特許第6731912号(P6731912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6731912活性物質の送達用の脂質および脂質組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6731912
(24)【登録日】2020年7月9日
(45)【発行日】2020年7月29日
(54)【発明の名称】活性物質の送達用の脂質および脂質組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/12 20060101AFI20200716BHJP
   C07C 219/16 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 211/62 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 211/34 20060101ALI20200716BHJP
   C07D 207/08 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20200716BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20200716BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200716BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20200716BHJP
【FI】
   C07C229/12CSP
   C07C219/16
   A61K47/18
   A61K47/22
   C07D211/62
   C07D211/34
   C07D207/08
   A61K31/711
   A61K31/7105
   A61K31/713
   A61K48/00
   A61K47/28
   A61K9/14
   A61K39/12
   A61K39/145
   A61P31/12
   A61P31/16
【請求項の数】15
【全頁数】121
(21)【出願番号】特願2017-512684(P2017-512684)
(86)(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公表番号】特表2017-532302(P2017-532302A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015048535
(87)【国際公開番号】WO2016037053
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2018年9月4日
(31)【優先権主張番号】62/046,487
(32)【優先日】2014年9月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ベックウィズ,ロハン エリック,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブリト,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デクリストファー,ブライアン,アディソン
(72)【発明者】
【氏名】ガンバー,ガブリエル,グラント
(72)【発明者】
【氏名】ゲアル,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ザバワ,トーマス
【審査官】 池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/034812(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/121058(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/121057(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/089241(WO,A1)
【文献】 AOKI, K. et al.,a disulfide bond replacement strategy enables the efficient design of artificial therapeutic peptides,Tetrahedron,2014年,vol.70, no.42,p.7774-7779
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/14
B01F 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物またはその塩
【化1】
(式中、
およびRのいずれか1つは、−O−Rであり、もう1つは、−CH−O−C(O)−Rであり、
は、C1〜6−アルキレン−NR’R’’、C1〜6−アルコキシ−NR’R’’、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−C1〜8−アルキルまたはヘテロシクリル−C1〜8−アルコキシであり、これらのそれぞれは、ハロ、C1〜8−アルキルおよびC3〜7−シクロアルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基で任意選択で置換されていてもよく、
R’およびR’’は、それぞれ独立に水素または−C1〜8−アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立にC12〜22アルキル、C12〜22アルケニル、
【化2】
であり、
は、水素、ハロおよびC1〜4アルキルから選択される
ただし、以下の式(A)のKb−Gly−H、
【化3】
以下の式(B)のKb−Leu−H、
【化4】
以下の式(C)のHCl・H−Gly−Okb
【化5】
および以下の式(D)のH−Gly−Obzl(2,4−Ophy)
【化6】
を除く)。
【請求項2】
前記化合物が以下の式(II)のものである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【化7】
【請求項3】
前記化合物が以下の式(III)のものである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【化8】
【請求項4】
が以下のものから選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【化9】
【請求項5】
が以下のものから選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【化10】
【請求項6】
が以下のものから選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【化11】
【請求項7】
前記化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート;
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((3−(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((((3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((((3−(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
3−(ジメチルアミノ)プロピル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカルボネート;
4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート;
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ブタン−4,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート);
4−(ジメチルアミノ)ブチル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカルボネート;
((2−(((1−エチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((1−イソプロピルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((2−(1−メチルピペリジン−4−イル)アセトキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ピロリジン−1−イル)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボネート;
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート);
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル3−(ジメチルアミノ)プロパノエート;
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル(3−(ジエチルアミノ)プロピル)カルボネート;
((4−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((4−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート;
8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート;
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
((4−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
((2−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);および
2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート。
【請求項8】
以下の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む脂質組成物
【化12】
(式中、
およびRのいずれか1つは、−O−Rであり、もう1つは、−CH−O−C(O)−Rであり、
は、C1〜6−アルキレン−NR’R’’、C1〜6−アルコキシ−NR’R’’、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−C1〜8−アルキルまたはヘテロシクリル−C1〜8−アルコキシであり、これらのそれぞれは、ハロ、C1〜8−アルキルおよびC3〜7−シクロアルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基で任意選択で置換されていてもよく、
R’およびR’’は、それぞれ独立に水素または−C1〜8−アルキルであり、
およびRは、それぞれ独立にC12〜22アルキル、C12〜22アルケニル、
【化13】
であり、
は、水素、ハロおよびC1〜4アルキルから選択される)。
【請求項9】
生物活性物質をさらに含む、請求項8に記載の脂質組成物。
【請求項10】
前記生物活性物質がDNA、siRNAまたはmRNAである、請求項9に記載の脂質組成物。
【請求項11】
ヘルパー脂質をさらに含む、請求項8に記載の脂質組成物。
【請求項12】
中性脂質をさらに含む、請求項11に記載の脂質組成物。
【請求項13】
ステルス脂質をさらに含む、請求項12に記載の脂質組成物。
【請求項14】
前記ヘルパー脂質がコレステロールであり、前記中性脂質がDSPCであり、前記ステルス脂質がS010、S024、S027、S031またはS033である、請求項13に記載の脂質組成物。
【請求項15】
脂質ナノ粒子の形態である、請求項8に記載の脂質組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、陽イオン性脂質化合物に関し、そのような化合物を含む組成物に関する。本発明はまた、そのような化合物および組成物を製造する方法に関し、例えば、細胞および組織にRNA薬剤のような生物活性物質を送達するための方法ならびにそのような化合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
対象への生物活性物質(治療上意味のある化合物を含む)の送達は、化合物が標的細胞または組織に到達することが困難であることによってしばしば妨げられる。特に、生細胞内への多くの生物活性物質の輸送は、細胞の複雑な膜系により大きく制限される。これらの制限により、結果を達成するために望ましい濃度よりはるかに高い濃度の生物活性物質を使用することが必要となることがあり、そうなると、毒性作用および副作用のリスクが増大する。この問題に対する1つの解決策は、細胞内への選択的侵入を可能にする特定の担体分子および担体組成物を利用することである。脂質担体、生分解性ポリマーおよび様々なコンジュゲートシステムを用いて、細胞への生物活性物質の送達を改善することができる。
【0003】
細胞に送達することがとりわけ困難である1つのクラスの生物活性物質は、バイオ治療薬(RNA薬剤などの、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸および誘導体を含む)である。一般的に、核酸は、細胞または血漿中では、限られた期間しか安定でない。とりわけRNA干渉、RNAi療法、mRNA療法、RNA医薬、アンチセンス療法、遺伝子治療および核酸ベースのワクチン(例えば、RNAワクチン)の発達により、活性核酸薬剤を細胞に導入する有効な手段の必要性が増大している。これらの理由のため、核酸ベースの薬剤を安定化し、細胞内に送達し得る組成物が特に着目される。
【0004】
細胞内への外来核酸の輸送を改善するための最も十分に研究されたアプローチは、ウイルスベクターまたは陽イオン性脂質を含む製剤の使用を含む。ウイルスベクターは、ある種の細胞に遺伝子を効率的に移入するために用いることができるが、それらは、化学的に合成された分子を細胞に導入するのに用いることはできない。
【0005】
代替アプローチは、ある部分において生物活性物質と相互作用し、別の部分において膜系と相互作用する陽イオン性脂質を組み込んだ送達組成物を使用することである。そのような組成物は、組成および調製方法によって、リポソーム、ミセル、リポプレックスまたは脂質ナノ粒子となると報告されている(レビューについては、Felgner, 1990, Advanced Drug Delivery Reviews, 5, 162-187; Felgner, 1993, J. Liposome Res., 3, 3-16; Gallas, 2013, Chem. Soc. Rev., 42, 7983-7997; Falsini, 2013, J. Med. Chem. dx.doi.org/10.1021/jm400791q;およびそれらにおける参考文献を参照)。
【0006】
Bangham(J. Mol. 13, 238-252)による1965年におけるリポソームの最初の記載以来、生物活性物質の送達のための脂質ベースの担体システムを開発することに持続的な関心と努力が払われてきた(Allen, 2013, Advanced Drug Delivery Reviews, 65, 36-48)。正に荷電したリポソームを用いることにより機能性核酸を培養細胞に導入する方法は、Philip Felgner et al. Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 84, 7413-7417 (1987)によって最初に記載された。その方法は、後に、K. L. Brigham et al., Am. J. Med. Sci., 298, 278-281 (1989)によって、in vivoで実証された。ごく最近では、脂質ナノ粒子製剤が開発され、in vitroおよびin vivoでの有効性が示された(Falsini, 2013, J. Med. Chem. dx.doi.org/10.1021/jm400791q; Morrissey, 2005, Nat. Biotech., 23, 1002-1007; Zimmerman, 2006, Nature, 441, 111-114; Jayaraman, 2012, Angew. Chem. Int. Ed., 51, 8529-8533.)。
【0007】
脂質製剤は、それらの細胞取込みを改善すると同時に、生体分子を分解から保護し得るため、魅力的な担体である。様々なクラスの脂質製剤のうち、陽イオン性脂質を含む製剤は、多価陰イオン(例えば、核酸)を送達するために一般的に用いられている。そのような製剤は、陽イオン性脂質単独および他の脂質およびホスファチジルエタノールアミンのような両親媒性物質を任意選択で含むものを用いて形成することができる。脂質製剤の組成およびその調製の方法の両方が、得られる凝集体の構造およびサイズに影響を及ぼすことは、当技術分野で周知である(Leung, 2012, J. Phys. Chem. C, 116, 18440-18450)。
【0008】
陽イオン性脂質を用いる陰イオン性化合物の封入は、静電相互作用のため本質的に定量的である。さらに、陽イオン性脂質は、負に荷電した細胞膜と相互作用し、細胞膜輸送を開始すると考えられている(Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139; Xu et al., 1996, Biochemistry 35, 5616)。さらに、陽イオン性脂質の分子形状、立体配座および特性がエンドソームコンパートメントから細胞質ゾルへの送達効率の向上をもたらすと考えられる(Semple, 2010, Nat. Biotech, 28, 172-176; Zhang, 2011, 27, 9473-9483)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生物活性物質の細胞送達のために陽イオン性脂質を使用することには、いくつかの利点があることが示されているが、細胞への、mRNAおよびRNAi薬剤のような生物活性物質の全身および局所送達を促進するさらなる陽イオン性脂質が依然として必要である。当技術分野で公知である陽イオン性脂質と比較して、細胞への生物活性物質の全身および局所送達を改善する陽イオン性脂質も必要である。特定の臓器および腫瘍、とりわけ肝外腫瘍への生物活性物質の全身および局所送達の改善のための最適化された物理的特性を有する脂質製剤がさらに必要である。
【0010】
さらに、当技術分野で公知である陽イオン性脂質と比較して、毒性の減弱(または治療指数の改善)をもたらすさらなる陽イオン性脂質が必要である。伝統的な陽イオン性脂質は、肝臓または腫瘍へのRNAおよびDNAの送達のために用いられているが、送達効率が最適でなく、用量を増やすと組織および臓器毒性を生ずるという問題を抱えている。陽イオン性脂質の曝露を低減し、生体適合性を増大させる1つの方法は、in vivoでのクリアランスを向上させ得る、化学的または生化学的に分解性の官能基(エステル、アミド、アセタール、イミン等のような)を組み込むことである(Maier, 2013, 21, 1570-1578)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、向上した有効性とともに、関連組織におけるより低い脂質レベルが持続する結果としてのより低い毒性(治療指数の改善)を示す、局所送達用途(眼、耳、皮膚、肺)、筋肉(i.m.)、脂肪、または皮下細胞(s.c.投与)への送達のための、陽イオン性脂質足場を提供する。
【0012】
一態様では、本発明は、以下の式(1)の化合物
【0013】
【化1】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R、R、RおよびRは、本明細書で定義する通りである)を提供する。式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、細胞および組織への生物活性物質の送達に有用である。
【0014】
第2の態様では、本発明は、式(I)による化合物を含む脂質組成物(すなわち、本発明の脂質組成物)、またはその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、脂質組成物は、少なくとも1つの他の脂質成分をさらに含む。別の実施形態では、脂質組成物は、1つまたは複数の他の脂質成分と任意選択で組み合わされた、生物活性物質を含む。別の実施形態では、脂質組成物は、リポソームの形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)の形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、肝臓への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、腫瘍への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、免疫付与の目的に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、局所送達適用(眼、耳、皮膚、肺)、筋肉(i.m.)、脂肪、または皮下細胞(s.c.投与)への送達に適している。
【0015】
第3の態様では、本発明は、本発明の脂質組成物および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物(すなわち、製剤)を提供する。一実施形態では、該医薬組成物は、脂質組成物に少なくとも1つの他の脂質成分を含む。別の実施形態では、脂質組成物は、リポソームの形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、脂質ナノ粒子の形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、肝臓への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、腫瘍への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、局所送達適用(眼、耳、皮膚、肺)、筋肉(i.m.)、脂肪、または皮下細胞(s.c.投与)への送達に適している。別の実施形態では、生物活性物質は、RNAまたはDNAである。別の実施形態では、脂質組成物は、免疫付与の目的に適しており、生物活性物質は、免疫原をコードするRNAまたはDNAである。
【0016】
第4の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の脂質組成物をその治療を必要とする患者に投与するステップを含む疾患または状態の治療の方法を提供する。一実施形態では、疾患または状態は、RNAまたはDNA薬剤を投与することにより治療可能である。別の実施形態では、脂質組成物は、免疫付与の目的に適しており、生物活性物質は、免疫原をコードするRNAまたはDNAである。
【0017】
第5の態様では、本発明は、患者における疾患または状態を治療するに際しての本発明の脂質組成物の使用を提供する。一実施形態では、疾患または状態は、RNAまたはDNA薬剤を投与することにより治療可能である。
【0018】
第6の態様では、本発明は、免疫原をコードするRNAまたはDNAと組み合わせた、免疫学的有効量の本発明の脂質組成物を対象に投与することを含む、目的の免疫原に対する対象における免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0019】
第7の態様では、本発明は、目的の免疫原に対する対象における免疫応答の誘導における本発明の脂質組成物の使用を提供する。該脂質は、免疫原をコードするRNAまたはDNAと組み合わせて使用する。本発明はまた、目的の免疫原に対する対象における免疫応答を誘導するための医薬の製造における本発明の脂質組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
第1の実施形態では、本発明は、以下の式(I)の化合物またはその塩である。
【0021】
【化2】
(式中、RおよびRのいずれか1つは、−O−Rであり、もう1つは、−CH−O−C(O)−Rであり、Rは、C1〜6−アルキレン−NR’R’’、C1〜6−アルコキシ−NR’R’’、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−C1〜8−アルキルまたはヘテロシクリル−C1〜8−アルコキシルであり、これらのそれぞれは、ハロ、C1〜8−アルキルおよびC3〜7−シクロアルキルから独立に選択される1つ、2つまたは3つの基で任意選択で置換されていてもよく、R’およびR’’は、それぞれ独立に水素または−C1〜8−アルキルであり、RおよびRは、それぞれ独立にC12〜22アルキル、C12〜22アルケニル、
【0022】
【化3】
であり、
は、水素、ハロおよびC1〜4アルキルから選択される。)
【0023】
第2の実施形態では、本発明は、第1の実施形態による化合物またはその塩であり、この化合物は以下の式(II)のものである。
【0024】
【化4】
【0025】
第3の実施形態では、本発明は、第1の実施形態による化合物またはその塩であり、この化合物は、以下の式(III)のものである。
【0026】
【化5】
【0027】
第4の実施形態では、本発明は、第1から第3の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、水素である。
【0028】
第5の実施形態では、本発明は、第1から第4の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、以下のものから選択される。
【0029】
【化6】
【0030】
第6の実施形態では、本発明は、第1から第5の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、
【0031】
【化7】
である。
【0032】
第7の実施形態では、本発明は、第1から第6の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、以下のものから選択される。
【0033】
【化8】
【0034】
第8の実施形態では、本発明は、第1から第7の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、以下のものから選択される。
【0035】
【化9】
【0036】
第9の実施形態では、本発明は、第1から第8の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、以下のものから選択される。
【0037】
【化10】
【0038】
第10の実施形態では、本発明は、第1から第9の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、Rは、以下のものから選択される。
【0039】
【化11】
【0040】
別の実施形態では、本発明は、第1から第10の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、RおよびRは、同一である。
【0041】
第11の実施形態では、本発明は、第1から第10の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物またはその塩であり、この化合物は、
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート;
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((3−(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((((3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((((3−(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
3−(ジメチルアミノ)プロピル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカルボネート;
4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート;
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ブタン−4,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート);
4−(ジメチルアミノ)ブチル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカルボネート;
((2−(((1−エチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((1−イソプロピルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−((2−(1−メチルピペリジン−4−イル)アセトキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ピロリジン−1−イル)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボネート;
(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(エタン−2,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート);
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル3−(ジメチルアミノ)プロパノエート;
2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル(3−(ジエチルアミノ)プロピル)カルボネート;
((4−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((4−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート;
8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート;
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
((4−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート);
((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);
((2−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート);および
2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノート
からなる群から選択される。
【0042】
第12の実施形態では、本発明は、第1から第11の実施形態のいずれか1つの実施形態による化合物を含む脂質組成物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
第13の実施形態では、本発明は、生物活性物質をさらに含む、第12の実施形態による脂質組成物である。
【0044】
第14の実施形態では、本発明は、第13の実施形態による脂質組成物であり、生物活性物質は、核酸である。
【0045】
第15の実施形態では、本発明は、第13から第14の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、生物活性物質は、DNA、siRNAまたはmRNAである。
【0046】
第16の実施形態では、本発明は、第13から第15の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、生物活性物質は、mRNAである。
【0047】
第17の実施形態では、本発明は、第13から第15の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、生物活性物質は、siRNAである。
【0048】
第18の実施形態では、本発明は、ヘルパー脂質をさらに含む、第12から第17の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物である。
【0049】
第19の実施形態では、本発明は、中性脂質をさらに含む、第12から第18の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物である。
【0050】
第20の実施形態では、本発明は、ステルス脂質をさらに含む、第12から第19の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物である。
【0051】
第21の実施形態では、本発明は、第12から第20の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、ヘルパー脂質は、コレステロールであり、中性脂質は、DSPCであり、ステルス脂質は、S010、S024、S027、S031またはS033である。
【0052】
第22の実施形態では、本発明は、第12から第21の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、脂質組成物は、脂質ナノ粒子の形態である。
【0053】
第23の実施形態では、本発明は、30〜60%の式(I)の化合物、5〜10%のコレステロール/30〜60%のDSPCおよび1〜5%のS010、S024、S027、S031またはS033を有する、第12から第22の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物である。
【0054】
第24の実施形態では、本発明は、第12から第23の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に4〜8である。
【0055】
第25の実施形態では、本発明は、第12から第24の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に5〜7である。
【0056】
第26の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に5.9〜6.5である。
【0057】
一実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に5.9である。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.0である。
【0059】
さらに別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.1である。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.2である。
【0061】
さらに別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.3である。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.4である。
【0063】
さらに別の実施形態では、本発明は、第12から第25の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物であり、前記脂質組成物のpHは、封入および/または製剤化の時点に6.5である。
【0064】
第27の実施形態では、本発明は、第12から第26の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物である。
【0065】
第28の実施形態では、本発明は、治療有効量の第12から第27の実施形態のいずれか1つの実施形態による脂質組成物をその治療を必要とする患者に投与するステップを含む疾患または状態の治療のための方法である。
【0066】
第29の実施形態では、本発明は、実施形態1〜11のいずれか1つの実施形態の化合物を含むリポソームを提供するものであり、前記リポソームは、免疫原をコードするRNA分子を封入している。
【0067】
第30の実施形態では、本発明は、実施形態1〜11のいずれか1つの実施形態の化合物を含む脂質ナノ粒子(LNP)を提供するものであり、前記LNPは、(i)免疫原をコードするRNA分子を封入する、または(ii)免疫原をコードするRNA分子と複合体を形成する。
【0068】
第31の実施形態では、本発明は、実施形態29のリポソーム、または実施形態30のLNPを提供するものであり、リポソームは、80〜160nmの範囲の直径を有する。
【0069】
第32の実施形態では、本発明は、実施形態29〜31のいずれか1つの実施形態のリポソームまたはLNPを提供するものであり、前記リポソームは、両性イオン性頭基を含む脂質をさらに含む。
【0070】
第33の実施形態では、本発明は、実施形態29〜32のいずれか1つの実施形態のリポソームまたはLNPを提供するものであり、前記リポソームは、DlinDMA(1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパン)、DSPC(1,2−ジアステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、コレステロール、PEG化脂質またはそれらの組合せをさらに含む。
【0071】
第34の実施形態では、本発明は、実施形態29〜33のいずれか1つの実施形態のリポソームまたはLNPを含む医薬組成物を提供する。
【0072】
第35の実施形態では、本発明は、リポソームの集団および免疫原をコードするRNA分子の集団を含む医薬組成物を提供するものであり、リポソームは、実施形態1〜11のいずれか1つの実施形態の化合物を含み、RNA分子の集団の少なくとも半分は、リポソームに封入されている。
【0073】
第36の実施形態では、本発明は、ナノ粒子(LNPs)の集団および免疫原をコードするRNA分子の集団を含む医薬組成物を提供するものであり、LNPsは、請求項1〜11のいずれか1つの実施形態の化合物を含み、RNA分子の集団の少なくとも半分は、(i)LNPsに封入されているまたは(ii)LNPsと複合体を形成している。
【0074】
第37の実施形態では、本発明は、実施形態35または36の医薬組成物を提供するものであり、(i)リポソームもしくはLNPsの数の少なくとも80%が60〜180nmの範囲の直径を有する、(ii)集団の平均直径が60〜180nmの範囲にある、または(iii)リポソームもしくはLNPsの直径は、<0.2の多分散指数を有する。
【0075】
第38の実施形態では、本発明は、(i)請求項1〜11のいずれか1つの実施形態の化合物、またはその薬学的に許容される塩、(ii)免疫原をコードするRNA分子を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
さらに別の実施形態では、本発明は、両性イオン性頭基を含む脂質をさらに含む、実施形態38の医薬組成物を提供する。
【0077】
さらに別の実施形態では、本発明は、DlinDMA(1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチル−3−アミノプロパン)、DSPC(1,2−ジアステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、コレステロール、PEG化脂質またはそれらの組合せをさらに含む、実施形態38の医薬組成物を提供する。
【0078】
第39の実施形態では、本発明は、実施形態29〜33のいずれか1つの実施形態のリポソームもしくはLNP、または実施形態34〜38のいずれか1つの実施形態の医薬組成物を提供するものであり、RNAは、自己複製RNAである。
【0079】
第40の実施形態では、本発明は、実施形態39のリポソーム、LNPまたは医薬組成物を提供するものであり、自己複製RNAは、RNA依存性RNAポリメラーゼをコードする。
【0080】
第41の実施形態では、本発明は、実施形態39または40のリポソーム、LNPまたは医薬組成物を提供するものであり、自己複製RNAは、2つの読取り枠を含み、そのうちの第1のものは、アルファウイルスレプリカーゼをコードし、そのうちの第2のものは、免疫原をコードする。
【0081】
第42の実施形態では、本発明は、実施形態39〜41のいずれか1つの実施形態のリポソーム、LNPまたは医薬組成物を提供するものであり、自己複製RNAは、9000〜12000ヌクレオチド長である。
【0082】
第43の実施形態では、本発明は、実施形態29〜42のいずれか1つの実施形態のリポソーム、LNPまたは医薬組成物を提供するものであり、免疫原は、細菌、ウイルス、真菌または寄生虫に対するin vivoでの免疫応答を誘発し得る。
【0083】
第44の実施形態では、本発明は、実施形態29〜43のいずれか1つの実施形態の、有効量のリポソーム、LNPまたは医薬組成物を脊椎動物に投与することを含む、脊椎動物における免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0084】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を有する完全に飽和した分枝または非分枝炭化水素鎖を意味する。例えば、C1〜6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例えば、C2〜6アルキルは、2〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例えば、C1〜8アルキルは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例えば、C4〜22アルキルは、4〜22個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例えば、C6〜10アルキルは、6〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例えば、C12〜22アルキルは、12〜22個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。アルキルの代表的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデカニル、n−ドデカニル、n−トリデカニル、9−メチルヘプタデカニル、1−ヘプチルデシル、2−オクチルデシル、6−ヘキシルドデシル、4−ヘプチルウンデシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で用いられる「アルキレン」という用語は、上文で定義した二価アルキル基を意味する。アルキレンの代表的な例は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、sec−ブチレン、イソブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、n−ヘキシレン、3−メチルヘキシレン、2,2−ジメチルペンチレン、2,3−ジメチルペンチレン、n−へプチレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレンなどを含むが、これらに限定されない。例えば、C1〜6アルキレンは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。
【0086】
本明細書で用いられる「アルケニル」という用語は、指定された数の炭素原子および鎖内に1つまたは複数の炭素間二重結合を有する不飽和分枝または非分枝炭化水素鎖を意味する。例えば、C12〜22アルケニルは、12〜22個の炭素原子を有し、鎖内に1つまたは複数の炭素間二重結合を有するアルケニル基を意味する。特定の実施形態では、アルケニル基は、鎖内に1つの炭素間二重結合を有する。他の実施形態では、アルケニル基は、鎖内に複数の炭素間二重結合を有する。アルケニル基は、式(I)で定義した1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてもよい。アルケニルの代表的な例は、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどを含むが、これらに限定されない。アルケニルの他の例は、Z−オクタデカ−9−エニル、Z−ウンデカ−7−エニル、Z−ヘプタデカ−8−エニル、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニル、(8Z,11Z)−ヘプタデカ−8,11−ジエニル、(8Z,11Z,14Z)−ヘプタデカ−8,11,14−トリエニル、リノレニル、2−オクチルデカ−1−エニル、リノレイルおよびオレリルを含むが、これらに限定されない。
【0087】
本明細書で用いられる「アルコキシ」という用語は、酸素架橋を介して結合したアルキル部分(すなわち、−O−C1〜3アルキル基であり、C1〜3アルキルは本明細書で定義した通りである)を意味する。そのような基の例は、メトキシ、エトキシおよびプロポキシを含むが、これらに限定されない。例えば、C1〜6アルコキシは、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。
【0088】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を有する飽和単環式、二環式または三環式炭化水素環を意味する。例えば、C3〜7シクロアルキルは、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル環を意味する。シクロアルキル基は、式(I)で定義した1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてもよい。シクロアルキルの代表的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、アダマンチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書で用いられる「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0090】
本明細書で用いられる「ヘテロ環」という用語は、1〜4個のヘテロ原子を含む4〜12員飽和または不飽和単環式または二環式環を意味する。ヘテロ環系は、芳香族でない。複数のヘテロ原子を含むヘテロ環基は、異なるヘテロ原子を含み得る。ヘテロ環基は、単環、スピロ、または縮合もしくは架橋二環式環系である。単環式ヘテロ環基の例は、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、1,4−ジチアニル、アゼチジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、1,3−ジオキソラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、オキサチオラニル、ジチオラニル、1,3−ジオキサニル、1,3−ジチアニル、オキサチアニル、チオモルホリニル、1,4,7−トリオキサ−10−アザシクロドデカニル、アザパニルなどを含む。スピロヘテロ環の例は、1,5−ジオキサ−9−アザスピロ[5.5]ウンデカニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニル、2−オキサ−7−アザスピロ[3.5]ノナニルなどを含むが、これらに限定されない。縮合ヘテロ環系は、8〜11個の環原子を有し、ヘテロ環がフェニル環と縮合している基を含む。縮合ヘテロ環の例は、デカヒドロキノリニル、(4aS,8aR)−デカヒドロイソキノリニル、(4aS,8aR)−デカヒドロイソキノリニル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、イソキノリニル、(3aR,7aS)−ヘキサヒドロ−[1,3]ジオキソロ[4.5−c]ピリジニル、オクタヒドロ−1H−ピロロ[3,4−b]ピリジニル、テトラヒドロイソキノリニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書で用いられる「ヘテロシクリルC1〜8アルキル」という用語は、単結合によりまたは上で定義したC1〜8アルキル基により分子の残りの部分に結合している上で定義したヘテロ環を意味する。
【0092】
本明細書で用いられる「ヘテロシクリルC1〜8アルコキシ」という用語は、単結合によりまたは上で定義したC1〜8アルコキシ基により分子の残りの部分に結合している上で定義したヘテロ環を意味する。
【0093】
本明細書で用いられる「光学異性体」または「立体異性体」という用語は、本発明の所定の化合物について存在する可能性があり、幾何異性体を含む様々な立体異性体の立体配置のいずれかを意味する。置換基は、炭素原子のキラル中心に結合し得ることは、理解される。「キラル」という用語は、それらの鏡像パートナーに対する非重ね合わせ性の特性を有する分子を意味するが、「アキラル」という用語は、それらの鏡像パートナーに重ね合わせ得る分子を意味する。したがって、本発明は、化合物の鏡像異性体、ジアステレオマーまたはラセミ体を含む。「鏡像異性体」は、互いの非重ね合わせ性鏡像である立体異性体の対である。鏡像異性体の対の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。該用語は、適切な場合、ラセミ混合物を表すために用いられる。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いの鏡像でない立体異性体である。絶対立体化学は、Cahn−Ingold−Prelog R−Sシステムに従って規定される。化合物が純鏡像異性体である場合、各キラル炭素における立体化学は、RまたはSによって規定することができる。絶対立体配置が未知である分割化合物は、それらがナトリウムD線の波長の平面偏光を回転させる方向(右または左旋性)によって(+)または(−)と表すことができる。本明細書で述べる特定の化合物は、1つまたは複数の不斉中心または軸を含み、したがって、絶対立体化学により(R)−または(S)−と定義することができる鏡像異性体、ジアステレオマーおよび他の立体異性体を生じさせ得る。
【0094】
出発物質および手順の選択によって、化合物は、可能な異性体の1つの形態で、またはその混合物として、例えば、純光学異性体として、または不斉炭素原子の数によってラセミ体およびジアステレオ異性体混合物のような異性体混合物として存在し得る。本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物および光学的に純粋な形態を含む、すべてのそのような可能な異性体を含むことを意味する。光学的に活性な(R)−および(S)−異性体は、キラル合成等価体もしくはキラル試薬を用いて調製することができ、または従来の技術を用いて分割することができる。化合物が二重結合を含む場合、置換基は、EまたはZ立体配置であり得る。化合物が二置換シクロアルキルを含む場合、シクロアルキル置換基は、シス−またはトランス−立体配置を有し得る。すべての互変異性体も含まれるものとする。
【0095】
本発明の化合物(複数可)の不斉原子(例えば、炭素または同類のもの)は、ラセミまたは鏡像異性的に富化された化合物に、例えば、(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置で存在し得る。特定の実施形態では、各不斉原子は、(R)−または(S)−立体配置における少なくとも50%の鏡像異性体過剰率、少なくとも60%の鏡像異性体過剰率、少なくとも70%の鏡像異性体過剰率、少なくとも80%の鏡像異性体過剰率、少なくとも90%の鏡像異性体過剰率、少なくとも95%の鏡像異性体過剰率または少なくとも99%の鏡像異性体過剰率を有する。不飽和二重結合を有する原子における置換基は、可能な場合、シス−(Z)−またはトランス−(E)−型で存在し得る。
【0096】
したがって、本明細書で用いられる本発明の化合物は、可能な異性体、回転異性体、アトロプ異性体、互変異性体またはそれらの混合物の1つの形態で、例えば、実質的に純粋な幾何(シスもしくはトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(対掌体)、ラセミ体またはそれらの混合物として存在し得る。
【0097】
結果として生じる異性体の混合物は、成分の物理化学的な差に基づいて、例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別晶出により純粋もしくは実質的に純粋な幾何または光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に分離することができる。
【0098】
得られる最終生成物または中間体のラセミ体は、既知の方法、例えば、光学活性な酸または塩基を用いて得られるそのジアステレオマー塩を分離し、その光学活性な酸性または塩基性化合物を遊離させることによって、対掌体へと分割することができる。特に、塩基性部分は、例えば、光学的に活性な酸、例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ−O,O’−p−トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸またはカンファー−10−スルホン酸を用いて生成させた塩の分別晶出により、本発明の化合物をそれらの光学的対掌体に分割するために用いることができる。ラセミ生成物も、キラルクロマトグラフィー、例えば、キラル吸着剤を用いた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により分割することができる。
【0099】
本明細書で用いられる「塩」または「(複数の)塩」という用語は、本発明の化合物の酸付加物を意味する。「塩」は、特に「薬学的に許容される塩」を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生物学的有効性および特性を保持しており、一般的に生物学的にまたは他の点で望ましくないということはない塩を意味する。多くの場合に、本発明の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシ基またはそれと類似の基の存在によって酸および/または塩基塩を形成することができる。
【0100】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸を用いて形成させることができ、例えば、酢酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベシル酸、臭化物/臭化水素酸、重炭酸/炭酸、重硫酸/硫酸、カンファースルホン酸、塩化物/塩酸、クロルテオフィロン酸、クエン酸、エタンジスルホン酸、フマル酸、グルセプチン酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ヨウ化水素酸/ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メシル酸、メチル硫酸、ナフトエ酸、ナプシル酸、ニコチン酸、硝酸、オクタデカン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸/リン酸水素/リン酸二水素、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、スルホサリチル酸、酒石酸、トシル酸およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0101】
塩を得ることができる無機酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。
【0102】
塩を得ることができる有機酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などを含む。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基を用いて形成させることができる。
【0103】
塩を得ることができる無機塩基は、例えば、アンモニウム塩および周期表のI〜XII族の金属を含む。特定の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛および銅に由来し、とりわけ適切な塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩を含む。
【0104】
塩を得ることができる有機塩基は、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などを含む。特定の有機アミンは、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リシン、メグルミン、ピペラジンならびにトロメタミンを含む。
【0105】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分から合成することができる。一般的に、そのような塩は、遊離酸形のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基(水酸化、炭酸、重炭酸Na、Ca、MgまたはKなどのような)と反応させることにより、または遊離塩基形のこれらの化合物を化学量論量の適切な酸と反応させることにより調製することができる。そのような反応は、一般的に水中でもしくは有機溶媒中で、またはそれら2つの混合物中で行わせる。一般的に、実行可能な場合、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体の使用が望ましい。追加の適切な塩のリストは、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., (1985);および“Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use” by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)に見いだすことができる。
【0106】
脂質組成物
本発明は、式(I)の少なくとも1つの化合物を含む脂質組成物、すなわち、本発明の脂質組成物を提供する。一実施形態では、少なくとも1つの他の脂質成分が存在する。そのような組成物は、1つまたは複数の他の脂質成分と任意選択で組み合わせた、生物活性物質も含み得る。
【0107】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物および別の脂質成分を含む脂質組成物を提供する。そのような他の脂質成分は、陽イオン性脂質、中性脂質、陰イオン性脂質、ヘルパー脂質およびステルス脂質を含むが、これらに限定されない。
【0108】
本発明の脂質組成物に用いるのに適する陽イオン性脂質は、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DODAP)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ジオレオイルカルバミル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DOCDAP)、1,2−ジリネオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DLINDAP)、ジラウリル(C12:0)トリメチルアンモニウムプロパン(DLTAP)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、DC−Chol、ジオレオイルオキシ−N−[2−スペルミンカルボキサミド)エチル}−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、3−ジメチルアミノ−2−(コレスト−5−エン−3−β−オキシブタン−4−オキシ)−1−(cis,cis−9,12−オクタデカジエノキシ)プロパン(CLinDMA)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、2−[5’−(コレスト−5−エン−3[β]−オキシ)−3’−オキサペントキシ)−3−ジメチル−1−(cis,cis−9’,12’−オクタデカジエノキシ)プロパン(CpLinDMA)およびN,N−ジメチル−3,4−ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、および1,2−N,N’−ジオレイルカルバミル−3−ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、陽イオン性脂質は、DOTAPまたはDLTAPである。
【0109】
本発明の脂質組成物に用いるのに適する中性脂質は、例えば、様々な中性、非荷電または両性イオン性脂質を含む。本発明に用いるのに適する中性リン脂質の例は、5−ヘプタデシルベンゼン−1,3−ジオール(レゾルシノール)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ホスホコリン(DОPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジルコリン(PLPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DAPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DBPC)、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リソホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジリノレオイルホスファチジルコリンジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リソホスファチジルエタノールアミンおよびそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、中性リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)からなる群から選択される。
【0110】
本発明に用いるのに適する陰イオン性脂質は、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミンコレステロールヘミスクシネート(CHEMS)およびリシルホスファチジルグリセロールを含むが、これらに限定されない。
【0111】
適切な中性および陰イオン性脂質は、米国特許出願公開第2009/0048197号明細書に記載されているものも含む。
【0112】
ヘルパー脂質は、トランスフェクション(例えば、生物活性物質を含むナノ粒子のトランスフェクション)をある程度、増強する脂質である。ヘルパー脂質がトランスフェクションを増強する機序は、例えば、粒子安定性を増強することおよび/または膜融合性を増強することを含み得る。ヘルパー脂質は、ステロイドおよびアルキルレゾルシノールを含む。本発明に用いるのに適するヘルパー脂質は、コレステロール、5−ヘプタデシルレゾルシノールおよびコレステロールヘミスクシネートを含むが、これらに限定されない。
【0113】
ステルス脂質は、ナノ粒子がin vivoで(例えば、血液中に)存在し得る時間を延長させる脂質である。本発明の脂質組成物に用いるのに適するステルス脂質は、脂質部分に連結された親水性頭基を有するステルス脂質を含むが、これらに限定されない。そのようなステルス脂質の例は、国際公開第2011/076807号パンフレットに記載されている、以下の式(XI)の化合物
【0114】
【化12】
またはその塩もしくは薬学的に許容される誘導体を含み、
式中、
[Z]は、PEG(ポリ(エチレンオキシド))、またはポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N−ビニルピロロリドン)、ポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]、多糖およびポリ(アミノ酸)に基づくポリマー、または前記のもののいずれか1つの組合せから選択される親水性ポリマー部分であり、ポリマーは、線状または分枝状であってもよく、各Zは、独立に置換されていてもよく、
Zは、n個のサブユニットにより重合しており、
nは、10から200ユニットの間の数平均重合度で、各種ポリマー型について最適化されており、
は、それらのいずれも0個、1個または複数個のZ基で置換されていてもよいエーテル(例えば、−O−)、エステル(例えば、−C(O)O−)、スクシネート(例えば、−O(O)C−CH−CH−C(O)O−))、カルバメート(例えば、−OC(O)−NR’−)、カーボネート(例えば、−OC(O)O−)、ケトン(例えば、−C−C(O)−C−)、カルボニル(例えば、−C(O)−)、尿素(例えば、−NRC(O)NR’−)、アミン(例えば、−NR’−)、アミド(例えば、−C(O)NR’−)、イミン(例えば、−C(NR’)−)、チオエーテル(例えば、−S−)、キサンテート(例えば、−OC(S)S−)およびホスホジエステル(例えば、−OP(O)O−)の0個、1個、2個以上のものを含む置換されていてもよいC1〜10アルキレンまたはC1〜10ヘテロアルキレンリンカーであり、
R’は、−H、−NH−、−NH、−O−、−S−、ホスフェートまたは置換されていてもよいC1〜10アルキレンから独立に選択され、
およびXは、炭素または−NH−、−O−、−S−もしくはホスフェートから選択されるヘテロ原子から独立に選択され、
およびAは、C6〜30アルキル、C6〜30アルケニルおよびC6〜30アルキニルから独立に選択され、AおよびAは、同じもしくは異なっていてもよく、
またはAおよびAは、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換されていてもよいステロイドを形成している。
【0115】
特定のステルス脂質は、表1に示すものを含むが、それらに限定されない。
【0116】
【表1-1】
【0117】
【表1-2】
【0118】
【表1-3】
【0119】
【表1-4】
【0120】
本発明の脂質組成物に用いるのに適する他のステルス脂質およびそのような脂質の生化学に関する情報は、Romberg et al., Pharmaceutical Research, Vol. 25, No. 1, 2008, p.55-71およびHoekstra et al., Biochimica et Biophysica Acta 1660 (2004) 41-52に見いだすことができる。
【0121】
一実施形態では、適切なステルス脂質は、PEG(時としてポリ(エチレンオキシド)と呼ばれる)ならびにポリ(オキサゾリン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(グリセロール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアミノ酸およびポリ[N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド]に基づくポリマーから選択される基を含む。さらなる適切なPEG脂質は、例えば、国際公開第2006/007712号パンフレットに開示されている。
【0122】
特定の適切なステルス脂質は、約C〜約C40飽和または不飽和炭素原子を独立に含むアルキル鎖長を有するジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基を含むものを含むポリエチレングリコール−ジアシルグリセロールまたはポリエチレングリコール−ジアシルグリカミド(PEG−DAG)コンジュゲートを含む。ジアルキルグリセロールまたはジアルキルグリカミド基は、1つまたは複数のアルキル基をさらに含み得る。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、PEGコンジュゲートは、PEG−ジラウリルグリセロール、PEG−ジミリスチルグリセロール(PEG−DMG)(NOF、Tokyo、Japanのカタログ番号GM−020)、PEG−ジパルミトイルグリセロール、PEG−ジステリルグリセロール、PEG−ジラウリルグリカミド、PEG−ジミリスチルグリカミド、PEG−ジパルミトイルグリカミドおよびPEG−ジステリルグリカミド、PEG−コレステロール(1−[8’−(コレスト−5−エン−3[ベータ]−オキシ)カルボキサミド−3’,6’−ジオキサオクタニル]カルバモイル−[オメガ]−メチル−ポリ(エチレングリコール)、PEG−DMB(3,4−ジテトラデコキシルベンジル(3,4−Ditetradecoxylbenzyl)−[オメガ]−メチル−ポリ(エチレングリコール)エーテル)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](Avanti Polar Lipids、Alabaster、Alabama、USAのカタログ番号880150P)から選択することができる。
【0123】
一実施形態では、ステルス脂質は、S010、S024、S027、S031またはS033である。
【0124】
別の実施形態では、ステルス脂質は、S024である。
【0125】
特に示さない限り、「PEG」という用語は、本明細書で用いているようにポリエチレングリコールまたは他のポリアルキレンエーテルポリマーを意味する。一実施形態では、PEGは、エチレングリコールまたはエチレンオキシドの置換されていてもよい線状または分枝ポリマーである。一実施形態では、PEGは、非置換である。一実施形態では、PEGは、例えば、1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシまたはアリール基により置換されている。一実施形態では、該用語は、PEG−ポリウレタンまたはPEG−ポリプロピレンのようなPEGコポリマーを含み(例えば、J. Milton Harris, Poly(ethylene glycol)chemistry: biotechnical and biomedical applications (1992)参照)、別の実施形態では、該用語は、PEGコポリマーを含まない。一実施形態では、PEGは、約130〜約50000、下位実施形態では約150〜約30000、下位実施形態では約150〜約20000、下位実施形態では約150〜約15000、下位実施形態では約150〜約10000、下位実施形態では約150〜約6000、下位実施形態では約150〜約5000、下位実施形態では約150〜約4000、下位実施形態では約150〜約3000、下位実施形態では約300〜約3000、下位実施形態では約1000〜約3000、下位実施形態では約1500〜約2500の分子量を有する。
【0126】
特定の実施形態では、PEGは、約2000ダルトンの平均分子量を有する、「PEG2000」とも呼ばれる、「PEG−2K」である。PEG−2Kは、数平均の重合の程度が約45のサブユニットを構成するものであることを意味する、nが45である、以下の式(XIIa)によって本明細書で示されている。しかし、例えば、数平均の重合の程度が約23サブユニット(n=25)および/または68サブユニット(n=68)を構成する、当技術分野で公知の他のPEG実施形態を用いることができる。
【0127】
【化13】
【0128】
本発明の脂質組成物は、抗体(例えば、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ナノボディおよびそれらの断片等)、コレステロール、ホルモン、ペプチド、タンパク質、化学療法薬および他の種類の抗腫瘍薬、低分子量薬、ビタミン、補因子、クレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、酵素核酸、アンチセンス核酸、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAまたはRNA組成物、キメラDNA:RNA組成物、アロザイム、アプタマー、リボザイム、デコイおよびその類似体、プラスミドおよび他の種類の発現ベクター、ならびに小核酸分子、RNAi薬剤、短鎖干渉核酸(siNA)、メッセンジャーリボ核酸(メッセンジャーRNA、mRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸リボヌクレオチド(LNA)、モルホリノヌクレオチド、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、sisiRNA(低分子内部セグメント化干渉RNA)、aiRNA(非対称干渉RNA)、および細胞培養、対象または生物体などにおける、関連細胞および/または組織へのセンスおよびアンチセンス鎖間の1つ、2つもしくはそれ以上のミスマッチを有するsiRNAを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の生物活性物質も含み得る。そのような化合物は、精製または部分的に精製することができ、天然に存在するものであってもよくまたは合成することができ、化学的に修飾することができる。一実施形態では、生物活性物質は、RNAi薬剤、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)または低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子である。
【0129】
一実施形態では、生物活性物質は、RNA干渉(RNAi)を媒介するのに有用なRNAi薬剤である。
【0130】
別の実施形態では、生物活性物質は、mRNAである。mRNA分子は、一般的に本発明の脂質ナノ粒子に封入することができるサイズである。mRNA分子のサイズは、特定のタンパク質をコードするmRNA種の同一性によって実際は異なるが、mRNA分子の平均サイズは、平均mRNAサイズであり、500〜10000塩基である。
【0131】
特定の実施形態では、生物活性物質は、免疫原をコードするRNAである。免疫原をコードするRNAは、自己複製RNAであり得る。
【0132】
特定の実施形態では、生物活性物質は、DNAである。DNA分子は、本発明の脂質ナノ粒子に封入することができるサイズのものであるべきである。これらのより短い形態のDNAの一部のものは、タンパク質を有用なようにコードするサイズのものであり得る。これらの第2のより短い、有用な形態のDNAの例は、プラスミドおよび他のベクターを含む。より十分な説明については、Alberts B et al. (2007) Molecular Biology of the Cell, Fifth Edition, Garland Scienceを参照のこと。
【0133】
生物活性物質をリポソームおよび脂質ナノ粒子のような脂質組成物中に充填するための、受動的および能動的な充填法を含む様々な方法が当技術分野で利用可能である。実際にどの方法を用いるかについては、例えば、充填する生物活性物質、充填した時点に用いる保存方法、得られる粒子のサイズおよび予期される投与計画を含むがこれらに限定されない複数の因子に基づいて選択することができる。方法は、例えば、リポソームを形成または再構成させる時の薬物と脂質との機械的混合、すべての成分を有機溶媒に溶解し、それらを乾燥フィルムに濃縮すること、pHまたはイオン勾配を作って、活性物質をリポソーム内に引き込むこと、膜電位を作り、イオノフォアにより媒介される充填を達成することを含む。例えば、PCT公開国際公開第95/08986号パンフレット、米国特許第5,837,282号明細書、米国特許第5,837,282号明細書および米国特許第7,811,602号明細書を参照のこと。
【0134】
「脂質ナノ粒子」とは、分子間力により互いに物理的に結合した複数の(すなわち、1つを超える)脂質分子を含む粒子を意味する。脂質ナノ粒子は、例えば、マイクロスフェア(単層および多層小胞、例えば、リポソーム)、乳濁液中の分散相、ミセルまたは懸濁液中の内相であり得る。
【0135】
脂質ナノ粒子は、約1〜約2500nm、約1〜約1500nm、約1〜約1000nm、下位実施形態では約50〜約600nm、下位実施形態では約50〜約400nm、下位実施形態では約50〜約250nm、下位実施形態では約50〜約150nmのサイズを有する。特に示さない限り、本明細書で言及するすべてのサイズは、Malvern Zetasizerで動的光散乱法により測定される、完全に形成されたナノ粒子の平均径(直径)である。計数率が200〜400kctsであるように、ナノ粒子試料をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈する。データは、強度測定の加重平均として示す。
【0136】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物および別の脂質成分を含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物およびヘルパー脂質、例えば、コレステロールを含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロールおよび中性脂質、例えば、DSPCを含む脂質組成物を提供する。本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPCおよびステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033を含む脂質組成物を提供する。本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPC、ステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033および生物活性物質、例えば、RNAまたはDNAを含む脂質組成物を提供する。本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPC、ステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033および生物活性物質、例えば、mRNA、siRNAまたはDNAを含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0137】
本発明の実施形態は、製剤中の成分脂質の各モル比により記述する脂質組成物も提供し、スラッシュ(「/」)は、本明細書で提供する、各成分を表示するものである。
【0138】
本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物およびヘルパー脂質、例えば、コレステロールを、式(I)の化合物55〜40/ヘルパー脂質55〜40の脂質モル比で含む脂質組成物である。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロールおよび中性脂質、例えば、DSPCを、式(I)の化合物55〜40/ヘルパー脂質55〜40/中性脂質15〜5の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPCおよびステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033を、式(I)の化合物55〜40/ヘルパー脂質55〜40/中性脂質15〜5/ステルス脂質10〜1の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。
【0139】
本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物およびヘルパー脂質、例えば、コレステロールを、式(I)の化合物50〜40/ヘルパー脂質50〜40の脂質モル比で含む脂質組成物である。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロールおよび中性脂質、例えば、DSPCを、式(I)の化合物50〜40/ヘルパー脂質50〜40/中性脂質15〜5の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPC、ステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033を、式(I)の化合物50〜40/ヘルパー脂質50〜40/中性脂質15〜5/ステルス脂質5〜1の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。
【0140】
本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物およびヘルパー脂質、例えば、コレステロールを、式(I)の化合物47〜43/ヘルパー脂質47〜43の脂質モル比で含む脂質組成物である。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロールおよび中性脂質、例えば、DSPCを、式(I)の化合物47〜43/ヘルパー脂質47〜43/中性脂質12〜7の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPC、ステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033を、式(I)の化合物47〜43/ヘルパー脂質47〜43/中性脂質12〜7/ステルス脂質4〜1の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。
【0141】
本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物およびヘルパー脂質、例えば、コレステロールを、式(I)の化合物約45/ヘルパー脂質約44の脂質モル比で含む脂質組成物である。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロールおよび中性脂質、例えば、DSPCを、式(I)の化合物約45/ヘルパー脂質約44/中性脂質約9の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。別の実施形態は、式(I)の化合物、ヘルパー脂質、例えば、コレステロール、中性脂質、例えば、DSPC、ステルス脂質、例えば、S010、S024、S027、S031またはS033を、式(I)の化合物約45/ヘルパー脂質約44/中性脂質約9/ステルス脂質約2の脂質モル比で含む脂質組成物を提供する。
【0142】
上記の脂質組成物に用いる式(I)の好ましい化合物を実施例1〜36に示す。特に好ましい化合物を実施例1および80に示す。好ましい生物活性物質は、RNAおよびDNAの生物活性物質である。
【0143】
本発明の脂質組成物は、特定の細胞および組織へのin vivoでの送達のための例えば、リポソーム製剤、脂質ナノ粒子(LNP)製剤などを含む、製剤中に所望のpKa範囲を有する陽イオン性脂質、ステルス脂質、ヘルパー脂質および中性脂質を配合することにより当業者によってさらに最適化することができる。一実施形態では、さらなる最適化は、これらの様々な種類の脂質間の脂質モル比を調節することによって得られる。一実施形態では、さらなる最適化は、所望の粒径、N/P比、製剤化方法および/または投与計画(例えば、ある期間にわたる投与回数、mg/kg単位の実際の用量、投与の時期、他の治療薬との併用等)のうちの1つまたは複数のものを調節することによって得られる。上に示した実施形態に関連する当業者に公知の様々な最適化技術は、本発明の一部とみなされる。
【0144】
脂質ナノ粒子を製造する一般的方法
以下の方法は、本発明の脂質ナノ粒子を製造するために用いることができる。粒子のサイズの減少を実現し、かつ/またはサイズの均一性を増大させるために、当業者は、以下に示す方法ステップを用い、種々の組合せを用いて実験を行い得る。さらに、当業者は、リポソーム製剤に用いることができる、超音波処理、濾過または他のサイズ調節技術を使用し得る。
【0145】
本発明の組成物を製造する方法は、一般的に、第1のリザーバーに、生物活性物質を含むクエン酸緩衝液のような水性溶液を用意し、脂質(複数可)の有機アルコール、例えば、エタノールのような有機溶液を含む第2のリザーバーを用意し、次いで水性溶液を有機脂質溶液と混合することを含む。第1のリザーバーは、第2のリザーバーと任意選択で流体連通している。混合ステップに、インキュベーションステップ、濾過もしくは透析ステップ、ならびに希釈および/または濃縮ステップを任意選択で後続させる。インキュベーションステップは、混合ステップからの溶液を容器中にほぼ室温で、任意選択で遮光して、約0〜約100時間(好ましくは約0〜約24時間)放置することを含む。一実施形態では、希釈ステップは、インキュベーションステップに続く。希釈ステップは、例えば、圧送装置(例えば、蠕動ポンプ)を用いた水性緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液または純水)による希釈を含み得る。濾過ステップは、限外濾過または透析である。限外濾過は、希釈溶液の濃縮とそれに続く、例えば、適切なポンプ装置(例えば、蠕動ポンプまたは同等物のような圧送装置)を適切な限外濾過膜(例えば、GE中空繊維カートリッジまたは同等物)と併せて用いた透析濾過を含む。透析は、適切な膜(例えば、10000mwc Snakeskin膜)を介する溶媒(緩衝液)交換を含む。
【0146】
一実施形態では、混合ステップは、透明な単相をもたらす。
【0147】
一実施形態では、混合ステップの後、有機溶媒を除去して、粒子の懸濁液を用意し、生物活性物質を脂質(複数可)により封入させる。
【0148】
有機溶媒の選択は、一般的に、溶媒の極性および粒子形成の後の段階で溶媒を除去することができる容易さの考慮を必要とする。可溶化剤としても用いられる、有機溶媒は、好ましくは生物活性物質および脂質の透明な単相混合物を得るのに十分な量である。有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、ならびにエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールのような他の脂肪族アルコール(例えば、C〜C)の1つまたは複数(例えば、2つ)のものから選択することができる。
【0149】
混合ステップを行うことができる方法は、例えば、ボルテックスミキサーのような機械的手段によるなど、いくらでもある。
【0150】
有機溶媒を除去するために用いられる方法は、一般的に透析濾過もしくは透析または減圧下での蒸発または混合物全体に不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)の気流を吹き込むことを含む。
【0151】
他の実施形態では、該方法は、本発明の組成物を用いて細胞の形質転換を生じさせるのに有用である非脂質多価陽イオンを加えることをさらに含む。適切な非脂質多価陽イオンの例は、臭化ヘキサジメトリン(Aldrich Chemical Co.、Milwaukee、Wis.、USAにより商標名POLYBRENE(R)のもとに販売されている)またはヘキサジメトリンの他の塩を含むが、これらに限定されない。他の適切な多価陽イオンは、例えば、ポリ−L−オルニチン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−L−リシン、ポリ−D−リシン、ポリアリルアミンおよびポリエチレンイミンの塩を含む。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子の形成は、単相系(例えば、BlighおよびDyer単相もしくは水性および有機溶媒の類似混合物)でまたは適切な混合による二相系で行うことができる。
【0152】
脂質ナノ粒子は、単または二相系で形成させることができる。単相系では、陽イオン性脂質(複数可)および生物活性物質がそれぞれ一定量の単相混合物中に溶解している。2つの溶液を混ぜ合わせることにより、単一混合物が得られ、該単一混合物中で複合体が形成する。二相系では、陽イオン性脂質が生物活性物質(水相中に存在する)に結合し、それを有機相に「引き」込む。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、(a)生物活性物質を、非陽イオン性脂質および界面活性剤を含む溶液と接触させて、化合物−脂質混合物を形成させること、(b)陽イオン性脂質を化合物−脂質混合物と接触させて、生物活性物質の負電荷の一部を中和し、生物活性物質および脂質の電荷中和混合物を形成させること、ならびに(c)電荷中和混合物から界面活性剤を除去することを含む方法により調製する。
【0153】
実施形態の一群では、中性脂質および界面活性剤の溶液は、水性溶液である。生物活性物質を中性脂質および界面活性剤の溶液と接触させることは、一般的に生物活性物質の第1の溶液を脂質および界面活性剤の第2の溶液を一緒に混合することによって達成される。好ましくは、生物活性物質溶液は、界面活性剤溶液でもある。本方法に用いられる中性脂質の量は、一般的に、用いられる陽イオン性脂質の量に基づいて決定され、一般的に陽イオン性脂質の量の約0.2〜5倍、好ましくは用いられる陽イオン性脂質の量の約0.5〜約2倍である。
【0154】
そのように形成された生物活性物質−脂質混合物を陽イオン性脂質と接触させて、存在する目的の分子(または他の多価陰イオン性物質)と結合している負電荷の一部を中和する。用いられる陽イオン性脂質の量は、負電荷(ホスフェート)の計算モル比より一般的に3〜8倍多い。
【0155】
界面活性剤を除去するために用いられる方法は、一般的に透析を含む。有機溶媒が存在する場合、除去は、一般的に透析濾過または減圧下での蒸発または混合物全体に不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)の気流を吹き込むことによって達成される。
【0156】
本発明の組成物を製造するための装置を本明細書で開示する。装置は、一般的に生物活性物質を含む水性溶液を保持するための第1のリザーバー、および有機脂質溶液を保持するための第2のリザーバーを含む。装置はまた、一般的に水性および有機脂質溶液を混合部または混合チャンバー内に実質的に等しい流量で圧送するように構成されたポンプ機構を含む。一実施形態では、混合部または混合チャンバーは、水性および有機液体流がT字型コネクターへの流入物として混合することを可能にし、得られた混ぜ合わされた水性および有機溶液がT字型コネクターから出て、収集リザーバーまたはその同等物に流入することを可能にする、T字型継手またはその同等物を含む。
【0157】
生物活性物質を送達する方法および疾患の治療
式(I)の陽イオン性脂質およびその脂質組成物は、生物活性物質の送達のために用いられる医薬組成物または製剤に有用である。式(I)の陽イオン性脂質またはその脂質組成物を含む製剤は、様々な分子を細胞に送達するのに有用であるマイクロ粒子、ナノ粒子およびトランスフェクション薬剤を含む粒子形成送達剤(particle forming delivery agents)を含むが、これに限定されない、様々な形態であり得る。特定の製剤は、抗体(例えば、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ナノボディおよびその断片等)、コレステロール、ホルモン、ペプチド、タンパク質、化学療法薬および他の種類の抗腫瘍薬、低分子量薬、ビタミン、補因子、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド(例えば、RNAまたはDNA)、酵素核酸、アンチセンス核酸、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAまたはRNA組成物、キメラDNA:RNA組成物、アロザイム、アプタマー、リボザイム、デコイおよびその類似体、プラスミドおよび他の種類の発現ベクター、ならびに小核酸分子、mRNA、RNAi薬剤、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピンRNA(shRNA)、分子ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸リボヌクレオチド(LNA)、モルホリノヌクレオチド、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、sisiRNA(低分子内部セグメント化干渉RNA)、aiRNA(非対称干渉RNA)、および細胞培養、対象または生物体などにおける、関連細胞および/または組織へのセンスおよびアンチセンス鎖間の1つ、2つもしくはそれ以上のミスマッチを有するsiRNAのような、生物活性物質をトランスフェクトまたは送達するのに有効である。生物活性物質の上記のリストは、代表的な例にすぎず、限定的なものではない。そのような化合物は、精製または部分的に精製することができ、天然に存在するものまたは合成されたものであってよく、化学的に修飾することができる。
【0158】
生物活性物質を含むそのような製剤は、例えば、細胞、対象または生物体における疾患、状態または形質を予防、抑制または治療するための組成物を用意するのに有用である。疾患、状態または形質は、がんを含む増殖性疾患、炎症性疾患、移植および/または組織拒絶反応、自己免疫疾患もしくは状態、加齢に伴う疾患、神経もしくは神経変性疾患、呼吸器疾患、心血管疾患、眼疾患、代謝疾患、皮膚疾患、聴覚障害、肝臓疾患、腎臓もしくは腎疾患等を含むが、これらに限定されない。
【0159】
1回当たり投与する活性物質の量は、最小治療量を上回るが、中毒量を下回る量である。1回当たりの実際の量は、患者の病歴、他の療法の使用、提供される生物活性物質および当該疾患の特性などいくつかの因子に応じて医師により決定され得る。投与される生物活性物質の量は、治療に対する患者の反応および治療に関連する副作用の存在または重症度によって、治療期間中に調節することができる。適切な規制当局により承認された化合物の具体例としての用量および取扱いは、当業者に公知であり、利用できる。例えば、Physician’s Desk Reference, 64th ed., Physician’s Desk Reference Inc. (2010)、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa. (1985)およびRemington The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., Lippincott Williams & Williams Publishers (2005)を参照のこと。
【0160】
一実施形態では、生物活性物質の1回の投与をそれを必要とする患者に行う。一実施形態では、複数回の投与を行い、複数回の投与は、同時に、連続してまたは交互に行うことができる。一実施形態では、同じ製剤を複数回にわたって投与する。一実施形態では、製剤が複数回投与にわたって異なる。様々な実施形態では、投与は、1日1回、または1、2、3、4日もしくはそれ以上の連続した日数にわたり行うことができる。一実施形態では、投与は、週1回行う。一実施形態では、投与は、1週おきに1回行う。一実施形態では、患者は、少なくとも2コースの治療レジメンを受け、治療に対する患者の反応によって、より多くの療法を受ける可能性がある。単剤レジメンでは、観測される反応および毒性に基づいて、治療の全コースが患者および医師によって決定される。上記の投与計画は、非限定的な例とみなすべきである。他の投与計画は、本発明の範囲内にあると考えられ、所望の治療効果に依存する。
【0161】
本発明はまた、治療有効量の本発明の脂質組成物をそれを必要とする患者に投与するステップを含む疾患または状態の治療の方法を提供する。一実施形態では、疾患または状態は、siRNAまたはmRNA薬剤のようなRNA薬剤を投与することによって治療可能である。
【0162】
本発明はまた、患者における疾患または状態の治療における本発明の脂質組成物の使用を提供する。一実施形態では、疾患または状態は、siRNAまたはmRNA薬剤を投与することによって治療可能である。
【0163】
投与される組成物中の脂質の総量は、一実施形態では、生物活性物質(例えば、mRNA、siRNA、RNAレプリコン等)1mg当たり約5〜約30mg脂質、別の実施形態では、生物活性物質(例えば、mRNA、siRNA、RNAレプリコン等)1mg当たり約5〜約25mg脂質、別の実施形態では、生物活性物質(例えば、mRNA、siRNA、RNAレプリコン等)1mg当たり約7〜約25mg脂質、一実施形態では、生物活性物質(例えば、mRNA、siRNA、RNAレプリコン等)1mg当たり約7〜約15mg脂質である。
【0164】
本明細書で用いられる「治療」は、改善に役立つ、治癒的および予防的治療を含む。本明細書で用いられる「患者」は、治療を必要とする、動物、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0165】
「治療有効量」という用語は、標的疾患または状態を治療または改善するために必要な本発明の化合物および生物活性物質(例えば、治療用化合物)の量を意味する。
【0166】
「免疫学的有効量」という用語は、免疫原を認識する(例えば、病原体との関連で)免疫応答を誘導するのに必要な免疫原をコードする本発明の化合物およびRNAの量を意味する。「免疫原」という用語は、体内に導入された場合に免疫応答を誘発する物質または生物体を意味する。
【0167】
本明細書で用いられる「増殖性疾患」とは、当技術分野で公知のように制御されていない細胞増殖または複製によって特徴付けられる疾患、状態、形質、遺伝子型または表現型を意味する。一実施形態では、増殖性疾患は、がんである。一実施形態では、増殖性疾患は、腫瘍である。一実施形態では、増殖性疾患は、例えば、白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、多発性骨髄腫および慢性リンパ球性白血病のような液性腫瘍;ならびに固形腫瘍、例えば、カポシ肉腫のようなAIDS関連性がん;乳がん;骨がん;脳がん;頭頸部のがん;非ホジキンリンパ腫、腺腫、扁平細胞癌、咽頭癌腫、胆嚢および胆管がん、網膜のがん、食道のがん、消化管がん、卵巣がん、子宮がん、甲状腺がん、精巣がん、子宮内膜がん、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、肺がん(非小細胞肺癌腫を含む)、膵臓がん、肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、頭頸部がん、皮膚がん、鼻咽頭癌腫、脂肪肉腫、上皮癌腫、腎細胞癌腫、胆嚢腺癌、子宮内膜肉腫、多剤耐性がんを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、増殖性疾患は、腫瘍血管形成に関連する血管新生、黄斑変性(例えば、湿性/乾性加齢黄斑変性)、角膜血管新生、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、近視性変性を含む。一実施形態では、増殖性疾患は、再狭窄および多嚢胞性腎疾患を含む。
【0168】
本明細書で用いられる「自己免疫疾患」とは、当技術分野で公知のように自己免疫によって特徴付けられる疾患、状態、形質、遺伝子型または表現型を意味する。自己免疫疾患は、例えば、多発性硬化症、糖尿病、狼瘡、強皮症、線維筋痛症、移植拒絶反応(例えば、同種移植の拒絶反応の予防)、悪性貧血、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、皮膚筋炎、重症筋無力症、紅斑性狼瘡、多発性硬化症およびグレーヴス病を含むが、これらに限定されない。
【0169】
「感染性疾患」とは、ウイルス、細菌、真菌、プリオンまたは寄生虫のような感染性病原体に関連する疾患、障害または状態を意味する。本発明は、感染性疾患を引き起こす病原体に対する免疫を付与するために用いることができる。そのような病原体の例は、後で示す。
【0170】
「神経疾患」とは、中枢または末梢神経系を罹患させる疾患、障害または状態を意味する。神経疾患は、例えば、アルツハイマー病、動脈瘤、脳損傷、手根管症候群、脳動脈瘤、慢性疼痛、クロイツフェルト−ヤコブ病、てんかん、ハンチントン病、髄膜炎、発作性疾患ならびに他の神経疾患、障害および症候群を含むが、これらに限定されない。
【0171】
「呼吸器疾患」とは、気道を侵す疾患または状態を意味する。呼吸器疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、アレルギー、呼吸困難、呼吸促迫症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧または血管収縮および気腫を含むが、これらに限定されない。
【0172】
「心血管疾患」とは、心臓および血管系を侵す疾患または状態を意味する。心血管疾患は、例えば、冠動脈性心疾患(CHD)、脳血管疾患(CVD)、大動脈狭窄、末梢血管疾患、心筋梗塞(心臓発作)、不整脈、虚血およびうっ血性心不全を含むが、これらに限定されない。
【0173】
本明細書で用いられる「眼疾患」とは、眼および関連構造の疾患、状態、形質、遺伝子型または表現型を意味する。眼疾患は、例えば、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、格子状変性、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、黄斑変性(湿性AMDまたは乾性AMDのような加齢黄斑変性)、トキソプラズマ症、網膜色素変性、結膜裂傷、角膜裂傷、緑内障などを含むが、これらに限定されない。
【0174】
「代謝疾患」とは、代謝経路を侵す疾患または状態を意味する。代謝疾患は、遺伝性酵素異常(先天性代謝異常)に起因する先天的または内分泌器官の疾患もしくは肝臓のような代謝的に重要な臓器の不全に起因する後天的な、異常な代謝過程をもたらし得る。一実施形態では、代謝疾患は、肥満、インスリン抵抗性および糖尿病(例えば、I型および/またはII型糖尿病)を含む。
【0175】
「皮膚疾患」とは、皮膚、真皮または毛、毛包等のようなその下部構造の疾患または状態を意味する。皮膚疾患、障害、状態および形質は、乾癬、異所性皮膚炎、黒色腫および基底細胞癌腫のような皮膚がん、脱毛、毛髪除去ならびに色素沈着の変化を含み得る。
【0176】
「聴覚障害」とは、内耳、中耳、外耳、聴神経およびその中の下部構造のような、耳を含む聴覚系の疾患または状態を意味する。聴覚の疾患、障害、状態および形質は、聴力低下、難聴、耳鳴り、目まい、平衡および運動障害を含み得る。
【0177】
「再生疾患」とは、不十分な細胞もしくは組織の発生または再生が、in vivoまたはin vitroで、損傷の前もしくは後の適切な臓器機能の確立もしくは回復を妨げ、創傷治癒もしくは潰瘍性病変の消失を妨げもしくは遅くし、老化を促進し、または有効な細胞ベースの療法を妨げる、疾患または状態を意味する。用語「メッセンジャーリボ核酸」(メッセンジャーRNA、mRNA)は、細胞質中のリボソームへの遺伝情報の伝達を媒介し、そこでタンパク質合成の鋳型としての役割を果たすリボ核酸(RNA)分子を意味する。これは、転写の過程中にDNA鋳型から合成される。The American Heritage(登録商標) Dictionary of the English Language, Fourth Edition (Updated in 2009). Houghton Mifflin Companyを参照のこと。
【0178】
プラスミドは、細胞内の染色体DNAから物理的に分離され、それと独立に複製し得る小DNA分子である。プラスミドのサイズは、1〜25キロ塩基対超の範囲で変化し得る。組換えプラスミドは、本発明の脂質ナノ粒子中に封入することができるサイズとなるように組換えにより調製することができる。
【0179】
ベクターは、1つの細胞からまたはin vitroでの生化学反応から別の細胞に遺伝物質を人工的に運ぶためのビヒクルとして用いられるDNA分子であり、該DNAは、複製させ、かつ/または発現させることができる。外来DNAを含むベクターは、組換え体と呼ばれる。有用なベクターのタイプの主なものは、プラスミドおよびウイルスベクターである。
【0180】
ウイルスベクターは、一般的に、非感染性の状態にされたが、依然としてウイルスプロモーターと導入遺伝子も含み、したがって、ウイルスプロモーターによる導入遺伝子の翻訳を可能にする修飾ウイルスDNAまたはRNAを運ぶ遺伝子組換えウイルスである。ウイルスベクターは、本発明の脂質ナノ粒子中に封入することができるサイズとなるように組換えにより調製することができる。
【0181】
本明細書で用いられる「短鎖干渉核酸(siNA)」という用語は、RNA干渉(RNAi)または遺伝子サイレンシングを配列特異的に媒介することにより遺伝子発現またはウイルス複製を抑制または下方制御することができる核酸分子を意味する。それは、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短鎖干渉オリゴヌクレオチドおよび化学的に修飾された短鎖干渉核酸分子を含む。siRNAは、動物および植物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングの過程である、RNA干渉に関与する。siRNAは、サイレンス遺伝子標的と相同またはそれに特異的であるより長い二本鎖RNA(dsRNA)からリボヌクレアーゼIII切断により生成する。
【0182】
「RNA干渉」(RNAi)という用語は、RNAi薬剤と同じまたは非常に類似した配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)を分解するためにRNAi薬剤を用いる転写後標的遺伝子サイレンシング技術である。Zamore and Haley, 2005, Science, 309, 1519-1524; Zamore et al., 2000, Cell, 101, 25-33; Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494-498;およびKreutzer et al, PCT公開国際公開第00/44895号パンフレット、Fire, PCT公開国際公開第99/32619号パンフレット、Mello and Fire, PCT公開国際公開第01/29058号パンフレットなどを参照のこと。
【0183】
本明細書で用いられるRNAiは、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、転写阻害またはエピジェネティクスのような、配列特異的RNA干渉を記述するために用いられる他の用語と同等である。例えば、本発明の脂質を含む製剤をsiNA分子とともに用いて、転写後レベルおよび/または転写前レベルの両方で遺伝子発現をエピジェネティックに抑制することができる。非限定的な例において、siNA分子による遺伝子発現の調節は、RISCによるRNA(コーディングまたは非コーディングRNA)のsiNA媒介切断に、または代わりに当技術分野で公知のように翻訳阻害に起因し得る。別の実施形態では、siNAによる遺伝子発現の調節は、例えば、Janowski et al., 2005, Nature Chemical Biology, 1, 216-222に報告されているような転写阻害に起因し得る。
【0184】
「RNAiインヒビター」という用語は、細胞または患者におけるRNA干渉機能または活性を下方調節する(例えば、低下または抑制する)ことができる分子である。RNAi阻害剤は、RISCのようなタンパク質成分を含む、RNAi経路の成分の機能との相互作用またはそれへの干渉により、RNAi(例えば、標的ポリヌクレオチドのRNAi媒介性切断、転写阻害または転写サイレンシング)を下方制御、低下または抑制し得る。RNAiインヒビターは、siNA分子、アンチセンス分子、アプタマー、またはRISCの機能と相互作用するもしくはそれに干渉する小分子、miRNA、またはsiRNAもしくは細胞または患者におけるRNAi経路の他の成分であり得る。RNAi(例えば、標的ポリヌクレオチドのRNAi媒介性切断、転写阻害または転写サイレンシング)を阻害することにより、RNAiインヒビターは、標的遺伝子の発現を調節する(上方制御または下方制御する)ために用いることができる。一実施形態では、RNAインヒビターは、翻訳阻害、転写サイレンシングまたはポリヌクレオチド(例えば、mRNA)のRISC媒介性切断による遺伝子発現の内因性下方制御または抑制を妨げる(例えば、低下または抑制する)ことによって遺伝子発現を上方制御するために用いられる。したがって、内因性抑制、サイレンシング、または遺伝子発現の阻害の機序に干渉することにより、本発明のRNAiインヒビターは、機能の喪失に起因する疾患または状態の治療のために遺伝子発現を上方制御するために用いることができる。「RNAiインヒビター」という用語は、本明細書における様々な実施形態において「siNA」と同義で用いる。
【0185】
本明細書で用いられる「酵素核酸」という用語は、指定の遺伝子標的との基質結合領域における相補性を有し、標的RNAを特異的に切断し、それにより標的RNA分子を不活性化するように作用する酵素活性も有する核酸分子を意味する。該相補性領域は、標的RNAとの酵素核酸分子の十分なハイブリダイゼーションを可能にし、ひいては切断をもたらす。100%の相補性が好ましいが、50〜75%程度の低い相補性も本発明で有用であり得る(例えば、Wemer and Uhlenbeck, 1995, Nucleic Acids Research, 23, 2092-2096; Hammann et al., 1999, Antisense and Nucleic Acid Drug Dev., 9, 25-31参照)。核酸は、塩基、糖および/またはリン酸基において修飾することができる。酵素核酸という用語は、リボザイム、触媒RNA、酵素RNA、触媒DNA、アプタザイムまたはアプタマー結合リボザイム、調節性(regulatable)リボザイム、触媒オリゴヌクレオチド、ヌクレオザイム、DNAザイム、RNAエンザイム、エンドリボヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ミニザイム、リードザイム、オリゴザイムまたはDNAエンザイムのような語句と同義で用いられる。これらの術語のすべてが酵素活性を有する核酸分子を表現するものである。酵素核酸分子の重要な特徴は、1つまたは複数の標的核酸領域と相補的である固有の基質結合部位を有すること、ならびに核酸切断および/またはライゲーション活性を該分子に付与する当基質結合部位の内部もしくはそれを取り囲むヌクレオチド配列を有することである(例えば、Cech et al., 米国特許第4,987,071号明細書、Cech et al., 1988, 260 JAMA 3030を参照)。リボザイムおよび本発明の酵素核酸分子は、当技術分野で、また本明細書における他所に記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0186】
本明細書で用いられる「アンチセンス核酸」という用語は、RNA−RNAまたはRNA−DNAまたはRNA−PNA(タンパク質核酸;Egholm et al., 1993 Nature 365, 566)相互作用によって標的RNAに結合し、標的RNAの活性を変化させる非酵素核酸分子を意味する(レビューについては、Stein and Cheng, 1993 Science 261, 1004およびWoolf et al.、米国特許第5,849,902号明細書を参照のこと)。アンチセンスDNAは、化学的に合成することができまたは一本鎖DNA発現ベクターもしくはその同等物を用いることによって発現させることができる。本発明のアンチセンス分子は、例えば、当技術分野で記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0187】
本明細書で用いられる「RNアーゼH活性化領域」という用語は、標的RNAに結合して、細胞RNアーゼH酵素により認識される非共有結合性複合体を形成することができる核酸分子の領域(一般的に長さが4〜25ヌクレオチド、好ましくは長さが5〜11ヌクレオチド以上である)を意味する(例えば、Arrow et al.、米国特許第5,849,902号明細書;Arrow et al.、米国特許第5,989,912号明細書を参照)。RNアーゼH酵素は、核酸分子−標的RNA複合体に結合し、標的RNA配列を切断する。
【0188】
本明細書で用いられる「2−5Aアンチセンスキメラ」という用語は、5’−リン酸化2’−5’−結合アデニル酸残基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを意味する。これらのキメラは、標的RNAに配列特異的に結合し、細胞2−5A依存性リボヌクレアーゼを活性化し、これが次に、標的RNAを切断する(Torrence et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 1300; Silverman et al., 2000, Methods Enzymol. 313, 522-533; Player and Torrence, 1998, Pharmacol. Ther., 78, 55-113)。2−5Aアンチセンスキメラ分子は、例えば、当技術分野で記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0189】
本明細書で用いられる「三重鎖形成オリゴヌクレオチド」という用語は、二本鎖DNAに配列特異的に結合して、三重らせんを形成し得るオリゴヌクレオチドを意味する。そのような三重らせん構造の形成は、標的遺伝子の転写を抑制することが示された(Duval-Valentin et al., 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 504; Fox, 2000, Curr. Med. Chem., 7, 17-37; Praseuth et al., 2000, Biochim. Biophys. Acta, 1489, 181-206)。本発明の三重鎖形成オリゴヌクレオチド分子は、例えば、当技術分野で記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0190】
「デコイRNA」という用語は、所定のリガンドに優先的に結合するようにデザインされているRNA分子またはアプタマーを意味する。そのような結合は、標的分子の阻害または活性化をもたらし得る。デコイRNAまたはアプタマーは、特定のリガンドの結合について天然に存在する結合標的と競合し得る。同様に、デコイRNAは、受容体に結合し、エフェクター分子の結合を阻害するようにデザインすることができる、または目的の受容体に結合し、受容体との相互作用を妨げるようにデザインすることができる。本発明のデコイ分子は、例えば、当技術分野で記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0191】
本明細書で用いられる「一本鎖DNA」(ssDNA)という用語は、線状一本鎖を含む天然または合成デオキシリボ核酸分子を意味し、例えば、ssDNAは、センスもしくはアンチセンス遺伝子配列またはEST(発現配列タグ)であり得る。
【0192】
本明細書で用いられる「アロザイム」という用語は、例えば、米国特許第5,834,186号明細書、第5,741,679号明細書、第5,589,332号明細書、第5,871,914号明細書、ならびにPCT公開国際公開第00/24931号パンフレット、国際公開第00/26226号パンフレット、国際公開第98/27104号パンフレットおよび国際公開第99/29842号パンフレットを含む、アロステリック酵素核酸分子を意味する。
【0193】
本明細書で用いられる「アプタマー」という用語は、標的分子に特異的に結合するポリヌクレオチド組成物を意味し、該ポリヌクレオチドは、細胞内の標的分子により通常認識される配列と異なる配列を有する。あるいは、アプタマーは、天然では核酸に結合しない、標的分子に結合する核酸分子であり得る。標的分子は、目的のあらゆる分子であり得る。本発明のアプタマー分子は、例えば、当技術分野で記載されているように、化学的に修飾することができる。
【0194】
脂質組成物の形成
薬学的用途については、本発明の脂質組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアゾール)、経口、鼻腔内、直腸、膣、口腔内、鼻咽頭、胃腸または舌下投与を含む、経腸または非経口経路により投与することができる。投与は、全身的または局所的であり得る。局所投与は、例えば、カテーテル法、埋め込み、浸透圧ポンプ送出、直接注射、皮膚/経皮適用、ステント留置術、点耳/眼または門脈内投与を含み得る。式(I)の化合物は、提案される適応症の治療のための最も適切な剤形および投与経路を選択するために、溶解度および溶液の安定性(pHにわたる)、透過性等のような、それらの生物薬学的特性について評価すべきである。
【0195】
本発明の組成物は、必ずしもというわけではないが一般的に、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とともに製剤として投与される。「賦形剤」という用語は、本発明の化合物(複数可)以外の成分、他の脂質組成物(複数可)および生物活性物質を含む。賦形剤は、機能(例えば、薬物放出速度制御)および/または非機能(例えば、加工助剤もしくは希釈剤)特性を製剤に付与し得る。賦形剤の選択は、個別の投与方法、溶解度および安定性に対する賦形剤の効果ならびに剤形の性質のような因子にかなりの程度依存する。
【0196】
一般的な薬学的に許容される賦形剤は、以下のものを含む。
・ 希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン、
・ 滑沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール、
・ 結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンベースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、
・ 崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩または発泡性混合物、ならびに/あるいは
・ 吸収剤、着色料、着香料および/または甘味料。
【0197】
賦形剤は、緩衝液(例えば、PBS緩衝液)および/または糖を任意選択で含み得る水性溶液担体であり得る。
【0198】
薬学的に許容される賦形剤の十分な考察は、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy 2000, 20th edition (ISBN:0683306472)で閲覧できる。
【0199】
本発明の組成物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下、および/または化合物が口から血流に直接入る口腔内、舌もしくは舌下投与を含み得る。
【0200】
本発明の組成物は、非経口的に投与することができる。本発明の化合物および組成物は、血流中に、皮下組織内に、筋肉内に、または内臓内に直接投与することができる。投与の適切な手段は、静脈内、動脈内、脊髄内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内および皮下を含む。投与用の適切な器具は、針(微細針)付き注射器、無針注射器および注入技術を含む。
【0201】
非経口製剤は、一般的に水性または油性溶液である。溶液が水性である場合、賦形剤は、糖(グルコース、マンニトール、ソルビトール等を含むが、これらに限定されない)、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは3〜9のpHに)などであるが、一部の用途については、それらは、滅菌非水性溶液として、または滅菌済み病原体不含有水(WFI)のような適切なビヒクルとともに用いる乾燥体としてより適切に製剤化することができる。
【0202】
非経口製剤は、ポリエステル(すなわち、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸)、ポリオルトエステルおよびポリ酸無水物のような分解性ポリマーに由来するインプラントを含み得る。これらの製剤は、皮下組織、筋肉組織への外科的切開によりまたは特定の臓器内に直接的に投与することができる。
【0203】
例えば、凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準製薬技術を用いて容易に達成することができる。
【0204】
非経口溶液の調製に用いる化合物および組成物の溶解度は、共溶媒ならびに/または界面活性剤、ミセル構造およびシクロデキストリンのような溶解度向上剤の混入のような、適切な製剤化技術を用いることにより増大させることができる。
【0205】
本発明の組成物は、一般的に乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末(例えば、ラクトースとの乾燥配合物での混合物として単独、または例えば、ホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合された、混合成分粒子としての)の形態で、加圧容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザー(好ましくは微細ミストを生成するための電気流体力学を用いたアトマイザー)または1,1,1,2−テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンのような適切な噴射剤の使用を伴うもしくは伴わないネブライザーからのエアゾール噴霧体として、あるいは点鼻剤として、鼻腔内にまたは吸入により投与することができる。鼻腔内使用のために、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含み得る。
【0206】
加圧容器、ポンプ、噴霧器、アトマイザーまたはネブライザーは、本発明の組成物の分散、可溶化もしくは持続放出のための例えば、エタノール、水性エタノールまたは適切な代替物質、溶媒としての噴射剤(複数可)およびトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸もしくはオリゴ乳酸のような任意選択の界面活性剤を含む本発明の化合物(複数可)の溶液または懸濁液を含む。
【0207】
乾燥粉末または懸濁液製剤における使用の前に、組成物は、吸入による送達に適するサイズ(一般的に5マイクロメートル未満)に微粉化する。これは、スパイラルジェットミル粉砕、流動床式ジェットミル粉砕のような適切な粉砕法、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化または噴霧乾燥により達成することができる。
【0208】
カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから調製)、ブリスターおよび吸入器または吹送器に用いるカートリッジは、本発明の化合物または組成物の粉末混合物、ラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基剤、L−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムのような性能改良剤を含むように製剤化することができる。ラクトースは、無水物または一水和物の形態、好ましくは後者であり得る。他の適切な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースを含む。
【0209】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時放出および/または例えばPGLAを用いた放出調節型となるように製剤化することができる。放出調節製剤は、遅延、持続、パルス、制御、標的化およびプログラム放出を含む。
【0210】
経皮適用のための適切な製剤は、担体を含む治療有効量の本発明の化合物または組成物を含む。有益な担体としては、宿主の皮膚への通過を促進する吸収性の薬学的に許容される溶媒などが挙げられる。特徴として、経皮用具は、裏打ち部材を含む包帯、任意選択で担体を含む化合物を含む貯留層、任意選択で長期間にわたり制御され、あらかじめ定められた速度で宿主の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリア、および皮膚に用具を固定するための手段の形態である。
【0211】
本発明の脂質組成物は、非経口、静脈内、全身、局所、経口、腫瘍内、筋肉内、皮下、腹腔内、吸入または何らかのそのような送達の方法を含む、多くの方法のいずれかにより投与される。一実施形態では、組成物は、非経口的に、すなわち、関節内に、静脈内に、腹腔内に、皮下に、または筋肉内に投与される。特定の実施形態では、リポソーム組成物は、静脈内持続注入によりまたはボーラス注射により腹腔内に投与される。
【0212】
本発明の脂質組成物は、対象への送達に適する医薬組成物として製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、デキストロースまたはデキストリン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドもしくはグリシンのようなアミノ酸、抗酸化物質、静菌剤、EDTAのようなキレート化剤またはグルタチオン、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液と等張性、低張性もしくはわずかに高張性にする溶質、粘稠化剤および/または保存剤をしばしばさらに含む。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化することができる。
【0213】
本発明に用いるのに適する製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17.sup.th Ed. (1985)に見いだすことができる。しばしば、組成物は、水性担体のような許容される担体中に懸濁した脂質ナノ粒子の溶液を含む。
【0214】
一実施形態では、本発明は、本発明の脂質組成物および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物(すなわち、製剤)を提供する。別の実施形態では、少なくとも1つの他の脂質成分が脂質組成物に存在する。別の実施形態では、脂質組成物は、リポソームの形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、脂質ナノ粒子の形態である。別の実施形態では、脂質組成物は、肝臓への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、腫瘍への送達に適している。別の実施形態では、脂質組成物は、局所送達適用(眼、耳、皮膚、肺);筋肉(i.m.)、脂肪または皮下細胞(s.c.投与)への送達に適している。別の実施形態では、生物活性物質は、RNAまたはDNAである。
【0215】
免疫付与の目的のために、組成物は、一般的に注射剤として調製され、注射により(例えば、筋肉内注射により)投与される。
【0216】
本発明はまた、本発明の組成物を含む送達用具(例えば、注射器、ネブライザー、噴霧器、吸入器、皮膚貼布剤等)を提供する。この用具は、免疫付与のために医薬組成物を対象、例えば、脊椎動物(例えば、ヒトのような哺乳動物)に投与するために用いることができる。
【0217】
本発明により標的とされる細胞および臓器
本発明の化合物、組成物、方法および使用は、生物活性物質を患者における下記の1つまたは複数のものに送達するために用いることができる。
肝臓または肝臓細胞(例えば、肝細胞);
腎臓または腎臓細胞;
腫瘍または腫瘍細胞;
CNSまたはCNS細胞(中枢神経系、例えば、脳および/または脊髄);
PNSまたはPNS細胞(末梢神経系);
肺または肺細胞;
血管系または血管細胞;
皮膚または皮膚細胞(例えば、真皮細胞および/または濾胞細胞);
眼または眼細胞(例えば、黄斑、窩、角膜、網膜)、および
耳または耳の細胞(例えば、内耳、中耳および/または外耳の細胞)。
【0218】
本発明の化合物、組成物、方法および使用は、生物活性物質(例えば、免疫原をコードするRNA)を免疫系の細胞に送達するためにも用いることができる。
【0219】
一実施形態では、本発明の化合物、組成物、方法および使用は、生物活性物質を肝臓細胞(例えば、肝細胞)に送達するためのものである。一実施形態では、本発明の化合物、組成物、方法および使用は、生物活性物質を腫瘍または腫瘍細胞(例えば、原発性腫瘍または転移性がん細胞)に送達するためのものである。別の実施形態では、化合物、組成物、方法および使用は、生物活性物質を皮膚脂肪、筋肉およびリンパ節に送達する(すなわち、sc投与する)ためのものである。
【0220】
肝臓または肝臓細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射、門脈注射、カテーテル法、ステント留置術)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の肝臓または肝臓細胞と接触させる。
【0221】
腎臓または腎臓細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射、カテーテル法、ステント留置術)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の腎臓または腎臓細胞と接触させる。
【0222】
腫瘍または腫瘍細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射、カテーテル法、ステント留置術)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の腫瘍または腫瘍細胞と接触させる。
【0223】
CNSまたはCNS細胞(例えば、脳細胞および/または脊髄細胞)への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射、カテーテル法、ステント留置術、浸透圧ポンプ投与)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者のCNSまたはCNS細胞(例えば、脳細胞および/または脊髄細胞)と接触させる。
【0224】
PNSまたはPNS細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者のPNSまたはPNS細胞と接触させる。
【0225】
肺または肺細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、肺組織および細胞への直接的肺投与)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の肺または肺細胞と接触させる。
【0226】
血管系または血管細胞への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、クランピング、カテーテル法、ステント留置術)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の血管系または血管細胞と接触させる。
【0227】
皮膚または皮膚細胞(例えば、真皮細胞および/または濾胞細胞)への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接皮膚適用、イオントフォレシス)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の皮膚または皮膚細胞(例えば、真皮細胞および/または濾胞細胞)と接触させる。
【0228】
眼または眼細胞(例えば、黄斑、窩、角膜、網膜)への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下、イオントフォレシス、点眼剤の使用、インプラント)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の眼または眼細胞(例えば、黄斑、窩、角膜、網膜)と接触させる。
【0229】
耳または耳の細胞(例えば、内耳、中耳および/または外耳の細胞)への生物活性物質の送達のために、一実施形態では、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下投与)または送達を促進するための局所投与(例えば、直接注射)などによって、当技術分野で一般的に公知のように本発明の組成物を患者の耳または耳の細胞(例えば、内耳、中耳および/または外耳の細胞)と接触させる。
【0230】
免疫系(例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞を含む、抗原提示細胞)への生物活性物質(例えば、免疫原をコードするRNA)の送達のために、一実施形態では、本発明の組成物を筋肉内に送達し、その後、免疫細胞は、送達部位に浸潤し、送達されたRNAをプロセスし得る。そのような免疫細胞は、マクロファージ(例えば、骨髄由来マクロファージ)、樹状細胞(例えば、骨髄由来の形質細胞様樹状細胞および/または骨髄由来の骨髄樹状細胞)、単球(例えば、ヒト末梢血単球)等を含み得る(例えば、国際公開第2010/006372号パンフレット参照)。
【0231】
本発明による免疫付与
免疫付与の目的のために、本発明は、免疫原をコードするRNAを送達することを含む。免疫原は、免疫原を認識する免疫応答を誘発するものであり、そのため、病原体に対する、またはアレルゲンに対する、または腫瘍抗原に対する免疫を付与するために用いることができる。病原体によって引き起こされる疾患および/または感染に対する免疫付与が好ましい。
【0232】
RNAは、本発明の脂質組成物(例えば、リポソームまたはLNPとして製剤化された)により送達される。一般的に本発明は、免疫原をコードするRNAが内部に封入されているリポソームを利用する。リポソーム内への封入はRNAをRNアーゼ消化から保護することができる。封入効率は、必ずしも100%である必要はない。外部RNA分子(例えば、リポソームの外表面上の)または「裸」RNA分子(リポソームと結合していないRNA分子)の存在は、許容できる。好ましくは、リポソームの集団およびRNA分子の集団を含む組成物について、RNA分子の集団の少なくとも半分(例えば、RNA分子の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%)がリポソームに封入されている。
【0233】
RNA分子は、LNPsと錯体を形成させることもできる。例えば、脂質がリポソーム(水性コアを有する)のみを形成することは、必要ではない。一部の脂質ナノ粒子は、脂質コアを含んでいてもよい(例えば、組成物は、リポソームと脂質コアを含むナノ粒子との混合物を含み得る)。そのような場合、RNA分子は、水性コアを有するLNPsにより封入させ、非共有結合性相互作用(例えば、負に荷電したRNAと陽イオン性脂質との間のイオン性相互作用)により脂質コアを有するLNPsと錯体を形成させることができる。LNPsによる封入および錯体形成は、RNアーゼ消化からRNAを保護し得る。封入/錯体形成効率は、必ずしも100%である必要はない。「裸」RNA分子(リポソームと結合していないRNA分子)の存在は、許容できる。好ましくは、LNPsの集団およびRNA分子の集団を含む組成物について、RNA分子の集団の少なくとも半分(例えば、RNA分子の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%)がLNPsに封入されている、またはLNPsと錯体を形成している。
【0234】
リポソームおよびLNPs
リポソームは、通常、多層膜小胞(MLV)、小単層膜小胞(SUV)および大単層膜小胞(LUV)の3つの群に分けられる。MLVsは、各小胞に、いくつかの別個の水性コンパートメントを形成している、複数の二分子層を有する。SUVsおよびLUVsは、水性コアを封入している単一の二分子層を有し、SUVsは、一般的に<50nmの直径を有し、LUVsは、>50nmの直径を有する。免疫原をコードするRNAの送達のために、直径の好ましい範囲は、60〜180nmの範囲内に、より好ましくは80〜160nmの範囲内にある。
【0235】
脂質組成物は、LNPsでもあり得る。組成物は、水性コアを有するナノ粒子および脂質コアを有するナノ粒子の混合物を含み得る。免疫原をコードするRNAの送達のために、直径の好ましい範囲は、60〜180nmの範囲内に、より好ましくは80〜160nmの範囲内にある。
【0236】
リポソームまたはLNPは、リポソームまたはLNPsの集団を含む組成物の一部であり得、集団内のリポソームまたはLNPsは、直径の範囲を有し得る。異なる直径を有するリポソームまたはLNPsの集団を含む組成物について、(i)リポソームまたはLNPsの数の少なくとも80%が60〜180nmの範囲内、好ましくは80〜160nmの範囲内の直径を有し、(ii)集団の平均直径(強度による、例えば、Z平均)が理想的には60〜180nmの範囲内に、好ましくは80〜160nmの範囲内にあり、かつ/または大多数(plurality)の範囲内の直径は、<0.2の多分散指数を有することが好ましい。
【0237】
所望の直径(複数可)を有するリポソームまたはLNPsを得るために、水性RNA溶液の2つの供給流をエタノール性脂質溶液の1つの流れと単一混合区域において、例えば、微小流体チャンネル中ですべてが同じ流速で混ぜ合わせる方法を用いて混合を実施することができる。
【0238】
免疫付与用途向けの脂質組成物(例えば、リポソームまたはLNPs)を形成するための、脂質の有用な混合物は、式(I)の脂質;コレステロール;およびPEG−DMG、すなわち、PEGコンジュゲート1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)]のようなPEG化脂質を含む。この混合物は、DSPC(1,2−ジアステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)またはDPyPEのような中性両性イオン脂質も含み得る。これら(および他)の混合物を実施例で用いる。
【0239】
RNA分子
免疫付与組成物のin vivoでの投与後に、送達されたRNAは、放出され、細胞内で翻訳されて、in situで免疫原を供給する。特定の実施形態では、RNAが逆転写のような介在複製ステップを必要とせずに細胞により翻訳され得るように、RNAは、プラス(「+」)鎖である。それは、免疫細胞により発現されるTLR7受容体にも結合し、それによりアジュバント作用を開始し得る。
【0240】
特定の実施形態では、RNAは、自己複製RNAである。自己複製RNA分子(レプリコン)は、脊椎動物細胞に送達された場合、タンパク質を含まなくても、それ自体からの転写により(それ自体から生成するアンチセンスコピーにより)、複数の娘RNAsの生成をもたらし得る。自己複製RNA分子は、したがって、一般的に細胞への送達の後に直接翻訳され得る+鎖分子であり、この翻訳は、RNA依存性RNAポリメラーゼをもたらし、これが次に送達されたRNAからアンチセンスおよびセンス転写物の両方を生成する。このように、送達されたRNAは、複数の娘RNAsの生成をもたらす。これらの娘RNAsならびにコリニアなサブゲノム転写物は、それ自体翻訳されて、コードされた免疫原のin situでの発現をもたらし得るか、または転写されて、免疫原のin situでの発現をもたらすように翻訳される、送達されたRNAと同じセンスのさらなる転写物をもたらし得る。この一連の転写の全体的な結果は、導入されたレプリコンRNAsの数の増幅であり、したがって、コードされた免疫原は、宿主細胞の主要なポリペプチド産物になる。
【0241】
自己複製を達成するための1つの適切なシステムは、アルファウイルスベースのRNAレプリコンを用いることである。これらの(+)鎖レプリコンは、細胞への送達の後に翻訳されて、レプリカーゼ(またはレプリカーゼ−トランスクリプターゼ)をもたらす。レプリカーゼは、自己開裂して、送達されたRNAの(+)鎖のゲノム(−)鎖コピーを生成する複製複合体をもたらすポリタンパク質として翻訳される。これらの(−)鎖転写物は、それら自体転写されて、(+)鎖親RNAのさらなるコピーをもたらし、免疫原をコードするサブゲノム転写物ももたらす。該サブゲノム転写物の翻訳は、感染細胞による免疫原のin situでの発現をもたらす。適切なアルファウイルスレプリコンは、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス等に由来するレプリカーゼを使用し得る。変異または野性型ウイルス配列を用いることができ、例えば、VEEVの弱毒化TC83変異体がレプリコンに用いられた。
【0242】
したがって、好ましい自己複製RNA分子は、(i)自己複製RNA分子のRNAを転写し得るRNA依存性RNAポリメラーゼおよび(ii)免疫原をコードする。該ポリメラーゼは、例えば、アルファウイルスタンパク質nsP1、nsP2、nsP3およびnsP4の1つまたは複数のものを含むアルファウイルスレプリカーゼであり得る。
【0243】
天然アルファウイルスゲノムは、非構造レプリカーゼポリタンパク質に加えて、構造ビリオンタンパク質をコードするが、本発明の自己複製RNA分子がアルファウイルス構造タンパク質をコードしないことが好ましい。したがって、好ましい自己複製RNAは、細胞内でのそれ自体のゲノムRNAコピーの生成をもたらし得るが、RNA含有ビリオンの生成をもたらし得ない。これらのビリオンを生成することが不可能であることは、野性型アルファウイルスと異なり、自己複製RNA分子は、それ自体を感染型で存続させることができないことを意味する。野性型ウイルスの存続に必要なアルファウイルス構造タンパク質は、本発明の自己複製RNAsに存在せず、それらの位置は、サブゲノム転写物が構造アルファウイルスビリオンタンパク質ではなく、免疫原をコードするように、目的の免疫原をコードする遺伝子(複数可)によって獲得される。
【0244】
したがって、本発明について有用な自己複製RNA分子は、2つの読み取り枠を有し得る。第1の(5’)読み取り枠は、レプリカーゼをコードし、第2の(3’)読み取り枠は、免疫原をコードする。いくつかの実施形態では、RNAは、例えば、さらなる免疫原(下記参照)をコードするまたはアクセサリーポリペプチドをコードする、さらなる(例えば、下流)読み取り枠を有し得る。
【0245】
自己複製RNA分子は、コードされたレプリカーゼに適合する5’配列を有し得る。
【0246】
自己複製RNA分子は、様々な長さを有し得るが、一般的に5000〜25000ヌクレオチド長、例えば、8000〜15000ヌクレオチドまたは9000〜12000ヌクレオチドである。したがって、RNAは、siRNA送達で認められるものより長い。
【0247】
RNA分子は、5’キャップ(例えば、7−メチルグアノシン)を有し得る。このキャップは、RNAのin vivoでの翻訳を促進し得る。
【0248】
本発明について有用なRNA分子の5’ヌクレオチドは、5’三リン酸基を有し得る。キャップRNAでは、これは、5’→5’架橋を介して7−メチルグアノシンに連結することができる。5’三リン酸は、RIG−I結合を増強し、ひいてはアジュバント作用を促進する。
【0249】
RNA分子は、3’ポリA尾部を有し得る。それは、その3’末端の近くのポリAポリメラーゼ認識配列(例えば、AAUAAA)も含み得る。
【0250】
免疫付与の目的のための、本発明について有用なRNA分子は、一般的に一本鎖である。一本鎖RNAsは、一般的に、TLR7、TLR8、RNAヘリカーゼおよび/またはPKRに結合することによってアジュバント作用を開始し得る。二本鎖型で送達されるRNA(dsRNA)は、TLR3に結合することができ、この受容体も、一本鎖RNAの複製中にまたは一本鎖RNAの二次構造内で形成されるdsRNAによって作動され得る。
【0251】
免疫付与の目的のためのRNA分子は、in vitro転写(IVT)により好都合に調製することができる。IVTには、細菌においてプラスミド型で作製し、増加させた、または合成によって作製した(例えば、遺伝子合成および/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による工学的作製法によって)(cDNA)鋳型を使用し得る。例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ(バクテリオファージT7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼのような)は、DNA鋳型からRNAを転写するために用いることができる。適切なキャッピングおよびポリA付加反応を必要に応じて用いることができる(レプリコンのポリAは、通常DNA鋳型内でコードされるが)。これらのRNAポリメラーゼは、転写5’ヌクレオチド(複数可)について緊縮要件を有し得るものであり、いくつかの実施形態では、IVT転写RNAがその自己コード化レプリカーゼの基質として効率的に機能し得ることを保証するために、これらの要件は、コード化レプリカーゼの要件と適合しなければならない。
【0252】
国際公開第2011/005799号パンフレットに述べられているように、自己複製RNAは、(5’キャップ構造に加えて)修飾核酸塩基を有する1つまたは複数のヌクレオチドを含み得る。例えば、自己複製RNAは、プソイドウリジンおよび/または5メチルシトシン残基のような、1つまたは複数の修飾ピリミジン核酸塩基を含み得る。いくつかの実施形態では、しかし、RNAは、修飾核酸塩基を含まず、修飾ヌクレオチドを含み得ない。すなわち、RNAにおけるヌクレオチドのすべてが標準A、C、GおよびUリボヌクレオチドである(7’メチルグアノシンを含み得る、5’キャップ構造を除く)。他の実施形態では、RNAは、7’メチルグアノシンを含む5’キャップを含み、最初の1つ、2つまたは3つの5’リボヌクレオチドは、リボースの2’位でメチル化され得る。
【0253】
免疫付与の目的のために本発明で用いるRNAは、理想的にはヌクレオチド間のホスホジエステル結合のみを含むが、いくつかの実施形態では、ホスホルアミデート、ホスホロチオエートおよび/またはメチルホスホネート結合を含み得る。
【0254】
免疫原
免疫付与の目的のために本発明で用いるRNAは、ポリペプチド免疫原をコードする。投与後、RNAは、in vivoで翻訳され、免疫原は、レシピエントにおける免疫応答を誘発し得る。免疫原は、病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌または寄生虫)に対する免疫応答を誘発し得るが、いくつかの実施形態では、アレルゲンまたは腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する。免疫応答は、抗体反応(通常IgGを含む)および/または細胞媒介性免疫反応を含み得る。ポリペプチド免疫原は、一般的に対応する病原体(またはアレルゲンもしくは腫瘍)を認識する免疫応答を誘発するが、いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、サッカリドを認識する免疫応答を誘発するミモトープとして作用し得る。免疫原は、一般的に表面ポリペプチド、例えば、アドヘシン、ヘマグルチニン、エンベロープ糖タンパク質、スパイク糖タンパク質等である。
【0255】
RNA分子は、単一ポリペプチド免疫原または複数のポリペプチドをコードし得る。複数の免疫原は、単一ポリペプチド免疫原(融合ポリペプチド)としてまたは別個のポリペプチドとして提示され得る。免疫原がレプリコンから別個のポリペプチドとして発現する場合、これらのうちの1つまたは複数のものを上流IRESまたは付加的なウイルスプロモーターエレメントと共に用意することができる。あるいは、複数の免疫原は、短い自触的プロテアーゼに融合した個々の免疫原をコードするポリタンパク質(例えば、口蹄疫ウイルス2Aタンパク質)から、またはインテインとして発現させることができる。
【0256】
いくつかの実施形態では、免疫原は、これらの細菌の1つに対する免疫応答を誘発する。
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis):有用な免疫原は、アドヘシン、オートトランスポーター、毒素、鉄獲得タンパク質およびH因子結合タンパク質のような膜タンパク質を含むが、これらに限定されない。3つの有用なポリペプチドの組合せは、Giuliani et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103(29):10834-9に開示されている。
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae):有用なポリペプチド免疫原は、国際公開第2009/016515号パンフレットに開示されている。これらは、RrgB線毛サブユニット、ベータ−N−アセチルヘキソサミニダーゼ前駆体(spr0057)、spr0096、一般ストレスタンパク質(General stress protein)GSP−781(spr2021、SP2216)、セリン/トレオニンキナーゼStkP(SP1732)および肺炎球菌表面アドヘシンPsaAを含むが、これらに限定されない。
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes):有用な免疫原は、国際公開第02/34771号パンフレットおよび国際公開第2005/032582号パンフレットに開示されているポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)
百日咳菌(Bordetella pertussis):有用な百日咳免疫原は、百日咳毒素またはトキソイド(PT)、繊維状赤血球凝集素(FHA)、ペルタクチンならびに凝集原2および3を含むが、これらに限定されない。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):有用な免疫原は、ヘモリシン、esxA、esxB、フェリクローム結合タンパク質(sta006)および/またはsta011リポタンパク質のような国際公開第2010/119343号パンフレットに開示されているポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
破傷風菌(Clostridium tetani):一般的な免疫原は、破傷風トキソイドである。
ジフテリア菌(Cornynebacterium diphtheriae):一般的な免疫原は、ジフテリアトキソイドである。
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae):有用な免疫原は、国際公開第2006/110413号パンフレットおよび国際公開第2005/111066号パンフレットに開示されているポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae):有用な免疫原は、国際公開第02/34771号パンフレットに開示されているポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
トラコーマ・クラミジア(Chlamydia trachomatis):有用な免疫原は、PepA、LcrE、ArtJ、DnaK、CT398、OmpH様、L7/L12、OmcA、AtoS、CT547、Eno、HtrAおよびMurG(例えば、国際公開第2005/002619号パンフレットに開示されている)を含むが、これらに限定されない。LcrE(国際公開第2006/138004号パンフレット)およびHtrA(国際公開第2009/109860号パンフレット)が2つの好ましい免疫原である。
クラミジア肺炎病原体(Chlamydia pneumoniae):有用な免疫原は、国際公開第02/02606号パンフレットに開示されているポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori):有用な免疫原は、CagA、VacA、NAPおよび/またはウレアーゼ(国際公開第03/018054号パンフレット)を含むが、これらに限定されない。
大腸菌(Escherichia coli):有用な免疫原は、腸管毒素原性大腸菌(E. coli)(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(E. coli)(EAggEC)、分散接着性大腸菌(E. coli)(DAEC)、腸管病原性大腸菌(E. coli)(EPEC)、腸管外病原性大腸菌(E. coli)(ExPEC)および/または腸管出血性大腸菌(E. coli)(EHEC)に由来する免疫原を含むが、これらに限定されない。ExPEC菌株は、尿路病原性(E. coli)(UPEC)および髄膜炎/敗血症関連大腸菌(E. coli)(MNEC)を含む。有用なUPEC免疫原は、国際公開第2006/091517号パンフレットおよび国際公開第2008/020330号パンフレットに開示されている。有用なMNEC免疫原は、国際公開第2006/089264号パンフレットに開示されている。いくつかの大腸菌(E. coli)型の有用な免疫原は、AcfD(国際公開第2009/104092号パンフレット)である。
炭疽菌(Bacillus anthracis)
ペスト菌(Yersinia pestis):有用な免疫原は、国際公開第2007/049155号パンフレットおよび国際公開第2009/031043号パンフレットに開示されているものを含むが、これらに限定されない。
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)
クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)またはクロストリジウム・ボツリヌス(Clostridium botulinums)
レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)
コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii)
ウシ流産菌(B. abortus)、イヌ流産菌(B. canis)、マルタ熱菌(B. melitensis)、ブルセラ・ネオトマ(B. neotomae)、ブルセラ・オビス(B. ovis)、ブタ流産菌(B. suis)、ブルセラ・ピンニペディエ(B. pinnipediae)のようなブルセラ属(Brucella)
フランシセラ・ノビシダ(F. novicida)、フィロミラギア・フランシセラ(F. philomiragia)、野兎病菌(F. tularensis)のようなフランシセラ属(Francisella)
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)
ヘモフィラス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)またはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)
スタフィロコッカス・サプロフィティクス(Staphylococcus saprophyticus)
腸炎エルニシア菌(Yersinia enterocolitica)
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)
リケッチア(Rickettsia)
リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)
コレラ菌(Vibrio cholerae)
腸チフス菌(Salmonella typhi)
ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)
クレブシエラ属(Klebsiella)
【0257】
いくつかの実施形態では、免疫原は、これらのウイルスの1つに対する免疫応答を誘発する。
オルソミクソウイルス科(Orthomyxovius):有用な免疫原は、赤血球凝集、ノイラミニダーゼまたはマトリックスM2タンパク質のような、A型、B型またはC型インフルエンザウイルスに由来するものであり得る。免疫原がA型インフルエンザウイルス赤血球凝集である場合、それは、いずれかのサブタイプ、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16に由来するものであり得る。
パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)ウイルス:肺炎ウイルス属(Pneumoviruses)(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、RSV)、ルブラウイルス属(Rubulaviruses)(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス)、パラミクソウイルス属(Paramyxoviruses)(例えば、パラインフルエンザウイルス)、メタニューモウイルス属(Metapneumoviruses)およびモルビリウイルス属(Morbilliviruses)(例えば、麻疹ウイルス)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ポックスウイルス科(Poxviridae):免疫原は、大痘瘡および小痘瘡を含むがこれらに限定されない、真性痘瘡のようなオルソミクソウイルス属(Orthomyxovius)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ピコルナウイルス属(Picornavirus):免疫原は、エンテロウイルス(Enteroviruses)、ライノウイルス(Rhinoviruses)、ヘパルナウイルス(Heparnavirus)、カルジオウイルス(Cardioviruses)およびアフトウイルス(Aphthoviruses)のような、ピコルナウイルス属(Picornaviruses)に由来するものを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、例えば、1型、2型および/または3型ポリオウイルスである。別の実施形態では、エンテロウイルスは、EV71エンテロウイルスである。別の実施形態では、エンテロウイルスは、コクサッキーAまたはBウイルスである。
ブニヤウイルス科ウイルス(Bunyavirus):免疫原は、カリフォルニア脳炎ウイルスのようなオルソブニヤウイルス属(Orthobunyavirus)、リフトバレー熱ウイルスのようなフレボウイルス属(Phlebovirus)またはクリミア−コンゴ出血熱ウイルスのようなナイロウイルス属(Nairovirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ヘパルナウイルス属(Heparnavirus):免疫原は、A型肝炎ウイルス(HAV)のような、ヘパルナウイルス属(Heparnavirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
フィロウイルス科(Filovirus):免疫原は、エボラウイルス(ザイール、象牙海岸、レストンまたはスーダンエボラウイルスを含む)またはマーブルクウイルスのような、フィロウイルスに由来するものを含むが、これらに限定されない。
トガウイルス科(Togavirus):免疫原は、ルビウイルス属(Rubivirus)、アルファウイルス属(Alphavius)またはアルテリウイルス属(Arterivirus)のようなトガウイルス(Togavirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
フラビウイルス属(Flavivirus):免疫原は、ダニ媒介脳炎(TBE)ウイルス、デング(1、2、3または4型)ウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、西ナイル脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、ポーワッサン脳炎ウイルスのような、フラビウイルス属(Flavivirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ペスチウイルス属(Pestivirus):免疫原は、ウシウイルス性下痢(BVDV)、豚コレラ(CSFV)またはボーダー病(BDV)のような、ペスチウイルス属(Pestivirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ヘパドナウイルス属(Hepadnavirus):免疫原は、B型肝炎ウイルスのような、ヘパドナウイルス属(Hepadnavirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。組成物は、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)を含み得る。
他の肝炎ウイルス:組成物は、C型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスまたはG型肝炎ウイルスに由来する免疫原を含み得る。
ラブドウイルス属(Rhabdovirus):免疫原は、リッサウイルス(Lyssavirus)(例えば、狂犬病ウイルス)およびべシクロウイルス(Vesiculovirus)(VSV)のような、ラブドウイルス属(Rhabdovirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
カリチウイルス科(Caliciviridae):免疫原は、ノーウォークウイルス(ノロウイルス)、ならびにハワイウイルスおよびスノーマウンテンウイルスのようなノーウォーク様ウイルスのような、カリチウイルス科(Caliciviridae)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
コロナウイルス属(Coronavirus):免疫原は、SARSコロナウイルス、鳥類伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来するものを含むが、これらに限定されない。コロナウイルス免疫原はスパイクポリペプチドであり得る。
レトロウイルス科(Retrovirus):免疫原は、オンコウイルス属(Oncovirus)、レンチウイルス属(Lentivirus)(例えば、HIV−1またはHIV−2)またはスプマウイルス属(Spumavirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
レオウイルス属(Reovirus):免疫原は、オルトレオウイルス属(Orthoreovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、オルビウイルス(Orbivirus)またはコルチウイルス属(Coltivirus)に由来するものを含むが、これらに限定されない。
パルボウイルス属(Parvovirus):免疫原は、パルボウイルスB19に由来するものを含むが、これらに限定されない。
ヘルペスウイルス属(Herpesvirus):単に例として、単純ヘルペスウイルス(HSV)(例えば、1および2型HSV)、帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)のような、ヒトヘルペスウイルスに由来するものを含むが、これらに限定されない。
パポバウイルス:免疫原は、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスに由来するものを含むが、これらに限定されない。(ヒト)パピローマウイルスは、血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63または65、例えば、血清型6、11、16および/または18の1つまたは複数の血清型のものであり得る。
アデノウイルス:免疫原は、血清型36(Ad−36)に由来するものを含む。
【0258】
いくつかの実施形態では、免疫原は、伝染性サケ貧血ウイルス(ISAV)、サケ膵臓病ウイルス(SPDV)、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、アメリカナマズウイルス(CCV)、魚類リンホシスチス病ウイルス(FLDV)、伝染性造血器壊死ウイルス(IHNV)、鯉ヘルペスウイルス、サケピコナ様ウイルス(タイセイヨウサケのピコナ様ウイルスとしても公知)、陸封サケウイルス(LSV)、タイセイヨウサケロタウイルス(ASR)、マスイチゴ病ウイルス(TSD)、ギンザケ腫瘍ウイルス(CSTV)またはウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)のような、魚に感染するウイルスに対する免疫応答を誘発する。
【0259】
真菌免疫原は、有毛表皮糸状菌(Epidermophyton floccusum)、オードアン小胞子菌(Microsporum audouini)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、ミクロスポリウム・ジストルツム(Microsporum distortum)、ウマ小胞子菌(Microsporum equinum)、石膏状小胞子菌(Microsporum gypsum)、ブタ小胞子菌(Microsporum nanum)、渦状白癬菌(Trichophyton concentricum)、ウマ白癬菌(Trichophyton equinum)、家禽白癬菌(Trichophyton gallinae)、石膏状白癬菌(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・メンタグロファイテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・キンケアヌム(Trichophyton quinckeanum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・シェーンライニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコスム(Trichophyton verrucosum)、トリコフィトン・ベルコスム・アルブム変種(T. verrucosum var. album)、ジスコイデス変種(var. discoides)、オクラセウム変種(var. ochraceum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)および/またはトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme)を含む、表皮糸状菌に;あるいはアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾミセス・キャピタツス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクウセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・プソイドトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondi)、クラドスポリウム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチディス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバツム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラスマ・カプスラツム(Histoplasma capsulatum)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、微胞子虫類(Microsporidia)、エンセファリトズーン属種(Encephalitozoon spp)、セプタータ・インテスチナリス(Septata intestinalis)およびエンテロシトズーン・ビエノイシ(Enterocytozoon bieneusi)に由来し得る。さほど一般的でないものは、ブラチオーラ属種(Brachiola spp)、マイクロスポリジウム属種(Microsporidium spp)、ノセマ病微胞子虫(Nosema spp)、プレイストホラ属種(Pleistophora spp)、トラチプレイストホラ属種(Trachipleistophora spp)、ビッタフォルマ属種(Vittaforma spp)、ブラジル・パラコクシジオイデス(Paracoccidioides brasilliensis)、カリニ・ニューモシスチス(Pneumocystis carinii)、フィチウム・インシジオスム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)、サッカロミセス・セレビシエ(Sacharomyces cerevisae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、セドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosperum)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリイ(Trichosporon beigelii)、トキソプラスマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネフェイ(Penicillium marneffei)、マラセチア属種(Malassezia spp)、フォンセケア属種(Fonsecaea spp)、ワンギエラ属種(Wangiella spp)、スポロトリクス属種(Sporothrix spp)、バシジオボーラス属種(Basidiobolus spp)、コルニジオボーラス属種(Cornidiobolus spp)、リゾプス属種(Rhizopus spp)、ムコール属種(Mucor spp)、アブシディア属種(Absidia spp)、モルチエレラ属種(Mortierella spp)、クニンガメラ属種(Cunninghamella spp)、サクセネア属種(Saksenaea spp)、アルテルナリア属種(Alternaria spp)、カーブラリア属種(Curvularia spp)、ヘルミントスポリウム属種(Helminthosporium spp)、フザリウム属種(Fusarium spp)、アスペルギルス属種(Aspergillus spp)、ペニシリウム属種(Penicillium spp)、モノリニア属種(Monolinia spp)、リゾクトニア属種(Rhizoctonia spp)、ペシロミセス属種(Paecilomyces spp)、ピトミセス属種(Pithomyces spp)およびクラドスポリウム属種(Cladosporium spp)である。
【0260】
いくつかの実施形態では、免疫原は、熱帯マラリア原虫(P. falciparum)、三日熱マラリア原虫(P. vivax)、四日熱マラリア原虫(P. malariae)または卵型マラリア原虫(P. ovale)のような、プラスモジウム属(Plasmodium genus)の寄生虫に対する免疫応答を誘発する。したがって、本発明は、マラリアに対する免疫付与のために用いることができる。いくつかの実施形態では、免疫原は、ウオジラミ(Caligidae)科の寄生虫、とりわけレペオフテイルス(Lepeophtheirus)およびカリグス(Caligus)属、例えば、レペオフテイルス・サルモニス(Lepeophtheirus salmonis)またはサケジラミ(Caligus rogercresseyi)のようなウミジラミに対する免疫応答を誘発する。
【0261】
いくつかの実施形態では、免疫原は、花粉アレルゲン(樹木、ハーブ、雑草および草花粉アレルゲン);昆虫またはクモ形類動物アレルゲン(吸入抗原、唾液および毒液アレルゲン、例えば、ダニアレルゲン、ゴキブリおよび小昆虫アレルゲン、膜翅類毒液アレルゲン);動物毛およびふけアレルゲン(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス等の);ならびに食物アレルゲン(例えば、グリアジン)に対する免疫応答を誘発する。樹木、草およびハーブの重要な花粉アレルゲンは、カバノキ(マカンバ属(Betula))、ハンノキ(ハンノキ属(Alnus))、ハシバミ(ハシバミ属(Corylus))、シデ(クマシデ属(Carpinus))およびオリーブ(オリーブ属(Olea))、セダー(スギ属(Cryptomeria)およびビャクシン属(Juniperus))、スズカケノキ(プラタナス属(Platanus))を含むがこれらに限定されない、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)およびスズカケノキ目(Platanaceae)という分類上の目、ドクムギ属(Lolium)、フレウム属(Phleum)、ポア属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、ホルクス属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)およびモロコシ属(Sorghum)などの草を含むイネ目(Poales)、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)およびヒカゲミズ属(Parietaria)などのハーブを含むキク目(Asterales)およびイラクサ目(Urticales)に由来する。他の重要な吸入アレルゲンは、ヒョウヒダニ属(Dermatophagoides)およびユーログファス属(Euroglyphus)のイエダニ、倉庫ダニ、例えば、レピトグリフィス属(Lepidoglyphys)、グリアグス属(Glycyphagus)およびチロファグス属(Tyrophagus)に由来するもの、ゴキブリ、ユスリカおよびノミ、例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ワモンゴキブリ属(Periplaneta)、ユスリカ属(Chironomus)およびクテノセファリデス(Ctenocepphalides)に由来するものならびにネコ、イヌおよびウマのような哺乳動物に由来するもの、ミツバチ(ミツバチ科(Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(Vespidea))およびアリ(アリ上科(Formicoidae))を含む膜翅目(Hymenoptera)という分類上の目に由来するもののような、刺すまたは咬む昆虫に由来するようなものを含む毒液アレルゲンである。
【0262】
いくつかの実施形態では、免疫原は、(a)NY−ESO−1、SSX2、SCP1ならびにRAGE、BAGE、GAGEおよびMAGEファミリーポリペプチド、例えば、GAGE−1、GAGE−2、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6およびMAGE−12(例えば、黒色腫、肺、頭頸部、NSCLC、乳腺、消化管および膀胱腫瘍に対処するために用いることができる)のようながん精巣抗原、(b)突然変異抗原、例えば、p53(様々な固形腫瘍、例えば、結腸直腸、肺、頭頸部がんに関連する)、p21/Ras(例えば、黒色腫、膵臓がんおよび結腸直腸がんに関連する)CDK4(例えば、黒色腫に関連する)、MUM1(例えば、黒色腫に関連する)、カスパーゼ8(例えば、頭頸部がんに関連する)、CIA0205(例えば、膀胱がんに関連する)、HLA−A2−R1701、ベータカテニン(例えば、黒色腫に関連する)、TCR(例えば、T細胞非ホジキンリンパ腫に関連する)、BCR−abl(例えば、慢性骨髄性白血病に関連する)、トリオセホスフェートイソメラーゼ、KIA0205、CDC−27およびLDLR−FUT、(c)過剰発現抗原、例えば、ガレクチン4(例えば、結腸直腸がんに関連する)、ガレクチン9(ホジキン病に関連する)、プロテイナーゼ3(例えば、慢性骨髄性白血病に関連する)、WT1(例えば、種々の白血病に関連する)、炭酸脱水酵素(例えば、腎がんに関連する)、アルドラーゼA(例えば、肺がんに関連する)、PRAME(例えば、黒色腫に関連する)、HER−2/neu(例えば、乳、結腸、肺および卵巣がんに関連する)、マンマグロビン、アルファフェトプロテイン(例えば、肝がんに関連する)、KSA(例えば、結腸直腸がんに関連する)、ガストリン(例えば、膵臓および胃がんに関連する)、テロメラーゼ触媒タンパク質MUC−1(例えば、乳および卵巣がんに関連する)、G−250(例えば、腎細胞癌腫に関連する)、p53(例えば、乳、結腸がんに関連する)、および癌胎児抗原(例えば、乳がん、肺がんおよび結腸直腸がんのような消化管のがんに関連する)、(d)共通抗原、例えば、MART−1/Melan A、gp100、MC1Rのような黒色腫−メラノサイト分化抗原、メラノサイト刺激ホルモン受容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1/TRP1およびチロシナーゼ関連タンパク質−2/TRP2(例えば、黒色腫に関連する)のような黒色腫−メラノサイト分化抗原、(e)例えば、前立腺がんに関連する、PAP、PSA、PSMA、PSH−P1、PSM−P1、PSM−P2のような前立腺関連抗原、(f)免疫グロブリンイディオタイプ(例えば、骨髄腫およびB細胞リンパ腫に関連する)から選択される腫瘍抗原である。特定の実施形態では、腫瘍免疫原は、p15、Hom/MeI−40、H−Ras、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、E6およびE7を含む、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原、B型およびC型肝炎ウイルス抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス抗原、TSP−180、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、mn−23H1、TGA−72−4、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、p16、TAGE、PSCA、CT7、43−9F、5T4、791Tgp72、ベータ−HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15−3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA−50、CAM43、CD68/KP1、CO−029、FGF−5、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPSおよび同類のものを含むが、これらに限定されない。
【0263】
医薬組成物
本発明の医薬組成物、とりわけ免疫付与に有用なものは、1つまたは複数の小分子免疫増強剤を含み得る。例えば、組成物は、TLR2アゴニスト(例えば、Pam3CSK4)、TLR4アゴニスト(例えば、E6020のような、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート)、TLR7アゴニスト(例えば、イミキモド)、TLR8アゴニスト(例えば、レシキモド)および/またはTLR9アゴニスト(例えば、IC31)を含み得る。そのようなアゴニストは、理想的には<2000Daの分子量を有する。そのようなアゴニスト(複数可)は、いくつかの実施形態では、RNAと共にリポソーム内に封入する、またはLNPsにより封入もしくは錯体形成させることができるが、他の実施形態では、それらは、非封入または非錯体形成である。本発明の医薬組成物は、200mOsm/kgから400mOsm/kgまで、例えば、240〜360mOsm/kg、または290〜310mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。本発明の医薬組成物は、チオメルサールまたは2フェノキシエタノールのような、1つまたは複数の保存剤を含み得る。水銀不含有組成物が好ましく、保存剤不含有ワクチンを調製することができる。
【0264】
組成物は、免疫学的有効量の本明細書で述べた脂質組成物(例えば、リポソームおよびLNPs)ならびに必要に応じて、他の成分を含む。免疫学的有効量は、治療(例えば、病原体に対する予防的免疫応答)に有効である、1回または一連の投与の一部としてで、個体に投与される量を意味する。この量は、治療を受ける個体の健康および身体状態、年齢、治療を受ける個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの処方、医学的状況の主治医評価ならびに他の関連因子によって異なる。該量は、常用の試験により決定することができる比較的に広い範囲に収まる。本発明の組成物は、1回の投与当たりのRNAの量により一般的に表す。好ましい用量は、≦100μg RNA(例えば、約10μg、25μg、75μgまたは100μgのような、10〜100μg)を有するが、発現は、はるかにより低いレベル、例えば、≦1μg/投与、≦100ng/投与、≦10ng/投与、≦1ng/投与等でも確認することができる。
【0265】
本発明はまた、本発明の医薬組成物を含む送達用具(例えば、注射器、ネブライザー、噴霧器、吸入器、皮膚貼付剤等)を提供する。この用具は、脊椎動物対象に組成物を投与するために用いることができる。
【0266】
本発明のリポソームまたはLNPsは、リボソームを含まない。
【0267】
治療の方法および医学的用途
本明細書で述べたリポソーム製剤化またはLNP製剤化RNAおよび医薬組成物は、目的の免疫原に対する免疫応答を誘導するためにin vivoで用いるためのものである。
【0268】
本発明は、本明細書で述べたように、有効量のリポソーム製剤化もしくはLNP製剤化RNA、または医薬組成物を投与することを含む脊椎動物における免疫応答を誘導する方法を提供する。免疫応答は、好ましくは防御的であり、好ましくは抗体および/または細胞媒介性免疫を含む。組成物は、初回免疫および追加抗原投与目的の両方に用いることができる。あるいは、プライム−ブースト免疫付与スケジュールは、RNAと対応するポリペプチド抗原との混合(例えば、RNAプライム、タンパク質ブースト)であり得る。
【0269】
本発明はまた、脊椎動物における免疫応答を誘導するのに用いるリポソーム、LNPまたは医薬組成物を提供する。
【0270】
本発明はまた、脊椎動物における免疫応答を誘導するための医薬の製造におけるリポソーム、LNPまたは医薬組成物の使用を提供する。
【0271】
これらの使用および方法により脊椎動物における免疫応答を誘導することにより、脊椎動物は、様々な疾患および/または感染に対して、例えば、上述のような細菌および/またはウイルス性疾患に対して保護することができる。リポソーム、LNPsおよび組成物は、免疫原性であり、より好ましくはワクチン組成物である。本発明によるワクチンは、予防薬(すなわち、感染を予防するための)または治療薬(すなわち、感染を治療するための)であり得るが、一般的に予防薬である。
【0272】
脊椎動物は、好ましくは、ヒトまたは大型獣医学的哺乳動物(veterinary mammal)(例えば、ウマ、ウシ、シカ、ヤギ、ブタ)のような哺乳動物である。本明細書で用いられる「大型哺乳動物」は、少なくとも5kg、好ましくは少なくとも7kgの一般的または平均的な成体体重を有する哺乳動物を意味する。そのような大型哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ブタ、ウシ、シカ、ヤギを含み得、マウス、ラット、モルモットおよび他のげっ歯類のような、小型哺乳動物を除外することを意味する。
【0273】
ワクチンが予防用である場合、ヒトは、好ましくは小児(例えば、よちよち歩きの幼児もしくは乳児)または十代の若者であり、ワクチンが治療用である場合、ヒトは、好ましくは十代の若者または成人である。小児を対象としたワクチンは、例えば、安全性、用量、免疫原性等を評価するために成人にも投与することができる。
【0274】
本発明に従って調製されたワクチンは、小児および成人の両方を治療するために用いることができる。したがって、ヒト患者は、1歳未満、5歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳または少なくとも55歳であり得る。ワクチンの接種を受けるのに好ましい患者は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、若年者(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、軍部および軍事要員、妊娠女性、慢性病または免疫不全患者である。ワクチンは、これらの群にもっぱら適しているわけでないが、より一般的に集団に用いることができる。本発明の組成物は、一般的に患者に直接的に投与する。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、または組織の間質腔への)により達成することができ、舌内注射は、免疫付与の目的のために一般的に用いられない。代替送達経路は、直腸、経口(例えば、錠剤、噴霧剤)、口腔、舌下、膣、局所、経皮(transdermal)もしくは経皮(transcutaneous)、鼻腔内、眼、耳、肺または他の粘膜投与を含む。皮内および筋肉内投与は、2つの好ましい経路である。注射は、針(例えば、皮下針)を介するものであり得るが、無針注射を代わるべきものとして用いることができる。一般的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0275】
本発明は、全身および/または粘膜免疫を誘導するために、好ましくは全身および/または粘膜免疫の増強をもたらすために用いることができる。
【0276】
投与は、単回投与スケジュールまたは反復投与スケジュールにより行い得る。反復投与は、一次免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールに用いることができる。反復投与スケジュールにおいて、同じまたは異なる経路、例えば、非経口初回および粘膜追加、粘膜初回および非経口追加、等により種々の投与を行うことができる。反復投与は、一般的に少なくとも1週間隔で(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間、等)投与する。一実施形態では、反復投与は、世界保健機関の予防接種拡大プログラム(「EPI」)でしばしば用いられているように、出生の約6週間、10週間および14週間後、例えば、6週、10週および14週齢時に投与することができる。代替実施形態では、2つの一次用量を約2カ月間隔で、例えば、約7、8もしくは9週間隔で、その後、第2の一次用量の約6カ月〜1年後、例えば、第2の一次用量の約6、8、10もしくは12カ月後に1つまたは複数の追加用量を投与する。さらなる実施形態では、3つの一次用量を約2カ月間隔で、例えば、約7、8もしくは9週間隔で、その後、第3の一次用量の約6カ月〜1年後、例えば、第3の一次用量の約6、8、10もしくは12カ月後に1つまたは複数の追加用量を投与する。
【実施例】
【0277】
式(I)の陽イオン性脂質
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、それに対する制限であると解釈すべきではない。温度は、セ氏温度で示す。特に示さない限り、すべての蒸発濃縮は、減圧下で、好ましくは約15mmHg〜100mmHg(=20〜133mバール)で実施する。最終生成物、中間体および出発物質の構造は、標準的分析法、例えば、微量分析または分光的特性、例えば、MS、IRもしくはNMRにより確認する。用いる略語は、当技術分野で慣例的なものであり、一部は、以下で定義する。
【0278】
フラッシュカラム精製は,好ましくは無勾配または勾配組成の適切な溶出液を用いてシリカゲル上で行う。
【0279】
HPLC分析は、別途述べない限り、勾配溶出(20分にわたる0.1%v/vトリフルオロ酢酸により修飾した0%〜95%水中アセトニトリルおよび1.4mL/分の流量)を用いてWaters Atlatis dC18カラム(4.6×150mm、3mm)上で実施する。
【0280】
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance II 400MHz分光計に記録した。すべての化学シフトは、テトラメチルシランに対して100万分の1単位(δ)で報告する。次の略語を用いてシグナルパターンを表す。s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=広幅。ES−MSデータは、Agilent 1100液体クロマトグラフ上二重エレクトロスプレイイオン化源を備えたWaters LTC Premier質量分析計を用いて記録した。スルファジメトキシン[Sigma、m/z=311.0814(M+1)]を、第3のスキャンごとにLockSpray(商標)チャネルにより取得した参照として用いた。システムの質量精度は、<5ppmであることが見いだされた。
【0281】
略語:
AcOH 酢酸
Aq 水性
Ar アリール
Atm 雰囲気
BOC tert−ブチルカーボネート
br.s.、bs 広幅一重線
℃ セ氏温度
CDCl 重水素化ジクロロメタン
CDCl 重水素化クロロホルム
CHCl、DCM ジクロロメタン
CHCN、MeCN アセトニトリル
d 二重線
dd 二重線の二重線
ddd 二重線の二重線の二重線
DIEA、DIPEA N−エチルジイソプロピルアミン
DME 1,4−ジメトキシエタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMSO ジメチルスルホキシド
dt 三重線の二重線
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FCC フラッシュカラムクロマトグラフィー
G ゲージ
h 時間
HBTU (2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩酸
HMPA ヘキサメチルホスホルアミド
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
HT 大量処理
IBX 2−ヨードオキシ安息香酸
i−PrOH イソプロピルアルコール
O 水
K ケルビン
KOH 水酸化カリウム
LC 液体クロマトグラフィー
M モル
m 多重線、質量
MeOH メタノール
MgSO 硫酸マグネシウム
MHz メガヘルツ
ml、mL ミリリットル
mm ミリメートル
mmol ミリモル
min. 分
mRNA メッセンジャーリボ核酸
MS 質量分析
mw マイクロ波
NaH 水素化ナトリウム
NaHMDS ヘキサメチルジシラザンナトリウム
NaOEt ナトリウムエトキシド
NaOH 水酸化ナトリウム
NaSO 硫酸ナトリウム
NEt トリエチルアミン
ng ナノグラム
NH アンモニア
NMR 核磁気共鳴
quint. 五重線
Pd/C 炭素上パラジウム
ppt 沈殿物
rbf 丸底フラスコ
Rf 遅延係数
rt 室温
Rt 保持時間
s 一重線
sat. 飽和
siRNA 低分子干渉リボ核酸
SM 出発物質
t 三重線
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
UPLC 超高性能液体クロマトグラフィー
wt 重量
μg マイクログラム
μL マイクロリットル
【0282】
すべての化合物は、AutoNomを用いて命名する。
【0283】
LC特異性:
LC方法1:保持時間(Rt)は、Inersil C8 3.0μm、3.0x53mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)40/60〜5/95の勾配を1.0分にわたり適用し、次いで2.1分間保持した(溶媒流として1.0mL/分)。
LC方法2:保持時間(Rt)は、Acquity BEH 1.7μm、2.1x50mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)45/55〜1/99の勾配を1.4分にわたり適用し、次いで3.6分間保持した(溶媒流として1.0mL/分)。
LC方法3:保持時間(Rt)は、Acquity BEH 1.7μm、2.1x50mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)45/55〜1/99の勾配を0.7分にわたり適用し、次いで1.3分間保持した(溶媒流として1.0mL/分)。
LC方法4:保持時間(Rt)は、Acquity BEH 1.7μm、2.1x50mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)45/55〜0.1/99.9の勾配を3.6分にわたり適用し、次いで1.4分間保持した(溶媒流として1.0mL/分)。
LC方法5:保持時間(Rt)は、ACQUITY UPLC BEH C18 130Å 1.7μm、2.1mmx50mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)60/40〜2/98の勾配を3.40分にわたり適用し、次いで1.40分間保持した(溶媒流として1.0mL/分)。
LC方法6:保持時間(Rt)は、Acquity BEH 1.7μm、2.1x50mmカラムを用いたWaters Acquity SDSシステムで得られた。50℃のオーブン温度でHO(+0.1%ギ酸)/CHCN(+0.1%ギ酸)45/55〜1/99の勾配を1.4分にわたり適用し、その後、3.75分にわたる0/100への増加および0.04分にわたる45/55への減少を後続させた(溶媒流として1.0mL/分)。
【0284】
合成戦略
【0285】
【化14】
【0286】
実施例1の合成:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート
中間体1a:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンズアルデヒド
【0287】
【化15】
DMF(35mL)中2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.551g、3.99mmol)の溶液に(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルメタンスルホネート(2.75g、7.98mmol)、続いてKCO(4.41g、31.9mmol)を加え、80℃で16時間加熱した。反応物を100mlの酢酸エチルおよび100mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×50mlの水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出して、所望の生成物を無色の油(1.3g、収率26%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.48 (s, 1H), 7.31 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 7.12 (dd, J = 9.0, 3.5 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 5.29-5.46 (m, 8H), 4.03 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.94 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.78 (t, J = 6.3 Hz, 4H), 2.01-2.13 (m, 8H), 1.72-1.87 (m, 4H), 1.46 (dt, J = 14.1, 7.0 Hz, 4H), 1.24-1.41 (m, 28H), 0.89 (t, J = 7.0 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 189.7, 156.3, 153.0, 130.2, 130.1, 130.0, 128.0, 128.0, 127.9, 127.9, 125.0, 124.1, 114.3, 110.7, 69.1, 68.6, 31.5, 29.6, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 27.2, 26.0, 26.0, 25.6, 22.6, 14.1.
【0288】
中間体1b:(2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)フェニル)メタノール
【0289】
【化16】
THF(10ml)およびメタノール(5ml)中中間体1a(1.165g、1.835mmol)の溶液にNaBH(0.090g、2.385mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応物を100mlの酢酸エチルおよび100mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×50mlの水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンで溶出して、所望の生成物を無色の油(0.75g、収率64%)として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 6.86 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.76-6.80 (m, 2H), 5.27-5.48 (m, 8H), 4.66 (s, 2H), 3.96 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.91 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.79 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.06 (q, J = 6.9 Hz, 8H), 1.77 (二重の五重線, J = 14.2, 7.0 Hz, 4H), 1.41-1.54 (m, J = 7.5, 5.5 Hz, 4H), 1.23-1.41 (m, 28H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 153.0, 150.9, 130.2, 130.1, 130.1, 130.1, 128.0, 128.0, 127.9, 115.4, 113.7, 112.0, 68.6, 68.5, 62.5, 31.5, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 29.2, 27.2, 27.2, 26.1, 26.0, 25.6, 22.6, 14.1.
【0290】
実施例1:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート
【0291】
【化17】
DCM(25ml)中4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(26.3mg、0.157mmol)の溶液にEDC.HCl(45.1mg、0.235mmol)およびDMAP(1.918mg、0.016mmol)を、続いてNEt(0.087ml、0.628mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。混合物に中間体1b(100mg、0.157mmol)を加え、16時間撹拌した。反応物を100mlのジクロロメタンおよび100mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×50mlの水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をBiotage精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出して、所望の生成物を無色の油(84mg、収率71%)として得た。1H NMR (400 MHz, ジクロロメタン-d2) δ: 6.90 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.78-6.85 (m, 2H), 5.28-5.54 (m, 8H), 5.14 (s, 2H), 3.85-4.01 (m, 4H), 2.82 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.42 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.30 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.21 (s, 6H), 2.01-2.15 (m, 8H), 1.69-1.88 (m, 6H), 1.44-1.57 (m, 4H), 1.26-1.44 (m, 28H), 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, ジクロロメタン-d2) δ: 173.8, 153.4, 151.4, 130.6, 130.6, 128.5, 128.4, 126.3, 116.4, 114.6, 113.0, 69.4, 69.0, 61.9, 59.2, 45.7, 32.5, 32.1, 30.2, 30.1, 30.0, 30.0, 29.9, 29.8, 29.8, 27.7, 27.7, 26.6, 26.6, 26.1, 23.5, 23.1, 14.4.
【0292】
以下の例は、実施例1の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0293】
実施例2:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル3−(ジメチルアミノ)プロパノエート
【0294】
【化18】
所望の生成物が無色油(120mg、収率69%)として単離された。1H NMR (400MHz, ジクロロメタン-d2) δ: 6.92 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.81-6.84 (m, 2H), 5.32-5.48 (m, 9H), 5.15 (s, 2H), 3.84-4.03 (m, 4H), 2.82 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.61-2.70 (m, 2H), 2.50-2.61 (m, 2H), 2.25 (s, 6H), 2.09 (q, J = 6.9 Hz, 7H), 1.72-1.84 (m, 4H), 1.44-1.56 (m, 4H), 1.26-1.44 (m, 28H), 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 6H). 13C NMR (400MHz, ジクロロメタン-d2) δ: 172.8, 153.5, 151.4, 130.6, 130.6, 128.5, 128.4, 126.2, 116.3, 114.6, 113.0, 69.4, 69.0, 62.0, 55.4, 45.6, 33.6, 32.1, 30.2, 30.2, 30.1, 30.0, 29.9, 29.9, 29.8, 29.8, 27.7, 27.7, 26.6, 26.6, 26.1, 23.1, 14.4.
【0295】
【化19】
【0296】
実施例3の合成:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルオキシ)ベンジル3−(ジメチルアミノ)プロピルカーボネート
【0297】
【化20】
乾燥CDCl(2mL)中中間体1b(150mg、0.235mmol)の溶液にクロロギ酸パラニトロフェニル(61.7mg、0.306mmol)を、続いてピリジン(23.1μL、0.286mmol)を加えた。反応物を50℃で撹拌した。4時間後に反応物を減圧下で濃縮し、2mLのDCMに再溶解した。N,N−ジメチルアミノプロパノール(121mg、1.18mmol)を、続いてDMAP(5.75mg、0.047mmol)を加えた。反応物を室温で撹拌した。18時間後に反応物を2mLの水によりクエンチし、さらなる3×5mLのDCMに抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮し、ISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、MeOH/DCM(0〜3%)により溶出して、141.3mg(78%)の所望の生成物を透明な油として得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.95 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.78-6.83 (m, 2H), 5.29-5.48 (m, 8H), 5.22 (s, 2H), 4.24 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.94 (dt, J = 9.6, 6.6 Hz, 4H), 2.81 (t, J = 6.3 Hz, 4H), 2.38 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.24 (s, 6H), 2.08 (q, J = 6.6 Hz, 8H), 1.87 (五重線, J = 6.9 Hz, 2H), 1.78 (m, 4H), 1.28-1.52 (m, 32H), 0.92 (t, J = 6.6 Hz, 6H).MS(m+1)=766.5、Rt=1.22分(LC方法1)。
【0298】
以下の例は、実施例3の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0299】
実施例4:2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル3−(ジメチルアミノ)プロピルカーボネート

【0300】
【化21】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.95 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.77-6.84 (m, 2H), 5.30-5.48 (m, 8H), 5.22 (s, 2H), 4.24 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.94 (dt, J = 9.1, 6.6 Hz, 4H), 2.81 (t, J = 6.3 Hz, 4H), 2.53 (q, J = 7.1 Hz, 6H), 2.08 (q, J = 6.6 Hz, 8H), 1.71-1.91 (m, 6H), 1.44-1.53 (m, 4H), 1.26-1.44 (m, 28H), 1.03 (t, J = 7.1 Hz, 6H), 0.92 (t, J = 7.1 Hz, 6H).MS(m+1)=794.5、Rt=1.38分(LC方法1)。
【0301】
【化22】
【0302】
実施例5の合成:((2−(((3−(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
中間体5a:2,5−ビス((8−ヒドロキシオクチル)オキシ)ベンズアルデヒド

【0303】
【化23】
DMF(15mL)中2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(1g、7.24mmol)の溶液に8−ブロモオクタン−1−オール(3.03g、14.48mmol)、KCO(5.00g、36.2mmol)およびKI(0.012g、0.072mmol)を加え、80℃で16時間加熱した。反応物を100mlの酢酸エチルおよび100mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×50mlの水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLCクロマトグラフィーにより精製し、10〜90%アセトニトリル:水および0.1%TFAにより溶出して、所望の生成物(550mg、収率19%)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.47 (s, 1H), 7.31 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 9.0, 3.3 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.03 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.94 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.65 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 1.69-1.79 (m, 4H), 1.52-1.65 (m, 4H), 1.43-1.50 (m, 4H), 1.30-1.40 (m, 12H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 189.9, 156.3, 152.9, 124.9, 124.2, 114.3, 110.7, 69.1, 68.6, 63.0, 63.0, 32.7, 32.7, 29.3, 29.1, 26.0, 25.9, 25.6.
【0304】
中間体5b:((2−ホルミル−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0305】
【化24】
DCM(11.5mL)中中間体5a(455mg、1.153mmol)の溶液に室温で塩化デカノイル(484mg、2.54mmol)を加えた後、DIEA(1.01mL、5.77mmol)を加え、16時間撹拌した。反応物を100mlのジクロロメタンおよび100mlの水で希釈した。有機層を分離し、50mlの水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出して、所望の生成物(591mg、収率73%)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 10.47 (s, 1H), 7.31 (d, J = 3.3 Hz, 1H), 7.12 (dd, J = 9.0, 3.3 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 3.99-4.12 (m, 6H), 3.94 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.72-1.95 (m, 4H), 1.11-1.54 (m, 48H), 0.81-0.96 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 189.8, 179.0, 174.1, 156.3, 152.9, 125.0, 124.2, 114.3, 69.1, 68.6, 64.3, 34.4, 31.8, 29.5, 29.4, 29.4, 29.2, 29.2, 28.6, 26.0, 25.9, 25.9, 25.0, 24.7, 22.7, 14.1.
【0306】
中間体5c:((2−(ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0307】
【化25】
テトラヒドロフラン(4.2mL)およびメタノール(4.2mL)中中間体5b(590mg、0.839mmol)の溶液に0℃で水素化ホウ素ナトリウム(31.7mg、0.839mmol)を加え、1時間撹拌した。反応物を100mlの酢酸エチルおよび50mlの水で希釈した。有機層を分離し、50mlの水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出して、所望の生成物(450mg、収率70%)を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.87 (d, J=2.5 Hz, 1H), 6.76-6.79 (m, 2H), 4.66 (s, 2H), 4.06 (t, J=6.8 Hz, 4H), 3.96 (t, J=6.5 Hz, 2H), 3.91 (t, J=6.5 Hz, 2H), 2.30 (t, J=7.5 Hz, 4H), 1.70-1.86 (m, 4H), 1.62 (t, J=7.0 Hz, 8H), 1.41-1.52 (m, 4H), 1.14-1.40 (m, 36H), 0.80-0.95 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.1, 153.0, 150.9, 130.1, 115.3, 113.7, 112.0, 68.5, 68.4, 64.3, 64.3, 62.4, 34.4, 31.8, 29.4, 29.4, 29.3, 29.3, 29.2, 29.1, 28.6, 26.1, 26.0, 25.8, 25.0, 24.7, 22.7, 14.1.
【0308】
実施例5:((2−(((3−(ジメチルアミノ)プロパノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0309】
【化26】
DCM(容積:922μl)中中間体5c(65mg、0.092mmol)、3−(ジメチルアミノ)プロパン酸(16mg、0.138mmol)、EDC.HCl(35mg、0.184mmol)およびDIEA(32.2μl、0.184mmol)の混合物を0℃で16時間撹拌したが、それを室温に加温した。反応物を20mlのジクロロメタンおよび20mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×20mlの水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出して、所望の生成物を無色油(40mg、収率51%)として得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.91 (s, 1H), 6.79 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.91 (q, J = 6.8 Hz, 4H), 2.61-2.73 (m, 2H), 2.50-2.60 (m, 2H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 2.26 (s, 6H), 1.70-1.83 (m, 4H), 1.52-1.69 (m, 8H), 1.42-1.48 (m, 4H), 1.18-1.35 (m, 36H), 0.79-0.95 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 172.3, 152.8, 150.9, 125.4, 116.0, 114.3, 112.5, 68.8, 68.5, 64.3, 61.7, 54.7, 45.2, 34.4, 32.9, 31.8, 29.4, 29.3, 29.3, 29.2, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 26.0, 25.9, 25.9, 25.0, 22.7, 14.1.
【0310】
以下の例は、実施例5の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0311】
実施例6:((2−(((1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0312】
【化27】
所望の生成物が無色油(72mg、収率77%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.87 (s, 1H), 6.78 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.90 (q, J = 6.3 Hz, 4H), 2.85 (d, J = 11.3 Hz, 2H), 2.19-2.44 (m, 8H), 2.03-2.15 (m, 2H), 1.99 (d, J = 11.8 Hz, 2H), 1.81-1.91 (m, 2H), 1.70-1.80 (m, 4H), 1.58-1.66 (m, 8H), 1.40-1.52 (m, 4H), 1.14-1.39 (m, 36H), 0.88 (t, J = 6.5 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.7, 174.0, 152.8, 150.9, 125.5, 115.9, 114.2, 112.4, 68.7, 68.5, 64.3, 61.7, 54.8, 46.2, 34.4, 31.8, 29.7, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 29.1, 28.6, 28.0, 26.0, 25.9, 25.0, 22.6, 14.1.

【0313】
実施例7:((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0314】
【化28】
所望の生成物が無色油(40mg、収率50%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.90 (s, 1H), 6.78 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 5.15 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.91 (q, J = 6.5 Hz, 4H), 2.42 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.28-2.34 (m, 6H), 2.24 (s, 6H), 1.84 (五重線, J = 7.5 Hz, 2H), 1.70-1.80 (m, 4H), 1.53-1.69 (m, 8H), 1.42-1.48 (m, 4H), 1.15-1.40 (m, 36H), 0.79-0.94 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 173.4, 152.8, 150.9, 125.5, 115.9, 114.2, 112.5, 68.8, 68.5, 64.3, 61.6, 58.8, 45.3, 34.4, 32.1, 31.8, 29.4, 29.3, 29.3, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 26.0, 25.9, 25.9, 25.0, 22.9, 22.7, 14.1.

【0315】
実施例8:((2−(((1−エチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0316】
【化29】
所望の生成物が無色油(65mg、収率73%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.87 (s, 1H), 6.78 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.90 (q, J = 6.4 Hz, 4H), 2.92 (d, J = 10.8 Hz, 2H), 2.41 (dt, J = 13.9, 6.8 Hz, 3H), 2.29 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.98 (d, J = 12.0 Hz, 4H), 1.80-1.91 (m, 2H), 1.69-1.80 (m, 4H), 1.53-1.68 (m, 8H), 1.40-1.50 (m, 4H), 1.16-1.39 (m, 36H), 1.10 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.79-0.94 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.8, 174.0, 152.8, 150.8, 125.5, 115.8, 114.1, 112.4, 68.7, 68.5, 64.3, 61.6, 52.5, 34.4, 31.8, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 29.2, 29.1, 28.6, 28.1, 26.0, 26.0, 25.9, 25.8, 25.0, 22.6, 14.1, 11.9.

【0317】
実施例9:((2−(((1−イソプロピルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0318】
【化30】
所望の生成物が無色油(62mg、69%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.87 (s, 1H), 6.78 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.90 (q, J = 6.4 Hz, 4H), 2.88 (d, J = 11.3 Hz, 2H), 2.72-2.77 (m, 1H), 2.20-2.38 (m, 7H), 1.98 (br. s., 2H), 1.84 (br. s., 1H), 1.69-1.79 (m, 5H), 1.54-1.68 (m, 8H), 1.42-1.46 (m, 4H), 1.16-1.39 (m, 36H), 1.06 (d, J = 5.3 Hz, 6H), 0.81-0.93 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 152.8, 150.8, 125.5, 115.9, 114.1, 112.4, 68.7, 68.5, 64.3, 61.6, 48.0, 34.4, 31.8, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 26.0, 25.9, 25.9, 25.0, 22.6, 18.2, 14.1.

【0319】
実施例10:((2−(((4−(ピロリジン−1−イル)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0320】
【化31】
所望の生成物が無色油(50mg、56%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.86 (s, 1H), 6.79 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.05 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.85-3.96 (m, 4H), 3.76-3.84 (m, 2H), 3.10-3.18 (m, 2H), 2.74-2.84 (m, 2H), 2.48 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.29 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.94-2.19 (m, 6H), 1.74 (五重線, J = 6.8 Hz, 4H), 1.61 (d, J = 5.0 Hz, 8H), 1.42 (d, J = 7.3 Hz, 4H), 1.15-1.39 (m, 36H), 0.76-0.94 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.2, 174.2, 172.1, 152.8, 150.9, 124.8, 116.2, 114.6, 112.6, 68.8, 68.5, 64.3, 62.2, 54.4, 53.6, 34.4, 31.8, 30.5, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 29.1, 28.5, 25.9, 25.8, 25.8, 25.0, 23.2, 22.6, 20.7, 14.1.

【0321】
実施例11:((2−((2−(1−メチルピペリジン−4−イル)アセトキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0322】
【化32】
所望の生成物が無色油(62mg、70%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.88 (s, 1H), 6.78 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 5.13 (s, 2H), 4.06 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 3.90 (q, J = 6.5 Hz, 4H), 2.87 (d, J = 11.3 Hz, 2H), 2.22-2.35 (m, 8H), 2.00 (t, J = 11.4 Hz, 2H), 1.69-1.88 (m, 6H), 1.53-1.68 (m, 8H), 1.44 (d, J = 4.3 Hz, 4H), 1.18-1.41 (m, 40H), 0.80-0.95 (m, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 172.5, 152.8, 150.9, 125.3, 116.0, 114.4, 112.4, 68.7, 68.5, 64.3, 61.6, 55.5, 46.2, 41.0, 34.4, 32.2, 31.8, 29.4, 29.3, 29.2, 29.2, 29.2, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 25.9, 25.9, 25.0, 22.6, 14.1.

【0323】
【化33】
【0324】
実施例12の合成:((2−((((3−(ジメチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0325】
【化34】
DCM(0.5mL)中中間体5c(83mg、0.118mmol)の溶液にクロロギ酸4−ニトロフェニル(35.6mg、0.177mmol)を、続いてピリジン(38.1μl、0.471mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮した。固体をDCM(0.5mL)に溶解し、3−(ジメチルアミノ)プロパン−1−オール(36.4mg、0.353mmol)を、続いてDIEA(123μl、0.706mmol)およびDMAP(1.438mg、0.012mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応物を20mlのジクロロメタンおよび20mlの水で希釈した。有機層を分離し、2×20mlの水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、10〜90%酢酸エチル:ヘプタンにより溶出したが、不純な生成物が単離された。生成物を超臨界流体クロマトグラフィー精製により再精製し、メタノールおよびCOにより溶出して、所望の生成物を無色油(30mg、収率29%)として得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.93 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.75-6.86 (m, 2H), 5.20 (s, 2H), 4.23 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.83-3.97 (m, 4H), 2.50 (br. s., 2H), 2.33 (s, 6H), 2.30 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.94 (五重線, J = 6.7 Hz, 2H), 1.69-1.84 (m, 4H), 1.53-1.69 (m, 8H), 1.40-1.52 (m, 4H), 1.15-1.40 (m, 36H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 155.1, 152.8, 150.9, 124.6, 116.0, 114.8, 112.5, 68.7, 68.5, 66.1, 65.0, 64.3, 55.9, 45.0, 34.4, 31.8, 29.4, 29.3, 29.3, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 25.9, 25.0, 22.7, 14.1.
【0326】
以下の例は、実施例12の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0327】
実施例13:((2−((((3−(ジエチルアミノ)プロポキシ)カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0328】
【化35】
所望の生成物が無色油(35mg、27%)として単離された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.93 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.75-6.84 (m, 2H), 5.20 (s, 2H), 4.22 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.06 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 3.83-3.96 (m, 4H), 2.61 (br. s., 6H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.83-2.03 (m, 2H), 1.76 (dq, J = 13.3, 6.5 Hz, 4H), 1.52-1.68 (m, 8H), 1.40-1.51 (m, 4H), 1.19-1.40 (m, 38H), 1.0-1.12 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 174.0, 155.2, 152.8, 150.9, 124.7, 116.0, 114.8, 112.5, 68.8, 68.5, 65.0, 64.3, 49.1, 46.8, 34.4, 31.8, 29.4, 29.3, 29.3, 29.2, 29.1, 28.6, 26.0, 25.9, 25.0, 22.7, 14.1.

【0329】
【化36】
【0330】
実施例14の合成:3−(ジメチルアミノ)プロピル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカーボネート
中間体14a:2,5−ジメトキシ−4−メチルベンズアルデヒド
【0331】
【化37】
オキシ塩化リン(12.5mL)を10mL DMF中2,5−ジメトキシトルエン(5g、3.3mmol)に徐々に加えた。反応物を室温で4時間撹拌し、次いで80℃に4時間撹拌した。次いで反応物を氷水中に注加し、濾過した。濾液を収集し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、5.1g(85.9%)の所望の生成物を浅黄色固体として得た。TLC:Rf=0.4(EtOAc:ヘキサン、1:9)、UV活性
【0332】
中間体14b:2,5−ジヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド
【0333】
【化38】
丸底フラスコ中で中間体14a(1.2g、6.6mmol)を8mLのDCMに溶解した。溶液を−78℃に冷却し、DCM中1M三臭化ホウ素(33.3mL、33.3mmol)を加え、同じ温度で8時間撹拌した。次いで反応混合物を5mLの水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、1.0g(99%)の所望の物質を固体として得た。TLC:Rf=0.3(EtOAc:ヘキサン、1:90)、UV活性
【0334】
中間体14c:4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンズアルデヒド
【0335】
【化39】
中間体14cは、中間体14bから中間体1aの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:Rf=0.8(EtOAc:ヘキサン、2:8)、UV活性
【0336】
中間体14d:(4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)フェニル)メタノール
【0337】
【化40】
丸底フラスコ中で中間体14c(2.8g、4.3mmol)を25mLのメタノールに溶解した。水素化ホウ素ナトリウム(328mg、8.6mmol)を室温で少しずつ加え、撹拌した。1時間後に反応物を10mLの水でクエンチし、酢酸エチル(3×)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗残留物をEtOAc/ヘキサン(30%)を溶出液として用いてシリカゲルにより精製して、2.3g(82.1%)の所望の生成物を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.76 (s, 1H), 6.69 (s, 1H), 5.30-5.39 (m, 8H), 4.63 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 3.95 (dd, J = 6.4, 6.3 Hz, 2H), 3.90 (dd, J = 6.4, 6.3 Hz, 2H), 2.76 (dd, J = 6.4, 6.4 Hz, 2H), 2.21 (s, 3H), 2.08-2.03 (m, 8H), 1.80-1.74 (m, 4H), 1.45-1.25 (m, 34H), 0.88 (t, J = 6.4, 6.4 Hz, 6H).
【0338】
以下の例は、中間体14dから実施例3の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0339】
実施例14:3−(ジメチルアミノ)プロピル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジルカーボネート
【0340】
【化41】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.85 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 5.39 (tq, J = 11.0, 5.5, 4.4 Hz, 8H), 5.20 (s, 2H), 4.23 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.93 (td, J = 6.4, 4.7 Hz, 4H), 2.80 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.28 (br. s, 6H), 2.23 (s, 3H), 2.15-2.02 (m, 8H), 1.90 (d, J = 4.1 Hz, 2H), 1.78 (ddt, J = 11.2, 6.1, 2.9 Hz, 4H), 1.53-1.43 (m, 4H), 1.43-1.21 (m, 30H), 0.99-0.87 (m, 6H).MS(m+1)=780.8、Rt=1.38分(LC方法2)
【0341】
実施例15:4−(ジメチルアミノ)ブチル4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルオキシ)ベンジルカーボネート
【0342】
【化42】
1H NMR (400MHz,クロロホルム-d) δ: 6.83 (s, 1H), 6.70 (s, 1H), 5.48-5.26 (m, 8H), 5.18 (s, 2H), 4.17 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.91 (dt, J = 4.3, 6.4 Hz, 4H), 2.78 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.28 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.21 (s, 9H), 2.06 (q, J = 6.7 Hz, 8H), 1.83-1.65 (m, 6H), 1.55 (s, 2H), 1.45 (d, J = 5.5 Hz, 4H), 1.41-1.25 (m, 28H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0343】
実施例16:4−メチル−2,5−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート
【0344】
【化43】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.81 (s, 1H), 6.72 (s, 1H), 5.47-5.28 (m, 8H), 5.15 (s, 2H), 3.93 (q, J = 6.3 Hz, 4H), 2.80 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.53 (br. s, 6H), 2.44 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 2.23 (s, 3H), 2.07 (q, J = 7.0 Hz, 8H), 1.98 (br. s, 2H), 1.77 (td, J = 8.8, 4.4 Hz, 4H), 1.47 (t, J = 6.9 Hz, 4H), 1.43-1.20 (m, 28H), 0.91 (t, J = 6.7 Hz, 6H).MS(m+1)=765.0、Rt=1.38分(LC方法3)
【0345】
実施例17の合成:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2,2’−(2−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイルオキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
中間体17a:(9Z,12Z)−3−ヒドロキシプロピルオクタデカ−9,12−ジエノエート
【0346】
【化44】
丸底フラスコ中でリノール酸(3.0g、10.7mmol)をグリコール(15mL)に溶解した。HOBT(2.5、16.1mmol)およびEDC(3.1g、16.1mmol)を加えた後、TEA(4.5mL、32.1mmol)およびDMAP(653mg、5.4mmol)を加え、反応物を室温で撹拌した。18時間後に反応物をDCMおよび水で希釈した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、所望の生成物2.46g(67.8%)を無色の油として得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 5.41-5.23 (m, 4H), 4.18 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.64 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 2.72 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.25 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.00 (q, J = 6.7 Hz, 4H), 1.88-1.75 (m, 2H), 1.58 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.39-1.15 (m, 14H), 0.84 (td, J = 6.9, 3.5 Hz, 3H).
【0347】
中間体17b:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2,2’−(5−ホルミル−1,3−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
【0348】
【化45】
丸底フラスコ中で中間体17a(1.0g、3.08mmol)、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(213mg、1.54mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.849g、3.24mmol)を12.5mLのTHFに溶解した。DIAD(0.849mL、3.24mmol)を次に加えた。反応物を室温で3日間撹拌し、減圧下でセライト上で直接濃縮した後、EtOAc/ヘプタン(10〜20%)を溶出液として用いてISCO精製システムにおけるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、71.4mg(3.1%)の所望の生成物を浅黄色油として得た。
【0349】
中間体17c:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−2,2’−(2−(ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
【0350】
【化46】
丸底フラスコ中で中間体17b(71.4mg、0.095mmol)を2mLのエタノールに窒素下で溶解した。水素化ホウ素ナトリウム(5.39mg、0.143mmol)を一度に加え、室温で撹拌した。30分後に反応物を酢酸によりクエンチし、水で希釈し、DCM(3×)に抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、57.1mg(80%)の所望の生成物を透明な油として得た。
【0351】
実施例17:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−(2−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイルオキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(エタン−2,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
【0352】
【化47】
反応バイアル中で中間体17cをDCMに溶解した。HATUおよびジメチルアミンを加えた後、TEAおよびDMAPを加えた。反応物を室温で撹拌した。18時間後に反応物をDCMおよび水で希釈した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗残留物を分取HPLC(TFAモディファイア)により精製した。次いで純度増強生成物をMeOH/DCM(0〜10%)により溶離するISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。回収された物質を、MeOH/DCM(0〜3%次に〜8%)により溶離するISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって再び精製して、透明な油として単離された11.6mg(17.6%)の所望の生成物を得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.94 (s, 1H), 6.83 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 5.31-5.45 (m, 8H), 5.17 (s, 2H), 4.40 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 4.09-4.23 (m, 4H), 2.79 (t, J = 6.1 Hz, 4H), 2.61 (s, 2H), 2.44-2.51 (m, 2H), 2.30-2.39 (m, 4H), 2.18 (s, 6H), 2.01-2.12 (m, 8H), 1.92 (五重線, J = 7.2 Hz, 2H), 1.57-1.73 (m, 6H), 1.23-1.45 (m, 26H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 6H).MS(m+1)=866.5、Rt=1.22分(LC方法1)
【0353】
実施例18の合成:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−(2−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイルオキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(タン−,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
中間体18a:(9Z,12Z)−4−ヒドロキシブチルヘキサデカ−9,12−ジエノエート
【0354】
【化48】
丸底フラスコ中でリノール酸(5.0g、17.83mmol)、ブタンジオール(64.3g、713mmol)、EDC(3.42g、17.83mmol)、DIPEA(3.11ml、17.83mmol)およびDMAP(0.163g、1.337mmol)の混合物を40℃で終夜撹拌した(ブタンジオールを液体として維持するために必要な高温度)。18時間後に反応物を室温に冷却し、DCMおよび水で希釈する。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗混合物をセライト上に加えて乾燥し、EtOAc/ヘプタン(20%〜50%)により溶離するISCO精製システムによるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、所望の物質3.37g(58.3%)を透明な油として得た。
【0355】
中間体18b:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−ホルミル−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ブタン−4,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート)
【0356】
【化49】
丸底フラスコ中で2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(100mg、0.724mmol)、中間体18a(517mg、1.593mmol)およびPPh(399mg、1.520mmol)を10.5mLのTHFに溶解した。DIAD(0.296mL、1.520mmol)を加え、反応物を室温で撹拌した。18時間後に粗反応混合物を、EtOAc/ヘプタン(0〜40%)により溶離するISCO精製システムにおけるシリカゲルクロマトグラフィーによる精製のために減圧下でセライト上で濃縮して、86.4mg(14.8%)の所望の生成物を黄色の油として得た。
【0357】
中間体18c:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−((2−(ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ブタン−4,1−ジイル)ビス(オクタデカ−9,12−ジエノエート)
【0358】
【化50】
反応バイアル中で中間体18b(86.4mg、0.107mmol)を0.5mLのMeOHに溶解した。水素化ホウ素ナトリウム(4.86mg、0.128mmol)を加え、反応物を室温で撹拌した。1時間後に酢酸の添加により反応物をクエンチし、減圧下で濃縮した。粗物質をDCMに再溶解し、次いで濾過し、減圧下で濃縮して、85mg(98%)の所望の生成物を無色の油として得た。
【0359】
以下の例は、中間体18cを用いて実施例17の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0360】
実施例18:(9Z,9’Z,12Z,12’Z)−(2−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイルオキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)ビス(タン−,1−ジイル)ジオクタデカ−9,12−ジエノエート
【0361】
【化51】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 6.88 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 5.46-5.25 (m, 8H), 5.14 (s, 2H), 4.13 (h, J = 2.4 Hz, 4H), 3.94 (dt, J = 9.2, 5.3 Hz, 4H), 2.77 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.44 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 2.35 (s, 6H), 2.32-2.25 (m, 4H), 2.04 (q, J = 6.9 Hz, 8H), 1.91 (s, 2H), 1.81 (dq, J = 8.3, 5.0, 4.1 Hz, 8H), 1.67-1.56 (m, 4H), 1.40-1.23 (m, 30H), 0.89 (t, J = 6.7 Hz, 6H).MS(m+1)=922.9、Rt=1.29分(LC方法3)。
【0362】
実施例19の合成:2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート
中間体19a:2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)ベンズアルデヒド
【0363】
【化52】
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒドを出発物質として用いて中間体1aと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:Rf=0.8(EtOAc:ヘキサン、2:8)、UV活性。
【0364】
中間体19b:(2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ)フェニル)メタノール
【0365】
【化53】
中間体19aを出発物質として用いて中間体1bと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:Rf=0.5(EtOAc:ヘキサン、2:8)、UV活性。
【0366】
実施例19:2,4−ビス((9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエニルオキシ)ベンジル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート
【0367】
【化54】
丸底フラスコ中で中間体19b(2.2g、3.5mmol)を30mLのDCMに溶解した。EDCl.HCl(1.98g、10.38mmol)を1滴ずつ加えた後、4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(1.74g、10.4mmol)、DIPEA(2.7g、20.75mmol)およびDMAP(84mg、0.70mmol)をその順序で加えた。反応物を室温で14時間撹拌した。次いで反応物をEtOAcに抽出した。有機層を減圧下で濃縮し、粗残留物をMeOH/DCM(5%)により勾配として溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物0.90g(34.3%)を黄色油として得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ: 7.20 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.40-6.50 (m, 2H), 5.29-5.47 (m, 8H), 5.12 (s, 2H), 3.96 (td, J = 6.4, 2.8 Hz, 4H), 2.80 (t, J = 6.3 Hz, 4H), 2.32-2.45 (m, 4H), 2.20-2.31 (m, 6H), 2.07 (q, J = 6.6 Hz, 8H), 1.68-1.92 (m, 6H), 1.43-1.57 (m, 4H), 1.19-1.43 (m, 28H), 0.91 (t, J = 7.1 Hz, 6H).MS(m+1)=750.5、Rt=1.19分(LC方法1)。
【0368】
実施例20の合成:((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
中間体20a:3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)プロピルメタンスルホネート
【0369】
【化55】
0℃の30mlのDCM中3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)プロパン−1−オール(2g、10.51mmol)およびトリエチルアミン(2.2ml、15.77mmol)の溶液に塩化メタンスルホニル(1ml、12.62mmol)を1滴ずつ徐々に加えた。反応混合物を30℃で30分間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を50mlの水によりクエンチし、DCM(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、2.7g(収率96%)の淡褐色の液体を得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.5。
【0370】
中間体20b:2,5−ビス(3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)プロポキシ)ベンズアルデヒド
【0371】
【化56】
20mlのDMF中KCO(1.67g、12.08mmol)の懸濁液にジヒドロキシベンズアルデヒド(556mg、4.02mmol)および中間体20a(2.7g、10.07mmol)を、続いてヨウ化テトラブチルアンモニウム(200mg、触媒)を加えた。反応混合物を、100℃に3時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を50mlの水によりクエンチし、(3×50ml)のEtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、淡褐色の液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル(230〜400メッシュ))により精製した。生成物をヘキサン中5%EtOAcで溶出して、1.6g(収率82%)の淡褐色の液体を得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.9。
【0372】
中間体20c:2,5−ビス(3−ヒドロキシプロポキシ)ベンズアルデヒド
【0373】
【化57】
0℃の5ml乾燥THF中中間体20b(500mg、1.03mmol)の溶液にTHF中1M TBAF(4.1ml、4.14mmol)を加え、同じ温度で1時間撹拌し、次いで30℃で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を20mlの水によりクエンチし、EtOAc(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、250mgの浅黄色の液体を得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.3。
【0374】
中間体20d:((2−ホルミル−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0375】
【化58】
10mlのDMF中中間体20c(250mg、0.98mmol)および4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタン酸(746mg、2.16mmol)の溶液にDIPEA(0.7ml、3.92mmol)、DMAP(60mg、0.49mmol)を、続いてHATU(930mg、2.45mmol)を加え、30℃で24時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を50mlの水によりクエンチし、EtOAc(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、浅黄色の液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をヘキサン中20%EtOAcで溶出して、500mg(収率56%)の浅黄色の液体を得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.4。
【0376】
中間体20e:((2−(ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0377】
【化59】
5.5mlのメタノールおよび2mlのTHF中中間体20d(500mg、0.551mmol)の溶液に0℃で水素化ホウ素ナトリウム(13mg、0.341mmol)を加え、5分間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を10mlの水によりクエンチし、EtOAc(3×30ml)で抽出した。合わせた有機層を30mlのブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、所望の生成物450mg(収率89%)を無色液体として得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.3。
【0378】
実施例20:((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(プロパン−3,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0379】
【化60】
DCM(7ml)中中間体20e(190mg、0.20mmol)、4−ジメチルアミノブタン酸塩酸塩(70mg、0.41mmol)およびDIPEA(0.12ml、0.83mmol)の溶液にEDC.HCl(80mg、0.41mmol)を、続いてDMAP(51mg、0.41mmol)を加えた。反応物を30℃で20時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を20mlの水によりクエンチし、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、粗固体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中4%メタノールで溶出して、140mg(収率65%)を黄色の粘性液体として得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 6.89 (s, 1H), 6.77 (s, 2H), 5.13 (s, 2H), 4.48 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 4.28 (t, J = 6.4Hz, 4H), 4.00 (q, J = 6.0 Hz, 4H), 3.57 (q, J = 6.8 Hz, 4H), 3.40 (q, J = 6.4 Hz, 4H), 2.43-1.81 (m, 26H), 1.56-1.49 (m, 12H), 1.49-1.26 (m, 34H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 12H) ppm.MS(m+1)=1022.5、Rt=1.17分(LC方法4)。
【0380】
実施例21の合成:((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
中間体21a:2,5−ビス((5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチル)オキシ)ベンズアルデヒド
【0381】
【化61】
2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドおよび5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチルメタンスルホネートから中間体20bの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.9。
【0382】
中間体21b:2,5−ビス((5−ヒドロキシペンチル)オキシ)ベンズアルデヒド
【0383】
【化62】
2,5−ビス((5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチル)オキシ)ベンズアルデヒド(中間体21a)から中間体20cの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.1。
【0384】
中間体21c:((2−ホルミル−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0385】
【化63】
2,5−ビス((5−ヒドロキシペンチル)オキシ)ベンズアルデヒド(中間体21b)および4−ジメチルアミノブタン酸から中間体20dの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.4。
【0386】
中間体21d:((2−(ヒドロキシメチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0387】
【化64】
中間体21cから中間体20eの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.3。
【0388】
実施例21:((2−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0389】
【化65】
DCM(10ml)中中間体21d、4−ジメチルアミノブタン酸塩酸塩(104mg、0.62mmol)およびDIPEA(0.2ml、1.24mmol)の溶液にEDC.HCl(119mg、0.62mmol)を、続いてDMAP(76mg、0.62mmol)を加えた。反応物を30℃で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を20mlの水によりクエンチし、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、粗固体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中4%メタノールで溶出して、180mg(収率54%)の浅黄色の粘性液体を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 6.89 (s, 1H), 6.77 (s, 2H), 5.13 (s, 2H), 4.49 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 4.09 (t, J = 6 Hz, 4H), 3.90 (q, J = 4Hz, 4H), 3.57 (q, J = 6.8 Hz, 4H), 3.41 (q, J = 6.4 Hz, 4H), 2.40-2.22 (m, 8H), 2.00 (s, 6H), 1.95-1.66 (m, 30H), 1.50-1.27 (m, 37H), 0.87 (t, J = 6.4 Hz, 11H) ppm.MS(m+1)=1078.6、Rt=1.20分(LC方法4)。
【0390】
実施例22の合成:((2−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
中間体22a:メチル4−(ジエチルアミノ)ブタノエート
【0391】
【化66】
500ml封管中で、メチル4−ブロモブタノエート(30.0g、165.7mmol)を乾燥THF(200ml)中に取り込んだ。ジエチルアミン(86ml、828.7mmol)を加えた。得られた混合物を70℃で16時間撹拌し、TLCによりモニターした。次いで反応混合物を水(200ml)で希釈し、EtOAc(2×500ml)で抽出した。合わせた有機層をブライン(500ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、25g(収率87%)の所望の生成物を淡褐色液体として得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(3:7)、Rf=0.2、ヨウ素およびPMA染色活性。
【0392】
中間体22b:2:4−(ジメチルアミノ)ブタン酸
【0393】
【化67】
丸底フラスコ中で、中間体22a(25.0g、144.4mmol)および6N HCl(200ml)の混合物を加熱し、7時間還流した。反応をTLCによりモニターした。次いで反応混合物を蒸発し、乾燥して、26g(収率92%)の所望の生成物を白色固体として得た。TLC:メタノール:ジクロロメタン(1:9)、Rf=0.13、ヨウ素およびPMA染色活性。
【0394】
実施例22:((2−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0395】
【化68】
丸底フラスコ中で、中間体21d(190mg、0.196mmol)、中間体22b(0.581g、4.75mmol)およびDIPEA(0.15ml、0.784mmol)をジクロロメタン(10ml)中に取り込んだ。EDC(75mg、0.393mmol)を一度に加えた後、DMAP(48mg、0.393mmol)を加えた。反応物を周囲温度で16時間撹拌し、TLCによりモニターした。反応混合物を20mlの水によりクエンチし、DCM(3×50ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、粗固体を得た。生成物をメタノール/ジクロロメタン(4%)を溶離液として用いてフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製して、140mg(収率64%)の所望の生成物を浅黄色の粘性液体として得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 0.82 (t, J = 7.10 Hz, 12H) 0.85-1.00 (m, 6H) 1.09-1.32 (m, 40H) 1.37-1.55 (m, 12H) 1.58-1.67 (m, 4H) 1.67-1.78 (m, 6H) 1.79-1.93 (m, 4H) 2.24-2.52 (m, 12H) 3.33 (dt, J = 9.26, 6.68 Hz, 4H) 3.50 (dt, J = 9.05,6.72 Hz, 4H) 3.78-3.91 (m, 4H) 3.95-4.07 (m, 4H) 4.42 (t, J =5.62 Hz, 2H) 5.07 (s, 2H) 6.70 (d, J = 1.71 Hz, 2H) 6.82 (s, 1H).MS(m+1)=1107.9、Rt=2.98分(LC方法5)。
【0396】
実施例23:((2−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,4−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(ペンタン−5,1−ジイル)ビス(4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノエート)
【0397】
【化69】
DCM(10mL)中1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボン酸(120mg、0.76mmol)およびNEt(0.3mL、2.03mmol)の溶液に塩化2,4,6−トリクロロベンゾイル(185mg、0.76mmol)を30℃で1滴ずつ徐々に加え、4時間撹拌した。その後、DCM(5mL)中中間体21d(490mg、0.51mmol)およびDMAP(124mg、1.01mmol)を加え、反応物を20時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物をHO(20mL)でクエンチし、DCM(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発乾固して、粗固体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル(230〜400メッシュ))により精製した。生成物をDCM中4%メタノールで溶出して、430mg(収率77%)の表題化合物を浅黄色の粘性液体として得た。1H NMR (400MHz, CD2Cl2): δ = 6.86 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.75-6.83 (m, 2H), 5.12 (s, 2H), 4.45 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 4.07 (t, J = 6.7 Hz, 4H), 3.87-3.96 (m, 4H), 3.54 (dt, J = 9.3, 6.7 Hz, 4H), 3.38 (dt, J = 9.3, 6.7 Hz, 4H), 2.59 (br s, 2H), 2.35 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.03-2.29 (m, 7H), 1.83-1.92 (m, 4H), 1.73-1.83 (m, 4H), 1.64-1.74 (m, 4H), 1.44-1.60 (m, 13H), 1.18-1.38 (m, 41H), 1.21 (s, 3H), 0.84-0.93 (m, 12H).MS(m+1)=1105.2、Rt=1.34分(LC方法6)。
【0398】
実施例24の合成:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−(((4(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
中間体24a:8−(2−ホルミル−4−ヒドロキシフェノキシ)オクチルデカノエート
【0399】
【化70】
2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドおよびデカン酸8−((メチルスルホニル)オキシ)オクチルから中間体20bの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.9。
【0400】
中間体24b:8−(4−((5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−ホルミルフェノキシ)オクチルデカノエート
【0401】
【化71】
中間体24aおよび5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチルメタンスルホネートから中間体20bの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.6。
【0402】
中間体24c:8−(2−ホルミル−4−((5−ヒドロキシペンチル)オキシ)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0403】
【化72】
中間体24bから中間体20cの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(8:2):Rf=0.2。
【0404】
中間体24d:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−ホルミルフェノキシ)オクチルデカノエート
【0405】
【化73】
中間体24cから中間体20dの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:メタノール:DCM(1:9):Rf=0.5。
【0406】
中間体24e:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−(ヒドロキシメチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0407】
【化74】
中間体24dから中間体20eの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.4。
【0408】
実施例24:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−2−(((4(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0409】
【化75】
DCM(30ml)中中間体24e(1.2g、1.43mmol)の溶液にEDC.HCl(550mg、2.87mmol)、DIPEA(0.75ml、4.31mmol)、DMAP(175mg、1.43mmol)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸.HCl(361mg、2.15mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気中で25℃で18時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を水(200ml)で希釈し、DCM(2×150ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、淡緑色液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中5%メタノールで溶出して、550mg(収率42%)の淡緑色液体を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 6.88 (s, 1H), 6.77 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.49 (t, J = 4 Hz, 1H), 4.11-4.04 (m, 4H), 3.92-3.89 (m, 4H), 3.57 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.41 (q, J = 6.4 Hz, 2H), 2.40 (q, J = 8 Hz, 4H), 2.30 (m, 4H), 2.17 (s, 6H), 1.95-1.41 (m, 24H), 1.48-1.26 (m, 37H), 0.87 (t, J = 6.4Hz, 8H) ppm.MS(m+1)=948.4、Rt=1.10分(LC方法4)。
【0410】
実施例25の合成:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
中間体25a:2−((5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチル)オキシ)−5−ヒドロキシベンズアルデヒド
【0411】
【化76】
2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドおよび5−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)ペンチルメタンスルホネートから中間体20bの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。
TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.9。
【0412】
中間体25b:8−(3−ホルミル−4−((5−ヒドロキシペンチル)オキシ)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0413】
【化77】
DMF(40ml)中中間体25aの溶液に8−((メチルスルホニル)オキシ)オクチルデカノエート(3.3g、8.86mmol)およびKCO(1.6g、11.81mmol)を、続いてTBAI(500mg、0.74mmol)を加え、窒素雰囲気中で100℃で3時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を水(100ml)で希釈し、EtOAc(2×150ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(200ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、淡褐色液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル100〜200メッシュ)により精製した。生成物をヘキサン中20%EtOAcで溶出して、1.2g(収率41%)の灰色がかった白色固体を得た。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.6。
【0414】
中間体25c:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−ホルミルフェノキシ)オクチルデカノエート
【0415】
【化78】
DCM(20ml)中中間体25b(300mg、0.59mmol)の溶液に4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタン酸(305mg、0.88mmol)、EDC.HCl(227mg、1.18mmol)、DIPEA(0.31ml、1.77mmol)を加えた後、DMAP(72mg、0.59mmol)を加え、窒素雰囲気中で25℃で18時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を水(100ml)で希釈し、DCM(2×50ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、淡緑色液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中5%メタノールで溶出して、300mg(収率61%)の淡緑色液体を得た。TLC:MeOH:DCM(1:9):Rf=0.5。
【0416】
中間体25d:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−(ヒドロキシメチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0417】
【化79】
中間体25cから中間体20eの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.4。
【0418】
実施例25:8−(4−((5−((4,4−ビス(オクチルオキシ)ブタノイル)オキシ)ペンチル)オキシ)−3−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)フェノキシ)オクチルデカノエート
【0419】
【化80】
DCM(10ml)中中間体25d(0.3g、0.359mmol)の溶液にEDC.HCl(137.7mg、0.718mmol)、DIPEA(0.18ml、1.07mmol)、DMAP(43.8mg、0.359mmol)およびN,N−ジメチルアミノ酪酸.HCl(90.3mg、0.538mmol)を加えた。混合物を窒素雰囲気中で25℃で18時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を水(200ml)で希釈し、DCM(2×150ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、淡緑色液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中5%メタノールで溶出して、150mg(収率44%)の淡緑色液体を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ 6.89 (s, 1H), 6.77 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.48 (t, J = 4 Hz, 1H), 4.10-4.04 (m, 4H), 3.94-3.87 (m, 4H), 3.55 (q, J = 6.4 Hz, 2H), 3.41 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 2.40 (q, J = 7.6 Hz, 4H), 2.29 (m, 4H), 2.21 (s, 6H), 1.95-1.43 (m, 24H), 1.49-1.26 (m, 37H), 0.86 (t, J = 6.4Hz, 8H) ppm.MS(m+1)=948.4、Rt=1.09分(LC方法4)。
【0420】
実施例26の合成:((4−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
中間体26a:デカン酸8−ヒドロキシオクチル
【0421】
【化81】
中間体26aは、カプリン酸および1,8−オクタンジオールから中間体17aの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(4:6):Rf=0.6。
【0422】
中間体26b:8−((メチルスルホニル)オキシ)オクチルデカノエート
【0423】
【化82】
中間体26bは、中間体26aから中間体20aの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.5。
【0424】
中間体26c:((4−ホルミル−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0425】
【化83】
中間体26cは、中間体26bから中間体20bの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.6。
【0426】
中間体26d:((4−(ヒドロキシメチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0427】
【化84】
中間体26dは、中間体26cを用いて中間体20eの合成に用いたのと同様の方法を用いて調製することができる。TLC:EtOAc:ヘキサン(2:8):Rf=0.4。
【0428】
実施例26:((4−(((1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0429】
【化85】
DCM(15ml)中1,4−ジメチルピペリジン−4−カルボン酸(167mg、1.06mmol)の冷溶液にトリエチルアミン(0.40ml、2.83mmol)を、続いて塩化2,4,6−トリフルオロベンゾイル(0.17ml、1.06mmol)を加え、窒素雰囲気中で25℃で2時間撹拌した。その後、DCM(5ml)中中間体26d(500mg、0.70mmol)を加え、得られた反応混合物を25℃でさらに2時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニターした。反応混合物を水(100ml)で希釈し、DCM(2×50ml)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮して、淡緑色液体を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル230〜400メッシュ)により精製した。生成物をDCM中5%メタノールで溶出して、510mg(収率85%)の淡緑色液体を得た。1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 7.17 (d, J =8.4 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 5.07 (s, 2H), 4.03 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 3.91 (t, J = 6Hz, 4H), 2.62 (bs, 2H), 2.282-2.231 (m, 7H), 2.18-2.06 (m, 4H), 1.78-1.11 (m, 57H), 0.84 (t, J = 6.8 Hz, 6H) ppm.MS(m+1)=844.3、Rt=1.02分(LC方法4)。
【0430】
実施例27および実施例28は、適切なカルボン酸カップリングパートナーを用いて実施例26の合成に用いたのと同様のカップリング法を用いて調製することができる。
【0431】
実施例27:((4−(((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0432】
【化86】
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 7.21 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.41-6.47 (m, 2H), 5.10 (s, 2H), 4.07 (td, J = 6.7, 0.9 Hz, 4H), 3.95 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 2.36 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.30 (t, J = 7.6 Hz, 6H), 2.22 (s, 6H), 1.73-1.86 (m, 6H), 1.58-1.69 (m, 8H), 1.41-1.51 (m, 4H), 1.33-1.41 (m, 12H), 1.19-1.33 (m, 24H), 0.85-0.92 (m, 6H).MS(m+1)=818.6、Rt=1.02分(LC方法6)。
【0433】
実施例28:((4−(((4−(ジエチルアミノ)ブタノイル)オキシ)メチル)−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(オクタン−8,1−ジイル)ビス(デカノエート)
【0434】
【化87】
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ = 7.17-7.24 (m, 1H), 6.40-6.47 (m, 2H), 5.10 (s, 2H), 4.07 (td, J = 6.7, 1.2 Hz, 4H), 3.94 (td, J = 6.5, 1.1 Hz, 4H), 2.33-2.87 (br s, 6H), 2.37 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 1.71-1.93 (m, 6H), 1.55-1.70 (m, 8H), 1.41-1.52 (m, 4H), 1.33-1.41 (m, 12H), 1.19-1.33 (m, 24H), 0.96-1.19 (br s, 6H), 0.83-0.93 (m, 6H).MS(m+1)=846.6、Rt=1.03分(LC方法6)。
【0435】
mRNA’s
mRNA転写プロコールの簡単な説明
次の機能要素、コンセンサスT7バクテリオファージDNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター、5’非翻訳領域(UTR)、コザック配列、および読み取り枠、3’UTR、ならびに120ヌクレオチド長ポリアデノシン(ポリA120)尾部からなるmRNA転写カセットを含む環状プラスミドDNA鋳型を構築する。該プラスミドDNA鋳型は、大腸菌(E. coli)において増加し、単離され、ポリ120尾部の3’の直接の制限酵素消化により線状化する。プラスミドDNAをT7 RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチド三リン酸、RNアーゼインヒビター、ピロホスファターゼ酵素、ジチオトレイトール、スペルミジンおよび酵素反応緩衝液と混ぜ合わせ、37℃で1時間インキュベートする。RNアーゼ I酵素を加えて、プラスミドDNA鋳型を消化し、37℃で0.5時間インキュベートする。塩化リチウムによる連続沈殿によりmRNAを単離し、70%エタノールでペレットを洗浄し、mRNAペレットを水に再懸濁し、イソプロパノールおよび酢酸ナトリウムで再沈殿させ、ペレットを再び70%エタノールで洗浄する。最終mRNAペレットを水に再懸濁する。
【0436】
【表2】
【0437】
TEV−hLeptin−GAopt−2xhBG−120A(配列番号
配列機能要素:
タバコEtchウイルス(TEV)5’UTR:14〜154
最適コザック配列:155〜163
GeneArtにより最適化されたタンパク質受託番号NP_000221、配列コドンのアミノ酸1〜167をコードするヒトレプチン:164〜664
2ストップコドン:665〜670
ヒトベータ−グロビン3’UTRの2コピー:689〜954
120ヌクレオチドポリA尾部:961〜1080

【0438】
【化88】
【0439】
生物学的評価
mRNAのパッケージング
すべての装置および使い捨て消耗品は、製造業者によりRNアーゼ活性がないことが証明されたもの、またはRNアーゼZap試薬(Life Technologies)を用いることによりRNアーゼ不含有にされたものである。mRNAは、4:1の陽イオン性脂質アミン対mRNAリン酸の(N:P)モル比で封入されている。脂質(陽イオン性脂質、DSPC、コレステロールおよび脂質付加PEGまたはステルス脂質)は、エタノールに溶解する。モル比は、それぞれ40:10:38:2である。混合物を短時間超音波処理し、次いで、5分間緩やかに撹拌し、使用時まで37℃に維持する。mRNAは、Amicon Ultra−15遠心濃縮器を用いてクエン酸緩衝液pH5.8〜6.0中に入れ換え、最終濃度を0.5mg/mlに調整し、使用時まで37℃に保持する。等量のエタノール中脂質、クエン酸緩衝液中mRNAおよびクエン酸緩衝液単独をディスポーザブル注射器中に引き込む。脂質およびmRNAを含む注射器からつながるチューブをT字型継手に取り付け、クエン酸緩衝液単独を含む注射器からつながるチューブを、電源を備えた撹拌プレート上の撹拌棒を含む収集容器の上のT字型継手を出るチューブと対にする。注射器をシリンジポンプセットに設置して、内容物を1分当たり1mlの流量で放出する。
【0440】
ポンプを作動させ、脂質ナノ粒子中に収集したmRNAをSnakeSkin透析チューブ(10,000MWCO、Thermo Scientific)に移す。物質をRNアーゼおよび発熱物質不含有1×リン酸緩衝生理食塩水に対して4℃で終夜透析する。
【0441】
siRNAのパッケージング
脂質ナノ粒子(LNPs)は、等量の、アルコールに溶解した脂質とクエン酸緩衝液に溶解したsiRNAとを衝突噴流法により混合することによって形成させた。脂質溶液は、本発明の陽イオン性脂質化合物、ヘルパー脂質(コレステロール)、任意選択の中性脂質(DSPC)およびステルス脂質(S010、S024、S027またはS031)をアルコール中12mg/mLの標的を有する8〜16mg/mLの濃度で含む。siRNA対総脂質の比は、約0.05(重量/重量)である。LNP製剤が4つの脂質成分を含む場合、脂質のモル比範囲は、陽イオン性脂質については20〜70モルパーセントで、40〜60が標的であり、ヘルパー脂質のモルパーセントは、20〜70の範囲にあり、30〜50が標的であり、中性脂質のモルパーセントは、0〜30であり、PEG脂質のモルパーセントは、1〜6の範囲にあり、2〜5が標的である。siRNA溶液の濃度は、0.7〜1.0mg/mLの範囲にあり、4.5〜5.5を標的とするpH4〜6のクエン酸ナトリウム:塩化ナトリウム緩衝液中0.8〜0.9mg/mLの標的を有する。LNPsは、0.25〜2.0mmの内径を有する混合装置により衝突噴流法により10〜640mL/分の流量で等量の、エタノール中脂質溶液とクエン酸緩衝液に溶解したsiRNAとを混合することによって形成させる。混合LNP溶液は、希釈ステップの前に室温で0〜24時間保持する。次いで溶液を濃縮し、30〜500KDのMWカットオフを有する膜を用いる限外濾過法により適切な緩衝液を用いて透析濾過する。最終生成物を除菌し、4℃で保存する。
【0442】
mRNA封入の測定
脂質ナノ粒子内へのmRNAの封入の百分率は、Quant−iT Ribogreen RNA Assayキット(Life Technologies)を用いて測定する。LNP−mRNA懸濁液は、緩衝液(粒子外mRNA)および緩衝液+Triton X−100界面活性剤(総mRNA)においてアッセイする。計算される差は、粒子内部のmRNAである。キット中に提供されているRNAから1000ng/mL保存液を調製し、これを用いて、標準曲線(TEおよびTE+0.75%Triton X−100中0ng/ml、15.63〜1000ng/ml)を作成する。読み取り値が標準曲線の範囲(400〜2000倍)内にあるようにTE緩衝液およびTE緩衝液+0.75%Triton X−100中LNP−mRNA試料を調製する。384ウェルプレート(Costar非処理番号3573)に1ウェル当たり0.04mlの標準(2連で)または試料(3連で)を加える。Ribogreen試薬をTE緩衝液で240倍に希釈し、1ウェル当たり0.06mlを加える。ウェルの内容物を混合し、蛍光(励起=480nm、発光=520nm)を測定する。標準および試験試料値からバックグラウンド値(RNA無し)を差し引き、標準曲線を用いて試料中のRNAの濃度を決定する。試料+トリトンと緩衝液単独中試料の間の濃度の差を試料+トリトン濃度で割ることによって試料の封入の百分率を決定する。
【0443】
封入データ
【0444】
【表3】
【0445】
免疫学的データ
1.材料および方法
RNAレプリコン
様々なレプリコンを以下で用いる。一般的にこれらは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)の非構造タンパク質、シンドビスウイルスに由来するパッケージングシグナルおよびシンドビスウイルスに由来する3’UTRを有するハイブリッドアルファウイルスゲノムである、VEEVベースのキメラレプリコン(VCR)に基づいている。さらに、本発明者らは、VEE生弱毒化ワクチンウイルスTC−83に基づくレプリコンを用いた。該レプリコンは、約10kb長であり、ポリA尾部を有する。
【0446】
アルファウイルスレプリコンをコードするプラスミドDNA(名称:vA375(TC83R−FLFPD.RSVF−runoff)またはvA803[VCR(ro)−X179A(TD)_HA])は、in vitroでのRNAの合成のための鋳型としての機能を果たした。レプリコンは、RNAの複製に必要なアルファウイルスの遺伝要素を含むが、粒子のアセンブリに必要な遺伝子産物のコードを欠いており、構造タンパク質は、目的のタンパク質(例えば、全長RSV Fタンパク質のような、免疫原)によって代わりに置き換えられ、したがって、レプリコンは、感染性粒子の生成を誘導することができない。アルファウイルスcDNAの上流のバクテリオファージT7プロモーターは、in vitroでのレプリコンRNAの合成を促進する。適切な制限エンドヌクレアーゼによるプラスミドDNAの線状化の後に、T7バクテリオファージ由来DNA依存性RNAポリメラーゼを用いてランオフ転写物を合成した。転写は、製造業者(Ambion)により提供された使用説明書に従ってヌクレオシド三リン酸(ATP、CTP、GTPおよびUTP)のそれぞれ7.5mMの存在下で37℃で2時間実施した。転写後、鋳型DNAをTURBO DNase(Ambion)で消化した。レプリコンRNAをLiClで沈殿させ、ヌクレアーゼ不含有水で復元した。キャップのないRNAは、使用者マニュアルに概説されているようにScriptCap m7Gキャッピングシステム(Epicentre Biotechnologies)を用いてワクシニアキャッピング酵素(VCE)により転写後にキャッピングした。この方法でキャッピングされたレプリコンは、「v」接頭辞が付与される。例えば、vA317は、VCEによりキャッピングされたA317レプリコンである。転写後にキャッピングされたRNAをLiClで沈殿させ、ヌクレアーゼ不含有水で復元した。RNA試料の濃度は、OD260nmを測定することにより決定した。in vitro転写物の完全性は、変性アガロースゲル電気泳動により確認した。
【0447】
DlinDMAベースのLNPsの調製
RNAは、Jeffs et al. (2005) Pharmaceutical Research 22 (3):362-372およびMaurer et al. (2001) Biophysical Journal, 80:2310-2326に開示されている方法により本質的に調製したLNPsに封入した。LNPsは、10%DSPC(両性イオン)、40%陽イオン性脂質、48%コレステロールおよび2%PEGコンジュゲートDMG(2kDa PEG)から製造した。これらの割合は、総LNP中のモル%を意味する。
【0448】
DSPC(1,2−ジアステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)は、Genzymeから購入した。コレステロールは、Sigma−Aldrichから入手した。PEGコンジュゲートDMG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール],アンモニウム塩)、DOTAP(1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン,塩化物塩)およびDC−chol(3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩)は、Avanti Polar Lipidsから入手した。
【0449】
手短に述べると、脂質をエタノール(2ml)に溶解し、RNAレプリコンを緩衝液(2ml、100mMクエン酸ナトリウム、pH6)に溶解し、これらを2mlの緩衝液と混合した後、1時間平衡化した。次いで混合物を1×PBSに対して一晩透析した。得られた生成物は、約70〜95%の封入効率を有するリポソームを含んでいた。
【0450】
フェレットにおける免疫付与のために、22.5mgの実施例1、5.9mgのDSPC、13.9mgのコレステロールおよび4.0mgのPEG2000コンジュゲートDMPE(カタログ番号880150P、Avanti Polar Lipid,Inc)を10mlのエタノールに溶解することにより、脂質作業溶液を新たに調製した。RNAの10mL作業溶液も100mMクエン酸緩衝液(pH6)中0.125mg/mlの濃度で調製した。作業脂質およびRNA溶液は、2つの10ccルアーロック注射器に充填する前に37℃で5分間加熱した。その後、2つの注射器をFEPチューブ(フッ素化エチレン−プロピレン;用いたすべてのFEPチューブは、2mmの内径および3mmの外径を有していた;Idex Health Scienceから入手)を用いてTeeミキサー(PEEK(商標)内径500μm連結具)に連結した。Tミキサーの出口にも別個のFEPチューブを取り付け、10mLのクエン酸緩衝液(pH6)を別個のチューブに接続した第3の10cc注射器に充填した。3つの注射器のすべてをシリンジポンプに装着し、1.0ml/分で駆動させた。チューブ出口は、撹拌棒を用いて緩やかに撹拌された20mlガラスバイアル中にミキサー内容物を収集するように配置した。RNアーゼ混入物を完全に不活性化するために実験の前にすべてのガラスバイアルを250℃で12時間焼いた。混合の終了時に、撹拌棒を取り出し、エタノール/水性溶液を室温に1時間平衡化させた。インキュベーションの後、エタノール/水性溶液を注射器に充填し、前述のTee連結法を用いて等量の100mMクエン酸緩衝液(pH6)と混合した。次に、LNPsを20mLに濃縮し、最終生成物を回収する前に接線流濾過により10〜15容積の1×PBSに対して透析した。TFFシステムおよび中空繊維濾過膜は、Spectrum Labs(Rancho Dominguez)から購入し、製造業者のガイドラインに従って用いた。100kDの孔径カットオフおよび8cmの表面積を有するポリスルホン中空繊維濾過膜を用いた。in vitroおよびin vivo実験のために1×PBSを用いて製剤を必要なRNA濃度に希釈した。
【0451】
RNAレプリコンの封入効率
封入されたRNAの百分率およびRNA濃度は、Quant−iT RiboGreen RNA試薬キット(Invitrogen)により製造業者の使用説明書に従って測定した。キット中に提供されているリボソームRNA標準を用いて標準曲線を作成した。色素の添加の前にLNPsを1×TE緩衝液(キットの)で10倍または100倍に希釈した。別途に、色素の添加の前にLNPsを0.5%Triton Xを含む1×TE緩衝液で10倍または100倍に希釈した(LNPsを破壊し、それにより総RNAをアッセイするため)。その後、等量の色素を各溶液に加え、次いで約180μLの各溶液を色素添加後に96ウェル組織培養プレートに2連で加えた。蛍光(Ex485nm、Em528nm)をマイクロプレートリーダーで読み取った。すべてのLNP製剤をRNAの封入量に基づいてin vivoで投与した。
【0452】
2.脂質ナノ粒子(LNP)製剤の特徴付け
Z平均粒子径および多分散指数を以下の表3に示す。
【0453】
【表4】
【0454】
3.マウスモデル(RSV)における免疫原性
RSV Fタンパク質をコードするvA375自己複製レプリコンを、下記の脂質を含むLNPsとして製剤化されたレプリコン(1ng)を用いて0および21日目に両側筋肉内ワクチン接種(脚当たり50μL)により、BALB/cマウスの1群当たり8匹の動物に投与した。すべての供試LNPsは、40%陽イオン性脂質、10%DSPC、48%コレステロールおよび2%PEG−DMGで構成され、同様の量のRNAを含んでいた。LNPsはすべて、同じ技術を用いて調製した。LNP製剤は、初回および追加免疫用に調製し、4℃で保存した。
【0455】
抗体の分析のために血清を14、36および49日目に採取した。表4に示すように、供試LNP製剤は、F特異的IgG力価の増加により判断されるように、わずか1ngの自己複製RNAによる免疫応答をもたらした。
【0456】
【表5】
【0457】
4.フェレットモデル(インフルエンザ)における免疫原性
1群当たり6匹の動物を含む合計7つの実験群(42匹の動物)を本試験に用いた。その内訳は、各RNA製剤の2つのワクチン用量(群2〜5)、アジュバント非含有(H1N1サブユニット)またはアジュバント含有(MF59/H1N1サブユニット)市販H1N1インフルエンザサブユニットワクチンをワクチン接種した2群(群6および7)ならびに偽ワクチン接種群(群1)である。RNA試験ワクチンは、構造遺伝子がH1N1インフルエンザA株、Cal07のHA遺伝子で置き換えられたアルファウイルスゲノムを運ぶ組換えDNAプラスミド(pDNA)に由来していた。次いでRNAは、筋肉内(IM)注射により宿主細胞に送達するための陽イオン性水中油型乳剤(CNE)またはLNPとして製剤化した。各製剤試験群のRNA濃度は、CNEで15および45mcgであり、LNPで5および15mcgであった。非ワクチン接種動物にはRNA試験ワクチンのビヒクル対照を偽ワクチン接種した。すべての試験ワクチンは、試験0日目にIM注射により投与し、試験56日目(第1の免疫付与の8週間後)に追加ワクチン接種を後続させた。
【0458】
表5にインフルエンザマイクロ中和データを要約し、表6に赤血球凝集抑制(HAI)力価を要約する。供試LNP製剤は、HA特異的中和およびHAI力価の増加により判断されるように、わずか5μgの自己増幅RNAによる免疫応答をもたらした。
【0459】
【表6】
【0460】
表6にフェレットモデルに基づくインフルエンザHAIデータを要約する。
【0461】
【表7】
【0462】
付録:LNP製剤用の有用なリン脂質
DDPC 1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DEPA 1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DEPC 1,2−エルコイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DEPE 1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DEPG 1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DLOPC 1,2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DLPA 1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DLPC 1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DLPE 1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DLPG 1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DLPS 1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルセリン
DMG 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン
DMPA 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DMPC 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DMPE 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DMPG 1,2−ミリストイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DMPS 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルセリン
DOPA 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DOPC 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DOPE 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DOPG 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DOPS 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルセリン
DPPA 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DPPC 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DPPE 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DPPG 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DPPS 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルセリン
DPyPE 1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン
DSPA 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
DSPC 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
DSPE 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
DSPG 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール...)
DSPS 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルセリン
EPC 卵PC
HEPC 水素化卵PC
HSPC 高純度水素化ダイズPC
HSPC 水素化ダイズPC
LYSOPC MYRISTIC 1−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
LYSOPC PALMITIC 1−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
LYSOPC STEARIC 1−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
乳スフィンゴミエリンMPPC 1−ミリストイル,2−パルミトイル−sn−グリセロ3−ホスファチジルコリン
MSPC 1−ミリストイル,2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
PMPC 1−パルミトイル,2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
POPC 1−パルミトイル,2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
POPE 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルエタノールアミン
POPG 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3[ホスファチジル−rac−(1−グリセロール)...]
PSPC 1−パルミトイル,2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
SMPC 1−ステアロイル,2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
SOPC 1−ステアロイル,2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
SPPC 1−ステアロイル,2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]