(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料、バインダー樹脂、硬化剤として多官能イソシアネート化合物、有機溶剤を含有するラミネート用印刷インキ組成物であって、該バインダー樹脂が、該多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂であり、該ポリウレタン樹脂と該硬化剤の固形分含有比率が、ポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.35〜0.9であることを特徴とするラミネート用印刷インキ組成物(但し、スチレン無水マレイン酸樹脂を含有する場合を除き、さらにポリウレタン樹脂の原料のポリオール成分が、エチレングリコールとネオペンチルグリコールの(モル比=1/1)とアジピン酸とを反応させて得たポリエステルジオールである場合を除く。また硬化剤がイソシアネート基とアルコキシシリル基を有するものである場合、及びブロックイソシアネートである場合を除く)。
前記ポリウレタン樹脂が、(1)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂及び/又は(2)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上を有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1記載のラミネート用印刷インキ組成物。
前記有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート用印刷インキ組成物。
基材フィルムに、請求項1〜4のいずれかに記載のラミネート用印刷インキからなる印刷層、水酸基を有する接着剤層、シーラントフィルムが順に積層されてなる易引き裂き性積層体。
前記基材フィルムに、請求項1〜4のいずれかに記載のラミネート用印刷インキを印刷後、水酸基を有する接着剤を塗布し、シーラントフィルムを積層して得られることを特徴とする請求項5に記載の易引き裂き性積層体。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード等には意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性などの機能から、各種プラスチックフィルムを使用した包装材料が使用されている。また、多くの包装材料が消費者へアピールする意匠性、メッセージ性の付与を意図してグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
そして用途の包装材料を得るために、包装材料の基材フィルムの表面に印刷される表刷り印刷、あるいは包装材料の基材フィルムの印刷面に必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、フィルムにラミネート加工を施す裏刷り印刷が行われる。
裏刷り印刷では、ポリエステル、ナイロン、アルミニウム箔等の各種フィルム上に色インキ、白インキを順次印刷後、該白インキの印刷層上に、接着剤を用いたドライラミネート加工や、アンカーコート剤を用いたエクストルージョンラミネート加工等によりヒートシールを目的にポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等が積層されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その後、積層体は、お菓子、スープ、味噌汁等の食品の積層袋として利用される。これらの積層袋は、内容物を取り出すために、人間の手によって開封される。ここで、引き裂き性が悪いと開封時に過度に力を入れる必要があり、さらに意図しない方向に切れてしまい、結果的に内容物がこぼれるといった問題が生じるので、良好な引き裂き性が求められる。
特に、インキが印刷されている箇所は、インキ層と接着剤層との結合力が無字部より劣るため引き裂き性も劣る傾向がある。
引き裂き性を向上させるための手段として、ラミネート接着剤層を硬くすることで引き裂き性が向上することが知られている(例えば、特許文献2参照)が、インキ部とインキが印刷されていない無字部が混在する場合、接着剤層をインキ部で引き裂ける硬さにすると無字部が硬くなりすぎ、逆に無字部に合わせるとインキ部で引き裂き性が劣る問題が生じる。
【0004】
これを解決するために、インキ層に、インキ層と接着剤層の同じ官能基と反応しうる官能基を2つ以上有する硬化剤を含有させる技術であり、かつ該インキ層は分子内に官能基として水酸基2つ以上のみを有する化合物(a1)と、その水酸基と反応する硬化剤からなる組成物から形成された層であることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。そして、実施例では、インキ層に含まれるポリウレタン樹脂に対する多官能イソシアネート硬化剤の固形分含有比率がポリウレタン樹脂:多官能イソシアネート硬化剤=1:0.25と非常に低いため、引き裂き性は少し向上するが、引き裂き時に抵抗を感じる等のいまだ十分ではない問題を有している。
また、このような化合物を用いたインキ層はその発色性が十分良好ではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のラミネート用印刷インキ組成物及び易引き裂き性積層体についてより詳しく説明する。
まず、本発明のラミネート用印刷インキ組成物について説明する。
<顔料>
本発明において使用できる顔料としては、印刷インキにおいて一般的に用いられている各種無機顔料及び/又は有機顔料等を使用できる。
無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
本発明のラミネート用印刷インキ組成物における顔料の含有量は、インキ組成物中に、5〜60質量%の範囲であることが好ましい。
ラミネート用印刷インキ組成物中の顔料の含有量が上記の範囲より少なくなると、インキ組成物としての着色力が低下し、上記の範囲より多くなると、インキ組成物の粘度が高くなり、印刷物が汚れやすくなる。
【0010】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、下記で説明する硬化剤として使用する多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂を使用することができる。
多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応しうる反応基を有するポリウレタン樹脂としては、末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上及び/又は水酸基を有するポリウレタン樹脂を使用することができる、特に、(1)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上を有し、且つ水酸基を有するポリウレタン樹脂及び/又は(2)末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上を有するポリウレタン樹脂が好ましい
このようなポリウレタン樹脂は、多官能ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、得られたウレタンプレポリマーに対して、(1)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物、及び水酸基を有するアミン化合物とを反応させることにより、(2)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させることにより得られる。
このとき、該ウレタンプレポリマーと(1)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物、及び水酸基を有するアミン化合物とを反応させる方法、(2)両末端が第1級アミノ基及び第2級アミノ基及び第3級アミノ基のうちの1種以上であるポリアミン化合物を含有するアミン化合物を反応させる方法としては、(1)ウレタンプレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長させた後に、反応停止剤により反応停止させる方法、及び(2)ウレタンプレポリマーを鎖延長剤による鎖伸長と、反応停止剤による反応停止を同時に反応させる方法等が挙げられる。
【0011】
(多官能ジイソシアネート化合物)
バインダー樹脂を得るために使用することができる多官能ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物を、1種又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物がより好ましい。さらに、3官能以上のイソシアネート化合物も使用できる。
【0012】
(高分子ジオール化合物)
バインダー樹脂を得るために使用することができる高分子ジオール化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等アルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物を1種又は2種以上混合して使用できる。
更に上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を1種又は2種以上混合して併用することができる。
なお、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合物系では、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物を利用する方が、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、必要性能に合わせて幅広くインキの設計が可能となる点で好ましい。
また、上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物の使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1〜3.0:1、より好ましくは1.3:1〜2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、インキを印刷した時に耐ブロッキング性等が低い場合等は、他の硬質の樹脂と併用することが好ましい場合がある。
【0013】
(鎖伸長剤)
バインダー樹脂を得るために使用することができる鎖伸長剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合 物が例示できる。
【0014】
(反応停止剤)
バインダー樹脂を得るために使用することができる反応停止剤としては、トラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等の両末端が1級アミノ基であるポリアミン化合物、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
両端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得るには、反応停止剤として、両末端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリアミンを使用する。このような両末端に1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を有するポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等で、この中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等の1級アミノ基を有するポリアミン類が好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂を得るには、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤に水酸基を有する化合物を使用する。好ましくは、鎖伸長剤と反応停止剤の両方に水酸基を有する化合物を使用することが好ましい。鎖伸長剤としては、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等が例示できる。反応停止剤としては、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水酸基を有するアルカノールアミン類等を例示することができる。
【0015】
本発明では、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法を採用して有機ジイソシアネートを得ることができる。また、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜選択し、組み合わせによって、印刷適性やラミネート適性を調整することが可能である。
バインダー樹脂の含有量は、印刷時のラミネート用印刷インキ組成物中に、固形分で5〜15質量%が好ましい。バインダー樹脂の含有量が範囲外であると、引き裂き性が低下する傾向がある。
そして、本発明のラミネート用印刷インキ組成物におけるポリウレタン樹脂は、質量平均分子量が10000〜70000であることが好ましく、さらに20000〜40000であることがより好ましい。
さらに、その他のバインダー樹脂として更にセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂や粘着性樹脂等を補助的に添加することができる。
【0016】
<硬化剤>
硬化剤としては、多官能ポリイソシアネート化合物が利用できる。具体的には、ビウレット、イソシアヌレート、アダクト、2官能型の多官能イソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネートが利用でき、24A−100、22A−75、TPA−100、TSA−100、TSS−100、TAE−100、TKA−100、P301−75E、E402−808、E405−70B、AE700−100、D101、D201、A201H(旭化成社製)、マイテックY260A(三菱化学社製)、コロネート CORONATE HX、コロネート CORONATE HL、コロネート CORONATE L(日本ポリウレタン社製)、デスモデュール N75MPA/X(バイエル社製)等が例示できる。なかでも、イソホロンジイソシアネート又はそのアダクトが好ましい。さらに、3官能以上のイソシアネート化合物も使用できる。
この硬化剤の使用量は、引き裂き性の点からポリウレタン樹脂と硬化剤の含有量の質量比率が、ポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.35〜0.9の範囲となるように使用するが、ポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.4〜0.8が好ましく、さらに好ましくはポリウレタン樹脂:硬化剤=1:0.48〜0.75である。
【0017】
<有機溶剤>
ラミネート用印刷インキ組成に使用される有機溶剤としては、トルエン、ケトン系有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系有機溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなど)、アルコール系有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、炭化水素系溶剤(トルエン、メチルシクロヘキサンなど)が利用できる。
なお、最近の環境問題への対応と、インキの印刷適性や乾燥性などを考慮して、中でも印刷時のラミネート用印刷インキ組成物の有機溶剤として、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合有機溶剤を、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50〜95/5の範囲、好ましくはエステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=60/40〜85/15の範囲となるように使用することが好ましい。
さらに、インキの印刷適性の点から、印刷時のラミネート用印刷インキ組成物中に酢酸プロピルを5質量%以上、好ましくは15質量%以上含有させることが好ましい。
【0018】
<添加剤>
上記有機溶剤性グラビア印刷用組成物は、更に粘着付与剤、架橋剤、滑剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0019】
<本発明のラミネート用印刷インキ組成物の製造方法>
本発明のラミネート用印刷インキ組成物は、上述の硬化剤以外の各種材料を従来一般的に使用されている各種の分散・混練装置を使用し製造し、そして、各固形分材料の含有量や、ポリウレタン樹脂と有機溶剤との組み合わせなどを調整することにより、粘度を10〜1000mPa・sとした後に、経験時安定性の点から、印刷時に硬化剤を加え、印刷時の雰囲気温度において、印刷条件に応じて適切な秒数となるように、具体的にはザーンカップ3号の流出秒数が12〜23秒、好ましくは、高速印刷では14〜16秒程度となるまで有機溶剤を加え撹拌することにより得ることができる。
【0020】
<易引き裂き性積層体>
次に、基材フィルムに、ラミネート用印刷インキを印刷後、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤を塗布し、シーラントフィルムを積層して得られる易引き裂き性積層体について説明する。
【0021】
(基材フィルム)
本発明の易引き裂き性積層体の基材フィルムとしては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルフィルム、ナイロン、ビニロンといった各種印刷用プラスチックフィルムが使用できる。
【0022】
(ラミネート用印刷インキ組成物)
ラミネート用印刷インキ組成物は上記したラミネート用印刷インキ組成物を使用できる。
【0023】
(接着剤)
従来から、押出ラミネート加工、ドライラミネート加工で使用されている水酸基を有する接着剤を使用することができる。例えば、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤等が例示できる。
具体的には、押出ラミネート加工で使用されている接着剤(アンカーコート剤)としては、A−3210/A−3070、A−3210/A3072、A−3210/A−3075(三井化学社製)、セカダイン2710A/セカダイン2810C(T)、セカダイン2730A/セカダイン2730B、セカダイン2710A/セカダイン2710C(大日精化工業社製)、LX−500、LX−901、LX747A等、ドライラミネート加工で使用されている接着剤としては、デックドライLX−401A、75A、719、703VL、500、510等(DICグラフィック社製、ディックドライは、DICグラフィックスの登録商標)、タケラック/タケネート A−909/A−5、A−977/A−92、A−606/A−50、A−515/A−50、A−626/A−50、A−525/A−52、A−666/A−65等(三井化学社製)、RU−77、771、3600、3900等(ロックペイント社製)等が挙げられる。
【0024】
(シーラントフィルム)
シーラントフィルムとしては、ドライラミネート加工による積層手段を採用するときに使用する溶融樹脂としては、低密度ポリエチレン、LLDPE、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来から使用される樹脂を使用できる。
また成形されたフィルムを積層させることによる押出ラミネート加工で使用するプラスチックフィルムとしては、無延伸プラスチックフィルム(例えば、無延伸ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム等)等の従来から使用されるフィルムを使用できる。
【0025】
<易引き裂き性積層体及び易引き裂き性積層袋>
本発明の易引き裂き性積層体及び易引き裂き性積層袋について説明する。
まず、上記の印刷基材に、一般的なグラビア印刷方式又はフレキソ印刷方式等を用いて、本発明のラミネート用印刷インキ組成物により所望の模様や文字等を印刷する。
得られた印刷物にシーラントと呼ばれる熱融着性ポリマーを積層するラミネート加工が行われる。このラミネート加工には、主として2つの方法が利用されている。
一つ目は、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤による硬化を行った後、若しくは行う前に、得られた印刷層の表面に接着剤(アンカーコート剤ともいう)を塗工した後、熱融着性ポリマーを溶融樹脂として、これを積層させる押出ラミネート加工方法である。押出ラミネート加工方法は、印刷層の表面に、接着剤(例えば、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤等)を塗工した後、既知の押出ラミネート機によって、溶融樹脂を積層させてなるものである。更にその溶融樹脂を中間層として、さらに他の材料を積層することによりサンドイッチ状に積層することもできる。なお、接着剤としてイミン系アンカーコート剤を使用するよりイソシアネート系アンカーコート剤を使用する方が接着力に優れる点において好ましい。
二つ目は、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤による硬化を行った後、若しくは行う前に、その印刷層の表面に接着剤(例えば、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤等)を塗工した後、無延伸プラスチックフィルムを積層させるドライラミネート加工である。特に、レトルト用途で使用される金属箔を予めはさんでなる複層からなるフィルムを用いてラミネート加工することもできる。
これらの方法により得られた易引き裂き性積層体は、その後、最終的にシーラント面同士がヒートシーラーなどで溶封されて易引き裂き性積層袋となる。
なお、この2つの方法に共通する事項として、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤による硬化を行った後に、接着剤を塗工する場合には、ラミネート用印刷インキ組成物と接着剤とは、互いに異なる官能基による硬化、つまり異なる硬化機構により硬化しても良く、同じ官能基が作用する硬化剤を使用することもできる。この結果、より適切な、ラミネート用印刷インキ組成物及び接着剤の組み合わせを選択することが可能になる。
一方、ラミネート用印刷インキ組成物により印刷を行い、この印刷部を硬化剤による硬化を行う前に、接着剤を塗工する場合には、ラミネート用印刷インキ組成物と接着剤とは、互いに同じ官能基が作用する硬化剤を使用することもできる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0027】
(ポリウレタン樹脂ワニスの製造)
ポリウレタン樹脂ワニスA製造例(末端1級アミノ基、末端水酸基有り)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル521質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.31質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.68質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスA(固形分30質量%、粘度250mPa・s/25℃)を得た。
【0028】
ポリウレタン樹脂ワニスB製造例(末端1級アミノ基、分子内及び末端水酸基有り)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート35.5質量部(0.16モル)、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン4.7質量部(0.04モル)を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル521質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.31質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.68質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスB(固形分30質量%、粘度250mPa・s/25℃)を得た。
【0029】
ポリウレタン樹脂ワニスC製造例(末端1級アミノ基、末端水酸基有り)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル523質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン13.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.49質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン4.76質量部、ジエチレントリアミン0.41質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスC(固形分30質量%、粘度200mPa・s/25℃)を得た。
【0030】
ポリウレタン樹脂ワニスD製造例(末端に1級アミノ基有、水酸基なし)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル521質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、その後、イソホロンジアミン2.54質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスD(固形分30質量%、粘度250mPa・s/25℃)を得た。
【0031】
ポリウレタン樹脂ワニスE製造例(末端に1級アミノ基なし、両末端に水酸基(つまり水酸基を2つ)有り)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル521質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン1.01質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスE(固形分30質量%、粘度230mPa・s/25℃)を得た。
【0032】
(ラミネート用印刷インキ組成物の製造)
顔料(酸化チタン)35質量部とポリウレタン樹脂ワニスA〜E30質量部、混合溶剤10質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、更に表1の配合にしたがって残余の混合溶剤A又はBを添加混合した各混合物の100質量部に、印刷時に表1の配合に従って、硬化剤(マイテックNY260A、三菱化学社製、マイテックは三菱化学社の登録商標)及び混合溶剤で希釈し、粘度を離合社製ザーンカップ#3で15秒に調整した、実施例1〜7、比較例1〜3のラミネート用印刷用インキ組成物を調製した。
【0033】
<性能評価>
実施例1〜5、比較例1〜3のラミネート用印刷インキ用組成物については、彫刻版(ヘリオ175線)、実施例6〜7のラミネート用印刷インキ組成物については彫刻版(ヘリオ200線)を備えたグラビア印刷機(東谷製作所製)にて、ONY#15(東洋紡績株式会社製、N−1102、厚さ15μm、以後基材フィルムと記載)の処理面に印刷速度100m/分で印刷を行った。
【0034】
(ドライラミネート)
上記実施例1〜7、比較例1〜3の各印刷物に、水酸基を有するポリエステル系接着剤及びイソシアネート基を含有するイソシアネート系接着剤を含有する接着剤(三井化学社製、A−515/A−50酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機にてシーラントフィルムであるLLDPE#50(東洋紡社製、L−4104)を積層し、積層体を得た。
【0035】
(押出ラミネート)
上記実施例1〜7、比較例1〜3の各印刷物に、接着剤(A−3210/A−3070(三井化学社製))を塗布し押出ラミネート機にて溶融ポリエチレンを積層して積層体を得た。
【0036】
(発色性)
上記基材フィルムに実施例1〜7、比較例1〜3のラミネート用印刷インキ用組成物を、175線の印刷版を用いたグラビア印刷機にて、印刷した各印刷物の発色性を、比較例3のラミネート用印刷インキ用組成物の発色性を標準として、発色性のレベルを目視にて観察し、下記の評価基準にて評価した。
○:比較例3の発色性より明らかに鮮明と認められるもの
×:比較例3の発色性に比べて鮮明と認められないもの
【0037】
(引き裂き性)
ドライラミネート、押出ラミネートで得られた実施例1〜7、比較例1〜3の各積層体を40℃で3日経時した後、カッターで切れ目を入れ、手で引き裂いた際の引き裂き易さで評価した。
○:抵抗なく引き裂ける
△:引き裂き時に抵抗を感じるか、又はシーラントの伸びを若干生じるが何とか引き裂ける
×:シーラント伸びが生じる又は全く引き裂けない
【0038】
【表1】
【0039】
硬化剤:イソホロンジイソシアネート(IPDIアダクト)(三菱化学社製、マイテックNY260A)
混合溶剤:酢酸エチル/酢酸プロピル/イソプロピルアルコール=50/25/25(質量比)
【0040】
本発明のラミネート用印刷インキ組成物を用いて印刷してなる各実施例の積層体は、175線及び200線のいずれの印刷刷版を用いても良好な発色性を示し、かつドライラミネート及び押出ラミネートのいずれの方法によりラミネート加工を行っても、抵抗なく引き裂けるという良好な易引き裂き性を示した。
これに対して、使用したポリウレタン樹脂に対する硬化剤の比率が本発明中の範囲よりも少ない比較例1〜3によれば、発色性は良好ではあるものの、易引き裂き性に劣り、シーラントの伸びを若干生じるが何とか引き裂ける程度に留まっていた。さらに、末端に1級アミノ基を有するものの水酸基を有しないポリウレタン樹脂を使用した比較例2によると、発色性は良好ではあるが、引き裂けない積層体となった。また、末端に水酸基を有するもののアミノ基を有しないポリウレタン樹脂を使用した比較例3によると、発色性は良好ではなく、加えて引き裂き時に抵抗を感じるものとなった。