(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら実施形態を説明する。以下の説明において、同一又は対応する構成要素は、同一又は対応する参照符号によって参照することがある。また、同一構成の複数の構成要素が存在する場合、それらを参照符号に添字を付すことによって区別することがある。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の模擬目標発生装置10の構成を示すブロック図である。模擬目標発生装置10は、分配器11と、ミキサ12
1、12
2と、フィルタ13I、13Qと、A/Dコンバータ14I、14Qと、I相処理部15Iと、Q相処理部15Qと、D/Aコンバータ16I、16Qと、ミキサ17
1、17
2と、合成器18と、ローカル発振器19と、波形制御器20とを備えている。
【0019】
分配器11とミキサ12
1、12
2とは、レーダ波に対応するRF(radio frequency)入力信号31(例えば、レーダ波をアンテナで受信して得られる信号)に対して直交復調(quadrature demodulation)を行ってI入力信号33I、Q入力信号33Qを生成するIQ分離部として動作する。ここで、I入力信号33Iは、I相のIF(intermediate frequency)信号(ベースバンド信号)であり、Q入力信号33Qは、Q相のIF信号である。
【0020】
詳細には、分配器11は、RF入力信号31をミキサ12
1、12
2に分配する。以下では、ミキサ12
1に分配された信号をRF分配信号32
1と記載し、ミキサ12
2に分配された信号を、RF分配信号32
2と記載する。
【0021】
ミキサ12
1は、RF分配信号32
1に対し、ローカル発振器19から供給されたI相のローカル発振信号38Iを用いてダウンコンバージョンを行ってI入力信号33Iを生成する。一方、ミキサ12
2は、RF分配信号32
2に対し、ローカル発振器19から供給されたQ相のローカル発振信号38Qを用いてダウンコンバージョンを行ってQ入力信号33Qを生成する。I相のローカル発振信号38IとQ相のローカル発振信号38Qとは、同一の周波数を有しているが、位相が90°ずれている。
【0022】
フィルタ13Iは、ミキサ12
1からI入力信号33Iを受け取り、I入力信号33Iに含まれるエイリアス成分を除去するように構成されている。同様に、フィルタ13Qは、ミキサ12
2からQ入力信号33Qを受け取り、Q入力信号33Qに含まれるエイリアス成分を除去するように構成されている。フィルタ13I、13Qとしては、例えば、低域通過フィルタが用いられ得る。
【0023】
A/Dコンバータ14Iは、フィルタ13Iから出力されるIF信号に対してA/D変換を行ってI相の波形を表すI入力波形データ34Iを生成する。同様に、A/Dコンバータ14Qは、フィルタ13Qから出力されるIF信号に対してA/D変換を行ってQ相の波形を表すQ入力波形データ34Qを生成する。
【0024】
I相処理部15Iは、I入力波形データ34Iに対してレーダ波が物体によって反射された反射波を模擬するための処理を行ってI出力波形データ35Iを生成する。同様に、Q相処理部15Qは、Q入力波形データ34Qに対してレーダ波が物体によって反射された反射波を模擬するための処理を行ってQ出力波形データ35Qを生成する。I相処理部15I、Q相処理部15Qの構成は、下記のとおりである。
【0025】
I相処理部15Iは、メモリ21Iと、波形成形部22Iとを備えている。
【0026】
メモリ21Iは、I入力波形データ34IをA/Dコンバータ14Iから受け取って保存する。
【0027】
波形成形部22Iは、メモリ21IからI入力波形データ34Iを読み出し、I入力波形データ34Iに対してI相の波形を調節するデジタル処理(I相波形成形処理)を行ってI出力波形データ35Iを生成する。本実施形態では、波形成形部22Iが、直列に接続された乗算器23Iと遅延器24Iとを備えている。波形成形部22Iは、乗算器23I及び遅延器24Iを用いて利得A
Iを乗じると共に遅延時間T
Iだけ遅延するデジタル演算をI入力波形データ34Iに対して行い、これにより、I出力波形データ35Iを生成する。
【0028】
詳細には、乗算器23Iには利得A
Iが設定され、乗算器23Iは、メモリ21Iから読み出したI入力波形データ34Iに利得A
Iを乗じる乗算を行う。遅延器24Iは、遅延時間T
Iが設定され、乗算器23Iから受け取ったデータを遅延時間T
Iだけ遅延し、I出力波形データ35Iとして出力する。乗算器23Iの利得A
Iと遅延器24Iの遅延時間T
Iとは、波形制御器20によって設定される。
【0029】
乗算器23Iは、高速動作できるように構成されており、その利得A
IがA/Dコンバータ14Iのサンプリングごとに変更可能である。更に、遅延器24Iも、高速動作できるように構成されており、その遅延時間T
Iは、A/Dコンバータ14Iのサンプリングごとに変更可能である。
【0030】
なお、乗算器23Iと遅延器24Iの位置は、逆であってもよい。遅延器24Iがメモリ21Iから読み出されたI入力波形データ34Iを遅延時間T
Iだけ遅延して出力し、乗算器23Iが遅延器24Iから出力されるデータに利得A
Iを乗じる乗算を行うことでI出力波形データ35Iを生成してもよい。
【0031】
Q相処理部15Qは、I相処理部15Iと同様に構成されており、メモリ21Qと、波形成形部22Qとを備えている。
【0032】
メモリ21Qは、Q入力波形データ34QをA/Dコンバータ14Qから受け取って保存する。
【0033】
波形成形部22Qは、メモリ21QからQ入力波形データ34Qを読み出し、Q入力波形データ34Qに対してQ相の波形を調節するデジタル処理(Q相波形成形処理)を行ってQ出力波形データ35Qを生成する。本実施形態では、波形成形部22Qが、直列に接続された乗算器23Qと遅延器24Qとを備えている。波形成形部22Qは、乗算器23Q及び遅延器24Qを用いて利得A
Qを乗じると共に遅延時間T
Qだけ遅延するデジタル演算をQ入力波形データ34Qに対して行い、これにより、Q出力波形データ35Qを生成する。
【0034】
詳細には、乗算器23Qには利得A
Qが設定されており、乗算器23Qは、メモリ21Qから読み出したQ入力波形データ34Qに利得A
Qを乗じる乗算を行う。遅延器24Qは、遅延時間T
Qが設定されており、乗算器23Qから受け取ったデータを遅延時間T
Qだけ遅延し、Q出力波形データ35Qとして出力する。乗算器23Qの利得A
Qと遅延器24Qの遅延時間T
Qとは、波形制御器20によって設定される。
【0035】
乗算器23Qは、乗算器23Iと同様に、高速動作できるように構成されており、その利得A
QがA/Dコンバータ14Qのサンプリングごとに変更可能である。更に、遅延器24Qも、高速動作できるように構成されており、その遅延時間T
Qは、A/Dコンバータ14Qのサンプリングごとに変更可能である。
【0036】
なお、乗算器23Qと遅延器24Qの位置は、逆であってもよい。遅延器24Qがメモリ21Qから読み出されたQ入力波形データ34Qを遅延時間T
Qだけ遅延して出力し、乗算器23Qが遅延器24Qから出力されるデータに利得A
Qを乗じる乗算を行うことでQ出力波形データ35Qを生成してもよい。
【0037】
D/Aコンバータ16Iは、I相処理部15Iによるデジタル処理によって生成されたI出力波形データ35Iに対してD/A変換を行ってI出力信号36Iを生成する。D/Aコンバータ16Iから出力されるI出力信号36Iは、ミキサ17
1に供給される。
【0038】
同様に、D/Aコンバータ16Qは、Q相処理部15Qによるデジタル処理によって生成されたQ出力波形データ35Qに対してD/A変換を行ってQ出力信号36Qを生成する。D/Aコンバータ16Qから出力されるQ出力信号36Qは、ミキサ17
2に供給される。
【0039】
ミキサ17
1、17
2と合成器18とは、I出力信号36I及びQ出力信号36Qに対して直交変調(quadrature modulation)を行ってRF出力信号37を生成する直交変調部として動作する。RF出力信号37は、レーダ波が物体によって反射された反射波を模擬した波形を有するRF信号である。
【0040】
詳細には、ミキサ17
1は、I出力信号36Iに対し、ローカル発振器19から供給されたI相のローカル発振信号38Iを用いてアップコンバージョンを行ってI相のRF信号を生成する。また、ミキサ17
2は、Q出力信号36Qに対し、ローカル発振器19から供給されたQ相のローカル発振信号38Qを用いてアップコンバージョンを行ってQ相のRF信号を生成する。
【0041】
合成器18は、ミキサ17
1から出力されるI相のRF信号とミキサ17
2から出力されるQ相のRF信号とを合成してRF出力信号37を生成する。出力されたRF出力信号37は、例えば、レーダ装置の評価に用いてもよいし、また、増幅した上でアンテナ装置によってレーダ波が飛来している方向に向けて発信してもよい。
【0042】
ローカル発振器19は、ミキサ12
1によるダウンコンバージョン及びミキサ17
1によるアップコンバージョンに用いられるI相のローカル発振信号38Iと、ミキサ12
2によるダウンコンバージョン及びミキサ17
2によるアップコンバージョンに用いられるQ相のローカル発振信号38Qとを生成する。上述のように、ローカル発振信号38Iとローカル発振信号38Qとは90°位相がずれている。本実施形態では、ローカル発振信号38Iの位相を基準として(即ち、ローカル発振信号38Iの位相を0°と定義して)、ローカル発振信号38Qの位相は90°である。
【0043】
波形制御器20は、RF出力信号37の波形が所望の波形になるように、I相処理部15I及びQ相処理部15Qを制御する。ここで、本実施形態では、I相処理部15Iにおいて行われる処理とQ相処理部15Qにおいて行われる処理とが個別に制御可能であることに留意されたい。後に詳細に説明するように、I相処理部15Iにおいて行われる処理とQ相処理部15Qにおいて行われる処理とが個別に制御可能であることにより、本実施形態の模擬目標発生装置10は、RF入力信号31よりも周波数スペクトルの幅が広いRF出力信号37を生成することができる。
【0044】
本実施形態の模擬目標発生装置10は、I相処理部15Iにおいて行われる処理と、Q相処理部15Qにおいて行われる処理とが、個別に制御可能であるため、複雑な波形のRF出力信号37を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを適切に模擬できる。例えば、本実施形態の模擬目標発生装置10では、I相処理部15Iの処理に用いられる利得A
I及び遅延時間T
Iと、Q相処理部15Qの処理に用いられる利得A
Q及び遅延時間T
Qとが、個別に設定可能であり、このような構成により、複雑な波形のRF出力信号37を生成し、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0045】
また、I相処理部15IとQ相処理部15Qとは、それぞれが位相を可変に調節可能であるように構成されているので、I相処理部15IとQ相処理部15Qによって生成されたI出力波形データ35IとQ出力波形データ35Qとの重ねあわせにより、RF出力信号37においてドップラー効果によって歪んだ波形を模擬した波形を生成可能である。詳細には、乗算器23I、23Qは、利得A
I、A
Qが可変であり、振幅変化を与えることができる。また、遅延器24I、24Qは、遅延時間を与えることができる。これらの動作は、いずれも、RF出力信号37の位相を可変に制御する効果を与える。一例としては、乗算器23I、23Qの利得A
I、A
Qを正規分布に従って個別に可変すれば、RF出力信号37にレイリー分布に従った歪波形を与えることも可能である。
【0046】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態の模擬目標発生装置40の構成を示すブロック図である。第2の実施形態の模擬目標発生装置40は、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と類似した構成を有しているが、デジタル処理によって直交復調(IQ分離)及び直交変調を行うように構成されている点で第1の実施形態の模擬目標発生装置10と相違している。以下、第2の実施形態の模擬目標発生装置40の構成について詳細に説明する。
【0047】
第2の実施形態の模擬目標発生装置40は、フィルタ41と、A/Dコンバータ42と、デジタルミキサ43
1、43
2と、I相処理部44Iと、Q相処理部44Qと、デジタルミキサ45
1、45
2と、合成器46と、D/Aコンバータ47と、正弦波発生器48と、波形制御器49とを備えている。
【0048】
フィルタ41は、レーダ波に対応するRF入力信号61(例えば、レーダ波をアンテナで受信して得られる信号)を受け取り、RF入力信号61の、A/Dコンバータ42が対応可能な周波数帯域よりも高い周波数の成分を遮断するように構成されている。フィルタ41としては、例えば、低域通過フィルタが用いられ得る。
【0049】
A/Dコンバータ42は、フィルタ41から出力されるRF信号に対してA/D変換を行って波形データ62を生成する。波形データ62は、デジタルミキサ43
1、43
2に供給される。
【0050】
デジタルミキサ43
1、43
2は、デジタル処理によって直交復調(quadrature demodulation)を行ってI入力波形データ63I、Q入力波形データ63Qを生成するIQ分離部として動作する。ここで、I入力波形データ63Iは、RF入力信号61のI相の波形を表すデータであり、Q入力波形データ63Qは、Q相の波形を表すデータである。
【0051】
詳細には、デジタルミキサ43
1は、正弦波発生器48から受け取った正弦波デジタル値67Iを用いてダウンコンバージョンを行ってI入力波形データ63Iを生成する。同様に、デジタルミキサ43
2は、正弦波発生器48から受け取った正弦波デジタル値67Qを用いてダウンコンバージョンを行ってQ入力波形データ63Qを生成する。なお、正弦波デジタル値67I、67Qは、同一の周波数で正弦波状に変化するが、位相が90°ずれている。
【0052】
I相処理部44Iは、I入力波形データ63Iに対してレーダ波が物体によって反射された反射波を模擬するための処理を行ってI出力波形データ64Iを生成する。一方、Q相処理部44Qは、Q入力波形データ63Qに対してレーダ波が物体によって反射された反射波を模擬するための処理を行ってQ出力波形データ64Qを生成する。I相処理部44I、Q相処理部44Qは、いずれも、DRFM(digital radio frequency memory)として実装されてもよい。
【0053】
I相処理部44Iは、フィルタ51Iと、メモリ52Iと、波形成形部53Iとを備えている。
【0054】
フィルタ51Iは、デジタルミキサ43
1からI入力波形データ63Iを受け取り、I入力波形データ63Iに含まれるエイリアス成分を除去するように構成されている。フィルタ51Iとしては、例えば、低域通過フィルタが用いられ得る。
【0055】
メモリ52Iは、フィルタ51Iから出力されるI入力波形データを受け取って保存する。
【0056】
波形成形部53Iは、メモリ52IからI入力波形データを読み出し、該I入力波形データに対してI相の波形を調節するデジタル処理を行ってI出力波形データ64Iを生成する。波形成形部53Iは、第1の実施形態の模擬目標発生装置10の波形成形部22Iと同様の構成を有しており、乗算器54Iと、遅延器55Iとを備えている。乗算器54Iには利得A
Iが設定されており、乗算器54Iは、メモリ52Iから読み出したI入力波形データに利得A
Iを乗じる乗算を行う。遅延器55Iは、遅延時間T
Iが設定されており、乗算器54Iから受け取ったデータを遅延時間T
Iだけ遅延し、I出力波形データ64Iとして出力する。乗算器54Iの利得A
Iと遅延器55Iの遅延時間T
Iとは、波形制御器49によって設定される。
【0057】
第1の実施形態と同様に、乗算器54Iは、高速動作できるように構成されており、その利得A
IはA/Dコンバータ42のサンプリングごとに変更可能である。更に、遅延器55Iも、高速動作できるように構成されており、その遅延時間T
Iは、A/Dコンバータ42のサンプリングごとに変更可能である。
【0058】
なお、乗算器54Iと遅延器55Iの位置は、逆であってもよい。遅延器55Iがメモリ52Iから読み出されたI波形データを遅延時間T
Iだけ遅延して出力し、乗算器54Iが遅延器55Iから出力されるデータに利得A
Iを乗じる乗算を行うことでI出力波形データ64Iを生成してもよい。
【0059】
Q相処理部44Qは、I相処理部44Iと同様に構成されており、フィルタ51Qと、メモリ52Qと、波形成形部53Qとを備えている。
【0060】
フィルタ51Qは、デジタルミキサ43
2からQ入力波形データ63Qを受け取り、Q入力波形データ63Qに含まれるエイリアス成分を除去するように構成されている。フィルタ51Qとしては、例えば、低域通過フィルタが用いられ得る。
【0061】
メモリ52Qは、フィルタ51Qから出力されるQ入力波形データを受け取って保存する。
【0062】
波形成形部53Qは、メモリ52QからQ入力波形データを読み出し、該Q入力波形データに対してQ相の波形を調節するデジタル処理を行ってQ出力波形データ64Qを生成する。波形成形部53Qは、波形成形部53Iと同様の構成を有しており、乗算器54Qと、遅延器55Qとを備えている。乗算器54Qには利得A
Qが設定されており、乗算器54Qは、メモリ52Qから読み出したQ入力波形データに利得A
Qを乗じる乗算を行う。遅延器55Qは、遅延時間T
Qが設定されており、乗算器54Qから受け取ったデータを遅延時間T
Qだけ遅延し、Q出力波形データ64Qとして出力する。乗算器54Qの利得A
Qと遅延器55Qの遅延時間T
Qとは、波形制御器49によって設定される。
【0063】
第1の実施形態と同様に、乗算器54Qは、高速動作できるように構成されており、その利得A
QはA/Dコンバータ42のサンプリングごとに変更可能である。更に、遅延器55Qも、高速動作できるように構成されており、その遅延時間T
Qは、A/Dコンバータ42のサンプリングごとに変更可能である。
【0064】
なお、乗算器54Qと遅延器55Qの位置は、逆であってもよい。遅延器55Qがメモリ52Qから読み出されたQ波形データを遅延時間T
Qだけ遅延して出力し、乗算器54Qが遅延器55Qから出力されるデータに利得A
Qを乗じる乗算を行うことでQ出力波形データ64Qを生成してもよい。
【0065】
デジタルミキサ45
1、45
2と合成器46とは、I出力波形データ64I及びQ出力波形データ64Qに対して直交変調(quadrature modulation)を行って出力波形データ65を生成する直交変調部として動作する。
【0066】
詳細には、デジタルミキサ45
1は、I出力波形データ64Iに対して正弦波発生器48から供給されたI相の正弦波デジタル値67Iを用いてアップコンバージョンを行ってRF領域のI出力波形データを生成する。また、デジタルミキサ45
2は、Q出力波形データ64Qに対し、正弦波発生器48から供給されたQ相の正弦波デジタル値67Qを用いてアップコンバージョンを行ってRF領域のQ出力波形データを生成する。
【0067】
合成器46は、デジタルミキサ45
1から出力されるRF領域のI出力波形データとデジタルミキサ45
2から出力されるRF領域のQ出力波形データとを合成して(即ち、加算して)出力波形データ65を生成する。
【0068】
D/Aコンバータ47は、出力波形データ65に対してD/A変換を行ってRF出力信号66を生成する。出力されたRF出力信号66は、例えば、レーダ装置の評価に用いてもよいし、また、増幅した上でアンテナ装置によってレーダ波が飛来している方向に向けて発信してもよい。
【0069】
正弦波発生器48は、デジタルミキサ43
1、45
1によるアップコンバージョン及びダウンコンバージョンに用いられるI相の正弦波デジタル値67Iと、デジタルミキサ43
2、45
2によるアップコンバージョン及びダウンコンバージョンに用いられるQ相の正弦波デジタル値67Qとを生成する。上述のように、正弦波デジタル値67Iと正弦波デジタル値67Qとは90°位相がずれている。本実施形態では、正弦波デジタル値67Iの位相を基準として(即ち、正弦波デジタル値67Iの位相を0°と定義して)、正弦波デジタル値67Qの位相は90°である。
【0070】
波形制御器49は、RF出力信号66の波形が所望の波形になるように、I相処理部44I及びQ相処理部44Qを制御する。より具体的には、波形制御器49は、I相処理部44Iの乗算器54Iの利得A
Iと遅延器55Iの遅延時間T
Iとを設定し、更に、Q相処理部44Qの乗算器54Qの利得A
Qと遅延器55Qの遅延時間T
Qとを設定する。
【0071】
第2の実施形態ではデジタル処理によって直交復調及び直交変調が行われるが、本質的には、第2の実施形態の模擬目標発生装置40の動作は、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と同じである。詳細には、第1の実施形態の模擬目標発生装置10では、分配器11、ミキサ12
1、12
2、フィルタ13I、13Q及びA/Dコンバータ14I、14Qが、全体として、直交復調とA/D変換とを行ってI入力波形データ34IとQ入力波形データ34Qとを生成する回路部を構成している一方、第2の実施形態では、フィルタ41、A/Dコンバータ42及びデジタルミキサ43
1、43
2が、直交復調とA/D変換とを行ってI入力波形データ63IとQ入力波形データ63Qとを生成する回路部を構成している。また、第1の実施形態の模擬目標発生装置10では、D/Aコンバータ16I、16Q、ミキサ17
1、17
2及び合成器18が、全体として、波形成形部22I、22Qによって生成されたI出力波形データ35IとQ出力波形データ35Qに対してA/D変換と直交変調を行ってRF出力信号37を生成する回路部を構成している。一方で、第2の実施形態の模擬目標発生装置40では、デジタルミキサ45
1、45
2、合成器46、D/Aコンバータ47が、全体として、波形成形部53I、53Qによって生成されたI出力波形データ64IとQ出力波形データ64Qに対して直交変調とA/D変換とを行ってRF出力信号66を生成する回路部を構成している。このように、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と第2の実施形態の模擬目標発生装置40とが、A/D変換と直交復調の順序、及び、D/A変換と直交変調の順序が入れ替わっているだけで、本質的な動作が同じである。
【0072】
このことから、第2の実施形態の模擬目標発生装置40が、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と同様の利点を有することも容易に理解されよう。第2の実施形態の模擬目標発生装置40は、複雑な波形のRF出力信号66を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを適切に模擬することができる。本実施形態においても、I相処理部44Iにおいて行われる処理と、Q相処理部44Qにおいて行われる処理とが、個別に制御可能である。例えば、本実施形態の模擬目標発生装置40においても、I相処理部44Iの処理に用いられる利得A
I及び遅延時間T
Iと、Q相処理部44Qの処理に用いられる利得A
Q及び遅延時間T
Qとが、個別に設定可能であり、このような構成により、複雑な波形のRF出力信号66を生成し、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0073】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態の模擬目標発生装置10Aの構成を示すブロック図である。第3の実施形態の模擬目標発生装置10Aは、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と類似した構成を有している。ただし、第3の実施形態の模擬目標発生装置10Aでは、I相処理部15I、Q相処理部15Qの波形成形部22I、22Qの構成が変更されている。
【0074】
本実施形態では、波形成形部22Iが、直列に接続された乗算器23I及び遅延器24Iの組を複数備えている。
図3には、波形成形部22Iが、2組の乗算器23I及び遅延器24Iを備える構成が図示されている。
【0075】
詳細には、本実施形態では、波形成形部22Iが、乗算器23I
1、23I
2と、遅延器24I
1、24I
2と、合成器25Iとを備えている。乗算器23I
1、23I
2には、それぞれ、利得A
I1、A
I2が設定される。乗算器23I
1は、メモリ21Iから読み出したI入力波形データ34Iに利得A
I1を乗じる乗算を行い、乗算器23I
2は、I入力波形データ34Iに利得A
I2を乗じる乗算を行う。
【0076】
遅延器24I
1、24
2には、それぞれ、遅延時間T
I1、T
I2が設定される。遅延器24I
1は、乗算器23I
1から受け取ったデータを遅延時間T
I1だけ遅延して出力する。同様に、遅延器24I
2は、乗算器23I
2から受け取ったデータを遅延時間T
I2だけ遅延して出力する。
【0077】
乗算器23I
1と遅延器24I
1との組は、I入力波形データ34Iに対して利得A
I1を乗じると共に遅延時間T
I1だけ遅延するデジタル演算を行う演算器として動作する。同様に、乗算器23I
2と遅延器24I
2との組は、I入力波形データ34Iに対して利得A
I2を乗じると共に遅延時間T
I2だけ遅延するデジタル演算を行う演算器として動作する。乗算器23I
1と遅延器24I
1との組と、乗算器23I
2と遅延器24I
2との組は、互いに並列に設けられている。
【0078】
合成器25Iは、遅延器24I
1、24I
2から出力されるデータを合成して(即ち、加算して)I出力波形データ35Iを生成する。
【0079】
同様に、波形成形部22Qは、直列に接続された乗算器23Q及び遅延器24Qの組を複数備えている。
図3には、波形成形部22Qが、2組の乗算器23Q及び遅延器24Qを備える構成が図示されている。
【0080】
詳細には、本実施形態では、波形成形部22Qが、乗算器23Q
1、23Q
2と、遅延器24Q
1、24Q
2と、合成器25Qとを備えている。乗算器23Q
1、23Q
2には、波形制御器20により、それぞれ、利得A
Q1、A
Q2が設定される。乗算器23Q
1は、メモリ21Qから読み出したQ入力波形データ34Qに利得A
Q1を乗じる乗算を行い、乗算器23Q
2は、Q入力波形データ34Qに利得A
Q2を乗じる乗算を行う。
【0081】
遅延器24Q
1、24Q
2には、波形制御器20により、それぞれ、遅延時間T
Q1、T
Q2が設定される。遅延器24Q
1は、乗算器23Q
1から受け取ったデータを遅延時間T
Q1だけ遅延して出力する。同様に、遅延器24Q
2は、乗算器23Q
2から受け取ったデータを遅延時間T
Q2だけ遅延して出力する。
【0082】
乗算器23Q
1と遅延器24Q
1との組は、Q入力波形データ34Qに対して利得A
Q1を乗じると共に遅延時間T
Q1だけ遅延するデジタル演算を行う演算器として動作する。同様に、乗算器23Q
2と遅延器24Q
2との組は、Q入力波形データ34Qに対して利得A
Q2を乗じると共に遅延時間T
Q2だけ遅延するデジタル演算を行う演算器として動作する。乗算器23Q
1と遅延器24Q
1との組と、乗算器23Q
2と遅延器24Q
2との組は、互いに並列に設けられている。
【0083】
合成器25Qは、遅延器24Q
1、24Q
2から出力されるデータを合成して(即ち、加算して)Q出力波形データ35Qを生成する。
【0084】
本実施形態では、波形制御器20は、RF出力信号37が所望の波形になるように、波形成形部22Iの乗算器23I
1、23I
2の利得A
I1、A
I2、遅延器24I
1、24I
2の遅延時間T
I1、T
I2、波形成形部22Qの乗算器23Q
1、23Q
2の利得A
Q1、A
Q2及び遅延器24Q
1、24Q
2の遅延時間T
Q1、T
Q2を設定する。
【0085】
本実施形態の模擬目標発生装置10Aは、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と同様に、I相処理部15Iにおいて行われる処理と、Q相処理部15Qにおいて行われる処理とが、個別に制御可能であり、これにより、反射波における周波数スペクトルの広がりを適切に模擬できる。
【0086】
加えて、第3の実施形態では、波形成形部22Iにおいて、乗算器23Iと遅延器24Iの組が並列に設けられ、それぞれの組から出力されるデータが合成器25Iによって合成されてI出力波形データ35Iが生成され、波形成形部22Qにおいて、乗算器23Qと遅延器24Qの組が並列に設けられ、それぞれの組から出力されるデータが合成器25Qによって合成されてQ出力波形データ35Qが生成される。このような構成によれば、RF出力信号37において、より複雑な波形を模擬することができる。
【0087】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態の模擬目標発生装置40Aの構成を示すブロック図である。第4の実施形態の模擬目標発生装置40Aは、第2の実施形態の模擬目標発生装置40と類似した構成を有しており、デジタル処理によって直交復調(IQ分離)及び直交変調を行うように構成されている。ただし、第4の実施形態の模擬目標発生装置40Aでは、第3の実施形態の模擬目標発生装置10Aと同様に、I相処理部44I、Q相処理部44Qにおいて、乗算器と遅延器の組が並列に設けられる構成の波形成形部53I、53Qが用いられる。
【0088】
詳細には、
図4に図示された模擬目標発生装置40Aでは、波形成形部53Iが
図3の模擬目標発生装置10Aの波形成形部22Iと同様に構成され、波形成形部53Qが
図3の模擬目標発生装置10Aの波形成形部22Qと同様に構成されている。
【0089】
詳細には、本実施形態では、波形成形部53Iが、乗算器54I
1、54I
2と、遅延器55I
1、55I
2と、合成器56Iとを備えている。乗算器54I
1、54I
2には、それぞれ、利得A
I1、A
I2が設定される。乗算器54I
1は、メモリ52Iから読み出したI入力波形データに利得A
I1を乗じる乗算を行い、乗算器54I
2は、I入力波形データに利得A
I2を乗じる乗算を行う。
【0090】
遅延器55I
1、55I
2には、それぞれ、遅延時間T
I1、T
I2が設定される。遅延器55I
1は、乗算器54I
1から受け取ったデータを遅延時間T
I1だけ遅延して出力する。同様に、遅延器55I
2は、乗算器54I
2から受け取ったデータを遅延時間T
I2だけ遅延して出力する。
【0091】
合成器56Iは、遅延器55I
1、55I
2から出力されるデータを合成して(即ち、加算して)、デジタルミキサ45
1に供給されるI出力波形データ64Iを生成する。
【0092】
同様に、波形成形部53Qは、直列に接続された乗算器54Q及び遅延器55Qの組を複数備えている。
図4には、波形成形部53Qが、2組の乗算器54Q及び遅延器55Qを備える構成が図示されている。
【0093】
詳細には、本実施形態では、波形成形部53Qが、乗算器54Q
1、54Q
2と、遅延器55Q
1、55Q
2と、合成器56Qとを備えている。乗算器54Q
1、54Q
2には、波形制御器49により、それぞれ、利得A
Q1、A
Q2が設定される。乗算器54Q
1は、メモリ52Qから読み出したQ入力波形データに利得A
Q1を乗じる乗算を行い、乗算器23Q
2は、Q入力波形データに利得A
Q2を乗じる乗算を行う。
【0094】
遅延器55Q
1、55Q
2には、波形制御器49により、それぞれ、遅延時間T
Q1、T
Q2が設定される。遅延器55Q
1は、乗算器54Q
1から受け取ったデータを遅延時間T
Q1だけ遅延して出力する。同様に、遅延器55Q
2は、乗算器54Q
2から受け取ったデータを遅延時間T
Q2だけ遅延して出力する。
【0095】
合成器56Qは、遅延器55Q
1、55Q
2から出力されるデータを合成して(即ち、加算して)、デジタルミキサ45
2に供給されるQ出力波形データ64Qを生成する。
【0096】
波形制御器49は、RF出力信号66が所望の波形になるように、波形成形部53Iの乗算器54I
1、54I
2の利得A
I1、A
I2、遅延器55I
1、55I
2の遅延時間T
I1、T
I2、波形成形部53Qの乗算器54Q
1、54Q
2の利得A
Q1、A
Q2及び遅延器55Q
1、55Q
2の遅延時間T
Q1、T
Q2を設定する。
【0097】
図4に図示された模擬目標発生装置40Aの構成でも、
図3に図示された模擬目標発生装置10Aと同様に、RF出力信号66においてより複雑な波形を模擬することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態の模擬目標発生装置10Bの構成を示すブロック図である。第5の実施形態の模擬目標発生装置10Bは、第1の実施形態の模擬目標発生装置10と類似した構成を有している。ただし、第5の実施形態の模擬目標発生装置10Bでは、I相処理部15I、Q相処理部15Qの構成が変更されている。
【0099】
具体的には、第5の実施形態では、レーダ波を出射するレーダ装置と該レーダ波を反射する物体との距離に依存して発生する伝搬遅延を模擬するための伝搬遅延器26I、26Qが、それぞれI相処理部15I、Q相処理部15Qに設けられる。I相処理部15Iにおいて、伝搬遅延器26Iは、波形成形部22Iと直列に接続され、Q相処理部15Qにおいて、伝搬遅延器26Qは、波形成形部22Qと直列に接続される。
【0100】
伝搬遅延器26I、26Qには、伝搬遅延に対応する遅延時間T
Pが設定され、伝搬遅延器26I、26Qは、入力された波形データを遅延時間T
Pだけ遅延して出力するように構成される。レーダ波を出射するレーダ装置と該レーダ波を反射する物体との距離が近い場合を模擬する場合には、短い遅延時間T
Pが設定され、レーダ装置と物体との距離が遠い場合を模擬する場合には、長い遅延時間T
Pが設定される。ここで、伝搬遅延器26I、26Qに設定される遅延時間T
Pが同一であることに留意されたい。
【0101】
伝搬遅延器26Iは、波形成形部22Iから受け取った波形データを遅延時間T
Pだけ遅延してI出力波形データ35Iを生成し、D/Aコンバータ16Iに出力する。D/Aコンバータ16Iは、伝搬遅延器26Iから受け取ったI出力波形データ35Iに対してD/A変換を行ってI出力信号36Iを生成する。
【0102】
同様に、伝搬遅延器26Qは、波形成形部22Qから受け取った波形データを遅延時間T
Pだけ遅延してQ出力波形データ35Qを生成し、D/Aコンバータ16Qに出力する。D/Aコンバータ16Qは、伝搬遅延器26Qから受け取ったQ出力波形データ35Qに対してD/A変換を行ってQ出力信号36Qを生成する。
【0103】
本実施形態の模擬目標発生装置10Bは、第1乃至第4の実施形態の模擬目標発生装置と同様に、複雑な波形のRF出力信号37を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0104】
加えて、本実施形態では、レーダ波を出射するレーダ装置と該レーダ波を反射する物体との距離に依存して発生する伝搬遅延を模擬するために専用に用いられる伝搬遅延器26I、26QがI相処理部15I、Q相処理部15Qに設けられるため、波形成形部22I、22QによってRF出力信号37の波形を成形する処理と、伝搬遅延を模擬する処理とを分離することができる。このような構成は、波形制御器20における処理の複雑化を抑制できるという利点がある。
【0105】
なお、伝搬遅延器26Iと波形成形部22Iとの位置は、逆であってもよい。この場合、伝搬遅延器26Iは、メモリ21Iから受け取ったI入力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延して波形成形部22Iに出力する。波形成形部22Iは、伝搬遅延器26Iから受け取ったデータに対して利得A
Iを乗じると共に遅延時間T
Iだけ遅延するデジタル演算を行う。
【0106】
同様に、伝搬遅延器26Qと波形成形部22Qとの位置は、逆であってもよい。この場合、伝搬遅延器26Qは、メモリ21Qから受け取ったQ入力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延して波形成形部22Qに出力する。波形成形部22Qは、伝搬遅延器26Qから受け取ったデータに対して利得A
Qを乗じると共に遅延時間T
Qだけ遅延するデジタル演算を行う。
【0107】
また、本実施形態において、I相処理部15Iにおいて、第3の実施形態に提示されている乗算器と遅延器の組が並列に設けられる構成(
図3参照)の波形成形部22Iが用いられてもよい。同様に、Q相処理部15Qにおいて、第3の実施形態に提示されている乗算器と遅延器の組が並列に設けられる構成の波形成形部22Qが用いられてもよい。
【0108】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bの構成を示すブロック図である。第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bは、第2の実施形態の模擬目標発生装置40と類似した構成を有している。ただし、第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bでは、I相処理部44I、Q相処理部44Qの構成が変更されている。
【0109】
具体的には、第6の実施形態では、第5の実施形態と同様に、レーダ波を出射するレーダ装置と該レーダ波を反射する物体との距離に依存して発生する伝搬遅延を模擬するための伝搬遅延器57I、57Qが、それぞれI相処理部44I、Q相処理部44Qに設けられる。I相処理部44Iにおいて、伝搬遅延器57Iは、波形成形部53Iと直列に接続され、Q相処理部44Qにおいて、伝搬遅延器57Qは、波形成形部53Qと直列に接続される。
【0110】
伝搬遅延器57I、57Qには、伝搬遅延に対応する遅延時間T
Pが設定される。伝搬遅延器57Iは、波形成形部53Iから受け取ったI出力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延し、I出力波形データ64Iとしてデジタルミキサ45
1に出力する。同様に、伝搬遅延器57Qは、波形成形部53Qから受け取ったQ出力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延し、Q出力波形データ64Qとしてデジタルミキサ45
2に出力する。
【0111】
第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bは、第1乃至第5の実施形態の模擬目標発生装置と同様に、複雑な波形のRF出力信号66を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0112】
加えて、第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bは、第5の実施形態の模擬目標発生装置10Bと同様に、レーダ波を出射するレーダ装置と該レーダ波を反射する物体との距離に依存して発生する伝搬遅延を模擬するために専用に用いられる伝搬遅延器57I、57QがI相処理部44I、Q相処理部44Qに設けられるため、波形成形部53I、53QによってRF出力信号66の波形を成形する処理と、伝搬遅延を模擬する処理とを分離することができる。このような構成は、波形制御器49における処理の複雑化を抑制できるという利点がある。
【0113】
なお、伝搬遅延器57Iと波形成形部53Iとの位置は、逆であってもよい。この場合、伝搬遅延器57Iは、メモリ52Iから受け取ったI入力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延して波形成形部53Iに出力する。波形成形部53Iは、伝搬遅延器57Iから受け取ったデータに対して利得A
Iを乗じると共に遅延時間T
Iだけ遅延するデジタル演算を行う。
【0114】
同様に、伝搬遅延器57Qと波形成形部53Qとの位置は、逆であってもよい。この場合、伝搬遅延器57Qは、メモリ52Qから受け取ったQ入力波形データを遅延時間T
Pだけ遅延して波形成形部53Qに出力する。波形成形部53Qは、伝搬遅延器57Qから受け取ったデータに対して利得A
Qを乗じると共に遅延時間T
Qだけ遅延するデジタル演算を行う。
【0115】
また、本実施形態において、I相処理部44Iにおいて、第4の実施形態に提示されている乗算器と遅延器の組が並列に設けられる構成(
図4参照)の波形成形部53Iが用いられてもよい。同様に、Q相処理部44Qにおいて、第4の実施形態に提示されている乗算器と遅延器の組が並列に設けられる構成の波形成形部53Qが用いられてもよい。
【0116】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態の模擬目標発生装置10Cの構成を示すブロック図である。第7の実施形態の模擬目標発生装置10Cは、第5の実施形態の模擬目標発生装置10Bと類似した構成を有している。ただし、第7の実施形態の模擬目標発生装置10Cでは、ドップラー効果による周波数遷移(ドップラーシフト)を模擬するためのデジタル処理を行う信号処理器28が追加的に設けられる。加えて、信号処理器28によるデジタル処理のワークメモリとして用いられるメモリ27I、27Qが、それぞれ、I相処理部15I、Q相処理部15Qに設けられる。
図7に図示された構成では、メモリ27Iが波形成形部22Iと伝搬遅延器26Iの間に設けられ、メモリ27Qが波形成形部22Qと伝搬遅延器26Qの間に設けられている。
【0117】
第7の実施形態では、I相処理部15Iにおいて、下記の処理が行われる。
波形成形部22Iは、メモリ21IからI入力波形データ34Iを読み出し、読み出したI入力波形データ34Iに対し、利得A
Iを乗じると共に遅延時間T
Iだけ遅延するデジタル演算を行う。このデジタル演算によって得られた波形データは、波形成形部22Iから出力されてメモリ27Iに保存される。
【0118】
信号処理器28は、波形成形部22Iから出力された波形データに対して、時間軸方向において波形を圧縮し、又は、伸長するデジタル処理を行い、I相波形圧縮/伸長データを生成する。I相波形圧縮/伸長データは、メモリ27Iに保存される。
【0119】
図8Aは、時間軸方向において波形を伸長するデジタル処理を図示しており、
図8Bは、時間軸方向において波形を圧縮するデジタル処理を図示している。
図8A、
図8Bにおいて、破線は元の波形(波形成形部22Iから出力される波形データで示されている波形)を示しており、実線は、I相波形圧縮/伸長データで示されている波形を示している。時間軸方向において波形を圧縮する処理は、周波数が高くなるように周波数をシフトする処理に相当しており、時間軸方向において波形を伸長する処理は、周波数が低くなるように周波数をシフトする処理に相当している。このような処理によれば、レーダ波が反射する物体の速度に応じて発生するドップラーシフトを模擬することができる。
【0120】
例えば、波形成形部22Iから出力される波形データの時刻t
iについてのデータ値をQ
I(t
i)とした場合(i=1,2,3,・・・)、時系列データQ
I(A・t
i)は、A>1の場合に波形が時間軸方向にA倍に圧縮され、A<1の場合に波形が1/A倍に伸長されたデータになる。時間軸方向において波形を圧縮又は伸長した波形データQ
I^(t
k)(k=1,2,3,・・・)は、時系列データQ
I(A・t
i)から補間により求めることができる。一実施形態では、このようにして算出された時系列データQ
I^(t
k)を、I相波形圧縮/伸長データとして用いてもよい。
【0121】
伝搬遅延器26Iは、メモリ27Iから受け取った波形圧縮/伸長データを更に遅延時間T
Pだけ遅延してI出力波形データ35Iを生成し、D/Aコンバータ16Iに出力する。D/Aコンバータ16Iは、伝搬遅延器26Iから受け取ったI出力波形データ35Iに対してD/A変換を行ってI出力信号36Iを生成する。
【0122】
Q相処理部15Qにおいても、I相処理部15Iと同様の処理が行われる。波形成形部22Qは、メモリ21QからQ入力波形データ34Qを読み出し、読み出したQ入力波形データQに対し、利得A
Qを乗じると共に遅延時間T
Qだけ遅延するデジタル演算を行う。このデジタル演算によって得られた波形データは、波形成形部22Qから出力されてメモリ27Qに保存される。
【0123】
信号処理器28は、メモリ27Qに保存された波形データに対して、上述されているような、時間軸方向において波形を圧縮し、又は、伸長するデジタル処理を行ってQ相波形圧縮/伸長データを生成する。Q相波形圧縮/伸長データは、メモリ27Qに保存される。
【0124】
伝搬遅延器26Qは、メモリ27Qから受け取ったQ相波形圧縮/伸長データを更に遅延時間T
Pだけ遅延してQ出力波形データ35Qを生成し、D/Aコンバータ16Qに出力する。D/Aコンバータ16Qは、伝搬遅延器26Qから受け取ったQ出力波形データ35Qに対してD/A変換を行ってQ出力信号36Qを生成する。
【0125】
本実施形態の模擬目標発生装置10Cも、第1乃至第6の実施形態の模擬目標発生装置と同様に、複雑な波形のRF出力信号37を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0126】
加えて、本実施形態では、RF出力信号37の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部22I、22Qによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器28によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器26I、26Qによる伝搬遅延処理)が互いに分離されているので、波形制御器20における処理の複雑化を抑制できるという利点がある。
【0127】
なお、I相について行われる3つのデジタル処理:RF出力信号37の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部22Iによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器28によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器26Iによる伝搬遅延処理)の順序は、互に入れ替え可能である。波形成形部22I、メモリ27I及び伝搬遅延器26Iが接続される順序は、該3つのデジタル処理を行うべき順序に応じて決定される。
【0128】
同様に、Q相について行われる3つのデジタル処理:RF出力信号37の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部22Qによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器28によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器26Qによる伝搬遅延処理)の順序は、互に入れ替え可能である。波形成形部22Q、メモリ27Q及び伝搬遅延器26Qが接続される順序は、該3つのデジタル処理を行うべき順序に応じて決定される。
【0129】
また、
図7において、伝搬遅延器26I、26Qによる遅延処理は必ずしも行われなくてもよい。伝搬遅延器26I、26Qによる遅延処理に相当する遅延処理は、波形成形部22I、22Q又は信号処理器28によって行われてもよい。
【0130】
更に、
図7においては、I相処理部15Iが2つのメモリ21I、27Iを含むとしてメモリ21I、27Iが別々に図示されているが、実際の実装においては、メモリ21I、27Iは、物理的に分離されずに1つのメモリデバイスとしてI相処理部15Iに実装されてもよい。同様に、実際の実装においては、メモリ21Q、27Qが物理的に分離されずに1つのメモリデバイスとしてQ相処理部15Qに実装されてもよい。
【0131】
(第8の実施形態)
図9は、第8の実施形態の模擬目標発生装置40Cの構成を示すブロック図である。第8の実施形態の模擬目標発生装置40Cは、第6の実施形態の模擬目標発生装置40Bと類似した構成を有している。ただし、第8の実施形態の模擬目標発生装置40Cでは、第7の実施形態の模擬目標発生装置10Cと同様に、ドップラー効果による周波数遷移(ドップラーシフト)を模擬するためのデジタル処理を行う信号処理器59が追加的に設けられる。加えて、信号処理器59によるデジタル処理のワークメモリとして用いられるメモリ58I、58Qが、それぞれ、I相処理部44I、Q相処理部44Qに設けられる。
図9に図示された構成では、メモリ58Iが波形成形部53Iと伝搬遅延器57Iの間に設けられ、メモリ58Qが波形成形部53Qと伝搬遅延器57Qの間に設けられる。
【0132】
第8の実施形態では、I相処理部44Iにおいて、下記の処理が行われる。
波形成形部53Iは、メモリ52IからI入力波形データを読み出し、読み出したI入力波形データに対し、利得A
Iを乗じると共に遅延時間T
Iだけ遅延するデジタル演算を行う。このデジタル演算によって得られた波形データは、波形成形部53Iから出力されてメモリ58Iに保存される。
【0133】
信号処理器59は、波形成形部53Iから出力された波形データに対して、時間軸方向において波形を圧縮し、又は、伸長するデジタル処理を行い、I相波形圧縮/伸長データを生成する。時間軸方向において波形を圧縮し、又は、伸長するデジタル処理については、第7の実施形態で説明した通りである。I相波形圧縮/伸長データは、メモリ58Iに保存される。
【0134】
伝搬遅延器57Iは、メモリ58Iから受け取った波形圧縮/伸長データを更に遅延時間T
Pだけ遅延してI出力波形データ64Iを生成する。生成されたI出力波形データ64Iは、デジタルミキサ45
1に供給される。
【0135】
Q相処理部44Qにおいても、I相処理部44Iと同様の処理が行われる。波形成形部53Qは、メモリ52QからQ入力波形データを読み出し、読み出したQ入力波形データに対し、利得A
Qを乗じると共に遅延時間T
Qだけ遅延するデジタル演算を行う。このデジタル演算によって得られた波形データは、波形成形部53Qから出力されてメモリ58Qに保存される。
【0136】
信号処理器59は、メモリ58Qに保存された波形データに対して、上述されているような、時間軸方向において波形を圧縮し、又は、伸長するデジタル処理を行ってQ相波形圧縮/伸長データを生成する。
【0137】
伝搬遅延器57Qは、メモリ58Qから受け取ったQ相波形圧縮/伸長データを更に遅延時間T
Pだけ遅延してQ出力波形データ64Qを生成する。生成されたQ出力波形データ64Qは、デジタルミキサ45
2に供給される。
【0138】
本実施形態の模擬目標発生装置40Cも、第1乃至第7の実施形態の模擬目標発生装置と同様に、複雑な波形のRF出力信号66を生成可能であり、反射波における周波数スペクトルの広がりを有効に模擬できる。
【0139】
加えて、本実施形態では、RF出力信号66の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部53I、53Qによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器59によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器57I、57Qによる伝搬遅延処理)が互いに分離されているので、波形制御器49における処理の複雑化を抑制できるという利点がある。
【0140】
なお、I相について行われる3つのデジタル処理:RF出力信号66の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部53Iによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器59によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器57Iによる伝搬遅延処理)の順序は、互に入れ替え可能である。波形成形部53I、メモリ58I及び伝搬遅延器57Iが接続される順序は、該3つのデジタル処理を行うべき順序に応じて決定される。
【0141】
同様に、Q相について行われる3つのデジタル処理:RF出力信号66の波形の成形のためのデジタル処理(波形成形部53Qによる波形成形処理)、ドップラー効果による周波数遷移を模擬するためのデジタル処理(信号処理器59によるデジタル処理)及び伝搬遅延の模擬のための遅延処理(伝搬遅延器57Qによる伝搬遅延処理)の順序は、互に入れ替え可能である。波形成形部53Q、メモリ58Q及び伝搬遅延器57Qが接続される順序は、該3つのデジタル処理を行うべき順序に応じて決定される。
【0142】
また、
図9においては、I相処理部44Iが2つのメモリ52I、58Iを含むとしてメモリ52I、58Iが別々に図示されているが、実際の実装においては、メモリ52I、58Iは、物理的に分離されずに1つのメモリデバイスとしてI相処理部44Iに実装されてもよい。同様に、実際の実装においては、メモリ52Q、58Qが物理的に分離されずに1つのメモリデバイスとしてQ相処理部44Qに実装されてもよい。
【0143】
以上には、本発明の実施形態が具体的に記述されているが、本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明が種々の変更と共に実施され得ることは、当業者には理解されよう。