(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定の匂い種類をユーザに選択可能とさせる機能は、前記匂いセンサで検知される匂いをさらに分析することで、当該匂いセンサの特性に応じ検出可能であるとして定められる前記複数の匂い種類の中から選択させることを特徴とする請求項1記載のプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<匂い測定システム1全体の説明>
図1は、本実施の形態における匂い測定システム1の構成例を示す図である。
図示するように本実施の形態の匂い測定システム1は、匂いを検知する匂いセンサ10と、匂いの分析を行う端末装置20と、管理装置の一例であり、匂い測定システム1全体の管理を行う管理サーバ30とを備える。
匂いセンサ10と端末装置20とは、有線通信回線または無線通信回線により接続され、匂いセンサ10で取得された匂いに関する情報が、端末装置20に送信される。有線通信回線としては、例えば、有線LAN(LocalAreaNetwork)回線、USB(UniversalSerialBus)、光通信回線、公衆電話回線等が利用できる。また、無線通信回線としては携帯電話回線、PHS(PersonalHandy-phoneSystem)回線、Wi−Fi(WirelessFidelity、登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、UWB(UltraWideband)等が利用できる。また、インターネット等を併せて利用してもよい。
また、端末装置20と管理サーバ30とは、ネットワーク40を介して接続される。ネットワーク40は、端末装置20と管理サーバ30との間の情報通信に用いられる通信手段であり、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネットである。
【0014】
匂いセンサ10は、匂いのもととなる成分を検出する。匂いセンサ10は、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する。
図2は、匂いセンサ10の構成について示した概略図である。
図示する匂いセンサ10は、水晶振動子110と、感応膜120とを備える。
水晶振動子110は、水晶片111と、1組の電極112a、112bとを備える。
水晶片111は、例えば、ATカットにより切り出した水晶の薄片である。そして、水晶片111は、1組の電極112a、112bにより挟持される。
1組の電極112a、112bは、発振回路Hcに接続され、発振回路Hcにより、交流電圧を印加すると、水晶片111に所定の振動数で共振が生じる。この振動数は、共振周波数であり、例えば、水晶片111のカット面、厚み、水晶の弾性率等で定まる。
【0015】
感応膜120は、空気中に含まれ、匂いのもととなる化学成分を吸着および脱着する。この場合、感応膜120は、匂いのもととなる化学成分として、匂い分子を吸着および脱着する。そして、匂い分子が、吸着すると、水晶片111の共振周波数が変化する。これは、水晶片111の振動モードが変化すると言うこともできる。そして、制御装置Sで、この共振周波数の変化量を検出することで、感応膜120に吸着した匂い分子の有無や量を判断することができる。
【0016】
感応膜120として、吸着する匂い分子に選択性があるものを使用することができる。そしてこれにより、この匂い分子に起因する特定の匂いに反応する匂いセンサ10を作成することができる。例えば、エタノールを選択的に吸着する感応膜120を使用することで、酒類の匂いを検出することができる匂いセンサ10を作成できる。また、種々の選択性を有する感応膜120を有する複数の匂いセンサ10を配することで、種々の匂い分子の吸着を行うことができ、種々の匂いを検出することができる。また、1つの匂いセンサ10の中に、複数の感応膜120を設けてもよい。
感応膜120は、水晶振動子110の振動を阻害しにくいことが求められるため、薄膜である。また、特定の匂い分子以外の吸着を阻止するため、感応膜120に、さらにバリヤ層を設けることもできる。
【0017】
なお、感応膜120に匂い分子が吸着した後に、乾燥空気を流すと、匂い分子は、吸着した状態から脱着し、共振周波数は、もとに戻る。つまり、匂い分子を含む空気と乾燥空気とを交互に流すことで、継続的に匂いの検出を行うことができる。
【0018】
端末装置20は、匂いセンサ10から取得した匂いに関する情報を基に、匂いの分析を行う。そして、特定した匂いの種類を表示したり、音声や警告音等の音を発することで、ユーザに対し通知する。
端末装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話、デスクトップコンピュータ、モバイルコンピュータ等のコンピュータ装置である。
【0019】
管理サーバ30は、匂い測定システム1の全体の管理をするサーバコンピュータである。詳しくは後述するが、例えば、管理サーバ30は、端末装置20に対し、匂いの測定方法を送信する。そして、ユーザは、端末装置20に表示された匂いの測定方法に基づき、匂いセンサ10にて匂いの測定を行う。
【0020】
端末装置20および管理サーバ30は、演算手段であるCPU(CentralProcessingUnit)と、記憶手段であるメインメモリを備える。ここで、CPUは、OS(基本ソフトウェア)やアプリ(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアを実行する。また、メインメモリは、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域である。さらに、端末装置20および管理サーバ30は、外部との通信を行うための通信インタフェース(以下、「通信I/F」と表記する)と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構と、入力ボタン、タッチパネル、キーボード等の入力機構とを備える。また、端末装置20および管理サーバ30は、補助記憶装置として、ストレージを備える。ストレージは、例えば、HDD(HardDiskDrive)やSSD(SolidStateDrive)である。さらに、端末装置20および管理サーバ30は、音を発するスピーカを備えることもできる。
【0021】
次に、本実施の形態の匂い測定システム1の詳細な機能構成および動作について説明する。
<匂い測定システム1の機能構成の説明>
図3は、匂い測定システム1の機能構成例を示したブロック図である。
なおここでは、匂い測定システム1が有する種々の機能のうち本実施の形態に関係するものを選択して図示している。
【0022】
匂いセンサ10は、外部に情報を送信する送受信部11と、匂いを検出する匂い検出部12と、匂いに関する情報を作成する匂い情報作成部13とを備える。
【0023】
送受信部11は、匂いに関する情報を出力情報として端末装置20に対し送信する。送受信部11は、例えば、制御装置Sに対応する。
匂い検出部12は、匂い分子を検出する機能部である。即ち、上述した水晶振動子110、感応膜120、発振回路Hc、制御装置Sに対応する。匂い検出部12は、水晶振動子110の共振周波数を検知する。
【0024】
匂い情報作成部13は、匂いに関する情報を出力情報として作成する。匂いに関する情報は、この場合、例えば、匂いセンサ10により検知された共振周波数を基に作成された振動の情報である。振動の情報は、共振周波数を表す情報であってもよく、匂い分子を検出しているときと匂い分子を検出していないときとの共振周波数の差分を表す情報であってもよい。また、匂いに関する情報は、振動の情報を基に加工された情報であってもよい。例えば、匂い分子を検出していない状態を、0、検出限界上限まで検出している状態を99とし、匂いに関する情報を、100段階の数値として表すようにしてもよい。
また、匂いに関する情報は、匂いについての情報だけでなく、他の情報を含んでいてもよい。例えば、匂いの取得時刻、匂いを取得した匂いセンサ10の固有IDなどを含んでいてもよい。
匂い情報作成部13は、例えば、制御装置Sに対応する。
【0025】
端末装置20は、ユーザの指示を受け付ける受付部21と、匂いセンサ10から匂いに関する情報を取得する匂い情報取得部22と、管理サーバ30から匂いの測定方法に関する情報を取得する測定方法取得部23と、匂い検知結果を取得する検知結果取得部24と、匂いの種類を決定する決定部25と、ユーザに対し測定結果を作成して出力する出力部26と、匂い検知結果を記憶する記憶部27とを備える。
【0026】
受付部21は、ユーザからの指示として、測定対象となる匂いの選択を受け付ける。詳しくは後述するが、ユーザは、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストの中から、測定したい匂いを選択する。即ち、受付部21は、匂いセンサ10にて検出可能な複数の匂い種類の中から特定の匂い種類をユーザに選択可能とさせる選択手段として機能する。
匂い情報取得部22は、匂いセンサ10から、匂いに関する情報として出力情報を取得する。
測定方法取得部23は、匂いセンサ10を識別するセンサ識別情報を管理サーバ30に送る。また、測定方法取得部23は、管理サーバ30から、このセンサ識別情報に基づき作成された、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを受け取る、さらに、測定方法取得部23は、管理サーバ30から、匂いの測定方法に関する情報を取得する。これは、受付部21により受け付けられた測定対象となる匂いに応じて、管理サーバ30が提供する。
【0027】
検知結果取得部24は、種々の匂い分子との反応の違いによる匂い検知結果を取得する。匂い検知結果は、匂いセンサ10により検知可能な匂いの情報であり、試験等を行うことで予め求められる。つまり、匂い検知結果は、匂いセンサ10により過去に検知できた匂いの情報の履歴であると言うこともできる。
【0028】
図4は、匂い検知結果の一例について示した図である。
図4では、匂いセンサ10による匂い検知結果として、匂いセンサ10により検知された匂いを、主成分分析により二次元マッピングした結果を示している。ここで、横軸は、第1主成分であり、縦軸は、第2主成分である。図では、それぞれをPC(主成分:Principal Component)1、PC2として図示している。
【0029】
図4では、純水、ブラックコーヒー、ワイン、醤油のそれぞれの匂いを、主成分分析した結果を示している。なおここでは、匂いセンサ10として、第一精工株式会社製のnose@MEMSを使用した。この匂いセンサ10では、180種類の感応膜120を有し、種々の匂いを識別できる。
図4で図示するように、純水、ブラックコーヒー、ワイン、醤油については、匂いの匂い検知結果が異なっており、それぞれが区別可能である。つまり、このような匂い検知結果にて、種々の匂いの区別が可能である。なお、これは、1つの感応膜120を利用して検知できる場合の他、複数の感応膜120を利用して匂いを測定し、
図4に示したような分析をすることで区別できるものも含まれる。よってこの場合、区別できる匂いの項目は、予め試験等を行い、匂いセンサ10の特性に応じ測定可能であるとして、予め定めておく必要がある。
【0030】
決定部25は、匂いセンサ10により検知された匂いの種類を決定する。例えば、
図4で示したような匂い検知結果を基に、検知された匂いが、純水、ブラックコーヒー、ワイン、醤油の何れであるかを決定する。
なおここに挙げた例では、純水、ブラックコーヒー、ワイン、醤油の匂いを検知する場合について示したが、これに限られるものではない。例えば、銘柄による柔軟剤の香りの違い、銘柄による香水の香りの違い、銘柄によるビールの匂いの違い、肉の鮮度による匂いの違い、なども検知可能である。
【0031】
出力部26は、測定方法取得部23が、管理サーバ30から取得した匂いのリストや匂いの測定方法をユーザに提供する。この場合、出力部26は、ユーザに選択された匂い種類について、匂いセンサ10を用いた好ましい測定方法をユーザに提供する提供手段として機能する。また、出力部26は、決定部25が決定した匂いを、ユーザに対し提供する。ここでは、匂いの測定方法や決定した匂いを、表示したり、音声等の音を発することで、ユーザに対し提供する。
【0032】
記憶部27は、測定方法に関する情報や匂いに関する情報を記憶する他、上述した匂い検知結果を記憶する。即ち、検知結果取得部24は、記憶部27を参照することで、匂い検知結果を取得する。
【0033】
受付部21は、例えば、入力機構に対応する。また、匂い情報取得部22、測定方法取得部23は、例えば、通信I/Fに対応し、検知結果取得部24および決定部25は、例えば、CPUに対応する。さらに、出力部26は、例えば、表示機構に対応し、記憶部27は、例えば、ストレージに対応する。
【0034】
管理サーバ30は、外部と情報の送受信を行う送受信部31と、匂いセンサ10で検知可能な匂いのリストを作成する作成部32と、匂いの測定方法を取得する取得部33と、匂いの測定方法を記憶する記憶部34とを備える。
【0035】
送受信部31は、端末装置20から匂いセンサ10を識別するセンサ識別情報を受け取る。識別情報は、例えば、匂いセンサ10の製造元や型番である。また、匂いセンサ10の固有IDであってもよい。また、匂いセンサ10中に実装されるセンサチップの固有IDであってもよい。よって、送受信部31は、複数の匂い種類を検知可能な匂いセンサ10の、センサ識別情報を取得する識別情報取得手段として機能する。
また、送受信部31は、匂いセンサ10のセンサ識別情報に基づき、端末装置20に対し、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを送信する。よって、送受信部31は、匂いセンサ10を利用するユーザに、把握された匂い種類の中から特定の匂い種類を選択させるための情報を出力する選択情報出力手段として機能する。
さらに、送受信部31は、端末装置20に対し、ユーザが測定対象として選択した匂いの測定方法を送信する。よって、送受信部31は、選択された特定の匂い種類について、匂いセンサ10を用いた好ましい測定方法をユーザに提供するための情報を出力する測定方法出力手段として機能する。
【0036】
作成部32は、匂いセンサ10のセンサ識別情報に基づき、端末装置20に対し、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを作成する。匂いセンサ10と測定可能な匂いとの関係は,記憶部34に記憶されており、作成部32は、記憶部34を参照することで匂いセンサ10で測定可能な匂いの種類を取得し、リストを作成する。この場合、作成部32は、取得したセンサ識別情報から、匂いセンサ10にて検知できる匂い種類を把握する把握手段として機能する。
【0037】
取得部33は、匂いセンサ10の情報および選択された匂いに応じて、この匂いを測定するための測定方法を取得する。測定方法は、記憶部34に記憶されており、取得部33は、記憶部34を参照することで、この測定方法を取得する。
【0038】
送受信部31は、例えば、CPUや通信I/Fに対応する。また、作成部32、取得部33は、例えば、CPUに対応する。さらに、記憶部34は、例えば、ストレージに対応する。
【0039】
<匂い測定システム1の動作の説明>
次に、匂い測定システム1の実際の動作例について説明を行う。
図5は、匂い測定システム1の動作を説明したフローチャートである。
まず、ユーザは、端末装置20で動作する匂い測定アプリ等のアプリケーションソフトウェアを起動する。この際、端末装置20の測定方法取得部23は、管理サーバ30に対し、匂いセンサ10のセンサ識別情報を送信する。管理サーバ30では、送受信部31が、センサ識別情報を受信する(ステップ101)。センサ識別情報は、上述したように、例えば、匂いセンサ10の製造元や型番などであり、予め端末装置20に登録しておいてもよく、測定方法取得部23が、匂いセンサ10から取得してもよい。
【0040】
管理サーバ30では、匂いセンサ10のセンサ識別を基に、作成部32が、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを作成する(ステップ102)。そして、送受信部31が、このリストを端末装置20に向け送信する。端末装置20では、測定方法取得部23が、リストを取得する(ステップ103)。
さらに、出力部26が、このリストをユーザに提示する(ステップ104)。このリストを見たユーザは、測定したい匂いをこのリストの中から選択し、受付部21がユーザの指示として受け付ける(ステップ105)。
【0041】
図6(a)は、
図5のステップ104で、ユーザに提示されるリストの例を示した図である。
ここでは、端末装置20の表示機構20Aに、リストL1が表示された場合を示している。このリストL1では、匂いの種類、肉の鮮度、香水の種類、ビールの銘柄、柔軟剤の香りについて、匂いの識別ができることを示している。またここでは、匂いの種類を選択した場合を示す。この場合、例えば、匂いが、純水、ブラックコーヒー、ワイン、醤油の何れであるか、あるいはどれにも該当しないかを検出できる。検出できる匂いは、
図4の説明で上述したように、複数の感応膜120を利用して匂いを測定し、
図4に示したような分析をすることで検出できるものも含まれる。つまり、エタノールのように、1つの匂い成分から構成され、1つの感応膜120により直接的に検出できる匂いもあるが、ブラックコーヒー、ワイン、醤油等の匂いは、複数の匂い成分から構成される複合的な匂いである。このような匂いは、複数の感応膜120により検出した値を、
図4に示したような分析をすることで、検出できるものである。この場合、出力部26は、ユーザに対し、測定したい匂いとして、匂いセンサ10で検知される匂いをさらに分析することで、匂いセンサ10の特性に応じ検出可能であるとして定められる複数の匂い種類の中から選択させるようにする、と言うこともできる。
そして、選択後にOKボタンB1を押下すると、受付部21がユーザの指示として、測定したい匂いの選択を受け付ける。
【0042】
また、上記肉の鮮度、香水の種類、ビールの銘柄、柔軟剤の香りについては、匂い種類として、同種の匂いの違いを測定する、と言うことができる。つまり、違いを測定する匂い種類としては、肉、香水、ビール、柔軟剤のそれぞれの同種の匂いの違いであり、この同種の匂いの違いの結果として、肉の鮮度、香水の種類、ビールの銘柄、柔軟剤の香りの違いを測定する。
【0043】
図5に戻り、端末装置20の測定方法取得部23は、管理サーバ30に対し、測定対象となる匂いの情報を送信する。管理サーバ30では、送受信部31が、測定対象となる匂いの情報を受信する(ステップ106)。
管理サーバ30では、測定対象となる匂いの情報を基に、取得部33が、この匂いを測定するための測定方法を取得する(ステップ107)。そして、送受信部31が、このリストを端末装置20に向け送信する。端末装置20では、測定方法取得部23が、測定方法を受信する(ステップ108)。
さらに、出力部26が、この測定方法をユーザに提示する(ステップ109)。この測定方法を見たユーザは、この測定方法に従い、匂いセンサ10で匂いの測定を行う(ステップ110)。
【0044】
図6(b)は、
図5のステップ109で、ユーザに提示される測定方法の例を示した図である。
ここでは、端末装置20の表示機構20Aに、測定方法を示すメッセージMe1が表示された場合を示している。メッセージMe1には、測定の手順が示されおり、この手順に従いユーザが測定を行うように促す。そして、ユーザは測定が終了したときは、測定終了ボタンB2を押下する。
【0045】
図7(a)〜(b)は、匂いの測定方法を示すメッセージMe1の例を示した図である。
このうち、
図7(a)は、柔軟剤の香りを測定する手順を示した図である。
ここでは、「始めに連続測定回数:5回、測定時間:14秒、インターバル1秒、ポンプ風量:強、ポンプON時間10秒と設定する。」として、まず最初の手順が、メッセージMe1として示される。そして、「柔軟剤の香りのする生地にセンサを5秒あてて、10秒離す作業を5セット繰り返し、完了ボタンを押す。」として、次の手順が、メッセージMe1として示される。なお、ここでポンプは、匂いセンサ10に備えられ、空気を吸い込むためのポンプである。
また、
図7(b)は、ビールの銘柄識別を測定する手順を示した図である。
ここでは、「ビール液面3cmの位置で保持しながらファンの電源を入れ、30秒待機させて完了ボタンを押す。」として、測定手順が、メッセージMe1として示される。
このような観点から、
図5のステップ109で、出力部26は、測定箇所への匂いセンサ10の対峙の仕方に関する情報を提供する、と言うこともできる。
なお、ポンプやファンの動作や測定条件の設定を端末装置20側の指示により自動的に行うようにしてもよい。
【0046】
再び
図5に戻り、匂いセンサ10では、検出部12が、空気中の匂い成分を検出する(ステップ111)。そして、匂い情報作成部13が、匂いに関する情報である出力情報を作成する(ステップ112)。出力情報は、送受信部11を介して、端末装置20に送られ、端末装置20の匂い情報取得部22が受信する(ステップ113)。
【0047】
端末装置20では、検知結果取得部24が、記憶部27を参照し、
図4で示したような匂い検知結果を取得する(ステップ114)。
そして、決定部25が、匂い情報取得部22が取得した出力情報を基に、匂いセンサ10で検知された匂いを決定する(ステップ115)。
さらに、出力部26が、決定された匂いの結果をユーザに提示する(ステップ116)。
【0048】
図6(c)は、
図5のステップ116で、ユーザに提示される匂いの結果の例を示した図である。
ここでは、端末装置20の表示機構20Aに、匂いの結果を示すメッセージMe2が表示された場合を示している。メッセージMe2では、この場合、検知された匂いが、ブラックコーヒーであったことを示している。
【0049】
以上詳述した形態によれば、ユーザの要望に応じた匂い種類の測定を、測定方法を示した上で行う。そのため、匂いの測定を、より容易に行うことができるとともに、測定精度が向上する。また、測定方法を示すことで、匂いの測定の精度が向上する。そのため、肉の鮮度、香水の種類、ビールの銘柄、柔軟剤の香りの違いなど、微妙な匂いの違いを測定することも可能である。
【0050】
また、以上詳述した形態によれば、匂いセンサ10の機種毎の違いなど、匂いセンサ10の特性に応じ、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを予め用意する。そして、測定できない項目がユーザに提示され、測定できない項目は、ユーザに提示されない。そのため、ユーザは、測定できる匂いの項目を把握できるとともに、測定したい匂いをリストの中から選択することで、ユーザの要望に応じた匂い種類の測定を行うことができる。そしてこのリストでは、匂いセンサ10で検知される匂いをさらに分析することで、匂いセンサ10の特性に応じ検出可能であるとして定められる複数の匂い種類の中から選択することができる。この場合、匂いセンサで直接検知できる匂い以外の種類の匂いについても選択可能となる。
【0051】
なお上述した例では、管理サーバ30が、匂いセンサ10で測定可能な匂いのリストを作成し、測定方法を取得していたが、管理サーバ30で行う処理を、端末装置20で行うようにしてもよい。この場合、管理サーバ30は、不要となる。さらに、匂いセンサ10を端末装置20に組み込むようにしてもよい。
【0052】
また、匂いセンサ10は、
図2に示したものに限られるものではない。例えば、水晶振動子110の代わりに、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)センサを用い、CMOSセンサと感応膜とを組み合わせたもの、水晶振動子110の代わりに、圧電素子(ピエゾ素子)を用い、圧電素子と感応膜とを組み合わせたもの、匂い分子が感応膜に吸着したときの表面応力の変化を表面応力センサで検出するものが挙げられる。また、他にも、分子ナノワイヤによる匂い分子の濃縮を利用し、ケモレジスタンスやFET(Field effect transistor:電界効果トランジスタ)で匂い分子を検知するもの、人の嗅覚受容体を模した生体膜を使用し、生体膜に匂い分子が吸着したときの変化をカメラで捉えるもの、MOS(Metal Oxide Semiconductor:金属酸化物半導体)が匂い分子と接触したときに生じる抵抗値の変化を利用して匂いを検出する半導体センサや、半導体センサと空気質センサとを組み合わせたものなどであってもよい。
【0053】
例えば、上述した例では、匂いセンサ10として、第一精工株式会社製のnose@MEMSを使用する場合を示したが、匂いセンサ10として、例えば、株式会社アロマビット製のニオイ識別センサaroma bit、新コスモス電機株式会社製のニオイセンサXP−329IIIR、国立研究開発法人物質・材料研究機構製のMSS嗅覚IoTセンサなども使用できる。
【0054】
<プログラムの説明>
ここで、以上説明を行った本実施の形態における端末装置20や管理サーバ30が行う処理は、例えば、アプリケーションソフトウェア等のプログラムとして用意される。そして、この処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、端末装置20や管理サーバ30に設けられたコンピュータ内部の図示しないCPUが、上述した各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0055】
よって、本実施の形態で、端末装置20が行う処理は、複数の匂い種類を検知可能な匂いセンサ10に有線または無線を介して接続される端末装置20にて実行されるプログラムであって、匂いセンサ10にて検出可能な複数の匂い種類の中から特定の匂い種類をユーザに選択可能とさせる機能と、ユーザに選択された匂い種類について、匂いセンサ10を用いた好ましい測定方法をユーザに提供する機能と、を実現させるためのプログラムとして捉えることもできる。
また、本実施の形態で、管理サーバ30が行う処理は、コンピュータに、複数の匂い種類を検知可能な匂いセンサの、センサ識別情報を取得する識別情報取得機能と、取得したセンサ識別情報から、匂いセンサにて検知できる匂い種類を把握する把握機能と、匂いセンサを利用するユーザに、把握機能により把握された匂い種類の中から特定の匂い種類を選択させるための情報を出力する選択情報出力機能と、選択された特定の匂い種類について、匂いセンサを用いた好ましい測定方法をユーザに提供するための情報を出力する測定方法出力機能と、を実現させるためのプログラムとして捉えることもできる。
【0056】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】複数の匂い種類を検知可能な匂いセンサ10に有線または無線を介して接続される端末装置20にて実行されるプログラムであって、匂いセンサ10にて検出可能な複数の匂い種類の中から特定の匂い種類をユーザに選択可能とさせる機能と、ユーザに選択された匂い種類について、匂いセンサ10を用いた好ましい測定方法をユーザに提供する機能と、を実現させるためのプログラム。