【実施例】
【0166】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するためのガイダンスを当業者に提供するために含まれている。本開示及び当該技術の一般的レベルに照らして、当業者は、以下の実施例は例示的なものにすぎず、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、多数の変化、修正、及び変更が用いられ得ることが意図されることを理解することができる。
【0167】
実施例1
PDTのためのDBP−Hf系NMOF
1.1.材料及び細胞株
別段述べられない限り、出発材料の全てを、Sigma−Aldrich(St.Louis,Missouri,United States of America)及びThermo Fisher Scientific(Waltham,Massachusetts,United States of America)から購入し、更なる精製なしで使用した。
【0168】
ヒトの頭頸部癌細胞株SQ20B(シスプラチン抵抗性)は、Dr.Stephen J.Kron(Department of Molecular Genetics and Cell Biology,The University of Chicago,Chicago,USA)が快く提供した。細胞を、20%のウシ胎仔血清(FBS、Hyclone,Logan,Utah,United States of America)を含有するDMEM/F12(1:1)培地中(Gibco,Grand Island,New York,United States of America)で培養した。
【0169】
胸腺欠損のメスのヌードマウス(生後6週間、20〜22g)は、Harlan Laboratories,Inc(Dublin,Virginia,United States of America)が提供した。研究プロトコルは、University of ChicagoのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)が審査、承認した。
【0170】
1.2.5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(H
2DBP)の合成
Wang et al.(Synlett 1995,1995,1267)によって以前に報告された修正された文献手順に基づいて、ジピリルメタンを合成した。一般的な合成経路を
図8に示す。1リットルのフラスコに、500mLの蒸留ピロール(7.2mol)を添加した。このフラスコに、パラホルムアルデヒド(1.74g、ホルムアルデヒドによって58mmol)を添加し、混合物を15分間脱気した。その後、この混合物を60℃まで加熱して、固体のうちのほとんどを溶解させた。室温まで冷却した後、この溶液に、0.53mLのトリフルオロ酢酸(TFA)を緩徐に添加した。この反応混合物を1時間撹拌してから、812mgの水酸化ナトリウムを添加し、その後、この混合物を更に45分間撹拌した。ピロールを真空下で蒸留させ、残りの固体をジクロロメタンで水から抽出し、水で2回洗浄した。クロロホルムを溶出剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物を精製して、オフホワイト色の生成物をもたらした。収率:4.94g、33.8mmol(58%)。
1H−NMR(500MHz,クロロホルム−D,ppm):δ=7.72(s,2H)、6.61(d,2H)、6.15(d,2H)、6.03(s,2H)、3.94(s,2H)。
【0171】
4−(メトキシカルボニル)ベンズアルデヒド(1.20g、7.3mmol)及びジピリルメタン(1.07g、7.3mmol)を、丸底フラスコに添加した。このフラスコに、1Lの無水ジクロロメタン(DCM)を添加した。トリフルオロ酢酸(0.34mL、4.4mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応混合物に2.49gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、11.0mmol)を添加し、混合物を更に1時間撹拌した。トリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器で溶媒を除去し、クロロホルムを溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって、5,15−ジ(p−メチル−ベンゾアート)ポルフィリン(Me
2DBP)生成物を精製した。収率:810mg、1.40mmol(38%)。
1H−NMR(500MHz,クロロホルム−D,ppm):δ=10.38(s,2H)、9.45(d,4H)、9.06(d,4H)、8.52(d,4H)、8.39(d,4H)、4.16(s,6H)、−3.12(s,2H)。
【0172】
前述のMe
2DBP(399mg、0.69mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合物(90mL、1:1vol/vol)中に溶解させた。その後、水酸化カリウム水溶液(14mL、2M)を添加した。この溶液を加熱して、窒素保護下で一晩還流させた。回転蒸発器で溶媒の半分を除去してから、この溶液を、トリフルオロ酢酸によってpH=3に中和させた。遠心分離によって暗紫色の生成物を回収し、水及びエーテルで洗浄した。固体残渣を真空下で乾燥させて、95%の収率で純粋なH
2DBP生成物(362mg、0.66mmol)をもたらした。
1H−NMR(500MHz,DMSO−D
6,ppm):δ=13.35(s,2H)、10.71(s,2H)、9.71(d,4H)、9.08(d,4H)、8.45(m,8H)、−3.26(s,2H)。
13C−NMR(125MHz,DMSO−D
6,ppm):δ=168.05(a)、145.36(f)、135.35、133.46、131.22、130.78(b−e)、128.67(g,j)、118.19(k)、106.62(h,i)。[H
2DBP+H]
+のESI−MS:551.1計算値;551.2実測値。
【0173】
1.3.DBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
20mLのガラスバイアルに、3mLのHfCl
4溶液[N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、2mg/mL、0.018mmol]、3mLのH
2DBP溶液(DMF中3.5mg/mL、0.018mmol)、及び0.45mLの酢酸(7.9mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗赤色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0174】
DBP−UiOの粉末X線回折パターンは、Zn−DPDBP−UiO MOF[DPDBPは、10、20−ジフェニル−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリンを指す]の粉末X線回折パターンと適合する。Zn−DPDBP−UiO MOFは、Zr
6O
4(OH)
4(Zn−DPDBP)
6の構造体式を有するUiOの形態を取る。
【0175】
NMOFの窒素吸着を、77KのAutosorb−1表面積及び細孔径分析器(Quantachrome Instruments,Boynton Beach,Florida,United States of America)上で試験した。BET表面積の計算値は、558m
2/gであった。
【0176】
DBP−UiO NMOFに対する熱重量分析を、Shimadzu TGA−50熱重量分析器(Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で実行した。加熱速度を3℃/分に設定し、試料を空中で600℃まで加熱した。重量パーセンテージを、温度に対してプロットした。200℃から600℃への正規化パーセント重量損失は77%であり、これは、MOF式に基づくDBP配位子重量損失の計算値(74%)によく対応した。
【0177】
DBP−UiO NMOFのプレート様形態を、透過型電子顕微鏡(TEM、Tecnai F30、及びTecnai Spirit、FEI,Hillsboro,Oregon,United States of America)によって確認した。SBU間の距離を測定する。粒子は、約10nmの厚さ、及び100nm未満のプレート直径を有するプレート様形態を呈する。DBP−UiO NMOFの粒径を、動的光散乱(DLS、Nano−ZS、Malvern,United Kingdom)によって76.3nm(PDI=0.103)であると決定した。
【0178】
1.4.DBP−UiO安定性
生理学的環境におけるDBP−UiOの安定性を試験するために、DBP−UiO粒子をRPMI1640細胞培養培地中で12時間インキュベートした。TEM画像は、インキュベーション後、未変化の形態のNMOFを呈した。
【0179】
1.5.H
2DBP及びDBP−UiOの光化学的特性
UV可視分光光度計(UV−2401PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)で、H
2DBP及びDBP−UiOのUV−可視吸収スペクトルを取得した。H
2DBP溶液及びDBP−UiO NMOF懸濁液を、0.67mMのリン酸緩衝食塩水(PBS)中で調製した。0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.5、4、及び8mg/L濃度での、H
2DBPの標準溶液の吸収を取得し、402nmでの吸収の線形適合を行うことによって標準曲線をプロットした。402nm及び619nmでのH
2DBPの吸光係数はそれぞれ、2.2×10
5及び1.7×10
3M
−1cm
−1である。
【0180】
H
2DBP配位子及びDBP−UiO NMOFの蛍光スペクトルを、分光蛍光光度計(RF−5301PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で取得した。配位子蛍光は、630nm(強度)及び690nm(弱度)で出現する一方で、DBP−UiO NMOFは、無視できる蛍光を示す。
【0181】
時間領域寿命を、 時間相関単一光子計数(TCSPC)法を使用して、ChronosBH寿命蛍光光度計(ISS,Inc.,Champaign,Illinois,United States of America)上で測定した。蛍光光度計は、Becker−Hickl SPC−130検出電子工学及びHPM−100−40Hybrid PMT検出器を収容した。調節可能なピコ秒パルスの励起を、統合パルスピッカー及びAOTFを有するFianium SC400−2スーパーコンティウームレーザー源よってもたらした。発光波長を、帯域通過フィルタ(Semrock及びChroma)とともに選択した。装置応答関数(IRF)を、Ludox LSコロイド状シリカの1%の散乱溶液中、約120psのFWHMであると測定した。寿命を、Vinci制御及び分析ソフトウェアにおいて、フォワード畳み込み法を介して適合させる。適合した寿命を表1に列挙する。
【表1】
【0182】
1.6.H
2DBP及びDBP−UiOの一重項酸素発生
640nmでのピーク発光を有する発光ダイオード(LED)アレイを、一重項酸素発生の光源として使用した。このLEDの照射量は、100mW/cm
2である。一重項酸素センサーグリーン(SOSG)試薬(Life Technologies Carlsbad,California,United States of America)を用いて、一重項酸素を検出した。HBSS緩衝剤中、5μM溶液/懸濁液中にH
2DBP及びDBP−UiO試料を調製した(DBP−UiO試料について、濃度は配位子当量として計算した)。2mLの、これらの溶液/懸濁液のうちのそれぞれに、SOSGストック溶液(5mMで5μL)を添加してから(最終濃度=12.5μM)、蛍光測定した。
【0183】
典型的な測定について、蛍光強度を、504nmの励起及び525nmの放射(励起/放射についてスリット幅3nm/5nm)で、分光蛍光光度計(RF−5301PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で取得した。LEDによって、(背景として)0、10秒、20秒、30秒、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、5分、6分、及び7分照射した後、蛍光を測定した。
【0184】
光強度及び光増感剤濃度が固定されるにつれて、光化学反応について、我々は、[PS*](光増感剤の励起状態の濃度)が定数であると想定することができる。したがって、我々は、以下の反応速度等式を有し、
【数1】
式中、k*=k[PS*]である。ここで、我々は、一重項酸素を消費するSOSGの共役反応を有し、
【数2】
式中、[SOSG
*]は、SOSGの反応形態の濃度である。[SOSG
*]=[
1O
2]=c
0(O
2)−[O
2]であり、かつ蛍光強度は[SOSG
*]:
【数3】
に比例し、式中、I
0は、入射光強度であり、φ
fは、SOSG*の蛍光量子収率であり、εは、SOSG*の吸光係数であり、bは、光路長であることに留意されたい。我々は、この等式を統合して、蛍光強度I
Fと照射時間との相関性を得ることができ、
【数4】
【数5】
式中、A及びkは、適合パラメータであり、
【数6】
【数7】
I
0は、蛍光光度計における入射光強度を指し、φ
fは、SOSGの蛍光量子収率であり、ε
Sは、励起波長でのSOSGの吸光係数であり、bは、光路長であり、c
0(O
2)は、初期酸素濃度であり、φ
Δは、一重項酸素発生の量子収率であり、N
irは、1秒当たりの光子による照射光強度であり、ε
PSは、LED発光波長での光増感剤の吸光係数であり、c(PS)は、光増感剤濃度である。線形近似値を上記の等式に適用する。
【0185】
非線形回帰によって、我々は、一連の前述の形態の適合曲線を得た。適合パラメータを表2に列挙する。
【表2】
【0186】
1.7.DBP−UiOの細胞取り込み
SQ20B細胞を、5×10
5個の細胞/ウェルで6ウェルプレート上に播種し、更に24時間インキュベートした。DBP−UiO試料を、30mg/Lの濃度で細胞に添加した。4時間及び12時間インキュベートした後、細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。細胞を濃縮硝酸で消化させ、ICP−MSに供して、Hf濃度を決定した。細胞取り込み量を、4時間及び12時間のインキュベーション後、それぞれ433.3±23.8及び451.4±26.1ngのHf/10
5個の細胞であると決定した。
【0187】
1.8.細胞傷害性
DBP−UiO及びH
2DBPの細胞傷害性を、シスプラチン及び従来の放射線療法に対して抵抗性であるヒト頭頸部癌細胞SQ20Bにおいて評価した。SQ20B細胞を、2000個の細胞/ウェルで96ウェルプレート上に播種した。この細胞を、24時間のインキュベーション後、様々な配位子濃度(配位子濃度に基づいて、5、10、20、50、及び100μM)のDBP−UiO及びH
2DBPで治療した。更に4時間インキュベートし、その後、培養培地を100μLの新鮮なDMEM/F12培地と交換した。細胞に、100mW/cm
2でLED光(640nm)を15分間(総光線量90J/cm
2)または30分間(総光線量180J/cm
2)それぞれ照射した。照射処理しなかった細胞は、対照としての役割を果たした。細胞を更にインキュベートして、DBP−UiOまたはH
2DBPとともに72時間の総インキュベーション時間を達成した。(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラ−ゾリウム)(MTS)アッセイ(Promega,Madison,Wisconsin,United States of America)によって、細胞生存率を検出した。
【0188】
1.9.インビボ有効性
SQ20B皮下異種移植マウスモデルを使用して、DBP−UiOのPDT有効性を調査した。SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
6個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のメスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、対照としてのPBS、H
2DBP、及びDBP−UiOを含めた。腫瘍が100mm
3に達した時、3.5mg/kgのDBP用量でPBS、H
2DBP、及びDBP−UiOを動物に腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)のイソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に640nmのLEDを30分間照射した。光強度を100mW/cm
2として測定し、総光線量は180J/cm
2であった。注射及びPDTの両方を一度に実行した。
【0189】
治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。最後に、8日目に全てのマウスを屠殺し、切除した腫瘍を撮影し、秤量した。腫瘍を、ホルマリンで固定した。パラフィン包埋された5μmの腫瘍切片をヘマトキシリン及びエロシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡(Pannoramic Scan Whole Slide Scanner、Perkin Elmer,Waltham,Massachusetts,United States of America)で観察した。
【0190】
3つ全ての群の腫瘍薄片の組織学を、PDT治療後に観察した。支配的な正常腫瘍細胞が、対照群及び配位子治療群に観察される。腫瘍細胞の支配的なアポトーシス/ネクローシスがNMOF群からの腫瘍薄片において観察され、大炎症細胞がPDT後の免疫応答を示した。NMOF治療群の腫瘍組織中の血管は、PDT後に破壊されたが、対照群及び配位子治療群では撹乱されることはなかった。
【0191】
1.10.Bi−DBP NMOFの合成
4mLのガラスバイアルに、0.5mLのBi(NO
3)
3・5H
2O溶液(DMF中2.4mg/mL、2.5μmol)、0.5mLのH
2DBP溶液(DMF中2.8mg/mL、2.5μmol)、及び4μLのトリフルオロ酢酸(0.05mmol)を添加した。この反応混合物を、80℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:100vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。Bi−DBP NMOFは、TEMによって明らかにされるナノロッド形態を呈する。
【0192】
実施例2
DBP MOFの特性評価のまとめ
実施例1に記載するように、ポルフィリン誘導体、5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(H
2DBP)を、4−(メトキシカルボニル)−ベンズアルデヒドとジピリルメタンとの間の縮合反応によって合成し、
1H及び
13C NMR分光法ならびに質量分析法によって特性評価した。DBP配位子の直線状に整列したジカルボキシレート基は、Hf
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(DBP)
6の構造体式を有するDBP−UiO NMOFの構築を可能にする。DBP−UiOを、80℃のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、HfCl
4とH
2DBPとの間の溶媒熱反応によって合成した。結果として得られる暗紫色の粉末を、大量のDMF、エタノール中1%のトリエチルアミン(v/v)、及びエタノールで連続的に洗浄してから、ストック懸濁液としてエタノール中に分散させた。
【0193】
DBP−UiOの類似体であるZr
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(Zn−DPDBP)
6(すなわち、Zn−DPDBP−UiO、式中、DPDBPは、5,15−ジ(p−ベンゾアート)−10,20−ジフェニル−ポルフィリンである)の単一結晶構造と、DPDBP及びDBPの長さならびにZn−DPDBP−UiO及びDBP−UiOの粉末X線回折(PXRD)パターンにおける類似性とに基づいて、DBP−UiOは、12個の接続されたHf
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(カルボキシレート)
12二次構成単位(SBU)及びDBP架橋配位子から構築されるUiO型MOF構造を取ると考えられる。理論によって拘束されることを望むものではないが、高いSBU接続性及び強度のZr/Hf−カルボキシレート結合は、様々な条件下でUiO MOFの安定性の原因となると考えられる。DBP−UiOは、1.6nmの寸法の三角形のチャネル、ならびにそれぞれ2.8nm及び2.0nmの寸法の八面体空洞及び四面体空洞を有する非常に開いた構造体構造を有する。
【0194】
DBP−UiO粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)によってプレート形態を呈する。窒素吸着測定は、DBP−UiOについて558m
2/gのBET表面積をもたらした。DBP−UiOの組成物を、熱重量測定分析及び誘導結合型プラズマ質量分析(ICP−MS)によって確認し、77重量%(計算値73%)のDBP充填及び24.3%(計算値23.7%)のHf含有量をそれぞれもたらした。
【0195】
個々のSBUは、DBP−UiOの高解像度のTEM画像においてはっきりと可視である。SBU間の距離は約2.7nmであると測定され、これは、X線構造モデルに基づく2.77nmの距離の計算値と一貫する。高解像度のTEM画像の高速フーリエ変換(FFT)は、ナノプレートについて3倍の対称性を呈し、DBP−UiOの立方結晶系と一貫する。ナノプレートの寸法は、直径約100nm及び厚さ約10nmであると測定される。そのような薄プレートは、4〜5組の(111)充填層(d111=2.2nm)のみからなる。動的光散乱(DLS)測定は、この粒子について76.3nmの平均直径を示した。注目すべきことに、ナノプレート形態は、PDTのためのROSを発生させるために特に有利である。
1O
2の拡散距離は、水溶性環境において90〜120nm以下であり、細胞の内側で最短約20nmであり得ることが確立されている。したがって、
1O
2をNMOF内部から細胞質へと輸送して、細胞傷害性効果を発揮するためには、厚さが10nm程に薄いナノプレートが好ましい。
【0196】
UiO構造体は、典型的には、水溶液中で安定である。DBP−UiOを、RPMI1640細胞培養培地中で12時間インキュベートして、生理学的に適切な培地におけるその安定性を決定した。TEM画像は、ナノプレートの未変化の形態を示し、FFTは、DBP−UiOの結晶性構造が未変化のままであることを証明した。RPMI1640培地中でのインキュベーション前後のNMOF試料のPXRDパターンは同一であり、生理学的環境におけるDBP−UiOの構造的安定性を更に確認した。
【0197】
リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝剤(pH=7.4)中のH
2DBP及びDBP−UiOのUV−可視吸収スペクトルを比較する。H
2DBPは、402nmでソーレー帯、ならびに505、540、566、及び619nmで4つのQ帯を示す。402nm及び619nmでのH
2DBPの吸光係数はそれぞれ、2.2×10
5及び1.7×10
3M
−1cm
−1である。DBP−UiOは、全てのQ帯についてわずかな赤方偏移を示し、ピークは、510、544、579、及び634nmで出現する。いかなる1つの理論によって拘束されることを望むものではないが、赤方偏移はおそらく、DBP配位子のカルボキシレート基の、Hf
4+中心への配位から生じると考えられる。DBP−UiOのソーレー帯はおそらく、薄ナノプレート内の非当量の配位子環境、及び薄MOF構造における潜在的な構造体の歪みのために、わずかに広幅化する。
【0198】
H
2DBP及びDBP−UiOの一重項酸素発生効率を、一重項酸素センサーグリーン(SOSG、Life Technologies)を使用して決定した。LED光源(640nmでのピーク発光、100mW/cm
2のエネルギー照射量)に曝露した後、化学ルミネセンス試薬SOSGは、
1O
2と反応して、緑色の蛍光を発生させ、これを蛍光光度計によって定量化した。蛍光強度を、照射時間に対してプロットした。
1O
2発生を、疑似一次プロセスに対応する指数関数によって描写した。
1O
2発生曲線を、以下の等式によって適合した。
【数8】
式中、I
Fは、蛍光強度であり、tは、照射時間を表す一方で、A及びkは、適合パラメータ(詳細な導出はSIを参照されたい)である。H
2DBP及びDBP−UiOの適合した等式は、
【数9】
【数10】
である。
【0199】
我々の実験において、照射量及び光増感剤濃度は定数であるため、kは一重項酸素発生の効率の指標である。したがって、DBP−UiOは、
1O
2を発生させる上でH2DBPよりも少なくとも2倍効率的であり、これはおそらく、重Hf
4+中心が
1DBPから
3DBP励起状態への系間交差を促進するためである。これと一貫して、640nmでの
1DBP発光強度は、DBP−UiOについて大いに(250倍だけ)低下し、寿命はH2DBPの10.9nsから、DBP−UiOの0.26nsへと低減した。
【0200】
DBP−UiOのPDT有効性を、抵抗性頭頸部癌で試験した。頭頸部癌とは、頭部または頸部の領域に生じる生物学的に類似した癌の群(鼻腔洞、唇、口、唾液腺、喉、及び喉頭を含むが、これらに限定されない)を指す。頭頸部癌は表在的に生じるため、PDTが実行可能な治療モダリティとなる。
【0201】
シスプラチン及び伝統的な放射線療法に対して抵抗性であるヒト頭頸部癌細胞SQ20B上に、インビトロPDTを実行した。SQ20B癌細胞をDBP−UiO(30μg/mL)とともに4時間または12時間インキュベートすることによって、DBP−UiOの腫瘍細胞取り込みをまず評価した。細胞中のHf濃度をICP−MSによって決定した。4時間または12時間のインキュベーション後、細胞間に有意な差は観察されず、これは癌細胞によるDBP−UiOの急速な内部移行を示した。
【0202】
DBP−UiOのPDT有効性を更に確認するために、SQ20B癌細胞を、様々な濃度(配位子濃度に基づいて、5、10、20、50、及び100μM)のH
2DBPまたはDBP−UiOで治療し、細胞にLED光(640nm、100mW/cm
2)を15分間(総光線量90J/cm
2)または30分間(総光線量180J/cm
2)それぞれ照射した。5μMの光増感剤用量及び15分の照射ですら、DBP−UiO治療群において有意なPDT有効性が観察された。H
2DBP治療群は、30分間の光照射での20μMの用量のみで、中等度のPDT有効性を示すが、暗所対照群またはブランク対照群において、細胞傷害性は観察されなかった。BCP−UiOのインビトロPDT有効性は、他の小分子PDT剤のインビトロPDT有効性よりも優れており、例えば、PHOTOFRIN(登録商標)は、100J/cm
2の光線量での8.5μM用量で、HT29結腸癌細胞に対して中程度のPDT有効性を示す。
【0203】
SQ20B皮下異種移植マウスモデルに対するインビボ実験を実行した。マウスを、PBS対照、DBP−UiO(3.5mgのDBP/kg)、またはH
2DBP(3.5mg/kg)で腫瘍内注射によって治療した。注射の12時間後、各マウスの腫瘍部位に光(180J/cm
2)を30分間照射した。比較のために、PHOTOFRIN(登録商標)を、典型的には10mg/kgの腹腔内注射によって担腫瘍マウスに投与し、135J/cm
2で光照射する。DBP−UiOで治療したマウスの腫瘍は、DBP−UiO投与及びPDTの1日後に収縮し始めた。DBP−UiO群の4つの腫瘍中、2つの腫瘍は、単回DBP−UiO投与及び単回PDTによって完全に根絶された一方で、他方の2つの腫瘍のサイズは、約150mm
3から約3mm
3へと低下した。H
2DBPで治療したマウスの腫瘍増殖は、PDT後にわずかに抑制されたが、5日後に加速し、終了時点では対照群との差は呈さなかった。局所投与後、DBP−UiOは、腫瘍細胞によって効率的に内部移行され、照射時に細胞傷害性を誘起することができた一方で、遊離配位子は、照射前に腫瘍部位から排除された可能性がある。全てのマウスへのPDT治療後、皮膚/組織損傷は観察されなかった。腫瘍薄片の組織学は、DBP−UiO治療群の腫瘍中のマクロファージ浸潤を示し、腫瘍細胞の有意な画分はアポトーシス/ネクローシスを受けたことを示した
【0204】
実施例3
DPDBP−UiO NMOF
3.1.DPDBP−UiO NMOFの合成
10,20−ジフェニル−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(H
2DPDBP)の合成を示す模式図を、
図9に示す。より具体的には、ベンズアルデヒド(0.65mL、6.4mmol)及びジピリルメタン(0.94g、6.4mmol)を、丸底フラスコ中、600mLの無水DCM中に溶解させた。15分間窒素脱気した後、TFA(0.27mL、3.5mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応物に、2.40gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、10.6mmol)を添加し、混合物を更に1時間反応させてから、1mLのトリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器によって溶媒を除去し、(1:1vol/volのヘキサン/DCMを溶出剤として)カラムクロマトグラフィーによって、ジフェニルポルフィリン生成物を精製した。収率は、36%(534mg、1.15mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):10.34(s,2H)、9.42(d,4H)、9.11(d,4H)、8.30(dd,4H)、7.83(m,6H)、−3.09(s,2H)。
【0205】
ジフェニルポルフィリン(165mLのクロロホルム中342mg、0.74mmol)のクロロホルム溶液を、氷浴上で冷却した。その後、ピリジン(725μL、9mmol)及びN−ブロモスクシンイミド(NBS、284mg、1.61mmol)を連続して添加した。この反応物を氷上で撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視した。35分間撹拌した後、17mLのアセトンを添加して、反応を停止させた。回転蒸発器上で溶媒を蒸発させ、その後、真空を適用して、残渣ピリジンを除去した。この生成物を、ヘキサン/DCM(1:1vol/vol)を溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は、58%(266mg、0.43mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):9.63(d,4H)、8.86(d,4H)、8.18(dd,4H)、7.80(m,6H)、−2.71(s,2H)。
【0206】
250mLの丸底フラスコに、5,15−ジブロモ−10,20−ジフェニルポルフィリン(265mg、0.43mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(187mg、1.04mmol)及びリン酸カリウム(三塩基、3.65g、17.2mmol)を添加した。この混合物を、窒素保護下、50mLのTHF中に溶解させた。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(103mg、0.09mmol)を添加し、混合物を加熱して、24時間の反応で還流させた。回転蒸発によって元の溶媒量を低減した後、この10、20−ジフェニル−5,15−ジ(p−メチル−ベンゾアート)ポルフィリン(Me
2DPDBP)生成物をDCM/水によって抽出した。カラムクロマトグラフィーを用いて、クロロホルムを溶出剤として、生成物を精製した。収率は、82%(255mg、0.35mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):8.89(d,8H)、8.49(d,4H)、8.35(d,4H)、8.26(d,4H)、7.80(m,6H)、4.15(m,6H)、−2.73(s,2H)。
【0207】
丸底フラスコ中、THF/メタノール(1:1vol/vol、34mL)の混合物溶媒中にMe
2DPDBP(139mg、0.19mmol)を溶解させた。この溶液に、6mLの3M水酸化カリウム水溶液を添加した。この混合物を加熱して、窒素保護中で一晩還流させた。溶媒のほとんど蒸発させた後、10mLの水を添加し、TFAでpHを酸性(pH=3)に調節した。遠心分離によってH
2DPDBP固体を回収し、水で洗浄した。
1H−NMR(DMSO−D
6):13.32(s,2H)、8.85(s,8H)、8.37(dd,8H)、8.23(d,4H)、7.85(d,6H)、−2.94(s,2H)。
【0208】
3.2.DPDBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
DPDBP−UiO NMOFを、DBP−UiOの方法に類似した方法で合成した。20mLのガラスバイアルに、4mLのHfCl
4溶液(DMF中1mg/mL、0.012mmol)、1mLのH
2DBP溶液(DMF中1.72mg/mL、0.003mmol)、3mLのH
2DPDBP溶液(DMF中2.2mg/mL、0.009mmol)、及び0.36mLの酢酸(6.3mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0209】
DPDBP−UiO NMOFは、PXRDによって示されるわずかに歪んだUiO構造を呈し、これは、追加のピーク(2Θ=3°)を除いてZn−DPDBP−UiO MOFのパターンに類似するパターンを示す。TEMは、DPDBP−UiOの形態が、DBP−UiOの形態に類似することを示す。DLSは、DPDBP−UiOの平均直径が81.2nmであることを示す。
【0210】
実施例4
DHDBP−UiO NMOF
4.1.DHDBP−UiO NMOFの合成
10,20−ジ(m−ヒドロキシフェニル)−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(H
2DHDBP)の合成を示す模式図を、
図10に提供する。より具体的には、ジピリルメタン(635mg、4.34mmol)及びm−アニスアルデヒド(0.53mL、4.34mmol)を、丸底フラスコ中、430mLの無水ジクロロメタン中に溶解させた。15分間窒素脱気した後、TFA(0.20mL、2.6mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応物に、1.47gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、6.5mmol)を添加し、混合物を更に1時間反応させてから、1mLのトリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器によって溶媒を除去し、(1:1vol/volのヘキサン/DCMを溶出剤として)カラムクロマトグラフィーによって、5,15−ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリン生成物を精製した。収率は、28%(311mg、0.60mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):10.34(s,2H)、9.41(d,4H)、9.15(d,4H)、7.88(m,4H)、7.72(t,2H)、7.38(dd,2H)、4.05(s,6H)、−3.12(s,2H)。
【0211】
ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリンのクロロホルム溶液(150mLのクロロホルム中311mg、0.60mmol)を、氷浴上で冷却した。その後、ピリジン(690μL、8.6mmol)及びNBS(268mg、1.52mmol)を連続して添加した。この反応物を氷上で撹拌し、TLCによって監視した。45分間撹拌した後、15mLのアセトンを添加して、反応を停止させた。回転蒸発器上で溶媒を蒸発させ、その後、真空を適用して、残渣ピリジンを除去した。この生成物を、ヘキサン/DCM(1:1vol/vol)を溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は、92%(374mg、0.55mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):9.59(d,4H)、8.87(d,4H)、7.74(d,2H)、7.70(s,2H)、7.65(t,2H)、7.34(dd,2H)、3.99(s,6H)。
【0212】
250mLの丸底フラスコに、5,15−ジブロモ−10,20−ジ(m−メトキシフェニル)−ポルフィリン(374mg、0.55mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(215mg、1.19mmol)、及びリン酸カリウム(三塩基、4.70g、22mmol)を添加した。この混合物を、窒素保護下、50mLの無水THF中に溶解させた。テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(133mg、0.12mmol)を添加し、混合物を加熱して、24時間の反応で還流させた。回転蒸発によって元の溶媒量を低減した後、この生成物をDCM/水によって抽出した。カラムクロマトグラフィーを用いて、クロロホルムを溶出剤として、生成物を精製した。収率は、76%(331mg、0.42mmol)である。
1H−NMR(クロロホルム−D):8.89(d,4H)、8.77(d,4H)、8.42(d,4H)、8.28(d,4H)、7.78(d,2H)、7.75(s,2H)、7.63(t,2H)、7.32(dd,2H)、4.09(s,6H)、3.97(s,6H)、−2.83(s,2H)。
【0213】
丸底フラスコ中、20mLの無水DCM中に5,15−ジ(メチル−ベンゾアート)−10、20−ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリン(331mg、0.42mmol)を溶解させた。この溶液を、ドライアス/アセトン浴上で冷却してから、臭化ボロン(0.45mL、4.7mmol)を滴加した。この混合物を室温に戻し、一晩撹拌した。その後、この反応溶液を100mLの氷水に注ぎ、濾過した。H
2DHDBP生成物を、洗浄液の色がわずかな紫色に変化するまで、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、その後、水で洗浄した。
1H−NMR(DMSO−D
6):9.97(s,2H)、8.86(d,8H)、8.28(d,4H)、8.13(d,4H)、7.60(m,6H)、7.23(d,2H)、−2.95(s,2H)。
【0214】
4.2.DHDBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
DPDBP−UiO NMOFを、DBP−UiOの方法に類似した方法で合成した。20mLのガラスバイアルに、3mLのHfCl
4溶液(DMF中2mg/mL、0.019mmol)、1mLのH
2DBP溶液(DMF中1.8mg/mL、0.003mmol)、2mLのH
2DHDBP溶液(DMF中2.3mg/mL、0.006mmol)、及び0.27mLの酢酸(4.7mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。TEMは、DHDBP−UiOの形態が、DBP−UiO及びDPDBP−UiOの形態に類似することを示す。DLSは、DHDBP−UiOの平均直径が66.3nmであることを示す。
【0215】
実施例5
クロリン系NMOF及び結腸癌の光線力学療法における使用
トルエンスルホニルヒドラジドによる5,15−ジ(p−メチルベンゾアート)ポルフィリン(Me
2DBP)の部分還元は、26%の収率で5,15−ジ(p−メチルベンゾアート)クロリン(Me
2DBC)をもたらした。
図1を参照されたい。Me
2DBCの塩基触媒加水分解は、88%の収率で5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン(H
2DBC)をもたらした。Me
2DBC及びH
2DBCを、NMR及び質量分析によって特性評価した。DMF中でのHfCl
4とH
2DBCとの間の溶媒熱反応は、暗紫色のDBC−UiOの粉末生成物をもたらし、これを、大量のDMF、エタノール中1%のトリエチルアミン(NEt
3)(v/v)及びエタノールで連続的に洗浄し、ストック懸濁液としてエタノール中に貯蔵した。
【0216】
図2A〜2Dに示すように、粉末X線回折(PXRD)は、DBC−UiOが、DBC配位子とDBP配位子との間の幾何的類似性のために、DBP−UiOと同一のUiO型構造を取ることを示した。DBC−UiO中のHf
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4二次構成単位(SBU)は、DBC配位子によって接続されて、Hf
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(DBC)
6のUiO構造体をもたらす。Hf含有量を、誘導結合型プラズマ質量分析(ICP−MS)によって24.0%(計算値23.8%)であると決定した一方で、熱重量分析において64%(計算値72%)のDBC重量損失が観察された。
【0217】
DBC−UiOの透過型電子顕微鏡(TEM)は、DBP−UiOのナノプレート形態に類似したナノプレート形態を明らかにする。プレート直径は100〜200nmである一方で、厚さは、TEM格子に対して垂直に位置する粒子の直接観察によって、3.3nmから7.5nmまで変動する。注目すべきことに、UiO構造の隣接する(111)充填層(d
111)間の距離の計算値は、2.2nmであるため、超薄プレートは、2〜4組の(111)充填層のみからなる。そのようなプレートは、約10nmの厚さのDBP−UiOよりも更に薄く、PDT中のROS拡散を更に促進する。DBC−UiOの動的光散乱(DLS)測定は、0.17の多分散指数及びリン酸緩衝食塩水(PBS)中での−10.2mVのζ電位とともに、128.5nmの平均直径を示した。
【0218】
UV可視吸収分光法は、クロリン系PSの光物理的特性を確認した。
図2A〜2Dを参照されたい。H
2DBCは、λ
max=408nm、ならびに504、534、591、及び643nmでの4つのQ帯で、分割したソーレー帯を有する。DBC−UiOは、H
2DBCと比較して、全てのQ帯についてわずかな赤方偏移を示し、ピークは、508、545、592、及び646nmである。したがって、DBC−UiOの最低エネルギーQ帯は、13nmだけDBP−UiOから赤方偏移しており、ε値は、24600M
−1・cm
−1である。H
2DBCは、最低エネルギーQ帯について、21800M
−1・cm
−1のε値を有する。
【0219】
H
2DBCは、約641nmで蛍光ピークを呈した。
図2A〜2Dを参照されたい。しかしながら、DBC−UiO蛍光は、カルボキシレート基を介した、DBC配位子のHf
4+イオンへの配位時の亢進された系間交差のため、H
2DBCよりも約200倍弱かった。これと一貫して、DBC−UiOは、時間相関単一光子計数によって、H
2DBC(8.15ns)と比較して、わずかに短い7.88nsの蛍光寿命を有する。表3を参照されたい。
【表3】
【0220】
一重項酸素センサーグリーン(SOSG)を用いて、H
2DBC及びDBC−UiOの
1O
2発生効率を決定した。SOSGは、発生させた
1O
2と反応して、緑色の蛍光(λ
em=525nm)をもたらし、これを蛍光光度計によって定量化した。比較のために、H
2DBP、DBP−UiO、及びプロトポルフィリンIX(PpIX)の
1O
2発生効率も決定した。照射時間に対してプロットした蛍光を、指数関数(等式1):
【数11】
によって適合し、これは、疑似一次
1O
2発生プロセスを示した。
図2A〜2Dを参照されたい。等式1中、I
Fは、蛍光強度であり、tは、照射時間である一方で、A及びkは、適合パラメータである。表4を参照されたい。総
1O
2発生収率を、PpIXの総
1O
2発生収率に基づいて正規化して、全体的光増感効率を比較した。DBC−UiOは、
1O
2を発生させる上でDBP−UiOよりも約3倍効率的である。
【表4】
【0221】
生物学的培地におけるDBC−UiOの安定性を、RPMI1640細胞培養培地中でNMOFを12時間培養することによって確認した。NMOFの形態は、TEMによって変化しなかった一方で、それらの高速フーリエ変換パターンとともに、高解像度のTEM画像は、NMOF結晶化度の保持を示す。DBC−UiOのPXRDパターンは、RPMI1640細胞培地中でのインキュベーション後に変化せず、生理学的環境におけるDBC−UiOの構造的安定性を更にもたらした。
【0222】
DBC−UiOは、64%のPS充填ですら自己消光を避ける結晶性及び安定した構造、
1O
2発生効率を増加させる亢進された系間交差、ならびに
1O
2拡散を促進する多孔性構造体及びナノプレート形態、ならびに好ましい光物理的特性を有する。DBC−UiOは、マウス及びヒト結腸直腸癌に対して有効である。診療所において、PDTを使用して、内視鏡を通して光を送達することによって結腸癌を治療する。一次性結腸腫瘍のPDT治療は、転移性腫瘍に対する免疫原性応答を誘発し得ることもまた既知である。
【0223】
CT26細胞を、50μMのHf濃度のDBP−UiOまたはDBC−UiOとともに4時間インキュベートすることによって、NMOFの腫瘍細胞取り込みを評価した。CT26細胞中のHf含有量を、ICP−MSによって、DBP−UiO及びDBC−UiOについてそれぞれ(3.44±0.13)及び(2.35±0.08)nmol/10
5個の細胞であると決定した。結腸癌細胞に対するDBC−UiOのインビトロPDT有効性を調査し、DBP−UiO及びそれらの対応する遊離配位子と比較した。NMOFまたは遊離配位子を、様々な濃度のCT26細胞またはHT29細胞とともにインキュベートし、この細胞を、90J/cm
2(0.1W/cm
2及び15分間。DBP−UiO及びH
2DBP:640nm、DBC−UiO及びH
2DBP:650nm)の総光線量のLED光で照射した。DBC−UiOは、低いNMOF及び光線量で両方の癌細胞株を効果的に死滅させることにより、DBP−UiOよりも優れていた。
図3を参照されたい。遊離配位子治療群もまた中等度のPDT有効性を示したが、暗所対照群またはPBS対照群において、細胞傷害性は観察されなかった。照射を行ったCT26細胞中のDBC−UiO、H
2DBC、DBP−UiO、及びH
2DBPのIC
50計算値はそれぞれ、5.1±0.2、8.5±0.1、10.4±0.5、及び20.0±3.1μMであった。照射を行ったHT29細胞中のDBC−UiO、H
2DBC、DBP−UiO、及びH
2DBPのIC
50計算値はそれぞれ、6.0±1.5、7.5±2.3、13.1±2.2、及び17.0±4.0μMであった。
【0224】
アポトーシス及び免疫原性細胞死(ICD)の両方が、優れたインビトロPDT有効性に寄与する。CT26細胞を、5μMのDBC−UiOまたはH
2DBCとともにインキュベートし、その後、0.1W/cm
2で15分間(90J/cm
2)光照射した。PDT治療によって誘導されたアポトーシスを、フローサイトメトリーによって、Alexa Fluor 488 Annexin V/死細胞アポトーシスキットで決定した。暗所において、DBC−UiOまたはH
2DBCで治療した細胞について、アポトーシスまたはネクローシスは観察されなかった一方で、DBC−UiOまたはH
2DBCで治療した場合、光照射時に有意な量の細胞がアポトーシスを受けた。カルレティキュリン(CRT)は、ICDを受ける細胞の表面上に曝露される特徴的なバイオマーカーである。フローサイトメトリー及び免疫蛍光法によってCRT発現を決定して、DBC−UiO誘起PDTによって誘起されるICDを評価する。CT26細胞を、5μMのDBC−UiOまたはH
2DBCで治療し、その後、0.1W/cm
2で15分間(90J/cm
2)光照射した。フローサイトメトリー分析のために、細胞を回収し、Alexa Fluor 488−CRT抗体及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。PI陰性細胞上、染色した細胞の蛍光強度にゲートをかけた。免疫染色分析のために、細胞をAlexa Fluor 488−CRT共役抗体及びDAPI核染色で染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を使用して観察した。光照射なしでDBC−UiOもしくはH
2DBCで治療した細胞、または光照射ありでPBSで治療した細胞は、表面CRT発現は示さなかった一方で、照射時、細胞の表面上には有意な量のCRTが検出された。この結果は、ICDが、DBC−UiO及びH
2DBCのPDTによって誘導される細胞傷害性に関与することを示す。
【0225】
CT26及びHT29の皮下側腹部腫瘍マウスモデルに、インビボ抗癌有効性実験を実行した。マウスに、(1)PBS対照、(2)DBC−UiO、(3)DBP−UiO、(4)H
2DBC、または(5)1mg/kgの配位子用量のH
2DBP、もしくは(6)3.5mg/kgの配位子用量のDBC−UiOを腫瘍内注射した。注射の12時間後、(1)〜(5)群の各マウスの腫瘍部位に光(0.1W/cm
2)を15分間(90J/cm
2)照射し、(6)郡のマウスは、光照射(0.1W/cm
2)を30分間(180J/cm
2)受けた。CT26モデルの(1)〜(5)群については、マウスを、最初の治療の4日後に再度治療した一方で、HT29モデルの(1)〜(5)群については、マウスを、合計4回の治療となるように4日毎に治療した。
図4に描写するように、DBC−UiO(1mg/kgのDBC用量)で治療したマウスの腫瘍増殖は、両方のモデルにおいて効果的に阻害された。DBP−UiO及び2つのPS配位子は、低いPS及び光線量のため、いずれのモデルにおいても腫瘍増殖を抑制することができなかった。より高い用量のDBC−UiO及び光照射は、単回治療したHT29において、及び2回治療したCT26において、有効な腫瘍後退をもたらした。終了時点でのDBC−UiOで治療した腫瘍の重要及びサイズもまた、他の群よりも有意に小さかった。凍結腫瘍薄片の組織学は、DBC−UiO治療のみが、腫瘍のアポトーシス/ネクローシスを引き起こしたが、DBP−UiOまたは2つのPS配位子では引き起こさなかったことを更に確認した。
【0226】
実施例6
X線シンチレーションのためのMOF
直鎖ジカルボキシレート配位子及びM
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(カルボキシレート)
12SBU(M=HfまたはZr)から構築されるUiO構造体(Hf−MOF及びZr−MOF)が、それらの高い化学的安定性及び構造的予測性のため、本開示の主題に従って使用するために好適であり得る。この9,10−アンタセニルビス(安息香酸)(H
2L)を、Hauptvogelら(Inorg.Chem.2011,50,8367)の手順に従って、高収率で調製した。DMF中、H
2LをHfCl
4またはZrCl
4で、100℃で2日間処理することによって、Hf−MOF及びZr−MOFを合成した。結果として得られる白色の結晶性固体を、大量のDMF、メタノール、及び水で洗浄した。これら2つのMOFの結晶構造を、Lと同一の長さのアミノ−テルフェニルジカルボキシレート配位子から構築されるUiO MOFからシミュレーションされるパターンに対する、それらのPXRDパターンの類似性によって、明らかにした。
図5A及び5Bを参照されたい。両方のMOFは、M
6(μ
3−O)
4(μ
3−OH)
4(カルボキシレート)
12SBUを直線状Lリンカーと接続することによって、fcu形態のUiO構造体構造を取る。
図5A及び5Bを参照されたい。全てのSBU中、M
4+を八面体の6つの頂点上に置いた。八面体の面を、μ
3−O
2−またはμ
3−OH
−によって交互に架橋させた。八面体の端を、カルボキシレート基によって架橋させ、各酸素が1つのM
4+に配位し、各M
4+イオンについて8個の配位環境が完了するようにした。
図6A〜6Eを参照されたい。L配位子の立体容積のため、PXRDパターンの体系的不在に基づいて、非相互透過構造が得られた。開いた構造体は、PLATONによって計算される60.5%の空隙空間、及び1.2nmの端長を有する三角形の開いたチャネルを持つ。全てのSBUについて、0.8nmの直径を有する1つの八面体空洞、及び0.6nmの直径を有する2つの四面体空洞が存在する。
図6A〜6Eを参照されたい。Hf−MOF及びZr−MOFのTEM及びSEM画像は、寸法約1μmの八面体微結晶を示した。MOFに対する窒素吸着測定は、Hf−MOF及びZr−MOFについてそれぞれ、2187m
2/g及び2776m
2/gのBET表面積を示した。両方のMOFの細孔径分布関数は、約0.6nm、0.8nm、及び1.2nmで極大を示し、結晶構造モデルから導出される空洞及びチャネルサイズと一貫した。
【0227】
水中、DMF中、及びTHF中のHf−MOFの懸濁液(0.04mMのL配位子)の蛍光スペクトルを、368.8nmの励起波長で取得した。一般的な溶媒効果によって予測される通り、発光スペクトルの極大は、溶媒の極性が増加する(THF中430nm、DMF中435nm、及び水中469nm)につれて、より長い波長へと偏移する。そのような観察は、溶媒分子に対するMOF中のアントラセン部位の到達性を支持する。より極性の溶媒中のMOFの励起スペクトルもまた、分子電子配位及び振動性配位に対する溶媒浴様式のより強度の結合ために、より明確化されていない振動性微細構造を呈する。水中及びDMF中のZr−MOFの懸濁液(0.04mMのL配位子)は、Hf−MOFと類似した発光スペクトルを示した。対照的に、非水溶性であるH
2L粒子は、溶媒分子が配位子粒子の内部に到達できないために、溶媒に対する中等度の発光の依存性を示すにすぎなかった。水中のHf−MOF、Zr−MOF、及びH
2L懸濁液の蛍光寿命もまた、調査した。懸濁試料の全ては双指数関数的な蛍光減衰を示し、試料の重み付き寿命を適合に基づいて計算した。Hf−MOF及びZr−MOFは、H
2L粒子(2.0ns)よりも有意に長い寿命(それぞれ、6.19ns及び5.96ns)を持つ。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、この差は、励起状態の寿命に対する溶媒効果と、高密度に充填されたH
2L粒子中の励起子移動との組み合わせから生じると考えられる。移動励起状態は移動し、H
2L粒子中の欠損部位で捕捉され、消光され得る一方で、MOF中のアントラセン部分の部位単離は、励起状態の移動性を低減し、励起状態の寿命の亢進をもたらす。これと一貫して、H
2LのDMF溶液は、Hf−MOF(4.06ns)及びZr−MOF(3.92ns)のDMF懸濁液の励起状態の寿命よりも長い励起状態の寿命(5.34ns)を呈する。先行研究は、構造中のアントラセンの自由回転が、そのルミネセンス信号を低減し得ることを示した。
【0228】
MOF構造中の重金属クラスタは、それらの高Z数のために、有効なX線アンテナとしての役割を果たす。Hf
4+イオン及びZr
4+イオンの外殻電子は、X線吸収時、光電効果により高速電子として駆出される。その後、発生した光電子は、構造体中で非弾性散乱を経て、それらのエネルギーをL配位子へと輸送することで励起状態にさせ、この励起状態が減衰し、検出のための可視光子を放射する。MOF粒子(水中200μLの懸濁液)のX線ルミネセンスを、臨床的表在療法系で試験した。Hf−MOF及びZr−MOFの両方は、X線励起時、可視スペクトル内の明るい放射線ルミネセンスを呈する。
図6A〜6Eを参照されたい。
【0229】
Hf−MOFは、Zrよりも高いHfのX線散乱断面積(例えば、平均エネルギー減衰係数は、15〜30keV範囲において、Hfについて約110〜18cm
2/g、Zrについて23〜16cm
2/gの範囲である)のために、同一の実験条件下で、Zr−MOFよりも高い放射線ルミネセンス信号を呈した。対照実験として、アントラセニル配位子H
2L自体または金属酸化物(HfO
2もしくはZrO
2)ナノ粒子のいずれも有意な量の光学信号は生成せず、MOF組み立て体中の重金属アンテナ及び有機発光体の両方が果たす相乗的役割を示す。Hf−MOF(1.2mMのLまたはHf)は、H
2L単独によって発生される信号の約24倍である信号を生成した一方で、Zr−MOFは、その量の約11倍の信号を生成した。比較のために、幅広く使用される無機シンチレーターNaI(Tl)は、アントラセン結晶の光出力の2.3倍の光出力を有する一方で、実用的な有機液体及びプラスチックシンチレーターは全て、アントラセン結晶よりも低い光出力を有する。対照的に、コロイド状金属酸化物(HfO
2またはZrO
2)と配位子H
2Lとの物理的混合物は、H
2Lのルミネセンスよりもわずかに高いルミネセンス(HfO
2+H
2Lについて約1.3倍、及びZrO
2+H
2Lについて約1.2倍)を発生させるにすぎない。HfOCl
2及びZrOCl
2溶液、ならびにMe
2L(L配位子のメチルエステル)での追加の対照実験もまた、実行した。再度、MOF試料のルミネセンスと比較して、溶液試料によって無視できるルミネセンスが発生した。
【0230】
また、エタノール中のMOF懸濁液の放射線ルミネセンスも、同一の実験条件下、水溶液において得られるルミネセンスと比較して、わずかに低いルミネセンスを伴って測定された。そのような溶媒依存性は、溶媒分子と、発生した高速電子との間の相互作用を示し、この相互作用が、X線から光子への全体的な変換効率を決定する。溶媒効果を排除するために、いかなる溶媒分子も含まない乾燥MOF試料の放射線ルミネセンスを測定した。懸濁液測定に使用した量よりも約15倍多いMOFを使用して、測定に十分な量の材料を得た。結果として得られるMOFのルミネセンス信号は、水溶性懸濁液から得られる信号よりも、Hf−MOFについて約1200倍強烈であり、Zr−MOFについて約2400倍強烈である。測定の積分時間(または適用量)を10秒から0.01秒へと低下させ、検出ゲインを200から50へと低減させて、検出器の飽和を避けた。固体試料は、溶媒分子の不在下で遥かに多い(80〜160倍)放射線ルミネセンスを発生させることができ、理論によって拘束されることを望むものではないが、これは、X線から可視への変換の主要な機構としての二次拘束電子誘起ルミネセンスと一貫する。
【0231】
更なる体系的研究のために、水溶性懸濁液中、異なる濃度のHf−MOF試料及びZr−MOF試料を、(30、50、及び80kVの管電位、ならびに7.6、30、及び8mAの管電流に基づいて、10秒当たり約0.025、0.25、及び0.05Gyの送達用量で)14.8、16.2、及び29.8keVの有効エネルギーを有するX線に暴露した。
図7A及び7Bに示すように、観察されたMOFの放射線ルミネセンス信号は、3つ全てのX線エネルギーについて、ナノ粒子濃度とともに直線的に変動する。線量の増加が、MOFからの信号の増加をもたらし、より多くのX線光子が吸収されると、より多くの可視光子が発生されることもまた確認された。これらのMOF試料からのX線誘起ルミネセンスのスペクトルを、特別注文したシステムで測定した。試料は、400〜600nmの間の範囲の放射線ルミネセンスピークを示した。X線損傷に対する放射線ルミネセンスの光学安定性もまた、調査した。最大300Gyの累積線量を、Zr−MOF試料及びHf−MOF試料に送達し、非常に低線量(約0.25μGy)のX線照射によって、超高線量の送達前後のX線ルミネセンスを調査した。X線誘起ルミネセンスの実質的な低下は、確認されなかった。
【0232】
実施例7
RuBipyL−UiO NMOF
7.1.[Ru(bipy)
2(bpy−dc)]Cl
2(RuBipyL)の合成
報告される方法で、5,5'−ビス(4−メトキシカルボキシルフェニル)−2,2'−ビピリジン(bpy−de)を調製した。
図11に示すように、丸底フラスコ中、bpy−de(195mg、0.46mmol)及びルテニウム(II)ビス(2,2'−ビピリジン)二塩化物(206mg、0.43mmol)を30mLのエタノール中に溶解させ、窒素保護下で4日間還流させた。その後、この溶液を冷却し、濾過し、真空中で濃縮した。濃縮した溶液にジエチルエーテル(30mL)を添加して、生成物Me
2−RuBipyLを赤色の沈殿物(175mg、45%)としてもたらした。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6):9.06(d,2H,J=8.5Hz)、8.87(d,2H,J=8.0Hz)、8.84(d,2H,J=8.0Hz)、8.60(dd,2H,J=8.5Hz,2.0Hz)、8.22(td,2H,J=8.0Hz,1.2Hz)、8.18(td,2H,J=8.0Hz,1.2Hz)、8.02(d,4H,J=8.5Hz)、7.95(d,2H,J=5.5Hz)、7.84(d,2H,J=5.5Hz)、7.80(d,2H,J=2.0Hz)、7.66(d,4H,J=8.5Hz)、7.59(td,2H,J=6.5Hz,1.0Hz)、7.55(td,2H,J=6.5Hz,1.0Hz)、3.89(s,6H)。
【0233】
Me
2−RuBipyL(175mg、0.19mmol)を、エタノール/水(1:1vol/vol)中、20mLの3M NaOH溶液中に溶解させ、一晩還流させた。その後、この溶液を冷却し、2M HCl(水溶液)で中和させた。この溶媒を真空中で除去した。その後、結果として得られる固体をエタノール中に溶解させ、濾過した。この濾過物を濃縮して、生成物RuBipyLを赤色の固体(146mg、90%)としてもたらした。
1H NMR(500MHz,DMSO−d6):13.24(br s,2H)、9.06(d,2H,J=8.5Hz)、8.88(d,2H,J=8.0Hz)、8.85(d,2H,J=8.0Hz)、8.59(dd,2H,J=8.0Hz,1.5Hz)、8.22(t,2H,J=8.0Hz)、8.18(t,2H,J=8.0Hz)、8.00(d,4H,J=8.0Hz)、7.95(d,2H,J=5.0Hz)、7.84(d,2H,J=5.5Hz)、7.81(d,2H,J=1.5Hz)、7.63(d,4H,J=8.5Hz)、7.60(t,2H,J=6.5Hz)、7.56(t,2H,J=6.5Hz)。
【0234】
7.2.RuBipyL−UiO NMOFの合成及び特性評価
2mLのガラスバイアルに、1.51mgのRuBipyL(1.7μmol)、0.5mLのHfCl
4溶液(DMF中1.4mg/mL、2.2μmol)、及び8μLのトリフルオロ酢酸(0.10mmol)を添加した。この反応混合物を、100℃の炉内で4日間維持した。遠心分離によって橙色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:100vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0235】
X線誘起光線力学療法のための方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0218049号、同第2002/0127224号、及び同第2011/0238001号に記載され、これらの全体がそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる。
【0236】
7.3.X線誘起一重項酸素発生
従来のPDT:
2ドラムバイアル中、4−ニトロソ−N,N−ジメチルアナリン(RNO、25μM)、ヒスチジン(10mM)、及びMOF試料(P−MOFまたはRu−MOF、5μM)の水溶液を調製した。439nmでの溶液吸収を、UV可視分光光度計によって監視した。この溶液に、LED光(P−MOFには640nm、100mWのLED、Ru−MOFには400nmのロングパスフィルタを有する白色光LED)を、0、2、5、10、15、20、30分間照射した。439nm(ΔOD)での吸収の低下を、照射時間に対してプロットした。相対的
1O
2発生速度を、データの線形適合によって評価した。適合等式は、以下の通りであり、
【数12】
【数13】
式中、yは、吸収の低下吸収(任意単位)であり、tは、照射時間(分)である。
【0237】
X−PDT:
水溶液(10、20、または50μM)中、25μMのRNO及び10mMのヒスチジンの存在下でMOF試料を調製した。P−MOFには、1、2、または4GyのX線照射を適用した。Ru−MOFには、全ての試料に8GyのX線線量を与える。分光光度計によって、溶液のUV可視吸収スペクトルを取得した。これらの研究の結果を、
図12A〜12Cに示す。
【0238】
7.4.P−MOF及びRu−MOFの細胞取り込み
DBP−UiO NMOF(P−MOF)及びRuBipyL−UiO NMOF(Ru−MOF)の細胞取り込みを、マウス結腸直腸腺癌CT26、ヒト膠芽腫U87、及びヒト頭頸部癌SQ20Bを含む3つの癌細胞株中で評価した。細胞を、50μMのHf濃度のP−MOFまたはRu−MOFとともに4時間インキュベートした。細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。濃縮硝酸を使用して、細胞を消化させ、ICP−MSによって金属濃度を決定した。
【0239】
P−MOF及びRu−MOFの両方は、約5〜30%の範囲の取り込み効率で、癌細胞によって効率的に吸収された。CT26細胞、U87細胞、及びSQ20B細胞中のP−MOF及びRu−MOFのHf濃度はそれぞれ、3.44±0.13及び6.08±0.10、1.27±0.07及び4.26±0.53、ならびに1.02±0.32及び4.64±0.61nmol/10
5個の細胞であった。
【0240】
更に、CT26細胞、U87細胞、及びSQ20B細胞によって吸収されるRu−MOFのHf対Ruのモル比の計算値はそれぞれ、1.05±0.12、1.01±0.11、及び0.98±0.09であり、これは、未変化のRu−MOFのモル比に一致し、Ru−MOFがその未変化の形態で細胞によって内部移行されたことを示した。
【0241】
7.5.細胞傷害性
7.5.1.UiO NMOFの細胞株依存的細胞傷害性
4つのHNSCC(SQ20B、JSQ3、SCC61、HNSCC135)、2つの膠芽腫(GBM:U251、U87)、1つの結腸癌細胞(HT29)、1つのシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞(OCa:A2780cisR)、1つの乳癌細胞(MCF−7)、及び1つの膵臓癌細胞(PDAC:BxPC−3)を含む10個の異なるヒト癌細胞株に対して、X線照射時のP−MOF及びRu−MOFの細胞傷害性を評価した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。P−MOFまたはRu−MOFを、10μMの配位子濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。250kVp及び10mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。結果を表5に示す。
【0242】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。P−MOF及びRu−MOFの両方は、異なるヒト癌細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量で効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【表5】
【0243】
7.5.2.NMOF濃度依存的細胞傷害性
NMOF濃度依存的細胞傷害性を、U87細胞上に評価した。0〜15μMの範囲の様々な配位子濃度のP−MOFを、細胞とともに4時間インキュベートし、その後、0.5GyでX線照射した。250kVp及び10mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0244】
10μM未満の投薬時、P−MOFの細胞傷害性は、濃度依存的であった。10μMと15μMとの間に、細胞傷害性の有意な差は観察されなかった。
図12A)を参照されたい。
【0245】
7.5.3.X線誘起細胞傷害性の組織透過
可視光またはNIRは1cm未満の組織透過深度を有する一方で、X線は大きな組織透過深度を有する。インビトロLED光照射またはX線照射中、1cmの厚さを有する一片の牛肉、または4.5cmの厚さの牛肉の積み重ねを使用して細胞を覆って、深部腫瘍環境を模倣し、10μMの配位子濃度のP−MOFまたはRu−MOFの細胞傷害性を評価した。照射(X−PDTには0.5Gy及びPDTには180J/cm
2)後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。光は組織を透過することができないため、1cmまたは4.5cmの牛肉で遮断された光活性化PDTについて、細胞傷害性は観察されなかった。X線誘起癌細胞死滅は、牛肉遮断によってわずかに影響があったにすぎず、(牛肉遮断なしでの、約80〜83%の細胞死滅と比較して)4.5cmの遮断で65%超の細胞を効果的に死滅させた。
図13A及び13Bを参照されたい。
【0246】
実施例8
TBP−Hf NMOF
8.1.TBP−Hf NMOFの合成及び特性評価。
2ドラムガラスバイアルに、1mLのHfCl
4溶液[N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)中2mg/mL、6.2μmol]、1mLのテトラ(ベンゾエート)ポルフィリン(H
4TBP)溶液(DEF中1.9mg/mL、2.4μmol)、及び60mgの安息香酸(0.49mmol)を添加した。この反応混合物を、120℃の炉内で2日間維持した。遠心分離によって青紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0247】
TBP−Hf NMOFの粉末X線回折パターンは、TBP−Zr MOFについて報告される構造からシミュレーションされるパターンと適合する。
【0248】
TBP−Hf NMOFのナノ棒形態を、透過型電子顕微鏡(TEM、Tecnai F30 and Tecnai Spirit、FEI,Hillsboro,Oregon,United States of America)によって確認した。隣接する格子縞間の距離は1.61nmであると測定され、これは、報告される構造のd
001=1.66nmと適合する。粒子は、約20〜30nmの幅及び約50〜100nmの長さを有するロッド様形態を呈する。
【0249】
2つのヒトGBM細胞株(U87及びU251)、1つのマウスGBM細胞株(GL261)、1つのマウス結腸直腸腺癌細胞株(CT26)、1つのマウス乳癌細胞株(TUBO)、及び1つのマウス前立腺癌細胞株(TRAMP−C2)に対して、X線照射時のTBP−Hf NMOFの細胞傷害性を評価した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。
図14A〜14Fを参照されたい。TBP−Hf NMOFを、10μMのHf濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0250】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。TBP−Hf NMOFはまた、異なる細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量で効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【0251】
2つのヒトGBM細胞株(U87及びU251)ならびに1つのマウスGBM細胞株(GL261)に対して、X線照射時のTBP−Hf NMOFの細胞傷害性を更に評価し、P−MOFと比較した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。TBP−Hf NMOFまたはP−MOFを、10μMのPS配位子濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0252】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。TBP−Hf NMOFは、異なるGBM細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量でP−MOFよりも効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【0253】
実施例9
UiO NMOFによるX線増感
Hf金属クラスタ、及び無視できる光増感特性を有する配位子から構築された、UiO−66、UiO−67、及びアミノUiO−68を含む3つのHf NMOFを合成した。更に、放射線増感剤として臨床治験にある非結晶性構造を有するHfO
2ナノ粒子も、比較として使用した。
【0254】
9.1.UiO−66、UiO−67、及びアミノUiO−68Hf NMOFの合成及び特性評価
Hf−UiO−66(UiO−66)
HfCl
4(DMF中3.52mg/mL、0.6mL、6.59μmol)の溶液、及びテレフタル酸(H
2DBC、DMF中20mg/mL、0.2mL、24.1μmol)の溶液を混合した。この溶液に、25μLの酢酸を添加した。90℃の炉内で18時間反応させ、遠心分離によって回収した後、白色の粉末生成物をもたらした。母液を90℃で更に6時間維持して、追加の粉末生成物をもたらした。この生成物の2つの部分を組み合わせ、DMF及びエタノールで洗浄した。
【0255】
Hf−UiO−67(UiO−67)
HfCl
4(DMF中4mg/mL、0.5mL、6.24μmol)の溶液、及び4,4−ビフェニルジカルボン酸(H
2BPDC、DMF中6mg/mL、0.5mL、12.4μmol)の溶液を、1ドラムバイアル中で混合した。この溶液に20μLの酢酸を添加した。この混合物を90℃の炉内で18時間加熱し、遠心分離によって白色の粉末生成物を回収し、DMF及びエタノールで洗浄した。
【0256】
アミノUiO−68
アミノUiO−68の合成模式図を、
図15に示す。簡潔には、2,5−ジブロモアニリン(2.00g、8.0mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(4.40g、24.5mmol)、及びCsF(5.82g、38mmol)を、100mLの丸底フラスコ中、窒素保護下で50mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中に懸濁させた。その後、Pd(OAc)
2(0.60g、2.7mmol)及びPPh
3(1.61g、6.1mmol)を添加した。この混合物を、50℃で48時間加熱した。この生成物を、水/ジクロロメタン抽出物、及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.2%〜0.5%のトリエチルアミンで、ジクロロメタン:エチルエーテル=50:1)によって精製した。収率:58%。
1H NMR(クロロホルム−D):δ=8.10(m,4H)、7.65(d,2H)、7.57(d,2H)、7.22(d,1H)、7.09(d,1H)、7.01(s,1H)、3.93(2つの重なった一重線,6H)、3.88(s,2H)。
【0257】
上記(1.68g、4.65mmol)からのアミノ−トリフェニルジカルボキシルメチルエステルを、200mLのTHF中に懸濁させ、40℃まで加熱した。この懸濁液に、100mLの5.5M KOHメタノール溶液を添加し、結果として得られる混合物を40℃で18時間撹拌した。遠心分離によって白色固体を回収し、その後、室温で、100mLのTHF中、12mLのトリフルオロ酢酸で2時間処理した。真空濾過によって黄色の固体生成物(アミノ−TPDC)を単離させ、THF、メタノール、及びエーテルで洗浄した。収率:80%。
1H NMR(DMSO−d6):δ=12.97(br,2H)、8.03(m,4H)、7.74(d,2H)、7.61(d,2H)、7.16(d,2H)、7.02(dd,1H)、5.12(br,2H)。
13C NMR(DMSO−d6):δ=167.66、167.63(COOH)、146.24(C
1')、145.00(C
1")、144.25(C
1)、139.96(C
4')、131.31(C
6')、130.40、130.28(C
3",C
3)、129.98、129.54(C
4",C
4)、129.19(C
2")、126.97(C
2)、125.04(C
2')、115.96(C
5')、114.26(C
3')。
【0258】
HfCl
4(3mL、1.4mg/mL、18μmol)及びアミノ−TPDC(3mL、2mg/mL、18μmol)のDMF溶液を、20mLのガラスバイアルに添加し、この混合物を10mLまで希釈し、その後、750μLの酢酸を添加した。この混合物を、80℃の炉内で5日間維持した。遠心分離によって生成物を回収し、DMF、5%のトリエチルアミンエタノール溶液、及びエタノールで洗浄し、明るい黄色を有するUiO NMOFをもたらした(収率:約20%)。
【0259】
9.2.細胞取り込み
3つのNMOF及びHfO
2ナノ粒子の細胞取り込みを、まずSQ20B細胞上で評価した。50μMのHf濃度のNMOFまたはHfO
2ナノ粒子を、SQ20B細胞とともに4時間インキュベートした。細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。濃縮硝酸を使用して、細胞を消化させ、ICP−MSによって金属濃度を決定した。
【0260】
3つのNMOF及びHfO
2ナノ粒子は、4時間のインキュベーション期間以内に細胞によって効率的に吸収されることができる。NMOF及びHfO
2ナノ粒子の細胞取り込み量は、アミノUiO−68>UiO−67≒UiO−66≒HfO
2ナノ粒子の順であった。
図16の左パネルを参照されたい。
【0261】
9.3.インビトロ放射線増感
3つのHf NMOF、及びX線照射によって誘起されたHfO
2ナノ粒子の細胞傷害性を、SQ20B細胞に対して評価した。細胞を、異なるHf濃度のUiO−66、UiO−67、アミノUiO−68、またはHfO
2ナノ粒子とともに4時間インキュベートし、その後、異なる線量でX線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0262】
アミノUiO−68NMOFは、1Gyよりも高いX線照射線量で効率的な癌細胞死滅(50%超)によって証明される放射線増感能力を呈した。UiO−66、UiO−67、及びHfO
2ナノ粒子は、中程度の放射線増感特徴を示した。
図16の右パネルを参照されたい。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、アミノUiO−68のより高い取り込み、特徴的な薄プレート様形態、及びより大きな細孔/チャネルが、好ましい放射線増感に寄与したと考えられる。しかしながら、P−MOFはアミノUiO−68NMOFよりも有意に高い細胞死滅を誘導し、これは、放射線増感以外の他の機構が効率的な癌細胞死滅プロセスに関与し得ることを示した。
【0263】
X線照射は、核中のDNAの二本鎖切断(DSB)を引き起こす。H2AFXは、細胞中のDSBを評価するための高感度の標的である。照射時にRu−MOFにより、及びLED光照射(630nm)時にP−MOFにより引き起こされるDSBを、SQ20B細胞中でのH2AFXアッセイによって調査した。X線照射のために、SQ20B細胞を10μMのHf濃度のRu−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、0、0.1、0.2、0.5、及び1GyでX線照射した。1GyのX線照射でPBSとともにインキュベートしたSQ20B細胞が、対照としての役割を果たした。LED光照射のために、SQ20B細胞を10μMのHf濃度のP−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、100mW/cm
2のフルエンス率で30分間LED(180J/cm
2)光照射した。X線または光照射の直後に、H2AFXアッセイを実行した。核をDAPIで染色した。細胞をCLSMで撮像した。赤色の蛍光は、抗体標識したH2AFXで染色されたDSBを示した。Ru−MOF及び0.1GyのX線照射で治療した細胞について、DSBは観察されなかった。X線線量の増加とともに、最低0.2Gyで核中の有意なDSBが観察された。1Gyの照射でPBSで治療した細胞、または180J/cm
2のLED光照射でP−MOFで治療した細胞において、DSBは観察されなかった。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、これらの結果を考慮すると、DSBがX線照射によって誘起されたRu−MOFの細胞死滅に関与する一方で、180J/cm
2での従来のPDTはDSBを引き起こさなかったことを意味する。
【0264】
実施例10
X線誘起光線力学療法(X−PDT)
生細胞中の
1O
2発生を、SOSGによって検出した。簡潔には、SQ20B細胞をペトリ皿中に播種し、24時間増殖させた。その後、この培地を1μMのSOSGを含有する新鮮な培地と交換して、細胞をSOSGで前負荷した。30分間インキュベートした後、細胞をPBSによって3回洗浄して、過剰量のSOSGを除去した。細胞を、PBS、10μMのHf用量のP−MOF、またはRu−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、PBSで3回洗浄して、過剰量のNMOFを除去した。細胞に、1Gyの線量のX線照射を適用した。CLSMを使用して、細胞の内側の緑色の蛍光を検出することによって、生細胞中に発生した
1O
2を可視化した(励起/放射:504/525nm)。X線照射なしでP−MOFもしくはRu−MOFで治療した細胞中、またはPBS及びX線照射で治療した細胞中には、緑色の蛍光は観察されなかった。
【0265】
P−MOF及びX線照射またはRu−MOF及びX線照射で治療した細胞中には、緑色の蛍光が観察され、これは、X線照射によって内部移行したNMOFによって、
1O
2が発生したことを示した。
【0266】
実施例11
腫瘍内注射後のNMOFの体内分布
マウス腺癌細胞CT26を、BALB/cマウスの右側腹部領域に皮下注射(100万個の細胞/マウス)した。腫瘍サイズが100mm
3に達した後、50μLのP−懸濁液を、10μmol/kgのHf用量でマウスに腫瘍内注射した。注射直後及び注射の12時間後にマウスを屠殺した。注射の12時間後、マウスを、腫瘍部位に2GyのX線照射を受けさせ、注射の36時間、60時間、84時間、108時間、及び132後に屠殺した。各群及び時点について、3匹のマウスを屠殺した。血液、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び膀胱を収集して、ICP−MSによってHf濃度を決定した。腫瘍を収集し、飽和K
3PO
4で均質化した。DMSO、その後、遠心分離によって、DBP配位子を更に抽出した。上清をUV可視に供して、腫瘍中のDBP配位子濃度を決定した。沈殿物を凍結乾燥し、濃縮硝酸により消化させ、ICP−MSに供して、腫瘍中のHf濃度を決定した。
【0267】
血液、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び膀胱において、無視できるHfが経時的に観察された。
図17に示すように、DBP配位子対Hfのモル比は、経時的に約1で一定に維持され、これは、腫瘍内注射の5.5日後にP−MOFが未変化であることを示した。しかしながら、腫瘍中のNMOF濃度は経時的に低下し、注射の4.5日後に有意な低下を示し、腫瘍中には75%未満のIDが残っていた。
【0268】
実施例12
X線誘起療法のインビボ抗癌有効性
12.1 SQ20Bマウスモデルの皮下異種移植上に対するインビボ抗癌有効性
SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
6個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、4つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+2Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+2Gy/画分、(3)3画分についてRu−MOFを10μmol/kg+2Gy/画分、(4)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が100mm
3に達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOF、Ru−MOF、またはPBSを腫瘍内注射した。P−MOFがより大きな腫瘍において腫瘍阻害をもたらし得るかどうかを調査するために、腫瘍が250mm
3に達した時、P−MOFに、10μmol/kgのHf用量で腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0269】
NMOFは、対照群と比較して、体重発達及び主要な器官の組織学の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。
図18A〜18Eを参照されたい。100mm
3の腫瘍で開始した研究について、NMOF群中の腫瘍重量は、対照群よりも53〜65倍低かった。
【0270】
12.2.U87マウスモデルの皮下異種移植に対するインビボ抗癌有効性
U87細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
6個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、2つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを10μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が100mm
3に達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、単回X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの26日後に全てのマウスを屠殺した。
【0271】
単回NMOF注射及び非常に低い用量(0.5Gy)での単回X線照射は、腫瘍後退の成功をもたらした。
図18A〜18Eを参照されたい。NMOF群中の腫瘍重量は、対照群よりも51倍低かった。
【0272】
12.3.PC−3マウスモデルの皮下異種移植に対するインビボ抗癌有効性
SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
6個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、4つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+2Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が100mm
3に達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOF、Ru−MOF、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0273】
NMOFは、対照群と比較して、体重発達の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。
図18A〜18Eを参照されたい。
【0274】
12.4.皮下CT26マウスモデルに対する抗癌効果
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)3画分についてP−MOFを1μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が150mm
3に達した時、10μmol/kgまたは1μmol/kgのHf用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0275】
10μmol/kgの用量で注射したNMOFは、対照群と比較して、体重発達の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。
図18A〜18Eを参照されたい。1μmol/kgの用量で注射したNMOFもまた、非常に低いX線線量で腫瘍阻害の成功もたらした。
【0276】
実施例13
免疫療法と組み合わせたNMOFのインビボ抗癌有効性及びアブスコパル効果
13.1.P−MOF/INCB24360の合成及び特性評価
2ドラムガラスバイアルに、MedKoo Biosciences(Chapel Hill,North Carolina,United States of America)から得た2.28mgのINCB24360(8.4μmol)、及び1.0mLのP−MOF懸濁液(エタノール中2.0mg/mL)を添加した。超音波処理の助けによってINCB24360を溶解させた後、1.0mLの水を添加した。この混合物を暗所で12時間撹拌した。遠心分離によって充填したMOFを回収し、50%のエタノール(v/v)及び水によって洗浄した。
【0277】
Shimadzu TGA−50熱重量分析器(Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で、INCB24360の充填前後、P−MOF試料に対して熱重量分析(TGA)を実行した。加熱速度を3℃/分に設定し、試料を空中で700℃まで加熱した。重量パーセンテージを、温度に対してプロットした。純粋なINCB24360は、約200℃で約90%の重量損失を有する。薬物充填の計算値は、以下の等式に従って、9.4重量%であった。
【数14】
【0278】
13.2.皮下CT26及びTUBOマウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、CT26及びTUBO側腹部担腫瘍BALB/cマウスを含む2つの免疫適格性モデルに対して評価した。CT26またはTUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を右側腹部領域に、CT26またはTUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10
5個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、2つまたは3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを10μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を10μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約100mm
3に達した時、2μmol/kgのINCB24360用量に等しい7μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3日連続で毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0279】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮させ、これは、組み合わせ療法が、結腸癌及び乳癌の両方の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。
図19及び20を参照されたい。
【0280】
13.3.皮下TRAMP−C2マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下TRAMP−C2担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。TRAMP−C2細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
6個の細胞)を右側腹部領域に、TRAMP−C2細胞懸濁液(1匹のマウス当たり1×10
6個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約200mm
3に達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0281】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も完全に根絶させ、これは、組み合わせ療法が、前立腺癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。
図21を参照されたい。
【0282】
13.4.皮下MC38マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下MC38担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。MC38細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を右側腹部領域に、MC38細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10
5個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約250mm
3に達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0283】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退/根絶をもたらした(3つ中2つの腫瘍を根絶した)だけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮させ、これは、組み合わせ療法が、結腸癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。
図22を参照されたい。
【0284】
13.5.皮下GL261マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下GL261担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。GL261細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を右側腹部領域に、GL261細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10
5個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約200mm
3に達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0285】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退/根絶をもたらした(3つ中2つの腫瘍を根絶した)だけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮/根絶させ(3つ中2つの腫瘍を根絶した)、これは、組み合わせ療法が、膠芽腫癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。
図23を参照されたい。
【0286】
13.6.P−MOF/INCB24360とPD−L1抗体との組み合わせ療法による、皮下TUBOマウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)とPD−L1抗体とを組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下TUBO担腫瘍BALB/cマウスを含む2つの免疫適格性モデルに対して評価した。TUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を右側腹部領域に、TUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10
5個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy+PD−L1抗体、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gy+PD−L1抗体を含めた。腫瘍が約200mm
3に達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。X線照射の12時間後、200μgのPD−L1抗体を群(2)及び(3)の各マウスに腹腔内注射した。NMOF及びPD−L1抗体を、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0287】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラスX線照射プラスPD−L1抗体用量は、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も完全に根絶させ、これは、組み合わせ療法が、乳癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。P−MOFの局所注射プラスX線照射プラスPD−L1抗体もまた、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶、及び遠隔の左の腫瘍の腫瘍根絶/後退(3つ中1つの腫瘍を根絶した)をもたらした。
図24を参照されたい。
【0288】
実施例14
P−MOFのペグ化
エタノール中P−MOF(1mg/mL)を、それぞれ1:1、1:2、1:5、及び1:10のNMOF:DSPE−PEG2000重量比で、THF中DSPE−PEG2000(5mg/mL)と混合した。窒素吹き込みによってこの懸濁液を50μLまで濃縮し、その後、1分間ボルテックスした。この懸濁液に1ミリリットルの水を添加した。この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理して、ペグ化P−MOFをもたらした。
【0289】
ペグ化P−MOFの粒径及び多分散指数(PDI)を、動的光散乱(DLS)測定によって決定した。表6は、異なる重量比のNMOF:DSPE−PEG2000で製剤化したペグ化P−MOFのZ平均、数平均、及びPDIをまとめる。50μg/mLの濃度でエタノール中及び水中に分散したP−MOFの粒径及びPDIを、比較として決定した。
【表6】
【0290】
P−MOFのペグ化の安定性を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で更に評価した。ペグ化P−MOF(50μg)を13000rpmで15分間遠心分離した。沈殿物を1mLのPBS中に分散させ、その後、5分間超音波処理した。PBS中のペグ化P−MOFの粒径及びPDIを、DLS測定によって決定した。表7に示すように、ペグ化P−MOFの粒径は、水中で決定した粒径と比較して、PBS中に分散させた後に更に低下し、これは、コロイド安定性及びP−MOFとDSPE−PEGとの間の強度の相互作用を示した。したがって、表面修飾NMOFは、より良好な生体適合性及び血液循環特性を有し得る。いくつかの実施形態において、それらは、全身注射を介して投与されてもよい。
【表7】
【0291】
実施例15
表在癌の治療におけるX線誘起光線力学療法のためのX線装置の精密化
15.1.異なるX線装置を使用した、皮下CT26担腫瘍マウスモデルに対するP−MOFのインビボ抗癌有効性。
図25A〜25Fは、(
図25A)選択された減衰器の透過後に異なるエネルギーを有する、X線光子の画分の計算値、(
図25B)銅減衰器によるフィルタリング後、120kVpでのW−標的源からのX線スペクトルの計算値、(
図25C)銅減衰器によるフィルタリング、総光子数による正規化後、120kVpでのW−標的源からのX線スペクトルの計算値、(
図25D)Hf及び水のX線質量エネルギー吸収係数の計算値、(
図25E)Hf及び水のX線質量エネルギー吸収係数の割合の計算値、ならびに(
図25F)異なるエネルギーでのX線光子の透過深度の計算値のグラフを示す。
【0292】
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+1Gy/画分を含めた。群(1)及び(2)は、以下のX線装置、225kVp、13mA、0.3mmのCuフィルタを採用する。群(3)は、別のX線装置、120kVp、20mA、2mmのCuフィルタを採用する。腫瘍が100mmに達した時、10μmol/kgの配位子用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0293】
225kVpのX線装置は、有意な腫瘍後退をもたらした一方で、120kVpのX線装置は、第1の治療の6日後、3匹中2匹のマウスで完全な腫瘍根絶を達成した。
図26A及び26Bを参照されたい。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、この結果は、特定の実施形態において、X線送達パラメータの精密化によって、P−MOFの治療効果が更に亢進され得ることを示した。
【0294】
15.2.異なるX線装置を使用した、皮下CT26担腫瘍マウスモデルに対するTBP−Hfのインビボ抗癌有効性。
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)5つの画分についてTBP−Hfを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)5画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。群(1)及び(2)は、以下のX線装置、225kVp、13mA、0.3mmのCuフィルタを採用する。群(3)は、別のX線装置、120kVp、20mA、2mmのCuフィルタを採用する。腫瘍が100mm
3に達した時、TBP−HfまたはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。
【0295】
225kVpのX線装置は、中等度の腫瘍増殖阻害を示した一方で、120kVpのX線装置は、CT26マウスモデル上で有意な腫瘍後退を達成した。
図26A及び26Bを参照されたい。繰り返すが、いかなる1つの理論によっても拘束されるものではないが、この結果は、特定の実施形態において、X線送達パラメータの精密化によって、TBP−Hfの治療効果が亢進され得ることを示した。
【0296】
実施例16
皮下CT26担腫瘍マウスモデル及び担4T1マウスモデルに対するPEG@TBP−Hfのインビボ抗癌有効性
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10
6個の細胞)または4T1細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10
5個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。CT26モデルについて、比較のために、3つの群、つまり、(1)5つの画分についてPBS+1Gy/画分、(2)5つの画分についてペグ化TBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分、(3)5つの画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。X線を、120kVp、20mAで、かつ2mmのCuフィルタにより送達した。腫瘍が100mm
3に達した時、TBP−Hf、ペグ化TBP−Hf、またはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。TBP−Hfについて、第1の照射後2日目に55%腫瘍量が低減し、ペグ化TBP−Hfについて、第1の照射後3日目に44%腫瘍量が低減しており、第1のX線照射後の最初の6日間、TBP−Hfは、腫瘍増殖後退に関してペグ化TBP−Hfよりも優れていた。しかしながら、TBP−Hfが90%の腫瘍量の低減を達成し、ペグ化TBP−Hfが88%の腫瘍量の低減を達成した第1の照射後6日目以降、腫瘍増殖後退について、第1の照射後最大9日目まで、TBP−Hfとペグ化TBP−Hfとの間に統計的有意差は観察されなかった。
【0297】
4T1モデルについて、比較のために、3つの群、つまり、((1)5つの画分についてPBS+1Gy/画分、(2)5つの画分についてペグ化TBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分、(3)5つの画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。X線を、120kVp、20mAで、かつ2mmのCuフィルタにより送達した。腫瘍が100mm
3に達した時、TBP−Hf、ペグ化TBP−Hf、またはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅
2×長さ)/2のように計算した。腫瘍増殖後退について、ペグ化TBP−HfとTBP−Hfとの間に差は観察されなかった。両方の製剤は、第1の照射後3日目及び6日目にそれぞれ、50%超及び80%超の腫瘍量低減を達成した。
【0298】
実施例17
MOFの脂質コーティング
DOTAPコーティング(TBP−Hf@DOTAP)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)及び1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(塩化物塩、DOTAP)(3mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、50mLの5%グルコース水溶液中に再分散させた。
【0299】
DOTAP+DOPCコーティング(TBP−Hf@DOTAP/DOPC)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)、1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC、60mL、エタノール中5mg/mL)、及びDOTAP(3mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、50mLの5%グルコース水溶液中に再分散させた。
【0300】
DOTAP+DSPE−PEGコーティング(TBP−Hf@DOTAP/DSPE−PEG)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)、DSPE−PEG
2k(0.12mL、エタノール中5mg/mL)、及びDOTAP(異なる製剤に、3mL、6mL、12mL、または30mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、超音波処理によって少量の水中に再分散させ、−20℃の冷凍庫内で凍結させた。凍結乾燥後、最後に紫色の粉末生成物をもたらした。
【0301】
脂質コーティングされたMOFのDLS測定データ及びゼータ(ζ)電位を、以下表8に示す。
【表8】
【0302】
本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるであろう。更に、上述の記述は説明が目的であるにすぎず、限定は目的ではない。