特許第6731386号(P6731386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731386
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】原子炉設備
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/004 20060101AFI20200716BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   G21C9/004 300
   G21F9/06 521N
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-184676(P2017-184676)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2019-60684(P2019-60684A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英之
(72)【発明者】
【氏名】桐田 晃
(72)【発明者】
【氏名】荻野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】竹井 怜
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−090187(JP,A)
【文献】 特開平07−174880(JP,A)
【文献】 特開平9−105795(JP,A)
【文献】 特開2017−116351(JP,A)
【文献】 特開昭54−19083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C9/00−9/06
15/00−15/28
19/00−19/10
19/12−19/313
19/32−19/50
23/00
G21F9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉を格納する原子炉格納室、及び、該原子炉格納室の下階に設けられ、内部に第1の水が貯留され、床面にサンプスクリーンを備えた再循環プール室、を有する原子炉格納容器と、
前記原子炉格納容器の外部に設けられ、一端が前記サンプスクリーンを介して前記再循環プール室に接続され、他端が前記原子炉格納室に接続された、第1開閉弁を有する循環用配管と、
前記循環用配管のうち、前記サンプスクリーンと前記第1開閉弁の間の部分に付設され、前記第1の水を前記原子炉格納室側に圧送可能なポンプと、
第2の水が収容され、収容空間の下端が、鉛直方向において前記再循環プール室の前記第1の水の水面よりも上側に位置するタンクと、
前記タンクと前記循環用配管とを接続し、第2開閉弁を有する逆洗用配管と、を備えていることを特徴とする原子炉設備。
【請求項2】
前記逆洗用配管は、前記第2開閉弁を有する配管と、前記第2開閉弁を有していない配管とに分岐し、それぞれ前記循環用配管に接続されており、
前記第2開閉弁を有する配管の接続位置が、前記第2開閉弁を有していない配管の接続位置より、前記再循環プール室に近いことを特徴とする請求項1に記載の原子炉設備。
【請求項3】
前記ポンプが、前記第2開閉弁を有する配管の接続位置より、前記再循環プール室から遠い位置で、前記循環用配管に接続されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の原子炉設備。
【請求項4】
前記ポンプが、前記第2開閉弁を有していない配管の接続位置より、前記再循環プール室に近い位置で、前記循環用配管に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の原子炉設備。
【請求項5】
前記第2開閉弁を有していない配管が、前記タンク内に収容されている前記第2の水の量に応じて、自動で開閉する第3開閉弁を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の原子炉設備。
【請求項6】
前記第2開閉弁を有していない配管が、前記循環用配管から前記タンクに向かう方向のみに水を流すように取り付けられた、逆止弁を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の原子炉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再循環ストレーナ逆洗機構を有する原子炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
事故発生時の原子炉建屋内では、配管破断などにより、保温材、コンクリート片、コンクリートから染み出した化学成分などの多様な異物(以下、デブリと称する)が発生する。発生したデブリは、内部を冷却するために散布される冷却液とともに、原子炉建屋の下部に設置されている再循環プール(RWSP)に流れ込む。再循環プールは、冷却液の流速がサンプ近傍で局所的に増加し、冷却液のサンプへの流入が加速するように構成されている。そして、サンプスクリーン(濾過器)が、サンプ流入孔を覆うことにより、そこに到来したデブリを濾しとり、デブリがサンプに流入しないように構成されている。
【0003】
ところで、サンプスクリーンに到来して堆積するデブリが多過ぎる場合、サンプ流入孔の一部が閉塞され、冷却液がサンプに流入する際の圧力損失が過大となり、安全系ポンプの有効吸込みヘッド(NPSH)が不足してしまうことが問題となっている。この問題を解決する手段としては、例えば、サンプの閉塞が想定を上回った場合に、冷却液を逆流させることによってサンプスクリーンを逆洗し、デブリによる目詰まりを一旦解消させる手段が挙げられる。特許文献1では、この逆洗を行うために、加圧流体を供給する流体供給源を新たに設けた洗浄システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−90187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の洗浄システムでは、新たな配管を敷設し、逆洗専用のポンプ等を設ける必要があり、配置条件の制約から、実施することは困難であると考えられる。また、特許文献1の洗浄システムでは、逆洗を繰り返し行う場合、その度に逆洗用の流体を補給する必要があり、コストの上昇が避けられないという新たな問題も発生する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、既存の冷却設備を用いて、デブリの堆積による、冷却液がサンプに流入する際の圧力損失の増大を抑えることを可能とした、原子炉設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
【0008】
(1)本発明の一態様に係る原子炉設備は、原子炉を格納する原子炉格納室、及び、該原子炉格納室の下階に設けられ、内部に第1の水が貯留され、床面にサンプスクリーンを備えた再循環プール室(BWRの場合は圧力抑制室のプールに相当)、を有する原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の外部に設けられ、一端が前記サンプスクリーンを介して前記再循環プール室に接続され、他端が前記原子炉格納室に接続された、第1開閉弁を有する循環用配管と、前記循環用配管のうち、前記サンプスクリーンと前記第1開閉弁の間の部分に付設され、前記第1の水を前記原子炉格納室側に圧送可能なポンプと、第2の水が収容され、収容空間の下端が、鉛直方向において前記再循環プール室の前記第1の水の水面よりも上側に位置するタンクと、前記タンクと前記循環用配管とを接続し、第2開閉弁を有する逆洗用配管と、を備えている。
【0009】
(2)前記(1)に記載の原子炉設備において、前記逆洗用配管は、前記第2開閉弁を有する配管と、前記第2開閉弁を有していない配管とに分岐し、それぞれ前記循環用配管に接続されており、前記第2開閉弁を有する配管の接続位置が、前記第2開閉弁を有していない配管の接続位置より、前記再循環プール室に近いことが好ましい。
【0010】
(3)前記(1)または(2)に記載の原子炉設備において、前記ポンプが、前記第2開閉弁を有する配管の接続位置より、前記再循環プール室から遠い位置で、前記循環用配管に接続されていることが好ましい。
【0011】
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の原子炉設備において、前記ポンプが、前記第2開閉弁を有していない配管の接続位置より、前記再循環プール室に近い位置で、前記循環用配管に接続されていることが好ましい。
【0012】
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の原子炉設備において、前記第2開閉弁を有していない配管が、前記タンク内に収容されている前記第2の水の量に応じて、自動で開閉する第3開閉弁を有することが好ましい。
【0013】
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の原子炉設備において、前記第2開閉弁を有していない配管が、前記循環用配管から前記タンクに向かう方向のみに水を流すように取り付けられた、逆止弁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の原子炉設備は、デブリによるサンプスクリーンの閉塞率が高くなり過ぎた場合に、サンプスクリーンを逆洗する機構を備えている。サンプスクリーンの逆洗は、第1開閉弁を閉じて通常の冷却液の循環を止め、第2開閉弁を開けることにより、タンクからサンプスクリーンへ向けて加圧流体を流して行われる。逆洗により、サンプスクリーンを閉塞しているデブリが除去されるため、デブリの堆積による、冷却液がサンプに流入する際の圧力損失の増大をお抑え、安全系ポンプでNPSHが不足してしまう問題を回避することができる。
【0015】
本発明の原子炉設備における逆洗機構は、従来の原子炉設備におけるポンプ、循環用配管等の既存の冷却設備に、逆洗用流体用のタンクを付設しただけのシンプルな構成を有しており、配置条件が制約される場合であっても適用可能である。
【0016】
また、本発明の原子炉設備は、通常の冷却液が一時的にタンクに収容され、サンプスクリーンの閉塞率が高まった時に、この冷却液が逆洗用の加圧流体として利用されるように構成されている。したがって、逆洗を行う度に外部から加圧流体を供給する必要がなく、タンクの放水と充水を繰り返して実施することが可能であるため、逆洗に伴うコストの上昇が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る原子炉設備の縦断面図である。
図2】(a)〜(d)本発明の第一実施形態に係る、原子炉設備の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施形態に係る原子炉設備について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
<第一実施形態>
[原子炉設備の構成]
本発明の第一実施形態に係る原子炉設備100は、加圧水型、沸騰水型のいずれであってもよいが、以下では、加圧水型の構造を例にして説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る原子炉設備100の構成を、模式的に示す縦断面図である。図1に示すように、原子炉設備100は、主に、原子炉格納容器(CV)10、再循環ポンプ設備、発電設備等で構成されている。
【0020】
原子炉格納容器10は、原子炉51が格納される原子炉格納室50と、原子炉格納室50の下階に設けられ、内部に冷却水(冷却液)Lを貯留する再循環プール室60(沸騰水型の場合には圧力調整プール室)とを備えている。原子炉格納室50と再循環プール室60との境界部分(隔壁)50Aには、開口部70が形成されており、この開口部70を介して両者が連通している。再循環プール室の床面(底面)60Aには、サンプ61が設けられ、サンプ61の開口部にサンプスクリーン32が取り付けられている。本実施形態では、サンプ61が1つ設けられている場合を例示しているが、サンプ61の数については、2つ以上であってもよい。
【0021】
本実施形態に係る原子炉格納容器10は、頂部がドーム状に形成された円筒状の容器であって、原子炉51の他に、加圧器52および蒸気発生器53が格納されている。一次冷却材(軽水)は、この加圧器52で加圧され、さらに原子炉51の核分裂反応によって生じた熱エネルギーで加熱される。高温高圧となった一次冷却材は、蒸気発生器53に送られ、二次冷却材(軽水)を沸騰させる。
【0022】
原子炉格納容器10の外部には、発電設備として、タービン、発電機、および復水器が設けられている。タービンは、蒸気発生器53で沸騰した二次冷却材(蒸気)が送られることによって回転し、発電機を駆動する。タービンを回転させた蒸気は、復水器で復水され、二次冷却材となって蒸気発生器53に送られる。このようにして、二次冷却材(軽水)は、蒸気発生器53、タービン、および復水器の間を循環する。
【0023】
サンプ61は、図1に示すように、再循環プール室の床面60Aのうち、原子炉格納室50側からの平面視において開口部70と重ならない位置に設けられていることが好ましい。この場合、開口部70を通って再循環プール室60に流入した冷却液Lが、再循環プール室60を横断してサンプ61に流入することになるため、局所的な滞留の発生を抑えることができる。
【0024】
再循環ポンプ設備は、再循環プール室60に貯留された冷却水Lを、サンプ61から吸い込んで原子炉格納室50の上部まで誘導し、そこから原子炉格納室50内に吐出するように構成されている。具体的な再循環ポンプ設備としては、例えば図1に示すように、サンプ61から原子炉格納室50の天井部にわたって配設された循環用配管21、循環用配管21の途中に設けられたポンプ22、および原子炉格納室50の天井部に設けられたシャワーノズル23を備えているものが挙げられる。ポンプ22は、循環用配管21に付設され、再循環プール室60に貯留されている冷却水Lを、原子炉格納室50側に圧送する機能を有している。
【0025】
再循環プール室60に貯留された冷却水Lは、ポンプ22によりサンプ61から汲み上げられ、配管21を通り、シャワーノズル23から吐出される。そして、シャワーノズル23から吐出された冷却水Lは、原子炉格納室50に格納された機器を冷却した後に、開口部70を通って再循環プール室60に流入する。このようにして、冷却水Lは、サンプ61、配管21、シャワーノズル23、原子炉格納室50、再循環プール室60の間を循環する。
【0026】
再循環ポンプ設備には、サンプスクリーン32に対し、通常時とは反対側から水Lを注入し、サンプスクリーンの逆洗を行う逆洗機構20が付設されている。逆洗機構20は、主に、水Lを収容するタンク24と、逆洗用の水Lの流路となる循環用配管21と、水Lを圧送するポンプ22と、循環用配管21とタンク24とを接続する逆洗用配管25と、で構成される。以下では、原子炉格納室50へ通水する冷却用の水(冷却水、冷却液)L、逆洗用の水Lを、それぞれ、第1の水L、第2の水Lと呼んで区別することがあるが、両者は実質的に同じ液体である。
【0027】
循環用配管21とポンプ22は、上述したように冷却水を循環させる機構として、原子炉設備100に元々備わっているものであり、それらを逆洗機構20に併用することができる。つまり、循環用配管21は、原子炉格納容器10の外部に設けられ、一端が再循環プール室60に接続され、他端が原子炉格納室50に接続されている。循環用配管21は、その一部分に冷却用の水(第1の水)Lの流量を調整する第1開閉弁26を有している。ポンプ22は、循環用配管のうち、サンプスクリーン32と第1開閉弁26の間の部分に付設されている。
【0028】
タンク24は、循環用配管21から分岐した逆洗用配管25に接続されている。逆洗用配管25は、第2開閉弁27を有しており、これを開けたときに、タンク24内の第2の水Lが、循環用配管21内に流れ出すように構成されている。
【0029】
逆洗用配管25は、図1に示すように、タンク24と第2開閉弁27との間に分岐点Jを有し、この分岐点Jから、第2開閉弁を有する配管25Aと、第2開閉弁を有していない配管25Bとに分岐していてもよい。この場合、分岐した配管25A、25Bは、それぞれ循環用配管21に接続され、第2開閉弁を有する配管25Aの接続位置Aが、第2開閉弁を有していない配管25Bの接続位置Bより、再循環プール室60に近い位置となる。
【0030】
なお、図1では、第2開閉弁を有する配管25A、第2開閉弁を有していない配管25Bが、1本ずつある場合について例示しているが、それぞれの本数について限定されることはない。
【0031】
タンク24としては、1トレン分のサンプスクリーン全体体積以上に相当する容量を有するものが用いられる。
【0032】
タンク24は、逆洗用の水(第2の水)Lを収容し、図1に示すように、収容空間の下端24aが、鉛直方向Vにおいて、再循環プール室60の冷却用の水の水面L1aよりも上側に位置するように設置されている。
【0033】
このように設置されていることにより、再循環プール液面L1aよりも高いところにタンクの液面があることになり、ポンプ22が停止した後でも、タンクヘッドにて水が落水することで、サンプスクリーン32側への通水が行われる。つまり、ポンプ22を使わずとも、通水が可能になる。タンクの液面と再循環プール液面L1aとの高低差は、大きいほど好ましい。
【0034】
なお、通常時における冷却用の水の水面L1aは、所定の位置にあるように調整されており、事故時の水面L1aの位置は、これより低くなる。仮に、一次冷却水が全て漏れた場合の水面L1aは、最大水位となる。
【0035】
図2(a)〜(d)は、逆洗処理の過程における原子炉格納室50と逆洗機構20の状態を模式的に示した断面図である。逆洗機構20の動作について、図2(a)〜(d)を用いて説明する。
【0036】
まず、図2(a)に示すように、サンプスクリーン32にデブリDが堆積し、サンプスクリーン32が閉塞された状態になり、冷却用の水Lの循環が滞った時点(安全系ポンプのNPSHが不足する状況が発生した時点)で、逆洗処理が開始される。この時点で、タンク24内には十分な量の逆洗用の水Lが収容されているものとする。サンプスクリーン32の閉塞度合は、ポンプの吸込み圧力をモニターすることによって判断することができる。
【0037】
サンプスクリーン32が閉塞された時点で、ポンプ22が停止し、第1開閉弁26が閉じ、循環用配管21が遮断されることにより、通常の冷却水Lの循環が止められる。また、循環流路の遮断と同時に、第2開閉弁27が開き、逆洗用配管25が開通することにより、タンク24から逆洗用の水Lが流れ出す。
【0038】
通常の冷却水Lの循環が止められているため、図2(b)に示すように、タンク24から逆洗用配管25を通って、循環用配管21に流れ出す逆洗用の水Lが、冷却用の水Lを押し返すとともに、循環用配管21内を逆流し、サンプ61内に注入される。
【0039】
注入された逆洗用の水Lは、サンプ61内で唯一開口しているサンプスクリーン32に集中し、サンプスクリーン32を通って再循環プール室60側に放出される。逆洗用の水Lがサンプスクリーン32を通る際の圧力によって、サンプスクリーン32に堆積していたデブリDが、浮き上がって再循環プール室60内に吹き出され(逆洗され)、その結果として、サンプスクリーン32の閉塞状態が解消され、通常の冷却水Lの循環(通水)が可能な健全な状態となる。
【0040】
第1開閉弁26を閉じ、ポンプ22を駆動することにより、冷却水Lの循環が再開される。このとき、第2開閉弁27を閉じることにより、冷却水Lの循環再開後の初期段階では、図2(c)に示すように、冷却用の水Lの一部が、逆洗用配管25のうち第2開閉弁を有していない方の配管25Bを通り、タンク24に注入(充水)される。
【0041】
第2開閉弁を有していない配管25Bには、循環用配管から前記タンクに向かう方向のみに水が流れるように取り付けられた、逆止弁28が設けられていることが好ましい。さらに、第2開閉弁を有していない配管25Bには、タンク24が満水になった時点で充水が止まるように、タンク24内の水Lの量を検知して自動で開閉する第3開閉弁(不図示)が設けられていてもよい。
【0042】
タンク24が満水になった時点で、図2(d)に示すように、冷却用の水Lの逆洗用配管への流れが止まり、冷却用の水Lの全てが循環用配管21を流れ、原子炉格納室50へ送水される。仮に、サンプスクリーン32が再びデブリDで閉塞された場合には、上記手順による逆洗を繰り返す。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る原子炉設備100は、デブリDによるサンプスクリーン32の閉塞率が高くなり過ぎた場合に、サンプスクリーン32を逆洗する機構を備えている。サンプスクリーン32の逆洗は、第1開閉弁26閉じて通常の冷却水Lの循環を止め、第2開閉弁25を開けることにより、タンク24からサンプスクリーン32へ向けて加圧流体を流して行われる。逆洗により、サンプスクリーン32を閉塞しているデブリDが除去されるため、デブリDの堆積による、冷却水Lがサンプ61に流入する際の圧力損失の増大をお抑え、安全系ポンプでNPSHが不足してしまう問題を回避することができる。
【0044】
本実施形態の原子炉設備100における逆洗機構20は、従来の原子炉設備におけるポンプ、循環用配管等の既存の冷却設備に、逆洗用流体用のタンクを付設しただけのシンプルな構成を有しており、配置条件が制約される場合であっても適用可能である。
【0045】
また、本実施形態の原子炉設備は、通常の冷却水が一時的にタンクに収容され、サンプスクリーンの閉塞率が高まった時に、この冷却水が逆洗用の加圧流体として利用されるように構成されている。したがって、逆洗を行う度に外部から加圧流体を供給する必要がなく、タンクの放水と充水を繰り返して実施することが可能であるため、逆洗に伴うコストの上昇が抑えられる。
【符号の説明】
【0046】
100・・・原子炉設備
10・・・原子炉格納容器
20・・・逆洗機構
21・・・循環用配管
22・・・ポンプ
23・・・シャワーノズル
24・・・タンク
25・・・逆洗用配管
25A・・・第2開閉弁を有する配管
25B・・・第2開閉弁を有していない配管
26・・・第1開閉弁
27・・・第2開閉弁
28・・・逆止弁
32・・・サンプスクリーン
50・・・原子炉格納室
51・・・原子炉
52・・・加圧器
53・・・蒸気発生器
60・・・再循環プール室
60A・・・床面
61・・・サンプ
D・・・デブリ
・・・冷却用の水(第1の水)
・・・逆洗用の水(第2の水)
図1
図2