(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
背景の情報
サイリスタは、シリコン制御整流子(SCR)と呼ばれることもあるが、順方向において、すなわちターンオン電圧によって順バイアスされて、正のゲート電流がゲート端子に供給されるときに、ターンオンされることができるスイッチング素子である。そのときに、サイリスタは、順方向導通状態すなわちオン状態にあると呼ばれ、その状態において、電流はアノードからカソードへの順方向に流れることができる。一方、サイリスタは、順方向の高い正電圧を阻止することができることを意味する、オフ状態とも呼ばれる順方向阻止状態であることができる。順方向と反対の逆方向において、サイリスタはターンオンされることができない。サイリスタは、順方向阻止状態での電圧と少なくともほぼ同じである逆方向の電圧を阻止することを意味する逆方向阻止、または、サイリスタが実質的には逆方向に阻止能力を有さないことを意味する非対称であることができる。位相制御の用途は、一般に逆阻止能力を必要とするので、位相制御サイリスタ(PCT)は、典型的には逆方向阻止である。
【0003】
以下において、位相制御サイリスタ(PCT)のいくつかの基本的な原理と、明細書および特許請求の範囲全体を通じて以下で用いられる用語および単語の定義が、
図1−4と関連して与えられる。
【0004】
図1は、単純なサイリスタ100の断面を模式的に示す。サイリスタは、半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイを備え、半導体スラブにおいて、サイリスタ構造は、交互の導電型を有する異なってドープされた半導体材料の4つの層、すなわちnpnp積層構造を有し、当業者にとって知られた方法によって製造される。サイリスタ100のカソード側102からアノード側104の順に、サイリスタ構造は、まず(n+)ドープされたカソードエミッタ層106を備える。次に、pドープされたベース層108と(n−)ドープされたベース層110が続く。最後に、アノード側104において、pドープされたアノード層112が配置される。(n+)ドープされたカソードエミッタ層106は、前記カソードエミッタ層106に接するために、半導体スラブのカソード側表面に形成されたカソード電極に電気的に接続される。pドープされたアノード層112は、pアノード層112に接するために半導体スラブのアノード側表面に形成されたアノード電極116に電気的に接続される。pドープされたベース層108は、pドープされたベース層108に接するために半導体スラブのカソード側表面に形成されたゲート電極118に電気的に接続される。
【0005】
カソード側表面と、その上のカソード電極114との間のコンタクト領域は、カソード領域と呼ばれる。pドープされたベース層108とゲート電極118との間のカソード側表面のコンタクト領域は、ゲート領域と呼ばれる。
【0006】
正の電圧すなわち順方向電圧が、アノード電極116(簡潔化のために以下ではアノードとも呼ぶ)と、カソード電極114(簡潔化のために以下ではカソードとも呼ぶ)との間に印加されるときに、サイリスタ100は、順方向阻止状態と順方向導通状態との間で切換わり得る。ゲート電極118(簡潔化のために以下ではゲートとも呼ぶ)に電流が供給されない限り、サイリスタは阻止状態のままにあるだろう。しかしながら、ゲート118に電流が供給されることによってサイリスタにトリガが加えられるときに、電子がカソードから注入されてアノードへと流れ、アノードにおいて電子はホール注入をもたらし、電子−ホールのプラズマがpドープされたベース層108とnドープされたベース層110に形成されて、そのことがサイリスタ100を順方向導通状態へと切換え得るであろう。順方向導通状態は、順方向電圧が与えられる限り維持されることができ、アノード電極116とカソード電極114との間に印加された順方向電圧がスイッチオフされるか、または、アノードとカソードとの間に印加された電圧が逆転するときにのみ、順方向導通状態は停止するであろう。アノードとカソードとの間に逆方向の負電圧が印加されることにより、サイリスタは、逆方向阻止状態へと移行し、再び順方向電圧と十分なゲート電流とを与えることによって再トリガが加えられることによってのみ順方向導通状態へと切換わることができる。しかしながら、逆方向電圧の完全な阻止能力を得るためには、以前に注入された電子−ホールのプラズマが再結合プロセスによって消滅し、それによってデバイスの順方向阻止能力を再び得ることができるように、逆方向電圧は、静止時間(quiescence time)t
qと呼ばれるある一定期間、印加される必要がある。
【0007】
図1に示されたようなサイリスタ100にトリガを与えるために、十分なゲート電流が必要とされるであろう。知られている単純な解決法は、
図2に示されるように、サイリスタ100’の主ゲート(増幅ゲートとも呼ばれる)とアノードとの間に、当業者にとって周知なように、補助サイリスタ120を集積化することであり、前記サイリスタ100’は、さらに、主サイリスタ126を含む。補助サイリスタは、代わりに、パイロットサイリスタと呼ばれてもよい。補助サイリスタにおいて、パイロットゲート130(補助ゲートとも呼ばれることがある)は、補助サイリスタ120の領域においてpドープされたベース108に接触する。補助サイリスタ120は、また、補助(n+)ドープされたエミッタ層とも呼ばれる、追加の(n+)ドープされたエミッタ層122を含む。補助(n+)ドープされたエミッタ層122は、補助サイリスタの追加のカソード電極124に接触する。補助サイリスタ120の追加のカソード電極124は、主ゲート電極とも呼ばれ、主サイリスタ126の領域において直下のpドープされたベース層108に接触するゲート電極118に内的に接続され、メインサイリスタ126の領域におけるpドープされたベース層108’と主ゲート電極との間のカソード側表面におけるコンタクト領域は、ゲート領域とも呼ばれる。好ましくは、単一の隣接する電極が、追加のカソード電極124およびメインゲート電極118としての役割を果たす。(n+)ドープされたエミッタ層106は、主サイリスタ領域126に設けられ、カソード領域と再び呼ばれる主サイリスタ126の領域において、カソード側表面とカソード電極114との間のコンタクト領域により、主サイリスタのカソード電極114に接触する。典型的には、補助サイリスタ120のさらなるカソード電極124は、サイリスタ100’の外部からはアクセスすることができない。すなわち、さらなるカソード電極124への外部からの直接的な電気接続を可能にする端子は存在しない。
【0008】
例示的に、パイロットサイリスタ構造は、パイロットゲート130と主サイリスタ126との間に集積化される。パイロットゲートにおいて、パイロットサイリスタは、さらなる(n+)ドープされたエミッタ層122と、主サイリスタ126に向けて、(p+)ドープされたエミッタ層とを有する。これらの層は、電極によって互いに接続される。(p+)ドープされたエミッタ層は、追加の(n+)ドープされたエミッタ層122のための、境界における短絡として機能する。追加の(n+)ドープされたエミッタ層122における電流は、電極を介してホール電流へと変換され、ホール電流は再び、主サイリスタ126のための注入電流として機能する。(p+)ドープされたエミッタ層は、ホール電流を運び、ホール電流は主サイリスタ126の反対側の領域に注入される。円形の(p+)ドープされたエミッタ層は、この目的のために十分である。電荷の広がりは、電極を介して達成される。
【0009】
高いゲートオーバードライブ係数、すなわち、使われるゲート電流と最小ゲートトリガ電流との比、がサイリスタ100’のトリガを高速化し得る一方で、さらなる改善が、この過程を大いに助け得る。
図2から見られるように、主サイリスタ126のトリガ状態、すなわち注入された電子−ホールのプラズマは、従来は、サイリスタ100’の中心において約1cmの直径のリングであり得る、補助サイリスタ120の境界において開始される。プラズマは、次に数ミリ秒を要してサイリスタ領域全体に広がらなければならない。これの後にのみ、サイリスタは、定常オン状態の順方向電圧特性を示すであろう。サイリスタデバイスの領域素子への最大距離を縮めるために、分散増幅ゲート構造が使用され得る。このことは、主サイリスタのゲート領域が、より複雑な形状を有し得ること、たとえば参照によりその全体がここに含められる、WO2011/161097A2の
図5に示されるようなT字型ゲート設計を含み得るとともに、大面積のPCTで一般的に用いられるということを示す。そのようなT字型ゲート設計は、プラズマ広がりのための距離を大きく短縮することができ、したがって、サイリスタは、ゲートトリガパルスの後約1msで完全にターンオンされることができる。プラズマ広がりは、十分な順方向電流が既に存在し、かつ、高い阻止電圧がなおも存在する間の時間に関連し得るので、このターンオン期間は、ターンオンエネルギ損失に大きな影響を与え得る。
【0010】
高パワー用途のために、たとえば4インチまたは5インチの直径d
waferを有する円形の半導体ウェハに基づいてサイリスタが開発されてきた。しかしながら、最先端のサイリスタ用途は、たとえば6インチウェハに基づく、より大きなサイリスタ設計を必要とする。そのような大きなサイリスタ設計にとって、それまでのより小さいサイリスタ設計を単純に拡大するのは十分ではない可能性があるということが観察されてきた。サイリスタの直径を大きくすることにより、さらなる効果が、サイリスタの動作に影響を与え得る。たとえば、サイリスタ動作の間の冷却特性とともに等価な順方向阻止能力またはターンオン特性を有する、より高い公称電流のためのより大きなサイリスタは、サイリスタのサイズを比例的に拡大することによっては単純には達成することができない。
【0011】
特に、上述のものと同じサイズを有するサイリスタは、さらに上述したものよりも複雑な形状および/またはジオメトリを一般的に必要とする。しばしば、ゲート領域は、サイリスタのカソード側表面102の中心領域から、その表面の周辺領域へと延在する、複数の長手主ゲートビームを備える。隣接する主ゲートビームは、関連付けられた、仮想的な介在する中間線に関してある距離で配置される。そのようなゲート構造を有する例示的なサイリスタ設計は、再び、WO2011/161097A2において記述される。
【0012】
一般的に、上述したようなサイリスタのカソード領域は、完全にゲート領域を囲み、したがって、少なくとも本質的には環状すなわちリング形状のトポロジーを有する。したがってカソード領域の境界は、内側境界と外側境界とを有し、外側境界は内側境界を囲み、内側境界はゲート領域を囲む。より数学的な用語では、カソード領域の外側境界は、カソード領域を囲む最短の単純閉曲線として考えられることができ、単純閉曲線は、それ自体において交差しない閉曲線である。一方、カソード領域の内側境界は、外側境界によって囲まれる最長の単純閉曲線と考えることができ、しかしながら、カソード領域のどの部分も囲むものではない。代わりに、カソード領域は、孔、特に正確には1つの孔を有する隣接する領域と見なすことができ、その孔は、ゲート領域を含む。カソード領域の内側境界は、外側境界によって囲まれてその孔を囲む最短の単純閉曲線によって表わされることができる。
【0013】
同様の方法により、ゲート領域の外側境界を定義することができる。カソード領域の外側境界は、しばしば少なくとも本質的に円形であるか、または、少なくとも20、好ましくは少なくとも100の端部を有し、好ましくはほぼ円形である多角形によって表わされることができ、カソード領域の内側境界は、ゲート領域の外側境界と似た複雑な形状を有する。特に、カソード領域の内側境界とゲート領域の外側境界とは、ジオメトリの意味において互いに同様であり得る。
【0014】
図2に示されるような、均一にドープされた、(n+)ドープされたカソードエミッタ層106を有する、上述のようなサイリスタ100’は、正の電圧変化dV/dtでの遷移に対して非常に敏感である。正の電圧変化dV/dtは、いわゆる動的電圧トリガを引起し得るが、動的電圧トリガは、ドリフト領域を形成する(n−)ベース層110における空乏層の形成の間に生じる充電電流によって引起される。その充電電流は、サイリスタのエミッタ層、ベース層およびドリフト層によって形成された、部分的なトランジスタによって増幅される。順方向特性が大きく妨げられなければ、この欠点は、少なくともカソード領域の一部にわたり分散する、複数のN個の個別のエミッタ短絡(emitter short)128によって緩和されることができ、一般的には、N>500であり、しばしばN>1000またはN>2000である。エミッタ短絡128の主な目的は、サイリスタの順方向阻止状態の間に生じるリーク電流を除くことを可能にすることであり、リーク電流は意図しないサイリスタのターンオンをもたらし得て、再びサイリスタのエミッタ領域、ベース領域およびドリフト領域によって形成される部分的なトランジスタにおける電流増幅により、特に高温において生じる。
図3に示されるように、エミッタ短絡128は、カソードエミッタ層106の中に、小さな孔または貫通孔によって形成され、その孔を通じてpドープされたベース層108がカソード側表面102に到達することができ、エミッタ短絡128はカソード電極114で金属化される。したがって、カソード側102に(n+)ドープのないよう形成されたpドープ層は、それがカソード接合を短絡し得るので、カソードエミッタ短絡またはカソード短絡とも呼ばれる。エミッタ短絡128は、pドープされたベースと(n+)ドープされたエミッタとの間の接合にわたるオーミック短絡を形成し得るとともに、低い電流密度で、すなわち順方向阻止が必要とされるすべての段階において、電流の主要な部分を通す。したがって、望まないdV/dtのトリガは、最も実用的な場合において避けることができる。所定の、または所望の順方向阻止および/またはdV/dt耐圧能力のために、最大距離d
maxは理想的には、その最も近い隣のエミッタ短絡からd
maxより大きく離れたエミッタ短絡が存在しないように決定されることができる。
【0015】
しかしながら、エミッタ短絡は、また、さまざまな欠点を有する。最も顕著には、カソード領域の有効面積が減少されて、したがってオン状態抵抗が増加し、その結果としてオン状態電圧V
Tが増加することである。特に、横方向、すなわちサイリスタのカソード側表面に平行な方向におけるプラズマの広がりは、エミッタ短絡によって遅くなる。このことは、ターンオンの直後に起こる、トリガされたサイリスタの領域での電流の急速な立上りにより、局在的な、高いアノード電流をもたらす可能性がある。それは、次に温度過負荷、および最終的にはサイリスタの破壊のリスクを含む。その結果、サイリスタのdI/dt能力が減少する。この欠点の効果を制限するために、理想的には、2つのエミッタ短絡を、互いにd
maxよりも近づけるべきではない。
【0016】
先の2つの要求から、上記のサイリスタのエミッタ短絡パターンは、できるだけ均一かつ均質であるべきであり、理想的には、カソード領域全体にわたり短絡の密度が一定であり、そのすべてのサブ領域が、特にカソード領域において、ゲート構造の近くにある。
【0017】
単純なゲート領域ジオメトリを有するサイリスタにとって、および/または、ゲート領域から離れたカソード領域の部分にとって、これは、一般的に比較的容易に達成される。
図4の上面図に示されるように、エミッタ短絡128は、カソード領域全体にわたり規則的なパターンで配置された小さな点の形態で設けられる。そのような規則的なパターンは、たとえば、カソード領域およびそのカソード領域に接続される隣り合うものにわたり規則的に配置された点のパターンを重畳することにより、およびそのカソード領域内に配置されるこれらの点、特に好ましくはそのカソード領域の境界から所定の最小距離を有する点を選択することにより、そしてそのように選択された点におけるエミッタ短絡を配置することによって得られることができる。エミッタ短絡128が軸方向のトリガ動作に影響を与えるだけでなく、良好な短絡設計は、高い横方向のプラズマ広がり速度を生み出し、それ故に高い許容電流変動dI/dtをもたらし得る。カソード領域において短絡密度が最小値未満である領域がないことがとても重要である、なぜなら、そのような領域は、ターンオフ後の順方向阻止電圧の再印加の間に、ウィークスポットを形成する可能性があるためである。
【0018】
特に、複雑なゲート領域ジオメトリを有するサイリスタ−したがって、一般的には上述のような、同様の複雑なカソード領域ジオメトリを有するサイリスタにとって、このことは些細なことではない。WO2011/161097A2は、改善された設計方法論を示唆するが、その方法論は、カソード領域を複数のサブ領域に分割し、特に単数または複数の主ゲートビームと隣り合うもの、および/または単数または複数の主ゲートゲートビームからそれぞれ離れた1以上のバルク領域を覆うこと;少なくとも実質的に各々のサブ領域において均一なパターンを形成するために予測される短絡領域を決定すること;およびその結果、サブ領域が重なり合うまたは隣接する領域における短絡領域を追加および/または削除することによって短絡領域のグローバルパターンを形成すること、を含み、個々のエミッタ短絡間の最適な距離に関する上記の考慮は、その短絡が、グローバルパターンに従う位置に配置されるときに、できるだけ近づけて実施され得る。
図5は、最先端の位相制御サイリスタの製造に用いられるための、WO2011/161097A2に記述されたようなプロセスマスク300の部分を示す図である。この図は、半導体スラブにサイリスタ構造を形成するときに、サイリスタ100のカソード側102の表面において、(n+)ドープされたエミッタ領域106を定義するために用いられ得る拡散マスクパターンを表わす。白の領域は、(n+)ドープされたエミッタ層106を得るために、ドナー、特にリンでドープされ得る領域を示し、黒の領域はドナーの堆積を阻止する。特に、エミッタ短絡128は、マスク短絡領域304に形成され、パイロットゲートは、マスクにおけるパイロットゲート領域318に形成される。
【0019】
上述の方法論は、メインゲートビーム316の位置により近い、例示的なマスク領域310における比較的均一のエミッタ短絡パターンを設けることを可能にするのに対して、そのパターンは、隣接するメインゲートビームの間の関連する中間線314の位置に、より近い例示的マスク領域312において、および、2以上のサブ領域が隣接する例示的領域330において比較的均一ではないであろう。すなわち、最適なグローバルエミッタ短絡パターンが得られない。停止時間とdV/dt安定性に関するエミッタ短絡の効率が、短絡パターンにおける最も弱い点により決定されることを考慮すると、最適なサイリスタ性能はしたがって得られない可能性がある。さらに、短絡領域の追加および削除において、退屈な手作業の相互作用が一般的に必要とされる。
【0020】
さらに、上述したようなアプローチは、一般的にカソード領域の境界近くの、エミッタ短絡の比較的不均一な分布をもたらす。特に、境界上の任意の所定の点と、その点に最も近いエミッタ短絡の位置との間の距離d
closestは、その点が境界上のどこに位置するかに依存して大きく変化し得る。特に、距離d
closestは、0とほぼ1.5d
maxとの間、および/または0とほぼ1.5d
avgとの間で変化し得るが、ここでd
avgは、カソード領域のすべてのエミッタ短絡にわたる、所定の第1のエミッタ短絡の位置と、その第1のエミッタ短絡に最も近い第2のエミッタ短絡の位置との間の平均距離である。その結果、カソード領域の内部境界および/または外部境界にわたる距離d
closestの変動の係数は、一般的に0.4より大きく、0.7よりも大きい可能性もある。
【0021】
内部境界の隣接するエミッタ短絡の分布、特に、その分布の均一性は、特に垂直方向におけるプラズマ広がり、したがって、上述のようなサイリスタのdI/dt能力に重大であるので、その能力は、上述のような方法によって大きく制限されるであろう。
【0022】
均一に分布するエミッタ短絡を有する他の位相制御サイリスタがDE 37 44 308 A1およびFR 2 178 390 Aから知られている。
【0023】
US 4,150,390 Aは、ゲート電極に近い2つのグループに分離されてゲートからより遠ざけられたエミッタ短絡分布を有し、その結果、エミッタ短絡の分布が非常に不均一であるサイリスタを示す。
【0024】
US 4 760 438 Aは、三角形パターンに配置されたエミッタ短絡を有するサイリスタを記述する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の開示
本発明の目的は、上述の欠点を克服するサイリスタを製造するための方法およびサイリスタを提供することである。
【0026】
この目的は、独立請求項に従う方法およびサイリスタによって達成される。
本発明に従うサイリスタ、特に位相制御サイリスタは、
a) サイリスタ構造が形成された、半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面におけるカソード領域に形成されたカソード電極、
c) 前記半導体スラブの前記カソード側表面におけるゲート領域に形成されたゲート電極、
d) 前記カソード領域における点P
iに配置された複数のN個の個々のエミッタ短絡(前記点は点位置x
iを有し、iはi∈{1;...;N}である)、
e) 複数の三角形T
j(j∈{1;...;M}である)を含むドロネー三角形分割を定義する前記点P
i、
を備え、
f) 三角形T
lの第1のサブセット(l∈S
1⊆{1;...;M})において、
g) 各々の三角形T
lは、値q
T,l(l∈S
1⊆{1;...;M})を有する幾何学的量によって特徴付けられ、前記幾何学的量は、平均値μを有し、
i) 前記値q
T,l(l∈S
1)の変動係数は、0.1よりも小さく、好ましくは、0.05よりも小さく、および/または、
ii) 前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の歪度の絶対値は5よりも小さく、好ましくは1よりも小さく、および/または、
iii) 前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の尖度は、20よりも小さく、好ましくは10よりも小さく、およ
び、
h) 三角形T
mの第2のサブセット(m∈S
2⊂S
1)において、それぞれの幾何学的量q
T,m(m∈S
2)は、前記平均値から所定量よりも大きく、好ましくは30%よりも大きく逸脱し、
(1) 前記量q
T,m(m∈S
2)の標準偏差と前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の平均二乗値との商は、1よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さく、および/または、
(2) 前記第2のサブセットの三角形の数と前記第1のサブセットの三角形の数との商は、1.0×10
-2よりも小さく、好ましくは0.5×10
-3よりも小さい、ことを特徴とする。
【0027】
三角形T
lを特徴づける幾何学的量は、前記三角形の幾何学的特性を示す任意の量であり得るが、特に、
a) 三角形T
lにおける最も長い辺の長さD
l、
b) 三角形T
lにおける最も小さい角度α
min,l、
c) 三角形T
lにおける最も大きい角度、
d) 三角形T
lに内接する円の半径r
min,l、
e) 三角形T
lの周囲に外接する円の半径r
max,l、または
f) 三角形T
lに対してq
l=r
min,l/r
max,lにより与えられる品質指数q
l、
であり得る。
【0028】
好ましい変形例において、上述した本発明に従うサイリスタにおいて、第1のサブセットS
1は、ドロネー三角形分割のすべての三角形T
j(j∈{1;...;M}を含み、すなわちS
1∈{T
1;...;T
M}である。
【0029】
別の好ましい変形例において、上述した本発明に従うサイリスタにおいて、第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、直径d
c(<d
wafer)を有する、好ましくは、直径d
c(<0.75d
wafer)を有する円C内に位置するドロネー三角形分割の三角形T
jのみ、好ましくはすべての三角形T
jを有する。最も好ましくは、第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、最小半径d
c,minを有する最小円C
min内に位置する三角形のみ、好ましくはすべての三角形を有する。
【0030】
代わりに、本発明に従うサイリスタ、特に位相制御サイリスタは、
a) サイリスタ構造が形成された、半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面におけるカソード領域に形成されたカソード電極、
c) 前記半導体スラブの前記カソード側表面におけるゲート領域に形成されたゲート電極、
d) 前記カソード領域における点P
iに配置された複数のN個の個々のエミッタ短絡(前記点は点位置x
iを有し、iはi∈{1;...;N}である)、
e) 複数の三角形T
j(j∈{1;...;M}である)を含むドロネー三角形分割を定義する前記点P
i、
を備え、
f) 点P
lの第1のサブセット(l∈S
1⊆{1;...;N})において、
g) 各々の点P
lは、値q
P,l(l∈S
1⊆{1;...;N})を有する幾何学的量によって特徴付けられ、前記幾何学的量は、平均値μを有し、
i) 前記値q
P,l(l∈S
1)の変動係数は、0.1よりも小さく、好ましくは、0.05よりも小さく、および/または、
ii) 前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1)の歪度は5よりも小さく、好ましくは1よりも小さく、および/または、
iii) 前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1)の尖度は、20よりも小さく、好ましくは10よりも小さく、およ
び、
h) 三角形T
mの第2のサブセット(m∈S
2⊂S
1)において、それぞれの幾何学的量q
P,m(m∈S
2)は、前記平均値から所定量よりも多く逸脱し、
(1) 前記量q
P,m(m∈S
2)の標準偏差と前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1⊆{1;...;N})の平均二乗値との商は、1よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さく、および/または、
(2) 前記第2のサブセットの点の数と前記第1のサブセットの点の数との商は、1.0×10
-2よりも小さく、好ましくは0.5×10
-3よりも小さい。
【0031】
ドロネー三角形分割を定義する複数の点P
i(i∈{1;...;N})のうちの点P
lを特徴づける幾何学的量は、前記点の幾何学的特性を示す任意の量であり得るが、特に、
a) 前記点P
lに接続される辺の数N
edges,l、
b) 前記点P
lを共有する三角形の数N
triangles,l、
c) 前記点P
lに接続される最も短い辺の長さl
min,l、
d) 前記点P
lに接続される最も長い辺の長さl
max,l、または、
e) 前記点P
lに関連付けられるボロノイセルの体積V
l、
のいずれかであり得る。
【0032】
好ましい変形例において、上述した本発明に従うサイリスタにおいて、第1のサブセットS
1は、ドロネー三角形分割のすべての三角形T
j(j∈{1;...;M}を含み、すなわちS
1∈{T
1;...;T
M}である。
【0033】
別の好ましい変形例において、上述した本発明に従うサイリスタにおいて、第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、直径d
c(<d
wafer)を有する、好ましくは、直径d
c(<0.75d
wafer)を有する円C内に位置するドロネー三角形分割の点P
lのみ、好ましくはすべての点P
lを有する。最も好ましくは、第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、最小半径d
c,minを有する最小円C
min内に位置する点のみ、好ましくはすべての点を有する。
【0034】
好ましくは、上述の例において、Nはカソード領域に配置された個別のエミッタ短絡の正確な数(exact number)であり、および/または、Mはドロネー三角形分割における三角形の正確な数である。
【0035】
本発明に従う、サイリスタ、特に位相制御サイリスタを製造するための方法は、
a) 半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイにサイリスタ構造を形成するステップ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面にカソード領域を定義するステップ、
c) 前記カソード領域のサブ領域として短絡領域を定義するステップ、
d) メッシングアルゴリズムにより、前記短絡領域内に表面メッシュを定義するステップであって、前記表面メッシュは、複数の点P
i(i∈{1;...;N})を含む、表面メッシュを定義するステップと、
e) 各々の点P
i(i∈{1;...;N})の位置において個別のエミッタ短絡を形成するステップ、および
f) 前記カソード領域にカソード電極を形成するステップ、
とを備え、
g) 前記メッシングアルゴリズムは、
i) ドロネー技術アルゴリズム、特に六角形ドロネー三角形分割アルゴリズム、であるか、または、
ii) 前進フロント法、
iii) サークルパッキング法またはバブルパッキング法、
iv) ペイビングアルゴリズム、または
h) 四分木法、特に四分木/八分木技術
のいずれかに基づく。
【0036】
代わりに、 本発明に従う、サイリスタ、特に位相制御サイリスタを製造するための方法は、
a) 半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイにサイリスタ構造を形成するステップ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面にカソード領域を定義するステップ、
c) 前記カソード領域のサブ領域として短絡領域を定義するステップ、
d) メッシングアルゴリズムにより、前記短絡領域内に表面メッシュを定義するステップであって、前記表面メッシュは、複数のセルC
jを含み、各々のセルは複数の辺e
jk(j∈{1;...;M}およびk∈{1;2;3;...})により区切られる、表面メッシュを定義するステップ、
e) 各セル内の1つの位置、または、各辺の1つの位置に個々のエミッタ短絡を形成するステップ、および
f) 前記カソード領域にカソード電極を形成するステップ、
とを備え、
g) 前記メッシングアルゴリズムは、
i) ドロネー技術アルゴリズム、特に六角形ドロネー三角形分割アルゴリズム、であるか、または、
ii) 前進フロント法、
iii) サークルパッキング法またはバブルパッキング法、
iv) ペイビングアルゴリズム、または
h) 四分木法、特に四分木/八分木技術
のいずれかに基づく。
【0037】
上述した本発明に従う方法の好ましい変形例において、個別のエミッタ短絡は、各々ののセルC
jの中心、特に、前記セルC
jに内接または外接する円の中心、または前記セルC
jの重心、または前記辺e
jkの中心に配置され、j∈{1;...;M}であり、k∈{1;2;3;...}である。
【0038】
本発明に従う方法は、エミッタ短絡パターンの改善されたグローバルな均一性および均質性を有するサイリスタを、効率的、かつ自動化された方法で、特に、エミッタ短絡パターンの定義において人間の相互作用なしに、製造することを可能にする。加えて、カソード領域の境界近くのエミッタ短絡の有意に改善された均一分布が達成され得る。特に、均一な分布は、内部境界の近くにおいて、特に前進フロント法に基づくメッシングアルゴリズムが用いられるときに得られうる。したがって0.2よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さい、前記境界における任意の所与の点と、前記内部境界にわたる前記点に最も近いエミッタ短絡の位置および/または前記カソード領域の前記外部境界との間の距離d
closestの変動係数が達成され得る。
【0039】
その結果、動作特性、特に順方向阻止性能、トリガ速度、静止時間およびdV/dtのような過渡特性が大幅に改善され得る。
【0040】
発明の主題のさらなる好ましい主題が、従属請求項に開示され、および/または、以後に列挙された図面とともに以下に説明される実施形態から明らかであるとともに、実施形態を参照して明らかにされるであろう。
【0041】
技術的に可能である限り、上述のおよび以下に説明する本発明の実施形態の組み合わせもまた、明示的な記述が無いとしても、方法およびシステムの実施形態であり得る。
【0042】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面を参照して、以下に続く文章により詳細に説明されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図で用いられる参照符号とその意味は、符号のリストにおいて要約される。一般的に、同様の部分または同様の機能を有する部分には、同じ参照符号が与えられる。説明される実施形態は、例としての意味を有し、本発明を限定すべきものではない。
【0045】
発明を実施するための態様
図6は、本発明に従うサイリスタを製造するための方法の例示的な変形例を概念的に示す。第1の方法ステップ91において、カソード領域は、たとえば
図1および
図2に見られるようなサイリスタ構造が形成された、半導体スラブの第1の主側のカソード側表面に定義される。続く方法ステップ92において、短絡領域が選択され、短絡領域はカソード領域のサブ領域であり得るか、またはカソード領域と同一であり得る。さらに続く方法ステップ93において、表面メッシュは、メッシングアルゴリズムによる短絡領域内に決定され、前記表面メッシュは、i∈{1;...;N}である複数の点P
iと、複数のセルC
j、好ましくは、j∈{1;...;M}である三角形T
j、すなわち、全部でN個の点とM個のセルとを有する。一般的に、M≒N(MはNにほぼ等しい)であり、N>500、好ましくはN>1000である。たとえば、参照によりその全体が本明細書に含められる、“NETGEN - An advancing front 2D/3D-mesh generator based on abstract rules”, Computing and Visual Science 1, 41-53 (1997), Springer-Verlag 1997に記載されたような前進フロント法(advancing front method);ドロネー(Delaunay)技術またはアドバンスドドロネー(advanced Delaunay)技術;または四分木/八分木技術が、メッシュアルゴリズムとして用いられる。さらに続く方法ステップ94において、個々のエミッタ短絡が半導体スラブの第1の主側において、各々の点P
iの位置(i∈{1;...;N})に形成される。さらなる続く方法ステップ94において、最終的に、カソード電極がカソード領域上に設けられる。
【0046】
好ましくは、表面メッシュを決定するために前進フロント法を用いるときに、メッシングは、短絡領域の限界または境界から開始され、境界は、曲線、好ましくはベジェ曲線またはNURBSによって記述され、好ましくは短絡間の所望の距離d
maxに従って個別化される。次に、好ましくは三角形、最も好ましいのは正三角形のメッシュセルの第1の層が作製される。続いて、メッシュセルの追加の層が形成され、したがってメッシュ要素の前進フロントが形成される。前進フロントが衝突して、短絡領域全体がメッシュ要素で満たされたときに、メッシングが停止する。好ましくは、三角形は、いわゆるスムージング技術、特にラプラシアンスムージング(Laplacian smoothing)、ポアソンスムージング(Poisson smoothing)、メッシュジグリング(mesh jiggling)、および/または不等辺四辺形スムージング(trapezium smoothing)によって再配置されて、メッシュの幾何学的特性を改善し、特に均一性と均質性を高める。好ましくは、スムージング技術は、エッジスワッピング(edge swapping)、エッジスプリッティング(edge splitting)、エッジ衝突(edge collapsing)、およびまたはノードスムージング(node smoothing)を用いる。
【0047】
好ましくは、表面メッシュを決定するためにドロネー技術アルゴリズムを用いるときには、たとえばChew, L. Paulによる論文"Constrained delaunay triangulations" (Algorithmica 4, no. 1-4 (1989), pp. 97-108.)に記述されているような、いわゆる「分割統治(divide and conquer)」技術に基いて、繰返し技術が用いられる。代わりに、たとえばLeonidas GuibasおよびJorge Stolfiによる論文“Primitives for the manipulation of general subdivisions and the computation of Voronoi”(ACM Trans. Graph. 4, 2 (April 1985), pp. 74-123.)に記述されるように、第1のステップにおいて、ボロノイ三角形分割(Voronoi triangulation)が構築され得るとともに、続いてドロネー三角形分割(Delaunay triangulation)が、2つの三角形分割から決定される。
【0048】
四分木/八分木技術は、領域を異なるサイズの長方形のセルに分割し、続いてその長方形のセルを三角形に分割することに基づいているが、表面メッシュを得るのにも有利に用いられ得る。
【0049】
ドロネー/ボロノイ技術と、四分木/八分木技術との両方にとって、上述したようなスムージング技術は、得られた三角形をさらに整えるのに用いられ得る。
【0050】
代わりに、以下の方法の1つに基づいて、表面メッシュをまた有利に決定することができる。
【0051】
・Kim, Jeong-Hunらによって記述された"Adaptive mesh generation by bubble packing method."(Structural Engineer-ing and Mechanics 15.1 (2003): 135-150、特に
図6を参照)に記述されたような、いわゆるバブルパッキング法。
【0052】
・たとえばSamet, Hanan. "The quadtree and related hierarchical data structures."(ACM Computing Surveys (CSUR) 16.2 (1984): 187-260)に記述されるような、四角形が生成されて次に三角形に分割される四分木法。
【0053】
・たとえばRandy R. Lober, Timothy J. Tautges, Courtenay T. Vaughan , Sandia Reportの“Parallel Paving: An Algorithm for Generating Distributed, Adaptive, All-quadrilateral Meshes on Parallel Computers”(SAND97-0545・UC-705 非限定配布、1997年3月印刷、特に
図7を参照)に記述されるような、いわゆるペイビングアルゴリズム。
【0054】
・たとえば、Bern, Marshall, and David Eppsteinの"Quadrilateral meshing by circle packing"(International Journal of Computa-tional Geometry & Applications 10.04 (2000): 347-360)に記述されるようなサークルパッキング。
【0055】
・たとえば、 Suszner, Gerd およびGreiner, Guentherの“Hexagonal Delaunay Triangulation”(Proceedings of the 18th International Meshing Roundtable, 2009, pp. 519-538)に記述されるような、六角形ドロネー三角形分割(Hexagonal Delaunay Triangulation)。
【0056】
すべての上記引用文献は、その全体が参照によって本明細書に含められる。
好ましくは、非構造化メッシュを生成するためのメッシングアルゴリズムが適用される。非構造化メッシュは不規則な接続によって特徴付けられる一方、構造化メッシュは、二次元または三次元のアレイ(たとえばチェッカボードまたは蜂の巣のような)として表わすことが可能な、規則的な接続性によって特徴付けられる。ハイブリッドメッシュを生成するメッシングアルゴリズムが有利に用いられ得る。ハイブリッドメッシュは、たとえばD.S.H. LoによるFinite Element Mesh Generation(Taylor & Francis, ISBN 9780415690485)に詳述されるような、構造化部分と非構造化部分とを含むメッシュである。
【0057】
本発明に従うサイリスタを製造するための方法の好ましい変形例において、ステップ94に先立ってプロセスマスクが形成される。プロセスマスクはステップ94において使用されて、カソード側表面に接する半導体スラブの領域に選択的にドーピングを行ない、それにより、個別のエミッタ短絡が、点P
i(i∈{1;...;N})に対応する位置に形成される。
【0058】
本発明に従うサイリスタを製造するための方法の他の例示的な変形例において、以下に説明されるように、前進フロント法に基づくドロネー技術アルゴリズムにより、メッシュが得られる。
【0059】
図7aに示されるように、第1のステップにおいて、ゲート領域の形状がベクトルの閉集合により表現され、各々のベクトルは、その角度および長さによって定義される。したがって、ジオメトリを表わす閉多角形が得られる。続くステップにおいて、前記ジオメトリが、各々の頂点すなわち多角形の各コーナにおいて重み付けされた法線(weighted normal)を計算することによって拡張される。得られた新しい形状が、これにより以前の形状を厳密に含むこと、および鋭角が人工的に導入されていないことを確認するために、検証がなされる。これは、
図7bに示される。好ましくは、このステップは、複数回繰返される。
【0060】
これらのステップの結果は、
図5からの主ゲートジオメトリのために、
図8aおよび
図8bに示される。ゲート領域の一般的なジオメトリが与えられることにより、以前のステップは、プラズマ広がりの方向を大まかに予想することを可能にする。ゲート領域の形状を重み付け法線の方向に拡張する第1の距離d=d
adv,1は、好ましくは、dv/dt能力を最大化するために、リソグラフィの解像度限界に従って設定され、特に、リソグラフィの解像度限界に等しく設定される。続く距離d
advは、形状を拡張するためのものであるが、所望の短絡距離d
maxに従って設定される。上記のステップに従って得られた第1の拡張形状901において、短絡の位置は、
図8cに示されるように、少なくとも所望の短絡距離d
maxを等しくさせる距離で与えられ、したがってゲート領域に近接する短絡位置の第1の列を表わす。
【0061】
図8d−fに示されるように、上述のステップから、続いて得られた拡張形状902を用いたドロネー三角形分割を構築することによって、続く列が得られる。結果として得られる短絡位置のパターンの均一性は、ドロネー三角形分割のパラメータによって制御可能である。好ましくは、すべての角度は、60°に近く、すなわち規定の許容度内にあるべきである。同様に、最大の辺の長さは所望の短絡距離d
maxに近いべき、すなわち、再び規定された第2の許容度内にあるべきである。
【0062】
上述のような変形例は、サイリスタを通して短絡位置の非常に均一な間隔をもたらし、その短絡は、また、プラズマ伝播速度における短絡の影響を減少させるために、プラズマ広がりの方向に配置される。任意付加的なステップとして、短絡位置は、好ましくは、ドロネー三角形分割のための典型的なアルゴリズムを用いて最適化することができる。たとえば、ラプラシアンスムージング、エントロピー最適化ポイント位置、ドロネー辺フリッピング(Delaunay edge flipping)のような技術を通じて、短絡位置のさらに高い均一性を得ることができる。
【0063】
好ましくは、もしゲート領域のジオメトリにおいて何らかの対称性が存在するならば、これらの対称性は、また、上述のような変形例のいずれかに従う方法を、構造の一部分、好ましくは構造のさらなる対称性を有さない部分に適用して、それにより部分メッシュを得て、部分メッシュの対称マッピングによって完全なメッシュを得ることにより、メッシュを得るときに考慮される。
【0064】
短絡位置の均一性および均質性を示すメッシュ品質は、さまざまな量に基づいて測定され得る。
【0065】
上述のような変形例のいずれかに従って得られる表面メッシュは、複数の幾何学的対象、特に、ドロネー三角形分割を定義する複数の点P
i(i∈{1;...;N})を含み、ドロネー三角形分割は、たとえば、https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Delaunay_triangulation&oldid=662807396およびhttps://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Delaunay_triangulation&oldid=614036873に記述され、それらは参照によってその全体が本明細書に含まれる。
【0066】
特に、上述のような変形例のいずれかに従って得られる表面メッシュは、複数の幾何学的対象、特に、カソード領域上において制限されたドロネー三角形分割(restricted Delaunay triangulation)を定義する複数の点P
i(i∈{1;...;N})を含む。制限されたドロネー三角形分割は、Jean-Philippe Pons, Jean-Daniel Boissonnatによる論文"Delaunay Deformable Models: Topology-Adaptive Meshes Based on the Restricted Delaunay Triangulation"(CVPR, 2007, 2013 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pp. 1-8, doi:10.1109/CVPR.2007.383019, Print ISBN: 1-4244-1179-3)に記述される。
【0067】
前記ドロネー三角形分割は、次に、複数の三角形T
j(j∈{1;...;M})を含み、三角形の各々は、3つの辺e
jk(k∈{1;2;3})を有する。幾何学的対象の各々において、1以上の幾何学的量が定義され得る。特に、各々の三角形T
jは、面積A
jを有する。j∈{1;...;M}において、三角形T
jに内接する円の半径r
ic,jは、
【0069】
に従って決定されることができ、ここで外接円の半径r
cc,jは、
【0071】
で与えられる。さらに、各々の三角形T
j(j∈{1;...;M})において、直径D
jは、D
j=max|
k{l
jk}に従い、長さl
jk(k∈{1;2;3})を有する、前記三角形T
jにおける最長の辺e
jk(k∈{1;2;3})の長さによって定義される。各々の辺e
jkは、長さl
jkと、辺e
jkと反対側にある角度α
jk(k∈{1;2;3})とを有し、各々の辺と反対側にあり、ヘロンの公式を用いて計算することができる。
【0072】
メッシュ品質を測定するに用いられ得る、いくつかの基準(metrics)を定義し得る。好ましくは、これらの基準は、各々の三角形、各々の点または各々の辺のいずれかの1つの幾何学的量に基づいて計算される。特に、標準偏差、歪度、尖度のような統計的手段が、その基準を決定するのに用いられることができる。
【0073】
N個の値x
iのセット(i∈{1;...;N})の場合、平均とも呼ばれる平均値μは、次のように定義される。
【0075】
標準偏差σは、次のように定義される。
【0077】
大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、変動係数σ/μは、上述したような幾何学的量の少なくとも1つに対して、好ましくはすべてに対して、0.1未満であるべきであり、好ましくは0.05未満であるべきである。
【0078】
歪み度γ
1は、次のように定義される。
【0080】
大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、歪度は、上述したような幾何学的量の少なくとも1つに対して、好ましくはすべてに対して、5未満、好ましくは1.5未満、最も好ましくは、できるだけ0に近いべきである。
【0081】
尖度β
2は、以下のように定義される。
【0083】
大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、尖度は、上述したような幾何学的量の少なくとも1つに対して、好ましくはすべてに対して、20.0未満、理想的には10.0未満であるべきである。
【0084】
いわゆるアウトライナー、特に多数のエクストリームアウトライナーを、統計的手段の根拠として用いることができる。アウトライナーは、多くの異なる方法により定義され得る。1つの好ましい方法は、アウトライナーを、平均値μから、所定の量、たとえばその平均値自体から30%以上逸脱した値として定義することである。
【0085】
アウトライナーの組に基づく例示的な基準は、次のとおりである。
・アウトライナーの値の標準偏差/平均値に貢献するすべての値の二乗平均。できるだけ0に近づくべきである。1未満はよい値である。
【0086】
・アウトライナーの数と、値の全数との比として定義される、アウトライナーの量。大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、アウトライナーの量は上述のような幾何学的量の少なくとも1つ、好ましくはすべてに対して、10
-2未満、好ましくは5.0・10
-3未満であるべきである。
【0087】
以下の例示的な基準は、メッシュ品質を特徴付けるのに特に効果的であることが証明された。
【0088】
1. すべての三角形T
j(j∈{1;...;M})の直径D
jのエクストリームアウトライナーの、標準偏差、歪度および尖度、および量。
【0089】
2. メッシュ中のすべての辺の長さl
jk(すなわちjk∈{1;...;M}×{1;2;3})のエクストリームアウトライナーの、標準偏差、歪度および尖度、および量。
【0090】
3. メッシュ中のすべての三角形の角度α
jk(すなわちjk∈{1;...;M}×{1;2;3})のエクストリームアウトライナーの平均値、標準偏差、歪度、尖度、および量。好ましくは、平均値は少なくとも60°に等しい。
【0091】
4. Γ:=2
*r
ic,j/r
cc,jのエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。好ましくは、値は、すべての三角形T
j(j∈{1;...;M})に対して少なくともほぼ1.0に等しい。大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、Γは、すべての三角形T
jのせいぜい10%に対して0.8未満であり、好ましくはすべての三角形T
jのせいぜい5%に対して0.85未満であるべきである。
【0092】
5. 下記のエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。
【0094】
大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、Γは、すべての三角形T
jのせいぜい10%に対して0.8未満であり、好ましくはすべての三角形T
jのせいぜい5%に対して0.85未満であるべきである。
【0095】
6. ρ=min|
k{l
jk}/max|
k{l
jk}のエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。大まかな導きとして、許容可能なメッシュの場合、Γは、すべての三角形T
jのせいぜい10%に対して0.8未満であり、好ましくはすべての三角形T
jのせいぜい5%に対して0.85未満であるべきである。
【0096】
7. 点P
i(i∈{1;...;N})に接続されるすべての辺の最大長と、前記点に接続されるすべての辺の長さの平均値との比のエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。最適値は1.0である。
【0097】
8. 点P
i(i∈{1;...;N})に接続される数N
edges,iのエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。最適値はN
edges,i=6である。
【0098】
9. 点P
i(i∈{1;...;N})に関連するすべての角度の平均値のエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。平均値は、少なくともほぼ60°に等しい。
【0099】
10. 点P
i(i∈{1;...;N})に関連するボロノイセルの体積のエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。
【0100】
11. 点P
i(i∈{1;...;N})を供給する三角形の数N
edges,iのエクストリームアウトライナーの標準偏差、歪度、尖度、および量。最適値はN
edges,i=6である。
【0101】
いわゆる回転関数(turn function)差分が、カソード領域の境界近くのエミッタ短絡の分布の均一性を評価するのに用いられ得る。回転関数差分を決定するために、エミッタ短絡分布の外側包絡線が最小の輪郭、すなわちカソード領域におけるすべてのエミッタ短絡位置を包含する最短の多角形、単純閉曲線として定義される。同様に、外側包絡線が、最大の輪郭、すなわちゲート領域を包含する単純閉曲線であるが、カソード領域におけるいずれのエミッタ短絡位置も包含しない最長の多角形、単純閉曲線として定義される。
【0102】
たとえば、その全体が参照により本明細書に含められる、Arkin, Esther M.らによる論文"An efficiently computable metric for comparing polygonal shapes"(IEEE Transactions on Pattern Analysis & Machine Intelligence 3 (1991): 209-216)および、Latecki, Longin JanおよびRolf Lakamperによる論文"Shape similarity measure based on correspondence of visual parts"(Pattern Analysis and Machine Intelligence, IEEE Transactions on 22.10 (2000): 1185-1190)に記述されるように、いわゆる、回転関数Θ(s)は、多角形の場合に定義可能であり、Θ(s)は、多角形の2つの点の間の角度であり、sは、多角形の周辺に沿った全部の距離である。この定義に基づき、回転関数を評価することが可能であり、特に、エミッタ短絡分布のそれぞれに、カソード領域境界のための回転関数Θ
cathode, inner(s)およびΘ
cathode, outer(s)、外部ゲート領域境界のための回転関数Θ
gate(s)、および内部包絡線および外部包絡線のための回転関数Θ
env, inner(s)およびΘ
env, outer(s)を評価することができる。例示的な多角形400のための回転関数Θ(s)が、
図9に図示される。
【0103】
さまざまな回転関数差分は、次に、上記のように導入されたさまざまな幾何学的対象の形状がどれほど同様または異なっているかを示すものとして用いられることができる。特に、カソード領域の外部境界と、エミッタ短絡分布の外部包絡線との間の回転関数差分TFD1は次のように与えられる。
【0105】
TFD1は、カソード領域の外部境界と、エミッタ短絡分布の外部包絡線とがどれほど同じであるかを示し、一方、エミッタ短絡分布の内部包絡線と、ゲート領域の外部境界との間の回転関数差分TFD2は、以下のように与えられる。
【0107】
TDF2は、エミッタ短絡分布の内部包絡線と、ゲート領域の外部境界とがどれほど同じであるかを示すものである。回転関数差分は、典型的には、0と1との間の値を有する。
【0108】
本明細書に記述されたような発明の方法に従って製造されたサイリスタの場合、0.15よりも小さい値、特に、0.1よりも小さい値(好ましくは、10
-4よりも大きい)は、回転関数差分によって達成可能であり、特に上述のように定義されたTFD1および/またはTFD2により達成可能である。
【0109】
図10は、従来技術に従って得られた位置にエミッタ短絡128を有する位相制御サイリスタ100のカソード側表面の上面図である。ゲート領域境界401、カソード領域411の内部境界、カソード領域412の外部境界、エミッタ短絡分布の内部包絡線421および外部包絡線422が例示的に示される。
【0110】
図11aは、
図10からの位相制御サイリスタ100のための回転関数Θ
cathode, outer(s)およびΘ
env, outer(s)を示す。この例では、回転関数差分TFD1=0.248が見出された。
図11bは、
図10のものと同様であるが本発明に従って得られた位置におけるエミッタ短絡128を有する位相制御サイリスタの回転関数Θ
cathode, outer(s)およびΘ
env, outer(s)を示す。この例では、回転関数差分TFD1=0.091である。
【0111】
図12は、本発明に従うサイリスタのカソード側表面の部分上面図を示し、サイリスタは、上述のような方法変形例の1つに従って製造可能である。複数の追加の短絡121は、主に、非トリガ電流を制御するために、さらなる(n+)ドープされたエミッタ層122に存在し得る。これらは、エミッタ短絡とは見なされず、エミッタ短絡128が位置するカソード領域における点P
i(i∈{1;...;N})によって定義されるドロネー三角形分割の部分を形成しない。
【0112】
図13は、
図9に示されるようなサイリスタを製造するのに使用されるための表面メッシュ910の部分を示す。
【0113】
エミッタ短絡128の例示的な直径、すなわちカソード側表面102における最大の拡張は、30μmから500μmまでであり、好ましくは、50μmから400μmの間であり、最も好ましくは、100μmから300μmの間であり得る。エミッタ短絡128の全表面面積は、カソード領域の表面の面積の2.5%から20%である。これは、1cm
2当たり12個のエミッタ短絡128と、1cm
2当たり30000個の点との間が、カソード側表面102に設けられることを意味する。例示的には、エミッタ短絡128が小さいならば、より多くのエミッタ短絡128が、そのエミッタ短絡128が大きな直径を有するよりも多く存在するであろう。
【0114】
好ましくは、上述のおよび以下の実施形態において、導電型は、相互に交換可能である。すなわち、上述のすべての(n−),n−,または(n+)層および領域は、(p−),p−,または(p+)層および領域とそれぞれ交換可能であり、逆もまた真である。
【0115】
他に記述がなければ、本願で参照されるすべてのドーピング濃度Nは、正味のドーピング濃度であり、Nは、領域または層に対してN:=N
D−N
Aとして定義され、特にnドープされた領域または層の場合、ドナーN
Dの全密度は、アクセプタN
Aの全密度よりも大きい、すなわちN
D>N
Aである。また、特にpドープされた領域または層において、ドナーN
Dの全密度がアクセプタN
Aの全密度よりも小さい領域または層の場合に、N:=N
A−N
Dである。好ましくは、上述した実施形態において、導電型を示すp,nの後の添字「−」および[+」は、相対的な正味のドーピング濃度を表現するために用いられる。特に、各々の(n+)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(n+)は、各々の(n)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(n)よりも大きく、それは、各々の(n−)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(n−)よりも大きい。同様に、各々の(p+)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(p+)は、各々の(p)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(p)より大きく、それは、各々の(p−)ドープされた領域または層の正味のドーピング濃度N(p−)よりも大きい。好ましくは、N(n+)≧N(p),N(n)≧N(p−),N(p+)≧N(n)および/またはN(p)≧N(n−)である。最も好ましくは、N(n+)>N(p),N(n)>N(p−),N(p+)>N(n)および/またはN(p)>N(n−)もまた成立する。一方、同一の添字が異なる層または領域に関して用いられる場合、このことは、前記異なる層または領域のドーピング濃度が同一であるということを暗示することを解釈されるものではない。
【0116】
好ましくは、上述および以下の実施形態において、領域または層のドーピング濃度または正味のドーピング濃度が参照されるが、これは、好ましくは、前記領域または層の中の最大の正味のドーピング濃度と理解されるべきである。特に、ドーパント拡散プロセスステップを含んで形成されたドーピングされた領域または層の場合、局在的な正味のドーピング濃度は、その領域または層の中の領域から1以上の空間的方向に減衰し、その領域において、局部的ドーピング濃度は、最大の正味のドーピング濃度に等しい。
【0117】
他に述べられていなければ、本願全体を通じて、a≒bは、|a−b|/(|a|+|b|)<10
-1、好ましくは|a−b|/(|a|+|b|)<10
-2を暗示し、aおよびbは、本願において任意の場所で記述および/または定義される、またはそうでなければ当業者にとってよく知られた任意の変数である。さらに、aが少なくともbにほぼ等しい、またはbに少なくともほぼ同一であるという記述は、a≒b,好ましくはa=bを暗に示す。さらに、他に記述がなければ、本願明細書を通じて、a>>bは、a>10b、好ましくはa>100bを暗に示し、a<<bは、10a<b、好ましくは100a<bを示す。
【0118】
なお、「備える」との用語は、他の特徴、特に要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除するものではないことに注意すべきである。また、異なる実施形態に関連付けて記述された要素は組合せることができる。なお、請求項における参照符号は、特許請求の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0119】
当業者は、本願発明がその精神および本質的な特徴から逸脱することなく他の具体的な形態において実施可能であることを理解するであろう。ここに開示された実施形態は、したがって、すべての点において例示的なものであり制限されるものではないと見なされる。本発明の範囲は、上述の明細書よりも添付の特許請求の範囲によって示され、その意味と範囲および均等物内で生じるすべての変更は、その中に包含されるということを意図している。
【0120】
本発明の好ましい実施形態、特に上述のような好ましい実施形態は、以下に挙げられた要素において詳細に実現され、より有利には、上述のような1以上の特徴の組合せによって実現可能である。
【0121】
1) サイリスタ、特に位相制御サイリスタであって、
a) サイリスタ(100,100’)構造が形成された、半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイ、
b) 前記半導体スラブのカソード側(102)表面におけるカソード領域に形成されたカソード電極(114)、
c) 前記半導体スラブの前記カソード側表面におけるゲート領域に形成されたゲート電極(118)、
d) 前記カソード領域における点P
iに配置された複数のN個の個々のエミッタ短絡(128)(前記点は点位置x
iを有し、iはi∈{1;...;N}である)、
e) 複数の三角形T
j(j∈{1;...;M}である)を含むドロネー三角形分割を定義する前記点P
i、
を備え、
f) 三角形T
lの第1のサブセット(l∈S
1⊆{1;...;M})において、
g) 各々の三角形T
lは、値q
T,l(l∈S
1⊆{1;...;M})を有する幾何学的量によって特徴付けられ、前記幾何学的量は、平均値μを有し、
i) 前記値q
T,l(l∈S
1)の変動係数は、0.1よりも小さく、好ましくは、0.05よりも小さく、および/または、
ii) 前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の歪度は5よりも小さく、好ましくは1よりも小さく、および/または、
iii) 前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の尖度は、20よりも小さく、好ましくは10よりも小さく、および/または、
iv) 三角形T
mの第2のサブセット(m∈S
2⊂S
1)において、それぞれの幾何学的量q
T,m(m∈S
2)は、前記平均値から所定量よりも大きく、好ましくは30%よりも大きく逸脱し、
(1) 前記量q
T,m(m∈S
2)の標準偏差と前記幾何学的量q
T,l(l∈S
1)の平均二乗値との商は、1よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さく、および/または、
(2) 前記第2のサブセットの三角形の数と前記第1のサブセットの三角形の数との商は、1.0×10
-2よりも小さく、好ましくは0.5×10
-3よりも小さい、ことを特徴とする、サイリスタ。
【0122】
2) 前記第1のサブセットにおけるすべての三角形に対して、前記幾何学的量q
T,lは、
a) 各々の三角形T
l(l∈S
1)における最も長い辺の長さD
l、
b) 各々の三角形T
l(l∈S
1)における最も小さい角度α
min,l、
c) 各々の三角形T
l(l∈S
1)における最も大きい角度、
d) 各々の三角形T
l(l∈S
1)に内接する円の半径r
min,l、
e) 各々の三角形T
l(l∈S
1)の周囲に外接する円の半径r
max,l、または
f) 各々の三角形T
l(l∈S
1)に対してq
l=r
min,l/r
max,lにより与えられる品質指数q
l、
のいずれかとして定義される、ことを特徴とする、項目1)に記載のサイリスタ。
【0123】
3) 前記第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、直径d
cを有する円C内に位置する三角形のみを有する、
ことを特徴とする、項目1)から項目2)のいずれか1つに記載のサイリスタ。
【0124】
4) 前記第1のサブセットは、円C’内に位置する三角形のみを有し、前記円C’は、Cと同心円であり、直径d
C'を有し、d
C'>0.75d
Cであり、好ましくはd
C'>0.9d
Cである、
ことを特徴とする、項目1)から項目3)のいずれか1つに記載のサイリスタ。
【0125】
5) 前記第1のサブセットにおける三角形の数は、1000よりも大きく、好ましくは2000よりも大きい、
ことを特徴とする、項目1)から項目4)のいずれか1つに記載のサイリスタ。
【0126】
6) サイリスタ、特に位相制御サイリスタであって、
a) サイリスタ(100,100’)構造が形成された、半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイ、
b) 前記半導体スラブのカソード側(102)表面におけるカソード領域に形成されたカソード電極(114)、
c) 前記半導体スラブの前記カソード側表面におけるゲート領域に形成されたゲート電極(118)、
d) 前記カソード領域における点P
iに配置された複数のN個の個々のエミッタ短絡(128)(前記点は点位置x
iを有し、iはi∈{1;...;N}である)、
e) 複数の三角形T
j(j∈{1;...;M}である)を含むドロネー三角形分割を定義する前記点P
i、
を備え、
f) 点P
lの第1のサブセット(l∈S
1⊆{1;...;N})において、
g) 各々の点P
lは、値q
P,l(l∈S
1⊆{1;...;N})を有する幾何学的量によって特徴付けられ、前記幾何学的量は、平均値μを有し、
i) 前記値q
P,l(l∈S
1)の変動係数は、0.1よりも小さく、好ましくは、0.05よりも小さく、および/または、
ii) 前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1)の歪度は5よりも小さく、好ましくは1よりも小さく、および/または、
iii) 前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1)の尖度は、20よりも小さく、好ましくは10よりも小さく、および/または、
iv) 三角形T
mの第2のサブセット(m∈S
2⊂S
1)において、それぞれの幾何学的量q
P,m(m∈S
2)は、前記平均値から所定量よりも多く逸脱し、
(1) 前記量q
P,m(m∈S
2)の標準偏差と前記幾何学的量q
P,l(l∈S
1⊆{1;...;N})の平均二乗値との商は、1よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さく、および/または、
(2) 前記第2のサブセットの三角形の数と前記第1のサブセットの三角形の数との商は、1.0×10
-2よりも小さく、好ましくは0.5×10
-3よりも小さい、ことを特徴とする、サイリスタ。
【0127】
7) 前記第1のサブセットにおけるすべての点に対して、前記幾何学的量q
T,lは、
a) 各々の点P
l(l∈S
1)に接続される辺の数N
edges,l、
b) 各々の点P
l(l∈S
1)を共有する三角形の数N
triangles,l、
c) 各々の点P
l(l∈S
1)に接続される最も短い辺の長さl
min,l、
d) 各々の点P
l(l∈S
1)に接続される最も長い辺の長さl
max,l、または、
e) 各々の点P
l(l∈S
1)に関連付けられるボロノイセルの体積V
l、
のいずれかとして定義される、
ことを特徴とする、項目6)に記載のサイリスタ。
【0128】
8) 前記第1のサブセットは、前記ゲート電極に外接する、直径d
cを有する円C内に位置する三角形のみを有する、
ことを特徴とする、項目6)または項目7)に記載のサイリスタ。
【0129】
9) 前記第1のサブセットは、円C’内に位置する三角形のみを有し、前記円C’は、Cと同心円であり、直径d
C'を有し、d
C'>0.75d
Cであり、好ましくはd
C'>0.9d
Cである、
ことを特徴とする、項目6)から項目8)のいずれか1つに記載のサイリスタ。
【0130】
10) 前記第1のサブセットにおける点の数は、1000よりも大きく、好ましくは2000よりも大きい、
ことを特徴とする、項目6)から項目9)のいずれか1つに記載のサイリスタ。
【0131】
11) サイリスタ、特に位相制御サイリスタを製造するための方法であって、前記方法は、
a) 半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイにサイリスタ構造を形成するステップ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面(102)にカソード領域を定義するステップ、
c) 前記カソード領域のサブ領域として短絡領域を定義するステップ、
d) メッシングアルゴリズムにより、前記短絡領域内に表面メッシュ(910)を定義するステップであって、前記表面メッシュは、複数の点P
i(i∈{1;...;N})を含む、表面メッシュ(910)を定義するステップと、
e) 各々の点P
i(i∈{1;...;N})の位置において個別のエミッタ短絡を形成するステップ、および
f) 前記カソード領域にカソード電極を形成するステップ、
とを備える、方法。
【0132】
12) サイリスタ、特に位相制御サイリスタを製造するための方法であって、前記方法は、
a) 半導体スラブ、特に半導体ウェハまたはダイにサイリスタ構造を形成するステップ、
b) 前記半導体スラブのカソード側表面(102)にカソード領域を定義するステップ、
c) 前記カソード領域のサブ領域として短絡領域を定義するステップ、
d) メッシングアルゴリズムにより、前記短絡領域内に表面メッシュ(910)を定義するステップであって、前記表面メッシュは、複数のセルC
jを含み、各々のセルは複数の辺e
jk(j∈{1;...;M}およびk∈{1;2;3;...})により区切られる、表面メッシュ(910)を定義するステップと、
e) 各セル内の1つの位置、または、各辺の1つの位置に個々のエミッタ短絡を形成するステップ、および
f) 前記カソード領域にカソード電極を形成するステップ、
とを備える、方法。
【0133】
13) 前記メッシングアルゴリズムは、ドロネー技術アルゴリズムであることを特徴とする、項目11)または項目12)に記載の方法。
【0134】
14) 前記メッシングアルゴリズムは、前進フロント法に基づくことを特徴とする、項目11)から項目13)のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
15) 前記ゲート領域と前記短絡領域との間の最小距離d
gate、特に前記ゲート領域の任意の平行区域と前記短絡領域の境界との間の最小距離d
gateは、それぞれ、所定の距離D
gateよりも大きい、
ことを特徴とする、項目11)から項目14)のいずれか1つに記載の方法。