(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731485
(24)【登録日】2020年7月8日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】燃料電池用のフロープレートを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0202 20160101AFI20200716BHJP
H01M 8/0245 20160101ALI20200716BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20200716BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20200716BHJP
【FI】
H01M8/0202
H01M8/0245
H01M8/0258
!H01M8/10 101
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-533829(P2018-533829)
(86)(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公表番号】特表2019-502238(P2019-502238A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】EP2016079561
(87)【国際公開番号】WO2017114633
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年8月20日
(31)【優先権主張番号】102015226753.9
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100175743
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 周作
(72)【発明者】
【氏名】グルーン,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ケマー,ヘラーソン
(72)【発明者】
【氏名】ハッケンベルク,ユルゲン
【審査官】
小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−222130(JP,A)
【文献】
特表2008−532243(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/103673(WO,A1)
【文献】
特表2011−514640(JP,A)
【文献】
特開2001−196076(JP,A)
【文献】
特表2008−541377(JP,A)
【文献】
特開2007−173230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
H01M 8/0245
H01M 8/0258
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のガスガイドウエブ(14)と、これらのガスガイドウエブ(14)上に配置された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニット(16)とを有する、燃料電池(12)用のフロープレート(10,28)を製造するための方法において、
前記膜ユニット(16)の幾何学的形状および/または構造を、前記ガスガイドウエブ(14)上への材料塗布中に生成し、
前記膜ユニット(16)を少なくとも部分的に3Dプリント法によって前記ガスガイドウエブ(14)上に塗布し、
前記3Dプリント法による塗布時に、前記膜ユニット(16)の部分領域が強度、接触抵抗および/または多孔性に関連して互いに異なるように塗布される、
ことを特徴とする、燃料電池(12)用のフロープレート(10,28)を製造するための方法。
【請求項2】
前記膜ユニット(16)を少なくとも部分的にコーティング法によって前記ガスガイドウエブ(14)上に塗布することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記膜ユニット(16)を少なくとも部分的にスプレー法によって前記ガスガイドウエブ(14)上に塗布することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記膜ユニット(16)を少なくとも部分的に熱的なスプレー法によって前記ガスガイドウエブ(14)上に塗布することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記膜ユニット(16)の塗布時に前記ガスガイドウエブ(14)間の高低差を均等にすることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
触媒粒子を前記膜ユニット(16)の少なくとも部分領域内に内包させることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
燃料電池(12)用のフロープレートであって、多数のガスガイドウエブ(14)と、これらのガスガイドウエブ(14)上に塗布された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニット(16)とを有しており、これらの膜ユニット(16)が、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法によって製造されている、燃料電池(12)用のフロープレート。
【請求項8】
燃料電池であって、少なくとも1つのメンブレンユニット(18)および請求項7記載の少なくとも1つのフロープレート(10,28)を有しており、前記膜ユニット(16)が前記メンブレンユニット(18)と前記フロープレート(10)との間の接触領域(20)内に配置されている、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多数のガスガイドウエブと、これらのガスガイドウエブ上に配置された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニットとを有する、燃料電池用のフロープレートを製造するための方法は既に提案されている。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、多数のガスガイドウエブと、これらのガスガイドウエブ上に配置された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニットとを有する、燃料電池、特にPEM燃料電池用のフロープレートを製造するための方法に関する。
【0003】
膜ユニットの幾何学的形状および/または構造を、ガスガイドウエブ上への材料塗布中に生成することが提案される。
【0004】
「フロープレート」とは、少なくとも1つの燃料電池および/または特に隣接し合う少なくとも2つの燃料電池の特に電気接触のために、および/または燃料電池に燃焼ガス、特に水素および/または酸素を供給するために、および/または少なくとも1つの反応生成物、特に水および/または水蒸気を廃棄するために設けられた、特に機械的なユニットであると解釈されるべきである。特にフロープレートは、モノポーラプレート、バイポーラプレートまたはエンドプレートとして構成されていてよい。特に、フロープレートは少なくとも概ねエンボス加工された金属薄板より製造されてよい。「設けられている」とは、特に設計されているおよび/または備え付けられていると解釈されるべきである。対象物に所定の機能を持たせるとは、少なくとも1つの使用状態および/または運転状態において対象物が所定の機能を満たすおよび/または実施することであると特に解釈されるべきである。「燃料電池」とは、特に、少なくとも1つの特に連続的に供給される燃焼ガス、特に水素および/または一酸化炭素、および少なくとも1つの酸化剤、特に酸素の少なくとも1つの化学反応エネルギを特に電気エネルギに変換するために設けられた1つのユニットであると解釈されるべきである。特にガスガイドウエブは流れ場を形成するために設けられている。「流れ場」とは、この関連性において、特に機械的および/または化学的および/または光学的な方法によってフロープレートの少なくとも1つの表面上に塗布されかつ/または少なくとも部分的にフロープレートの表面内に内包された特に三次元構造であると解釈されるべきである。特に、流れ場は、フロープレートの表面の少なくとも30%、好適には少なくとも50%、好適な形式で少なくとも75%を占める。特に、フロープレートは格子状流れ場および/または流路状流れ場として構成されており、この流れ場は、特に少なくとも概ね互いに平行に延在する特に複数の流路、および/または少なくとも1つの蛇行状に延在する流路を有していてよい。
【0005】
「膜ユニット」とは、この関連性において、特に、導電材料によって形成された少なくとも1つの膜を有するユニットであると解釈されるべきである。特に、膜ユニットは互いに上下に配置された多数の膜を有していてよい。特に、膜ユニットは少なくとも概ね開放した多孔性に構成されている。特に、膜ユニットは多数の中空室を有しており、これらの中空室は特に互いに流体技術的に接続され、かつ/または周囲に接続されている。膜ユニットの幾何学的形状および/または構造が、材料塗布中にガスガイドウエブ上に「生成する」とは、特に、膜ユニットの最終的な形態が、例えば多孔性、寸法、膜の数、個別膜の膜厚および/または膜ユニットの全体的な厚さに関連して、膜ユニットを形成する材料の塗布プロセス中に直接形成されると解釈されるべきである。
【0006】
このような構成によって、燃料電池用のフロープレートの製造に関連して改善された特性を有する、冒頭に述べた方法が提供され得る。特に、導電性および多孔性の膜ユニットを製造するための材料をガスガイドウエブ上に局所的に塗布することによって、好適な形式で材料節約を達成することができる。さらに、追加的な構成要素の使用、特にガスガイドウエブ上に塗布されるべき発泡金属より成るエレメントは省くことができ、これによってフロープレートの製造は好適な形式で簡略化され得る。
【0007】
さらに、膜ユニットが少なくとも部分的にコーティング法によってガスガイドウエブ上に塗布されるように提案される。コーティング法とは、少なくとも概ね強く付着する、少なくとも1つの非晶質材料より成る膜を工作物の表面上に塗布するために設けられた、特に化学的、機械的、熱的および/または熱機械的製造法であると解釈されるべきである。これによって、好適な形式で膜ユニットを簡単および/または安価にガスガイドウエブ上に生成することができる。
【0008】
本発明の実施態様によれば、膜ユニットが少なくとも部分的にスプレー法によってガスガイドウエブ上に塗布されることが提案される。「スプレー法」とは、特に、コーティング材料が特にガス流によって加速されて工作物上に塗布される方法であると解釈されるべきである。好適な形式で、膜ユニットは少なくとも部分的に熱的なスプレー法によってガスガイドウエブ上に塗布される。「熱的なスプレー法」とは、特に、コーティング材料がスプレーバーナの内側または外側で溶解され、溶融されまたは溶かされてガス流内でスプレー粒子の形で加速され、コーティングしようとする工作物の少なくとも1つの表面上に発射される方法であると解釈されるべきである。これによって、好適な形式で膜ユニットを簡単かつ/または安価にガスガイドウエブ上に生成することができる。
【0009】
さらに、膜ユニットを少なくとも部分的に3Dプリント法によってガスガイドウエブに塗布することが提案される。これによって、好適な形式で、例えば強度、接触抵抗および/または多孔性に関して様々な膜特性を備えた区分を有する膜エレメントを生成することができる。
【0010】
また、膜ユニットの塗布時にガスガイドウエブ間の高低差を均等にすることが提案される。特に、高低差を補正するために、様々な膜厚の膜がガスガイドウエブ上に塗布されてよい。これによって、ガスガイドウエブ形成時に好適には低い公差要求を可能にする。さらに、フロープレートの好適な接触力が得られる
【0011】
さらに、触媒粒子を膜ユニットの少なくとも部分領域内に内包させることが提案される。特に、触媒粒子は化学的および/または電気化学的な方法によって、例えば電気メッキ法によって膜ユニット内に内包させることができる。これによって、膜ユニットの好適な機能化が得られる。
【0012】
さらに、多数のガスガイドウエブと、これらのガスガイドウエブ上に塗布された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニットとを有する、燃料電池用のフロープレートが提案される。塗布された導電性および多孔性の膜ユニットを有するフロープレートは、ガスガイドウエブ上に配置された発泡金属より成るエレメントを備えた公知のフロープレートに対して、特に発泡金属と比較した膜ユニットの構造に関連して並びにガスガイドウエブの表面との接続に関連して異なっている。特に、塗布された導電性および多孔性の膜ユニットを備えたフロープレートは、ガスガイドウエブ上に配置された、発泡金属製のエレメントを備えた公知のフロープレートに対して、製造がより安価および/またはより簡単であるという利点を有している。
【0013】
さらに、少なくとも1つのメンブレンユニットおよび、多数のガスガイドウエブとこれらのガスガイドウエブ上に配置された少なくとも1つの導電性および多孔性の膜ユニットとを備えた少なくとも1つのフロープレートを有する、燃料電池、特にPEM燃料電池が提案されており、この場合、膜ユニットがメンブレンユニットとフロープレートとの間の接触領域内に配置されている。これによって、燃料電池の製造が好適には簡略化され、製造コストが好適には低減される。
【0014】
この場合、本発明による方法は、上記応用および実施例だけに限定されるべきではない。特に本発明による方法は、ここに記載された機能形式を満たすために、個別の構成要素、構成部分およびユニットのここに記載された数とは異なる数を有していてよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】メンブレンユニット、陰極側のフロープレートおよび陽極側のフロープレートを備えた燃料電池の概略図である。
【
図2】メンブレンユニットおよび陰極側のフロープレートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
そのほかの利点は、以下の図面に説明が記載されている。図面には本発明の実施例が示されている。図面、明細書および請求項は、組み合わされた多くの特徴を含有している。これらの特徴は、当業者により好適な形式で個別に考察され、好適な別の組み合わせに組み合わせられる。
【0017】
図1は燃料電池12の概略図を示す。燃料電池12はメンブレンユニット18を有している。メンブレンユニット18は陽子伝導性のポリマーメンブレン22を有している。さらに、メンブレンユニット18は2つの拡散膜24,26を有しており、これらの拡散膜24,26は、ポリマーメンブレン22の両側に配置されている。拡散膜24,26は、特に触媒材料で被覆されたカーボン織物によって形成されている。
【0018】
さらに、燃料電池12は陰極側のフロープレート10および陽極側のフロープレート28を有している。メンブレンユニット18は、陰極側のフロープレート10と陽極側のフロープレート28との間に配置されている。メンブレンユニット18を介して陰極側のフロープレート10と陽極側のフロープレート28との間で電気接触を生ぜしめるために、フロープレート10,28はメンブレンユニット18と共に圧縮成形されている。陽極側のフロープレート28は多数のガスガイドウエブ40を有していて、これらのガスガイドウエブ40は多数のガス流路38を形成しており、これらのガス流路38は、陽極側でメンブレンユニット18に燃焼ガス34、特に水素を供給するために設けられている。陰極側のフロープレート10は多数のガスガイドウエブ14を有していて、これらのガスガイドウエブ14は多数のガス流路30を形成しており、これらのガス流路30は、メンブレンユニット18に陰極側で酸素32、特に空気中の酸素を供給し、かつ反応中に発生する水36、特に水蒸気を導出するために設けられている。
【0019】
図2は、メンブレンユニット18および燃料電池12の陰極側のフロープレート10を断面図で示す。フロープレート10は導電性および多孔性の膜ユニット16を有しており、この膜ユニット16はガスガイドウエブ14の表面に塗布されている。膜ユニット16は、メンブレンユニット18とフロープレート10との間の接触領域20内に配置されている。導電性および多孔性の膜ユニット16によって、ガスガイドウエブ14の領域内における、好適な電気接続および、陰極側の拡散膜26からの水36の好適な導出ガイドが得られる。
【0020】
陰極側のフロープレート10の製造時に、膜ユニット16の幾何学的形状および/または構造がガスガイドウエブ14の材料塗布中に直接的に生成される。膜ユニット16は、少なくとも部分的にコーティング法によってガスガイドウエブ14上に塗布される。膜ユニット16は、少なくとも部分的にスプレー法によって、好適には熱的なスプレー法によってガスガイドウエブ14に塗布される。選択的にまたは追加的に膜ユニット16は少なくとも部分的に3Dプリント法によってガスガイドウエブ14に塗布されてよい。3Dプリント法による塗布時に、膜ユニット16は、この膜ユニット16の部分領域が特に強度、接触抵抗および/または多孔性に関連して互いに異なるように塗布されてよい。膜ユニット16の塗布時にさらに、ガスガイドウエブ14間の高低差が均等にされる。膜ユニット16の塗布後に、少なくとも膜ユニット16の部分領域内に触媒粒子が内包され、これによって好適には、燃料電池12の局所的な反応速度が高められる。陽極側のフロープレート28は陰極側のフロープレート10と同一に製造されてよい。
【符号の説明】
【0021】
10 陰極側のフロープレート
12 燃料電池
14 ガスガイドウエブ
16 膜ユニット
18 メンブレンユニット
20 接触領域
28 陽極側のフロープレート