特許第6731389号(P6731389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6731389往復動ピストンポンプ及びピストンパッキンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731389
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】往復動ピストンポンプ及びピストンパッキンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/12 20060101AFI20200716BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   F04B53/12
   F04B53/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-206192(P2017-206192)
(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公開番号】特開2019-78225(P2019-78225A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】大和久 伸治
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−136176(JP,U)
【文献】 実開昭64−053476(JP,U)
【文献】 特開昭55−151182(JP,A)
【文献】 特開2014−224469(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第2628985(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/00−23/14
53/00−53/22
9/00−15/08
F16J 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側がポンプ室(10)に連通したシリンダパイプ(3)内を往復動するピストン棒(7)と、前記ピストン棒(7)に遊嵌され軸線方向に移動可能な吸水弁座(21p)及び前記吸水弁座(21p)の外周側に配設されると共に前記シリンダパイプ(3)の内周面に摺接するパッキン部(21a)を備えたピストンパッキン(21)と、前記ピストン棒(7)に固定され、前記ピストンパッキン(21)の軸線方向後側に当接可能に位置する吸水弁(20)と、前記ピストン棒(7)に固定され、前記ピストンパッキン(21)の軸線方向前側に当接可能に位置し、前後を連通する通孔(22a)を備えたストッパ(22)と、を具備した往復動ピストンポンプ(100)であって、
前記吸水弁座(21p)は、
内周側を形成する内周筒部(21b)と、
前記内周筒部(21b)より外周側且つ前記パッキン部(21a)の後端面に当接するように配置され、前記吸水弁(20)に当接可能であると共にその内周面の軸線方向途中から後方側が拡径する拡径面(21k)を有するプレート(21c)と、を備え、
前記内周筒部(21b)は、
軸線方向先端に径方向外方へ突出し前記パッキン部(21a)が当接した鍔部(21d)と、
前記鍔部(21d)の後に連設され、前記パッキン部(21a)が外嵌挿されたパッキン部嵌挿部(21f)と、
前記パッキン部嵌挿部(21f)の後に連設され、外周面が段差(21j)を介して小径とされ前記プレート(21c)が外嵌挿されたプレート嵌挿部(21g)と、
前記プレート嵌挿部(21g)の後に連設されて径方向外側へ延び、前記プレート嵌挿部(21g)に嵌挿された前記プレート(21c)が後方へ抜け出ないように前記プレート(21c)の前記拡径面(21k)に当接する抜け止め部(21h)と、を備えたことを特徴とする往復動ピストンポンプ(100)。
【請求項2】
前記抜け止め部(21h)は、前記プレート嵌挿部(21g)の後方への延在部(21i)がかしめられることにより設けられていることを特徴とする請求項1記載の往復動ピストンポンプ(100)。
【請求項3】
前記プレート(21c)は、樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2記載の往復動ピストンポンプ(100)。
【請求項4】
前記プレート(21c)の後部側の内周縁は、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面(21k)とされ、
前記抜け止め部(21h)は、前記プレート嵌挿部(21g)の後端に連設され前記拡径面(21k)に当接することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の往復動ピストンポンプ(100)。
【請求項5】
請求項4に記載のピストンパッキン(21)の製造方法であって、
前記パッキン部(21a)を、前記内周筒部(21b)の前記パッキン部嵌挿部(21f)に外嵌挿し、前記パッキン部(21a)の先端側を前記内周筒部(21b)の前記鍔部(21d)に突き当て、
前記プレート(21c)を、前記内周筒部(21b)の前記プレート嵌挿部(21g)に外嵌挿し、前記段差(21j)及び前記パッキン部(21a)に突き当て、
前記プレート嵌挿部(21g)から後方へそのまま延びる延在部(21i)を前記プレート(21c)の前記拡径面(21k)に当接するようにかしめることにより、前記抜け止め部(21h)を形成したことを特徴とするピストンパッキン(100)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ピストンポンプ及びピストンパッキンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動ピストンポンプとしてのユニフロー式ピストンポンプ(強制弁式ピストンポンプとも呼ぶ)が、以下の特許文献1に記載されている。このユニフロー式ピストンポンプにあっては、円筒状のシリンダパイプ内に前後方向に往復動するピストン棒が収容され、ピストン棒の先端側には、前後を連通する通孔を複数備えた円板状のストッパが固定されると共に、ピストン棒の先端側より後側には、円板状の吸水弁が固定される。シリンダパイプ内周面には、略円筒状の吸水弁座の外周側に設けられた略円筒状のパッキン部が摺接し、吸水弁座は、ストッパと吸水弁との間においてピストン棒に遊嵌配置されている。なお、吸水弁座にパッキン部を一体化した部品を、ここではピストンパッキンと呼ぶ。
【0003】
そして、ピストン棒が後方に移動する吸水工程時にあっては、ストッパの通孔より外周側の部分が吸水弁座の前部に当接すると共に、吸水弁座と吸水弁とが離間することにより、シリンダパイプ内の流路が開となり使用液が前方のポンプ室へ向かって流れるようになっている。一方、ピストン棒が前方に移動する吐出工程時においては、ストッパが吸水弁座の前部と離間すると共に、吸水弁座が吸水弁に当接することにより、シリンダパイプ内の流路が閉となりポンプ室の使用液が加圧され、ポンプ室に繋がる吐出弁が開となり、使用液が吐出されるようになっている。
【0004】
ここで、ピストンパッキンの製造方法としては、例えばステンレス製の吸水弁座とパッキン部とを、金型内の加熱にて接合する方法や、吸水弁座に設けられた溝部にパッキン部を嵌め込む方法等が知られている(特許文献1参照)。一般的には、特許文献2、3に記載のように、吸水弁座(特許文献2ではピストンバレル、特許文献3ではハブ)にパッキン部(特許文献2ではガスケット、特許文献3ではシールリング)を嵌め込む組み立て方法が多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−50970号公報
【特許文献2】特開昭53−2701号公報
【特許文献3】特開平61−81585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献の何れの場合もパッキン部が簡単に離脱しないように、変形させて圧入するため、パッキン部が破損を引き起こす虞があると共に、組み立て難いといった問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、パッキン部を変形させることなく且つ組み立てを容易にできる往復動ピストンポンプ及びピストンパッキンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による往復動ピストンポンプ(100)は、前側がポンプ室(10)に連通したシリンダパイプ(3)内を往復動するピストン棒(7)と、ピストン棒(7)に遊嵌され軸線方向に移動可能な吸水弁座(21p)及び吸水弁座(21p)の外周側に配設されると共にシリンダパイプ(3)の内周面に摺接するパッキン部(21a)を備えたピストンパッキン(21)と、ピストン棒(7)に固定され、ピストンパッキン(21)の軸線方向後側に当接可能に位置する吸水弁(20)と、ピストン棒(7)に固定され、ピストンパッキン(21)の軸線方向前側に当接可能に位置し、前後を連通する通孔(22a)を備えたストッパ(22)と、を具備した往復動ピストンポンプ(100)であって、吸水弁座(21p)は、内周側を形成する内周筒部(21b)と、内周筒部(21b)より外周側且つパッキン部(21a)の後端面に当接するように配置され、吸水弁(20)に当接可能であると共にその内周面の軸線方向途中から後方側が拡径する拡径面(21k)を有するプレート(21c)と、を備え、内周筒部(21b)は、軸線方向先端に径方向外方へ突出しパッキン部(21a)が当接した鍔部(21d)と、鍔部(21d)の後に連設され、パッキン部(21a)が外嵌挿されたパッキン部嵌挿部(21f)と、パッキン部嵌挿部(21f)の後に連設され、外周面が段差(21j)を介して小径とされプレート(21c)が外嵌挿されたプレート嵌挿部(21g)と、プレート嵌挿部(21g)の後に連設されて径方向外側へ延び、プレート嵌挿部(21g)に嵌挿されたプレート(21c)が後方へ抜け出ないように当該プレート(21c)の拡径面(21k)に当接する抜け止め部(21h)と、を備えたことを特徴とする往復動ピストンポンプ(100)。
【0009】
このような往復動ピストンポンプ(100)によれば、吸水弁座(21p)は、内周筒部(21b)及びプレート(21c)から成り、内周筒部(21b)は、先端側から鍔部(21d)、パッキン部(21a)を外嵌挿するためのパッキン部嵌挿部(21f)、外周面が段差(21j)を介して小径とされプレート(21c)を外嵌挿するためのプレート嵌挿部(21g)を備える構成のため、パッキン部(21a)を、内周筒部(21b)のパッキン部嵌挿部(21f)に外嵌挿しパッキン部(21a)の先端側を内周筒部(21b)の鍔部(21d)に突き当て、プレート(21c)を、内周筒部(21b)のプレート嵌挿部(21b)に外嵌挿し、段差(21j)及びパッキン部(21a)に突き当て、プレート嵌挿部(21g)の後に、プレート嵌挿部(21g)に嵌挿されたプレート(21c)が後方へ抜け出ないように、当該プレート(21c)の拡径面(21k)に当接する抜け止め部(21h)を連設することを可能とする構成となっている。すなわち、内周筒部(21b)に対して、パッキン部(21a)、プレート(21c)を順次差し込み、最後に、抜け止め部(21h)を連設させ、ピストンパッキン(21)が得られるようになっており、パッキン部(21a)を変形させることなく且つ組み立てを容易にできるようになっている。
【0010】
ここで、抜け止め部(21h)は、プレート嵌挿部(21g)の後方への延在部(21i)がかしめられることにより設けられていると、別部材より成る抜け止め部を例えばロウ付け等でプレート嵌挿部(21g)の後端に連設するよりも形成が容易である。
【0011】
また、プレート(21c)は、樹脂製であるのが好ましい。このような構成を採用した場合、プレート(21c)の外周面とシリンダパイプ(3)の内周面との間に予め定められた微小隙間を有する構成とすることで、シリンダパイプ(3)の内周面を摺接するパッキン部(21a)が多少摩耗しても、パッキン部(21a)の後側に位置しシリンダパイプ(3)との間に微小隙間を有するプレート(21c)が、シリンダパイプ(3)の内面に接触することになる。プレート(21c)は樹脂より構成されているため、シリンダパイプ(3)と接触してもシリンダパイプ(3)に傷を付けることがなくパッキン部(21a)の摩耗を抑制でき、パッキン部(21a)のバックアップや往復時の径方向のガイドの役割を果たすことができる。
【0012】
また、プレート(21c)の後部側の内周縁は、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面(21k)とされ、抜け止め部(21h)は、プレート嵌挿部(21g)の後端に連設され拡径面(21k)に当接する構成であると、プレート(21c)の吸水弁(20)に対する接触時の密着面積(円環状の面積)を低減でき、貼り付きによる吸水弁(20)の作動不良(異音、振動発生)を防止できる。
【0013】
また、本発明による往復動ピストンポンプ(100)のピストンパッキン(21)の製造方法は、パッキン部(21a)を、内周筒部(21b)のパッキン部嵌挿部(21f)に外嵌挿し、パッキン部(21a)の先端側を内周筒部(21b)の鍔部(21d)に突き当て、プレート(21c)を、内周筒部(21b)のプレート嵌挿部(21g)に外嵌挿し、段差(21j)及びパッキン部(21a)に突き当て、プレート嵌挿部(21g)から後方へそのまま延びる延在部(21i)をプレート(21c)の拡径面(21k)に当接するようにかしめることにより、抜け止め部(21h)を形成したことを特徴としている。
【0014】
このようなピストンパッキン(21)の製造方法によれば、内周筒部(21b)に対して、パッキン部(21a)、プレート(21c)を順次差し込み、最後に、延在部(21i)をかしめて抜け止め部(21h)を形成し、ピストンパッキン(21)が得られるため、パッキン部(21a)を変形させることなく且つ組み立てを容易にできる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、パッキン部を変形させることなく且つ組み立てを容易にできる往復動ピストンポンプ及びピストンパッキンの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る往復動ピストンポンプを示す縦断面図である。
図2図1中のピストンパッキンを示す縦断面図である。
図3図2に示すピストンパッキンの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による往復動ピストンポンプの好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る往復動ピストンポンプを示す縦断面図、図2は、図1中のピストンパッキンを示す縦断面図、図3は、図2に示すピストンパッキンの分解斜視図である。本実施形態の往復動ピストンポンプは、例えば、動力噴霧機等を始めとした機器に用いられるものであり、例えば、ユニフロー式ピストンポンプや強制弁式ピストンポンプとも呼ばれるものである。また、往復動ピストンポンプに用いられる使用液としては、用途に応じて種々の液体が用いられ、例えば、細砂等の不純物を含む用水路水や高温水が用いられることもある。
【0018】
図1に示すように、往復動ピストンポンプ100は概略、図示右側から左側に向かって、クランクケース1、吸水側マニホールド2、シリンダパイプ3、吐出側マニホールド4をこの順に連結して備えている。クランクケース1の内部には、クランク軸5、コンロッド6が配置され、クランクケース1からシリンダパイプ3に亘る内部には、ピストン棒7が配置される。ピストン棒7は、コンロッド6を介してクランク軸5に連結される。そして、外部の例えばエンジンやモータ等から入力された動力によりクランク軸5が回転駆動し、コンロッド6を介して、ピストン棒7がシリンダパイプ3内を往復動する。
【0019】
なお、図1において中心線Cより上側部分はクランク軸5の回転によりピストン棒7が前進する吐出工程において上死点に位置した状態を示し、中心線Cより下側部分はクランク軸5の回転によりピストン棒7が後退する吸水工程において下死点に位置した状態を示す。
【0020】
クランクケース1内には、潤滑油が充填されており、ピストン棒7が通る位置には、当該ピストン棒7に摺接しクランクケース1内の潤滑油の吸水側マニホールド2側への漏洩を防止するためのオイルシール8が配設される。また、吸水側マニホールド2内には、ピストン棒7に摺接し吸水側マニホールド2側の使用液のオイルシール8側への漏洩を防止するためのシールパッキン9が配設される。また、吸水側マニホールド2には、使用液を内部に吸い込むための吸水口15が設けられている。
【0021】
シリンダパイプ3内には、ピストン棒7と共に軸線方向に往復動し、シリンダパイプ3の先端側に形成されたポンプ室10への流路を閉開すると同時にポンプ作用によりポンプ室10を加圧/減圧する吸水弁機構11が設けられる(詳しくは後述)。
【0022】
また、吐出側マニホールド4内でポンプ室10の先端部には、吸水弁機構11のポンプ作用によるポンプ室10の加圧/減圧に従い流路を開閉し、開によりポンプ室10内の使用液を室外に吐出する吐出弁12が設けられる。なお、吐出側マニホールド4には、ポンプ作用により吐出される使用液の圧力を調節する調圧弁13が設けられると共に、ポンプ作用により吐出される使用液の脈動を緩衝する空気室14が設けられる。
【0023】
吸水弁機構11は、吸水弁20、図1図3に示すように、シリンダパイプ3の内周面に摺接するパッキン部21a及び吸水弁20に当接可能な吸水弁座21pを備えたピストンパッキン21、図1に示すように、ストッパ22を主体として備え、ストッパ22と吸水弁20とはカラー23を介して離間配置される。吸水弁20は、ピストン棒7に貫通された円板であり、ストッパ22は、ピストン棒7に貫通された円板であり、前後方向に貫通し前後を連通する通孔22aが周方向に沿って複数個離間して設けられる。
【0024】
そして、ピストン棒7の基端側(図示右側)から、吸水弁20、カラー23、ストッパ22がこの順に嵌装され、ピストン棒7の先端に形成された雄螺子に対しナット25が螺合し締め込まれることにより、吸水弁20が、ピストン棒7に形成された大径の段差部7bに突き当てられ、これらの部材20,22,23が、段差部7bとナット25の間に挟持・固定される。
【0025】
図2に示すように、ピストンパッキン21は、略円筒状に構成され、パッキン部21aと、吸水弁座21pと、を備える。吸水弁座21pは、内周側を形成する内周筒部21bと、内周筒部21bより外周側且つパッキン部21aの後端面に当接するように配置され、吸水弁20に当接可能であると共にその内周面の軸線方向途中から後方側が拡径する拡径面21kを有するプレート21cと、有し、カラー23に外挿される(図1参照)。
【0026】
パッキン部21aは、例えば、エラストマーや樹脂(例えば充填剤入フッ素樹脂、PEEK、超高分子量ポリエチレン等)より構成される。図2及び図3に示すように、パッキン部21aは、略矩形断面を有するリング状を呈すると共に、先端側の内周面が後方へ凹設され、内周筒部21bの後述の鍔部21dに当接する凹設面21eとされる。パッキン部21aの前半部の外周面は、先端を頂点として後方へ行くに従い徐々に縮径するテーパ面に構成されており、先端部21mがシリンダパイプ3の内周面に摺接する摺接部となっている。また、パッキン部21aの後端部の外周縁部には、軸線方向前側且つ内側へ凹むと共に、プレート21cの外周側の前面に面する窪み21nが円環状に設けられる。
【0027】
プレート21cは、略円筒状を呈し、例えば、樹脂(例えば充填剤入フッ素樹脂、PEEK、超高分子量ポリエチレン等)より構成される。プレート21cの後部側の内周縁は、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面21kとされている。また、プレート21cの外周面とシリンダパイプ3の内周面との間には、予め定められた微小隙間が設けられている。微小隙間は、ここでは、特に好ましいとして、0.05〜0.1mm程度に設定されている。
【0028】
内周筒部21bは、段付き略円筒状を呈し、例えばステンレス等より構成される。内周筒部21bは、先端側から後端側へ向けて、図2に示すように、鍔部21d、パッキン部嵌挿部21f、プレート嵌挿部21g、抜け止め部21hをこの順に備える。鍔部21dは、円筒状の先端で円環状に径方向外方に突出する。
【0029】
鍔部21dの後に連設されたパッキン部嵌挿部21fは、パッキン部21aを外嵌挿する部分であり、その外径は、パッキン部21aの内径を変形させることなく挿入できる寸法となっている。
【0030】
パッキン部嵌挿部21fの後に連設され、段差21jを介して外周面が小径とされたプレート嵌挿部21gは、プレート21cを外嵌挿する部分である。
【0031】
プレート嵌挿部21gの後に連設された抜け止め部21hは、プレート嵌挿部21gに嵌挿されたプレート21cが後方へ抜け出ないように当該プレート21cの拡径面21kに当接するものである。ここでは、前述のように、プレート21cの後部側の内周縁は、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面21kとされているため、抜け止め部21hは、拡径面21kに当接するテーパ状の拡径形状とされている。なお、プレート21cの後端面が、吸水弁20に当接することになるため、抜け止め部21hは、プレート21cの後端面より後方ヘ出ないように構成されている。
【0032】
次に、ピストンパッキン21の製造方法を図3を参照しながら説明する。先ず、パッキン部21aを、内周筒部21bのパッキン部嵌挿部21fに外嵌挿し、パッキン部21aの先端側となる凹設面21eを内周筒部21bの鍔部21dに突き当て、プレート21cを、内周筒部21bのプレート嵌挿部21gに外嵌挿し、段差21j及びパッキン部21aに突き当て、最後に、プレート嵌挿部21gから後方へそのまま延びる延在部21i(図2中の点線参照)を、プレート21cの拡径面21kに当接するようにかしめれば、抜け止め部21hが形成されることになる。
【0033】
このように、本実施形態のピストンパッキン21の製造方法によれば、内周筒部21bに対して、パッキン部21a、プレート21cを順次差し込み、最後に、延在部21iをかしめて抜け止め部21hを形成するようにしているため、パッキン部21aを変形させることなく且つ組み立てを容易にできるようになっている。
【0034】
そして、このようにして得られたピストンパッキン21を有する往復動ピストンポンプ100にあっては、図1に示すように、ピストンパッキン21の内周筒部21b(図2参照)の内周面とカラー23の外周面との間に円環状の隙間C1が形成され、ピストンパッキン21は、吸水弁20とストッパ22との間に遊嵌され、軸線方向に移動可能とされている。
【0035】
このような構成を有する吸水弁機構11にあっては、パッキン部21aがシリンダパイプ3の内周面に摺接し、プレート21cの外周面とシリンダパイプ3の内周面との間には、前述した微小隙間が設けられている。また、ストッパ22の外周部の後端面が、内周筒部21bの鍔部21dの前面に対向する位置関係にある。そして、図1の中心線Cより下側部分に示すように、ストッパ22の外周部の後端面が、ピストンパッキン21の前面に当接したときに、吸水弁20とピストンパッキン21(プレート21c)の後面との間に隙間C2が円環状に形成される構成となっている。
【0036】
このような往復動ピストンポンプ100において、クランク軸5の回転駆動によりピストン棒7がシリンダパイプ3内を往復動し、上死点から下死点へ移動する吸水工程(図1の中心線Cより上側部分参照)と、下死点から上死点へ移動する吐出工程(図1の中心線Cより下側部分参照)を繰り返す。ここで、吐出工程から吸水工程に切り替わると、図1の中心線Cより下側部分に示すように、ピストン棒7が軸線方向後方へ移動し、吸水弁20がピストンパッキン21(正確にはプレート21c)から離座し、ストッパ22とピストンパッキン21(正確には鍔部21d)とが当接する。これにより、吸水弁20とピストンパッキン21との間に隙間C2が生じて流路が開となり、隙間C2と隙間C1とが連通し、さらに通孔22aが連通し、吸水側マニホールド2の吸水口15から流入した使用液は、隙間C2を通して隙間C1に流入し、ポンプ室10へ向かう。そして、ピストンパッキン21は、パッキン部21aがシリンダパイプ3の内周面に摺接した状態で、ピストン棒7と共に軸線方向後方へ移動するストッパ22に連行されて後方へ移動する。ポンプ室10では、流入する使用液により容積が増大し減圧されて負圧となる。
【0037】
また、吸水工程から吐出工程に移行すると、図1の中心線Cより上側部分に示すように、ピストン棒7が軸線方向前方へ移動し、ストッパ22とピストンパッキン21とが離間し、吸水弁20がピストンパッキン21に当接着座し、隙間C2がなくされ流路が閉となる。そして、ピストンパッキン21は、パッキン部21aがシリンダパイプ3の内周面に摺接した状態で、ピストン棒7と共に軸線方向前方へ移動する吸水弁20に連行されて前方へ移動する。ポンプ室10では、ピストン棒7の軸線方向前方への移動により加圧され、ポンプ室10内の使用液は、吐出弁12を介して、吐出側マニホールド4の吐出口16から外部へ吐出される。
【0038】
なお、本実施形態では、図2に示すように、プレート21cの後部側の内周縁が、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面21kとされていて、プレート嵌挿部21gから後方へそのまま延びる延在部21iをプレート21cの拡径面21kに当接するようにかしめて抜け止め部21hを形成しているが、プレート嵌挿部21gの後端に、別部材より成る抜け止め部を例えばロウ付け等で固定し連設するようにしても良い。また、プレート21cの拡径面21kを、テーパ状ではなく、直角に拡径する段差面(拡径面)とし、抜け止め部21hを、プレート嵌挿部21gの後端に直角に連設され、プレート21cの段差面に当接する構成としても良い。この場合には、プレート嵌挿部21gの延在部21iを直角にかしめて、プレート21cの段差面に当接させても良く、また、別部材より成る抜け止め部を、プレート嵌挿部21gの後端と直角を成すように例えばロウ付け等で固定し連設するようにしても良い。
【0039】
このように、本実施形態においては、パッキン部21aが、内周筒部21bのパッキン部嵌挿部21fに外嵌挿されパッキン部21aの先端側が内周筒部21bの鍔部21dに突き当てられ、プレート21cが、内周筒部21bのプレート嵌挿部21gに外嵌挿され、段差21j及びパッキン部21aに突き当てられ、プレート嵌挿部21gの後に、プレート嵌挿部21gに嵌挿されたプレート21cが後方へ抜け出ないように、当該プレート21cの拡径面21kに当接する抜け止め部21hが連設されることを可能とする構成となっている。すなわち、内周筒部21bに対して、パッキン部21a、プレート21cが順次差し込まれ、最後に、抜け止め部21hが連設され、ピストンパッキン21が得られるようになっており、パッキン部21aを変形させることなく且つ組み立てを容易にできるようになっている。
【0040】
また、抜け止め部21hは、プレート嵌挿部21gの後方への延在部21iがかしめられることにより設けられているため、別部材より成る抜け止め部を例えばロウ付け等でプレート嵌挿部21gの後端に連設するよりも形成が容易となっている。
【0041】
また、プレート21cは、樹脂製であり、プレート21cの外周面とシリンダパイプ3の内周面との間には、予め定められた微小隙間が設けられているため、シリンダパイプ3の内周面を摺接するパッキン部21aが多少摩耗すると、プレート21cが、シリンダパイプ3の内面に接触することになり、その結果、樹脂より成るプレート21cがシリンダパイプ3と接触してもシリンダパイプ3に傷を付けることがなくパッキン部21aの摩耗を抑制でき、パッキン部21aのバックアップや往復時の径方向のガイドの役割を果たすことができる。
【0042】
また、プレート21cの後部側の内周縁は、後に行くに従いテーパ状に拡径する拡径面21kとされ、抜け止め部21hは、プレート嵌挿部21gの後端に連設され拡径面21kに当接する構成のため、プレート21cの吸水弁20に対する接触時の密着面積(円環状の面積)を低減でき、貼り付きによる吸水弁20の作動不良(異音、振動発生)を防止できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、パッキン部21aの後端部の外周縁部には、軸線方向前側且つ内側へ凹むと共に、プレート21cの前面に面し、シリンダパイプ3内を流れる使用液が、プレート21cとシリンダパイプ3の内周面との間の微小隙間を通して進入可能な窪み21n(図2及び図3参照)が設けられているため、窪み21nに進入した使用液により、パッキン部21aが後部から冷却と潤滑の面で補助されることになり、パッキン部21aを長寿命化できポンプの耐久性を向上できる。
【0044】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、吸水工程時において、ストッパ22と吸水弁座21pの鍔部21dが当接するタイプとしているが、例えば特開2014−224469号公報に記載のような、ストッパの後部の突出部とパッキン部の前部が当接するタイプに対しても適用できる。
【0045】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、往復動ピストンポンプを動力噴霧機に対して適用した例を述べているが、他の機器に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0046】
3…シリンダパイプ、7…ピストン棒、10…ポンプ室、20…吸水弁、21…ピストンパッキン、21a…パッキン部、21b…内周筒部、21c…プレート、21d…鍔部、21f…パッキン部嵌挿部、21g…プレート嵌挿部、21h…抜け止め部、21i…延在部、21j…段差、21k…拡径面、21p…吸水弁座、22…ストッパ、22a…通孔、100…往復動ピストンポンプ。
図1
図2
図3