tmax、Tminを好適に設定することができる。
【0080】
(変形例5)
制御部19は、式(1)に基づき補正値ΔTを算出する代わりに、加速度検出値Gxをそのまま補正値ΔTとしてもよい。例えば、
図6に示す停車時閾値設定処理では、制御部19は、停車時に計測された3回分の加速度検出値Gxの平均値を平均補正値ΔTa1として設定し、閾値Tmax、Tminを算出する。これによっても、制御部19は、傾きθに応じて増減する重力加速度の影響分がオフセットされた閾値Tmax、Tminを好適に設定することができる。
【0081】
(変形例6)
制御部19は、加速度センサ6が検出するミラーデバイス1の正面方向(即ち車両の進行方向)における加速度である加速度検出値Gxに基づき、危険運転の検知を行った。これに代えて、又はこれに加えて、加速度センサ6は、ミラーデバイス1の長手方向(即ち車両の左右方向)における加速度(「左右加速度」とも呼ぶ。)を検出し、当該加速度に基づき、危険運転の検知を行ってもよい。
【0082】
この場合、制御部19は、実施例と同様、上限初期閾値(実施例では0.35)と下限初期閾値(実施例では−0.35)とを加速度センサ6が検出した左右加速度に基づき算出した補正値の平均値により補正することで、危険運転の有無を判定するための上限及び下限の閾値を算出する。そして、制御部19は、算出した閾値と加速度センサ6が検出する左右加速度とを比較することで、危険運転の有無を判定する。そして、この場合、制御部19は、左右加速度が上限閾値を超過した場合には、右方向への急ハンドルが行われたと判定し、左右加速度が下限閾値を下回った場合には、左方向への急ハンドルが行われたと判定する。
【0083】
このように、本変形例によれば、制御部19は、急ハンドル等の車両の左右方向の挙動に関連した危険運転を好適に検知することができる。
【0084】
(変形例7)
ミラーデバイス1は、危険運転を検知するのに代えて、又は、これに加えて、車両の前後方向や左右方向での衝突等の事故を検知してもよい。この場合、ミラーデバイス1は、例えば、上限初期閾値(実施例では0.35)を「1」に設定し、下限初期閾値(実施例では−0.35)を「−1」に設定する。このように、ミラーデバイス1は、上限初期閾値及び下限初期閾値を検出対象に応じて設定することで、任意の車両の挙動や事故を検知することができる。
【0085】
(変形例8)
本発明が適用可能な挙動事故検知装置は、ルームミラー12に装着されるミラーデバイス1に限定されない。例えば、車内において、クレードルに保持されるスマートフォン等の端末装置であってもよい。
【0086】
この場合であっても、端末装置は、ミラーデバイス1と同様に、加速度検出値Gxを検出する加速度センサや車両の停車を検知するためのセンサ等を有し、
図6及び
図7のフローチャート等に従い加速度検出値Gxに基づき閾値Tmax、Tminを設定する。このようにすることで、実施例と同様に、端末装置は、好適に危険運転を検知することができる。
【0087】
また、ミラーデバイス1は、ルームミラー12に装着するのに代えて、ルームミラー12と一体に形成されていてもよい。この場合、ミラーデバイス1は、車両に取り付けられたルームミラー12を取り外した後、ルームミラー12と同一場所に取り付けられる。