特許第6731383号(P6731383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731383
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/36 20060101AFI20200716BHJP
   E02F 3/47 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   E02F3/36 C
   E02F3/47 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-143949(P2017-143949)
(22)【出願日】2017年7月25日
(65)【公開番号】特開2019-27029(P2019-27029A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 拓也
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−264150(JP,A)
【文献】 実開平06−060647(JP,U)
【文献】 特開平09−158243(JP,A)
【文献】 米国特許第04239273(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0094756(KR,A)
【文献】 実開平02−089045(JP,U)
【文献】 特開2000−230241(JP,A)
【文献】 米国特許第07008169(US,B1)
【文献】 特開2002−327454(JP,A)
【文献】 米国特許第05806313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 3/47
E02F 3/413
E02F 5/02
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体、前記下部構造体の上部に旋回可能に設けられた旋回体、前記旋回体の前部に設けた多関節型の作業腕、前記作業腕の先端に設けた延長アーム、前記延長アームの先端に設けたクラムシェルバケットを備えた作業機械において、
前記延長アームは、
前記作業腕に連結される上部ブラケットと、
前記クラムシェルバケットに連結される下部ブラケットと、
前記上部ブラケットと前記下部ブラケットの間に介在して延びる筒状のアーム本体と、
前記クラムシェルバケットを駆動する作動油を通す油圧配管を備え、
前記アーム本体が、
上端に設けられて前記上部ブラケットの下部にボルトで連結される上側フランジと、
下端に設けられて前記下部ブラケットの上部にボルトで連結される下側フランジと、
前記上側フランジ及び前記下側フランジの外周面にそれぞれ複数設けられた油圧ポートとを有しており、
前記上側フランジ及び前記下側フランジにそれぞれ設けられた油圧ポートが、前記上側フランジ及び前記下側フランジの半径方向に油路を延ばして前記アーム本体の内側の空間に臨み、前記アーム本体の内外の空間を接続しており、
前記油圧配管が、前記アーム本体の内部空間を通り、前記上側フランジに設けた前記油圧ポートと前記下側フランジに設けた前記油圧ポートとを接続していることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、前記油圧配管が油圧ホースであることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的柔らかい土砂の掘削等の一般的用途に限らず、例えば地下解体現場からのコンクリートガラの運搬といった特殊用途にも広く柔軟に対応できるクラムシェルバケットを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔の基礎工事や各種インフラ工事等で用いる作業機械として、ベースマシンである油圧ショベルにテレスコアーム等の延長アームを介してクラムシェルバケットをアタッチメントとして装着したものがある(特許文献1等参照)。周知の通りクラムシェルバケットは向い合せにした2つのバケットが開閉するように構成され、2つのバケットで掻き込んだ土砂を抱え込むようにして土砂を掘削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−158243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラムシェルバケットは2つのバケットを開閉駆動する油圧シリンダを備えている。この油圧シリンダに接続する油圧配管は、一般に延長アームの外壁面に沿って這い回される。そのため、稼働現場における周辺構造物等との干渉に備え、油圧配管自体が強固な鋼管で構成されることが多い。特許文献1のクラムシェルバケットのように更に油圧配管を保護カバーで覆う場合もある。
【0005】
しかしこのような構造の延長アームは外側に油圧配管や保護カバーを設置することで肥大化し、見かけ上太くなる。延長アームを介してクラムシェルバケットを取り付けた場合、オペレータは地上の運転席から掘削箇所が目視し難く、延長アームが太ければそれだけ周辺構造物に不測に干渉する確率は増す。特に地下解体現場のコンクリートガラの撤去作業に用いる場合、掘削箇所が確認し難い中でクラムシェルバケットが勢い良く接地すると、コンクリートガラの破片等が跳ね飛ぶ可能性もある。延長アームが太ければコンクリートガラの破片等の飛散物が干渉する可能性も増し、著しい場合には延長アームや保護カバー等の変形の要因となる場合もある。
【0006】
本発明の目的は、周辺構造物や飛散物と延長アームとの干渉の発生を抑制し、土砂の掘削等の一般的用途のみならず地下解体現場からのコンクリートガラの撤去等の新たな用途にも柔軟に対応できるクラムシェルバケットを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、下部構造体、前記下部構造体の上部に旋回可能に設けられた旋回体、前記旋回体の前部に設けた多関節型の作業腕、前記作業腕の先端に設けた延長アーム、前記延長アームの先端に設けたクラムシェルバケットを備えた作業機械において、前記延長アームは、前記作業腕に連結される上部ブラケットと、前記クラムシェルバケットに連結される下部ブラケットと、前記上部ブラケットと前記下部ブラケットの間に介在して延びる筒状のアーム本体と、前記クラムシェルバケットを駆動する作動油を通す油圧配管を備え、前記アーム本体が、上端に設けられて前記上部ブラケットの下部にボルトで連結される上側フランジと、下端に設けられて前記下部ブラケットの上部にボルトで連結される下側フランジと、前記上側フランジ及び前記下側フランジの外周面にそれぞれ複数設けられた油圧ポートとを有しており、前記上側フランジ及び前記下側フランジにそれぞれ設けられた油圧ポートが、前記上側フランジ及び前記下側フランジの半径方向に油路を延ばして前記アーム本体の内側の空間に臨み、前記アーム本体の内外の空間を接続しており、前記油圧配管が、前記アーム本体の内部空間を通り、前記上側フランジに設けた前記油圧ポートと前記下側フランジに設けた前記油圧ポートとを接続していることを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クラムシェルバケットに接続する油圧配管を延長アームの中空のアーム本体の内側に通したことで、油圧配管を保護するカバーを要さず、延長アームの肥大化(幅広化)を抑制できる。従って、周辺構造物や飛散物と延長アームとの干渉の発生を抑制し、土砂の掘削等の一般的用途のみならず地下解体現場からのコンクリートガラの撤去等の新たな用途にもクラムシェルバケットを柔軟に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の外観を表す側面図
図2図1に示した作業機械に備えられた解体クラムの外観図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
1.作業機械
図1は本発明の一実施形態に係る作業機械の外観を表す側面図である。同図に示した作業機械は油圧ショベルをベースマシンとし、フロント作業機の先端のアタッチメント(作業具)として解体クラム22(後述)を装着したものである。以降において、運転席に座った操作者から見て前側(図1中の左側)、後側(同右側)、左側(図1の紙面に直交する方向の手前側)、右側(同奥側)を作業機械の前、後、左、右とし、それぞれ単に前側、後側、左側、右側と記載する。
【0012】
図1に示した作業機械は、車体10及び作業機(フロント作業機)20を備えている。車体10は、走行体11及び旋回体12を備えている。
【0013】
走行体11は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ13を備えており、左右の走行駆動装置18により左右のクローラ13をそれぞれ駆動することで走行する。走行駆動装置18には例えば油圧モータと減速機が用いられる。
【0014】
旋回体12は、走行体11上に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に設けられている。旋回体12の前部(本実施形態では前部左側)には、操作者が搭乗する運転室14が設けられている。旋回体12における運転室14の後側には、原動機や油圧駆動装置等を収容した動力室15が、最後部には機体の前後方向のバランスを調整するカウンタウェイト16が搭載されている。原動機はエンジン(内燃機関)又は電動機である。作業機械に搭載された油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータは、油圧駆動装置に含まれる油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。旋回体12を走行体11に対して連結する旋回装置には旋回モータが含まれており、旋回モータによって走行体11に対して旋回体12が鉛直軸を中心に旋回駆動される。本実施形態における旋回モータは油圧モータであるが、電動モータを用いることもあれば、油圧モータ及び電動モータの双方を用いることもある。
【0015】
作業機20は作業腕21及び解体クラム22を備えている。本実施形態における作業腕21は、ブーム23、アーム24、ブームシリンダ25、アームシリンダ26及び作業具シリンダ27を含む多関節型の作業装置である。ブーム23は旋回体12の前部(本実施形態では前部右側)に左右に延びる軸を介して回動可能に連結されている。アーム24はブーム23の先端に左右に延びる軸を介して回動可能に連結されている。このアーム24の先端には、吊ブラケット28が左右に延びる軸を介して回動可能に連結されている。ブームシリンダ25は旋回体12及びブーム23に、アームシリンダ26はブーム23及びアーム24に、それぞれ両端が連結されている。作業具シリンダ27は、アーム24の基部に基端が連結される一方、アーム24の先端部と吊ブラケット28にリンクを介して先端が連結されている。ブームシリンダ25、アームシリンダ26及び作業具シリンダ27はいずれも油圧シリンダである。ブームシリンダ25の伸縮に伴って旋回体12に対してブーム23が上下に回動する。アームシリンダ26の伸縮に伴ってブーム23に対してアーム24が回動する。作業具シリンダ27の伸縮に伴ってアーム24に対して吊ブラケット28が回動する。
【0016】
2.解体クラム
図2図1に示した作業機械に備えられた解体クラムの外観図である。解体クラム22は作業腕21に装着するアタッチメントであり、一般的なクラムシェルバケットが行う土砂の掘削等の作業の他、特に地下解体現場からのコンクリートガラの撤去等の一般的にクラムシェルバケットでは行わないような特殊作業にも用いられる。この解体クラム22は、クラムシェルバケット30と延長アーム50のユニットである。
【0017】
2−1.クラムシェルバケット
クラムシェルバケット30は延長アーム50の先端(下端)に設けられ、延長アーム50及び吊ブラケット28(図1)を介して作業腕21のアーム24の先端側に取り付けられている。以下、クラムシェルバケットをクラムシェルと略称する。このクラムシェル30は、フレーム31、バケット32,33、油圧シリンダ34,35等で構成されている。
【0018】
フレーム31はクラムシェル30のベースであり、上端に位置するブラケット31aと、ブラケット31aの下側に一体に設けられた本体部31bとで枠状に形成されて上下方向に延在している。本体部31bは2枚の板状部材等からなる。2枚の板状部材は左右に対面し上下に延在している。ブラケット31aは軸36を介して延長アーム50の先端部に連結されている。図2に示した姿勢では軸36は左右方向に延び、軸36を中心としてクラムシェル30が前後方向に揺動する構成である。但し、クラムシェル30は延長アーム50の機構(後述)によって鉛直軸周りに旋回(自転)可能であり、図2に示した姿勢から90度旋回すると左右に開閉することになる。
【0019】
バケット32,33は、互いの積荷の収容部を向い合せにした状態でフレーム31の下部に左右に延びるピン38,39を介して回動自在に連結されている。またバケット32は油圧シリンダ34を介し、バケット33は油圧シリンダ35を介して、それぞれフレーム31の本体部31bに連結されている。油圧シリンダ34,35が収縮するとバケット32,33が開き(互いに離れる方向に回動し)、油圧シリンダ34,35が伸長するとバケット32,33が閉じる(互いに近付く方向に回動する)構成である。バケット32,33の上端部はリンク37を介して連結されており、バケット32,33の開閉動作が同調するようになっている。
【0020】
2−1.延長アーム
延長アーム50は作業腕21(厳密には吊ブラケット28)の先端に設けた一種の継手である。作業腕21に直接連結したクラムシェル30では届かないような作業機械の接地面(例えば図1に示す地面GL)に相対して低い作業場所までクラムシェル30が下せるようにするため、クラムシェル30と作業腕21の間に延長アーム50が介在させてある。延長アーム50は作業機械の接地面と作業場所の高低差に応じた長さ(上下方向の寸法)のものが使用される。但し一般的には、作業機械と同じレベルに待機する運搬車両T(図1)の荷台等の上部にクラムシェル30を移動させる必要があるので、言うまでもないが作業腕21の長さに応じて延長アーム50の長さには上限がある。この延長アーム50は、上部ブラケット51、下部ブラケット52、アーム本体53、油圧配管54を備えている。
【0021】
上部ブラケット51は作業腕21に連結される部材であり、上側部分51aと下側部分51bに分割されている。上部ブラケット51の上側部分51aは吊ブラケット28を介して作業腕21に連結されている。具体的には、上側部分51aは左右に延びるピン55(図1)を介して吊ブラケット28の先端部に前後に揺動可能に連結されている。このようにして解体クラム22はピン55を支点にして作業腕21に垂下されて上下に延びている。上部ブラケット51の下側部分51bは上側部分51aの下部にユニバーサルブラケット56を介して連結されており、鉛直軸周りに旋回(自転)可能である。図2に示した解体クラム22は、図1に示した状態から上部ブラケット51の下側部分51bの角度が90度変更されている。上部ブラケット51の下側部分51bは、角度を変えて上側部分51aに対してピン(不図示)で固定できるようにすることができる。
【0022】
アーム本体53は上端及び下端にフランジ53a,53bを有するパイプ状(本実施形態では円筒状)の部材であり、上部ブラケット51と下部ブラケット52の間に介在して延びている。上部ブラケット51はアーム本体53の上端(長手方向の一方側の端部)に位置し、下部ブラケット52はアーム本体53の下端(長手方向の他方側の端部)に位置している。上側のフランジ53aは上部ブラケット51の下部に、下側のフランジ53bは下部ブラケット52の上部に、それぞれボルト及びナットで連結されている。フランジ53a,53bには外周面にそれぞれ複数の油圧ポート(配管継手)57が設けられている。油圧ポート57は、アーム本体53の内外の空間を接続している。具体的には、各油圧ポート57はフランジ53a,53bの半径方向に油路を延ばし、中空のアーム本体53の内側の空間に臨んでいる。上側の油圧ポート57は、旋回体12に搭載された油圧駆動装置の対応するコントロールバルブ(不図示)に配管(不図示)を介してそれぞれ接続されている。下側の油圧ポート57は、クラムシェル30の油圧シリンダ34,35の対応する油室に油圧ホース40を介してそれぞれ接続されている。
【0023】
なお、本実施形態においては、フランジ53a,53bの中央が開口しており、アーム本体53の内部空間はフランジ53a,53bの開口により両端が開放された構成をしている。つまりアーム本体53はフランジ付きの配管(直管)のような構成である。
【0024】
下部ブラケット52は、前述した通りアーム本体53の下側のフランジ53bに締結されており、上記軸36を介してクラムシェル30を揺動自在に支持している。
【0025】
油圧配管54はクラムシェル30を駆動する作動油を通す配管であり、中空のアーム本体53の内側の空間に複数本配置されている。つまり中空のアーム本体53が内部空間にこれら油圧配管54を通し、油圧配管54の周囲を覆った構成である。本実施形態においては、油圧ポート57の一部や油圧配管54を除き、他の構造物はアーム本体53の内側には存在していない。またアーム本体53の内側の空間は仕切りのない単一の空間である。各油圧配管54の一端(上端)は対応する上側の油圧ポート57に接続され、他端(下端)は対応する下側の油圧ポート57に接続されている。本実施形態では油圧配管54には可撓性の油圧ホースが用いられている。
【0026】
3.動作
作業機械の動作について説明する。まず走行体11を駆動して、図1の例では地下解体現場に通じる立坑Hの近くまで作業機械を移動させる。その後、ブーム23及びアーム24を俯仰動させ、地下解体現場の作業場所までクラムシェル30を下してコンクリートガラの散らばる地下空間の床面に押し付ける。その際、クラムシェル30の油圧シリンダ34,35を縮小させ、バケット32,33を開いた状態で保持しておく。クラムシェル30が地下空間の床面に到達したら油圧シリンダ34,35を伸長させ、バケット32,33を閉じてバケット32,33の内部にコンクリートガラを掻き込む。バケット32,33にコンクリートガラを収容したらブーム23等を俯仰動させてクラムシェル30を地上に引上げ、旋回体12を旋回させて運搬車両Tの荷台上にクラムシェル30を移動させる。この状態でバケット32,33を開くことにより、運搬車両Tの荷台にコンクリートガラを排出することができる。その後は所定量のコンクリートガラの撤去作業が完了するまで以上の繰り返しである。
【0027】
4.効果
(1)種々作業への適用の柔軟性
本実施形態においては、クラムシェル30を駆動する作動油を通す油圧配管54を延長アーム50の中空のアーム本体53の内側に通し、アーム本体53の外周側に他の構成要素のない構造とした。油圧配管54を内側に通したことで延長アーム50の肥大化(幅広化)が抑制でき、解体現場等における周辺構造物や作業中に跳ね飛ぶコンクリートガラの破片等に延長アーム50が干渉することを抑制できる。勿論、延長アーム50で覆われたことで油圧配管54も確りと保護されている。本実施形態に係る作業機械は、クラムシェルを装着した従来の作業機械と同様に土砂の掘削等の一般的用途に用いられることは言うまでもない。加えて、コンクリートガラ等の飛散物と延長アーム50との干渉が抑制できることで、地下解体現場からのコンクリートガラの撤去等の特殊用途にも好適に採用できる。
【0028】
(2)延長アームの強度向上
一般にクラムシェルは軟らかい地面を対象とし、開いて接地した状態で閉じることで土砂を掻き込む。延長アームを介して作業腕にクラムシェルを取り付けた場合、オペレータは地上の運転席からではクラムシェルの様子が目視し難い場合がある。そのような場合でも掘削場所の土砂等が軟質であれば、例えば延長アームが傾斜した状態でクラムシェルが地面に押し付けられたりしても、その際の押し付け荷重は地面に散逸し延長アームに作用する曲げ荷重は緩和される。しかし地下解体現場のコンクリートガラの撤去作業に同様の作業機械を用いる場合、硬質のコンクリートガラにクラムシェルバケットが強く押し付けられると、押し付け荷重が散逸せずに延長アームに強い曲げ荷重が作用し得る。
【0029】
それに対し本実施形態に係る延長アーム50は、上記の通りアーム本体53の内側に油圧配管54を通したことで油圧配管54のカバーが不要となり、軽量化に有利な構成である。油圧配管54を鋼管ではなく油圧ホースとしたことも貢献している。従って例えば配管保護用のカバーを要していた従来構造の延長アームと同程度の重量を許容する場合には、アーム本体53そのものの重量は従来に比べて重くできるので、アーム本体53の強度を向上させることができる。よって延長アームの強度向上の効果も得られ得る。
【0030】
(3)油圧配管の設計自由度
延長アーム50のアーム本体53で油圧配管54を保護することで、油圧配管54に対する耐衝撃性の要求値を下げることができる。油圧配管54には相応の長さがあり、仮に露出した構造とすると鋼管を用いる必要が生じる場合もある。しかし本実施形態の場合、油圧配管54の耐衝撃性の要求値が低い分だけ素材の選択の自由度が増し、鋼管に限らず油圧ホースを油圧配管54の素材として積極的に用いることができ、素材選定の面で設計の自由度が向上する。
【0031】
(4)配管容易性
本実施形態では延長アーム50のアーム本体53は1本のみであるが、必要な長さによっては複数本を継ぎ足すことも考えられる。この場合、アーム本体53同士はフランジ53a,53bで締結できるため、延長アーム50の継ぎ足しも容易である。
【0032】
このとき、仮に油圧配管54をアーム本体53の外に這い回す場合、耐衝撃性を考慮すれば各アーム本体53のアーム本体53の外周面に鋼管製の油圧配管54を固定することが好ましい。但しアーム本体53同士を連結するフランジが障害となるので、フランジを迂回する形で鋼管を曲成し2本のアーム本体53に跨って配管することは手間が掛かる。鋼管を曲げ加工する手間を考えれば、鋼管を各アーム本体53に対応させて分割し、フランジを跨ぐ部分で鋼管同士を油圧ホースで接続する構成が現実的と言えるが、部品点数が増える。
【0033】
それに対し、本実施形態のように油圧配管54をアーム本体53の内側に通す構成では、連結されるアーム本体53の内部空間が直線的に繋がる。そのため、油圧配管54を這い回す上で障害物がないため、油圧配管54を継ぎ足すことなく複数のアーム本体53に跨って直線的に通すことができる。アーム本体53同士を連結するフランジ53a,53bの油圧ポート57が邪魔になるようであれば、それらの油圧ポート57については省略するなり切断するなりすれば良い。このように本実施形態によれば、アーム本体53を継ぎ足した場合においても油圧配管54の点数を増やすことなく容易に配管できる。
【0034】
また、油圧配管54に油圧ホースを積極的に採用できるので、油圧配管54を可撓性とすることができることも配管容易性の向上に貢献し得る。例えばアーム本体53が若干曲がっていたり油圧配管54とアーム本体53の長さに若干の製作誤差があったりしても、鋼管と異なり、油圧ホースの可撓性でこれを吸収できる。
【0035】
5.変形例
クラムシェル30はバケット32,33がそれぞれ対応する油圧シリンダ34,35で開閉する構成のものを例に挙げて説明したが、この点は限定されない。例えば特開2013−221284号公報に詳細に記載されているような、1本の油圧シリンダで2つのバケットを駆動する構成のクラムシェルも適用可能である。但し、油圧シリンダが1本のクラムシェルは、油圧シリンダ等に不具合が生じると、油圧シリンダのみならず関連するリンク等の構成要素をまとめて交換する必要が生じてメンテナンスが大掛かりになる場合がある。その点、2本の油圧シリンダを備えたクラムシェルの場合、仮に一方の油圧シリンダに不具合が生じても他方の油圧シリンダに不具合がなければ1つの油圧シリンダのみを交換すれば良く、メンテナンス性に優れる一面もある。従って油圧配管54の配管が容易で障害物や飛散物等との干渉抑制が期待できる延長アーム50と併せて採用することで、不具合の発生が少なく運用の安定性が向上するメリットも期待できる。
【0036】
また、クローラ式の走行体11を下部構造体として備えた作業機械に発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、走行体がホイール式の作業機械にも発明は適用可能である。旋回体12を支持する下部構造体として走行体11を例示したが、地面や船体に固定されたポストを下部構造体とする定置式等の作業機械にも発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
11…走行体(下部構造体)、12…旋回体、21…作業腕、30…クラムシェルバケット、50…延長アーム、51…上部ブラケット、52…下部ブラケット、53…アーム本体、54…油圧配管(油圧ホース)、57…油圧ポート
図1
図2