特許第6731404号(P6731404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6731404光線力学療法、X線誘起光線力学療法、放射線療法、化学療法、免疫療法、及びこれらの任意の組み合わせのためのナノ粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731404
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】光線力学療法、X線誘起光線力学療法、放射線療法、化学療法、免疫療法、及びこれらの任意の組み合わせのためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/22 20060101AFI20200716BHJP
   C07D 213/55 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 279/36 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20200716BHJP
   C08B 37/16 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20200716BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200716BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200716BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200716BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20200716BHJP
   C07F 9/572 20060101ALI20200716BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20200716BHJP
【FI】
   C07D213/22CSP
   C07D213/55
   C07D279/36
   C07D487/22
   C08B37/16
   C07D209/14
   A61K41/00
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   C07F9/572 Z
   !C07F15/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】87
(21)【出願番号】特願2017-520324(P2017-520324)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-532340(P2017-532340A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015055574
(87)【国際公開番号】WO2016061256
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】62/063,770
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/173,103
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316015143
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェンビン リン
(72)【発明者】
【氏名】チュンバイ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】クァングダ ル
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−516221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135571(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0218049(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/188763(WO,A1)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02896797(CA,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0112131(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0076851(US,A1)
【文献】 Inorganic Chemistry,2013年,52,pp.12661-12667
【文献】 Inorganic Chemistry,2012年,51,pp.12600-12602
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2013年,135,pp.955-958
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2012年,134,pp.7211-7214
【文献】 J. Am. Chem. Soc.,2012年,134,pp.19895-19908
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
C07F
C08B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体(MOF)であって、
a)光増感剤と、
b)架橋配位子を介してともに連結された複数の金属含有二次構成単位(SBU)と、を含み、該SBUが、X線を吸収することができる金属カチオンを含有する金属オキソクラスタであり、該金属カチオンがHf及びBiから選択され、各架橋配位子が、2つのみのカルボキシレート基を含んで2つのみのSBUを結合することができ、更に該架橋配位子のうちの少なくとも1つが、該光増感剤または該光増感剤の誘導体を含む、MOF。

【請求項2】
前記MOF中の空洞またはチャネル内に位置する、ポリオキソメタレート、金属ナノ粒子、または金属酸化物ナノ粒子のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のMOF。
【請求項3】
少なくとも1つの架橋配位子が、ポルフィリン、クロリン、又はルテニウム−ビピリジン錯体を含む、請求項に記載のMOF。
【請求項4】
少なくとも1つの架橋配位子が、ジフェニル−ジ(ベンゾエート)ポルフィリン、ジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(ビピリジン)、またはジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(フェニルピリジン)を含む、請求項に記載のMOF。
【請求項5】
少なくとも1つの架橋配位子が、ポルフィリン系配位子、クロリン系配位子、又はアントラセン系配位子である、請求項1に記載のMOF。
【請求項6】
前記架橋配位子のうちの少なくとも1つが、5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(DBP)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン(DBC)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;から選択される、請求項に記載のMOF。
【請求項7】
更に、非共有結合的に結合した白金系薬物、テモゾロミド、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、ペメトレキセド、メトトレキサート、またはIDO阻害剤を含む、請求項1に記載のMOF。
【請求項8】
更に、共有結合または静電気的に結合したポリエチレングリコール(PEG)部分または1つ以上の脂質分子を含む、請求項1に記載のMOF。
【請求項9】
金属有機構造体(MOF)であって、
a)光増感剤と、
b)架橋配位子を介してともに連結された複数の金属含有二次構成単位(SBU)と、を含み、該SBUが、Hf金属オキソクラスタであり、該架橋配位子のうちの少なくとも1つが、該光増感剤または該光増感剤の誘導体を含み、該架橋配位子のうちの少なくとも1つが、5,10,15,20−テトラ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(TBP)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体を含み、該MOFは、更に、該MOF内に非共有結合的に捕捉されたIDO阻害剤を含む、MOF
【請求項10】
金属有機構造体(MOF)であって、
a)光増感剤と、
b)架橋配位子を介してともに連結された複数の金属含有二次構成単位(SBU)と、を含み、該SBUが、Hf金属オキソクラスタであり、該架橋配位子のうちの少なくとも1つが、該光増感剤または該光増感剤の誘導体を含み、該架橋配位子のうちの少なくとも1つが、5,10,15,20−テトラ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(TBP)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体を含み、該MOFは、更に、共有結合または静電気的に結合した、ポリエチレングリコール(PEG)部分または1又はそれ以上の脂質を含む、MOF。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2014年10月14日に出願された米国仮特許出願第62/063,770号、及び2015年6月9日に出願された米国仮特許出願第62/173,103号の優先権を主張し、これらのそれぞれの開示は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利益
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた助成金第U01−CA151455号、同第U01−CA198989号、及び同第1S10RR026988−01号の下、政府の支援で行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示の主題は、光線力学療法(PDT)、X線誘起光線力学療法(X−PDT)、放射線療法(RT)、化学療法、免疫療法、またはこれらの任意の組み合わせのための、金属有機構造体(MOF)材料(ナノスケール金属有機構造体(NMOF)を含む)に基づくナノ担体プラットフォームを提供する。いくつかの実施形態において、本プラットフォームはPDTのためのものである。いくつかの実施形態において、本プラットフォームはX−PDTのためのものである。いくつかの実施形態において、本プラットフォームはRTに使用される。いくつかの実施形態において、本プラットフォームはX−PDTとRTとの組み合わせに使用される。いくつかの実施形態において、本プラットフォームは、PDT、RT、またはX−PDTと、免疫療法との組み合わせに使用される。いくつかの実施形態において、本プラットフォームは、化学療法と、PDTと、免疫療法との組み合わせに使用される。いくつかの実施形態において、本プラットフォームは、化学療法と免疫療法との組み合わせに使用される。いくつかの実施形態において、本プラットフォームは、RTと、化学療法と、免疫療法との組み合わせに使用される。
【表11】
【表12】
【背景技術】
【0004】
光線力学療法(PDT)は、有効な抗癌治療の選択肢であり得る。PDTは、腫瘍局在化光増感剤(PS)を投与し、その後、光活性化して、細胞アポトーシス及びネクローシスを引き起こす高度に細胞傷害性の活性酸素種(ROS)、特に一重項酸素()を発生させることを伴う。PS及び腫瘍領域に対する露光の両方を局在化することによって、PDTは、局所細胞を保存しながら、腫瘍細胞を選択的に死滅させることができる。PDTは、頭頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、中皮腫、ならびに膵臓癌を含む多くの異なる種類の癌を有する患者を治療するために使用されている。PDTは、周囲の細胞をより破壊せず、美的及び機能的障害を低減するため、頭頸部における癌を治療するためのPDTの使用は、伝統的な治療モダリティ、例えば、外科手術及び照射と比較して、特に有利である。PDTに最も一般に使用されるPSの中には、PHOTOFRIN(登録商標)、VERTEPORFIN(登録商標)、FOSCAN(登録商標)、PHOTOCHLOR(登録商標)、及びTALAPORFIN(登録商標)などのポルフィリン分子がある。しかしながら、それらは、ROS発生のための効率的な光化学を有するものの、全身投与後のそれらの最適以下の腫瘍集積は、診療所におけるPDTの有効性を制限し得る。
【0005】
したがって、PS治療の送達(例えば、標的化された送達)を改善するための追加の送達ビヒクルに対する継続する必要性が存在する。具体的には、治療有効性を増加させるために、他の治療(例えば、他の化学療法剤及び免疫療法剤)と組み合わせてPSを送達することができる送達ビヒクルに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、a)光増感剤と、b)架橋配位子を介してともに連結された複数の金属含有二次構成単位(SBU)とを含む金属有機構造体(MOF)を提供し、任意で、SBUは、金属オキソクラスタである。いくつかの実施形態において、SBUのうちの1つ以上は、X線を吸収することができる金属カチオンを含有する。いくつかの実施形態において、SBUのうちの1つ以上は、Hf、ランタニド金属、Ba、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、及びBiを含む群から選択される金属イオンを含有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、MOFは、MOF中の空洞またはチャネル内に位置する、ポリオキソメタレート、金属ナノ粒子、または金属酸化物ナノ粒子のうちの少なくとも1つを更に含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、複数の配位部位を含む有機化合物を含み、任意で、各架橋配位子は、2〜10個の配位部位を含む。いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、2つまたは3つのSBUに結合することができる。いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、少なくとも2つの基を含み、該2つの基のそれぞれは個々に、カルボキシレート、芳香族または非芳香族窒素含有基、フェノール、アセチルアセトネート、ホスホネート、及びホスフェートを含む群から選択され、任意で、該芳香族窒素含有基は、ピリジン基である。
【0009】
いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの少なくとも1つは、光増感剤または光増感剤の誘導体を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ポルフィリン、クロリン、クロロフィル、フタロシアニン、ルテニウム−ビピリジン錯体、またはイリジウム−ビピリジン錯体を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ジフェニル−ジ(ベンゾエート)ポルフィリン、ジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(ビピリジン)、テトラ(ベンゾエート)ポルフィリン、またはジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(フェニルピリジン)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、
【化1】
である。
【0010】
いくつかの実施形態において、SBUのうちの1つ以上は、酸化物及びOHから選択されるアニオンを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ポルフィリン系配位子、クロリン系配位子、バクテリオクロリン系配位子、大環状π−共役系、ボロン−ジピロメテン(BODIPY)誘導体、またはジサリシリデン−1,2−シクロヘキシリデンジアミン誘導体である。いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの少なくとも1つは、5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(DBP)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン(DBC)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,15−ジ(p−ベンゾアート)バクテリオクロリン(DBBC)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,10,15,20−テトラ(p−ベンゾアート)ポルフィリンまたはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,10,15,20−テトラ(p−ピリジル)ポルフィリン、フタロシアニン−オクタカルボン酸(任意で、金属で錯体化される);ジ(5'−ベンゾアートサリシリデン)−1,2−シクロヘキシリデンジアミンの白金またはパラジウム錯体;フタロシアニン(任意で、金属で置換される);ならびにモテクサフィンルテチウムから選択される。いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの少なくとも1つは、プロトポルフィリンIX、パドポルフィン;テトラ(m−ヒドロキシフェニル)クロリン(m−THPC);NPe6、クロリンe6、ロスタポルフィン、及びこれらの誘導体を含む群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、光増感剤は、共有結合染料であり、任意で、該染料は、アミドまたはチオ尿素結合を介して共有結合される。いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの少なくとも1つは、パラ−クアテルフェニルジカルボン酸誘導体である。いくつかの実施形態において、MOFは、
【化2】
または
【化3】
を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、光増感剤は、MOF中に非共有結合的に捕捉された染料である。いくつかの実施形態において、染料は、トルイジンブルー、メチレンブルー、ナイルブルー、ヒペリシン、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、及びカルコゲノピリリウムを含む群から選択される化合物または化合物の誘導体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、光増感剤は、プロトポルフィリンIX、パドポルフィン;テトラ(m−ヒドロキシフェニル)クロリン(m−THPC);NPe6、クロリンe6、ロスタポルフィン、及びこれらの誘導体を含む群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、MOFは、非共有結合的に結合した白金系薬物、テモゾロミド、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、ペメトレキセド、メトトレキサート、またはIDO阻害剤を更に含み、任意で、該IDO阻害剤は、ICBN24360、NLG−919、1−メチル−D−トリプトファン、及び1−メチル−L−トリプトファンを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、MOFは、共有結合または静電気的に結合したポリエチレングリコール(PEG)部分または1つ以上の脂質分子を更に含み、任意で、該1つ以上の脂質分子は、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、及び1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)](DSPE−PEG)を含む群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、光増感剤と、架橋配位子を介してともに連結された複数のSBU(任意で、SBUは、金属オキソクラスタである)とを含むMOFと、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者における疾患を治療するための方法を提供し、本方法は、患者に、光増感剤と、架橋配位子を介してともに連結された複数のSBU(任意で、SBUは、金属オキソクラスタである)とを含むMOFを投与することと、患者に可視光または近赤外光を照射することとを含む。いくつかの実施形態において、患者は、患者の皮膚、血液、及び胃腸管から選択される解剖学的構造の部分を照射される。いくつかの実施形態において、疾患は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、及び膵臓癌から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者における疾患を治療するための方法を提供し、本方法は、患者に、光増感剤と、架橋配位子を介してともに連結された複数のSBU(任意で、SBUは、金属オキソクラスタである)とを含むMOFを投与することと、患者の少なくとも一部分にX線を照射することとを含む。いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの1つ以上は、9,10−アントラセニルビス(安息香酸)などのアントラセン系リンカーを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、疾患は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、及び膵臓癌から選択される。いくつかの実施形態において、疾患は、転移性癌である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者に免疫療法剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、PD−1/PD−L1抗体、IDO阻害剤、CTLA−4抗体、OX40抗体、TIM3抗体、LAG3抗体、PD−1/PD−L1を標的とするsiRNA、IDOを標的とするsiRNA、及びCCR7を標的とするsiRNAを含む群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者における疾患を治療するための方法を提供し、本方法は、患者に、シンチレーターと、光増感剤を含むナノ粒子とを投与することと、患者の少なくとも一部分にX線を照射することと、患者に免疫療法剤を投与することとを含む。いくつかの実施形態において、疾患は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、皮膚癌、結合組織癌、脂肪癌、肺癌、胃癌、肛門生殖器癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、前立腺癌、中枢神経系癌、網膜癌、血液癌、神経芽細胞腫、多発性骨髄腫、リンパ癌、及び膵臓癌から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者に追加の癌治療を投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の癌治療は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、及び遺伝子療法を含む群から選択され、任意で、該化学療法は、(a)患者に、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ミトキサントロン、パクリタキセル、ジギトキシン、ジゴキシン、及びセプタシジンを含む群から選択される薬物を投与すること、ならびに/または(b)患者に、ポリマーミセル製剤、リポソーム製剤、デンドリマー製剤、ポリマー系ナノ粒子製剤、シリカ系ナノ粒子製剤、ナノスケール配位ポリマー製剤、ナノスケール金属有機構造体製剤、及び無機ナノ粒子製剤を含む群から選択される薬物製剤を投与すること、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、抗CD52抗体、抗CD20抗体、抗CD20抗体、抗CD47抗体、抗GD2抗体、放射性標識した抗体、抗体−薬物共役体、サイトカイン、ポリサッカライドK、及びネオ抗原を含む群から選択され、任意で、該サイトカインは、インターフェロン、インターロイキン、または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)であり、更に任意で、該サイトカインは、IFN−α、INF−γ、IL−2、IL−12、及びTNF−αを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、アレムツズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、ゼヴァリン、アドセトリス、カドサイラ、及びオンタックを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、CTLA−4阻害剤、IDO阻害剤、及びCCR7阻害剤を含む群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、疾患は、転移性癌である。
【0025】
いくつかの実施形態において、患者にX線を照射することは、タングステン標的を使用してX線を発生させることを含む。いくつかの実施形態において、タングステン標的を使用して発生させたX線は、患者を照射する前にフィルタを通過し、任意で、該フィルタは、少なくとも20の原子番号を有する元素を含み、更に任意で、該フィルタは、銅を含む。いくつかの実施形態において、フィルタは、5mm未満、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、0.5mm未満、0.4mm未満、0.3mm未満、0.2mm未満、または0.1mm未満である厚さを有する。いくつかの実施形態において、X線は、230kVp未満、225kVp未満、200kVp未満、180kVp未満、160kVp未満、140kVp未満、120kVp未満、100kVp未満、または80kVp未満であるピーク電位を使用して発生される。
【0026】
いくつかの実施形態において、X線は、ピーク電位及び電流を使用して発生され、任意に、X線照射による前記患者におけるDNA損傷を最小化し、かつ前記シンチレーターによるX線吸収を最大化するように選択されたフィルタを使用して発生される。いくつかの実施形態において、X線は、120kVpであるピーク電位を使用して発生される。
【0027】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ランタニドを含む。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ランタニドナノ粒子を含み、任意で、該シンチレーターは、ランタニドコアシェルナノ粒子を含み、更に任意で、該ランタニドコアシェルナノ粒子のシェルは、ランタニドカルコゲニドを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ハフニウム、ジルコニウム、またはセリウムを含むMOFを含み、任意で、該シンチレーターは、M(μ−O)(μ−OH)を含み、式中、Mは、ハフニウム、ジルコニウム、またはセリウムであり、Lは、9,10−アントラセニルビス安息香酸である。いくつかの実施形態において、光増感剤は、MOFに共有結合され、任意で、該共有結合は、アミド共役、エステル共役、チオ尿素共役、クリックケミストリー、またはジスルフィド結合共役を通して形成される。
【0029】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、炭素ドットを含む。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、コアシェルナノ粒子を含み、該シェルは、硫化亜鉛を含み、かつ該コアは、遷移金属またはランタニド金属を含む。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、金、白金、またはイリジウムを含むナノ粒子を含む。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ランタニドアルミニウムガーネットまたはフッ化ランタニドを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、光増感剤は、配位結合を通してシンチレーターに結合する。いくつかの実施形態において、光増感剤は、カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシ基、アミノ基、またはホスフェート基を含み、シンチレーターは、金属を含み、該カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、またはホスフェート基は、該金属に結合する。
【0031】
いくつかの実施形態において、光増感剤及びシンチレーターは連結され、該連結は、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリ(マレイン酸)、またはC−C15直鎖もしくは分岐アルキル鎖を含む。いくつかの実施形態において、光増感剤は、以下、
【化4】
若しくは
【化5】
のうちの1つ、またはこれらのうちの1つの脱プロトン化形態を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、MOF中またはメソポーラスシリカ中に被包される。いくつかの実施形態において、光増感剤は、メソポーラスシリカの細孔中に捕捉されるか、またはMOFに共有結合される。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者における疾患を治療するための方法を提供し、本方法は、患者にナノ粒子化学療法剤を投与することと、患者に免疫療法剤を投与することとを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者に、X線吸収剤及び任意で光増感剤を投与することと、患者の少なくとも一部分にX線を照射することとを更に含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子化学療法剤は、X線吸収剤を含む金属有機構造体(MOF)であり、任意で、該MOFは、X線を吸収することができる金属カチオンを含む二次架橋単位(SBU)を含み、該MOFは、該MOFの細孔またはチャネル中に捕捉された化学療法剤を含む。いくつかの実施形態において、MOFは、光増感剤または光増感剤の誘導体を含む架橋配位子を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者に光増感剤を投与することと、患者に可視光または近赤外光を照射することとを更に含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子化学療法剤は、光増感剤を含む金属有機構造体(MOF)であり、任意で、該MOFは、光増感剤または光増感剤の誘導体を含む架橋配位子を含み、かつ該MOFは、該MOFの細孔またはチャネル中に捕捉された化学療法剤を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ミトキサントロン、パクリタキセル、ジギトキシン、ジゴキシン、及びセプタシジンを含む群から選択される。
【0037】
したがって、光増感剤及び/またはシンチレーター及び/またはX線吸収部分を含むMOF、それらのナノ粒子、ならびにそれらの医薬製剤だけでなく、疾患の治療における、そのような組成物の使用方法及び用途も提供することが、本開示の主題の目的である。
【0038】
本明細書に上述されている本開示の主題の目的は、本開示の主題によって全体または一部が達成され、他の目的は、本明細書に最良に後述される添付の図面及び実施例との関連で考慮すれば、記述が進むにつれ明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン架橋配位子(HDBC)の合成を示す模式図である。
図2A】ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(DBP−UiO、点線)、ならびに細胞培養培地中でのインキュベーション前(破線)及び後(実線)のジ(p−ベンゾアート)クロリン金属有機構造体(DBC−UiO)の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
図2B】ジメチルホルムアミド(DMF)または0.67ミリモル(mM)のリン酸緩衝食塩水(PBS)中、ジ(p−ベンゾアート)クロリン(HDBC、実線)、DBC−UiO(破線)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDBP、点線)、及びDBP−UiO(破点線)の紫外可視(UV可視)吸収スペクトルを示す。
図2C】水溶液中、1マイクロモル(μM)のHDBC(実線)及びDBC−UiO(点線)の定常状態の蛍光を示すグラフである。
図2D】1平方センチメートル当たり0.1ワット(W/cm)の照射量での、DBC−UiO(ダイヤ形)、HDBC(左向き三角形)、DBP−UiO(四角形)、HDBP(円形)、及びプロトポルフィリンIX(PpIX、上向き三角形)の一重項酸素()の発生を示すグラフである。DBC−UiO及びHDBCは、650ナノメートル(nm)の発光ダイオード(LED)で照射される一方で、他のものは、640nmのLEDで照射される。記号(例えば、四角形、三角形など)は実験データであり、実線は適合曲線である。
図3】CT26結腸癌細胞(左)及びHT29結腸癌細胞(右)中、異なる光増感剤(PS)濃度での、ジ(p−ベンゾアート)クロリン金属有機構造体(DBC−UiO)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(DBP−UiO)、ジ(−p−ベンゾアート)クロリン(HDBC)、及びジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDBP)の光線力学療法(PDT)細胞傷害性のグラフのペアである。左のグラフ及び右のグラフの両方について、光照射あり(左向き三角形)及び光照射なし(すなわち、暗所、四角形)のDBC−UiOの細胞生存率パーセンテージ、光照射あり(円形)及び光照射なし(右向き三角形)のHDBCの細胞生存率パーセンテージ、光照射あり(上向き三角形)及び光照射なし(ダイヤ形)のDBP−UiOの細胞生存率パーセンテージ、光照射あり(下向き三角形)及び光照射なし(五角形)のHDBPの細胞生存率パーセンテージを示す。
図4】CT26結腸癌モデル(左のグラフ)及びHT29結腸癌モデル(右のグラフ)における光線力学療法(PDT)治療後の、腫瘍増殖阻害曲線を示すグラフのペアである。両方のグラフにおいて、以下の治療、対照(リン酸緩衝食塩水(PBS)、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)クロリン金属有機構造体(DBC−UiO、白抜き円形);より高い用量のDBC−UiO(白抜き星形);ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(DBP−UiO、色付き上向き三角形);ジ(p−ベンゾアート)クロリン(HDBC、白抜き下向き三角形);及びジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDBP、色付き左向き三角形)に、(立方センチメートル(cm)での)腫瘍量を提供する。
図5A】ハフニウム金属有機構造体(Hf−MOF)及びジルコニウム金属有機構造体(Zr−MOF)の合成の模式図である。
図5B】重金属からの高速光電子のX線誘起発生、その後、可視スペクトルでのアントラセン系リンカーのシンチレーションの模式図である。
図6】(図6A)[100]方向から見た構造、(図6B)[110]方向から見た構造、(図6C)M(μ−O)(μ−OH)(カルボキシレート)12(M=HfまたはZr)二次構成単位(SBU)のボールスティックモデル、(図6D)四面体空洞、及び(図6E)八面体空洞を含む、ハフニウム金属有機構造体(Hf−MOF)及びジルコニウム金属有機構造体(Zr−MOF)の構造モデルの模式図を示す。多面体:8個の配位酸素原子を有するHf4+またはZr4+
図7】(図7A)(左から右へ)ハフニウム金属−有機構造体(Hf−MOF)、ジルコニウム金属有機構造体(Zr−MOF)、及び対照試料の放射線ルミネセンス信号のグラフ:酸化ハフニウム(HfO)及び酸化ジルコニウム(ZrO)コロイドナノ粒子、架橋配位子(HL)単独、HL+HfOコロイド、HL+ZrOコロイド、Hf−MOF、ならびにZr−MOF、(図7B)異なる濃度及び異なる放射線管電位を有するHf−MOF及びZr−MOFの放射線ルミネセンス信号のグラフを示す。図7Aについて、試料中のHLまたはHfもしくはZrの濃度は、1.2ミリモル(mM)である。X線量は、有効なX線エネルギー18.9キロ電子ボルト(keV)(40キロボルト(kV)管電位、0.08ミリアンペア(mA)管電流)、及び200の検出ゲインで、10秒(sec)当たり1グレイ(Gy)である。図7Bについて、データは、以下、30kVでのHf−MOF(四角形);50kVでのHf−MOF(円形);80kVでのHf−MOF(三角形);30kVでのZr−MOF(四角形);50kVでのZr−MOF(円形);及び80kVでのZr−MOF(三角形)によって提供される。
図8】5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン配位子(HDBP)の合成の模式図である。
図9】10,20−ジフェニル−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン配位子の合成の模式図である。
図10】10,20−ジ(m−ヒドロキシフェニル)−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン配位子の合成の模式図である。
図11】ルテニウムビピリジン錯体系架橋配位子、[Ru(bipy)(bpy−dc)]Cl(RuBipyL)の合成の模式図である。
図12】(図12A)ジ(p−ベンゾエート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF)の従来の光線力学療法(PDT)適合曲線、(図12B)439ナノメートル(nm)での照射用量に対する光学密度の変化の線形適合(Δ(OD))、及び(図12C)439nmでの照射用量に対するΔ(OD)のグラフの組である。
図13】(図13A)0.5グレイ(Gy)のX線照射あり(円形)及びX線照射なし(四角形)での、ヒト膠芽腫(U87)細胞における、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF)のナノスケール金属有機構造体(NMOF)の濃度依存的細胞傷害性、ならびに(図13B)遮断材としての牛肉ありもしくはなしで、NMOF(P−MOFまたはルテニウム−ビピリジン系金属有機構造体(Ru−MOF)及びX線照射で、またはP−MOF及び発光ダイオード(LED)光照射で治療したヒト喉頭癌(SQ20B)細胞の細胞傷害性を示すグラフのペアである。
図14】GL261神経膠腫細胞(図14A)、U251膠芽腫細胞(図14B)、U87一次性膠芽腫細胞(図14C)、CT26結腸癌細胞(図14D)、TUBO乳癌細胞(図14E)、及びTRAMP−C2前立腺癌細胞(図14F)に対するX線照射時の、テトラ(ベンゾエート)ポルフィリン−ハフニウム(TBP−Hf)金属有機構造体(MOF)の細胞傷害性を示すグラフの組である。TBP−Hf NMOFは、10マイクロモル(μM)のHf用量で4時間(h)細胞とともにインキュベートし、異なる線量でX線照射した。72時間後、細胞生存率を、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラ−ゾリウム)(MTS)によって評価した。
図15】アミノ−トリフェニルジカルボン酸(アミノ−TPDC)配位子及びUiOナノスケール金属有機構造体(NMOF)の合成を示す模式図である。
図16】(左)4時間のインキュベーション後、SQ20B頭頸部癌細胞中、UiO−66(白抜き棒)、UiO−67(左下から右上へと向かう線を有する棒)、アミノUiO−68(左上から右下へと向かう線を有する棒)、及びHfO(四角形を有する棒)のナノ粒子の細胞取り込み量(ハフニウム(Hf)濃度は誘導結合型プラズマ質量分析(ICP−MS)によって決定した)、ならびに(右)SQ20B細胞に対する、UiO−66(白抜き棒)、UiO−67(左下から右上へと向かう線を有する棒)、アミノUiO−68(左上から右下へと向かう線を有する棒)、及びP−MOF(四角形を有する棒)の細胞傷害性を示すグラフのペアである。細胞は、10マイクロモル(μM)のHf濃度でNMOFとともにインキュベーションし、異なる線量のX線照射で治療した。細胞生存率を、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラ−ゾリウム)(MTS)アッセイによって決定した。
図17】CT26担腫瘍マウスへの腫瘍内注射後、ハフニウム(Hf、白抜き円形)及びジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(DBP)配位子(色付き四角形)に関する、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF)の腫瘍滞留を示すグラフである。
図18】(図18A)リン酸緩衝食塩水(PBS、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF、1画分照射線量当たり2.0グレイ(Gy)について白抜き円形、もしくは1画分照射線量当たり0.5Gyについて色付き三角形)、または1キログラム当たり10マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のルテニウム−ビピリジン金属有機構造体(Ru−MOF、白抜き三角形)で治療したSQ20B担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線、(図18B)PBS(色付き四角形)または10μmol/kgの配位子用量のP−MOF(白抜き円形)及びX線照射で治療したSQ20B担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線、(図18C)PBS(色付き四角形)または10μmol/kgの配位子用量のP−MOF(白抜き円形)及びX線照射で治療したU87担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線、(図18D)PBS(色付き四角形)または10μmol/kgの配位子用量のP−MOF(白抜き円形)及びX線照射で治療したPC−3担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線、ならびに(図18E)PBS(色付き四角形)または10μmol/kg(白抜き円形)もしくは1μmol/kg(色付き三角形)の配位子用量のP−MOF及びX線照射で治療したCT26担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフの組である。図18Aについて、治療は、腫瘍が100立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。図18Bについて、治療は、腫瘍が250立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。図18Cについて、治療は、腫瘍が約100mmに達したときに開始した。図18Dについて、治療は、腫瘍が100mmに達したときに開始した。図18Eについて、治療は、腫瘍が150mmに達したときに開始した。図18A〜18Eについて、3日連続でPBSまたはNMOFを腫瘍内注射した12時間後に、マウスにX線照射を実行した。
図19】リン酸緩衝食塩水(PBS、四角形)またはジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF)及び1キログラム当たり7マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤(INCB24360)(P−MOF/INCB24360、白抜き円形)、ならびにX線照射で治療したCT26担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が約100立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。3日連続でPBSまたはナノスケール金属有機構造体(NMOF)を腫瘍内注射した12時間(h)後に、マウスにX線照射(0.5Gy/画分)を実行した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図20】リン酸緩衝食塩水(PBS、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF、白抜き円形)、またはP−MOF及び1キログラム当たり7マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤INCB24360(P−MOF/INCB24360、色付き三角形)、ならびにX線照射で治療したTUBO担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が約100立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。3日連続でPBSまたはナノスケール金属有機構造体(NMOF)を腫瘍内注射した12時間(h)後に、マウスにX線照射(0.5Gy/画分)を実行した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図21】リン酸緩衝食塩水(PBS)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF、白抜き円形)、またはP−MOF及び1キログラム当たり3.5マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤INCB24360(P−MOF/INCB24360、色付き三角形)、ならびにX線照射で治療したTRAMP−C2担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が200立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図22】リン酸緩衝食塩水(PBS、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF、白抜き円形)、またはP−MOF及び1キログラム当たり3.5マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤INCB24360(P−MOF/INCB24360、色付き三角形)、ならびにX線照射で治療したMC38担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が250立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図23】リン酸緩衝食塩水(PBS、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(P−MOF、白抜き円形)、またはP−MOF及び1キログラム当たり3.5マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤INCB24360(P−MOF/INCB24360、色付き三角形)、ならびにX線照射で治療したMC38担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が200立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図24】リン酸緩衝食塩水(PBS、色付き四角形)、ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF、白抜き円形)、またはP−MOF及び1キログラム当たり3.5マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量のIDO1阻害剤免疫療法剤INCB24360(P−MOF/INCB24360、色付き三角形)、X線照射、ならびにPD−L1(腹腔内(i.p.)注射)抗体で治療したTUBO担腫瘍マウスの腫瘍増殖曲線を示すグラフのペアである。治療は、腫瘍が200立方ミリメートル(mm)に達したときに開始した。右側のグラフ中の増殖曲線は、治療した腫瘍(マウスの右側)のものである一方で、左側のグラフ中の増殖曲線は、マウスの左側の未治療の遠隔腫瘍のものである。
図25】(図25A)選択された減衰器の透過後に異なるエネルギーを有する、X線光子の画分の計算値、(図25B)銅減衰器によるフィルタリング後、120キロボルトピーク(kVp)でのタングステン(W)−標的源からのX線スペクトルの計算値、(図25C)銅減衰器によるフィルタリング、総光子数による正規化後、120kVpでのW−標的源からのX線スペクトルの計算値、(図25D)ハフニウム(Hf)及び水のX線質量エネルギー吸収係数の計算値、(図25E)Hf及び水のX線質量エネルギー吸収係数の割合の計算値、ならびに(図25F)異なるエネルギーでのX線光子の透過深度の計算値を示すグラフの組である。
図26】(図26A)CT26皮下担腫瘍マウスモデルに対する、異なるX線送達パラメータを使用したジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン金属有機構造体(P−MOF)のインビボ抗癌有効性、及び(図26B)CT26皮下担腫瘍マウスモデルに対する、異なるX線送達パラメータを使用したテトラベンゾアートポルフィリン−ハフニウム金属有機構造体(TBP−Hf)のインビボ抗癌有効性を示すグラフのペアである。リン酸緩衝食塩水(PBS)を、対照治療として使用した(色付き四角形)。図26Aについて、P−MOFを、1キログラム当たり10マイクロモル(μmol/kg)の配位子用量で、マウスに腫瘍内注射した。図26Bについて、TBP−Hfを、1キログラム当たり10μmol/kgまたは20μmol/kgの配位子用量で、マウスに腫瘍内注射した。12時間後、2つの異なるX線送達パラメータ、(1)225キロボルトピーク(kVp)、13ミリアンペア(mA)、0.3ミリメートル(mm)のCuフィルタ、及び0.5Gy/画分(白抜き円形)、ならびに(2)120kVp、20mA、2−mmのCuフィルタ、及び1Gy/画分(色付き三角形)を使用して、腫瘍を照射した。図26Aについて、P−MOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。図26Bについて、TBO−Hfを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。
図27】本開示の主題の実施形態に従う、例示的な光増感剤の化学構造を示す模式図である。
図28】本開示の主題の実施形態に従う、更なる例示的な光増感剤の化学構造を示す模式図である。
図29】本開示の主題の実施形態に従う、例示的なポルフィリン、クロリン、及びバクテリオクロリン系光増感剤、ならびに/または架橋配位子の化学構造を示す模式図である。
図30】本開示の主題の実施形態に従う、いくつかの追加の例示的な光増感剤、及び/または架橋配位子の化学構造を示す模式図である。
図31】本開示の主題に従う、例示的なボロン−ジピリジン(BODIPY)誘導体及びジサリシリデン−1,2−シクロヘキシリデンジアミン錯体光増感剤ならびに/または架橋配位子の化学構造を示す模式図である。
図32】本開示の主題に従って使用するための、例示的な染料系光増感剤の化学構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、光増感剤を含む金属有機構造体(MOF)を提供する。本MOFはまた、X線及び/またはシンチレーションを吸収することができる部分を含み得る。任意で、光増感剤またはその誘導体は、本MOFの架橋配位子を形成することができる。更に任意で、本MOFは、MOFの空洞またはチャネル中に無機ナノ粒子を含んでも、無機ナノ粒子と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態において、本開示の主題は、1つ以上の免疫療法剤及び/もしくは1つ以上の化学療法剤の同時投与ありもしくはなしのいずれかである、光線力学療法において、またはX線誘起光線力学療法において、MOF及び/または無機ナノ粒子を使用する方法を提供する。
【0041】
これより、代表的な実施形態が示される添付の実施例を参照しながら、本明細書下記に本開示の主題がより詳細に記載される。しかしながら、本開示の主題は異なる形態で実施することができ、本明細書に説明される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、かつ当業者に対して実施形態の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0042】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の主題が属する当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した任意の方法、デバイス、及び材料が本開示の主題の実施及び試験で使用され得るものの、これより、代表的な方法、デバイス、及び材料が記載される。本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、及び他の参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0043】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、所与の化学式または名称は、そのような異性体及び混合物が存在する場合、全ての光学異性体及び立体異性体、ならびにラセミ混合物を網羅するものとする。
【0044】
I.定義
以下の用語は、当業者によってよく理解されると考えられるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を促進するために説明される。
【0045】
長年の特許法慣習に従って、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その」は、使用される場合、「1つ以上」を指す。したがって、例えば、「1つの金属イオン」への言及は、複数のそのような金属イオンを含む、などである。
【0046】
別段示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、サイズ、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、それに反して示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において説明される数的パラメータは、本開示の主題によって得ることが求められる所望される特性によって変動し得る近似値である。
【0047】
本明細書で使用される場合、値、またはサイズ(すなわち、直径)、重量、濃度、もしくはパーセンテージの量を指す時、「約」という用語は、明記される値から、一例において±20%または±10%、別の例において±5%、別の例において±1%、及び更に別の例において±0.1%の変動を網羅することが意図されるが、これは、そのような変動が開示される方法を実行するのに適切なものであるためである。
【0048】
本明細書で使用される場合、実体を列挙する文脈で使用される時、「及び/または」という用語は、単独または組み合わせで存在する実体を指す。したがって、例えば、「A、B、C、及び/またはD」という語句は、A、B、C、及びDを個々に含むが、また、A、B、C、及びDの任意ならびに全ての組み合わせ及び部分組み合わせも含む。
【0049】
「を含む(including)」、「を含有する」、または「によって特徴付けられる」と同義である「を含む(comprising)」という用語は、包括的または無制限であり、引用されない追加の要素または方法ステップを除外しない。「を含む」は、特許請求の言語で使用される専門用語であり、名前を挙げた要素が存在するが、他の要素が追加されてもよく、依然として特許請求の範囲内の構築物または方法を形成することを意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「からなる」という語句は、特許請求の範囲内に明記されないいかなる要素、ステップ、または成分も除外する。「からなる」という語句が、前文の直後ではなく、特許請求の範囲の本文の条項に出現する場合、それは、その条項内に説明される要素のみを限定し、他の要素は特許請求の範囲全体からは除外されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という語句は、特許請求の範囲を、明記される材料またはステップ、ならびに主張される主題の基本的及び新規の特徴(複数可)に実質的な影響を与えないものに限定する。
【0052】
「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、本開示の主張される主題は、その他の2つの用語のいずれかの使用を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ブタジエニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、及びアレニル基を含む、直鎖(linear)(すなわち、「直鎖(straight−chain)」)、分岐、または環状、飽和、もしくは少なくとも部分的に及び場合によっては完全に不飽和(すなわち、アルケニル及びアルキニル)の炭化水素鎖を含む、C1−20を指し得る。「分岐」は、メチル、エチル、またはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖アルキル鎖に結合したアルキル基を指す。「低級アルキル」は、1〜約8個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、C1−8アルキル)を指す。「高級アルキル」は、約10〜約20個の炭素原子、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有するアルキル基を指す。特定の実施形態において、「アルキル」は、C1−8直鎖アルキルを指す。他の実施形態において、「アルキル」は、特に、C1−8分岐鎖アルキルを指す。
【0054】
アルキル基は、任意で、同一であっても、異なってもよい1つ以上のアルキル基置換基で置換され得る(「置換アルキル」)。「アルキル基置換基」という用語は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、及びシクロアルキルを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、任意で、アルキル鎖に沿って、1つ以上の酸素原子、硫黄原子、または置換もしくは非置換窒素原子が挿入されてもよく、窒素置換基は、水素、低級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも呼ばれる)、またはアリールである。
【0055】
したがって、本明細書で使用される場合、「置換アルキル」という用語は、本明細書で定義される、アルキル基の1つ以上の原子または官能基が別の原子または官能基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む)で置換される、アルキル基を含む。
【0056】
「アリール」という用語は、本明細書では、ともに融合された、共有結合された、または共通の基(メチレン部分もしくはエチレン部分などであるが、これらに限定されない)に連結された、芳香族単環もしくは芳香族多環であり得る、芳香族置換基を指すために使用される。共通の連結基はまた、ベンゾフェノンにおけるようにカルボニルであっても、ジフェニルエーテルにおけるように酸素であっても、ジフェニルアミンにおけるように窒素であってもよい。「アリール」という用語は、ヘテロ環状芳香族化合物を特に網羅する。芳香族環(複数可)は、他の中でも、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、及びベンゾフェノンを含み得る。特定の実施形態において、「アリール」という用語は、5員炭化水素及び6員炭化水素芳香族環ならびにヘテロ環状芳香族環を含む、約5〜約10個の炭素原子、例えば、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む環状芳香族を意味する。
【0057】
アリール基は、任意で、同一であっても、異なってもよい1つ以上のアリール基置換基で置換され得(「置換アリール」)、「アリール基置換基」は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシル、アラルキルオキシル、カルボキシル、アシル、ハロ、ニトロ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アシルオキシル、アシルアミノ、アロイルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールチオ、アルキルチオ、アルキレン、ならびに−NR'R''(R'及びR''はそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、及びアラルキルであり得る)を含む。
【0058】
したがって、本明細書で使用される場合、「置換アリール」という用語は、本明細書で定義される、アリール基の1つ以上の原子または官能基が別の原子または官能基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸基、及びメルカプト基を含む)で置換される、アリール基を含む。
【0059】
アリール基の具体的な例としては、シクロペンタジエニル、フェニル、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、インドール、カルバゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環構造の骨格中に1つ以上の非炭素原子(例えば、O、N、S、Seなど)を含有するアリール基を指す。窒素含有ヘテロアリール部分は、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジンなどを含むが、これらに限定されない。
【0061】
「アラルキル」は−アルキル−アリール基を指し、任意で、アルキル部分及び/またはアリール部分は置換される。
【0062】
「アルキレン」は、約1〜約20個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は、直鎖であっても、分岐鎖であっても、環状であってもよい。アルキレン基はまた、任意で、1つ以上の「アルキル基置換基」で不飽和及び/または置換され得る。任意で、アルキレン基に沿って、1つ以上の酸素原子、硫黄原子、または置換もしくは非置換窒素原子が挿入されてもよく(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも呼ばれる)、窒素置換基は、既述のようにアルキルである。例示的なアルキレン基としては、メチレン(−CH−);エチレン(−CH−CH−);プロピレン(−(CH−);シクロヘキシレン(−C10−);−CH=CH−CH=CH−;−CH=CH−CH−;−(CH−N(R)−(CH−(式中、q及びrのそれぞれは独立して、0〜約20、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の整数であり、Rは、水素または低級アルキルである);メチレンジオキシル(−O−CH−O−);及びエチレンジオキシル(−O−(CH−O−)が挙げられる。アルキレン基は、約2〜約3個の炭素原子を有してもよく、6〜20個の炭素原子を更に有してもよい。
【0063】
「アリーレン」という用語は、二価芳香族基、例えば、二価フェニル基またはナフチル基を指す。アリーレン基は、任意で、1つ以上のアリール基置換基で置換され得る、かつ/または1つ以上のヘテロ原子を含み得る。
【0064】
「アミノ」という用語は、基−N(R)を指し、式中、各Rは独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、または置換アラルキルである。「アミノアルキル」及び「アルキルアミノ」という用語は、−N(R)基を指し得、式中、各Rは、H、アルキル、または置換アルキルであり、かつ少なくとも1つのRは、アルキルまたは置換アルキルである。「アリールアミン」及び「アミノアリール」は、基−N(R)を指し、式中、各Rは、H、アリール、または置換アリールであり、かつ少なくとも1つのRは、アリールまたは置換アリール、例えば、アニリン(すなわち、−NHC)である。
【0065】
「チオアルキル」という用語は、基−SRを指し得、式中、Rは、H、アルキル、置換アルキル、アラルキル、置換アラルキル、アリール、及び置換アリールから選択される。同様に、「チオアラルキル」及び「チオアリール」という用語は、−SR基を指し、式中、Rはそれぞれ、アラルキル及びアリールである。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ハロ」、「ハロゲン化物」、または「ハロゲン」という用語は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基を指す。
【0067】
「ヒドロキシル」及び「ヒドロキシ」という用語は、−OH基を指す。
【0068】
「メルカプト」または「チオール」という用語は、−SH基を指す。
【0069】
「カルボキシレート」及び「カルボン酸」という用語はそれぞれ、基−C(=O)O及び基−C(=O)OHを指し得る。「カルボキシル」という用語もまた、−C(=O)OH基を指し得る。いくつかの実施形態において、「カルボキシレート」または「カルボキシル」は、−C(=O)O基または−C(=O)OH基のいずれかを指し得る。
【0070】
「アセチルアセトネート」という用語は、基−C(=O)CHC(=O)CHを脱プロトン化することによって形成されるアニオンを指す。
【0071】
「ホスホネート」という用語は、−P(=O)(OR)基を指し、式中、各Rは独立して、H、アルキル、アラルキル、アリール、または負電荷(すなわち、酸素原子に結合するR基が実質的に存在せず、酸素原子上に非共有電子対の存在をもたらすもの)であり得る。したがって、換言すると、各Rは、存在しても、不在であってもよく、存在する場合、H、アルキル、アラルキル、またはアリールから選択される。
【0072】
「ホスフェート」は、−OP(=O)(OR')基を指し、式中、R'は、Hまたは負電荷である。
【0073】
「結合する」または「結合される」という用語、及びこれらの派生語は、共有結合または非共有結合のいずれかを指し得る。場合によっては、「結合する」という用語は、配位結合を介した結合を指す。「共役」という用語は、共有結合または配位結合の形成などの結合プロセスも指し得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「金属有機構造体」という用語は、金属構成成分及び有機構成成分の両方を含む固体の二次元または三次元ネットワークを指し、有機構成成分は、少なくとも1つ、及び典型的には2つ以上の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、材料は結晶性である。いくつかの実施形態において、材料は非結晶性である。いくつかの実施形態において、材料は多孔性である。いくつかの実施形態において、金属−有機マトリクス材料は、金属イオンまたは金属錯体などの金属系二次構成単位(SBU)を含む配位錯体の反復単位と、架橋多座(例えば、二座または三座)有機配位子とを含む配位ポリマーである。いくつかの実施形態において、材料は、2種類以上のSBUまたは金属イオンを含有する。いくつかの実施形態において、材料は、2種類以上の有機架橋配位子を含有し得る。
【0075】
「ナノスケール金属有機構造体」という用語は、MOFを含むナノスケール粒子を指し得る。
【0076】
「配位錯体」とは、金属イオンと、電子対供与体、配位子、またはキレート基との間に配位結合が存在する化合物である。したがって、配位子またはキレート基は一般に、金属イオンへの供与に利用可能な非共有電子対を有する、電子対供与体、分子、または分子イオンである。
【0077】
「配位結合」という用語は、電子対供与体と金属イオン上の配位部位との間の相互作用を指し、これは、電子対供与体と金属イオンとの間の引力をもたらす。この用語の使用は、特定の配位結合もまた、金属イオン及び電子対供与体の特徴によって(完全な共有結合的特徴を有さない場合)多かれ少なかれ共有結合的特徴を有するものとして分類され得る程度まで、限定的であることが意図されない。
【0078】
本明細書で使用される場合、「配位子」という用語は一般に、何らかの方法で別の種に相互作用する、例えば、結合する、分子またはイオンなどの種を指す。より具体的には、本明細書で使用される場合、「配位子」は、溶液中で金属イオンに結合して、「配位錯体」を形成する分子またはイオンを指し得る。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Martell,A.E.,and Hancock,R.D.,Metal Complexes in Aqueous Solutions,Plenum:New York(1996)を参照されたい。「配位子」及び「キレート基」は、互換的に使用され得る。「架橋配位子」は、2つ以上の金属イオンまたは錯体に結合するため、金属イオン間または錯体間に「架橋」をもたらす基を指し得る。有機架橋配位子は、例えば、アルキレン基またはアリーレン基によって分離される、非共有電子対を有する2つ以上の基を有し得る。非共有電子対を有する基としては、−COH基、−NO基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオ基、チオアルキル基、−B(OH)基、−SOH基、POH基、ホスホネート基、及びヘテロ環中のヘテロ原子基(例えば、窒素、酸素、または硫黄)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本明細書で、配位子、例えば、架橋配位子に関して使用される場合、「配位部位」という用語は、非共有電子対、負電荷、または(例えば、特定のpH下での脱プロトン化を介して)非共有電子対もしくは負電荷を形成することができる原子もしくは官能基を指す。
【0080】
「ナノスケール粒子」、「ナノ材料」、及び「ナノ粒子」は、約1,000nm未満の寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造を指す。いくつかの実施形態において、寸法は、より小さい(例えば、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約125nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm、または更には約20nm未満)。いくつかの実施形態において、寸法は、約20nm〜約250nmの間(例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、または250nm)である。
【0081】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子はおよそ球状である。ナノ粒子がおよそ球状である場合、特徴寸法は、球の直径に対応し得る。球状の形状に加えて、ナノ材料は、ディスク形状、プレート形状(例えば、六角形プレート様)、長方形、多面体、ロッド形状、立方、または不規則な形状であってもよい。
【0082】
ナノ粒子は、コア領域(すなわち、粒子の外部寸法間の空間)と、外部表面(すなわち、粒子の外部寸法を画定する表面)とを含み得る。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、ナノ粒子コアを囲むか、または部分的に囲む、1つ以上のコーティング層を有し得る。したがって、例えば、球状ナノ粒子は、それぞれの連続する層が、粒子の中心により近いより小さい層の外部表面上に分散される、1つ以上の同心円状コーティング層を有し得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示のナノ粒子は、架橋配位子によってともに連結されたSBUの二次元または三次元ネットワークである、固体金属有機構造体(MOF)マトリクスを含み得る。MOFは、1つ以上の細孔または中空内部領域を含み得る。MOFマトリクスは、非結晶性であっても、結晶性であってもよい。いくつかの実施形態において、ナノ粒子コアは、マトリクス内に物理的に捕捉され得るか、マトリクスの金属イオンに配位され得るか、または共有結合もしくはイオン結合を介して(例えば、マトリクス中の有機架橋配位子に、もしくはナノ粒子コア上に分散された層中の化合物に)化学結合され得る、1つ以上のPS、X線吸収剤、シンチレーション剤、及び/または他の治療剤(例えば、抗癌剤もしくは免疫療法剤)を更に含む。いくつかの実施形態において、SBUの金属がシンチレーターとしての役割を果たす一方で、光増感剤またはその誘導体は、有機架橋配位子であっても、ナノ粒子のコアを形成する金属−有機マトリクス材料中の有機架橋配位子に結合されてもよい。あるいは、シンチレーター、X線吸収剤、及び/またはPSは、MOF中に捕捉されても、MOFに共有結合されてもよい。
【0084】
「包埋される」は、粒子のコアの内側に(例えば、架橋配位子の配位部位に、もしくはSBUの金属イオンに)結合される、例えば、共有結合されるか、または配位結合を介して結合される、薬剤を指し得る。あるいは、薬剤は、MOF粒子のコア中の細孔、空洞、もしくはチャネルの内側に「捕捉(sequester)」、「捕捉(entrap)」、または「捕捉(trap)」(すなわち、非共有結合的に被包)されても、水素結合、ロンドン分散力、もしくは任意の他の非共有結合的相互作用を介してMOF材料と相互作用してもよい。
【0085】
「ポリマー」及び「ポリマーの」という用語は、反復単位(すなわち、所与の化学構造の複数の複製)を有する化学構造を指す。ポリマーは、重合性モノマーから形成され得る。重合性モノマーは、反応して、重合性モノマーの他の分子上の部分との結合(例えば、共有結合または配位結合)を形成し得る1つ以上の部分を含む分子である。いくつかの実施形態において、各重合性モノマー分子は、2つ以上の他の分子/部分に結合し得る。場合によっては、重合性モノマーは、1つの他の分子のみに結合し、ポリマー材料の終端を形成するであろう。
【0086】
ポリマーは、有機であっても、無機であっても、これらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用される場合、「無機」という用語は、炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、亜リン酸塩、またはハロゲン化物のうちの1つ以外の、少なくともいくつかの原子を含有する化合物もしくは組成物を指す。したがって、例えば、無機化合物もしくは組成物は、1つ以上のケイ素原子及び/または1つ以上の金属原子を含有し得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「有機ポリマー」は、それらの反復単位中にシリカまたは金属原子を含まないものである。例示的な有機ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン(PVO)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリジエンなどが挙げられる。いくつかの有機ポリマーは、それらが生物学的条件下で経時的に分解し得るように、エステルまたはアミドなどの生分解性連結を含有する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「親水性ポリマー」という用語は一般に、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシ−プロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシルプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシ−エチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレン−イミン(PEI)、ポリエチレングリコール(すなわち、PEG)などであるが、これらに限定されない親水性有機ポリマー、または別の親水性ポリ(アルキレンオキシド)、ポリグリセリン、及びアスパルトアミドを指す。「親水性」という用語は、分子または化学種が水と相互作用する能力を指す。したがって、親水性ポリマーは、典型的には極性であるか、または水に結合し得る基を有する。
【0089】
「光増感剤」(PS)は、特定の波長の光、典型的には可視光または近赤外(NIR)光によって励起され、活性酸素種(ROS)を生成し得る、化学化合物もしくは化学部分を指す。例えば、その励起状態において、光増感剤は、系間交差を受け、(例えば、PDTによって治療されている組織中の)酸素(O)にエネルギーを輸送して、一重項酸素()などのROSを生成することができる。本開示の主題に従って、任意の既知の種類の光増感剤が使用され得る。いくつかの実施形態において、光増感剤は、ポルフィリン、クロロフィル、染料、またはこれらの誘導体もしくは類似体である。いくつかの実施形態において、フォフィリン(phophyrin)、クロリン、バクテリオクロリン、またはポルフィセンが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、光増感剤は、例えば、光増感剤を別の分子もしくは部分(有機架橋配位子もしくはSBUなど)に結合させるのに使用するための、かつ/または配位を亢進するか、もしくは追加の金属(複数可)を配位する追加の部位(複数可)を提供するための、カルボン酸基、アミン基、またはイソチオシアネート基などの1つ以上の官能基を有し得る。いくつかの実施形態において、光増感剤は、ポルフィリン、またはその誘導体もしくは類似体である。例示的なポルフィリンとしては、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、及びテトラフェニルポルフィリン(TPP)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なポルフィリン誘導体としては、ピロフェオホルビド、バクテリオクロロフィル、クロロフィルa、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン、プルプリン、ベンゾクロリン、ナフトクロリン、ベルジン(verdin)、ロジン、オキソクロリン、アザクロリン、バクテリオクロリン、トリポルフィリン、及びベンゾバクテリオクロリンが挙げられるが、これらに限定されない。ポルフィリン類似体としては、拡張ポルフィリンファミリーメンバー(テキサフィリン、サフィリン、及びヘキサフィリンなど)、ポルフィリン異性体(ポルフィセン、反転ポルフィリン、フタロシアニン、及びナフタロシアニンなど)、ならびに1つ以上の官能基で置換されたTPPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、制御されない細胞分裂、及び/または細胞が転移する能力もしくは追加の部位において新たな増殖を確立する能力によって引き起こされる疾患を指す。「悪性の」、「悪性度」、「腫瘍(neoplasm)」、「腫瘍(tumor)」、「癌」という用語、及びこれらの派生語は、癌性細胞または癌性細胞の群を指す。
【0091】
癌の具体的な種類としては、皮膚癌(例えば、黒色腫)、結合組織癌(例えば、肉腫)、脂肪癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌(例えば、中皮腫)、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、肛門生殖器癌(例えば、精巣癌)、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、前立腺癌、中枢神経系(CNS)癌、網膜癌、血液、神経芽細胞腫、多発性骨髄腫、及びリンパ癌(例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
「転移性癌」という用語は、患者の体内のその初期部位(すなわち、一次部位)から伝播している癌を指す。
【0093】
「抗癌薬」、「化学療法剤」、及び「抗癌プロドラッグ」という用語は、癌を治療する(すなわち、癌細胞を死滅させるか、癌細胞の増殖を制止するか、もしくは癌に関連する症状を治療する)ことが既知であるか、または癌を治療することができると考えられる薬物(すなわち、化学化合物)もしくはプロドラッグを指す。いくつかの実施形態において、本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、癌を治療するのに使用される、かつ/または細胞傷害能力を有する非PS分子を指す。そのようなより伝統的もしくは従来の化学療法剤は、活性の機構によって、または化学化合物の分類によって記載することができ、それらには、アルキル化剤(例えば、メルファラン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えば、パクリタキセル)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)、トポイソメラーゼIまたはIIの阻害剤(例えば、イリノテカンもしくはエトポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、ヌクレオチド類似体またはそれらの前駆体(例えば、メトトレキサート)、ペプチド抗生剤(例えば、ブレオマイシン)、白金系薬剤(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン)、及びビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0094】
「シンチレーター」という用語は、X線などのイオン化放射線によって励起されたときに、ルミネセンスを呈する(例えば、可視またはNIR範囲内の光などを発光する)部分もしくは化合物を指す。
【0095】
II.一般的考察
光線力学療法(PDT)は、3つの非毒性構成成分、つまり、光増感剤(PS)、光源、及び組織酸素を組み合わせて、悪性細胞及び他の患部細胞に対する毒性を引き起こす光線療法である。PDTの最も幅広く許容されている機構は、光励起PSから組織中の酸素分子へとエネルギーを輸送して、細胞毒性を誘導する活性酸素種(ROS)、特に一重項酸素()を発生させることを伴う。PDTは、PSの選択的取り込み及び/または光への局所的曝露を介して、患部組織の局在化した破壊をもたらし、低侵襲癌療法を提供することができる。
【0096】
腫瘍に対する免疫療法剤の選択的送達が、化学療法の成功のために好ましい。同様に、腫瘍中のPSの局在化が、有効なPDTのために好ましい。しかしながら、多くのPSは性質が疎水性であり、これは不十分な腫瘍局在化をもたらすばかりか、PDT有効性を低下させるPSの凝集も引き起こす。したがって、これらのPSをインビボでより有効なPDT剤にするために、有意な合成修飾が好ましい。
【0097】
代替的なアプローチは、ナノ担体を使用して、亢進された浸透及び滞留効果(EPR)を介して、及び時には癌において過剰発現した受容体に結合する小分子もしくは生物学的配位子による活性腫瘍標的化を介して、治療剤またはPDT剤を腫瘍に選択的に送達することである。金属イオン/イオンクラスタ及び有機架橋配位子から構築されるナノスケール金属有機構造体(NMOF)は、治療剤及び造影剤のためのナノ担体プラットフォームとして使用することができる。他のナノ担体と比較して、NMOFは、調節可能な化学組成物及び結晶性構造、高多孔度、ならびに生分解性を含む多くの有利な特徴を、単一送達プラットフォーム中に組み合わせる。
【0098】
II.A.光線力学療法のためのポルフィリン系NMOF
実施例において本明細書に更に後述される、本開示の主題の例示的な一実施形態に従って、Hf−ポルフィリンNMOFを調製し、抵抗性頭頸部癌のPDTのためのPSとして使用した。いかなる1つの理論にも拘束されることを望むものではないが、ポルフィリン由来の架橋配位子を、好適な形態及び寸法を有する頑強かつ多孔性のUiO(Universitetet I Oslo(Norwegian for University of Oslo)の名を取って命名)NMOF構造に組み込むと、他のナノ粒子PDT剤に対するいくつかの利点をもたらすことができると考えられる。第1に、PS分子または部分は、NMOF構造体中でよく単離されて、凝集及び励起状態の自己消光を避けることができる。第2に、重金属(例えば、Hf)中心へのポルフィリン配位子の配位は、系間交差を促進して、ROS発生効率を亢進することができる。第3に、多孔性NMOF構造は、NMOF内部からのROS(一重項酸素()など)の容易な拡散のための経路を提供して、癌細胞に対する細胞傷害性効果を発揮することができる。更に、前例のないことに、高PS充填を達成して、治療困難な癌の有効なPDTをもたらすことができる。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、ポルフィリン系架橋配位子、例えば、ポルフィリン、ポルフィリンの誘導体、及び/またはこれらの金属錯体を介してともに連結されたSBUを含むMOFを提供する。
【0100】
II.B.結腸癌の光線力学療法のためのクロリン系NMOF
別の例示的な実施形態において、本開示の主題は、腫瘍の治療における使用に好適な光物理的特性を有する、DBC−UiOなどのクロリン系NMOFを提供する。例えば、実施例において本明細書に後述されるように、DBC−UiOは、2つの結腸直腸腺癌マウスモデルにおける結腸癌を治療するために使用することができる。
【0101】
ヘマトポルフィリン誘導体を第1世代のPSとして開発し、最初のPDT剤PHOTOFRIN(登録商標)の臨床適用をもたらした。しかしながら、吸収ピークが典型的には組織透過ウインドウ(600〜900nm)の高エネルギー端付近であり、かつ吸光係数(ε)値が小さいため、ポルフィリンの光物理的特性は、特定の用途には好ましくない。ポルフィリンをクロリンに還元すると、吸収がより長い波長へと偏移し、同時にεが増加することが示された。例えば、5,10,15,20−m−テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリンをそのクロリン誘導体に還元すると、3400M−1・cm−1から29600M−1・cm−1へのεの劇的亢進とともに、最終Q帯が644から650nmへと赤方偏移する。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、クロリン系架橋配位子またはポルフィリンの他の還元形態(バクテリオクロリンなど)に基づく配位子を介してともに連結されたSBUを含むMOFを提供する。
【0103】
II.C.X線シンチレーションのための、金属有機構造体中の重金属クラスタ及びルミネセンス有機架橋配位子の相乗的組み立て
X線シンチレーターは、X線線量測定及び撮像において幅広く使用されている。X線の高感度検出は、画像品質を維持または改善しながら、患者の曝露を低減する。発光体としてランタニドを有するいくつかの固体無機材(LaOBr:Tm、GdS:Tb、及びM'−YTaOなど)が、効率的なX線から光への変換体として開発されている。ナノ蛍光体もまた、X線ルミネセンスコンピュータ断層撮影(XLCT)と呼ばれる、二重モダリティX線及び光学撮像のための分子プローブとして用いられている。X線の深い透過深度及び低い光学自家蛍光背景を利用することによって、XLCTは、非常に高感度な分子撮像技術を提供することができる。更に、固体シンチレーターに基づくナノ粒子は、X線誘起PDT(X−PDT)のための一重項酸素増感剤に結合している。
【0104】
アントラセンなどの有機結晶もまた、電子及び中性子のそれらの高散乱断面積、ならびに低い後方散乱率のために、特に低エネルギーβ線及び中性子を検出するための放射線シンチレーターとしての役割を果たし得る。しかしながら、有機シンチレーターは、それらの低X線散乱断面積ために、X線検出(100keV未満)には無効であり得る。金属有機構造体(MOF)は、詳細に定義された分子架橋配位子及び金属/金属クラスタ接続ノードから構築される、結晶性材料の分類を提供することができる。したがって、MOFは、高度に規則的な構造中に、有機シンチレーター分子、及び高原子番号(Z)を有する金属クラスタノードの同時組み立てのための調節可能なプラットフォームであり得る。例えば、高速陽子、中性子、電子、及びγ線によって誘起された放射線ルミネセンスのためのZn MOFが、米国特許第7,985,868号に報告されており、この特許の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0105】
本開示の主題のいくつかの例示的な実施形態に従うと、接続ノードとして高Z金属クラスタ、例えば、M(μ−O)(μ−OH)(カルボキシレート)12(M=HfまたはZr)、ならびに架橋配位子としてアントラセン系発光体を有するMOFが、本明細書に記載される。HfがZ=72かつZrがZ=40であると、Hfクラスタ及びZrクラスタは、効率的なX線吸収体としての役割を果たす。20〜200keVの範囲内のX線の光電吸収時、Hf4+イオン及びZr4+イオンの外殻電子は、アントラセン系リンカーと相互作用して、それらの電子励起状態からルミネセンス信号を発生させる高速電子として駆出される。したがって、高Z金属クラスタ及び発光性架橋配位子は相乗的に機能して、容易に検出可能な可視スペクトル内の高度に効率的なX線誘起ルミネセンスをもたらす。
【0106】
II.D.高度に効率的なX線誘起光線力学療法ためのNMOF
放射線療法は、最も一般的かつ効率的な癌治療モダリティのうちの1つである。癌放射線療法では、腫瘍に高エネルギー放射線(例えば、X線)を照射して、治療体積中の悪性細胞を破壊する。NMOFは、放射線療法とPDTとの組み合わせによって、深部癌の治療を可能にする。本開示の主題のいくつかの実施形態において、高Z金属イオン(例えば、ZrまたはHf)を有するSBUを有するNMOFは、X線光子を吸収し、光電効果を通してそれらを高速電子に変換することによって、有効なX線アンテナとしての役割を果たし得る。その後、発生した電子は、非弾性散乱を通してMOF中の複数のPSを励起し、ヒドロキシラジカル及びの効率的な発生をもたらす。追加の実施形態は、ランタニド金属(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLu)、Ba、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、ならびにBi、またはX線放射線を強度に吸収する任意の金属イオンを含むSBUを有するNMOFを含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示の主題に従って、金属接続点としてHf及びBiなどの重金属、ならびに架橋配位子としてポルフィリン誘導体、クロリン誘導体、または金属含有染料(Ru(bpy)2+及びIr(pph)(bpy)(bpyは2,2'−ビピリジンであり、pphは2−フェニルピリジンである)を含む)から構築されるNMOFが提供される。X線誘起PDT/RTにおけるそのようなNMOFの用途を、実施例において本明細書以下に更に実証する。これらのNMOFは、後続する一重項酸素発生のために、X線エネルギーで光増感剤を励起することができるため、X線誘起PDTのための効率的な治療剤としての役割を果たす。この分類のNMOFの利点としては、1)2つの有効な治療(放射線療法及びPDT)の組み合わせ、2)深部癌を治療することができ、そのために効率的なモダリティ、3)健康な組織に対する放射線損傷のリスクの低下、及び4)簡便で、比較的安価かつ効果的な治療を挙げることができる。
【0108】
特定の実施形態において、本開示のナノスケール金属有機構造体は、MOFの空洞またはチャネル内に位置する、ポリオキソメタレート(POM)(タングステン、モリブデン、もしくはニオブ酸ポリオキソメタレートなど)、金属ナノ粒子(金、パラジウム、もしくは白金ナノ粒子など)、または金属酸化物ナノ粒子(酸化ハフニウムもしくは酸化ニオブナノ粒子など)を含んでもよいか、または更に含む。
【0109】
II.E.放射線療法のためのNMOF
また、本明細書に更に後述されるように、UiO−66、UiO−67、及びアミノUiO−68を含む3つのHf NMOFを合成した。これらのNMOFは、Hf金属クラスタ及び無視できる光増感特性を有する配位子から構築された。MOFチャネルからのROS(特にヒドロキシルラジカル)の急速な拡散に加えて、Hf金属クラスタがX線を吸収する能力は、有効な放射線療法を可能にした。また、非結晶性構造を有するHfOナノ粒子を比較として使用した。
【0110】
II.F.PDTと免疫療法との組み合わせ
PDTは、隣接する正常な細胞を保存しながら、腫瘍細胞を選択的に死滅させることができる。PDTは、放射線療法または化学療法との交差抵抗性を引き起こさないため、伝統的な放射線療法及び/または化学療法に対して有意に応答していない癌患者の治療において有用である。PDTは、標的化された部位で局在化した浮腫として観察される、強度の急性炎症反応を誘発することができる。PDTによって誘発される炎症は、自然免疫系によって編成される腫瘍抗原非特異的プロセスである。PDTは、治療部位で、自然免疫警告要素によって検出され得る、損傷関連分子パターン(DAMP)などの豊富な警告/危険信号を急速に発生させる上で特に有効である。抗腫瘍免疫のPDT媒介亢進は、死腫瘍細胞及び瀕死腫瘍細胞による樹状細胞の刺激によるものと考えられており、これには、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)の動員及び活性化、その後、免疫メモリー細胞の形成及び後続の腫瘍増殖に対する抵抗が伴い得る。
【0111】
本開示の主題のいくつかの実施形態に従うと、DBP−MOF及び本開示の主題の他のNMOFは、PDT及び免疫療法の組み合わせをもたらすために使用することができる。いくつかの無機材料、有機材料、及び混成材料が、近赤外光を強度に吸収して、一重項酸素を発生させることが既知である。そのようなPDT材料の治療的使用は、免疫チェックポイント阻害剤療法と組み合わせることができる。そのような組み合わせ療法のための例示的な光増感剤としては、クロリンe6もしくはMC540と組み合わせた、NaYF(例えば、Y:Yb:Er=78%:20%:2%の割合でドープしたもの)などの上方変換ナノ粒子;2−デビニル−2−(1−ヘキシルオキシエチル)ピロフェオホルビド(HPPH)充填シリカナノ粒子などの、シリカ系ナノ粒子中に包埋された光増感剤;DSPE−PEG5kポリマーミセル中に充填されたZn(II)フタロシアニンなどのポリマーミセル充填光増感剤;リポソーム中に被包された5,10,15,20−テトラキス(m−ヒドロキシフェニル)クロリン、及び5−アミノレブリン酸(ALA)被包リポソームなどのリポソーム系光増感剤送達系;HSA−フェオホルビドa共役粒子などのヒト血清アルブミン系増感剤送達系;ローズベンガル及びPpIXが充填されたPEG結合ポリ(プロピレンイミン)またはポリ(アミドアミン)などのデンドリマー系光増感剤送達系;ポルフィリン−脂質共役(ピロ脂質)自己組み立てナノ小胞(ポルフィゾーム)及びNCP@Pyrolipidなどの、ポルフィリン共役、クロリン共役、またはバクテリオクロリン共役リン脂質系二重層送達系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
II.G.X−PDTと免疫療法との組み合わせ
本開示の主題のいくつかの実施形態に従うと、X線誘起PDTは、阻害剤系免疫療法と組み合わせて、適応免疫応答、例えば、細胞傷害性T細胞を使用した、確立された腫瘍の全身拒絶を引き起こすことができる。免疫療法剤と組み合わせると、一次性腫瘍の有効な根絶だけでなく、NMOF系X−PDT効果を使用して、遠隔転移性腫瘍の抑制/根絶もまた達成することができる。いくつかの実施形態において、抗腫瘍有効性は、免疫原性細胞死を引き起こすことが既知である免疫療法剤を追加することによって、亢進することができる。
【0113】
いくつかの無機材料が、X線を強度に吸収し、吸収されたX線エネルギーを可視光及び近赤外光に変換することが既知である。その後、これらのX線シンチレーションナノ材料から放射された近赤外光は、近くの光増感剤によって吸収されて、X線誘起PDT効果が可能となり得る。他の種類の材料もまた、X線誘起PDTを達成することができる。このX線誘起PDTを免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせると、優れた放射線免疫療法を得ることができる。X線シンチレーションナノ材料の例としては、LnO:Ln'ナノ粒子、LnOS Ln'ナノ粒子、またはLnX:Ln'ナノ粒子(式中、Ln=Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luであり、Ln'=Ce、Pr、Eu、Tbなどであり、X=F、Cl、Br、及びIである);M(μ−O)(μ−OH)などのX線シンチレーターMOF(式中、M=Hf、Zr、またはCeであり、L=9,10−アントラセニルビス安息香酸である)及び重金属二次構成単位を含有するMOFの他の製剤;ランタニド系MOF、このSBUとしては、Ln(μ−OH)(CO(SO、[Ln(OH)(CO(無限1−D鎖)、[Ln(OH)(CO(無限1−D鎖)、[Ln(CO2)−Ln(OH(CO(無限1−D鎖)が挙げられるが、これらに限定されず(式中、Ln=La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び/またはこれらの混合物の組み合わせ)、架橋配位子としては、[1,4−安息香酸ジカルボキシレート]、[2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゼンジカルボキシレート]、[1,3,5−安息香酸トリカルボキシレート]、[1,3,5−ベンゼントリスベンゾエート]、[5−(ピリジン−4−イル)イソフタル酸]、[4,4',4''−S−トリアジン−2,4,6−トリイルトリベンゾエート]、[ビフェニル−3,4',5−トリカルボキシレート]、[4,4'−[(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン)ジ−2,1−エテンジイル]ビス−安息香酸]などが挙げられるが、これらに限定されない;ZnS:M量子ドット(M=Cu、Co、Mn、Euなどである)または炭素ドットなどの量子ドット;金ナノ粒子、または白金もしくは他の第3列金属粒子;ならびにSrAl:Eu2+、NaYF:Tb3+、Er3+などの他のX線シンチレーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
X線誘起PDTにおける使用のために、X線シンチレーションナノ粒子に共役した光増感剤の例としては、粒子表面に配位的に結合した光増感剤、この配位方法としては、カルボキシレート配位またはホスフェート配位(ナノ粒子上の開いた金属部位(例えば、Ln3+、Zn2+、Al3+など)への、PS上のカルボキシレート基またはホスフェート基の配位を介したものなど)が挙げられるが、これらに限定されない;((金ナノ粒子中の)Au、または、例えば、量子ドット中のZn、Cdに対するチオール基の配位を通してナノ粒子に共役するチオールを含有するPSを介した)ナノ粒子に対するチオール配位;例えば、官能基を有するオリゴマーまたはポリマー(例えば、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(マレイン酸)誘導体など)に対してPSを共有結合的に共役させること、及び例えば、アミド共役、エステル共役、チオ尿素共役、「クリックケミストリー」、ジスルフィド結合共役などを介してMOF配位子に共有結合する、例えば、光増感剤(図27及び28に示すもののうちのいずれかなどであるが、これらに限定されない)を使用して、追加の官能基(例えば、カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシル基、アミン基など)の配位を通してシンチレーター粒子を粒子表面上の金属に共役させることを介した、ポリマー共役及び表面コーティング;多孔性材料の表面修飾及び捕捉、メソポーラスシリカコーティング及び捕捉、ならびにMOFコーティング及び捕捉、例えば、シリカ層の細孔中に捕捉された光増感剤によるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
II.H.X線誘起光線力学療法のためのX線装置の精密化。
本開示の主題のいくつかの実施形態において、X線源を精密化して、X−PDT効果を亢進してより効率的な癌細胞の死滅を可能にすることができる。X線照射器は、遮蔽されたエンクロージャの内側に少なくとも1つのX線源を含むパノラマ照射器を含み得、1つ以上のX線源はそれぞれ、腫瘍の近位の対向表面積に等しい面積にわたってX線束を放射するように動作可能である。例えば、これらの全体がそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2010/0189222号及び国際公開第2011/049743号を参照されたい。タングステン標的放射に基づくX線発生器が、この用途に適する。出力エネルギーは、典型的には100〜500kVの範囲である。特定の実施形態において、21以上の原子番号を有する少なくとも1つの金属を含有する、選択された材料の少なくとも1つの取り外し可能な減衰器またはフィルタが、本用途に関与する。各減衰器は、平板であっても、勾配のある厚さを有する板であってもよい。例えば、その全体がそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,430,282号を参照されたい。減衰器はまた、規則的に離間配置された格子/孔で調節されてもよい。この用途において、出力X線エネルギーは、放射線増感剤/放射線シンチレーターのエネルギー吸収を最大化するために、減衰器によるフィルタリング後に調節され得る。X線を屈折させるためのX線屈折レンズを有するX線帯域通過フィルタもまた、使用され得る。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/102632号を参照されたい。
【0116】
III.金属有機構造体(MOF)
本開示の主題のいくつかの実施形態に従うと、光増感剤及び/またはX線吸収部分/シンチレーターは、例えば、PDT、放射線療法、X線誘起PDT、またはRTとX−PDTとの組み合わせにおいて使用するために、MOFまたはNMOF担体プラットフォーム中で組み合わせることができる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、光増感剤(PS)と、架橋配位子を介してともに連結された複数の金属含有二次構成単位(SBU)とを含むMOFを提供する。いくつかの実施形態において、PSは、MOFのSBU中の金属との配位結合(PSまたはその誘導体が架橋配位子である実施形態、及びPSがMOF中の細孔または空洞内に非共有結合的に捕捉される実施形態を含む)によって、(すなわち、架橋配位子へのMOFの共有結合を介して)MOF中に組み込まれる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、(例えば、MOFナノ粒子の非MOFコーティング層に結合されるか、または別様に関連付けられるのに対して)MOFナノ粒子のコア内に組み込まれたPSを含む、MOFナノ粒子(すなわち、NMOF)を提供することができる。
【0117】
MOFのSBUは、任意の好適なSBUを含有し得る。例えば、好適なSBUとしては、Zr−オキソクラスタ、Hf−オキソクラスタ、Zn−オキソクラスタ、Ti−オキソクラスタ、Cu−カルボキシレートパドルホイール、及び他のものを挙げることができるが、これらに限定されない。しかしながら、SBUは、これらの基に限定されない。いくつかの実施形態において、SBUは、X線を吸収することができる金属カチオンを含む。いくつかの実施形態において、SBUは、Hf、ランタニド金属(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLu)、Ba、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、ならびにBiからなる群からの金属の金属イオンを含有し得る。いくつかの実施形態において、SBUは、酸化物及びOHから選択されるアニオンを含み得る。いくつかの実施形態において、MOFは、HfオキソクラスタSBUを含む。
【0118】
任意の好適な架橋配位子または配位子が使用され得る。いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、複数の配位部位を含む有機化合物である。配位部位はそれぞれ、金属カチオンとの配位結合を形成することができる基、またはそのような基を形成することができる基を含み得る。したがって、各配位部位は、非共有電子対、負電荷、または非共有電子対もしくは負電荷を形成することができる原子もしくは官能基を含み得る。典型的な配位部位としては、カルボキシレート基及び誘導体そこ(例えば、エステル、アミド、無水物)、窒素含有基(例えば、アミン、窒素含有芳香族、及び非芳香族ヘテロ環)、アルコール、フェノール、ならびに他のヒドロキシル置換芳香族基などの官能基;エーテル、ホスホネート、ホスフェート、チオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、2〜10個の配位部位(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の配位部位)を含む。いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、2つまたは3つのSBUに結合することができる。例えば、架橋配位子は、ジ−カルボキシレートポルフィリン誘導体であり得、2つのカルボキシレート基のそれぞれが、2つの別個のSBUの金属イオンに対する配位結合を形成し得る一方で、ポルフィリン窒素原子は、別のカチオン(複数可)(例えば、別の金属カチオン)に対する配位結合を形成し得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、各架橋配位子は、少なくとも2つの基を含み、該2つの基のうちのそれぞれは個々に、カルボキシレート、芳香族または非芳香族窒素含有基(例えば、ピリジン、ピペリジン、インドール、アクリジン、キノロン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアゾール、及びオキサゾール)、フェノール、アセチルアセトネート(acac)、ホスホネート、ならびにホスフェートを含む群から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、カルボキシレート含有配位子、ピリジン含有架橋配位子、フェノール含有配位子、アセチルアセトネート含有架橋配位子、ホスホネート含有架橋配位子、またはホスフェート含有架橋配位子である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、少なくとも2つのカルボキシレート基を含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの少なくとも1つは、PSまたはPSの誘導体を含む。例えば、架橋配位子は、SBU中の金属イオンに対する共有結合を形成するための1つ以上の共有結合基(例えば、カルボキシレート含有基、芳香族もしくは非芳香族窒素含有基、フェノール含有基、アセチルアセトネート含有基、ホスホネート含有基、またはホスフェート含有基)を含むように誘導体化されているPSを含み得る。いくつかの実施形態において、そのような基は、PS上で直接置換される。いくつかの実施形態において、PSは、アルキレン部分またはアリーレン部分を含有する中間リンカー基ありまたはなしで、例えば、アミド、エステル、チオ尿素、または別の好適な結合を介して、そのような基を含有する別の化合物に共有結合されることによって、誘導体化される。いくつかの実施形態において、PSは、SBU中の金属イオンと配位結合を形成するための基を含有する有機化合物に錯体化されることによって、誘導体化される。いくつかの実施形態において、PSは、SBU中の金属イオンと配位結合を形成するための基を既に含有する。
【0122】
架橋配位子またはその一部として、任意の好適なPSが使用され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ポルフィリン、クロリン、クロロフィル、フタロシアニン、ルテニウム−ビピリジン錯体、またはイリジウム−ビピリジン錯体を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ジフェニル−ジ(ベンゾエート)ポルフィリン、ジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(ビピリジン)、テトラ(ベンゾエート)ポルフィリン、またはジベンゾアート(ビピリジン)ルテニウムビス(フェニルピリジン)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ルテニウム(II)ビス(2,2'−ジピリジン)及び5,5'−ビスフェニル−2,2'−ピリジンのジカルボキシレートから形成される錯体である。したがって、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、
【化6】
である。
【0123】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、ポルフィリン系配位子、クロリン系配位子、バクテリオクロリン系配位子、大環状π−共役系、ボロン−ジピロメテン(BODIPY)誘導体、またはジサリシリデン−1,2−シクロヘキシリデンジアミン誘導体である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋配位子は、5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(DBP)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン(DBC)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,15−ジ(p−ベンゾアート)バクテリオクロリン(DBBC)またはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,10,15,20−テトラ(p−ベンゾアート)ポルフィリンまたはその誘導体及び/もしくは金属錯体;5,10,15,20−テトラ(p−ピリジル)ポルフィリン、フタロシアニン−オクタカルボン酸(任意で、金属で錯体化される);ジ(5'−ベンゾアートサリシリデン)−1,2−シクロヘキシリデンジアミンの白金またはパラジウム錯体;フタロシアニン(任意で、金属で置換される);ならびにフタロシアニン(任意で、金属で置換される);ならびにモテクサフィンルテチウムを含む群から選択されるが、これらに限定されない。例示的なDBP、DBC、及びDBBC配位子の構造を、以下の模式図1及び2に示す。模式図1は、左から右へ、DBP、DBC、及びDBBC配位子の構造を示し、コアDBP、DBC、及びDBBC構造は、任意で、10位置または20位置において、アリール基または置換アリールR基で置換され得る。好適なRアリール基としては、フェニル基、ヒドロキシルフェニル基、及びペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、R基は、他の芳香族基(例えば、ナフチル基など)及び/または他のアリール基置換基、例えば、他のハロゲン、アルキル基などを含み得る。更に、コアDBP、DBC、及びDBBC配位子は、5位置及び15位置でベンゾエート基上に、及び/または窒素原子含有環上に、追加のアリール基置換基を含み得る。模式図2に示すように、DBP、DBC、及びDBBC配位子はまた、ポルフィリン、クロリン、またはバクテリオクロリン環の窒素原子によって錯体化された金属イオンも含み得る。好適な金属Mとしては、Pt、Pd、Zn、Mn、Fe、Sn、及びCuが挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
【化8】
【0124】
本開示の主題に従って、架橋配位子として使用するための、いくつかの例示的なより具体的なDBP、DBC、及びDBBC配位子の構造としては、5,10,15,20−テトラ(3',5'−ジカルボキシルフェニル)ポルフィリン、5,10,15,20,テトラ−(p−カルボキシルフェニル)ポルフィリン(5,10,15,20−テトラ(ベンゾアート)ポルフィリン(TBP)としても知られる)、5,10,15,20−テトラ(p−カルボキシルフェニル)クロリン、及び5,10,15,20−テトラ(p−カルボキシルフェニル)バクテリオクロリンが挙げられる。図29を参照されたい。フタロシアニン配位子、ならびにより具体的で例示的な配位子であるフタロシアニン−オクタバオキシル酸(octabaoxylic acid)及びテキサフィリン系モテクサフィンルテチウム(Lutrinとしても知られる)の一般構造とともに、別の例示的なポルフィリン系配位子、すなわち、5,10,15,20−テトラ(p−ピリジル)ポルフィリンの構造を、図30に示す。図30に示すように、フタロシアニン配位子は、任意で、金属イオンM、例えば、Pt、Pd、Znに錯体化された構造であり得る。一般的なフタロシアニン配位子のR基は、任意の好適なアリール基置換基、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロ基、アルキル基、ホスフェート基などであり得る。いくつかの実施形態において、フタロシアニンの少なくとも2つのR基は、カルボキシル基である。
【0125】
例示的なジサリシリデン−1,2−シクロヘキシリデンジアミン架橋配位子ジ−(5'ベンゾアートサリシリデン)−1,2−シクロヘキシリデンジアミンの構造を、図31の右側に示す。図31に示すように、配位子は、任意で、PtまたはPdなどの金属イオンMに錯体化され得る。更に、図31には示されないものの、シクロヘキシル基及び/またはフェニル環の炭素原子は、任意で、1つ以上のアルキル基置換基またはアリール基置換基で置換され得る。
【0126】
図31はまた、左側に、BODIPY誘導体系架橋配位子の構造も示す。BODIPY構造の芳香族置換基R、R、及びRは、任意の好適なアリール基置換基を含み得る。図31に示すように、いくつかの実施形態において、R基は、カルボキシル置換アリール基またはアルカリル基、例えば、−C(COH)、またはCH=CH−C(COH)である。
【0127】
いくつかの実施形態において、PS及び/または架橋配位子のうちの少なくとも1つは、プロトポルフィリンIX、パドポルフィン;テトラ(m−ヒドロキシフェニル)クロリン(m−THPC);NPe6、クロリンe6、ロスタポルフィン、及びこれらの誘導体を含むが、これらに限定されない群から選択される。これらの例示的な配位子/PSの構造を、図32に示す。
【0128】
いくつかの実施形態において、PSは、共有結合染料、例えば、ジ−カルボキシレート−ジ−ホスホネート含有、ジ−ホスフェート含有、またはジピリジン含有有機架橋配位子に共有結合された染料である。共有結合の種類は、当該技術分野において既知である従来の共役戦略を使用して、染料上の利用可能な官能基(例えば、カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基)に基づいて決定することができる。例えば、染料がアミノ基を含有する場合、それは、チオ尿素またはアミドを介して、架橋配位子に共有結合され得る。染料がカルボキシル基を含有する場合、それは、架橋配位子上に存在するカルボキシル基及びアミノ基の縮合によって形成されるアミド連結を介して、任意で、まずカルボキシル基をサクシニミジルエステルなどの活性化エステルに変換することによって、架橋配位子に共有結合され得る。いくつかの実施形態において、染料は、アミドまたはチオ尿素結合を介して、MOFに(例えば、MOFの架橋配位子に)共有結合される。
【0129】
いくつかの実施形態において、MOFは、パラ−テルフェニルジカルボン酸またはパラ−クアテルフェニルジカルボン酸(すなわち、(HOC)C−C−C−CCOH)誘導体を含む少なくとも1つの架橋配位子を含有する。いくつかの実施形態において、誘導体は、フェニル環のうちの1つ上の部位で(例えば、パラ−テルフェニルジカルボン酸またはパラ−クアテルフェニルジカルボン酸の内部フェニル環の炭素原子で)PSに共有結合された、パラ−テルフェニルジカルボン酸またはパラ−クアテルフェニルジカルボン酸である。いくつかの実施形態において、MOFは、
【化9】
または
【化10】
を含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、PSは、MOF中に非共有結合的に捕捉されている、例えば、MOF中の空洞または細孔内に捕捉されている染料である。任意の好適な染料が使用され得る。架橋配位子への共有結合、または非共有結合的に捕捉されたPSとしての使用のいずれかで、本開示のMOFにおいて使用するための染料としては、トルイジンブルー、メチレンブルー、ナイルブルー、ヒペリシン、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、及びカルコゲノピリリウムが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の主題に従ってPSとして使用するための例示的な染料の構造を、図32に示す。
【0131】
いくつかの実施形態において、MOFは、例えば、MOF中に非共有結合的に捕捉された、別の治療剤を更に含み得る。いくつかの実施形態において、他の治療剤は、本明細書の他の箇所に列挙されるもののうちの1つなどの、化学療法剤または免疫療法剤である。いくつかの実施形態において、MOFは、白金系薬物(例えば、シスプラチンもしくはオキサリプラチン)、テモゾロミド、ドキソルビシン、カンプトテシン、パクリタキセル、ペメトレキセド、メトトレキサート、またはIDO阻害剤を含むが、これらに限定されない群から選択される、別の非共有結合的に結合した薬剤を含み得、任意で、該IDO阻害剤は、ICBN24360、NLG−919、1−メチル−D−トリプトファン、及び1−メチル−L−トリプトファンを含む群から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態において、MOFは、共有結合または静電気的に結合した、ポリエチレングリコール(PEG)部分またはポリビニルピロリジン(PVP)などであるが、これらに限定されない親水性ポリマーを含む部分を更に含み得る。いくつかの実施形態において、MOFは、DOTAP、DOPC、及びDSPE−PEGなどであるが、これらに限定されない脂質(複数可)で更にコーティングされ得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、MOFは、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施形態において、ナノスケール粒子は、約250nm未満の平均直径を有し得る。いくつかの実施形態において、平均直径は、約20〜約200nmの間である。いくつかの実施形態において、ナノスケール粒子は、約20nm〜約180nmの間(例えば、約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、または約180nm)の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、ナノスケール粒子は、約20nm〜約140nmの間の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、プレート様形態を有し得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、本明細書に記載されるナノスケール粒子のうちの1つと、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、ヒトにおいて薬学的に許容される。
【0135】
IV.光線力学療法及びX線誘起光線力学療法のためにMOFを使用する方法
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、1つ以上の免疫療法剤及び/もしくは1つ以上の化学療法剤の同時投与ありもしくはなしのいずれかである、光線力学療法において、またはX線誘起光線力学療法において、MOF及び/または無機ナノ粒子を使用する方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、光線力学療法を介して、疾患、例えば、癌または病原性感染症の治療における使用のためのPSを含むMOFを提供する。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、疾患の治療を必要とする患者における該疾患を治療するための方法を提供し、本方法は、患者に、光増感剤と、架橋配位子を介してともに連結された複数のSBUとを含むMOFを投与することと、患者に可視光または近赤外(NIR)光を照射することとを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ以上の架橋配位子は、PSもしくはその誘導体であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、PSは、MOF中(例えば、MOFマトリクス中の細孔もしくは空洞内)に包埋されるか、または非共有結合的に捕捉される。
【0136】
患者は、例えば、患部解剖学的構造の部分または患部付近を照射される。いくつかの実施形態において、患者は、皮膚及び胃腸管から選択されるが、これらに限定されない解剖学的構造の部分を照射される。いくつかの実施形態において、患者の血液が照射される。
【0137】
いくつかの実施形態において、疾患は癌である。例えば、疾患は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、及び膵臓癌を含む群から選択され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、患者に追加の癌治療(例えば、外科手術、従来の化学療法剤など)を投与することを更に含み得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、X線誘起PDT及び/またはRTを使用して、疾患(例えば、癌)を治療するための方法を提供し、MOF上に存在する部分によるX線の吸収が、PDTに必要とされる光を提供することができる。そのような方法は、例えば、疾患の部位が患者の解剖学的構造の表面付近ではないか、または別様に可視光もしくは近赤外光によって十分に照射され得ない場合に好適であり得る。本方法は、治療を必要とする患者に、光増感剤と、有機架橋配位子を介して連結された複数のSBUと、X線を吸収することができる部分とを含むMOFを投与することと、患者の少なくとも一部分(例えば、1〜50画分)にX線を照射することとを伴い得る。いくつかの実施形態において、MOFのSBUは、X線を吸収することができる金属カチオンを含有する。いくつかの実施形態において、架橋配位子のうちの1つ以上は、9,10−アントラセニルビス(安息香酸)などのアントラセン系リンカーを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、疾患は、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、及び膵臓癌から選択される。いくつかの実施形態において、疾患は、転移性癌である。いくつかの実施形態において、本方法は、患者に追加の癌治療を投与することを更に含み得る。
【0140】
本開示の主題のいくつかの実施形態に従うと、免疫療法剤の使用は、PDT、RT、またはX線誘起PDT治療を亢進することができる。したがって、いくつかの実施形態において、上述の本方法は、患者に、免疫療法剤(PD−1/PD−L1抗体、IDO阻害剤、CTLA−4抗体、OX40抗体、TIM3抗体、LAG3抗体、PD−1/PD−L1を標的とするsiRNA、IDOを標的とするsiRNA、及びCCR7を標的とするsiRNAなどであるが、これらに限定されない)ならびに本明細書の他の箇所に引用されるか、または当該技術分野において既知である任意の他の免疫療法剤を投与することを更に含み得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、X線誘起PDTと免疫療法とを組み合わせる、疾患(例えば、癌)を治療する方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者に、シンチレーターと、光増感剤を含むナノ粒子とを投与することと、患者の少なくとも一部分(例えば、1〜50画分)にX線を照射することと、患者に免疫療法剤を投与することとを含む方法を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態において、疾患は、癌、例えば、頭部腫瘍、頸部腫瘍、乳癌、婦人科腫瘍、脳腫瘍、結腸直腸癌、肺癌、中皮腫、軟部組織肉腫、皮膚癌、結合組織癌、脂肪癌、肺癌、胃癌、肛門生殖器癌、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、前立腺癌、中枢神経系癌、網膜癌、血液癌、神経芽細胞腫、多発性骨髄腫、リンパ癌、及び膵臓癌から選択される。いくつかの実施形態において、疾患は、転移性癌である。
【0143】
いくつかの実施形態において、本方法は、患者に追加の癌治療を投与することを更に含み得る。追加の癌治療は、治療する医師の最良の判断に従って、治療される癌及び/または他の要因(患者の治療歴、全体的健康など)に基づいて選択され得る。追加の癌治療は、外科手術、放射線療法、化学療法、毒素療法、免疫療法、寒冷療法、及び遺伝子療法を含むが、これらに限定されない群から選択され得る。いくつかの実施形態において、追加の癌治療は、患者に従来の免疫療法剤(オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ミトキサントロン、パクリタキセル、ジギトキシン、ジゴキシン、及びセプタシジンなどであるが、これらに限定されない)または当該技術分野において既知である別の従来の免疫療法剤を投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、追加の癌治療は、患者に、ポリマーミセル製剤、リポソーム製剤、デンドリマー製剤、ポリマー系ナノ粒子製剤、シリカ系ナノ粒子製剤、ナノスケール配位ポリマー製剤、ナノスケール金属有機構造体製剤、及び無機ナノ粒子(金ナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子など)製剤を含む群から選択される薬物製剤を投与することを伴い得る。いくつかの実施形態において、薬物製剤は、従来の免疫療法剤を含む製剤であり得る。
【0144】
本開示の主題に従って使用するための免疫療法剤は、当該技術分野において既知である任意の好適な免疫療法剤であり得る。本開示の主題における使用に好適な免疫療法剤としては、PD−1、PD−L1、CTLA−4、IDO、及びCCR7阻害剤、つまり、機能、転写、転写安定性、翻訳、修飾、局在化、または標的もしくは標的関連配位子(抗標的抗体、標的の小分子アンタゴニスト、標的を遮断するペプチド、標的の遮断融合タンパク質、もしくは標的を抑制するsiRNA/shRNA/microRNA/pDNAなど)をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの分泌を阻害または修飾する組成物が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の主題に従って使用され得る抗体としては、抗CD52(アレムツズマブ)、抗CD20(オファツムマブ)、抗CD20(リツキシマブ)、抗CD47抗体、抗GD2抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の主題に従って使用するための共役モノクローナル抗体としては、放射性標識した抗体(例えば、イブリツモマブ・チウキセタン(ゼヴァリン)など)、化学標識した抗体(抗体−薬物共役体(ADC))、(例えば、ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス)、アド−トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)、デニロイキンジフチトクス(オンタック)など)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の主題に従って使用するためのサイトカインとしては、インターフェロン(すなわち、IFN−α、INF−γ)、インターロイキン(すなわち、IL−2、IL−12)、TNF−αなどが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の主題に従って使用するための他の免疫療法剤としては、ポリサッカライド−K、ネオ抗原などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、抗CD52抗体、抗CD20抗体、抗CD20抗体、抗CD47抗体、抗GD2抗体、放射性標識した抗体、抗体−薬物共役体、サイトカイン、ポリサッカライドK、及びネオ抗原を含む群から選択され得る。好適なサイトカイン免疫療法剤は、例えば、インターフェロン(IFN)、インターロイキン(IL)、または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)であり得る。いくつかの実施形態において、サイトカイン免疫療法剤は、IFN−α、INF−γ、IL−2、IL−12、及びTNF−αから選択される。いくつかの実施形態において、免疫療法剤は、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、CTLA−4阻害剤、IDO阻害剤、及びCCR7阻害剤を含む群から選択される。
【0146】
患者は、任意の好適な様式で、かつ/または任意の好適な機器(医学もしくは獣医学設定においてX線の送達のために現在使用されているものなど)を使用して、X線を照射され得る。いくつかの実施形態において、X線源及び/または出力は、疾患治療を亢進するように精密化され得る。例えば、X線は、X線照射による患者におけるDNA損傷を最小化し、かつシンチレーターによるX線吸収を最大化するように選択された、ピーク電位、電流、及び/または任意でフィルタを使用して発生させることができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、照射は、タングステンまたは別の金属標的、コバルト60源(コバルトユニット)、線形加速器(ライナックス)、Ir192源、及びセシウム137源を使用してX線を発生させることを含み得る。いくつかの実施形態において、照射は、患者を照射する前に、X線(例えば、タングステン標的を使用して発生させたX線)を、フィルタに通過させることを含む。いくつかの実施形態において、フィルタは、少なくとも20の原子番号を有する元素を含み得る。いくつかの実施形態において、フィルタは、銅(Cu)を含む。いくつかの実施形態において、フィルタは、約5ミリメートル(mm)未満である厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、フィルタは、約4mm未満(例えば、約3mm未満、外1mm未満、約0.5mm未満、約0.4mm未満、約0.3mm未満、約0.2mm、または約0.1mm未満)である厚さを有し得る。
【0148】
X線は、X線照射による患者におけるDNA損傷を最小化し、かつシンチレーターによるX線吸収を最大化するように選択された、ピーク電位、電流、及び/または任意でフィルタを使用して発生させることができる。いくつかの実施形態において、X線は、約230kVp未満であるピーク電位を使用して発生される。いくつかの実施形態において、ピーク電位は、約225kVp未満、約200kVp未満、約180kVp未満、約160kVp未満、約140kVp未満、約120kVp未満、約100kVp、または約80kVp未満である。いくつかの実施形態において、X線は、約120kVpであるピーク電位を使用して発生される。
【0149】
任意の好適なシンチレーターが使用され得る。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはLu)を含む。シンチレーターは、例えば、ランタニドナノ粒子(例えば、光増感剤を含むMOFと同時投与される、かつ/または光増感剤を含むMOFに結合される)であり得る。例えば、ランタニドナノ粒子は、光増感剤を含むMOF中の空洞または細孔内に捕捉され得る。いくつかの実施形態において、ランタニドは、光増感剤を含むMOFのSBUの金属である。いくつかの実施形態において、ランタニドナノ粒子は、ランタニドコアシェルナノ粒子であり得、更に任意で、該ランタニドコアシェルナノ粒子のシェルは、ランタニドカルコゲニドを含む。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ランタニドアルミニウムガーネットまたはフッ化ランタニドを含む。
【0150】
他の好適なシンチレーターとしては、炭素ドット、コアシェルナノ粒子(シェルが硫化亜鉛を含み、コアが遷移金属もしくはランタニド金属を含むもの)、及び/または金、白金、もしくはイリジウムを含むナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、またはセリウム(Ce)を含むMOFを含み得る。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、M(μ−O)(μ−OH)を含み、式中、Mは、ハフニウム、ジルコニウム、またはセリウムであり、Lは、9,10−アントラセニルビス安息香酸である。いくつかの実施形態において、シンチレーターは、Hf、Zr、またはCeを含むMOFを含み得、光増感剤は、MOFに共有結合される。光増感剤は、例えば、アミド共役、エステル共役、チオ尿素共役、クリックケミストリー、またはジスルフィド結合共役を通して、MOFの有機架橋配位子に結合し得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、光増感剤は、配位結合を通してシンチレーターに結合する。例えば、いくつかの実施形態において、光増感剤は、カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシ基、アミノ基、またはホスフェート基を含み、シンチレーターは、金属(例えば、MOFのSBUの金属)を含み、該カルボキシレート基、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、またはホスフェート基は、配位結合を介して該金属に結合する。したがって、いくつかの実施形態において、光増感剤は、シンチレーターMOFの結合配位子であり得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、光増感剤及びシンチレーターは連結され、該連結は、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ポリ(マレイン酸)、またはC−C15直鎖もしくは分岐アルキル鎖などの部分を含み得る。いくつかの実施形態において、光増感剤は、図27もしくは28に示す構造のうちの1つ、またはそのような構造の脱プロトン化形態を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、シンチレーターは、MOF中またはメソポーラスシリカ中に被包され得る。いくつかの実施形態において、光増感剤もまた、メソポーラスシリカの細孔中に捕捉されるか、またはMOFに共有結合される。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、ナノ粒子化学療法剤と免疫療法剤との組み合わせを介して、疾患(例えば、癌)を治療する追加の方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の主題は、患者における疾患(例えば、癌)を治療する方法を提供し、本方法は、患者にナノ粒子化学療法剤を投与することと、患者に免疫療法剤を投与することとを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子化学療法剤は、本開示の主題のMOF(例えば、光増感剤を含むMOF)を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、患者に可視光もしくはNIR光を照射すること、または患者の少なくとも一部分にX線を照射することを更に含む。いくつかの実施形態において、MOFは、シンチレーターを更に含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤(オキサリプラチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ミトキサントロン、パクリタキセル、ジギトキシン、ジゴキシン、及びセプタシジンなどであるが、これらに限定されない)または当該技術分野において既知である別の従来の免疫療法剤が、MOF中に捕捉される。
【0156】
V.製剤化
いくつかの実施形態において、本開示の主題の組成物は、薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。任意の好適な医薬製剤を使用して、対象に投与するための組成物を調製することができる。いくつかの実施形態において、組成物及び/または担体は、ヒトにおいて薬学的に許容される。
【0157】
例えば、好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、殺菌性抗生物質、及び対象の体液によって製剤を等張にする溶質を含有し得る水溶性または非水溶性無菌注射溶液、ならびに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水溶性または非水溶性無菌懸濁液を挙げることができる。製剤は、単位用量または複数用量容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)中に存在し得、使用直前に無菌液体担体(例えば、注射用水)の添加のみを必要とする、凍結またはフリーズドライ(凍結乾燥)条件で貯蔵され得る。いくつかの例示的な成分は、一例において0.1〜10mg/ml、別の例において約2.0mg/mlの範囲内のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、及び/または例えば10〜100mg/ml、別の例において約30mg/mlの範囲内のマンニトールもしくは別の糖、及び/またはリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
【0158】
具体的に上述される成分に加えて、本開示の主題の製剤は、当該製剤の種類に関して当該技術分野において慣習的である他の薬剤を含み得ることを理解されたい。例えば、無菌無発熱物質水溶液及び非水溶液が使用されてもよい。
【0159】
VI.対象
本明細書に開示される方法及び組成物は、インビトロ(例えば、単離された細胞もしくは組織上)または対象においてインビボ(すなわち、患者などの生きた生物)のいずれかで、試料上で使用することができる。いくつかの実施形態において、本開示の主題の原理は、本開示の主題が、「対象」及び「患者」という用語に含まれる、全ての脊椎動物種(哺乳動物を含む)に関して有効であることを示すことが理解されるものの、対象または患者は、ヒト対象である。更に、哺乳動物は、本明細書に開示される組成物及び方法を用いることが望ましい、任意の哺乳動物種、特に農業及び家畜哺乳動物種を含むことが理解される。
【0160】
したがって、本開示の主題の方法は、温血脊椎動物種において特に有用である。したがって、本開示の主題は、哺乳動物及び鳥類に関する。より具体的には、ヒトなどの哺乳動物、ならびにヒトにとって、絶滅の危機に瀕しているために重要である(シベリアトラなど)、経済的に重要である(ヒトによる消費のために農場で飼育される動物)、及び/または社会的に重要である(ペットとして、もしくは動物園で飼育される動物)哺乳動物、例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌなど)、ブタ類(ブタ、オスブタ、及びイノシシ)、反芻動物(ウシ、オスウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、及びラクダなど)、ならびにウマのための方法及び組成物が提供される。絶滅の危機に瀕している、動物園でもしくはペットとして飼育される(例えば、オウム)種類の鳥類、ならびに家禽、及びより具体的には家畜家禽(例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどの家禽類であるが、これは、それらもまた、ヒトにとって経済的に重要であるためである)の治療を含む、鳥類の治療もまた、提供される。したがって、家畜ブタ類(ブタ及びオスブタ)、反芻動物、ウマ、家禽類などを含むが、これらに限定されない家畜の治療もまた、提供される。
【0161】
VII.投与
本開示の主題の組成物の投与のための好適な方法としては、静脈内及び腫瘍内注射、経口投与、皮下投与、腹腔内注射、頭蓋内注射、ならびに直腸投与が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、任意の他の様式で、例えば、肺経路内に組成物を噴霧することによって、治療を必要とする部位に堆積され得る。本開示の主題の組成物を投与する具体的な様式は、治療される細胞の分布及び存在量、ならびに組成物のその投与部位からの代謝または除去の機構を含む様々な要因に依存する。例えば、比較的表在性の腫瘍は、腫瘍内注射され得る。対照的に、内部腫瘍は、静脈内注射に従って治療され得る。
【0162】
一実施形態において、投与方法は、領域化された送達または治療される部位での集積の特徴を網羅する。いくつかの実施形態において、組成物は、腫瘍内に送達される。いくつかの実施形態において、標的への組成物の選択的送達は、組成物の静脈内注射、その後、標的の光線力学治療(光照射)によって達成される。
【0163】
組成物を肺経路に送達するために、本開示の主題の組成物は、エアロゾルまたは粗噴霧として製剤化されてもよい。エアロゾルまたは噴霧製剤の調製及び投与の方法は、例えば、米国特許第5,858,784号、同第6,013,638号、同第6,022,737号、及び同第6,136,295号に見出すことができる。
【0164】
VIII.用量
有効な用量の本開示の主題の組成物が、対象に投与される。「有効な量」とは、検出可能な治療をもたらすのに十分な組成物の量である。本開示の主題の構成物の実際の投薬レベルは、特定の対象及び/または標的に所望される効果を達成するのに有効な組成物の量を投与するように変更することができる。選択される投薬レベルは、組成物の活性(例えば、RT、PDT、もしくはX−PDT活性、またはNMOF充填)及び投与経路に依存し得る。
【0165】
本明細書における本開示の主題についての開示を概観した後、当業者は、具体的な製剤、本組成物とともに使用される投与方法、及び治療される標的の性質を考慮して、個々の対象に対して投薬を個別化することができる。そのような調節または変動、及びいつどのようにしてそのような調節または変動を行うかについての評価は、当業者にとって周知である。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するためのガイダンスを当業者に提供するために含まれている。本開示及び当該技術の一般的レベルに照らして、当業者は、以下の実施例は例示的なものにすぎず、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、多数の変化、修正、及び変更が用いられ得ることが意図されることを理解することができる。
【0167】
実施例1
PDTのためのDBP−Hf系NMOF
1.1.材料及び細胞株
別段述べられない限り、出発材料の全てを、Sigma−Aldrich(St.Louis,Missouri,United States of America)及びThermo Fisher Scientific(Waltham,Massachusetts,United States of America)から購入し、更なる精製なしで使用した。
【0168】
ヒトの頭頸部癌細胞株SQ20B(シスプラチン抵抗性)は、Dr.Stephen J.Kron(Department of Molecular Genetics and Cell Biology,The University of Chicago,Chicago,USA)が快く提供した。細胞を、20%のウシ胎仔血清(FBS、Hyclone,Logan,Utah,United States of America)を含有するDMEM/F12(1:1)培地中(Gibco,Grand Island,New York,United States of America)で培養した。
【0169】
胸腺欠損のメスのヌードマウス(生後6週間、20〜22g)は、Harlan Laboratories,Inc(Dublin,Virginia,United States of America)が提供した。研究プロトコルは、University of ChicagoのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)が審査、承認した。
【0170】
1.2.5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDBP)の合成
Wang et al.(Synlett 1995,1995,1267)によって以前に報告された修正された文献手順に基づいて、ジピリルメタンを合成した。一般的な合成経路を図8に示す。1リットルのフラスコに、500mLの蒸留ピロール(7.2mol)を添加した。このフラスコに、パラホルムアルデヒド(1.74g、ホルムアルデヒドによって58mmol)を添加し、混合物を15分間脱気した。その後、この混合物を60℃まで加熱して、固体のうちのほとんどを溶解させた。室温まで冷却した後、この溶液に、0.53mLのトリフルオロ酢酸(TFA)を緩徐に添加した。この反応混合物を1時間撹拌してから、812mgの水酸化ナトリウムを添加し、その後、この混合物を更に45分間撹拌した。ピロールを真空下で蒸留させ、残りの固体をジクロロメタンで水から抽出し、水で2回洗浄した。クロロホルムを溶出剤として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物を精製して、オフホワイト色の生成物をもたらした。収率:4.94g、33.8mmol(58%)。H−NMR(500MHz,クロロホルム−D,ppm):δ=7.72(s,2H)、6.61(d,2H)、6.15(d,2H)、6.03(s,2H)、3.94(s,2H)。
【0171】
4−(メトキシカルボニル)ベンズアルデヒド(1.20g、7.3mmol)及びジピリルメタン(1.07g、7.3mmol)を、丸底フラスコに添加した。このフラスコに、1Lの無水ジクロロメタン(DCM)を添加した。トリフルオロ酢酸(0.34mL、4.4mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応混合物に2.49gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、11.0mmol)を添加し、混合物を更に1時間撹拌した。トリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器で溶媒を除去し、クロロホルムを溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって、5,15−ジ(p−メチル−ベンゾアート)ポルフィリン(MeDBP)生成物を精製した。収率:810mg、1.40mmol(38%)。H−NMR(500MHz,クロロホルム−D,ppm):δ=10.38(s,2H)、9.45(d,4H)、9.06(d,4H)、8.52(d,4H)、8.39(d,4H)、4.16(s,6H)、−3.12(s,2H)。
【0172】
前述のMeDBP(399mg、0.69mmol)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合物(90mL、1:1vol/vol)中に溶解させた。その後、水酸化カリウム水溶液(14mL、2M)を添加した。この溶液を加熱して、窒素保護下で一晩還流させた。回転蒸発器で溶媒の半分を除去してから、この溶液を、トリフルオロ酢酸によってpH=3に中和させた。遠心分離によって暗紫色の生成物を回収し、水及びエーテルで洗浄した。固体残渣を真空下で乾燥させて、95%の収率で純粋なHDBP生成物(362mg、0.66mmol)をもたらした。H−NMR(500MHz,DMSO−D,ppm):δ=13.35(s,2H)、10.71(s,2H)、9.71(d,4H)、9.08(d,4H)、8.45(m,8H)、−3.26(s,2H)。13C−NMR(125MHz,DMSO−D,ppm):δ=168.05(a)、145.36(f)、135.35、133.46、131.22、130.78(b−e)、128.67(g,j)、118.19(k)、106.62(h,i)。[HDBP+H]のESI−MS:551.1計算値;551.2実測値。
【0173】
1.3.DBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
20mLのガラスバイアルに、3mLのHfCl溶液[N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、2mg/mL、0.018mmol]、3mLのHDBP溶液(DMF中3.5mg/mL、0.018mmol)、及び0.45mLの酢酸(7.9mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗赤色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0174】
DBP−UiOの粉末X線回折パターンは、Zn−DPDBP−UiO MOF[DPDBPは、10、20−ジフェニル−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリンを指す]の粉末X線回折パターンと適合する。Zn−DPDBP−UiO MOFは、Zr(OH)(Zn−DPDBP)の構造体式を有するUiOの形態を取る。
【0175】
NMOFの窒素吸着を、77KのAutosorb−1表面積及び細孔径分析器(Quantachrome Instruments,Boynton Beach,Florida,United States of America)上で試験した。BET表面積の計算値は、558m/gであった。
【0176】
DBP−UiO NMOFに対する熱重量分析を、Shimadzu TGA−50熱重量分析器(Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で実行した。加熱速度を3℃/分に設定し、試料を空中で600℃まで加熱した。重量パーセンテージを、温度に対してプロットした。200℃から600℃への正規化パーセント重量損失は77%であり、これは、MOF式に基づくDBP配位子重量損失の計算値(74%)によく対応した。
【0177】
DBP−UiO NMOFのプレート様形態を、透過型電子顕微鏡(TEM、Tecnai F30、及びTecnai Spirit、FEI,Hillsboro,Oregon,United States of America)によって確認した。SBU間の距離を測定する。粒子は、約10nmの厚さ、及び100nm未満のプレート直径を有するプレート様形態を呈する。DBP−UiO NMOFの粒径を、動的光散乱(DLS、Nano−ZS、Malvern,United Kingdom)によって76.3nm(PDI=0.103)であると決定した。
【0178】
1.4.DBP−UiO安定性
生理学的環境におけるDBP−UiOの安定性を試験するために、DBP−UiO粒子をRPMI1640細胞培養培地中で12時間インキュベートした。TEM画像は、インキュベーション後、未変化の形態のNMOFを呈した。
【0179】
1.5.HDBP及びDBP−UiOの光化学的特性
UV可視分光光度計(UV−2401PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)で、HDBP及びDBP−UiOのUV−可視吸収スペクトルを取得した。HDBP溶液及びDBP−UiO NMOF懸濁液を、0.67mMのリン酸緩衝食塩水(PBS)中で調製した。0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.5、4、及び8mg/L濃度での、HDBPの標準溶液の吸収を取得し、402nmでの吸収の線形適合を行うことによって標準曲線をプロットした。402nm及び619nmでのHDBPの吸光係数はそれぞれ、2.2×10及び1.7×10−1cm−1である。
【0180】
DBP配位子及びDBP−UiO NMOFの蛍光スペクトルを、分光蛍光光度計(RF−5301PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で取得した。配位子蛍光は、630nm(強度)及び690nm(弱度)で出現する一方で、DBP−UiO NMOFは、無視できる蛍光を示す。
【0181】
時間領域寿命を、 時間相関単一光子計数(TCSPC)法を使用して、ChronosBH寿命蛍光光度計(ISS,Inc.,Champaign,Illinois,United States of America)上で測定した。蛍光光度計は、Becker−Hickl SPC−130検出電子工学及びHPM−100−40Hybrid PMT検出器を収容した。調節可能なピコ秒パルスの励起を、統合パルスピッカー及びAOTFを有するFianium SC400−2スーパーコンティウームレーザー源よってもたらした。発光波長を、帯域通過フィルタ(Semrock及びChroma)とともに選択した。装置応答関数(IRF)を、Ludox LSコロイド状シリカの1%の散乱溶液中、約120psのFWHMであると測定した。寿命を、Vinci制御及び分析ソフトウェアにおいて、フォワード畳み込み法を介して適合させる。適合した寿命を表1に列挙する。
【表1】
【0182】
1.6.HDBP及びDBP−UiOの一重項酸素発生
640nmでのピーク発光を有する発光ダイオード(LED)アレイを、一重項酸素発生の光源として使用した。このLEDの照射量は、100mW/cmである。一重項酸素センサーグリーン(SOSG)試薬(Life Technologies Carlsbad,California,United States of America)を用いて、一重項酸素を検出した。HBSS緩衝剤中、5μM溶液/懸濁液中にHDBP及びDBP−UiO試料を調製した(DBP−UiO試料について、濃度は配位子当量として計算した)。2mLの、これらの溶液/懸濁液のうちのそれぞれに、SOSGストック溶液(5mMで5μL)を添加してから(最終濃度=12.5μM)、蛍光測定した。
【0183】
典型的な測定について、蛍光強度を、504nmの励起及び525nmの放射(励起/放射についてスリット幅3nm/5nm)で、分光蛍光光度計(RF−5301PC、Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で取得した。LEDによって、(背景として)0、10秒、20秒、30秒、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、5分、6分、及び7分照射した後、蛍光を測定した。
【0184】
光強度及び光増感剤濃度が固定されるにつれて、光化学反応について、我々は、[PS*](光増感剤の励起状態の濃度)が定数であると想定することができる。したがって、我々は、以下の反応速度等式を有し、
【数1】
式中、k*=k[PS*]である。ここで、我々は、一重項酸素を消費するSOSGの共役反応を有し、
【数2】
式中、[SOSG]は、SOSGの反応形態の濃度である。[SOSG]=[]=c(O)−[O]であり、かつ蛍光強度は[SOSG]:
【数3】
に比例し、式中、Iは、入射光強度であり、φは、SOSG*の蛍光量子収率であり、εは、SOSG*の吸光係数であり、bは、光路長であることに留意されたい。我々は、この等式を統合して、蛍光強度Iと照射時間との相関性を得ることができ、
【数4】
【数5】
式中、A及びkは、適合パラメータであり、
【数6】
【数7】
は、蛍光光度計における入射光強度を指し、φは、SOSGの蛍光量子収率であり、εは、励起波長でのSOSGの吸光係数であり、bは、光路長であり、c(O)は、初期酸素濃度であり、φΔは、一重項酸素発生の量子収率であり、Nirは、1秒当たりの光子による照射光強度であり、εPSは、LED発光波長での光増感剤の吸光係数であり、c(PS)は、光増感剤濃度である。線形近似値を上記の等式に適用する。
【0185】
非線形回帰によって、我々は、一連の前述の形態の適合曲線を得た。適合パラメータを表2に列挙する。
【表2】
【0186】
1.7.DBP−UiOの細胞取り込み
SQ20B細胞を、5×10個の細胞/ウェルで6ウェルプレート上に播種し、更に24時間インキュベートした。DBP−UiO試料を、30mg/Lの濃度で細胞に添加した。4時間及び12時間インキュベートした後、細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。細胞を濃縮硝酸で消化させ、ICP−MSに供して、Hf濃度を決定した。細胞取り込み量を、4時間及び12時間のインキュベーション後、それぞれ433.3±23.8及び451.4±26.1ngのHf/10個の細胞であると決定した。
【0187】
1.8.細胞傷害性
DBP−UiO及びHDBPの細胞傷害性を、シスプラチン及び従来の放射線療法に対して抵抗性であるヒト頭頸部癌細胞SQ20Bにおいて評価した。SQ20B細胞を、2000個の細胞/ウェルで96ウェルプレート上に播種した。この細胞を、24時間のインキュベーション後、様々な配位子濃度(配位子濃度に基づいて、5、10、20、50、及び100μM)のDBP−UiO及びHDBPで治療した。更に4時間インキュベートし、その後、培養培地を100μLの新鮮なDMEM/F12培地と交換した。細胞に、100mW/cmでLED光(640nm)を15分間(総光線量90J/cm)または30分間(総光線量180J/cm)それぞれ照射した。照射処理しなかった細胞は、対照としての役割を果たした。細胞を更にインキュベートして、DBP−UiOまたはHDBPとともに72時間の総インキュベーション時間を達成した。(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラ−ゾリウム)(MTS)アッセイ(Promega,Madison,Wisconsin,United States of America)によって、細胞生存率を検出した。
【0188】
1.9.インビボ有効性
SQ20B皮下異種移植マウスモデルを使用して、DBP−UiOのPDT有効性を調査した。SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のメスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、対照としてのPBS、HDBP、及びDBP−UiOを含めた。腫瘍が100mmに達した時、3.5mg/kgのDBP用量でPBS、HDBP、及びDBP−UiOを動物に腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)のイソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に640nmのLEDを30分間照射した。光強度を100mW/cmとして測定し、総光線量は180J/cmであった。注射及びPDTの両方を一度に実行した。
【0189】
治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。最後に、8日目に全てのマウスを屠殺し、切除した腫瘍を撮影し、秤量した。腫瘍を、ホルマリンで固定した。パラフィン包埋された5μmの腫瘍切片をヘマトキシリン及びエロシン(H&E)で染色し、光学顕微鏡(Pannoramic Scan Whole Slide Scanner、Perkin Elmer,Waltham,Massachusetts,United States of America)で観察した。
【0190】
3つ全ての群の腫瘍薄片の組織学を、PDT治療後に観察した。支配的な正常腫瘍細胞が、対照群及び配位子治療群に観察される。腫瘍細胞の支配的なアポトーシス/ネクローシスがNMOF群からの腫瘍薄片において観察され、大炎症細胞がPDT後の免疫応答を示した。NMOF治療群の腫瘍組織中の血管は、PDT後に破壊されたが、対照群及び配位子治療群では撹乱されることはなかった。
【0191】
1.10.Bi−DBP NMOFの合成
4mLのガラスバイアルに、0.5mLのBi(NO・5HO溶液(DMF中2.4mg/mL、2.5μmol)、0.5mLのHDBP溶液(DMF中2.8mg/mL、2.5μmol)、及び4μLのトリフルオロ酢酸(0.05mmol)を添加した。この反応混合物を、80℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:100vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。Bi−DBP NMOFは、TEMによって明らかにされるナノロッド形態を呈する。
【0192】
実施例2
DBP MOFの特性評価のまとめ
実施例1に記載するように、ポルフィリン誘導体、5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDBP)を、4−(メトキシカルボニル)−ベンズアルデヒドとジピリルメタンとの間の縮合反応によって合成し、H及び13C NMR分光法ならびに質量分析法によって特性評価した。DBP配位子の直線状に整列したジカルボキシレート基は、Hf(μ−O)(μ−OH)(DBP)の構造体式を有するDBP−UiO NMOFの構築を可能にする。DBP−UiOを、80℃のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、HfClとHDBPとの間の溶媒熱反応によって合成した。結果として得られる暗紫色の粉末を、大量のDMF、エタノール中1%のトリエチルアミン(v/v)、及びエタノールで連続的に洗浄してから、ストック懸濁液としてエタノール中に分散させた。
【0193】
DBP−UiOの類似体であるZr(μ−O)(μ−OH)(Zn−DPDBP)(すなわち、Zn−DPDBP−UiO、式中、DPDBPは、5,15−ジ(p−ベンゾアート)−10,20−ジフェニル−ポルフィリンである)の単一結晶構造と、DPDBP及びDBPの長さならびにZn−DPDBP−UiO及びDBP−UiOの粉末X線回折(PXRD)パターンにおける類似性とに基づいて、DBP−UiOは、12個の接続されたHf(μ−O)(μ−OH)(カルボキシレート)12二次構成単位(SBU)及びDBP架橋配位子から構築されるUiO型MOF構造を取ると考えられる。理論によって拘束されることを望むものではないが、高いSBU接続性及び強度のZr/Hf−カルボキシレート結合は、様々な条件下でUiO MOFの安定性の原因となると考えられる。DBP−UiOは、1.6nmの寸法の三角形のチャネル、ならびにそれぞれ2.8nm及び2.0nmの寸法の八面体空洞及び四面体空洞を有する非常に開いた構造体構造を有する。
【0194】
DBP−UiO粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)によってプレート形態を呈する。窒素吸着測定は、DBP−UiOについて558m/gのBET表面積をもたらした。DBP−UiOの組成物を、熱重量測定分析及び誘導結合型プラズマ質量分析(ICP−MS)によって確認し、77重量%(計算値73%)のDBP充填及び24.3%(計算値23.7%)のHf含有量をそれぞれもたらした。
【0195】
個々のSBUは、DBP−UiOの高解像度のTEM画像においてはっきりと可視である。SBU間の距離は約2.7nmであると測定され、これは、X線構造モデルに基づく2.77nmの距離の計算値と一貫する。高解像度のTEM画像の高速フーリエ変換(FFT)は、ナノプレートについて3倍の対称性を呈し、DBP−UiOの立方結晶系と一貫する。ナノプレートの寸法は、直径約100nm及び厚さ約10nmであると測定される。そのような薄プレートは、4〜5組の(111)充填層(d111=2.2nm)のみからなる。動的光散乱(DLS)測定は、この粒子について76.3nmの平均直径を示した。注目すべきことに、ナノプレート形態は、PDTのためのROSを発生させるために特に有利である。の拡散距離は、水溶性環境において90〜120nm以下であり、細胞の内側で最短約20nmであり得ることが確立されている。したがって、をNMOF内部から細胞質へと輸送して、細胞傷害性効果を発揮するためには、厚さが10nm程に薄いナノプレートが好ましい。
【0196】
UiO構造体は、典型的には、水溶液中で安定である。DBP−UiOを、RPMI1640細胞培養培地中で12時間インキュベートして、生理学的に適切な培地におけるその安定性を決定した。TEM画像は、ナノプレートの未変化の形態を示し、FFTは、DBP−UiOの結晶性構造が未変化のままであることを証明した。RPMI1640培地中でのインキュベーション前後のNMOF試料のPXRDパターンは同一であり、生理学的環境におけるDBP−UiOの構造的安定性を更に確認した。
【0197】
リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝剤(pH=7.4)中のHDBP及びDBP−UiOのUV−可視吸収スペクトルを比較する。HDBPは、402nmでソーレー帯、ならびに505、540、566、及び619nmで4つのQ帯を示す。402nm及び619nmでのHDBPの吸光係数はそれぞれ、2.2×10及び1.7×10−1cm−1である。DBP−UiOは、全てのQ帯についてわずかな赤方偏移を示し、ピークは、510、544、579、及び634nmで出現する。いかなる1つの理論によって拘束されることを望むものではないが、赤方偏移はおそらく、DBP配位子のカルボキシレート基の、Hf4+中心への配位から生じると考えられる。DBP−UiOのソーレー帯はおそらく、薄ナノプレート内の非当量の配位子環境、及び薄MOF構造における潜在的な構造体の歪みのために、わずかに広幅化する。
【0198】
DBP及びDBP−UiOの一重項酸素発生効率を、一重項酸素センサーグリーン(SOSG、Life Technologies)を使用して決定した。LED光源(640nmでのピーク発光、100mW/cmのエネルギー照射量)に曝露した後、化学ルミネセンス試薬SOSGは、と反応して、緑色の蛍光を発生させ、これを蛍光光度計によって定量化した。蛍光強度を、照射時間に対してプロットした。発生を、疑似一次プロセスに対応する指数関数によって描写した。発生曲線を、以下の等式によって適合した。
【数8】
式中、Iは、蛍光強度であり、tは、照射時間を表す一方で、A及びkは、適合パラメータ(詳細な導出はSIを参照されたい)である。HDBP及びDBP−UiOの適合した等式は、
【数9】
【数10】
である。
【0199】
我々の実験において、照射量及び光増感剤濃度は定数であるため、kは一重項酸素発生の効率の指標である。したがって、DBP−UiOは、を発生させる上でH2DBPよりも少なくとも2倍効率的であり、これはおそらく、重Hf4+中心がDBPからDBP励起状態への系間交差を促進するためである。これと一貫して、640nmでのDBP発光強度は、DBP−UiOについて大いに(250倍だけ)低下し、寿命はH2DBPの10.9nsから、DBP−UiOの0.26nsへと低減した。
【0200】
DBP−UiOのPDT有効性を、抵抗性頭頸部癌で試験した。頭頸部癌とは、頭部または頸部の領域に生じる生物学的に類似した癌の群(鼻腔洞、唇、口、唾液腺、喉、及び喉頭を含むが、これらに限定されない)を指す。頭頸部癌は表在的に生じるため、PDTが実行可能な治療モダリティとなる。
【0201】
シスプラチン及び伝統的な放射線療法に対して抵抗性であるヒト頭頸部癌細胞SQ20B上に、インビトロPDTを実行した。SQ20B癌細胞をDBP−UiO(30μg/mL)とともに4時間または12時間インキュベートすることによって、DBP−UiOの腫瘍細胞取り込みをまず評価した。細胞中のHf濃度をICP−MSによって決定した。4時間または12時間のインキュベーション後、細胞間に有意な差は観察されず、これは癌細胞によるDBP−UiOの急速な内部移行を示した。
【0202】
DBP−UiOのPDT有効性を更に確認するために、SQ20B癌細胞を、様々な濃度(配位子濃度に基づいて、5、10、20、50、及び100μM)のHDBPまたはDBP−UiOで治療し、細胞にLED光(640nm、100mW/cm)を15分間(総光線量90J/cm)または30分間(総光線量180J/cm)それぞれ照射した。5μMの光増感剤用量及び15分の照射ですら、DBP−UiO治療群において有意なPDT有効性が観察された。HDBP治療群は、30分間の光照射での20μMの用量のみで、中等度のPDT有効性を示すが、暗所対照群またはブランク対照群において、細胞傷害性は観察されなかった。BCP−UiOのインビトロPDT有効性は、他の小分子PDT剤のインビトロPDT有効性よりも優れており、例えば、PHOTOFRIN(登録商標)は、100J/cmの光線量での8.5μM用量で、HT29結腸癌細胞に対して中程度のPDT有効性を示す。
【0203】
SQ20B皮下異種移植マウスモデルに対するインビボ実験を実行した。マウスを、PBS対照、DBP−UiO(3.5mgのDBP/kg)、またはHDBP(3.5mg/kg)で腫瘍内注射によって治療した。注射の12時間後、各マウスの腫瘍部位に光(180J/cm)を30分間照射した。比較のために、PHOTOFRIN(登録商標)を、典型的には10mg/kgの腹腔内注射によって担腫瘍マウスに投与し、135J/cmで光照射する。DBP−UiOで治療したマウスの腫瘍は、DBP−UiO投与及びPDTの1日後に収縮し始めた。DBP−UiO群の4つの腫瘍中、2つの腫瘍は、単回DBP−UiO投与及び単回PDTによって完全に根絶された一方で、他方の2つの腫瘍のサイズは、約150mmから約3mmへと低下した。HDBPで治療したマウスの腫瘍増殖は、PDT後にわずかに抑制されたが、5日後に加速し、終了時点では対照群との差は呈さなかった。局所投与後、DBP−UiOは、腫瘍細胞によって効率的に内部移行され、照射時に細胞傷害性を誘起することができた一方で、遊離配位子は、照射前に腫瘍部位から排除された可能性がある。全てのマウスへのPDT治療後、皮膚/組織損傷は観察されなかった。腫瘍薄片の組織学は、DBP−UiO治療群の腫瘍中のマクロファージ浸潤を示し、腫瘍細胞の有意な画分はアポトーシス/ネクローシスを受けたことを示した
【0204】
実施例3
DPDBP−UiO NMOF
3.1.DPDBP−UiO NMOFの合成
10,20−ジフェニル−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDPDBP)の合成を示す模式図を、図9に示す。より具体的には、ベンズアルデヒド(0.65mL、6.4mmol)及びジピリルメタン(0.94g、6.4mmol)を、丸底フラスコ中、600mLの無水DCM中に溶解させた。15分間窒素脱気した後、TFA(0.27mL、3.5mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応物に、2.40gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、10.6mmol)を添加し、混合物を更に1時間反応させてから、1mLのトリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器によって溶媒を除去し、(1:1vol/volのヘキサン/DCMを溶出剤として)カラムクロマトグラフィーによって、ジフェニルポルフィリン生成物を精製した。収率は、36%(534mg、1.15mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):10.34(s,2H)、9.42(d,4H)、9.11(d,4H)、8.30(dd,4H)、7.83(m,6H)、−3.09(s,2H)。
【0205】
ジフェニルポルフィリン(165mLのクロロホルム中342mg、0.74mmol)のクロロホルム溶液を、氷浴上で冷却した。その後、ピリジン(725μL、9mmol)及びN−ブロモスクシンイミド(NBS、284mg、1.61mmol)を連続して添加した。この反応物を氷上で撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視した。35分間撹拌した後、17mLのアセトンを添加して、反応を停止させた。回転蒸発器上で溶媒を蒸発させ、その後、真空を適用して、残渣ピリジンを除去した。この生成物を、ヘキサン/DCM(1:1vol/vol)を溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は、58%(266mg、0.43mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):9.63(d,4H)、8.86(d,4H)、8.18(dd,4H)、7.80(m,6H)、−2.71(s,2H)。
【0206】
250mLの丸底フラスコに、5,15−ジブロモ−10,20−ジフェニルポルフィリン(265mg、0.43mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(187mg、1.04mmol)及びリン酸カリウム(三塩基、3.65g、17.2mmol)を添加した。この混合物を、窒素保護下、50mLのTHF中に溶解させた。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(103mg、0.09mmol)を添加し、混合物を加熱して、24時間の反応で還流させた。回転蒸発によって元の溶媒量を低減した後、この10、20−ジフェニル−5,15−ジ(p−メチル−ベンゾアート)ポルフィリン(MeDPDBP)生成物をDCM/水によって抽出した。カラムクロマトグラフィーを用いて、クロロホルムを溶出剤として、生成物を精製した。収率は、82%(255mg、0.35mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):8.89(d,8H)、8.49(d,4H)、8.35(d,4H)、8.26(d,4H)、7.80(m,6H)、4.15(m,6H)、−2.73(s,2H)。
【0207】
丸底フラスコ中、THF/メタノール(1:1vol/vol、34mL)の混合物溶媒中にMeDPDBP(139mg、0.19mmol)を溶解させた。この溶液に、6mLの3M水酸化カリウム水溶液を添加した。この混合物を加熱して、窒素保護中で一晩還流させた。溶媒のほとんど蒸発させた後、10mLの水を添加し、TFAでpHを酸性(pH=3)に調節した。遠心分離によってHDPDBP固体を回収し、水で洗浄した。H−NMR(DMSO−D):13.32(s,2H)、8.85(s,8H)、8.37(dd,8H)、8.23(d,4H)、7.85(d,6H)、−2.94(s,2H)。
【0208】
3.2.DPDBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
DPDBP−UiO NMOFを、DBP−UiOの方法に類似した方法で合成した。20mLのガラスバイアルに、4mLのHfCl溶液(DMF中1mg/mL、0.012mmol)、1mLのHDBP溶液(DMF中1.72mg/mL、0.003mmol)、3mLのHDPDBP溶液(DMF中2.2mg/mL、0.009mmol)、及び0.36mLの酢酸(6.3mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0209】
DPDBP−UiO NMOFは、PXRDによって示されるわずかに歪んだUiO構造を呈し、これは、追加のピーク(2Θ=3°)を除いてZn−DPDBP−UiO MOFのパターンに類似するパターンを示す。TEMは、DPDBP−UiOの形態が、DBP−UiOの形態に類似することを示す。DLSは、DPDBP−UiOの平均直径が81.2nmであることを示す。
【0210】
実施例4
DHDBP−UiO NMOF
4.1.DHDBP−UiO NMOFの合成
10,20−ジ(m−ヒドロキシフェニル)−5,15−ジ(p−ベンゾアート)ポルフィリン(HDHDBP)の合成を示す模式図を、図10に提供する。より具体的には、ジピリルメタン(635mg、4.34mmol)及びm−アニスアルデヒド(0.53mL、4.34mmol)を、丸底フラスコ中、430mLの無水ジクロロメタン中に溶解させた。15分間窒素脱気した後、TFA(0.20mL、2.6mmol)をシリンジを介して滴加した。この混合物を室温で4時間撹拌した。その後、この反応物に、1.47gの2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、6.5mmol)を添加し、混合物を更に1時間反応させてから、1mLのトリエチルアミンを添加して、反応混合物を中和させた。回転蒸発器によって溶媒を除去し、(1:1vol/volのヘキサン/DCMを溶出剤として)カラムクロマトグラフィーによって、5,15−ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリン生成物を精製した。収率は、28%(311mg、0.60mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):10.34(s,2H)、9.41(d,4H)、9.15(d,4H)、7.88(m,4H)、7.72(t,2H)、7.38(dd,2H)、4.05(s,6H)、−3.12(s,2H)。
【0211】
ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリンのクロロホルム溶液(150mLのクロロホルム中311mg、0.60mmol)を、氷浴上で冷却した。その後、ピリジン(690μL、8.6mmol)及びNBS(268mg、1.52mmol)を連続して添加した。この反応物を氷上で撹拌し、TLCによって監視した。45分間撹拌した後、15mLのアセトンを添加して、反応を停止させた。回転蒸発器上で溶媒を蒸発させ、その後、真空を適用して、残渣ピリジンを除去した。この生成物を、ヘキサン/DCM(1:1vol/vol)を溶出剤として、カラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は、92%(374mg、0.55mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):9.59(d,4H)、8.87(d,4H)、7.74(d,2H)、7.70(s,2H)、7.65(t,2H)、7.34(dd,2H)、3.99(s,6H)。
【0212】
250mLの丸底フラスコに、5,15−ジブロモ−10,20−ジ(m−メトキシフェニル)−ポルフィリン(374mg、0.55mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(215mg、1.19mmol)、及びリン酸カリウム(三塩基、4.70g、22mmol)を添加した。この混合物を、窒素保護下、50mLの無水THF中に溶解させた。テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(133mg、0.12mmol)を添加し、混合物を加熱して、24時間の反応で還流させた。回転蒸発によって元の溶媒量を低減した後、この生成物をDCM/水によって抽出した。カラムクロマトグラフィーを用いて、クロロホルムを溶出剤として、生成物を精製した。収率は、76%(331mg、0.42mmol)である。H−NMR(クロロホルム−D):8.89(d,4H)、8.77(d,4H)、8.42(d,4H)、8.28(d,4H)、7.78(d,2H)、7.75(s,2H)、7.63(t,2H)、7.32(dd,2H)、4.09(s,6H)、3.97(s,6H)、−2.83(s,2H)。
【0213】
丸底フラスコ中、20mLの無水DCM中に5,15−ジ(メチル−ベンゾアート)−10、20−ジ(m−メトキシフェニル)ポルフィリン(331mg、0.42mmol)を溶解させた。この溶液を、ドライアス/アセトン浴上で冷却してから、臭化ボロン(0.45mL、4.7mmol)を滴加した。この混合物を室温に戻し、一晩撹拌した。その後、この反応溶液を100mLの氷水に注ぎ、濾過した。HDHDBP生成物を、洗浄液の色がわずかな紫色に変化するまで、重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、その後、水で洗浄した。H−NMR(DMSO−D):9.97(s,2H)、8.86(d,8H)、8.28(d,4H)、8.13(d,4H)、7.60(m,6H)、7.23(d,2H)、−2.95(s,2H)。
【0214】
4.2.DHDBP−UiO NMOFの合成及び特性評価
DPDBP−UiO NMOFを、DBP−UiOの方法に類似した方法で合成した。20mLのガラスバイアルに、3mLのHfCl溶液(DMF中2mg/mL、0.019mmol)、1mLのHDBP溶液(DMF中1.8mg/mL、0.003mmol)、2mLのHDHDBP溶液(DMF中2.3mg/mL、0.006mmol)、及び0.27mLの酢酸(4.7mmol)を添加した。この反応混合物を、90℃の炉内で3日間維持した。遠心分離によって暗紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。TEMは、DHDBP−UiOの形態が、DBP−UiO及びDPDBP−UiOの形態に類似することを示す。DLSは、DHDBP−UiOの平均直径が66.3nmであることを示す。
【0215】
実施例5
クロリン系NMOF及び結腸癌の光線力学療法における使用
トルエンスルホニルヒドラジドによる5,15−ジ(p−メチルベンゾアート)ポルフィリン(MeDBP)の部分還元は、26%の収率で5,15−ジ(p−メチルベンゾアート)クロリン(MeDBC)をもたらした。図1を参照されたい。MeDBCの塩基触媒加水分解は、88%の収率で5,15−ジ(p−ベンゾアート)クロリン(HDBC)をもたらした。MeDBC及びHDBCを、NMR及び質量分析によって特性評価した。DMF中でのHfClとHDBCとの間の溶媒熱反応は、暗紫色のDBC−UiOの粉末生成物をもたらし、これを、大量のDMF、エタノール中1%のトリエチルアミン(NEt)(v/v)及びエタノールで連続的に洗浄し、ストック懸濁液としてエタノール中に貯蔵した。
【0216】
図2A〜2Dに示すように、粉末X線回折(PXRD)は、DBC−UiOが、DBC配位子とDBP配位子との間の幾何的類似性のために、DBP−UiOと同一のUiO型構造を取ることを示した。DBC−UiO中のHf(μ−O)(μ−OH)二次構成単位(SBU)は、DBC配位子によって接続されて、Hf(μ−O)(μ−OH)(DBC)のUiO構造体をもたらす。Hf含有量を、誘導結合型プラズマ質量分析(ICP−MS)によって24.0%(計算値23.8%)であると決定した一方で、熱重量分析において64%(計算値72%)のDBC重量損失が観察された。
【0217】
DBC−UiOの透過型電子顕微鏡(TEM)は、DBP−UiOのナノプレート形態に類似したナノプレート形態を明らかにする。プレート直径は100〜200nmである一方で、厚さは、TEM格子に対して垂直に位置する粒子の直接観察によって、3.3nmから7.5nmまで変動する。注目すべきことに、UiO構造の隣接する(111)充填層(d111)間の距離の計算値は、2.2nmであるため、超薄プレートは、2〜4組の(111)充填層のみからなる。そのようなプレートは、約10nmの厚さのDBP−UiOよりも更に薄く、PDT中のROS拡散を更に促進する。DBC−UiOの動的光散乱(DLS)測定は、0.17の多分散指数及びリン酸緩衝食塩水(PBS)中での−10.2mVのζ電位とともに、128.5nmの平均直径を示した。
【0218】
UV可視吸収分光法は、クロリン系PSの光物理的特性を確認した。図2A〜2Dを参照されたい。HDBCは、λmax=408nm、ならびに504、534、591、及び643nmでの4つのQ帯で、分割したソーレー帯を有する。DBC−UiOは、HDBCと比較して、全てのQ帯についてわずかな赤方偏移を示し、ピークは、508、545、592、及び646nmである。したがって、DBC−UiOの最低エネルギーQ帯は、13nmだけDBP−UiOから赤方偏移しており、ε値は、24600M−1・cm−1である。HDBCは、最低エネルギーQ帯について、21800M−1・cm−1のε値を有する。
【0219】
DBCは、約641nmで蛍光ピークを呈した。図2A〜2Dを参照されたい。しかしながら、DBC−UiO蛍光は、カルボキシレート基を介した、DBC配位子のHf4+イオンへの配位時の亢進された系間交差のため、HDBCよりも約200倍弱かった。これと一貫して、DBC−UiOは、時間相関単一光子計数によって、HDBC(8.15ns)と比較して、わずかに短い7.88nsの蛍光寿命を有する。表3を参照されたい。
【表3】
【0220】
一重項酸素センサーグリーン(SOSG)を用いて、HDBC及びDBC−UiOの発生効率を決定した。SOSGは、発生させたと反応して、緑色の蛍光(λem=525nm)をもたらし、これを蛍光光度計によって定量化した。比較のために、HDBP、DBP−UiO、及びプロトポルフィリンIX(PpIX)の発生効率も決定した。照射時間に対してプロットした蛍光を、指数関数(等式1):
【数11】
によって適合し、これは、疑似一次発生プロセスを示した。図2A〜2Dを参照されたい。等式1中、Iは、蛍光強度であり、tは、照射時間である一方で、A及びkは、適合パラメータである。表4を参照されたい。総発生収率を、PpIXの総発生収率に基づいて正規化して、全体的光増感効率を比較した。DBC−UiOは、を発生させる上でDBP−UiOよりも約3倍効率的である。
【表4】
【0221】
生物学的培地におけるDBC−UiOの安定性を、RPMI1640細胞培養培地中でNMOFを12時間培養することによって確認した。NMOFの形態は、TEMによって変化しなかった一方で、それらの高速フーリエ変換パターンとともに、高解像度のTEM画像は、NMOF結晶化度の保持を示す。DBC−UiOのPXRDパターンは、RPMI1640細胞培地中でのインキュベーション後に変化せず、生理学的環境におけるDBC−UiOの構造的安定性を更にもたらした。
【0222】
DBC−UiOは、64%のPS充填ですら自己消光を避ける結晶性及び安定した構造、発生効率を増加させる亢進された系間交差、ならびに拡散を促進する多孔性構造体及びナノプレート形態、ならびに好ましい光物理的特性を有する。DBC−UiOは、マウス及びヒト結腸直腸癌に対して有効である。診療所において、PDTを使用して、内視鏡を通して光を送達することによって結腸癌を治療する。一次性結腸腫瘍のPDT治療は、転移性腫瘍に対する免疫原性応答を誘発し得ることもまた既知である。
【0223】
CT26細胞を、50μMのHf濃度のDBP−UiOまたはDBC−UiOとともに4時間インキュベートすることによって、NMOFの腫瘍細胞取り込みを評価した。CT26細胞中のHf含有量を、ICP−MSによって、DBP−UiO及びDBC−UiOについてそれぞれ(3.44±0.13)及び(2.35±0.08)nmol/10個の細胞であると決定した。結腸癌細胞に対するDBC−UiOのインビトロPDT有効性を調査し、DBP−UiO及びそれらの対応する遊離配位子と比較した。NMOFまたは遊離配位子を、様々な濃度のCT26細胞またはHT29細胞とともにインキュベートし、この細胞を、90J/cm(0.1W/cm及び15分間。DBP−UiO及びHDBP:640nm、DBC−UiO及びHDBP:650nm)の総光線量のLED光で照射した。DBC−UiOは、低いNMOF及び光線量で両方の癌細胞株を効果的に死滅させることにより、DBP−UiOよりも優れていた。図3を参照されたい。遊離配位子治療群もまた中等度のPDT有効性を示したが、暗所対照群またはPBS対照群において、細胞傷害性は観察されなかった。照射を行ったCT26細胞中のDBC−UiO、HDBC、DBP−UiO、及びHDBPのIC50計算値はそれぞれ、5.1±0.2、8.5±0.1、10.4±0.5、及び20.0±3.1μMであった。照射を行ったHT29細胞中のDBC−UiO、HDBC、DBP−UiO、及びHDBPのIC50計算値はそれぞれ、6.0±1.5、7.5±2.3、13.1±2.2、及び17.0±4.0μMであった。
【0224】
アポトーシス及び免疫原性細胞死(ICD)の両方が、優れたインビトロPDT有効性に寄与する。CT26細胞を、5μMのDBC−UiOまたはHDBCとともにインキュベートし、その後、0.1W/cmで15分間(90J/cm)光照射した。PDT治療によって誘導されたアポトーシスを、フローサイトメトリーによって、Alexa Fluor 488 Annexin V/死細胞アポトーシスキットで決定した。暗所において、DBC−UiOまたはHDBCで治療した細胞について、アポトーシスまたはネクローシスは観察されなかった一方で、DBC−UiOまたはHDBCで治療した場合、光照射時に有意な量の細胞がアポトーシスを受けた。カルレティキュリン(CRT)は、ICDを受ける細胞の表面上に曝露される特徴的なバイオマーカーである。フローサイトメトリー及び免疫蛍光法によってCRT発現を決定して、DBC−UiO誘起PDTによって誘起されるICDを評価する。CT26細胞を、5μMのDBC−UiOまたはHDBCで治療し、その後、0.1W/cmで15分間(90J/cm)光照射した。フローサイトメトリー分析のために、細胞を回収し、Alexa Fluor 488−CRT抗体及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。PI陰性細胞上、染色した細胞の蛍光強度にゲートをかけた。免疫染色分析のために、細胞をAlexa Fluor 488−CRT共役抗体及びDAPI核染色で染色し、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を使用して観察した。光照射なしでDBC−UiOもしくはHDBCで治療した細胞、または光照射ありでPBSで治療した細胞は、表面CRT発現は示さなかった一方で、照射時、細胞の表面上には有意な量のCRTが検出された。この結果は、ICDが、DBC−UiO及びHDBCのPDTによって誘導される細胞傷害性に関与することを示す。
【0225】
CT26及びHT29の皮下側腹部腫瘍マウスモデルに、インビボ抗癌有効性実験を実行した。マウスに、(1)PBS対照、(2)DBC−UiO、(3)DBP−UiO、(4)HDBC、または(5)1mg/kgの配位子用量のHDBP、もしくは(6)3.5mg/kgの配位子用量のDBC−UiOを腫瘍内注射した。注射の12時間後、(1)〜(5)群の各マウスの腫瘍部位に光(0.1W/cm)を15分間(90J/cm)照射し、(6)郡のマウスは、光照射(0.1W/cm)を30分間(180J/cm)受けた。CT26モデルの(1)〜(5)群については、マウスを、最初の治療の4日後に再度治療した一方で、HT29モデルの(1)〜(5)群については、マウスを、合計4回の治療となるように4日毎に治療した。図4に描写するように、DBC−UiO(1mg/kgのDBC用量)で治療したマウスの腫瘍増殖は、両方のモデルにおいて効果的に阻害された。DBP−UiO及び2つのPS配位子は、低いPS及び光線量のため、いずれのモデルにおいても腫瘍増殖を抑制することができなかった。より高い用量のDBC−UiO及び光照射は、単回治療したHT29において、及び2回治療したCT26において、有効な腫瘍後退をもたらした。終了時点でのDBC−UiOで治療した腫瘍の重要及びサイズもまた、他の群よりも有意に小さかった。凍結腫瘍薄片の組織学は、DBC−UiO治療のみが、腫瘍のアポトーシス/ネクローシスを引き起こしたが、DBP−UiOまたは2つのPS配位子では引き起こさなかったことを更に確認した。
【0226】
実施例6
X線シンチレーションのためのMOF
直鎖ジカルボキシレート配位子及びM(μ−O)(μ−OH)(カルボキシレート)12SBU(M=HfまたはZr)から構築されるUiO構造体(Hf−MOF及びZr−MOF)が、それらの高い化学的安定性及び構造的予測性のため、本開示の主題に従って使用するために好適であり得る。この9,10−アンタセニルビス(安息香酸)(HL)を、Hauptvogelら(Inorg.Chem.2011,50,8367)の手順に従って、高収率で調製した。DMF中、HLをHfClまたはZrClで、100℃で2日間処理することによって、Hf−MOF及びZr−MOFを合成した。結果として得られる白色の結晶性固体を、大量のDMF、メタノール、及び水で洗浄した。これら2つのMOFの結晶構造を、Lと同一の長さのアミノ−テルフェニルジカルボキシレート配位子から構築されるUiO MOFからシミュレーションされるパターンに対する、それらのPXRDパターンの類似性によって、明らかにした。図5A及び5Bを参照されたい。両方のMOFは、M(μ−O)(μ−OH)(カルボキシレート)12SBUを直線状Lリンカーと接続することによって、fcu形態のUiO構造体構造を取る。図5A及び5Bを参照されたい。全てのSBU中、M4+を八面体の6つの頂点上に置いた。八面体の面を、μ−O2−またはμ−OHによって交互に架橋させた。八面体の端を、カルボキシレート基によって架橋させ、各酸素が1つのM4+に配位し、各M4+イオンについて8個の配位環境が完了するようにした。図6A〜6Eを参照されたい。L配位子の立体容積のため、PXRDパターンの体系的不在に基づいて、非相互透過構造が得られた。開いた構造体は、PLATONによって計算される60.5%の空隙空間、及び1.2nmの端長を有する三角形の開いたチャネルを持つ。全てのSBUについて、0.8nmの直径を有する1つの八面体空洞、及び0.6nmの直径を有する2つの四面体空洞が存在する。図6A〜6Eを参照されたい。Hf−MOF及びZr−MOFのTEM及びSEM画像は、寸法約1μmの八面体微結晶を示した。MOFに対する窒素吸着測定は、Hf−MOF及びZr−MOFについてそれぞれ、2187m/g及び2776m/gのBET表面積を示した。両方のMOFの細孔径分布関数は、約0.6nm、0.8nm、及び1.2nmで極大を示し、結晶構造モデルから導出される空洞及びチャネルサイズと一貫した。
【0227】
水中、DMF中、及びTHF中のHf−MOFの懸濁液(0.04mMのL配位子)の蛍光スペクトルを、368.8nmの励起波長で取得した。一般的な溶媒効果によって予測される通り、発光スペクトルの極大は、溶媒の極性が増加する(THF中430nm、DMF中435nm、及び水中469nm)につれて、より長い波長へと偏移する。そのような観察は、溶媒分子に対するMOF中のアントラセン部位の到達性を支持する。より極性の溶媒中のMOFの励起スペクトルもまた、分子電子配位及び振動性配位に対する溶媒浴様式のより強度の結合ために、より明確化されていない振動性微細構造を呈する。水中及びDMF中のZr−MOFの懸濁液(0.04mMのL配位子)は、Hf−MOFと類似した発光スペクトルを示した。対照的に、非水溶性であるHL粒子は、溶媒分子が配位子粒子の内部に到達できないために、溶媒に対する中等度の発光の依存性を示すにすぎなかった。水中のHf−MOF、Zr−MOF、及びHL懸濁液の蛍光寿命もまた、調査した。懸濁試料の全ては双指数関数的な蛍光減衰を示し、試料の重み付き寿命を適合に基づいて計算した。Hf−MOF及びZr−MOFは、HL粒子(2.0ns)よりも有意に長い寿命(それぞれ、6.19ns及び5.96ns)を持つ。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、この差は、励起状態の寿命に対する溶媒効果と、高密度に充填されたHL粒子中の励起子移動との組み合わせから生じると考えられる。移動励起状態は移動し、HL粒子中の欠損部位で捕捉され、消光され得る一方で、MOF中のアントラセン部分の部位単離は、励起状態の移動性を低減し、励起状態の寿命の亢進をもたらす。これと一貫して、HLのDMF溶液は、Hf−MOF(4.06ns)及びZr−MOF(3.92ns)のDMF懸濁液の励起状態の寿命よりも長い励起状態の寿命(5.34ns)を呈する。先行研究は、構造中のアントラセンの自由回転が、そのルミネセンス信号を低減し得ることを示した。
【0228】
MOF構造中の重金属クラスタは、それらの高Z数のために、有効なX線アンテナとしての役割を果たす。Hf4+イオン及びZr4+イオンの外殻電子は、X線吸収時、光電効果により高速電子として駆出される。その後、発生した光電子は、構造体中で非弾性散乱を経て、それらのエネルギーをL配位子へと輸送することで励起状態にさせ、この励起状態が減衰し、検出のための可視光子を放射する。MOF粒子(水中200μLの懸濁液)のX線ルミネセンスを、臨床的表在療法系で試験した。Hf−MOF及びZr−MOFの両方は、X線励起時、可視スペクトル内の明るい放射線ルミネセンスを呈する。図6A〜6Eを参照されたい。
【0229】
Hf−MOFは、Zrよりも高いHfのX線散乱断面積(例えば、平均エネルギー減衰係数は、15〜30keV範囲において、Hfについて約110〜18cm/g、Zrについて23〜16cm/gの範囲である)のために、同一の実験条件下で、Zr−MOFよりも高い放射線ルミネセンス信号を呈した。対照実験として、アントラセニル配位子HL自体または金属酸化物(HfOもしくはZrO)ナノ粒子のいずれも有意な量の光学信号は生成せず、MOF組み立て体中の重金属アンテナ及び有機発光体の両方が果たす相乗的役割を示す。Hf−MOF(1.2mMのLまたはHf)は、HL単独によって発生される信号の約24倍である信号を生成した一方で、Zr−MOFは、その量の約11倍の信号を生成した。比較のために、幅広く使用される無機シンチレーターNaI(Tl)は、アントラセン結晶の光出力の2.3倍の光出力を有する一方で、実用的な有機液体及びプラスチックシンチレーターは全て、アントラセン結晶よりも低い光出力を有する。対照的に、コロイド状金属酸化物(HfOまたはZrO)と配位子HLとの物理的混合物は、HLのルミネセンスよりもわずかに高いルミネセンス(HfO+HLについて約1.3倍、及びZrO+HLについて約1.2倍)を発生させるにすぎない。HfOCl及びZrOCl溶液、ならびにMeL(L配位子のメチルエステル)での追加の対照実験もまた、実行した。再度、MOF試料のルミネセンスと比較して、溶液試料によって無視できるルミネセンスが発生した。
【0230】
また、エタノール中のMOF懸濁液の放射線ルミネセンスも、同一の実験条件下、水溶液において得られるルミネセンスと比較して、わずかに低いルミネセンスを伴って測定された。そのような溶媒依存性は、溶媒分子と、発生した高速電子との間の相互作用を示し、この相互作用が、X線から光子への全体的な変換効率を決定する。溶媒効果を排除するために、いかなる溶媒分子も含まない乾燥MOF試料の放射線ルミネセンスを測定した。懸濁液測定に使用した量よりも約15倍多いMOFを使用して、測定に十分な量の材料を得た。結果として得られるMOFのルミネセンス信号は、水溶性懸濁液から得られる信号よりも、Hf−MOFについて約1200倍強烈であり、Zr−MOFについて約2400倍強烈である。測定の積分時間(または適用量)を10秒から0.01秒へと低下させ、検出ゲインを200から50へと低減させて、検出器の飽和を避けた。固体試料は、溶媒分子の不在下で遥かに多い(80〜160倍)放射線ルミネセンスを発生させることができ、理論によって拘束されることを望むものではないが、これは、X線から可視への変換の主要な機構としての二次拘束電子誘起ルミネセンスと一貫する。
【0231】
更なる体系的研究のために、水溶性懸濁液中、異なる濃度のHf−MOF試料及びZr−MOF試料を、(30、50、及び80kVの管電位、ならびに7.6、30、及び8mAの管電流に基づいて、10秒当たり約0.025、0.25、及び0.05Gyの送達用量で)14.8、16.2、及び29.8keVの有効エネルギーを有するX線に暴露した。図7A及び7Bに示すように、観察されたMOFの放射線ルミネセンス信号は、3つ全てのX線エネルギーについて、ナノ粒子濃度とともに直線的に変動する。線量の増加が、MOFからの信号の増加をもたらし、より多くのX線光子が吸収されると、より多くの可視光子が発生されることもまた確認された。これらのMOF試料からのX線誘起ルミネセンスのスペクトルを、特別注文したシステムで測定した。試料は、400〜600nmの間の範囲の放射線ルミネセンスピークを示した。X線損傷に対する放射線ルミネセンスの光学安定性もまた、調査した。最大300Gyの累積線量を、Zr−MOF試料及びHf−MOF試料に送達し、非常に低線量(約0.25μGy)のX線照射によって、超高線量の送達前後のX線ルミネセンスを調査した。X線誘起ルミネセンスの実質的な低下は、確認されなかった。
【0232】
実施例7
RuBipyL−UiO NMOF
7.1.[Ru(bipy)(bpy−dc)]Cl(RuBipyL)の合成
報告される方法で、5,5'−ビス(4−メトキシカルボキシルフェニル)−2,2'−ビピリジン(bpy−de)を調製した。図11に示すように、丸底フラスコ中、bpy−de(195mg、0.46mmol)及びルテニウム(II)ビス(2,2'−ビピリジン)二塩化物(206mg、0.43mmol)を30mLのエタノール中に溶解させ、窒素保護下で4日間還流させた。その後、この溶液を冷却し、濾過し、真空中で濃縮した。濃縮した溶液にジエチルエーテル(30mL)を添加して、生成物Me−RuBipyLを赤色の沈殿物(175mg、45%)としてもたらした。H NMR(500MHz,DMSO−d6):9.06(d,2H,J=8.5Hz)、8.87(d,2H,J=8.0Hz)、8.84(d,2H,J=8.0Hz)、8.60(dd,2H,J=8.5Hz,2.0Hz)、8.22(td,2H,J=8.0Hz,1.2Hz)、8.18(td,2H,J=8.0Hz,1.2Hz)、8.02(d,4H,J=8.5Hz)、7.95(d,2H,J=5.5Hz)、7.84(d,2H,J=5.5Hz)、7.80(d,2H,J=2.0Hz)、7.66(d,4H,J=8.5Hz)、7.59(td,2H,J=6.5Hz,1.0Hz)、7.55(td,2H,J=6.5Hz,1.0Hz)、3.89(s,6H)。
【0233】
Me−RuBipyL(175mg、0.19mmol)を、エタノール/水(1:1vol/vol)中、20mLの3M NaOH溶液中に溶解させ、一晩還流させた。その後、この溶液を冷却し、2M HCl(水溶液)で中和させた。この溶媒を真空中で除去した。その後、結果として得られる固体をエタノール中に溶解させ、濾過した。この濾過物を濃縮して、生成物RuBipyLを赤色の固体(146mg、90%)としてもたらした。H NMR(500MHz,DMSO−d6):13.24(br s,2H)、9.06(d,2H,J=8.5Hz)、8.88(d,2H,J=8.0Hz)、8.85(d,2H,J=8.0Hz)、8.59(dd,2H,J=8.0Hz,1.5Hz)、8.22(t,2H,J=8.0Hz)、8.18(t,2H,J=8.0Hz)、8.00(d,4H,J=8.0Hz)、7.95(d,2H,J=5.0Hz)、7.84(d,2H,J=5.5Hz)、7.81(d,2H,J=1.5Hz)、7.63(d,4H,J=8.5Hz)、7.60(t,2H,J=6.5Hz)、7.56(t,2H,J=6.5Hz)。
【0234】
7.2.RuBipyL−UiO NMOFの合成及び特性評価
2mLのガラスバイアルに、1.51mgのRuBipyL(1.7μmol)、0.5mLのHfCl溶液(DMF中1.4mg/mL、2.2μmol)、及び8μLのトリフルオロ酢酸(0.10mmol)を添加した。この反応混合物を、100℃の炉内で4日間維持した。遠心分離によって橙色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:100vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0235】
X線誘起光線力学療法のための方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0218049号、同第2002/0127224号、及び同第2011/0238001号に記載され、これらの全体がそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれる。
【0236】
7.3.X線誘起一重項酸素発生
従来のPDT:
2ドラムバイアル中、4−ニトロソ−N,N−ジメチルアナリン(RNO、25μM)、ヒスチジン(10mM)、及びMOF試料(P−MOFまたはRu−MOF、5μM)の水溶液を調製した。439nmでの溶液吸収を、UV可視分光光度計によって監視した。この溶液に、LED光(P−MOFには640nm、100mWのLED、Ru−MOFには400nmのロングパスフィルタを有する白色光LED)を、0、2、5、10、15、20、30分間照射した。439nm(ΔOD)での吸収の低下を、照射時間に対してプロットした。相対的発生速度を、データの線形適合によって評価した。適合等式は、以下の通りであり、
【数12】
【数13】
式中、yは、吸収の低下吸収(任意単位)であり、tは、照射時間(分)である。
【0237】
X−PDT:
水溶液(10、20、または50μM)中、25μMのRNO及び10mMのヒスチジンの存在下でMOF試料を調製した。P−MOFには、1、2、または4GyのX線照射を適用した。Ru−MOFには、全ての試料に8GyのX線線量を与える。分光光度計によって、溶液のUV可視吸収スペクトルを取得した。これらの研究の結果を、図12A〜12Cに示す。
【0238】
7.4.P−MOF及びRu−MOFの細胞取り込み
DBP−UiO NMOF(P−MOF)及びRuBipyL−UiO NMOF(Ru−MOF)の細胞取り込みを、マウス結腸直腸腺癌CT26、ヒト膠芽腫U87、及びヒト頭頸部癌SQ20Bを含む3つの癌細胞株中で評価した。細胞を、50μMのHf濃度のP−MOFまたはRu−MOFとともに4時間インキュベートした。細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。濃縮硝酸を使用して、細胞を消化させ、ICP−MSによって金属濃度を決定した。
【0239】
P−MOF及びRu−MOFの両方は、約5〜30%の範囲の取り込み効率で、癌細胞によって効率的に吸収された。CT26細胞、U87細胞、及びSQ20B細胞中のP−MOF及びRu−MOFのHf濃度はそれぞれ、3.44±0.13及び6.08±0.10、1.27±0.07及び4.26±0.53、ならびに1.02±0.32及び4.64±0.61nmol/10個の細胞であった。
【0240】
更に、CT26細胞、U87細胞、及びSQ20B細胞によって吸収されるRu−MOFのHf対Ruのモル比の計算値はそれぞれ、1.05±0.12、1.01±0.11、及び0.98±0.09であり、これは、未変化のRu−MOFのモル比に一致し、Ru−MOFがその未変化の形態で細胞によって内部移行されたことを示した。
【0241】
7.5.細胞傷害性
7.5.1.UiO NMOFの細胞株依存的細胞傷害性
4つのHNSCC(SQ20B、JSQ3、SCC61、HNSCC135)、2つの膠芽腫(GBM:U251、U87)、1つの結腸癌細胞(HT29)、1つのシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞(OCa:A2780cisR)、1つの乳癌細胞(MCF−7)、及び1つの膵臓癌細胞(PDAC:BxPC−3)を含む10個の異なるヒト癌細胞株に対して、X線照射時のP−MOF及びRu−MOFの細胞傷害性を評価した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。P−MOFまたはRu−MOFを、10μMの配位子濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。250kVp及び10mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。結果を表5に示す。
【0242】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。P−MOF及びRu−MOFの両方は、異なるヒト癌細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量で効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【表5】
【0243】
7.5.2.NMOF濃度依存的細胞傷害性
NMOF濃度依存的細胞傷害性を、U87細胞上に評価した。0〜15μMの範囲の様々な配位子濃度のP−MOFを、細胞とともに4時間インキュベートし、その後、0.5GyでX線照射した。250kVp及び10mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0244】
10μM未満の投薬時、P−MOFの細胞傷害性は、濃度依存的であった。10μMと15μMとの間に、細胞傷害性の有意な差は観察されなかった。図12A)を参照されたい。
【0245】
7.5.3.X線誘起細胞傷害性の組織透過
可視光またはNIRは1cm未満の組織透過深度を有する一方で、X線は大きな組織透過深度を有する。インビトロLED光照射またはX線照射中、1cmの厚さを有する一片の牛肉、または4.5cmの厚さの牛肉の積み重ねを使用して細胞を覆って、深部腫瘍環境を模倣し、10μMの配位子濃度のP−MOFまたはRu−MOFの細胞傷害性を評価した。照射(X−PDTには0.5Gy及びPDTには180J/cm)後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。光は組織を透過することができないため、1cmまたは4.5cmの牛肉で遮断された光活性化PDTについて、細胞傷害性は観察されなかった。X線誘起癌細胞死滅は、牛肉遮断によってわずかに影響があったにすぎず、(牛肉遮断なしでの、約80〜83%の細胞死滅と比較して)4.5cmの遮断で65%超の細胞を効果的に死滅させた。図13A及び13Bを参照されたい。
【0246】
実施例8
TBP−Hf NMOF
8.1.TBP−Hf NMOFの合成及び特性評価。
2ドラムガラスバイアルに、1mLのHfCl溶液[N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)中2mg/mL、6.2μmol]、1mLのテトラ(ベンゾエート)ポルフィリン(HTBP)溶液(DEF中1.9mg/mL、2.4μmol)、及び60mgの安息香酸(0.49mmol)を添加した。この反応混合物を、120℃の炉内で2日間維持した。遠心分離によって青紫色の粉末を回収し、DMF、トリエチルアミン/エタノール(1:20vol/vol)、及びエタノールで洗浄した。
【0247】
TBP−Hf NMOFの粉末X線回折パターンは、TBP−Zr MOFについて報告される構造からシミュレーションされるパターンと適合する。
【0248】
TBP−Hf NMOFのナノ棒形態を、透過型電子顕微鏡(TEM、Tecnai F30 and Tecnai Spirit、FEI,Hillsboro,Oregon,United States of America)によって確認した。隣接する格子縞間の距離は1.61nmであると測定され、これは、報告される構造のd001=1.66nmと適合する。粒子は、約20〜30nmの幅及び約50〜100nmの長さを有するロッド様形態を呈する。
【0249】
2つのヒトGBM細胞株(U87及びU251)、1つのマウスGBM細胞株(GL261)、1つのマウス結腸直腸腺癌細胞株(CT26)、1つのマウス乳癌細胞株(TUBO)、及び1つのマウス前立腺癌細胞株(TRAMP−C2)に対して、X線照射時のTBP−Hf NMOFの細胞傷害性を評価した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。図14A〜14Fを参照されたい。TBP−Hf NMOFを、10μMのHf濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0250】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。TBP−Hf NMOFはまた、異なる細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量で効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【0251】
2つのヒトGBM細胞株(U87及びU251)ならびに1つのマウスGBM細胞株(GL261)に対して、X線照射時のTBP−Hf NMOFの細胞傷害性を更に評価し、P−MOFと比較した。0〜1Gyの範囲の様々なX線照射線量を適用して、X線照射線量依存的細胞傷害性を決定した。TBP−Hf NMOFまたはP−MOFを、10μMのPS配位子濃度で細胞とともに4時間インキュベートし、細胞培養培地を新鮮な培地と交換し、その後、X線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0252】
PBS及び最大1GyのX線照射で治療した細胞について、細胞傷害性は観察されなかった。TBP−Hf NMOFは、異なるGBM細胞株のパネルに対して、非常に低いX線線量でP−MOFよりも効率的な癌細胞の死滅を呈した。
【0253】
実施例9
UiO NMOFによるX線増感
Hf金属クラスタ、及び無視できる光増感特性を有する配位子から構築された、UiO−66、UiO−67、及びアミノUiO−68を含む3つのHf NMOFを合成した。更に、放射線増感剤として臨床治験にある非結晶性構造を有するHfOナノ粒子も、比較として使用した。
【0254】
9.1.UiO−66、UiO−67、及びアミノUiO−68Hf NMOFの合成及び特性評価
Hf−UiO−66(UiO−66)
HfCl(DMF中3.52mg/mL、0.6mL、6.59μmol)の溶液、及びテレフタル酸(HDBC、DMF中20mg/mL、0.2mL、24.1μmol)の溶液を混合した。この溶液に、25μLの酢酸を添加した。90℃の炉内で18時間反応させ、遠心分離によって回収した後、白色の粉末生成物をもたらした。母液を90℃で更に6時間維持して、追加の粉末生成物をもたらした。この生成物の2つの部分を組み合わせ、DMF及びエタノールで洗浄した。
【0255】
Hf−UiO−67(UiO−67)
HfCl(DMF中4mg/mL、0.5mL、6.24μmol)の溶液、及び4,4−ビフェニルジカルボン酸(HBPDC、DMF中6mg/mL、0.5mL、12.4μmol)の溶液を、1ドラムバイアル中で混合した。この溶液に20μLの酢酸を添加した。この混合物を90℃の炉内で18時間加熱し、遠心分離によって白色の粉末生成物を回収し、DMF及びエタノールで洗浄した。
【0256】
アミノUiO−68
アミノUiO−68の合成模式図を、図15に示す。簡潔には、2,5−ジブロモアニリン(2.00g、8.0mmol)、4−(メトキシカルボニル)−フェニルボロン酸(4.40g、24.5mmol)、及びCsF(5.82g、38mmol)を、100mLの丸底フラスコ中、窒素保護下で50mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中に懸濁させた。その後、Pd(OAc)(0.60g、2.7mmol)及びPPh(1.61g、6.1mmol)を添加した。この混合物を、50℃で48時間加熱した。この生成物を、水/ジクロロメタン抽出物、及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.2%〜0.5%のトリエチルアミンで、ジクロロメタン:エチルエーテル=50:1)によって精製した。収率:58%。H NMR(クロロホルム−D):δ=8.10(m,4H)、7.65(d,2H)、7.57(d,2H)、7.22(d,1H)、7.09(d,1H)、7.01(s,1H)、3.93(2つの重なった一重線,6H)、3.88(s,2H)。
【0257】
上記(1.68g、4.65mmol)からのアミノ−トリフェニルジカルボキシルメチルエステルを、200mLのTHF中に懸濁させ、40℃まで加熱した。この懸濁液に、100mLの5.5M KOHメタノール溶液を添加し、結果として得られる混合物を40℃で18時間撹拌した。遠心分離によって白色固体を回収し、その後、室温で、100mLのTHF中、12mLのトリフルオロ酢酸で2時間処理した。真空濾過によって黄色の固体生成物(アミノ−TPDC)を単離させ、THF、メタノール、及びエーテルで洗浄した。収率:80%。H NMR(DMSO−d6):δ=12.97(br,2H)、8.03(m,4H)、7.74(d,2H)、7.61(d,2H)、7.16(d,2H)、7.02(dd,1H)、5.12(br,2H)。13C NMR(DMSO−d6):δ=167.66、167.63(COOH)、146.24(C1')、145.00(C1")、144.25(C)、139.96(C4')、131.31(C6')、130.40、130.28(C3",C)、129.98、129.54(C4",C)、129.19(C2")、126.97(C)、125.04(C2')、115.96(C5')、114.26(C3')。
【0258】
HfCl(3mL、1.4mg/mL、18μmol)及びアミノ−TPDC(3mL、2mg/mL、18μmol)のDMF溶液を、20mLのガラスバイアルに添加し、この混合物を10mLまで希釈し、その後、750μLの酢酸を添加した。この混合物を、80℃の炉内で5日間維持した。遠心分離によって生成物を回収し、DMF、5%のトリエチルアミンエタノール溶液、及びエタノールで洗浄し、明るい黄色を有するUiO NMOFをもたらした(収率:約20%)。
【0259】
9.2.細胞取り込み
3つのNMOF及びHfOナノ粒子の細胞取り込みを、まずSQ20B細胞上で評価した。50μMのHf濃度のNMOFまたはHfOナノ粒子を、SQ20B細胞とともに4時間インキュベートした。細胞を回収し、細胞数を血球計数器によって計数した。濃縮硝酸を使用して、細胞を消化させ、ICP−MSによって金属濃度を決定した。
【0260】
3つのNMOF及びHfOナノ粒子は、4時間のインキュベーション期間以内に細胞によって効率的に吸収されることができる。NMOF及びHfOナノ粒子の細胞取り込み量は、アミノUiO−68>UiO−67≒UiO−66≒HfOナノ粒子の順であった。図16の左パネルを参照されたい。
【0261】
9.3.インビトロ放射線増感
3つのHf NMOF、及びX線照射によって誘起されたHfOナノ粒子の細胞傷害性を、SQ20B細胞に対して評価した。細胞を、異なるHf濃度のUiO−66、UiO−67、アミノUiO−68、またはHfOナノ粒子とともに4時間インキュベートし、その後、異なる線量でX線照射した。225kVp及び13mAの電流でのX線ビームを照射に使用した。照射後、細胞を更に72時間インキュベートしてから、MTSアッセイによって細胞生存率を決定した。
【0262】
アミノUiO−68NMOFは、1Gyよりも高いX線照射線量で効率的な癌細胞死滅(50%超)によって証明される放射線増感能力を呈した。UiO−66、UiO−67、及びHfOナノ粒子は、中程度の放射線増感特徴を示した。図16の右パネルを参照されたい。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、アミノUiO−68のより高い取り込み、特徴的な薄プレート様形態、及びより大きな細孔/チャネルが、好ましい放射線増感に寄与したと考えられる。しかしながら、P−MOFはアミノUiO−68NMOFよりも有意に高い細胞死滅を誘導し、これは、放射線増感以外の他の機構が効率的な癌細胞死滅プロセスに関与し得ることを示した。
【0263】
X線照射は、核中のDNAの二本鎖切断(DSB)を引き起こす。H2AFXは、細胞中のDSBを評価するための高感度の標的である。照射時にRu−MOFにより、及びLED光照射(630nm)時にP−MOFにより引き起こされるDSBを、SQ20B細胞中でのH2AFXアッセイによって調査した。X線照射のために、SQ20B細胞を10μMのHf濃度のRu−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、0、0.1、0.2、0.5、及び1GyでX線照射した。1GyのX線照射でPBSとともにインキュベートしたSQ20B細胞が、対照としての役割を果たした。LED光照射のために、SQ20B細胞を10μMのHf濃度のP−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、100mW/cmのフルエンス率で30分間LED(180J/cm)光照射した。X線または光照射の直後に、H2AFXアッセイを実行した。核をDAPIで染色した。細胞をCLSMで撮像した。赤色の蛍光は、抗体標識したH2AFXで染色されたDSBを示した。Ru−MOF及び0.1GyのX線照射で治療した細胞について、DSBは観察されなかった。X線線量の増加とともに、最低0.2Gyで核中の有意なDSBが観察された。1Gyの照射でPBSで治療した細胞、または180J/cmのLED光照射でP−MOFで治療した細胞において、DSBは観察されなかった。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、これらの結果を考慮すると、DSBがX線照射によって誘起されたRu−MOFの細胞死滅に関与する一方で、180J/cmでの従来のPDTはDSBを引き起こさなかったことを意味する。
【0264】
実施例10
X線誘起光線力学療法(X−PDT)
生細胞中の発生を、SOSGによって検出した。簡潔には、SQ20B細胞をペトリ皿中に播種し、24時間増殖させた。その後、この培地を1μMのSOSGを含有する新鮮な培地と交換して、細胞をSOSGで前負荷した。30分間インキュベートした後、細胞をPBSによって3回洗浄して、過剰量のSOSGを除去した。細胞を、PBS、10μMのHf用量のP−MOF、またはRu−MOFとともに4時間インキュベートし、その後、PBSで3回洗浄して、過剰量のNMOFを除去した。細胞に、1Gyの線量のX線照射を適用した。CLSMを使用して、細胞の内側の緑色の蛍光を検出することによって、生細胞中に発生したを可視化した(励起/放射:504/525nm)。X線照射なしでP−MOFもしくはRu−MOFで治療した細胞中、またはPBS及びX線照射で治療した細胞中には、緑色の蛍光は観察されなかった。
【0265】
P−MOF及びX線照射またはRu−MOF及びX線照射で治療した細胞中には、緑色の蛍光が観察され、これは、X線照射によって内部移行したNMOFによって、が発生したことを示した。
【0266】
実施例11
腫瘍内注射後のNMOFの体内分布
マウス腺癌細胞CT26を、BALB/cマウスの右側腹部領域に皮下注射(100万個の細胞/マウス)した。腫瘍サイズが100mmに達した後、50μLのP−懸濁液を、10μmol/kgのHf用量でマウスに腫瘍内注射した。注射直後及び注射の12時間後にマウスを屠殺した。注射の12時間後、マウスを、腫瘍部位に2GyのX線照射を受けさせ、注射の36時間、60時間、84時間、108時間、及び132後に屠殺した。各群及び時点について、3匹のマウスを屠殺した。血液、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び膀胱を収集して、ICP−MSによってHf濃度を決定した。腫瘍を収集し、飽和KPOで均質化した。DMSO、その後、遠心分離によって、DBP配位子を更に抽出した。上清をUV可視に供して、腫瘍中のDBP配位子濃度を決定した。沈殿物を凍結乾燥し、濃縮硝酸により消化させ、ICP−MSに供して、腫瘍中のHf濃度を決定した。
【0267】
血液、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び膀胱において、無視できるHfが経時的に観察された。図17に示すように、DBP配位子対Hfのモル比は、経時的に約1で一定に維持され、これは、腫瘍内注射の5.5日後にP−MOFが未変化であることを示した。しかしながら、腫瘍中のNMOF濃度は経時的に低下し、注射の4.5日後に有意な低下を示し、腫瘍中には75%未満のIDが残っていた。
【0268】
実施例12
X線誘起療法のインビボ抗癌有効性
12.1 SQ20Bマウスモデルの皮下異種移植上に対するインビボ抗癌有効性
SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、4つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+2Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+2Gy/画分、(3)3画分についてRu−MOFを10μmol/kg+2Gy/画分、(4)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が100mmに達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOF、Ru−MOF、またはPBSを腫瘍内注射した。P−MOFがより大きな腫瘍において腫瘍阻害をもたらし得るかどうかを調査するために、腫瘍が250mmに達した時、P−MOFに、10μmol/kgのHf用量で腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0269】
NMOFは、対照群と比較して、体重発達及び主要な器官の組織学の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。図18A〜18Eを参照されたい。100mmの腫瘍で開始した研究について、NMOF群中の腫瘍重量は、対照群よりも53〜65倍低かった。
【0270】
12.2.U87マウスモデルの皮下異種移植に対するインビボ抗癌有効性
U87細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、2つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを10μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が100mmに達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、単回X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの26日後に全てのマウスを屠殺した。
【0271】
単回NMOF注射及び非常に低い用量(0.5Gy)での単回X線照射は、腫瘍後退の成功をもたらした。図18A〜18Eを参照されたい。NMOF群中の腫瘍重量は、対照群よりも51倍低かった。
【0272】
12.3.PC−3マウスモデルの皮下異種移植に対するインビボ抗癌有効性
SQ20B細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を、生後6週間の胸腺欠損のオスのヌードマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、4つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+2Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が100mmに達した時、10μmol/kgのHf用量のP−MOF、Ru−MOF、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0273】
NMOFは、対照群と比較して、体重発達の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。図18A〜18Eを参照されたい。
【0274】
12.4.皮下CT26マウスモデルに対する抗癌効果
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)3画分についてP−MOFを1μmol/kg+0.5Gy/画分を含めた。腫瘍が150mmに達した時、10μmol/kgまたは1μmol/kgのHf用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。腫瘍植え付けの19日後に全てのマウスを屠殺した。
【0275】
10μmol/kgの用量で注射したNMOFは、対照群と比較して、体重発達の認識できる差によって証明される有意な毒性を引き起こすことなく、非常に低いX線線量で腫瘍後退の成功をもたらした。図18A〜18Eを参照されたい。1μmol/kgの用量で注射したNMOFもまた、非常に低いX線線量で腫瘍阻害の成功もたらした。
【0276】
実施例13
免疫療法と組み合わせたNMOFのインビボ抗癌有効性及びアブスコパル効果
13.1.P−MOF/INCB24360の合成及び特性評価
2ドラムガラスバイアルに、MedKoo Biosciences(Chapel Hill,North Carolina,United States of America)から得た2.28mgのINCB24360(8.4μmol)、及び1.0mLのP−MOF懸濁液(エタノール中2.0mg/mL)を添加した。超音波処理の助けによってINCB24360を溶解させた後、1.0mLの水を添加した。この混合物を暗所で12時間撹拌した。遠心分離によって充填したMOFを回収し、50%のエタノール(v/v)及び水によって洗浄した。
【0277】
Shimadzu TGA−50熱重量分析器(Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)上で、INCB24360の充填前後、P−MOF試料に対して熱重量分析(TGA)を実行した。加熱速度を3℃/分に設定し、試料を空中で700℃まで加熱した。重量パーセンテージを、温度に対してプロットした。純粋なINCB24360は、約200℃で約90%の重量損失を有する。薬物充填の計算値は、以下の等式に従って、9.4重量%であった。
【数14】
【0278】
13.2.皮下CT26及びTUBOマウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、CT26及びTUBO側腹部担腫瘍BALB/cマウスを含む2つの免疫適格性モデルに対して評価した。CT26またはTUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を右側腹部領域に、CT26またはTUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、2つまたは3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを10μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を10μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約100mmに達した時、2μmol/kgのINCB24360用量に等しい7μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3日連続で毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0279】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮させ、これは、組み合わせ療法が、結腸癌及び乳癌の両方の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。図19及び20を参照されたい。
【0280】
13.3.皮下TRAMP−C2マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下TRAMP−C2担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。TRAMP−C2細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を右側腹部領域に、TRAMP−C2細胞懸濁液(1匹のマウス当たり1×10個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約200mmに達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0281】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も完全に根絶させ、これは、組み合わせ療法が、前立腺癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。図21を参照されたい。
【0282】
13.4.皮下MC38マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下MC38担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。MC38細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を右側腹部領域に、MC38細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約250mmに達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0283】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退/根絶をもたらした(3つ中2つの腫瘍を根絶した)だけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮させ、これは、組み合わせ療法が、結腸癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。図22を参照されたい。
【0284】
13.5.皮下GL261マウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)と組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下GL261担腫瘍C57BL/6マウスに対して評価した。GL261細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を右側腹部領域に、GL261細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gyを含めた。腫瘍が約200mmに達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。NMOFを、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0285】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラス低X線線量のX線照射は、治療した右の腫瘍の腫瘍後退/根絶をもたらした(3つ中2つの腫瘍を根絶した)だけでなく、遠隔の左の腫瘍も収縮/根絶させ(3つ中2つの腫瘍を根絶した)、これは、組み合わせ療法が、膠芽腫癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。図23を参照されたい。
【0286】
13.6.P−MOF/INCB24360とPD−L1抗体との組み合わせ療法による、皮下TUBOマウスモデルに対する抗癌及びアブスコパル効果
IDO阻害剤(INCB24360)とPD−L1抗体とを組み合わせたNMOFの抗癌有効性及びアブスコパル効果を、皮下TUBO担腫瘍BALB/cマウスを含む2つの免疫適格性モデルに対して評価した。TUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を右側腹部領域に、TUBO細胞懸濁液(1匹のマウス当たり4×10個の細胞)を同一のマウスの左側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)PBS+0.5Gy、(2)P−MOFを3.5μmol/kg+0.5Gy+PD−L1抗体、(3)P−MOF/INCB224360を3.5μmol/kg+0.5Gy+PD−L1抗体を含めた。腫瘍が約200mmに達した時、1μmol/kgのINCB24360用量に等しい3.5μmol/kgのHf用量のP−MOF、P−MOF/INCB24360、またはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に、225kVp及び13mAの画像誘導X線を照射した。X線照射の12時間後、200μgのPD−L1抗体を群(2)及び(3)の各マウスに腹腔内注射した。NMOF及びPD−L1抗体を、合計3回の注射となるように、一日おきに注射した。X線照射を6日連続で毎日実行した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖及び体重発達を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0287】
P−MOF/INCB24360の局所注射プラスX線照射プラスPD−L1抗体用量は、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶をもたらしただけでなく、遠隔の左の腫瘍も完全に根絶させ、これは、組み合わせ療法が、乳癌の免疫適格性マウスモデルにおける免疫応答の誘発に成功したことを示した。P−MOFの局所注射プラスX線照射プラスPD−L1抗体もまた、治療した右の腫瘍の完全な腫瘍根絶、及び遠隔の左の腫瘍の腫瘍根絶/後退(3つ中1つの腫瘍を根絶した)をもたらした。図24を参照されたい。
【0288】
実施例14
P−MOFのペグ化
エタノール中P−MOF(1mg/mL)を、それぞれ1:1、1:2、1:5、及び1:10のNMOF:DSPE−PEG2000重量比で、THF中DSPE−PEG2000(5mg/mL)と混合した。窒素吹き込みによってこの懸濁液を50μLまで濃縮し、その後、1分間ボルテックスした。この懸濁液に1ミリリットルの水を添加した。この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理して、ペグ化P−MOFをもたらした。
【0289】
ペグ化P−MOFの粒径及び多分散指数(PDI)を、動的光散乱(DLS)測定によって決定した。表6は、異なる重量比のNMOF:DSPE−PEG2000で製剤化したペグ化P−MOFのZ平均、数平均、及びPDIをまとめる。50μg/mLの濃度でエタノール中及び水中に分散したP−MOFの粒径及びPDIを、比較として決定した。
【表6】
【0290】
P−MOFのペグ化の安定性を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で更に評価した。ペグ化P−MOF(50μg)を13000rpmで15分間遠心分離した。沈殿物を1mLのPBS中に分散させ、その後、5分間超音波処理した。PBS中のペグ化P−MOFの粒径及びPDIを、DLS測定によって決定した。表7に示すように、ペグ化P−MOFの粒径は、水中で決定した粒径と比較して、PBS中に分散させた後に更に低下し、これは、コロイド安定性及びP−MOFとDSPE−PEGとの間の強度の相互作用を示した。したがって、表面修飾NMOFは、より良好な生体適合性及び血液循環特性を有し得る。いくつかの実施形態において、それらは、全身注射を介して投与されてもよい。
【表7】
【0291】
実施例15
表在癌の治療におけるX線誘起光線力学療法のためのX線装置の精密化
15.1.異なるX線装置を使用した、皮下CT26担腫瘍マウスモデルに対するP−MOFのインビボ抗癌有効性。
図25A〜25Fは、(図25A)選択された減衰器の透過後に異なるエネルギーを有する、X線光子の画分の計算値、(図25B)銅減衰器によるフィルタリング後、120kVpでのW−標的源からのX線スペクトルの計算値、(図25C)銅減衰器によるフィルタリング、総光子数による正規化後、120kVpでのW−標的源からのX線スペクトルの計算値、(図25D)Hf及び水のX線質量エネルギー吸収係数の計算値、(図25E)Hf及び水のX線質量エネルギー吸収係数の割合の計算値、ならびに(図25F)異なるエネルギーでのX線光子の透過深度の計算値のグラフを示す。
【0292】
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)3画分についてP−MOFを10μmol/kg+1Gy/画分を含めた。群(1)及び(2)は、以下のX線装置、225kVp、13mA、0.3mmのCuフィルタを採用する。群(3)は、別のX線装置、120kVp、20mA、2mmのCuフィルタを採用する。腫瘍が100mmに達した時、10μmol/kgの配位子用量のP−MOFまたはPBSを腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、3回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0293】
225kVpのX線装置は、有意な腫瘍後退をもたらした一方で、120kVpのX線装置は、第1の治療の6日後、3匹中2匹のマウスで完全な腫瘍根絶を達成した。図26A及び26Bを参照されたい。いかなる1つの理論にも拘束されるものではないが、この結果は、特定の実施形態において、X線送達パラメータの精密化によって、P−MOFの治療効果が更に亢進され得ることを示した。
【0294】
15.2.異なるX線装置を使用した、皮下CT26担腫瘍マウスモデルに対するTBP−Hfのインビボ抗癌有効性。
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。比較のために、3つの群、つまり、(1)3画分についてPBS+0.5Gy/画分、(2)5つの画分についてTBP−Hfを10μmol/kg+0.5Gy/画分、(3)5画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。群(1)及び(2)は、以下のX線装置、225kVp、13mA、0.3mmのCuフィルタを採用する。群(3)は、別のX線装置、120kVp、20mA、2mmのCuフィルタを採用する。腫瘍が100mmに達した時、TBP−HfまたはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。
【0295】
225kVpのX線装置は、中等度の腫瘍増殖阻害を示した一方で、120kVpのX線装置は、CT26マウスモデル上で有意な腫瘍後退を達成した。図26A及び26Bを参照されたい。繰り返すが、いかなる1つの理論によっても拘束されるものではないが、この結果は、特定の実施形態において、X線送達パラメータの精密化によって、TBP−Hfの治療効果が亢進され得ることを示した。
【0296】
実施例16
皮下CT26担腫瘍マウスモデル及び担4T1マウスモデルに対するPEG@TBP−Hfのインビボ抗癌有効性
CT26細胞懸濁液(1匹のマウス当たり2×10個の細胞)または4T1細胞懸濁液(1匹のマウス当たり5×10個の細胞)を、生後6週間のオスのBALB/cマウスの右側腹部領域に皮下植え付けすることによって、担腫瘍マウスを準備した。CT26モデルについて、比較のために、3つの群、つまり、(1)5つの画分についてPBS+1Gy/画分、(2)5つの画分についてペグ化TBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分、(3)5つの画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。X線を、120kVp、20mAで、かつ2mmのCuフィルタにより送達した。腫瘍が100mmに達した時、TBP−Hf、ペグ化TBP−Hf、またはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。TBP−Hfについて、第1の照射後2日目に55%腫瘍量が低減し、ペグ化TBP−Hfについて、第1の照射後3日目に44%腫瘍量が低減しており、第1のX線照射後の最初の6日間、TBP−Hfは、腫瘍増殖後退に関してペグ化TBP−Hfよりも優れていた。しかしながら、TBP−Hfが90%の腫瘍量の低減を達成し、ペグ化TBP−Hfが88%の腫瘍量の低減を達成した第1の照射後6日目以降、腫瘍増殖後退について、第1の照射後最大9日目まで、TBP−Hfとペグ化TBP−Hfとの間に統計的有意差は観察されなかった。
【0297】
4T1モデルについて、比較のために、3つの群、つまり、((1)5つの画分についてPBS+1Gy/画分、(2)5つの画分についてペグ化TBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分、(3)5つの画分についてTBP−Hfを20μmol/kg+1Gy/画分を含めた。X線を、120kVp、20mAで、かつ2mmのCuフィルタにより送達した。腫瘍が100mmに達した時、TBP−Hf、ペグ化TBP−Hf、またはPBSをマウスに腫瘍内注射した。注射の12時間後、2%(v/v)イソフルランでマウスを麻酔し、腫瘍に画像誘導X線を照射した。NMOFを一度注射し、その後、5回、毎日X線照射した。治療有効性を評価するために、腫瘍増殖を監視した。デジタルノギスで腫瘍サイズを毎日測定した。腫瘍量は、以下、(幅×長さ)/2のように計算した。腫瘍増殖後退について、ペグ化TBP−HfとTBP−Hfとの間に差は観察されなかった。両方の製剤は、第1の照射後3日目及び6日目にそれぞれ、50%超及び80%超の腫瘍量低減を達成した。
【0298】
実施例17
MOFの脂質コーティング
DOTAPコーティング(TBP−Hf@DOTAP)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)及び1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(塩化物塩、DOTAP)(3mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、50mLの5%グルコース水溶液中に再分散させた。
【0299】
DOTAP+DOPCコーティング(TBP−Hf@DOTAP/DOPC)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)、1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC、60mL、エタノール中5mg/mL)、及びDOTAP(3mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、50mLの5%グルコース水溶液中に再分散させた。
【0300】
DOTAP+DSPE−PEGコーティング(TBP−Hf@DOTAP/DSPE−PEG)
15mLの遠心分離管に、TBP−Hf(0.20mL、エタノール中3mg/mL)、DSPE−PEG2k(0.12mL、エタノール中5mg/mL)、及びDOTAP(異なる製剤に、3mL、6mL、12mL、または30mL、エタノール中5mg/mL)を混合した。この混合物をボルテックスし、短時間超音波処理してから、2.0mLの水を添加した。その後、この混合物を1分間ボルテックスし、5分間超音波処理した。コーティングされたMOFを、遠心分離によって単離させ、超音波処理によって少量の水中に再分散させ、−20℃の冷凍庫内で凍結させた。凍結乾燥後、最後に紫色の粉末生成物をもたらした。
【0301】
脂質コーティングされたMOFのDLS測定データ及びゼータ(ζ)電位を、以下表8に示す。
【表8】
【0302】
本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるであろう。更に、上述の記述は説明が目的であるにすぎず、限定は目的ではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14AB
図14CD
図14EF
図15
図16
図17
図18AB
図18CD
図18E
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25AB
図25CD
図25EF
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32